特許第6131832号(P6131832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131832
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】X線発生装置及びX線分析装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/34 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   H05G1/34 F
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-231779(P2013-231779)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-92439(P2015-92439A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 桂次郎
(72)【発明者】
【氏名】丸井 隆雄
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06426997(US,B1)
【文献】 特開平08−064388(JP,A)
【文献】 特開平08−078185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管球内に互いに間隔を隔てて配置されたフィラメントとターゲットとの間に管電圧を印加することにより管電流を生じさせ、前記ターゲットへの熱電子の衝突によってX線を発生させるX線発生装置であって、
前記フィラメントに印加される電圧値をモニタするフィラメント電圧値モニタ部と、
前記フィラメントを流れる電流値をモニタするフィラメント電流値モニタ部と、
前記フィラメント電圧値モニタ部によりモニタされる電圧値、及び、前記フィラメント電流値モニタ部によりモニタされる電流値に基づいて、前記フィラメントにおける抵抗値を算出するフィラメント抵抗値算出部と、
前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値を、管電流又は管電圧を用いて決定された所定の閾値と比較するフィラメント抵抗値比較処理部とを備えたことを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値の初期値に基づいて、前記閾値を決定する閾値決定処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値が前記閾値を超えている場合に、その旨を報知する報知処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
X線管球内に互いに間隔を隔てて配置されたフィラメントとターゲットとの間に管電圧を印加することにより管電流を生じさせ、前記ターゲットへの熱電子の衝突によってX線を発生させるX線発生装置であって、
前記フィラメントに印加される電圧値をモニタするフィラメント電圧値モニタ部と、
前記フィラメントを流れる電流値をモニタするフィラメント電流値モニタ部と、
前記フィラメント電圧値モニタ部によりモニタされる電圧値、及び、前記フィラメント電流値モニタ部によりモニタされる電流値に基づいて、前記フィラメントにおける抵抗値を算出するフィラメント抵抗値算出部と、
前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値の履歴を記憶する履歴記憶部と、
前記履歴記憶部に記憶されている抵抗値の履歴に基づいて、抵抗値の変化率を算出する変化率算出部と、
前記変化率算出部により算出された抵抗値の変化率を、管電流又は管電圧を用いて決定された所定の閾値と比較する変化率比較処理部とを備えたことを特徴とするX線発生装置。
【請求項5】
前記変化率算出部により算出された抵抗値の変化率の初期値に基づいて、前記閾値を決定する閾値決定処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記変化率算出部により算出された抵抗値の変化率が前記閾値を超えている場合に、その旨を報知する報知処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載のX線発生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のX線発生装置により発生されるX線を用いて分析を行うことを特徴とするX線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管球内に互いに間隔を隔てて配置されたフィラメントとターゲットとの間に管電圧を印加することにより管電流を生じさせ、前記ターゲットへの熱電子の衝突によってX線を発生させるX線発生装置及びX線分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線分析装置などに用いられるX線管球には、正常に使用可能な期間があり、交換時期になれば新しいX線管球に交換される。このような交換時期については、X線管球の使用時間の積算値を定期的に確認することにより、交換の目安とすることができる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、従来のX線管球の交換時期は、単にX線管球の使用時間の積算値を、メーカがX線管球の寿命として保証している使用時間と比較することにより判断しており、X線管球の状態や使用態様を考慮して、そのX線管球の交換時期を判断するような手法は採用されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−283192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、X線管球の状態や使用態様によっては、メーカがX線管球の寿命として保証している使用時間よりも早く正常に使用できなくなる場合や、保証されている使用時間を超えて正常に使用できる場合もある。
【0006】
このため、単に保証されている期間を目安に交換した場合、X線管球の交換が遅れてフィラメントが断線するなどして、X線管球を正常に使用できなくなるおそれがある。また、まだ使用可能なX線管球を交換してしまう可能性もあり、ランニングコストが高くなるという問題がある。このように、X線管球の適切な交換時期は、X線管球の使用時間だけでは正確に判断することが困難である。
【0007】
上記のようなX線管球の適切な交換時期は、フィラメントの状態によって変動する。X線管球においては、互いに間隔を隔てて配置されたフィラメントとターゲットとの間に高電圧を印加することとなるが、この際、フィラメントに電流を流すことにより、フィラメントから放出される熱電子をターゲットに衝突させ、ターゲットからX線を発生させている。このように、フィラメントに電流を流すことにより、フィラメントが加熱されるため、X線管球の使用に伴ってフィラメントの材料が少しずつ蒸発し、フィラメントが少しずつ細くなって断線しやすくなる。
【0008】
したがって、フィラメントの状態を把握することができれば、X線管球の適切な交換時期を判断することが可能である。しかしながら、フィラメントはX線管球内に配置されており、目視で確認することができないため、フィラメントの状態を把握することは容易ではない。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、X線管球の適切な交換時期を容易に判断することができるX線発生装置及びX線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るX線発生装置は、X線管球内に互いに間隔を隔てて配置されたフィラメントとターゲットとの間に管電圧を印加することにより管電流を生じさせ、前記ターゲットへの熱電子の衝突によってX線を発生させるX線発生装置であって、前記フィラメントに印加される電圧値をモニタするフィラメント電圧値モニタ部と、前記フィラメントを流れる電流値をモニタするフィラメント電流値モニタ部と、前記フィラメント電圧値モニタ部によりモニタされる電圧値、及び、前記フィラメント電流値モニタ部によりモニタされる電流値に基づいて、前記フィラメントにおける抵抗値を算出するフィラメント抵抗値算出部と、前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値を、管電流又は管電圧を用いて決定された所定の閾値と比較するフィラメント抵抗値比較処理部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、フィラメントに印加される電圧値と、フィラメントを流れる電流値とに基づいて、フィラメントにおける抵抗値を算出し、その算出された抵抗値を所定の閾値と比較することにより、フィラメントの状態を把握することができる。したがって、フィラメントの状態に基づいて、X線管球の適切な交換時期を容易に判断することができる。
【0012】
前記X線発生装置は、前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値の初期値に基づいて、前記閾値を決定する閾値決定処理部をさらに備えていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、フィラメントにおける抵抗値の初期値に基づいて閾値を決定することにより、フィラメントごとに適切な閾値を決定することができる。そのため、当該閾値を用いてフィラメントの状態をより正確に把握し、X線管球の適切な交換時期をより正確に判断することができる。
【0014】
前記X線発生装置は、前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値が前記閾値を超えている場合に、その旨を報知する報知処理部をさらに備えていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、算出されたフィラメントにおける抵抗値が閾値を超えている場合に、その旨を報知することにより、X線管球の適切な交換時期を報知することができる。このような報知に基づいてX線管球を交換することにより、交換時期が遅くてフィラメントが断線したり、交換時期が早すぎてランニングコストが高くなったりするのを防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るX線発生装置は、X線管球内に互いに間隔を隔てて配置されたフィラメントとターゲットとの間に管電圧を印加することにより管電流を生じさせ、前記ターゲットへの熱電子の衝突によってX線を発生させるX線発生装置であって、前記フィラメントに印加される電圧値をモニタするフィラメント電圧値モニタ部と、前記フィラメントを流れる電流値をモニタするフィラメント電流値モニタ部と、前記フィラメント電圧値モニタ部によりモニタされる電圧値、及び、前記フィラメント電流値モニタ部によりモニタされる電流値に基づいて、前記フィラメントにおける抵抗値を算出するフィラメント抵抗値算出部と、前記フィラメント抵抗値算出部により算出された抵抗値の履歴を記憶する履歴記憶部と、前記履歴記憶部に記憶されている抵抗値の履歴に基づいて、抵抗値の変化率を算出する変化率算出部と、前記変化率算出部により算出された抵抗値の変化率を、管電流又は管電圧を用いて決定された所定の閾値と比較する変化率比較処理部とを備えたことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、フィラメントに印加される電圧値と、フィラメントを流れる電流値とに基づいて、フィラメントにおける抵抗値を算出し、その算出された抵抗値の履歴から算出される抵抗値の変化率を所定の閾値と比較することにより、フィラメントの状態を把握することができる。したがって、フィラメントの状態に基づいて、X線管球の適切な交換時期を容易に判断することができる。
【0018】
前記X線発生装置は、前記変化率算出部により算出された抵抗値の変化率の初期値に基づいて、前記閾値を決定する閾値決定処理部をさらに備えていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、フィラメントにおける抵抗値の変化率の初期値に基づいて閾値を決定することにより、フィラメントごとに適切な閾値を決定することができる。そのため、当該閾値を用いてフィラメントの状態をより正確に把握し、X線管球の適切な交換時期をより正確に判断することができる。
【0020】
前記X線発生装置は、前記変化率算出部により算出された抵抗値の変化率が前記閾値を超えている場合に、その旨を報知する報知処理部をさらに備えていてもよい。
【0021】
このような構成によれば、算出されたフィラメントにおける抵抗値の変化率が閾値を超えている場合に、その旨を報知することにより、X線管球の適切な交換時期を報知することができる。このような報知に基づいてX線管球を交換することにより、交換時期が遅くてフィラメントが断線したり、交換時期が早すぎてランニングコストが高くなったりするのを防止することができる。
【0022】
本発明に係るX線分析装置は、前記X線発生装置により発生されるX線を用いて分析を行うことを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、X線管球の適切な交換時期を容易に判断することができるX線分析装置を提供することができる。特に、X線分析装置においては、管電流を安定させなければ精度よく分析を行うことができないため、フィラメントの状態を把握することが重要となる。したがって、本発明のようにフィラメントの状態を容易に把握することができる構成を採用することにより、精度よく分析を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、フィラメントにおける抵抗値又は抵抗値の変化率からフィラメントの状態を把握し、そのフィラメントの状態に基づいて、X線管球の適切な交換時期を容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るX線発生装置の構成例を示した概略図である。
図2図1のX線発生装置の具体的構成を示したブロック図である。
図3図2の制御部によりフィラメントの抵抗値を算出する際の処理の一例を示したフローチャートである。
図4】本発明の別の実施形態に係るX線発生装置の具体的構成を示したブロック図である。
図5図4の制御部によりフィラメントの抵抗値の変化率を算出する際の処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るX線発生装置の構成例を示した概略図である。このX線発生装置は、X線管球1内にフィラメント11及びターゲット12を備えている。ターゲット12は、例えばCu、Cr、Mo、Al、Ag又はAuにより形成することができる。
【0027】
フィラメント11及びターゲット12は、X線管球1内に互いに間隔を隔てて配置されている。フィラメント11とターゲット12との間には、フィラメントケーブル21及び高圧ケーブル22を含むX線電源2により、例えば50kV程度の高電圧が管電圧として印加される。これにより、図1において矢印で示すように、フィラメント11からターゲット12に向けて熱電子が放出され、この熱電子がターゲット12に衝突することによりX線が発生する。
【0028】
このとき、高圧ケーブル22に管電流が生じ、その管電流を電流計23で検知することができるようになっている。フィラメント11には、フィラメントケーブル21を介して電圧が印加される。電流計23により検知される管電流が一定になるように、フィラメント11に印加する電圧を制御することにより、その電圧に応じた電流がフィラメント11を流れることとなる。すなわち、X線を発生させる際、管電流が一定であっても、フィラメント11に印加される電圧値及びフィラメント11を流れる電流値は、管電圧やフィラメント11の状態によって変動することとなる。
【0029】
図2は、図1のX線発生装置の具体的構成を示したブロック図である。このX線発生装置には、上述のX線管球1及びX線電源2の他に、制御部3、記憶部4及び表示部5などが備えらえている。なお、図2には図示していないが、X線発生装置には、ユーザが当該X線発生装置の動作に関する入力操作を行うための操作部が備えられていてもよい。
【0030】
X線電源2には、フィラメント電圧値モニタ部24及びフィラメント電流値モニタ部25が備えられている。フィラメント電圧値モニタ部24は、フィラメントケーブル21によりフィラメント11に印加される電圧値をモニタする。一方、フィラメント電流値モニタ部25は、フィラメントケーブル21を流れる電流値をモニタする。
【0031】
制御部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成であり、X線発生装置の動作を制御する。本実施形態における制御部3は、CPUがプログラムを実行することにより、フィラメント抵抗値算出部31、フィラメント抵抗値比較処理部32、閾値決定処理部33及び報知処理部34などとして機能する。
【0032】
フィラメント抵抗値算出部31は、フィラメント電圧値モニタ部24によりモニタされる電圧値、及び、フィラメント電流値モニタ部25によりモニタされる電流値に基づいて、フィラメント11における抵抗値を算出する処理を行う。具体的には、フィラメント電圧値モニタ部24によりモニタされる電圧値を、フィラメント電流値モニタ部25によりモニタされる電流値で除算することにより、フィラメント11における抵抗値を算出することができる。
【0033】
上記のようなフィラメント11の抵抗値の算出は、1日に1回又は1週間に1回などのように、所定の時間間隔をあけて自動的に行われるような構成であってもよいし、ユーザが操作部を操作することにより行われるような構成であってもよい。算出されたフィラメント11の抵抗値は、例えばX線管球1の使用時間の情報とともに、記憶部4に履歴として複数記憶することができる。すなわち、記憶部4は、フィラメント抵抗値算出部31により算出されたフィラメント11の抵抗値の履歴を記憶する履歴記憶部として機能する。記憶部4は、例えばハードディスク又はRAM(Random Access Memory)により構成することができる。
【0034】
フィラメント抵抗値比較処理部32は、フィラメント抵抗値算出部31により算出された抵抗値を所定の閾値と比較する処理を行う。本実施形態では、閾値決定処理部33により上記閾値が決定されるようになっている。ただし、上記閾値は、予め定められた値であってもよい。
【0035】
フィラメント11の抵抗値は、X線管球1の使用時間の積算値が増加するほど大きくなる。閾値決定処理部33は、例えばフィラメント11の断線が予想される抵抗値よりも若干小さい値を閾値として決定する。このような値を閾値として決定し、当該閾値とフィラメント抵抗値算出部31により算出された抵抗値とを比較することにより、X線管球1の交換時期を予想することができる。
【0036】
本実施形態では、記憶部4に記憶されているフィラメント11の抵抗値の初期値に基づいて閾値が決定される。すなわち、フィラメント11の抵抗値の初期値はX線管球1ごとに異なり、フィラメント11の抵抗値の初期値が異なれば、適切な閾値も変化するため、フィラメント11の抵抗値の初期値に応じた閾値が決定されるようになっている。例えば、X線管球1の使用が開始された最初のフィラメント11の抵抗値、又は、使用開始後の所定期間内におけるフィラメント11の抵抗値から初期値を算出して、当該初期値に所定の比率を乗算した値を閾値に決定することができる。
【0037】
なお、記憶部4には、フィラメント抵抗値算出部31により算出されたフィラメント11の抵抗値に対応付けて、その抵抗値を算出したときの管電流や管電圧などの値が記憶されていてもよい。この場合、フィラメント11の抵抗値だけでなく、管電流や管電圧などの値も用いて、閾値決定処理部33が閾値を決定するような構成であってもよい。例えば、管電流又は管電圧の値に対応付けて、フィラメント11の抵抗値とX線管球1の使用時間との関係を記憶部4に記憶しておけば、管電流又は管電圧の値に応じたフィラメント11の抵抗値に基づいて、より精度よく閾値を決定することができる。
【0038】
報知処理部34は、フィラメント抵抗値算出部31により算出された抵抗値が閾値を超えている場合に、その旨を報知する処理を行う。本実施形態では、X線管球1が交換時期である旨を表示部5に表示させることにより、X線管球1の交換時期をユーザに報知することができるようになっている。ただし、報知処理部34による報知は、表示部5に対する表示に限らず、音声などの他の態様により行われるような構成であってもよい。
【0039】
図3は、図2の制御部3によりフィラメント11の抵抗値を算出する際の処理の一例を示したフローチャートである。フィラメント11の抵抗値を算出する際には、まず、フィラメント11に印加されている電圧値がフィラメント電圧値モニタ部24から取得されるとともに(ステップS101)、フィラメント11を流れる電流値がフィラメント電流値モニタ部25から取得される(ステップS102)。
【0040】
その後、取得された電圧値及び電流値に基づいて、フィラメント11の抵抗値が算出され(ステップS103)、算出されたフィラメント11の抵抗値が記憶部4に記憶される(ステップS104)。そして、算出されたフィラメント11の抵抗値が閾値を超えている場合には(ステップS105でYes)、その旨が表示部5に表示されることにより、ユーザにX線管球1の交換時期が報知される(ステップS106)。
【0041】
以上のように、本実施形態では、フィラメント11に印加される電圧値と、フィラメント11を流れる電流値とに基づいて、フィラメント11における抵抗値を算出し、その算出された抵抗値を所定の閾値と比較することにより、フィラメント11の状態を把握することができる。したがって、フィラメント11の状態に基づいて、X線管球1の適切な交換時期を容易に判断することができる。
【0042】
特に、本実施形態では、フィラメント11における抵抗値の初期値に基づいて閾値を決定することにより、フィラメント11ごとに適切な閾値を決定することができる。そのため、当該閾値を用いてフィラメント11の状態をより正確に把握し、X線管球1の適切な交換時期をより正確に判断することができる。
【0043】
また、本実施形態では、算出されたフィラメント11における抵抗値が閾値を超えている場合に、その旨を報知することにより、X線管球1の適切な交換時期を報知することができる。このような報知に基づいてX線管球1を交換することにより、交換時期が遅くてフィラメント11が断線したり、交換時期が早すぎてランニングコストが高くなったりするのを防止することができる。
【0044】
図4は、本発明の別の実施形態に係るX線発生装置の具体的構成を示したブロック図である。本実施形態では、制御部3の構成のみが上記実施形態とは異なり、他の構成については上記実施形態と同様であるため、同様の構成については、図に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態における制御部3は、CPUがプログラムを実行することにより、フィラメント抵抗値算出部35、変化率算出部36、変化率比較処理部37、閾値決定処理部38及び報知処理部39などとして機能する。
【0046】
フィラメント抵抗値算出部35は、上記実施形態におけるフィラメント抵抗値算出部31と同様に、フィラメント電圧値モニタ部24によりモニタされる電圧値、及び、フィラメント電流値モニタ部25によりモニタされる電流値に基づいて、フィラメント11における抵抗値を算出する処理を行う。算出されたフィラメント11の抵抗値は、例えばX線管球1の使用時間の情報とともに、記憶部4に履歴として複数記憶することができる。
【0047】
変化率算出部36は、記憶部4に記憶されているフィラメント11の抵抗値の履歴に基づいて、抵抗値の変化率を算出する処理を行う。例えば、記憶部4に記憶されているフィラメント11の抵抗値とX線管球1の使用時間との関係に基づいて、単位時間当たりの抵抗値の増加量を変化率として算出することができる。
【0048】
変化率比較処理部37は、変化率算出部36により算出されたフィラメント11の抵抗値の変化率を所定の閾値と比較する処理を行う。本実施形態では、閾値決定処理部38により上記閾値が決定されるようになっている。ただし、上記閾値は、予め定められた値であってもよい。
【0049】
フィラメント11の抵抗値の変化率は、フィラメント11の断線時期が近付くと急激に大きくなる。閾値決定処理部38は、例えばX線管球1の使用開始時の抵抗値の変化率よりも若干大きい値を閾値として決定する。このような値を閾値として決定し、当該閾値と変化率算出部36により算出されたフィラメント11の抵抗値の変化率とを比較することにより、X線管球1の交換時期を予想することができる。
【0050】
本実施形態では、変化率算出部36により算出された抵抗値の変化率の初期値に基づいて閾値が決定される。すなわち、抵抗値の変化率の初期値はX線管球1ごとに異なり、抵抗値の変化率の初期値が異なれば、適切な閾値も変化するため、抵抗値の変化率の初期値に応じた閾値が決定されるようになっている。例えば、X線管球1の使用が開始された最初のフィラメント11の抵抗値の変化率、又は、使用開始後の所定期間内におけるフィラメント11の抵抗値の変化率から初期値を算出して、当該初期値に所定の比率を乗算した値を閾値に決定することができる。
【0051】
なお、記憶部4には、フィラメント抵抗値算出部35により算出されたフィラメント11の抵抗値に対応付けて、その抵抗値を算出したときの管電流や管電圧などの値が記憶されていてもよい。この場合、フィラメント11の抵抗値だけでなく、管電流や管電圧などの値も用いて、閾値決定処理部38が閾値を決定するような構成であってもよい。例えば、管電流又は管電圧の値に対応付けて、フィラメント11の抵抗値とX線管球1の使用時間との関係を記憶部4に記憶しておけば、管電流又は管電圧の値に応じたフィラメント11の抵抗値の変化率に基づいて、より精度よく閾値を決定することができる。
【0052】
報知処理部39は、変化率算出部36により算出されたフィラメント11の抵抗値の変化率が閾値を超えている場合に、その旨を報知する処理を行う。本実施形態では、X線管球1が交換時期である旨を表示部5に表示させることにより、X線管球1の交換時期をユーザに報知することができるようになっている。ただし、報知処理部39による報知は、表示部5に対する表示に限らず、音声などの他の態様により行われるような構成であってもよい。
【0053】
図5は、図4の制御部3によりフィラメント11の抵抗値の変化率を算出する際の処理の一例を示したフローチャートである。フィラメント11の抵抗値の変化率を算出する際には、まず、フィラメント11に印加されている電圧値がフィラメント電圧値モニタ部24から取得されるとともに(ステップS201)、フィラメント11を流れる電流値がフィラメント電流値モニタ部25から取得される(ステップS202)。
【0054】
その後、取得された電圧値及び電流値に基づいて、フィラメント11の抵抗値が算出され(ステップS203)、算出されたフィラメント11の抵抗値が記憶部4に記憶される(ステップS204)。そして、算出されたフィラメント11の抵抗値の履歴に基づいて抵抗値の変化率が算出され(ステップS205)、その変化率が閾値を超えている場合には(ステップS206でYes)、その旨が表示部5に表示されることにより、ユーザにX線管球1の交換時期が報知される(ステップS207)。
【0055】
以上のように、本実施形態では、フィラメント11に印加される電圧値と、フィラメント11を流れる電流値とに基づいて、フィラメント11における抵抗値を算出し、その算出された抵抗値の履歴から算出される抵抗値の変化率を所定の閾値と比較することにより、フィラメント11の状態を把握することができる。したがって、フィラメント11の状態に基づいて、X線管球1の適切な交換時期を容易に判断することができる。
【0056】
特に、本実施形態では、フィラメント11における抵抗値の変化率の初期値に基づいて閾値を決定することにより、フィラメント11ごとに適切な閾値を決定することができる。そのため、当該閾値を用いてフィラメント11の状態をより正確に把握し、X線管球1の適切な交換時期をより正確に判断することができる。
【0057】
また、本実施形態では、算出されたフィラメント11における抵抗値の変化率が閾値を超えている場合に、その旨を報知することにより、X線管球1の適切な交換時期を報知することができる。このような報知に基づいてX線管球1を交換することにより、交換時期が遅くてフィラメント11が断線したり、交換時期が早すぎてランニングコストが高くなったりするのを防止することができる。
【0058】
上記実施形態に例示されるような本発明に係るX線発生装置をX線分析装置に適用した場合には、当該X線発生装置により発生されるX線を用いて分析を行うことができる。この場合、X線管球1の適切な交換時期を容易に判断することができるX線分析装置を提供することができる。特に、X線分析装置においては、管電流を安定させなければ精度よく分析を行うことができないため、フィラメント11の状態を把握することが重要となる。したがって、上記実施形態のようにフィラメント11の状態を容易に把握することができる構成を採用することにより、精度よく分析を行うことができる。
【0059】
ただし、本発明に係るX線発生装置は、X線分析装置に限らず、例えばレントゲン装置のような医用機器など、他の各種機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 X線管球
2 X線電源
3 制御部
4 記憶部
5 表示部
11 フィラメント
12 ターゲット
21 フィラメントケーブル
22 高圧ケーブル
23 電流計
24 フィラメント電圧値モニタ部
25 フィラメント電流値モニタ部
31 フィラメント抵抗値算出部
32 フィラメント抵抗値比較処理部
33 閾値決定処理部
34 報知処理部
35 フィラメント抵抗値算出部
36 変化率算出部
37 変化率比較処理部
38 閾値決定処理部
39 報知処理部
図1
図2
図3
図4
図5