特許第6131785号(P6131785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131785
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】航空機エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 37/14 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B64D37/14
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-179226(P2013-179226)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47902(P2015-47902A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森岡 典子
(72)【発明者】
【氏名】大依 仁
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−506795(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0044515(US,A1)
【文献】 米国特許第3627239(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 37/00 − 37/34
B64C 17/00 − 17/10
F17D 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の両翼にそれぞれ設けたエンジンに、遠心ポンプ及びギアポンプを有するポンプユニットで昇圧して供給する燃料の供給元を、前記航空機の胴体に設けた燃料タンクと前記各翼に設けた燃料タンクとの間で切り替える航空機エンジンの燃料供給装置において、
左翼に設けた前記エンジンに燃料を供給する2つの前記ポンプユニットであって、前記胴体の燃料タンクからの燃料を供給する第1ポンプユニット、及び、前記両翼の燃料タンクからの燃料を供給する第2ポンプユニットと、
右翼に設けた前記エンジンに燃料を供給する2つの前記ポンプユニットであって、前記胴体の燃料タンクからの燃料を供給する第3ポンプユニット、及び、前記両翼の燃料タンクからの燃料を供給する第4ポンプユニットと、
前記各エンジンに燃料を供給する前記ポンプユニットをそれぞれ選択的に切り替える切替ユニットとを備えており、
前記各ポンプユニットは、前記遠心ポンプ及び前記ギアポンプを電動モータで回転駆動し前記エンジンに供給する燃料を昇圧、計量する、
ことを特徴とする航空機エンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
前記左翼のエンジンに前記第2ポンプユニットから燃料が供給され、かつ、前記右翼のエンジンに前記第3ポンプユニットから燃料が供給されているときに、前記第3ポンプユニットの前記遠心ポンプによる燃料のブースト圧を利用して、前記胴体の燃料タンクから前記第1ポンプユニットへの燃料供給経路中の燃料を、前記両翼の燃料タンクから前記第2ポンプユニットへの燃料供給経路に供給する第1エジェクタポンプと、
前記右翼のエンジンに前記第4ポンプユニットから燃料が供給され、かつ、前記左翼のエンジンに前記第1ポンプユニットから燃料が供給されているときに、前記第1ポンプユニットの前記遠心ポンプによる燃料のブースト圧を利用して、前記胴体の燃料タンクから前記第3ポンプユニットへの燃料供給経路中の燃料を、前記両翼の燃料タンクから前記第4ポンプユニットへの燃料供給経路に供給する第2エジェクタポンプと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の航空機エンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のエンジンに対して燃料を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の胴体と両翼とにそれぞれ燃料タンクが設けられている場合は、着陸時の安全性と燃費を考慮した機体の重量バランスとの観点から、胴体の燃料タンクの燃料が先に消費される。したがって、両翼にそれぞれエンジンを設ける場合、各エンジンは、最初は胴体の燃料タンクから供給される燃料をそれぞれ消費する。そして、胴体の燃料タンクが空になると、左翼のエンジンは左翼の燃料タンクからの燃料を、右翼のエンジンは右翼の燃料タンクからの燃料をそれぞれ消費する。
【0003】
そして、両翼の燃料タンクの燃料残量にばらつきが生じた場合は、燃料残量が少ない翼の燃料タンクに、胴体の燃料タンクや燃料残量が多い翼の燃料タンクから燃料を転送して、両翼の燃料タンクの燃料残量を均一化する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7591277号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、燃料の供給元の燃料タンクを切り替える場合は、切り替え前後の各燃料供給経路のブーストポンプのオンオフに加えて、経路切り替え用のバルブの開閉が行われる。また、燃料タンク間で燃料を転送する場合にも、燃料転送経路上のトランスファーポンプのオンオフやバルブの開閉が行われる。これらは専ら、自らの判断に基づく操縦士のマニュアル操作によって行われる。このため、燃料の供給経路の切り替えに関する操縦士の負担が非常に大きい。
【0006】
また、燃料タンク間の燃料転送用のトランスファーポンプは、エンジンに対する燃料供給用のブーストポンプと兼用できず専用に設けるので、トランスファーポンプを設ける分、整備の手間が余分にかかることになる。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、胴体と両翼にそれぞれ燃料タンクが設けられている航空機において、胴体と両翼の燃料タンクの燃料を順番に消費したり両翼の燃料タンクの燃料消費を均一化することを、簡便な構成と操作で実現することができる航空機エンジンの燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、請求項1に記載した本発明の航空機エンジンの燃料供給装置は、
航空機の両翼にそれぞれ設けたエンジンに、遠心ポンプ及びギアポンプを有するポンプユニットで昇圧して供給する燃料の供給元を、前記航空機の胴体に設けた燃料タンクと前記各翼に設けた燃料タンクとの間で切り替える航空機エンジンの燃料供給装置において、
左翼に設けた前記エンジンに燃料を供給する2つの前記ポンプユニットであって、前記胴体の燃料タンクからの燃料を供給する第1ポンプユニット、及び、前記両翼の燃料タンクからの燃料を供給する第2ポンプユニットと、
右翼に設けた前記エンジンに燃料を供給する2つの前記ポンプユニットであって、前記胴体の燃料タンクからの燃料を供給する第3ポンプユニット、及び、前記両翼の燃料タンクからの燃料を供給する第4ポンプユニットと、
前記各エンジンに燃料を供給する前記ポンプユニットをそれぞれ選択的に切り替える切替ユニットとを備えており、
前記各ポンプユニットは、前記遠心ポンプ及び前記ギアポンプを電動モータで回転駆動し前記エンジンに供給する燃料を昇圧、計量する、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載した本発明の航空機エンジンの燃料供給装置によれば、左翼のエンジンに燃料を供給するポンプユニットとして第1ポンプユニットを選択すると、胴体の燃料タンクからの燃料が第1ポンプユニットにより左翼のエンジンに供給される。一方、左翼のエンジンに燃料を供給するポンプユニットとして第2ポンプユニットを選択すると、両翼の燃料タンクからの燃料が第2ポンプユニットにより左翼のエンジンに供給される。
【0010】
また、右翼のエンジンに燃料を供給するポンプユニットとして第3ポンプユニットを選択すると、胴体の燃料タンクからの燃料が第3ポンプユニットにより右翼のエンジンに供給される。一方、右翼のエンジンに燃料を供給するポンプユニットとして第4ポンプユニットを選択すると、両翼の燃料タンクからの燃料が第4ポンプユニットにより右翼のエンジンに供給される。
【0011】
したがって、エンジンに対する燃料供給に用いるポンプユニットを第1ポンプユニットや第3ポンプユニットから第2ポンプユニットや第4ポンプユニットに切り替えると、エンジンで消費する燃料が胴体の燃料タンクの燃料から両翼の燃料タンクの燃料に切り替わる。
【0012】
しかも、第2ポンプユニットや第4ポンプユニットは、両翼の燃料タンクの燃料をエンジンに供給するので、両翼の燃料タンクの燃料がエンジンで均等に消費され、どちらかの翼の燃料タンクの燃料が偏ってエンジンで消費されることがない。
【0013】
このため、胴体と両翼にそれぞれ燃料タンクが設けられている航空機において、胴体と両翼の燃料タンクの燃料を順番に消費したり両翼の燃料タンクの燃料消費を均一化することを、簡便な構成と操作で実現することができる。
【0014】
また、請求項2に記載した本発明の航空機エンジンの燃料供給装置は、請求項1に記載した本発明の航空機エンジンの燃料供給装置において、前記左翼のエンジンに前記第2ポンプユニットから燃料が供給され、かつ、前記右翼のエンジンに前記第3ポンプユニットから燃料が供給されているときに、前記第3ポンプユニットの前記遠心ポンプによる燃料のブースト圧を利用して、前記胴体の燃料タンクから前記第1ポンプユニットへの燃料供給経路中の燃料を、前記両翼の燃料タンクから前記第2ポンプユニットへの燃料供給経路に供給する第1エジェクタポンプと、前記右翼のエンジンに前記第4ポンプユニットから燃料が供給され、かつ、前記左翼のエンジンに前記第1ポンプユニットから燃料が供給されているときに、前記第1ポンプユニットの前記遠心ポンプによる燃料のブースト圧を利用して、前記胴体の燃料タンクから前記第3ポンプユニットへの燃料供給経路中の燃料を、前記両翼の燃料タンクから前記第4ポンプユニットへの燃料供給経路に供給する第2エジェクタポンプとをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項1に記載した本発明の航空機エンジンの燃料供給装置において、第1ポンプユニットを用いて胴体の燃料タンクから左翼のエンジンに燃料を供給しているときに、第1ポンプユニットが停止した場合は、第2ポンプユニットを用いて両翼の燃料タンクから左翼のエンジンに燃料を供給するように切り替えることになる。
【0016】
同様に、第3ポンプユニットを用いて胴体の燃料タンクから右翼のエンジンに燃料を供給しているときに、第3ポンプユニットが停止した場合は、第4ポンプユニットを用いて両翼の燃料タンクから右翼のエンジンに燃料を供給するように切り替えることになる。
【0017】
このように、故障等の原因によるポンプユニットの停止で胴体の燃料タンクの燃料をエンジンに供給できなくなって、両翼の燃料タンクからエンジンに燃料を供給するように切り替えると、そのエンジンに供給されなくなる分だけ、胴体の燃料タンクの燃料消費が減る。すると、両翼の燃料タンクとの間で燃料を消費する順番が入れ替わり、場合によっては、両翼の燃料タンクが先に空になって胴体の燃料タンクに燃料が残る状態も起こる。
【0018】
これに対し、請求項2に記載した本発明の航空機エンジンの燃料供給装置によれば、例えば、第1ポンプユニットが停止して、左翼のエンジンに燃料を供給するポンプユニットを第2ポンプユニットに切り替えた場合、第3ポンプユニットが停止していなければ、第1エジェクタポンプにより胴体の燃料タンクの燃料が第2ポンプユニットにより左翼のエンジンに供給される。
【0019】
同様に、例えば、第3ポンプユニットが停止して、右翼のエンジンに燃料を供給するポンプユニットを第4ポンプユニットに切り替えた場合、第1ポンプユニットが停止していなければ、第2エジェクタポンプにより胴体の燃料タンクの燃料が第4ポンプユニットにより右翼のエンジンに供給される。
【0020】
このため、胴体の燃料タンクに燃料が残っている状態で、ポンプユニットの停止により燃料の供給元を両翼の燃料タンクに切り替えたエンジンに、胴体の燃料タンクの燃料を消費し続けさせるようにして、胴体の燃料タンクと両翼の燃料タンクとの間で燃料を消費する順番が入れ替わるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、胴体と両翼にそれぞれ燃料タンクが設けられている航空機において、胴体と両翼の燃料タンクの燃料を順番に消費したり両翼の燃料タンクの燃料消費を均一化することを、簡便な構成と操作で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る航空機エンジンの燃料供給装置を示す説明図である。
図2図1のポンプユニットの概略構成を示す説明図である。
図3図1の胴体の燃料タンクから両翼のエンジンに燃料を供給する際の通常の供給経路を示す説明図である。
図4図1の両翼の燃料タンクから両翼のエンジンに燃料を供給する際の通常の供給経路を示す説明図である。
図5図1の胴体の燃料タンクから左翼のエンジンに燃料を供給する第1ポンプユニットの故障時における燃料供給経路を示す説明図である。
図6図1の両翼の燃料タンクから左翼のエンジンに燃料を供給する第2ポンプユニットの故障時における燃料供給経路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1の説明図に示す本実施形態の燃料供給装置1は、不図示の航空機において胴体や両翼の燃料タンク3a〜3cから両翼のガスタービンエンジン(以下、「エンジン」と略記する。)5a,5bに燃料を供給するものである。
【0024】
そして、燃料供給装置1は、燃料タンク3a〜3cの燃料をブースト、加圧してエンジン5a,5bに供給する第1乃至第4のポンプユニット7a〜7dと、各ポンプユニット7a〜7dの動作を制御する機体側の航空機用デジタル制御装置(フライトコンピュータ等の機体コンピュータ)15とを有している。
【0025】
なお、各燃料タンク3a〜3cの燃料残量は、センサ3d〜3fによって検出される。検出された各燃料タンク3a〜3cの燃料残量は、機体コンピュータ15に通知されると共に、操縦席のフライトデッキパネル17に表示される。フライトデッキパネル17には、第1乃至第4のポンプユニット7a〜7dの動作状態も表示される。
【0026】
第1ポンプユニット7aと第2ポンプユニット7bは、左翼のエンジン5aに燃料を供給するものである。第1ポンプユニット7aは、左のセンター燃料流路11aにより胴体の燃料タンク3aのチェックバルブ9aに接続されている。第2ポンプユニット7bは、左のメイン燃料流路11bにより左翼の燃料タンク3bのチェックバルブ9bに接続されている。
【0027】
第3ポンプユニット7cと第4ポンプユニット7dは、右翼のエンジン5bに燃料を供給するものである。第3ポンプユニット7cは、右のセンター燃料流路11cにより胴体の燃料タンク3aのチェックバルブ9cに接続されている。第4ポンプユニット7dは、右のメイン燃料流路11dにより右翼の燃料タンク3cのチェックバルブ9dに接続されている。
【0028】
左右のメイン燃料流路11b,11dは、中央連絡流路11eによって接続されている。左のセンター燃料流路11aは、チェックバルブ9e及び左連絡流路11fを介して左翼の燃料タンク3bに接続されている。右のセンター燃料流路11cは、チェックバルブ9f及び右連絡流路11gを介して右翼の燃料タンク3cに接続されている。
【0029】
なお、左連絡流路11fは、左のセンター燃料流路11aよりも圧力損失が高くなるように構成されている。したがって、胴体の燃料タンク3aに燃料が残っている間は、第1ポンプユニット7aには、左翼の燃料タンク3bからの燃料よりも、胴体の燃料タンク3aからの燃料の方が、優先して供給される。左連絡流路11fの圧力損失をセンター燃料流路11aより高くするには、例えば、左連絡流路11fの径をセンター燃料流路11aの径より細くしておけばよい。
【0030】
同様に、右連絡流路11gは、右のセンター燃料流路11cよりも圧力損失が高くなるように構成されている。したがって、胴体の燃料タンク3aに燃料が残っている間は、第3ポンプユニット7cには、右翼の燃料タンク3cからの燃料よりも、胴体の燃料タンク3aからの燃料の方が、優先して供給される。
【0031】
左のセンター燃料流路11aの、左連絡流路11fの接続箇所よりも胴体の燃料タンク3a寄りの箇所は、第1エジェクタポンプ13aの吸入ポートに接続されている。第1エジェクタポンプ13aの供給ポートには、第3ポンプユニット7cのオン中に、第3ポンプユニット7cによる燃料のブースト圧が加えられる。第1エジェクタポンプ13aの吐出ポートは、左転送流路11hを介して左のメイン燃料流路11bに接続されている。
【0032】
右のセンター燃料流路11cの、右連絡流路11gの接続箇所よりも胴体の燃料タンク3a寄りの箇所は、第2エジェクタポンプ13bの吸入ポートに接続されている。第2エジェクタポンプ13bの供給ポートには、第1ポンプユニット7aのオン中に、第1ポンプユニット7aによる燃料のブースト圧が加えられる。第2エジェクタポンプ13bの吐出ポートは、右転送流路11iを介して右のメイン燃料流路11dに接続されている。
【0033】
第1乃至第4のポンプユニット7a〜7dは、図2の説明図に示すように、昇圧部20と計量部30とを有している。
【0034】
昇圧部20は、低圧ポンプ21(請求項中の遠心ポンプに相当)により燃料タンク3a〜3cから取り込んでブーストした燃料を吐出するギアポンプ22と、低圧ポンプ21やギアポンプ22を回転駆動させる電動モータ23と、電動モータ23の回転数を制御するモータコントローラ24と、ギアポンプ22に並列接続されたリリーフバルブ(安全弁)25とを有している。ギアポンプ22は公知の定容積型ポンプであり、ギアポンプ22による燃料の吐出流量はギアポンプ22の回転数に比例する。
【0035】
モータコントローラ24はメモリ(図示せず)を有している。このメモリには、電動モータ23の回転数に比例するギアポンプ22の回転数と燃料の吐出流量との相関特性を示すプロファイル(回転数対流量特性のプロファイル)が記憶されている。また、モータコントローラ24は、機体コンピュータ15から燃料の目標流量を指令信号によって受け取る。そして、モータコントローラ24は、目標流量に見合ったギアポンプ22の回転数をプロファイルから求め、その回転数でギアポンプ22を回転駆動させるための電動モータ23の回転数を決定して、決定した回転数に電動モータ23の回転数を制御する。
【0036】
計量部30は、固定オリフィス31と、固定オリフィス31と並列に設けられた加圧バルブ32と、固定オリフィス31及び加圧バルブ32の並列流路33の前後(上流側と下流側)の差圧を測定する差圧計34とを有している。
【0037】
固定オリフィス31は、流路断面積が一定のオリフィスを有しており、加圧バルブ32は、ギアポンプ22による燃料の吐出流量が設定値を上回ると、その吐出流量に応じた弁開度で開弁する。ここで、設定値とは固定オリフィス31を通過する燃料の流量である。したがって、並列流路33を通過する燃料の流量は、加圧バルブ32の閉弁時には固定オリフィス31の通過流量(設定値)以下となり、加圧バルブ32の開弁時には、固定オリフィス31の通過流量(設定値)と加圧バルブ32を通過する流量との合計値となる。
【0038】
なお、固定オリフィス31の通過流量(設定値)は、燃料ノズル5cを有する左翼及び右翼の各エンジン5a,5bの着火時(始動時)に必要な燃料の流量を超える程度の流量に合わせてある。このため、ギアポンプ22による燃料の吐出流量が、設定値以上でかつ加圧バルブ32が開弁する流量未満の範囲では、並列流路33における燃料通過面積が固定オリフィス31のみによって精度良く決められる。このため、精度が要求されるエンジン5a,5bの着火時流量の燃料を、燃料ノズル5cに正確に供給することができる。
【0039】
また、第1乃至第4のポンプユニット7a〜7dによる燃料ノズル5cへの燃料供給を停止(シャットオフ)する場合は、昇圧部20のリリーフバルブ25と並列に設けられたシャットオフバルブ26を、機体コンピュータ15からの指令信号に基づいて不図示のコントローラが出力するシャットオフ信号により開弁させる。これにより、昇圧部20から計量部30に供給される燃料を低圧ポンプ21とギアポンプ22の間に還流させて、燃料ノズル5cへの燃料供給を停止させることができる。
【0040】
さらに、燃料ノズル5cに対する燃料供給の停止(シャットオフ)は、電動モータ23によるギアポンプ22の回転駆動を停止させることでも実現させることができる。但し、電動モータ23を停止させてもギアポンプ22がしばらく惰性で回転するので、加圧バルブ32は閉弁してもギアポンプ22の回転が止まるまでは、少量の燃料が固定オリフィス31を通過してしまう。そこで、加圧バルブ32に、大気圧に連通するドレイン通路32aを設け、固定オリフィス31を通過した少量の燃料を、ガスタービンエンジンの回転により高圧状態の燃料ノズル5cよりもドレイン通路32aに流れさせて、例えば燃料タンク3a〜3cに戻すようにしてもよい。
【0041】
上述したドレイン通路32aを加圧バルブ32に設けることで、ガスタービンエンジンに対する燃料の供給停止系を冗長化し、昇圧部20のシャットオフバルブ26の系統に不具合が発生したときにこれをバックアップとすることができる。また、シャットオフバルブ26を省略しドレイン通路32aのみによって燃料のシャットオフ系を構成してもよい。反対に、シャットオフバルブ26のみによって燃料のシャットオフ系を構成する場合は、加圧バルブ32のドレイン通路32aを省略してもよい。
【0042】
上述した第1乃至第4ポンプユニット7a〜7dでは、差圧計34が計測した並列流路33の前後(上流側と下流側)の差圧が、モータコントローラ24にフィードバックされる。モータコントローラ24は、差圧計34が測定した差圧から並列流路33を通過する燃料の実流量を検出する。そして、検出した燃料の実流量が機体コンピュータ15からの指令信号による目標流量と一致していない場合(許容された誤差範囲内の不一致を除く)は、メモリに記憶しているプロファイルを更新する。
【0043】
更新するプロファイルは、モータコントローラ24が算出した燃料の実流量と目標流量との比率を、現在メモリに記憶しているプロファイルの、ギアポンプ22の回転数に対応する燃料の吐出流量に乗じることで得ることができる。また、ギアポンプ22の回転数と差圧計34の測定値から算出される燃料の実流量とを複数セット取得して、ギアポンプ22の回転数と燃料の吐出流量との相関特性を求め直してもよい。
【0044】
プロファイルが更新されると、それ以後は、モータコントローラ24によって、機体コンピュータ15からの指令信号による目標流量に対応するギアポンプ22の回転数が更新後のプロファイルから求められ、求められた回転数でギアポンプ22を回転駆動させるための電動モータ23の回転数が決定される。そして、電動モータ23の回転数がモータコントローラ24によって、決定された回転数に制御される。
【0045】
このように、第1乃至第4ポンプユニット7a〜7dでは、モータコントローラ24によって燃料の実流量が検出される。そして、燃料の目標流量と実流量とが一致しなくなった場合に、モータコントローラ24がメモリに記憶したギアポンプ22の回転数と燃料の吐出流量との相関特性のプロファイルを更新する。そして、プロファイルが更新されると、同じ目標流量に対応してモータコントローラ24が決定する電動モータ23の回転数が変化する。
【0046】
したがって、例えばギアポンプ22の回転数対流量特性が経年劣化等により変化すると、その変化が、差圧計34の計測結果からモータコントローラ24が検出した燃料の実流量と、そのときの電動モータ23の回転数(制御値)に比例するギアポンプ22の回転数とに基づいて、把握される。
【0047】
また、第1乃至第4ポンプユニット7a〜7dでは、ギアポンプ22の回転数と燃料の吐出流量との相関特性のプロファイルを参照して、燃料の目標流量に見合うギアポンプ22や電動モータ23の回転数が決定される。このため、ガスタービンエンジンに供給する燃料を目標流量にコントロールするための制御が、プロファイルを更新するだけのオープンループ制御で実現される。
【0048】
即ち、クローズドループによるフィードバック制御でギアポンプ22や電動モータ23の回転数を常時調整する場合のように制御系の構成を複雑にすることなく、簡易な構成で燃料供給量が目標流量にコントロールされる。
【0049】
なお、プロファイルを更新したことをトリガとして、ギアポンプ22のメンテナンスや交換を促すメンテナンス情報(ポンプ異常検知信号)を、機体側(外部)に出力し提供するようにしてもよい。また、プロファイルの更新の有無に関わらず、目標流量と実流量の一致/不一致やそのギャップ等を、ポンプ性能トレンド情報として機体側に出力し提供するようにしてもよい。
【0050】
また、機体コンピュータ15からの指令信号による燃料の目標流量と、差圧計34が測定した差圧から検出した並列流路33を通過する燃料の実流量とが一致しなくなった場合に、クローズドループによるフィードバック制御を行うようにしてもよい。その場合は、実流量が目標流量に一致するように、モータコントローラ24がフィードバック制御を行うことになる。これによっても、ガスタービンエンジンに対する燃料供給量を目標流量に精度良くコントロールすることができる。
【0051】
以上のような構成による第1乃至第4ポンプユニット7a〜7dは、左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bが消費する最大流量の少なくとも半分の燃料を計量、供給する能力を、それぞれ有している。
【0052】
そして、上述した第1乃至第4ポンプユニット7a〜7dを用いる図1の燃料供給装置1では、フライトデッキパネル17に設けられた不図示の操作盤の操縦士による操作に基づいて機体コンピュータ15が行う制御により、あるいは、センサ等の検出結果に基づいて機体コンピュータ15が自動的に行う制御により、第1乃至第4ポンプユニット7a〜7dがオンオフされる。
【0053】
この場合、操縦士による操作に基づく機体コンピュータ15の制御と、センサ等の検出結果に基づく自動的な機体コンピュータ15の制御とのどちらかを、バックアップとすることができる。その場合、どちらをバックアップとするかは任意である。また、バックアップを持たせずにどちらか一方の制御だけとしてもよい。そして、本実施形態では、機体コンピュータ15が、請求項中の切替ユニットに相当している。
【0054】
例えば、両翼のエンジン5a,5bによる燃料消費が最大となる離陸時には、図1に示すように、第1乃至第4ポンプユニット7a〜7dが全てオンされる。
【0055】
したがって、左翼のエンジン5aには、第1ポンプユニット7aが左のセンター燃料流路11aを経て胴体の燃料タンク3aから取り込んだ燃料と、第2ポンプユニット7bが左右のメイン燃料流路11b,11dと中央連絡流路11eを経て両翼の燃料タンク3b,3cから取り込んだ燃料とが供給される。
【0056】
一方、右翼のエンジン5bには、第3ポンプユニット7cが右のセンター燃料流路11cを経て胴体の燃料タンク3aから取り込んだ燃料と、第4ポンプユニット7dが左右のメイン燃料流路11b,11dと中央連絡流路11eを経て両翼の燃料タンク3b,3cから取り込んだ燃料とが供給される。
【0057】
また、両翼のエンジン5a,5bによる燃料消費が減る離陸後には、胴体の燃料タンク3aに燃料が残っている間、図3の説明図に示すように、実線で記載された第1及び第3ポンプユニット7a,7cがオンされ、破線で記載された第2及び第4ポンプユニット7b,7dがオフされる。
【0058】
したがって、左翼のエンジン5aには、第1ポンプユニット7aが左のセンター燃料流路11aを経て胴体の燃料タンク3aから取り込んだ燃料が供給される。一方、右翼のエンジン5bには、第3ポンプユニット7cが右のセンター燃料流路11cを経て胴体の燃料タンク3aから取り込んだ燃料が供給される。
【0059】
このとき、第1エジェクタポンプ13aの供給ポートには、第3ポンプユニット7cの低圧ポンプ21(図2参照)で発生した燃料のブースト圧が加わる。また、第2エジェクタポンプ13bの供給ポートには、第1ポンプユニット7aの低圧ポンプ21(図2参照)で発生した燃料のブースト圧が加わる。
【0060】
一方、第1及び第2エジェクタポンプ13a,13bの吐出ポートに左転送流路11hや右転送流路11iを介して接続された左右のメイン燃料流路11b,11dでは、第2及び第4ポンプユニット7b,7dのオフにより燃料の流れが遮断されている。
【0061】
このため、第3及び第1ポンプユニット7c,7aから供給ポートに燃料のブースト圧が加えられた第1及び第2エジェクタポンプ13a,13bによって、それらの吸入ポートに接続された胴体の燃料タンク3aの燃料が、右のメイン燃料流路11dや左のメイン燃料流路11bに供給されることはない。
【0062】
続いて、離陸後、胴体の燃料タンク3aが空になると、図4の説明図に示すように、実線で記載された第2及び第4ポンプユニット7b,7dがオンされ、破線で記載された第1及び第3ポンプユニット7a,7cがオフされる。
【0063】
したがって、両翼のエンジン5a,5bには、第2ポンプユニット7bや第4ポンプユニット7dが左右のメイン燃料流路11b,11dと中央連絡流路11eを経て両翼の燃料タンク3b,3cから取り込んだ燃料が、それぞれ供給される。
【0064】
ところで、胴体の燃料タンク3aに燃料が残っている状態で、例えば第1ポンプユニット7aが故障すると、胴体の燃料タンク3aから左のセンター燃料流路11aを経て左翼のエンジン5aに燃料を供給できなくなる。
【0065】
この場合は、図5の説明図に示すように、第1ポンプユニット7aに代えて第2ポンプユニット7bをオンする。これにより、第2ポンプユニット7bが左翼のエンジン5aに、左右のメイン燃料流路11b,11dと中央連絡流路11eを経て両翼の燃料タンク3b,3cから取り込んだ燃料を供給する。
【0066】
このとき、右翼のエンジン5bには、第3ポンプユニット7cが右のセンター燃料流路11cを経て胴体の燃料タンク3aから取り込んだ燃料が供給されている。よって、第1エジェクタポンプ13aの供給ポートには、第3ポンプユニット7cの低圧ポンプ21(図2参照)で発生した燃料のブースト圧が加わる。
【0067】
一方、左のメイン燃料流路11bには、第2ポンプユニット7bのオンにより燃料の流れが生じている。このため、第1エジェクタポンプ13aの吸入ポートに接続された胴体の燃料タンク3aの燃料が、第3ポンプユニット7cから燃料のブースト圧が供給ポートに加えられた第1エジェクタポンプ13aにより、左転送流路11hを介して左のメイン燃料流路11bに供給される。
【0068】
第1エジェクタポンプ13aにより左のメイン燃料流路11bに供給された胴体の燃料タンク3aの燃料は、両翼の燃料タンク3b,3cから取り込んだ燃料と共に、第2ポンプユニット7bによって左翼のエンジン5aに供給される。
【0069】
なお、胴体の燃料タンク3aに燃料が残っている状態で、例えば第3ポンプユニット7cが故障して、胴体の燃料タンク3aから右のセンター燃料流路11cを経て右翼のエンジン5bに燃料を供給できなくなった場合は、第3ポンプユニット7cに代えて第4ポンプユニット7dをオンする。
【0070】
これにより、第4ポンプユニット7dが右翼のエンジン5bに、左右のメイン燃料流路11b,11dと中央連絡流路11eを経て両翼の燃料タンク3b,3cから取り込んだ燃料を供給する。
【0071】
このとき、第1ポンプユニット7aは、胴体の燃料タンク3aの燃料を左翼のエンジン5aに供給するためオンしている。したがって、第2エジェクタポンプ13bの供給ポートには、第1ポンプユニット7aの低圧ポンプ21(図2参照)で発生した燃料のブースト圧が加わる。また、右のメイン燃料流路11dには、第4ポンプユニット7dのオンにより燃料の流れが生じている。
【0072】
このため、第2エジェクタポンプ13bの吸入ポートに右のセンター燃料流路11cを介して接続された胴体の燃料タンク3aの燃料が、第1ポンプユニット7aから燃料のブースト圧が供給ポートに加えられた第2エジェクタポンプ13bにより、右転送流路11iを介して右のメイン燃料流路11dに供給される。
【0073】
第2エジェクタポンプ13bにより右のメイン燃料流路11dに供給された胴体の燃料タンク3aの燃料は、両翼の燃料タンク3b,3cから取り込んだ燃料と共に、第4ポンプユニット7dによって右翼のエンジン5bに供給される。
【0074】
このように、胴体の燃料タンク3aに燃料が残っている状態で、第1ポンプユニット7aや第3ポンプユニット7cが故障しても、第2ポンプユニット7bや第4ポンプユニット7dを代わりに使用することで、左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bに対する燃料の供給を継続することができる。
【0075】
また、第1エジェクタポンプ13aや第2エジェクタポンプ13bを用いて胴体の燃料タンク3aの残った燃料を一緒に左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bに供給することで、左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bに対する胴体の燃料タンク3aの燃料供給量が、第1ポンプユニット7aや第3ポンプユニット7cの故障で減る度合いを、少なくすることができる。これにより、両翼の燃料タンク3b,3cよりも胴体の燃料タンク3aの燃料を優先して消費し続けることができる。
【0076】
次に、胴体の燃料タンク3aが空になった状態で、例えば第2ポンプユニット7bが故障すると、両翼の燃料タンク3b,3cから左のメイン燃料流路11bを経て左翼のエンジン5aに燃料を供給できなくなる。
【0077】
この場合は、図6の説明図に示すように、第2ポンプユニット7bに代えて第1ポンプユニット7aをオンする。すると、胴体の燃料タンク3aは既に空であるので、第1ポンプユニット7aには、左のセンター燃料流路11aよりも圧力損失が高いチェックバルブ9e及び左連絡流路11fを介して、左翼の燃料タンク3bから燃料が供給される。そして、第1ポンプユニット7aが左翼のエンジン5aに、左翼の燃料タンク3bから取り込んだ燃料を供給する。
【0078】
このとき、第2エジェクタポンプ13bの供給ポートには、第1ポンプユニット7aの低圧ポンプ21(図2参照)で発生した燃料のブースト圧が加わる。また、右のメイン燃料流路11dには、第4ポンプユニット7dのオンにより燃料の流れが生じている。しかし、第2エジェクタポンプ13bの吸入ポートに右のセンター燃料流路11cを介して接続された胴体の燃料タンク3aは空である。
【0079】
このため、第2エジェクタポンプ13bの吸入ポートには、右のセンター燃料流路11cよりも圧力損失が高いチェックバルブ9f及び右連絡流路11gを介して、右翼の燃料タンク3cの燃料が供給される。したがって、第1ポンプユニット7aから燃料のブースト圧が供給ポートに加えられた第2エジェクタポンプ13bにより、右翼の燃料タンク3cからの燃料が右転送流路11iを介して右のメイン燃料流路11dに供給される。
【0080】
第2エジェクタポンプ13bにより右のメイン燃料流路11dに供給された右翼の燃料タンク3cの燃料は、右翼の燃料タンク3cから右のメイン燃料流路11dを経て直接取り込んだ燃料と共に、第4ポンプユニット7dによって右翼のエンジン5bに供給される。
【0081】
このとき、燃料の供給量は第4ポンプユニット7dの計量部30(図2参照)で計量されるので、第2エジェクタポンプ13bにより供給された右翼の燃料タンク3cからの燃料が右翼のエンジン5bに一緒に供給されても、右翼のエンジン5bに燃料が過剰に供給されることはない。
【0082】
なお、胴体の燃料タンク3aが空になった状態で、例えば第4ポンプユニット7dが故障して、両翼の燃料タンク3b,3cから右のメイン燃料流路11dを経て右翼のエンジン5bに燃料を供給できなくなった場合は、第4ポンプユニット7dに代えて第3ポンプユニット7cをオンする。
【0083】
これにより、第3ポンプユニット7cが右翼のエンジン5bに、右のセンター燃料流路11cよりも圧力損失が高いチェックバルブ9f及び右連絡流路11gを介して右翼の燃料タンク3cから取り込んだ燃料を供給する。
【0084】
このとき、第3ポンプユニット7cは、胴体の燃料タンク3aの燃料を右翼のエンジン5bに供給するためオンしている。したがって、第1エジェクタポンプ13aの供給ポートには、第3ポンプユニット7cの低圧ポンプ21(図2参照)で発生した燃料のブースト圧が加わる。また、左のメイン燃料流路11bには、第1ポンプユニット7aのオンにより燃料の流れが生じている。しかし、第1エジェクタポンプ13aの吸入ポートに左のセンター燃料流路11aを介して接続された胴体の燃料タンク3aは空である。
【0085】
このため、第1エジェクタポンプ13aの吸入ポートには、左のセンター燃料流路11aよりも圧力損失が高いチェックバルブ9e及び左連絡流路11fを介して、左翼の燃料タンク3bの燃料が供給される。したがって、第3ポンプユニット7cから燃料のブースト圧が供給ポートに加えられた第1エジェクタポンプ13aにより、左翼の燃料タンク3bからの燃料が左転送流路11hを介して左のメイン燃料流路11bに供給される。
【0086】
第1エジェクタポンプ13aにより左のメイン燃料流路11bに供給された左翼の燃料タンク3bの燃料は、左翼の燃料タンク3bから左のメイン燃料流路11bを経て直接取り込んだ燃料と共に、第2ポンプユニット7bによって左翼のエンジン5aに供給される。
【0087】
このとき、燃料の供給量は第2ポンプユニット7bの計量部30(図2参照)で計量されるので、第1エジェクタポンプ13aにより供給された左翼の燃料タンク3bからの燃料が左翼のエンジン5aに一緒に供給されても、左翼のエンジン5aに燃料が過剰に供給されることはない。
【0088】
このように、胴体の燃料タンク3aが空になっている状態で、第2ポンプユニット7bや第4ポンプユニット7dが故障しても、第1ポンプユニット7aや第3ポンプユニット7cを代わりに使用することで、左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bに対する燃料の供給を継続することができる。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態の燃料供給装置1によれば、左翼のエンジン5aと右翼のエンジン5bとに対応して、胴体の燃料タンク3aの燃料を供給する第1ポンプユニット7a及び第3ポンプユニット7cと、左右両翼の燃料タンク3b,3cの燃料を供給する第2ポンプユニット7b及び第4ポンプユニット7dとの2系統をそれぞれ設けた。
【0090】
このため、オンするポンプユニットの切り替えにより、左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bに供給する燃料の供給元を切り替えることができる。したがって、胴体と両翼の燃料タンク3a〜3cの燃料を順番に消費したり両翼の燃料タンク3b,3cの燃料消費量を均一化することを、簡便な構成と操作で実現することができる。
【0091】
また、第1ポンプユニット7aや第3ポンプユニット7cの故障時には、第2ポンプユニット7bや第4ポンプユニット7dにより、左翼の燃料タンク3bや右翼の燃料タンク3cの燃料を、胴体の燃料タンク3aの燃料の代わりに、左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bに供給することができる。
【0092】
なお、第1ポンプユニット7aや第3ポンプユニット7cの故障時に、第1エジェクタポンプ13aや第2エジェクタポンプ13bにより、胴体の燃料タンク3aの燃料を左翼のエンジン5aや右翼のエンジン5bに供給できるようにする構成は、省略してもよい。しかし、この構成を設ければ、第1ポンプユニット7aや第3ポンプユニット7cが故障しても、両翼の燃料タンク3b,3cより胴体の燃料タンク3aの燃料を優先して消費し続けることができる。
【0093】
そして、本発明は、軍用機であるか民間機であるかや、旅客機であるか貨物機であるかに関係なく、推進装置としてのエンジンに燃料を供給する航空機に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 燃料供給装置
3a〜3c 燃料タンク
3d〜3f センサ
5a,5b エンジン
5c 燃料ノズル
7a 第1ポンプユニット
7b 第2ポンプユニット
7c 第3ポンプユニット
7d 第4ポンプユニット
9a〜9f チェックバルブ
11a,11c センター燃料流路
11b,11d メイン燃料流路
11e 中央連絡流路
11f 左連絡流路
11g 右連絡流路
11h 左転送流路
11i 右転送流路
13a 第1エジェクタポンプ
13b 第2エジェクタポンプ
15 機体コンピュータ
17 フライトデッキパネル
20 昇圧部
21 低圧ポンプ
22 ギアポンプ
23 電動モータ
24 モータコントローラ
25 リリーフバルブ
26 シャットオフバルブ
30 計量部
31 固定オリフィス
32 加圧バルブ
32a ドレイン通路
33 並列流路
34 差圧計
図1
図2
図3
図4
図5
図6