(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂層(X)側の波長450nm以上650nm以下の波長範囲における分光反射率の最小値が、4.5%以上6.0%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の積層ポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
【0018】
本発明の積層ポリエステルフィルムには、基材となるポリエステルフィルムを有し、そのポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂層(X)が設けられている。
【0019】
本発明において基材となるポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、および1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成樹脂を主要構成樹脂とするものが挙げられる。これら構成樹脂は、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるのもが本発明を実施する上で好適である。
【0020】
なお、ポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤および架橋剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0021】
また、上記のポリエステルフィルムとして、二軸配向ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。ここで、「二軸配向」とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートをシート長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸し、その後、熱処理を施すことにより得ることができる。
【0022】
また、基材となるポリエステルフィルムは、2層以上の積層構造体であっても良い。積層構造体としては、例えば、内層部と表層部とを有する複合体フィルムであって、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部のみに粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムを挙げることができる。また、内層部と表層部を構成するポリエステルが同種であっても異種あってもよい。
【0023】
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは38〜250μm、最も好ましくは75〜150μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
【0024】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂層(X)を有する積層ポリエステルフィルムであって、前記樹脂層(X)が、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)と、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)を含む塗料組成物を用いて形成された層であり、煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量ΔHz(ΔHz=煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ−煮沸処理試験前のフィルムヘイズ)が3.0%未満である積層ポリエステルフィルムである。
【0025】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂層(X)が設けられた積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層(X)が、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)と、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)と、イソシアネート化合物(c)と、カルボジイミド化合物(d)と、オキサゾリン化合物(e)を含む塗料組成物から形成される層であり、前記層(X)のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)を含む凝集体の分散指数が5以下である積層ポリエステルフィルムである。
【0026】
上記本発明の積層ポリエステルフィルムは、透明性、ハードコート層を積層した際の虹彩状模様(干渉縞)の抑制(視認性)に優れ、かつ、ハードコート層との初期接着性、高温高湿下での密着性(耐湿熱接着性)、UV照射後の接着性(耐UV接着性)に優れ、さらには沸騰水へ浸漬した際の接着性(耐煮沸接着性)に優れ、沸騰水へ浸漬した際の透明性の悪化(白化)抑制(耐煮沸透明性)に優れる。
【0027】
また、前記ポリエステル樹脂(b)がスルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し1〜30モル%含有する共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、前記ポリエステル樹脂(b)が、下記式(1)で表されるジオール成分を含むことがより好ましい。
【0029】
ここで、X
1、X
2:−(C
nH
2nO)
m−H n=2以上4以下、m=1以上15以下の整数を表す。
【0030】
ここで、本発明における煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量ΔHzとは、積層ポリエステルフィルムを100℃の沸騰水に浸漬させる煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量を表す。具体的には、煮沸処理試験後の積層ポリエステルフィルムのヘイズ値から煮沸処理試験前の積層ポリエステルフィルムのヘイズ値を差し引いた値が、煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量ΔHz(ΔHz=煮沸処理後のフィルムのヘイズ−煮沸処理前のフィルムヘイズ)を表す。詳細な測定方法は後述する。
【0031】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量ΔHzが3.0%未満であることが必要である。煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量ΔHzを3.0%未満とすることにより、高温高湿などの過酷な環境下で長期間使用した場合でも、透明性の悪化を抑制できる積層ポリエステルフィルムとすることができる。煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量ΔHzは、2.5%未満であることがより好ましい。
煮沸処理試験前後のフィルムヘイズ変化量ΔHz3.0%未満となる積層ポリエステルフィルムを得るための手法としては、例えば、樹脂組成物(α)に含有させるポリエステル樹脂(b)として、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し1〜30モル%含有する共重合ポリエステル樹脂を用いる方法、樹脂組成物(α)中に(a)〜(e)の各樹脂を用いる方法、(a)〜(e)の各樹脂の比率をある一定の範囲とする方法、またそれらの方法を組み合わせる方法などが挙げられる。この効果が得られる理由として、発明者らは次のようなメカニズムを推定している。発明者らは、これまでの検討から、樹脂層を有する積層ポリエステルフィルムについて、煮沸処理試験を行なうと樹脂層表面に微細なボイドが生成し、積層ポリエステルフィルムの透明性の悪化が発生(ヘイズが上昇)することを確認している。このボイドの生成量が増加すると、透明性はより悪化(ヘイズが上昇)するとともに、接着性が低下する。このことから、接着性に寄与する成分が、煮沸処理試験により流出すると考えている。樹脂組成物(α)に含有させるポリエステル樹脂(b)としてスルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し1〜30モル%含有する共重合ポリエステル樹脂を用いる方法や、樹脂組成物(α)中に(a)〜(e)の各樹脂を用いる方法を実施することにより、ポリエステル樹脂(b)と他の樹脂との相溶性が向上し、均一な分散構造を有する樹脂層を形成することが可能となる。また、特に架橋度の高い樹脂層を形成することができるため、煮沸処理試験において、成分が流出しにくくなる。その結果、煮沸処理試験を行なっても樹脂層表面に微細なボイドの形成が抑制され、ヘイズ変化量を大幅に抑制できるものと考えている。
【0032】
ここで、本発明における分散指数とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い樹脂層(X)の断面を観察したときに、特定の面積に観察される、大きさが40nm以上のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)を含む凝集体の平均個数を表す。倍率を2万倍とし、その視野面積(1200nm×500nm)に存在する大きさが40nm以上のアクリル・ウレタン共重合樹脂を含む凝集体の個数を観察し、その観察を10視野について実施し、1視野の面積(1200nm×500nm)あたりに観察される凝集体の平均個数の小数点1位の数を四捨五入した値を、分散指数とする。ここで、凝集体の大きさとは、凝集体の最大の径(つまり、凝集体の長径であり、凝集体中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する凝集体の場合も同様に、凝集体の最大の径を表す。
【0033】
分散指数は、0以上の整数を表す。本発明における分散指数は、5以下であることが必要であり、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
【0034】
樹脂層(X)の分散指数が5以下を満たすか否かを確認するためには、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた該層(X)の断面構造を観察することによって判定できる。
【0035】
まず、樹脂層(X)の断面観察について説明する。
【0036】
積層ポリエステルフィルムについて、RuO
4染色超薄膜切片法により該層(X)の断面の試料を作製する。得られた試料の断面を、加速電圧が100kV、倍率を2万倍で、観察される視野面積(1200nm×500nm)について観察すると、例えば
図1〜
図3のような構造を確認することができる。
【0037】
ここで樹脂層(X)の断面観察とは、
図4でいうX−Z面の断面観察を意味する。ここで、RuO
4による染色は、アクリル骨格を有する部分の染色が可能である。
例えば、樹脂層(X)がナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)と、イソシアネート化合物(c)およびカルボジイミド化合物(d)およびオキサゾリン化合物(e)のみからなる積層ポリエステルフィルムについて、同様に試料作製を行い、断面を観察した場合、RuO
4により染色されるアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)を含まないため、黒色部は観察されない。一方、樹脂層(X)がアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)のみからなる積層ポリエステルフィルムについて、同様に試料作成を行い、断面を観察した場合、RuO
4により染色されるアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)しか存在しないため、樹脂層(X)全体が黒色部となる。この結果から、黒色部は、アクリル・ウレタン樹脂(a)を含む部分と判断できる。
【0038】
該層(X)が、
図1のような海島構造を有している場合、
図2、
図3の構造に比べ、該層(X)の厚み方向における黒色部(例えば、アクリル・ウレタン共重合樹脂)の島の個数が多いため、分散指数が大きくなる。一方で、
図2、
図3の構造の場合は、黒色部の島の個数が少ないため、分散指数が小さくなる。
【0039】
前述の方法によって観察される分散指数が5を超える場合は、樹脂層(X)は均一な分散構造を形成していないと判断した。一方、分散指数が5以下となる場合、樹脂層(X)は均一な分散構造を形成していると判断した。
【0040】
樹脂層(X)が、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)と、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)と、イソシアネート化合物(c)と、カルボジイミド化合物(d)と、オキサゾリン化合物(e)を含む塗料組成物から形成される層であり、前記層(X)のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)を含む凝集体の分散指数が5以下となることで、本発明の積層ポリエステルフィルムは、透明性、ハードコート層を積層した際の虹彩状模様(干渉縞)の抑制(視認性)に優れ、かつ、ハードコート層との初期接着性、耐湿熱接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性に優れ、さらに驚くべきことに沸騰水へ浸漬した際にも優れた接着性(耐煮沸接着性)、沸騰水へ浸漬した際の透明性の悪化(白化)抑制(耐煮沸透明性)を発現することができる。
【0041】
この理由としては、次のように推定している。アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)が、
図2、
図3のような分散指数が5以下の均一な分散構造を形成すると、ハードコート層との接着性に優れるアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)が樹脂層(X)表面にも分布することとなる。また、ハードコート層との接着性に優れるイソシアネート化合物(c)と、カルボジイミド化合物(d)と、オキサゾリン化合物(e)も同様に、該層(X)表面にも分布することとなる。その結果、ハードコート層と該層(X)との相互作用が大きくなり、ハードコート層との接着力が大幅に向上することに加え、積層されたハードコート層を剥離する力がかかった場合に、面内における接着力が均一であるため、局所的に応力が集中することなく分散されることとなり、優れた耐湿熱接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性を発現することができる。また、樹脂層(X)中でアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)が均一な分散構造を形成すると、屈折率の低いアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)が局所的に集まることがなくなるため、該層(X)中での屈折率も均一となり、厚み方向に均一な屈折率を有する該層(X)を形成することができる。その結果、ハードコート層を積層した際に、虹彩状模様(干渉縞)の抑制(視認性)にも優れるために好ましい。
【0042】
一方、分散指数が5を超える場合は、相互の樹脂の分散不良により透明性の低下、耐湿熱接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性の低下が起こる。
【0043】
本発明では、樹脂層(X)において、分散指数が5以下となる均一な分散構造を形成するための手法としては、例えば、以下に記すように、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)が、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し、1〜30モル%含有する共重合ポリエステル樹脂を用い、塗料組成物中の(a)〜(e)の各樹脂の比率をある一定の範囲とすることで、樹脂層(X)を分散指数5以下の構造を形成することができる。
【0044】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、樹脂層(X)側の波長450nm以上650nm以下の波長範囲における分光反射率の最小値が、4.5%以上6.0%以下であることが好ましい。
【0045】
本発明では、樹脂層(X)側の波長450nm以上650nm以下の波長範囲における分光反射率の最小値が4.5%以上6.0%以下となる積層ポリエステルフィルムを形成するための手法としては、例えば、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)が、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し、1〜30モル%含有する共重合ポリエステル樹脂を用い、塗料組成物中の(a)〜(e)の各樹脂の比率をある一定の範囲とすることで、該層(X)側の波長450nm以上650nm以下の波長範囲における分光反射率の最小値が、4.5%以上6.0%以下である積層ポリエステルフィルムを形成することができる。
【0046】
この理由としては、例えば、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)が、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し、1〜30モル%含有する共重合ポリエステル樹脂を用いると、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)および他の樹脂との相溶性が向上し、均一な分散構造を形成することが可能となる。その結果、樹脂層(X)中での屈折率も均一となり、該樹脂層(X)側の波長450nm以上650nm以下の波長範囲における分光反射率の最小値が、4.5%以上6.0%以下である積層ポリエステルフィルムを形成することができる。この反射率の範囲とすることで、ハードコート層を積層した場合に、光学干渉の原理より、虹彩状模様(干渉縞)の抑制(視認性)が可能となるため好ましい。この理由について詳細を下記する。虹彩状模様の抑制は、樹脂層(X)の屈折率と膜厚を制御することで可能となる。樹脂層(X)の屈折率を、基材のポリエステルフィルムと、積層するハードコート層の屈折率の相乗平均の値の屈折率とした場合が、最も虹彩状模様を抑制することが出来る。例えば、ハードコート層がアクリル樹脂からなり、基材のポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートからなる場合、ハードコート層の屈折率は1.52、基材のポリエステルフィルムの屈折率は1.65となる。そのため、虹彩状模様を抑制するための最適な樹脂層(X)の屈折率は、それらの相乗平均となる1.58となる。塗膜の屈折率と波長450nm以上650nm以下の波長範囲における反射率には相関関係があるため、樹脂層(X)の波長450nm以上650nm以下の波長範囲における反射率が4.5%以上6.0%以下である積層ポリエステルフィルムとすることで虹彩状模様の抑制が可能となる。
【0047】
さらに、本発明の積層ポリエステルフィルムでは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)と、ポリエステル樹脂(b)の固形分重量比が、40/60〜5/95である塗料組成物を塗布して、樹脂層(X)を形成される積層ポリエステルフィルムであると、積層ポリエステルフィルムとハードコート層との接着性が良好となるため好ましい。また、前記塗料組成物中のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)と、ポリエステル樹脂(b)の固形分重量の合計を100重量部としたとき、イソシアネート化合物(c)を固形分重量で3〜20重量部、カルボジイミド化合物(d)を固形分重量で10〜40重量部、オキサゾリン化合物(e)を固形分重量で10〜40重量部含む塗料組成物を塗布して、樹脂層(X)を形成される積層ポリエステルフィルムであると、樹脂層(X)のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)の分散指数が5以下となる均一な分散構造を有する積層ポリエステルフィルムを形成することができ、積層ポリエステルフィルムの耐湿熱接着性や耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性が良好となるため好ましい。
【0048】
上記の結果、樹脂層は高い透明性、ハードコート層との接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性、さらにはハードコート層を積層した際に優れた干渉縞の抑制(視認性)を発現することが可能となる。
【0049】
以下、本発明の積層ポリエステルフィルムにて用いられるアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)、イソシアネート化合物(c)、カルボジイミド化合物(d)およびオキサゾリン化合物(e)について説明する。
【0050】
(1)アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)
本発明の積層ポリエステルフィルムにおけるアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とは、アクリル樹脂とウレタン樹脂が共重合された樹脂であれば特に限定されない。
【0051】
本発明で用いられるアクリル樹脂とは、後述するアクリルモノマーと必要に応じて他種モノマーを、乳化重合、懸濁重合などの公知のアクリル樹脂の重合方法によって共重合させることで得られる樹脂を表す。
【0052】
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)に用いるアクリルモノマーとしては、例えばアルキルアクリレート(アルキル基としてはメチル、エチル、n―プロピル、n―ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルなど)、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル、エチル、n―プロピル、n―ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルなど)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを挙げることができる。
【0053】
アクリル樹脂は、アクリルモノマーを1種または2種以上用いて重合させることにより得られるが、アクリルモノマー以外のモノマーを併用する場合、全モノマー中、アクリルモノマーの割合が50重量%以上、さらには70重量%以上となることが接着性の観点から好ましい。
【0054】
また、本発明で用いられるウレタン樹脂とは、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合などの公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させることで得られる樹脂を表す。
【0055】
ポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプトラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリンなどを挙げることができる。
【0056】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチレンプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
【0057】
樹脂層(X)を形成させる方法として後述するインラインコート法に適用する場合には、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)は、水に溶解、あるいは分散するものが好ましい。アクリル・ウレタン共重合樹脂の水への親和性を高める手法としては、例えばポリヒドロキシ化合物の1つとしてカルボン酸基含有ポリヒドロキシ化合物や水酸基含有カルボン酸を用いることが挙げられる。カルボン酸基含有ポリヒドロキシ化合物としては、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、トリメリット酸ビス(エチレングリコール)エステルなどを用いることができる。水酸基含有カルボン酸としては、例えば3−ヒドロキシプロピオン酸、γ―ヒドロキシ酪酸、p−(2−ヒドロキシエチル)安息香酸、リンゴ酸などを用いることができる。
【0058】
また、アクリル・ウレタン共重合樹脂の水への親和性を高めるその他の手法として、ウレタン樹脂にスルホン酸塩基を導入する手法が挙げられる。例えば、ポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネート化合物および鎖延長剤からプレポリマーを生成させ、これに末端イソシアネート基と反応しうるアミノ基または水酸基とスルホン酸塩基または硫酸半エステル塩基とを分子内に有する化合物を添加、反応させ、最終的に分子内にスルホン酸塩基または硫酸半エステル塩基を有するウレタン樹脂を得る方法がある。末端イソシアネート基と反応しうるアミノ基または水酸基とスルホン酸塩基を有する化合物としては、例えば、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−2−スルホン酸、β−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム、脂肪族第1級アミン化合物のプロパンサルトン、ブタンサルトン付加生成物などを用いることができ、好ましくは脂肪族第1級アミン化合物のプロパンサルトン付加物である。
【0059】
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)は、アクリル樹脂をスキン層とし、ウレタン樹脂をコア層とするアクリル・ウレタン共重合樹脂であると、ハードコート層との接着性に優れるために好ましい。中でもウレタン樹脂からなるコア層が、完全にアクリル樹脂からなるスキン層によって包み込まれた状態ではなく、コア層が露出した形態を有しているものが好ましい。該コア層がスキン層によって完全に包み込まれた状態の場合、樹脂層(X)がアクリル樹脂の特徴のみを有する表面状態となり、コア層由来のウレタン樹脂の特徴を有する表面状態を得ることができにくくなるためハードコート層との接着性の点では好ましくない。一方、該コア層がスキン層によって包み込まれていない状態、すなわち、両者が分離している状態は、単にアクリル樹脂とウレタン樹脂を混合した状態である。すると、一般的には樹脂の表面エネルギーが小さいアクリル樹脂が樹脂層(X)の空気側である表面に選択的に配位する。その結果、樹脂層(X)の表面はアクリル樹脂の特徴のみを有するため、ハードコート層との接着性の点では好ましくない。
【0060】
コア・スキン構造を有するアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)を得る一つの例を示す。まず重合体樹脂のコア部分を形成するウレタン樹脂モノマー、乳化剤、重合開始剤および水系溶媒を用いて第一段乳化重合を行う。次に第一段乳化重合が実質的に終了した後、スキン部分を形成するアクリルモノマーと重合開始剤を添加し、第二段乳化重合を行う。この二段階反応によって、コア・スキン構造を有するアクリル・ウレタン共重合樹脂を得ることができる。この際、生成する共重合樹脂をコア層とスキン構造の2層構造とするためには、第二段乳化重合において、乳化剤を新しいコアを形成しない程度の量にとどめ、第一段乳化重合で形成されたウレタン樹脂からなるコア表面において重合が進行するようにする方法が有用である。
【0061】
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)の製造方法は次の方法が挙げられるが、この方法により得られる物に限定して解釈されるべきものではない。例えばウレタン樹脂の水分散液中に少量の分散剤と重合開始剤を添加し、一定温度に保ちながらアクリルモノマーを攪拌しながら徐々に添加する。その後必要に応じて温度を上昇させ一定時間反応を続け、アクリルモノマーの重合を完結させ、アクリル・ウレタン共重合樹脂の水分散体を得る方法がある。
【0062】
塗料組成物中のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)の含有量は、塗料組成物中の樹脂の固形分の全重量に対して、1重量%以上25重量%以下が好ましく、3重量%以上20重量%以下であることが更に好ましい。特に好ましくは5重量%以上10重量%以下である。
【0063】
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)中のアクリル樹脂のガラス転移温度(ガラス転移温度は以降「Tg」と称する)は20℃以上が好ましく、40℃以上であることがより好ましい。アクリル樹脂のTgが20℃以上であると、室温保管時のブロッキング性が向上するので好ましい。
【0064】
また、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)中のアクリル樹脂とウレタン樹脂の割合(アクリル樹脂/ウレタン樹脂)は、重量比で、10/90〜70/30が好ましく、20/80〜50/50であることが更に好ましい。この範囲外となると、積層ポリエステルフィルムとハードコート層との接着性が悪化することがある。アクリル樹脂とウレタン樹脂の重量比は、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)の製造時の原料の配合量を調整することによって所望の値とすることができる。
【0065】
さらに、塗料組成物中におけるアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)の固形分重量比は、40/60〜5/95であると、積層ポリエステルフィルムとハードコート層との接着性が良好となるため好ましい。より好ましくは、30/70〜10/90である。
【0066】
(2)ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)
本発明におけるナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とするポリエステル樹脂中にナフタレン骨格を有する樹脂である。
【0067】
ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂を得る方法としては、例えば、ナフタレン環に置換基として水酸基を2つ以上導入したジオール成分あるいは多価水酸基成分、あるいはカルボン酸基またはカルボン酸のエステル形成性誘導体を2つ以上導入したジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分をポリエステル樹脂原料として用いる方法がある。ポリエステル樹脂の安定性の観点から、ナフタレン環にカルボン酸基を2つ導入したジカルボン酸成分をポリエステル樹脂原料として用いてナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂を得ることが好ましい。カルボン酸基を2つ導入したナフタレン骨格としては、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、および2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、また、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジエチル等の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体が挙げられる。この中でも、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体が、屈折率、他の樹脂との分散性の点から特に好ましい。
【0068】
このようなナフタレン骨格を有するジカルボン酸成分が、全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上を占めるポリエステルを用いることが視認性を向上させることができるため好ましい。
【0069】
また、ナフタレン骨格を含有するポリエステル樹脂(b)の構成成分として、ナフタレン骨格を有しない、例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を併用してもよい。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4、4’−ジフェニルカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどが挙げられる。
【0070】
さらに、本発明におけるポリエステル樹脂(b)は、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し1〜30モル%有する共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。1モル%未満の場合、ポリエステル樹脂が水溶性を示さなくなる場合があり、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)、イソシアネート化合物(c)、カルボジイミド化合物(d)およびオキサゾリン化合物(e)との相溶性も低下するため、樹脂層(X)の均一性、透明性が低下する場合がある。また、30モル%を超える場合には、他の樹脂との分散性が低下し、透明性や、耐湿熱接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性に劣りやすくなる。
【0071】
スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、スルホフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホテレフタル酸のアルカリ金属塩、スルホフタル酸のアルカリ土類金属塩、スルホイソフタル酸のアルカリ土類金属塩、スルホテレフタル酸のアルカリ土類金属塩、スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホ−2,3−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホ−1,4−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩、スルホ−2,3−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩、スルホ−1,4−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩などのスルホン酸塩基を有する化合物が挙げられる。
【0072】
また、上記以外のスルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、スルホフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホテレフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホフタル酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホイソフタル酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホテレフタル酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホ−2,3−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホ−1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホ−2,3−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホ−1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ土類金属塩などのスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の塩が挙げられる。
【0073】
これらの中ではスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のアルカリ土類金属塩、スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が特に好ましい。
【0074】
前記のスルホフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩の具体例としては、5−スルホフタル酸ジメチルリチウム、5−スルホフタル酸ジメチルナトリウム、5−スルホフタル酸ジメチルカリウム、5−スルホフタル酸ジメチルセシウムが挙げられ、前記のスルホフタル酸ジメチルのアルカリ土類金属塩の具体例としては、ビス(5−スルホフタル酸ジメチル)マグネシウム、ビス(5−スルホフタル酸ジメチル)カルシウム、ビス(5−スルホフタル酸ジメチル)バリウムなどが挙げられる。具体的な例示を省略するが、スルホイソフタル酸ジメチルやスルホテレフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩についても同様である。
【0075】
さらに、本発明におけるポリエステル樹脂(b)は、ポリエステル樹脂のジオール成分として下記式(1)で表されるジオール成分を含むと、他の樹脂との分散性が向上し、また視認性が向上するため好ましい。下記式(1)は、屈折率の高いS元素を有するビスフェノールS骨格を有しているため、ポリエステル樹脂(b)の屈折率を高くすることができる。一方、式(1)と類似の構造を有するビスフェノールAをはじめとするビスフェノール化合物をジオール成分として用いても、式(1)で表されるジオール成分を用いた時に比べて、他の樹脂との分散性向上効果や、視認性向上効果は劣る。
【0077】
ここで、X
1、X
2:−(C
nH
2nO)
m−H n=2以上4以下、m=1以上15以下の整数を表す。
ここで、X
1、X
2を構成するオキシアルキレン単位は炭素数2以上4以下のもので、これにはオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位及び/またはオキシテトラメチレン単位が含まれるが、オキシエチレン単位及び/またはオキシプロピレン単位(n=2または3)であることが好ましい。また、オキシアルキレン基の繰り返し数(m)は、1以上15以下とすることが好ましくが、1以上4以下とするのがより好ましく、1または2とするのがさらに好ましい。
【0078】
本発明におけるポリエステル樹脂(b)は、式(1)で表されるジオール成分をポリエステルの全ジオール成分に対し、5モル%以上50モル%以下含有する共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。より好ましくは10モル%以上40モル%以下含有する共重合ポリエステル樹脂である。
【0079】
また、ポリエステル樹脂(b)は、上記式(1)以外のジオール成分として、下記式(2)で示されるジオール化合物を、少なくとも1種含むことが好ましい。
HO−X
3−H ・・・式(2)
(ただし、X
3:−(C
xH
2xO)
y−、x=2以上10以下、y=1以上4以下の整数を表す。)
炭素数2以上10以下(x=2以上10以下)のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどが上げられるが、なかでも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(x=2または3)が好ましい。またオキシアルキレン基の繰り返し数であるyは1以上4以下であることが好ましく、1以上3以下がより好ましい。本発明におけるポリエステル樹脂(b)は、式(2)で表されるジオール成分をポリエステルの全ジオール成分に対し、5モル%以上50モル%以下含有する共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。より好ましくは10モル%以上40モル%以下含有する共重合ポリエステル樹脂である。このようなオキシアルキレン基を有することでポリエステル樹脂(b)の親水性が向上し、他の樹脂との分散性を向上することができるためより好ましい。
【0080】
また、本発明に用いるポリエステル樹脂(b)の固有粘度は、特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上2.0dl/g以下であることが好ましく、0.4dl/g以上1.0dl/g以下であることがより好ましい。本発明における固有粘度は、ポリエステル樹脂0.3gをフェノール/テトラクロロエタン=40/60(重量比)の混合溶媒25ml中に溶解し、キャノンフェンス型粘度計を用いて35℃で測定した値である。
【0081】
さらに、本発明にかかるポリエステル樹脂(b)は、屈折率が1.58以上、好ましくは1.61以上1.65以下であることが好ましい。本発明において屈折率は、ミニホットプレスを用いて、ポリエステル樹脂を厚さ0.5mmの樹脂プレートに成形し、アッベ屈折率計を用いて25℃で測定した値である。測定には中間液としてモノブロモナフタレンを用いる。
【0082】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、該ポリエステル樹脂(b)は、以下の製造方法によって製造することができる。例えば、ナフタレン骨格を有するジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸ジメチルと、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分として、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムと、式(1)で表されるジオール成分として、ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物と、式(2)で表されるジオール成分として、エチレングリコールとを、公知の重合触媒の存在下でエステル交換反応させた後、高温高真空化に低分子化合物を留去しながら重縮合反応させるエステル交換−重縮合反応によって製造する方法、ナフタレン骨格を有するジカルボン酸成分としてのナフタレンジカルボン酸ジメチルと、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分としての5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムと、式(1)で表されるジオール成分としてのビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物と、式(2)で表されるジオール成分としてのエチレングリコールとを、公知の重合触媒の存在下でエステル交換反応させた後、高温高真空下に低分子量化合物を留去しながら重縮合反応及び解重合反応させるエステル交換−重縮合−解重合反応によって製造する方法、ナフタレン骨格を有するジカルボン酸成分としてのナフタレンジカルボン酸ジメチルと、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分としての5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムと、式(1)で表されるジオール成分としてのビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物と、式(2)で表されるジオール成分としてのエチレングリコールとを、公知の重合触媒の存在下で高温高真空下に低分子量化合物を留去しながら重縮合反応によって製造する方法などが挙げられる。
【0083】
この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることができる。
【0084】
ポリエステル樹脂(b)のTgは、0℃以上130℃以下であることが好ましく、より好ましくは10〜85℃である。Tgが0℃未満では、例えば、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性が劣ったり、樹脂層(X)同士が固着するブロッキング現象が発生したりし、逆に130℃を超える場合、樹脂の安定性や水分散性が劣る場合がある。
【0085】
(3)イソシアネート化合物(c)
本発明におけるイソシアネート化合物(c)とは、次に述べるイソシアネート化合物(c)、または次に述べるイソシアネート化合物(c)に由来する構造を含む化合物を意味する。
【0086】
イソシアネート化合物(c)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ビトリレン−4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどを用いることができる。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のイソシアネート基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、該層(X)の強靭性が高まるため、好ましく用いることができる。
【0087】
樹脂層(X)を形成させる方法として後述するインラインコート法に適用する場合、イソシアネート化合物(c)は水分散体であることが好ましい。特に、塗料組成物のポットライフの点から、イソシアネート基をブロック剤などでマスクしたブロックイソシアネート系化合物などが特に好ましい。ブロック剤の架橋反応としては、塗布後の乾燥工程の熱によって、該ブロック剤が揮散し、イソシアネート基が露出し、架橋反応を起こすシステムが知られている。また、該イソシアネート基は単官能タイプでも多官能タイプでもよいが、多官能タイプのブロックポリイソシアネート系化合物のほうが、該層(X)の架橋密度が向上し、ハードコート層との耐湿熱接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性が優れるため好ましい。
【0088】
ブロックイソシアネート基を2基以上有する低分子または高分子化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート3モル付加物、ポリビニルイソシアネート、ビニルイソシアネート共重合体、ポリウレタン末端ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートのメチルエチルケトンオキシムブロック体、ヘキサメチレンジイソシアネートの次亜硫酸ソーダブロック体、ポリウレタン末端ジイソシアネートのメチルエチルケトンオキシムブロック体、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート3モル付加物へのフェノールブロック体などを用いることができる。
【0089】
塗料組成物中のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)の合計を100重量部としたとき、イソシアネート化合物(c)を3重量部以上20重量部以下含むことが好ましく、より好ましくは4重量部以上18重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上16重量部以下である。
【0090】
イソシアネート化合物(c)の含有量を上記範囲とし、かつ、カルボジイミド化合物(d)、およびオキサゾリン化合物(e)の含有量の合計を所定の範囲とすることで、樹脂層(X)は、高い透明性、湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性、優れた視認性を発現することができる。塗料組成物中のイソシアネート化合物(c)の含有量が3重量部未満の場合、ハードコート層との接着性に劣る場合がある。また、20重量部を超えると、積層ポリエステルフィルムの透明性が悪化するほか、樹脂層の屈折率が低下し、ハードコート層を積層した際の視認性に劣る場合がある。
【0091】
(4)カルボジイミド化合物(d)
本発明におけるカルボジイミド化合物(d)としては、例えば、下記一般式(3)で表されるカルボジイミド構造を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されない。耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性などの点で、1分子中に2つ以上を有するポリカルボジイミド化合物が特に好ましい。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のカルボジイミド基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、本発明の該層(X)をポリエステルフィルム上に設け、積層ポリエステルフィルムとしたときに、該層(X)の可撓性や強靭性が高まり好ましく用いることができる。
-N=C=N- 式(3)
ポリカルボジイミド化合物の製造は公知の技術を適用することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物を触媒存在下で重縮合することにより得られる。該ポリカルボジイミド化合物の出発原料であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートなどを用いることができ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどを用いることができる。更に本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加しても用いてもよい。
【0092】
カルボジイミド化合物(d)の含有量は、塗料組成物中の(a)および(b)の含有量の合計を100重量部としたとき、10〜40重量部であることが好ましい。10〜40重量部の範囲であると、本発明の樹脂層(X)をポリエステルフィルム上に設け、積層ポリエステルフィルムとしたときに、高い耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性を積層ポリエステルフィルムに付与することができる。
【0093】
また、カルボジイミド化合物(d)とオキサゾリン化合物(e)を併用すると、それぞれ単独では達成し得ない極めて良好な耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性を積層ポリエステルフィルムに付与させることができる。
【0094】
(5)オキサゾリン化合物(e)
本発明におけるオキサゾリン化合物(e)としては、オキサゾリン基またはオキサジン基を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーを単独で重合、もしくは他のモノマーとともに重合した高分子型が好ましい。高分子型のオキサゾリン化合物を用いることで、本発明の該層(X)を熱可塑性樹脂フィルム上に設け、積層ポリエステルフィルムとしたときに、該層(X)の可撓性や強靭性、耐水性、耐溶剤性が高まるためである。
【0095】
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンを挙げることができる。これらは、1種で使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)クリル酸エステル類やアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類、スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0096】
オキサゾリン化合物(e)の含有量は、塗料組成物中の(a)および(b)の含有量を100重量部としたとき、10〜40重量部であることが好ましい。10〜40重量部の範囲であると、本発明の樹脂層(X)をポリエステルフィルム上に設け、積層ポリエステルフィルムとしたときに、高い耐湿熱接着性や耐UV接着性、耐煮沸接着性の向上を積層ポリエステルフィルムに付与することができる。
【0097】
(6)メラミン化合物(f)
本発明の樹脂層(X)は、さらにメラミン化合物(f)を含有している塗料組成物から形成される層であってもよい。
【0098】
メラミン化合物(f)としては、特に限定されるものではないが、親水化の点でメラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが挙げられる。
【0099】
メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
【0100】
本発明の樹脂層(X)が、メラミン化合物(f)を含有している塗料組成物から形成される層であると、接着性を良好に出来るため好ましいが、塗料組成物中にメラミン化合物を多く含むと、生産工程においてメラミン化合物の揮発による工程汚染が問題となったり、メラミン化合物が架橋反応によって人体に有害なホルムアルデヒドを生成するという問題が生じる。そのため、メラミン化合物(f)の含有量は、塗料組成物中の(a)および(b)の含有量を100重量部としたとき、30重量部以下であることが好ましい。より好ましくは、5重量部以上30重量部以下であり、特に好ましくは10重量部以上25重量部以下である。
【0101】
メラミン化合物(f)を5重量部以上30重量部以下、用いることで本発明の該層(x)をポリエステルフィルム上に設け、積層ポリエステルフィルムとしたときに、積層ポリエステルフィルムとハードコート層との接着性をより良好なものにすることができる。
【0102】
(7)樹脂層(X)の形成方法
本発明では、上述したアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)、ポリエステル樹脂(b)、イソシアネート化合物(c)、カルボジイミド化合物(d)、オキサゾリン化合物(e)、並びに必要に応じてメラミン化合物(f)や溶媒などを含有する塗料組成物をポリエステルフィルム上へ塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥させることによって、ポリエステルフィルム上に樹脂層(X)を形成することができる。
【0103】
また、本発明では、溶媒として水系溶媒(g)を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層(X)を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
【0104】
ここで、水系溶媒(g)とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層を形成できる。また、環境負荷の点においても優れている。
【0105】
上記塗料組成物のポリエステルフィルム上への塗布方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができるが、好ましくはインラインコート法である。
【0106】
インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(以降「Aフィルム」と称する)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(以降「Bフィルム」と称する)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(以降「Cフィルム」と称する)の何れかのフィルムに塗布する。
【0107】
本発明では、結晶配向が完了する前の上記Aフィルム、Bフィルム、またはCフィルムの何れかのポリエステルフィルムに、塗料組成物を塗布し、その後、該ポリエステルフィルムを一軸又は二軸に延伸し、溶媒の沸点より高い温度で熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに樹脂層(X)を設ける方法を採用することが好ましい。かかる方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜と、塗料組成物の塗布乾燥(すなわち、樹脂層(X)の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために樹脂層(X)の厚みをより薄くすることが容易である。樹脂層(X)の厚みは、視認性の観点から光学干渉を打ち消すことができる厚みであることが好ましく、50nm以上200nm以下、より好ましくは60nm以上150nm以下、さらに好ましくは70nm以上130nm以下である。
【0108】
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、塗料組成物を塗布し、その後、幅方向に延伸し、熱処理する方法が優れている。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による樹脂層(X)の欠陥や亀裂が発生しづらく、透明性や平滑性に優れた樹脂層(X)を形成できるためである。
【0109】
一方、オフラインコート法とは、上記Aフィルムを一軸又は二軸に延伸し、熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させた後のフィルム、またはAフィルムに、フィルムの製膜工程とは別工程で塗料組成物を塗布する方法である。
【0110】
本発明において樹脂層(X)は、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが好ましい。
【0111】
よって、本発明において好ましい樹脂層(X)の形成方法は、水系溶媒(g)を用いた水系塗料組成物を、ポリエステルフィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、乾燥することによって形成する方法である。またより好ましくは、一軸延伸後のBフィルムに塗料組成物をインラインコートする方法である。さらに塗料組成物の固形分濃度は5重量%以下であることが好ましい。固形分濃度が5重量%以下とすることにより、塗料組成物に良好な塗布性を付与でき、透明且つ均一な樹脂層を設けた積層ポリエステルフィルムを製造することができる。
【0112】
(8)水系溶媒(g)を用いた塗料組成物の調整方法
水系溶媒(g)を用いた塗料組成物は、必要に応じて水分散化または水溶化したアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)、ポリエステル樹脂(b)、イソシアネート化合物(c)、カルボジイミド化合物(d)、オキサゾリン化合物(e)の水系化合物および水系溶媒(g)を任意の順番で所望の固形分重量比で混合、撹拌することで作製することができる。
【0113】
次いで、必要に応じてメラミン化合物(f)を上記塗料組成物に任意の順番で所望の固形分重量比で混合、撹拌することで作製することができる。
混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
【0114】
また必要に応じて易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤などの各種添加剤を、塗料組成物により設けた樹脂層の特性を悪化させない程度に添加してもよい。
【0115】
(9)塗布方式
ポリエステルフィルムへの塗料組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
【0116】
(10)積層ポリエステルフィルム製造方法
次に、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエステルフィルムにポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)フィルムを用いた場合を例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。まず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した本発明の塗料組成物を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、塗料組成物のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、塗料組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
【0117】
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗料組成物の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1〜5.0倍延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)へ導き1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。
【0118】
この熱処理工程(熱固定工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層ポリエステルフィルムは透明且つハードコート層との接着性、耐湿熱接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性、ハードコート層を積層させた際の視認性に優れた積層ポリエステルフィルムとなる。
【0119】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
(1)透明性の評価方法
透明性は、初期ヘイズ(%)により評価した。ヘイズの測定は、常態(温度23℃、相対湿度65%)において、積層ポリエステルフィルムを1時間放置した後、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000]を用いて行った。3回測定した平均値を、その積層ポリエステルフィルムのヘイズとした。透明性は、ヘイズの値により、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、SとAのものは良好とした。
S:1.0%未満
A:1.0%以上2.0%未満
B:2.0%以上3.0%未満
C:3.0%以上。
【0120】
(2)ハードコート層との接着性の評価方法
(2−1)初期接着性の評価方法
積層ポリエステルフィルムの樹脂層(X)の表面上に、下記の割合で混合したUV硬化樹脂を、バーコーターを用いて硬化後のUV硬化樹脂層の膜厚が2μmとなるように均一に塗布した。
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート :60重量部
(日本化薬(株)製“カヤラッド”(登録商標)DPHA)
・ペンタエリスエリトールトリアクリレート :40重量部
(日本化薬(株)製“カヤラッド” (登録商標)PETA)
・光重合開始剤(長瀬産業(株)社製“イルガキュア”(登録商標)184):3重量部
・メチルエチルケトン :100重量部
次いで、UV硬化樹脂層の表面から9cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製 H03−L31)で、積算照射強度が300mJ/cm
2となるように紫外線を照射し、硬化させ、積層ポリエステルフィルム上にハードコート層が積層されたハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。得られたハードコート積層ポリエステルフィルムのハードコート積層面に、1mm
2のクロスカットを100個入れ、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製CT405AP)を貼り付け、ハンドローラーで1.5kg/cm
2の荷重で押し付けた後、ハードコート積層ポリエステルフィルムに対して90度方向に急速に剥離した。接着性は残存したクロスカットの個数により、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、SとAのものは良好とした。
S:100個残存
A:80〜99個残存
B:50〜79個残存
C:0〜50個未満残存。
【0121】
(2−2)湿熱接着性の評価方法
(2−1)と同様の方法でハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。得られたハードコート積層ポリエステルフィルムを、湿度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽中に240時間放置し、その後常態(23℃、相対湿度65%)で1時間乾燥させ、湿熱接着試験用ハードコート積層サンプルを得た。得られた湿熱接着試験用ハードコート積層サンプルについて、(2−1)と同様の方法で接着性評価を行い、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、SとAのものは良好とした。
【0122】
(2−3)煮沸接着性の評価方法
上記UV硬化樹脂を(2−1)の評価と同様に積層ポリエステルフィルムの樹脂層表面に塗布、硬化させ耐煮沸接着性評価サンプルを得た。次に耐煮沸接着性評価サンプルを10cm×10cmの大きさに切り出し、それぞれクリップに固定し吊り下げた状態にした後、ビーカーに準備した純水からなる沸騰した湯(100℃)の中に積層ポリエステルフィルム全面が浸漬する状態で18時間入れた。その後、耐煮沸接着性評価サンプルを取り出し常態(23℃、相対湿度65%)にて1時間乾燥させ、煮沸接着性試験用ハードコート積層サンプルを得た。得られた煮沸接着性試験用ハードコート積層サンプルについて、(2−1)と同様の方法で接着性評価を行い、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、SとAのものは良好とした。
【0123】
(2−4)耐UV接着性の評価方法
UV硬化樹脂を(2−1)の評価と同様に積層ポリエステルフィルムの樹脂層(X)の表面に塗布、硬化させ耐UV接着性試験用サンプルを得た。その後(2−1)と同様に積算照射強度が500mJ/cm
2となるように紫外線を照射し、合計の積算照射強度が1500mJ/cm
2となるまで合計3回繰り返した。得られた耐UV接着性試験用ハードコート積層サンプルについて、(2−1)と同様の方法で接着性評価を行い、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、SとAのものは良好とした。
【0124】
(3)視認性(干渉縞)の評価方法
(2−1)と同様の方法にて、積層ポリエステルフィルム上に厚み2μmのハードコート層が積層されたハードコートフィルムを得た。次いで、得られたハードコートフィルムから、8cm(ハードコートフィルム幅方向)×10cm(ハードコートフィルム長手方向)の大きさのサンプルを切り出し、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニールテープNo.200―50−21:黒)を、気泡を噛み込まないように張り合わせた。
【0125】
このサンプルを暗室にて3波長蛍光灯(松下電器産業(株)製 3波長形昼白色(F・L 15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により干渉斑の程度を観察し、以下の評価を行った。A以上のものを良好とした。
S:干渉斑がほぼ見えない
A:干渉斑がわずかに見える
B:弱い干渉斑が見える
C:干渉斑が強い。
【0126】
(4)樹脂層(X)の膜厚の評価方法
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、積層ポリエステルフィルム上の樹脂層(X)の厚みを測定した。樹脂層(X)の厚みは、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から樹脂層の厚みを読み取った。20点の樹脂層厚みを測定し、その平均値を樹脂層(X)の膜厚(nm)とした。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)。
【0127】
(5)反射率の評価方法
A4カットサイズに裁断したフィルムシートを縦横それぞれ3分割し、合計9点を測定サンプルとして用いた。長辺側を長手方向とした。分光反射率の測定は、測定面(該樹脂層(X))の裏面に50mm幅の黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を、気泡を噛みこまないようにサンプルとテープの長手方向を合わせて貼り合わせた後、4cm角のサンプル片に切り出し、分光光度計(島津製作所(株)製 UV2450)に入射角5°での分光反射率を測定した。サンプルを測定器にセットする方向は、測定器の正面に向かって前後の方向にサンプルの長手方向を合わせた。なお反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl
2O
3板を用いた。反射率は、波長550nmにおける樹脂層(X)側の反射率を求めた。なお、測定値には、10点の平均値を用いた。
【0128】
(6)分散指数の評価方法(透過型電子顕微鏡(TEM)の断面写真による判定)
積層ポリエステルフィルムについて、RuO
4染色超薄膜切片法により樹脂層(X)表面の試料を作製する。得られた試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて下記条件で断面写真を得た。得られた断面写真において、その視野面積(1200nm×500nm)に観察される大きさが40nm以上のアクリル・ウレタン共重合樹脂(a)を含む凝集体の個数を観察し、その観察を10視野について実施し、1視野(1200nm×500nm)あたりに観察される凝集体の平均個数の小数点第1位の数を四捨五入し、分散指数とした。
【0129】
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・倍率 :2万倍。
【0130】
(7)耐煮沸透明性の評価方法
耐煮沸透明性は、沸騰水への積層ポリエステルフィルム浸漬前後のヘイズ変化量(ΔHz)(%)により評価した。積層ポリエステルフィルムを10cm×10cmの大きさに切り出し、クリップに固定し吊り下げた状態にした後、ビーカーに準備した純水からなる沸騰した湯(100℃)の中に積層ポリエステルフィルム全面が浸漬する状態で1時間入れた。その後、積層ポリエステルフィルムを取り出し常態(23℃、相対湿度65%)にて5時間乾燥させ、耐煮沸透明性試験用サンプルを得た。ここで、ポリエステルフィルムの片面にのみ樹脂層(X)を含有するサンプルの場合は、樹脂層のある面とは反対側の面にある側のポリエステルフィルムの面を、アセトンを含ませた不織布(小津産業(株)製、ハイゼガーゼNT−4)にて拭き取り、さらに常態で1時間放置乾燥させ、樹脂層とは反対面にあるポリエステルフィルム面から析出したオリゴマーを除去した。
得られた耐煮沸透明性試験用サンプルについて、(1)と同様の方法で透明性評価を行い、得られた値を煮沸試験処理後ヘイズ(%)とした。この値から、煮沸試験処理前ヘイズ(%)(=初期ヘイズ)を差し引いた値を煮沸試験処理前後のフィルムヘイズ変化量ΔHz(ΔHz=煮沸試験処理後ヘイズ−煮沸試験処理前ヘイズ)として、耐煮沸透明性評価を行い、4段階評価を行なった。
Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、SとAのものは良好とした。
S:1.5%未満
A:1.5%以上3.0%未満
B:3.0%以上4.5%未満
C:4.5%以上。
【実施例】
【0131】
本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
また、アクリル・ウレタン共重合樹脂、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂の合成法を参考例に示す。
【0132】
(参考例1)
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a−1)の水分散体の調整
窒素ガス雰囲気下かつ常温(25℃)下で、容器1に、ポリエステル系ウレタン樹脂(DIC(株)製“ハイドラン”(登録商標)AP−40(F))66重量部、メタクリル酸メチル35重量部、アクリル酸エチル29重量部、N−メチロールアクリルアミド2重量部を仕込み、溶液1を得た。次いで乳化剤(ADEKA(株)製“リアソープ”ER−30)を7重量部加え、更に溶液の固形分が50重量%となるように水を添加し、溶液2を得た。常温(25℃)下で、容器2に、水30重量部を添加し、60℃に昇温した。その後攪拌しながら、溶液2を3時間かけて、容器2へ連続滴下せしめた。更に同時に5重量%過硫酸カリウム水溶液3重量部を、容器2へ連続滴下せしめた。滴下終了後、更に2時間攪拌した後、25℃まで冷却し、反応を終了させ、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a−1)水分散体を得た。なお、得られたアクリル・ウレタン共重合樹脂(a−1)水分散体の固形分濃度は30重量%である。
【0133】
以下参考例2〜13において、ジカルボン酸成分、ジオール成分の組成比率は、全ジカルボン酸成分、全ジオール成分を100モル%としたときの値を示す。また、参考例2〜13において、全ジカルボン酸成分と全ジオール成分のモル比は、1:1とした。
【0134】
(参考例2)
ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b−1)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 88モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
1,3−プロパンジオール : 14モル%。
【0135】
(参考例3)
ナフタレン骨格を有し、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分を有するポリエステル樹脂(b−2)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 99モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 1モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
1,3−プロパンジオール : 14モル%。
【0136】
(参考例4)
ナフタレン骨格を有し、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分を有するポリエステル樹脂(b−3)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 85モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 15モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
1,3−プロパンジオール : 14モル%。
【0137】
(参考例5)
ナフタレン骨格を有し、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分を有するポリエステル樹脂(b−4)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸 : 85モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 15モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
1,3−プロパンジオール : 14モル%。
【0138】
(参考例6)
ナフタレン骨格を有し、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分を有するポリエステル樹脂(b−5)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 65モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 35モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
1,8−オクタンジオール : 14モル%。
【0139】
(参考例7)
ナフタレン骨格を有し、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分を有しないポリエステル樹脂(b−6)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 88モル%
トリメリット酸 : 12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
エチレングリコール : 14モル%。
【0140】
(参考例8)
ナフタレン骨格を有し、さらにビスフェノールS骨格を有するポリエステル樹脂(b−7)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 88モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してプロピレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
エチレングリコール : 14モル%。
【0141】
(参考例9)
ナフタレン骨格を有し、さらにビスフェノールS骨格を有するエステル樹脂(b−8)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 88モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してプロピレンオキサイド10モルを付加した化合物: 50モル%
エチレングリコール : 50モル%。
【0142】
(参考例10)
ナフタレン骨格を有し、さらにビスフェノールA骨格を有するポリエステル樹脂(b−9)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 85モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルリチウム : 15モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールA1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
エチレングリコール : 14モル%。
【0143】
(参考例11)
ナフタレン骨格を有し、ビスフェノールA骨格を有するポリエステル樹脂(b−10)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル : 85モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 15モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールA1モルに対してプロピレンオキサイド10モルを付加した化合物: 86モル%
エチレングリコール : 14モル%。
【0144】
(参考例12)
ナフタレン骨格を有しないポリエステル樹脂(b−11)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
イソフタル酸 : 88モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物: 86モル%
エチレングリコール : 14モル%。
【0145】
(参考例13)
ナフタレン骨格を有しないポリエステル樹脂(b−12)の水分散体の調整
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
テレフタル酸 : 88モル%
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム : 12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物 : 86モル%
エチレングリコール : 14モル%。
【0146】
(実施例1)
塗料組成物を次の通り調整した。
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)の水分散体:山南合成化学(株)製“サンナロン”WG−658(固形分濃度30重量%)
ポリエステル樹脂(b)の水分散体:ポリエステル樹脂(b−1)(固形分濃度15重量%)
イソシアネート化合物(c)の水分散体:第一工業製薬(株)製“エラストロン”(登録商標)E−37(固形分濃度28重量%)
オキサゾリン化合物(d)の水分散体:(株)日本触媒製“エポクロス”(登録商標)WS−500(固形分濃度40重量%)
カルボジイミド化合物(e)の水分散体:日清紡ケミカル(株)“カルボジライト”(登録商標)V−04(固形分濃度40重量%)
水系溶媒(G):純水
上記した(a)〜(e)を固形分重量比で、(a)/(b)/(c)/(d)/(e)=15/85/10/30/30となるように、かつ塗料組成物の固形分濃度が8.5重量%となるように(g)を混合し濃度調整した。このときの塗料組成物中の樹脂組成を表1−1に示した。
【0147】
次いで、実質的に粒子を含有しないPETペレット(固有粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施した。
【0148】
次に水系溶媒に濃度調整した塗料組成物を一軸延伸フィルムのコロナ放電処理面にバーコートを用いて塗布した。水系溶媒に濃度調整した塗料組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃とした後、引き続いてラジエーションヒーターを用いて雰囲気温度を110℃とし、次いで雰囲気温度を90℃として、水系溶媒に濃度調整した塗料組成物を乾燥させ、樹脂層(X)を形成せしめた。引き続き連続的に120℃の加熱ゾーン(延伸ゾーン)で幅方向に3.5倍延伸し、続いて230℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)で20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了した積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムにおいてPETフィルムの厚みは100μmであった。
【0149】
得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。ヘイズが低く透明性に優れ、ハードコート層との初期接着性、耐湿熱接着性に優れ、さらに耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性、視認性が良好であった。
【0150】
(実施例2〜3)
下記のメラミン化合物(f)を用い、(f)の固形分重量比を表1−1に記載の数値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例1と比較して、メラミン化合物を含有したことで、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性に優れ、同等の優れた透明性、初期接着性、耐湿熱接着性、視認性を示した。
【0151】
メラミン化合物(f)の水分散体:三和ケミカル(株)製“ニカラック”(登録商標)MW12LF
(固形分濃度:71重量%)
(実施例4)
メラミン化合物(f)の固形分重量比を表1−1に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、メラミン化合物(f)の含有量を増量したことで、初期ヘイズが若干高く、分散指数が若干大きくなり、透明性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であり、同等の初期接着性、耐湿熱接着性、視認性を示した。
【0152】
(実施例5)
ポリエステル化合物(b)として、ポリエステル樹脂(b−2)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。
【0153】
実施例3と比較して、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量が少ないポリエステル樹脂(b−2)を用いたことで、初期ヘイズが若干高く、分散指数が若干大きくなり、透明性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であり、同等の初期接着性、耐湿熱接着性、視認性を示した。
【0154】
(実施例6〜7)
ポリエステル化合物(b)としてポリエステル樹脂(b−3)(実施例6)、ポリエステル樹脂(b−4)(実施例7)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量が多いポリエステル樹脂を用いたことで、初期ヘイズが若干低く、分散指数がより小さくなり、同等の優れた初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性を示した。
【0155】
(実施例8)
ポリエステル化合物(b)としてポリエステル樹脂(b−5)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量が多いポリエステル樹脂を用いたことで、初期ヘイズが若干高く、分散指数がより大きくなり、透明性、視認性、初期接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干劣るものの良好であった。
【0156】
(実施例9)
ポリエステル化合物(b)として、ポリエステル樹脂(b−6)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分を含まないポリエステル樹脂を用いたことで、初期ヘイズが若干高く、分散指数がより大きくなり、透明性、視認性、初期接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干劣るものの良好であった。
【0157】
(実施例10〜11)
ポリエステル化合物(b)として、ポリエステル樹脂(b−7)(実施例10)、ポリエステル樹脂(b−8)(実施例11)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、異なるビスフェノールSの骨格を有するポリエステル樹脂を用いた場合も、同等の優れた初期接着性、耐湿熱接着性、耐UV接着性、耐煮沸接着性、耐煮沸透明性、視認性を示した。
【0158】
(実施例12)
イソシアネート化合物(c)の固形分重量比を表に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、イソシアネート化合物(c)の含有量を減量したことで、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの、同等の透明性、視認性を示した。
【0159】
(実施例13〜14)
イソシアネート化合物(c)の固形分重量比を表に記載の数値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、イソシアネート化合物(c)の含有量を増量したことで、同等の透明性、優れた初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性を示した。
【0160】
(実施例15〜16)
カルボジイミド化合物(d)の固形分重量比を表に記載の数値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−1に示す。実施例3と比較して、カルボジイミド化合物(d)の含有量を減量したことで、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であり、同等の透明性、視認性を示した。
【0161】
(実施例17)
カルボジイミド化合物(d)の固形分重量比を表1−1に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
実施例3と比較して、カルボジイミド化合物(d)の含有量を増量したことで、同等の優れた透明性、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性を示した。
【0162】
(実施例18〜19)
オキサゾリン化合物(e)の固形分重量比を表1−2に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。実施例3と比較して、オキサゾリン化合物(e)の含有量を減量したことで、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であり、同等の透明性、視認性を示した。
【0163】
(実施例20)
オキサゾリン化合物(e)の固形分重量比を表1−2に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。実施例3と比較して、オキサゾリン化合物(e)の含有量を増量したことで、同等の透明性、優れた初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性を示した。
【0164】
(実施例21〜22)
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)の固形分重量比を表1−2に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。実施例3と比較して、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=40/60(実施例21)、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=30/70(実施例22)、としたことで、分散指数が若干大きくなり、反射率が若干低下し、ヘイズが若干上昇したものの、透明性は良好であった。また、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性は若干低下したものの良好であり、同等の初期接着性、耐湿熱接着性を示した。
【0165】
(実施例23)
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)の固形分重量比を表1−2に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。実施例3と比較して、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=20/80とした場合も、同等の透明性、優れた初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性を示した。
【0166】
(実施例24)
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)の固形分重量比を表1−2に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。実施例3と比較して、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=5/95、としたことで、分散指数が若干小さくなり、
ヘイズが若干低下し、反射率が若干大きくなり、透明性は良好であった。また、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性は若干低下したものの良好であった。
【0167】
(実施例25)
イソシアネート化合物(c)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、イソシアネート化合物(c)の含有量が少なくなったことにより、透明性、視認性に優れ、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であった。
【0168】
(実施例26)
イソシアネート化合物(c)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、イソシアネート化合物(c)の含有量が多くなったことにより、ヘイズが若干上昇し、透明性が若干低下したものの良好であった。また同等の初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性を示した。
【0169】
(実施例27)
カルボジイミド化合物(d)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、カルボジイミド化合物(d)の含有量が少なくなったことにより、
初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であった。
【0170】
(実施例28)
カルボジイミド合物(d)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、カルボジイミド化合物(d)の含有量が多くなったことにより、ヘイズが若干上昇し、透明性が若干低下したものの良好であった。また同等の初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性を示した。
【0171】
(実施例29)
オキサゾリン化合物(e)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、オキサゾリン化合物(e)の含有量が少なくなったことにより、
初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であった。
【0172】
(実施例30)
オキサゾリン合物(e)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、オキサゾリン化合物(e)の含有量が多くなったことにより、ヘイズが若干上昇し、透明性が若干低下したものの良好であった。また同等の初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性を示した。
【0173】
(実施例31)
メラミン化合物(f)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、メラミン化合物(f)の含有量が少なくなったことにより、
同等の優れた透明性、初期接着性、耐湿熱接着性を示した。また耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であった。
【0174】
(実施例32)
メラミン化合物(f)の固形分重量比が表1−2に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。
実施例3と比較して、メラミン化合物(f)の含有量が多くなったことにより、分散指数が若干大きくなり、ヘイズが若干高くなったものの良好であった。また耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの良好であった。
【0175】
(実施例33)
ポリエステル化合物(b)として、ポリエステル樹脂(b−9)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0176】
得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。実施例3と比較して、ビスフェノールAの骨格を有するポリエステル樹脂を用いたことで、初期ヘイズが若干高く、分散指数が若干高く、反射率が小さくなり、透明性、視認性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの、同等の優れた初期接着性、耐湿熱接着性を示した。
【0177】
(実施例34)
ポリエステル化合物(b)として、ポリエステル樹脂(b−10)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−2に示す。実施例3と比較して、ビスフェノールAの骨格を有するポリエステル樹脂を用いたことで、初期ヘイズが若干高く、分散指数が若干高く、反射率が小さくなり、透明性、視認性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性が若干低下したものの、同等の優れた初期接着性、耐湿熱接着性を示した。
【0178】
(比較例1)
(a)〜(f)の固形分重量比が表1−3に記載の数値に調整した以外は、実施例1と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−3に示す。
比較例1の積層ポリエステルフィルムは、アクリル・ウレタン共重合樹脂を含まないことで、実施例1と比較して、同等の優れた透明性を示すものの、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性において性能が劣るものであった。
【0179】
(比較例2〜3)
(a)〜(f)の固形分重量比が表1−3に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−3に示す。
比較例2、3の積層ポリエステルフィルムは、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)を含まないことで、実施例3と比較して、同等の優れた透明性、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性を示すものの、視認性において性能が劣るものであった。
【0180】
(比較例4〜6)
(a)〜(f)の固形分重量比が表に記載の数値に調整した以外は、実施例3と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−3に示す。
【0181】
比較例4の積層ポリエステルフィルムは、イソシアネート化合物(c)を含まないことで、実施例3と比較して、同等の優れた透明性、良好な視認性を示すものの、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性において性能が劣るものであった。
【0182】
また、比較例5の積層ポリエステルフィルムは、カルボジイミド化合物(d)を含まないことで、実施例3と比較して、同等の優れた透明性、良好な視認性を示すものの、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性において性能が劣るものであった。
【0183】
また、比較例6の積層ポリエステルフィルムは、オキサゾリン化合物(e)を含まないことで、実施例3と比較して、同等の優れた透明性、良好な視認性を示すものの、初期接着性、耐湿熱接着性、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性において性能が劣るものであった。
【0184】
(比較例7〜10)
アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)の固形分重量比を表に記載の数値に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性等を表2−3に示す。
【0185】
比較例7の積層ポリエステルフィルムは、実施例3と比較して、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=50/50、としたことで、分散指数が7と大きくなり、
ヘイズが若干上昇し、反射率が小さくなった。また、同等の優れた初期接着性、耐湿熱接着性を示すものの、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性に劣るものであった。
【0186】
比較例8の積層ポリエステルフィルムは、実施例3と比較して、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=60/40としたことで、分散指数が10と大きくなり、
反射率が低下し、ヘイズが上昇し、透明性が劣るものとなった。また、同等の初期接着性、耐湿熱接着性を示すものの、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性に劣るものであった。
【0187】
比較例9の積層ポリエステルフィルムは、実施例3と比較して、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=80/20としたことで、分散指数が15と大きくなり、
反射率が低下し、ヘイズが上昇し、透明性が劣るものとなった。また、同等の初期接着性、耐湿熱接着性を示すものの、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性に劣るものであった。
【0188】
比較例10の積層ポリエステルフィルムは、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)/ポリエステル樹脂(b)=90/10としたことで、分散指数が20と大きくなり、反射率が低下し、ヘイズが上昇し、透明性が劣るものとなった。また、同等の初期接着性、耐湿熱接着性を示すものの、耐煮沸接着性、耐UV接着性、耐煮沸透明性、視認性に劣るものであった。
【0189】
【表1-1】
【0190】
【表1-2】
【0191】
【表1-3】
【0192】
【表2-1】
【0193】
【表2-2】
【0194】
【表2-3】
【0195】
なお、表1−1〜表1−3において、塗料組成部中の固形分重量比とは、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂(b)の固形分重量の合計を100としたときの比を示す。ただし、比較例2、3においては、アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)とナフタレン骨格を有しないポリエステル樹脂の固形分重量の合計を100としたときの比を示す。