(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マザーガラス板の前記凹部が設けられた部分の厚みに対する、前記第2又は第3の凹部が設けられた部分の厚みの比((前記第2又は第3の凹部が設けられた部分の厚み)/(前記マザーガラス板の前記凹部が設けられた部分の厚み))が、0.78〜1.28である、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
前記第2及び第3の凹部を、それぞれ、前記マザーガラス板の延びる方向において、前記凹部の一方側端部よりもさらに一方側から、前記凹部の他方側端部よりもさらに他方側に跨がるように形成する、請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、ロールアウト成形法を用いて、中央に凹部が形成されたガラス板を高い形状精度で製造するという発想は存在しなかった。
【0006】
本発明の主な目的は、中央に凹部が形成されたガラス板を高い形状精度で製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガラス板の製造方法は、一の主面の中央部に凹部が形成されたガラス板を製造する方法である。本発明に係るガラス板の製造方法では、凹部に対応した第1の凸部を有する第1の成形ロールと、第2の成形ロールとの間にガラス融液を供給し、ロールアウト成形することによりマザーガラス板を得る成形工程を行う。マザーガラス板を、相互に間隔をおいて配された複数の搬送ロールにより搬送しながら冷却する。マザーガラス板を幅方向に延びる切断ラインに沿って切断するとともに、少なくとも幅方向における両端部を切除することによりガラス板を得る切除工程を行う。第1の成形ロールは、第1の成形ロールの軸心方向における第1の凸部の一方側に位置する第2の凸部と、第1の成形ロールの軸心方向における第1の凸部の他方側に位置する第3の凸部とを有する。成形工程において、凹部に加えて、第2の凸部により成形され、マザーガラス板の幅方向の一方側端辺に到る第2の凹部と、第3の凸部により成形され、マザーガラス板の幅方向の他方側端辺に到る第3の凹部とを有するマザーガラス板を成形する。切除工程において、マザーガラス板の第2の凹部が形成された部分と、第3の凹部が形成された部分とを切除する。
【0008】
本発明に係るガラス板の製造方法では、マザーガラス板の凹部が設けられた部分の厚みに対する、第2又は第3の凹部が設けられた部分の厚みの比((第2又は第3の凹部が設けられた部分の厚み)/(マザーガラス板の凹部が設けられた部分の厚み))が、0.78〜1.28であることが好ましい。
【0009】
本発明に係るガラス板の製造方法では、第2及び第3の凹部を、それぞれ、マザーガラス板の延びる方向において、凹部の一方側端部よりもさらに一方側から、凹部の他方側端部よりもさらに他方側に跨がるように形成することが好ましい。
【0010】
本発明に係るガラス板の製造方法では、マザーガラス板は、複数の第2の凹部及び複数の第3の凹部を有していてもよい。マザーガラス板の延びる方向において第2の凹部同士が離間しているとともに、第3の凹部同士が離間していてもよい。切除工程において、第2及び第3の凹部が設けられていない部分を通過する切断ラインに沿ってマザーガラス板を切断した後に、少なくとも幅方向における両端部を切除することが好ましい。
【0011】
本発明に係るガラス板の製造方法では、切断ラインに沿ってスクライブ線を形成した後にマザーガラス板を折り割ってもよい。
【0012】
本発明に係るガラス板の製造方法では、第1の成形ロールは、回転シャフトに取り付けられており、第1の成形ロールが、ガラス融液が接触する部分よりも軸心方向における外側に、横断面が円形である部分を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中央に凹部が形成されたガラス板を高い形状精度で製造し得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0016】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0017】
(ガラス板1)
図1は、本実施形態において製造されるガラス板の模式的平面図である。
図2は、
図1の線II−IIにおける模式的断面図である。本実施形態では、
図1及び
図2に示すガラス板1の製造方法について説明する。
【0018】
図2に示されるように、ガラス板1は、第1の主面11と、第2の主面12とを有する。第2の主面は、略平面である。一方、第1の主面11は、凹部11aを有する。凹部11aは、第1の主面11の中央部に位置している。凹部11aは、第1の主面11の周縁部を除く中央部の実質的に全体に設けられている。凹部11aは、第1の主面11の周縁部に設けられた額縁状の凸部11bにより包囲されている。
【0019】
凹部11aと、第1の主面11とは、それぞれ、略矩形状、具体的には、角部が丸められた矩形状である。凹部11aの形状と、第1の主面11の形状とは、実質的に相似形である。第1の主面11の長辺の長さに対する凹部11aの長辺の長さの比((凹部11aの長辺の長さ)/(第1の主面11の長辺の長さ))は、0.93〜0.97であることが好ましい。第1の主面11の短辺の長さに対する凹部11aの短辺の長さの比((凹部11aの短辺の長さ)/(第1の主面11の短辺の長さ))は、0.93〜0.95程度であることが好ましい。凹部11aの面積は、第1の主面11の面積の0.87〜0.91であることが好ましく、0.88〜0.90であることがより好ましい。
【0020】
凸部11bの厚みに対する凹部11aの厚みの比((凹部11aの厚み)/(凸部11bの厚み))は、0.67〜0.95であることが好ましく、0.70〜0.91であることがより好ましい。凹部11aの厚みは、具体的には、3.75mm〜4.35mm程度とすることができる。凸部11bの厚みは、具体的には、4.75mm〜5.35mm程度とすることができる。
【0021】
(ガラス板1の製造方法)
次に、ガラス板1の製造方法について、
図3〜
図8を参照しながら説明する。
【0022】
図3は、本実施形態におけるガラス板の製造装置20の一部分を表す模式的側面図である。
図4は、本実施形態における第1の成形ロール21の外表面の模式的展開図である。
図5は、本実施形態における第2の成形ロール22の外表面の模式的展開図である。
図6は、第1の成形ロール21と第2の成形ロール22を用いた成形時における
図4の線VI−VIの模式的断面図である。
【0023】
図3に示されるように、製造装置20は、第1の成形ロール21と、第2の成形ロール22とを有する。第1の成形ロール21と第2の成形ロール22とは、第1の成形ロール21の軸心と第2の成形ロール22の軸心とが平行になるように配されている。第1の成形ロール21と第2の成形ロール22とは、相互に間隔をおいて配されている。
【0024】
第1の成形ロール21は、第1の回転シャフト21Aに取り付けられている。この第1の回転シャフト21Aによって第1の成形ロール21が回転駆動される。第2の成形ロール22は、第2の回転シャフト22Aに取り付けられている。この第2の回転シャフト22Aによって第2の成形ロール22が回転駆動される。第2の成形ロール22の回転方向と、第1の成形ロール21の回転方向とは互いに逆方向である。
【0025】
第1の成形ロール21と第2の成形ロール22との間には、ガラス供給部23からガラス融液24が供給される。ガラス融液24は、第1の成形ロール21と第2の成形ロール22とによりロールアウト成形される。これにより、マザーガラス板25が作製される。
【0026】
マザーガラス板25は、第1及び第2の成形ロール21,22の間から、一旦下方に向かって移動し、その後、相互に間隔を置いて配された複数の搬送ロール26の上を略水平に搬送される。マザーガラス板25は、搬送ロール26の上を搬送されながら、図示しないアニール炉により徐冷される。
【0027】
製造装置20は、切断機構27を有する。この切断機構27によって、冷却されたマザーガラス板25が幅方向に沿って切断され、ガラス原板50が作製される。マザーガラス板25の切断機構27は、例えば、マザーガラス板25にスクライブ線を形成する機構と、スクライブ線が形成されたマザーガラス板25を折り割る機構とを有していてもよい。
【0028】
図4に示されるように、第1の成形ロール21の表面21aには、第1の凸部31と、第2の凸部32と、第3の凸部33とが形成されている。一方、
図5に示されるように、第2の成形ロール22の表面22aには凸部は形成されていない。
【0029】
第1の凸部31は、ガラス板1において凹部11aを形成するための凸部である。このため、第1の凸部31の形状寸法は、凹部11aの形状寸法に応じて設けられている。
【0030】
第2の凸部32は、第1の成形ロール21の軸心方向における第1の凸部31の一方側に位置している。第2の凸部32は、凸部32aと、凸部32aの軸心方向外側に設けられた凸部32bとを有する。凸部32aは、周方向における一部に設けられている。凸部32aは、周方向において、第1の凸部31の一方側端部よりもさらに一方側から、第1の凸部31の他方側端部よりもさらに他方側に跨がって設けられている。つまり、凸部32aの周方向の幅は、第1の凸部31の周方向の幅よりも長い。一方、凸部32bは、全周にわたって設けられている。このため、第1の成形ロール21の凸部32bが設けられた部分の横断面は、円形である。
図6に示されるように、凸部32aはガラス融液24に接触している一方、凸部32bはガラス融液24に接触していない。凸部32bは、ガラス融液24よりも軸心方向において外側に位置している。
【0031】
第3の凸部33は、第1の成形ロール21の軸心方向における第1の凸部31の他方側に位置している。第3の凸部33は、凸部33aと、凸部33aの軸心方向外側に設けられた凸部33bとを有する。凸部33aは、周方向における一部に設けられている。凸部33aは、周方向において、第1の凸部31の一方側端部よりもさらに一方側から、第1の凸部31の他方側端部よりもさらに他方側に跨がって設けられている。一方、凸部33bは、全周にわたって設けられている。このため、第1の成形ロール21の凸部33bが設けられた部分の横断面は、円形である。凸部32aは、ガラス融液24に接触している一方、凸部33bはガラス融液24に接触していない。凸部33bは、ガラス融液24よりも外側に位置している。
【0032】
ところで、高い形状精度を有するガラス板1を得るためには、第1の成形ロール21と第1の回転シャフト21Aとの偏心を小さくすることが必要である。
【0033】
本実施形態では、第1の成形ロール21が、ガラス融液24が接触する部分よりも軸心方向における外側に、横断面が円形である部分を有する。このため、第1の成形ロール21を第1の回転シャフト21Aに取り付けた後に、第1の成形ロール21の横断面が円形である部分にゲージなどを押し当てて第1の回転シャフト21Aの軸心から第1の成形ロール21の表面までの距離を測定することによって、第1の回転シャフト21Aと第1の成形ロール21との偏心を検出することができる。このため、第1の成形ロール21の第1の回転シャフト21Aに対する偏心を抑制することができる。従って、厚みむらの少ない、高い形状精度を有するガラス板1を製造し得る。
【0034】
図7は、本実施形態において作製されたマザーガラス板25の模式的平面図である。第1及び第2の成形ロール21,22が上記のような構成を有しているため、マザーガラス板25は、凹部11aと、第2の凹部42と、第3の凹部43とを有する。凹部11a、第2の凹部42及び第3の凹部43は、それぞれ、マザーガラス板25の延びる方向に沿って相互に間隔を置いて複数設けられている。マザーガラス板25の延びる方向において隣り合う凹部11a同士は、相互に離間している。マザーガラス板25の延びる方向において隣り合う第2の凹部42同士は、相互に離間している。マザーガラス板25の延びる方向において隣り合う第3の凹部43同士は、相互に離間している。
【0035】
第2の凹部42は、第2の凸部32の凸部32aによって形成された部分である。第2の凹部42は、マザーガラス板25の幅方向の一方側端辺25aに到っている。第2の凹部42は、マザーガラス板25の延びる方向において、凹部11aの一方側端部よりもさらに一方側から、凹部11aの他方側端部よりもさらに他方側に跨がって形成されている。
【0036】
第3の凹部43は、第3の凸部33の凸部33aによって形成された部分である。第3の凹部43は、マザーガラス板25の幅方向の他方側端辺25bに到っている。第3の凹部43は、マザーガラス板25の延びる方向において、凹部11aの一方側端部よりもさらに一方側から、凹部11aの他方側端部よりもさらに他方側に跨がって形成されている。
【0037】
図3に示されるように、マザーガラス板25は、複数の搬送ロール26の上を搬送されて冷却された後に、切断機構27によって切断される。具体的には、マザーガラス板25の幅方向に延びる仮想の切断ラインL1(
図7を参照)に沿って切断される。これにより、
図8に示されるガラス原板50が得られる。具体的には、切断ラインL1に沿ってスクライブ線を形成する。その後、そのスクライブ線に沿ってマザーガラス板25を折り割ることによりガラス原板50を得る。本実施形態では、
図4に示すように、第1の成形ロール21において、凸部32aは、周方向における一部に設けられているため、マザーガラス板25の幅方向において、凹部11a、第2の凹部42及び第3の凹部43のいずれもが設けられていない略均一厚みの部分が形成され、その部分を通過する切断ラインL1に沿ってスクライブ線を形成する。このため、スクライブ線を容易に形成することができる。したがって、マザーガラス板25を好適に折り割ることができる。よって、高い形状精度を有するガラス原板50を得ることができる。
【0038】
図8に示されるように、ガラス原板50は、中央部51と、第1の切除部52と、第2の切除部53と、第3の切除部54と、第4の切除部55とを有する。
【0039】
中央部51は、ガラス板1を構成するための部分である。中央部51は、凹部11aを含む。第1の切除部52は、中央部51の幅方向(x軸方向)の一方側に位置している。第1の切除部52は、第2の凹部42を含む。第2の切除部53は、中央部51の幅方向(x軸方向)の他方側に位置している。第2の切除部53は、第3の凹部43を含む。第3の切除部54は、中央部51の幅方向に直交するy軸方向の一方側に位置している。第4の切除部55は、中央部51のy軸方向の他方側に位置している。
【0040】
なお、本発明において、ガラス原板は、第1及び第2の切除部のみを有し、第3及び第4の切除部を有していなくてもよい。
【0041】
次に、ガラス原板50から第1〜第4の切除部52〜55を切除する。これにより、
図1及び
図2に示されるガラス板1を得ることができる。なお、第1〜第4の切除部52〜55の切除方法は特に限定されない。第1〜第4の切除部52〜55の切除は、例えば、スクライブ、ダイシング、レーザー切断、研磨等により行うことができる。
【0042】
ところで、凹部11aのみを有するガラス板1を製造する場合、一般的には、マザーガラス板25に、第2及び第3の凹部42,43を形成せず、凹部11aのみを形成することを検討する。
【0043】
しかしながら、本発明者らは、鋭意研究の結果、マザーガラス板25に凹部11aのみを形成した場合は、高い形状精度を有するガラス板1を製造することが困難であることを見出した。具体的には、本発明者らは、凹部11aのみをマザーガラス板25に形成した場合は、マザーガラス板25の両端部が波打ち、その結果、得られるガラス板1の平坦度が低下することを見出した。
【0044】
この理由としては、定かではないが、以下の理由が考えられる。すなわち、マザーガラス板25の凹部11aが形成された中央部と、両端部とで厚み偏差が大きいため、中央部と両端部とで冷却速度が大きく異なる。このため、冷却時における中央部の熱収縮量と両端部の熱収縮量とが大きく異なる。従って、マザーガラス板25の両端部が波打つものと考えられる。
【0045】
ここで、本実施形態では、マザーガラス板25に第2及び第3の凹部42,43を形成し、マザーガラス板25の中央部の厚みと両端部の厚みとの差を小さくしている。このため、冷却時におけるマザーガラス板25の中央部の熱収縮量と両端部の熱収縮量との差を小さくすることができる。よって、マザーガラス板25が波打つことを抑制することができる。その結果、平坦度が高く、高い形状精度を有するガラス板1を製造し得る。
【0046】
実際に実験を行ったところ、第2及び第3の凹部42,43を設けなかった場合は、マザーガラス板25の両端部が大きく波打った一方、第2及び第3の凹部42,43を設けた場合は、マザーガラス板25の両端部の波打ちが大きく抑制されることが確認された。
【0047】
より高い形状精度を有するガラス板1を得る観点からは、マザーガラス板25の凹部11aが形成された部分の厚みに対する、第2又は第3の凹部42,43が形成された部分の厚みの比((第2又は第3の凹部42,43が形成された部分の厚み)/(マザーガラス板25の凹部11aが形成された部分の厚み))が、0.78〜1.28であることが好ましく、0.80〜1.20であることがより好ましい。
【0048】
より高い形状精度を有するガラス板1を得る観点からは、第1の成形ロール21には、凸部32aが、周方向において、第1の凸部31の一方側端部よりもさらに一方側から、第1の凸部31の他方側端部よりもさらに他方側に跨がって設けられていることが好ましい。凸部33aが、周方向において、第1の凸部31の一方側端部よりもさらに一方側から、第1の凸部31の他方側端部よりもさらに他方側に跨がって設けられていることが好ましい。この場合、ガラス板1を構成するための中央部51が波打つことを効果的に抑制できるためである。