特許第6131861号(P6131861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131861
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】昇降台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/06 20060101AFI20170515BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B62B3/06 Z
   B23P19/00 302G
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-6370(P2014-6370)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134539(P2015-134539A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠志
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 修平
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−002275(JP,A)
【文献】 特開2000−118406(JP,A)
【文献】 特開2001−106082(JP,A)
【文献】 特開平10−161804(JP,A)
【文献】 特開2004−290644(JP,A)
【文献】 特開2011−073594(JP,A)
【文献】 特開平09−249394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00− 5/08
B23P 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪によって移動可能な台車本体と、
該台車本体に昇降可能に配設され、ワークを受けるテーブルと、
上記台車本体に配設され、該台車本体に対して上記テーブルを昇降させる昇降機構と、
上記テーブルの回動支持部に支持された回動軸部を中心に上下方向に回動操作可能に設けられた操作ハンドルと、
該操作ハンドルが移動操作されるときに、該操作ハンドルを上記上下方向の互いに逆方向へ付勢して、該操作ハンドルを上記上下方向の中立位置に戻すよう付勢する一対の付勢バネと、
上記操作ハンドルの回動操作量を検出するセンサと、
該センサの検出値に応じて上記昇降機構による上記テーブルの上昇速度を可変させる制御手段と、を備え
上記センサの検出値は、上記操作ハンドルの回動操作量が大きくなるほど大きくなり、上記制御手段は、上記センサの検出値が大きいほど上記昇降機構による上記テーブルの上昇速度を速くするよう構成されており、
作業者が上記操作ハンドルを上側に操作するときには、該操作ハンドルを把持した作業者から上記テーブルに、該テーブルを上昇させる力が作用するよう構成されていることを特徴とする昇降台車。
【請求項2】
上記昇降機構は、複数のチェーン片が連なった2本のジップチェーンが互いに噛み合って、上記テーブルを支持する支持柱を形成するジップチェーン昇降装置と、上記2本のチェーンを駆動するためのモータとを有することを特徴とする請求項に記載の昇降台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者による操作入力を受けて、テーブルを昇降させる昇降台車に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内において、例えば、自動車ボディにワークとしての種々の足回り部品を搭載する際には、作業者の手動操作によって移動可能な台車が用いられている。台車には、ワークを昇降させるための昇降機構が搭載されている。昇降機構は、油圧式、空気圧式等のシリンダーを用いて、ワークが載置されるテーブルを昇降させるよう構成されている。台車の移動によってワークが自動車ボディの下方に運搬されたときには、昇降機構の動作によってワークを自動車ボディに対向する位置まで持ち上げている。
【0003】
また、自動車の車体に対して足回り部品であるサスペンションを取り付ける装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。また、特許文献2には、パワーアシスト付き昇降移載装置について開示されている。この昇降移載装置においては、昇降手段によって対象物を吊り上げる際に、操作者が対象物に加えた吊り力から操作力を演算し、この操作力に応じて昇降手段を作動させる。これにより、操作者にかかる負担を小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−285744号公報
【特許文献2】特開2000−271177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の台車においては、自動車ボディにワークが接近したときには、ワークの高さ位置を合わせるために、昇降機構をインチング操作する必要がある。そのため、ワークの高さ位置を合わせるための作業性が悪く、自動車ボディにワークを接近させる作業時間を短縮することが困難である。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、操作ハンドルの用い方に工夫をしたことにより、被対象物に対してワークを接近させる作業性を向上させ、その作業時間を短縮させることができる昇降台車を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の車輪によって移動可能な台車本体と、
該台車本体に昇降可能に配設され、ワークを受けるテーブルと、
上記台車本体に配設され、該台車本体に対して上記テーブルを昇降させる昇降機構と、
上記テーブルの回動支持部に支持された回動軸部を中心に上下方向に回動操作可能に設けられた操作ハンドルと、
該操作ハンドルが移動操作されるときに、該操作ハンドルを上記上下方向の互いに逆方向へ付勢して、該操作ハンドルを上記上下方向の中立位置に戻すよう付勢する一対の付勢バネと、
上記操作ハンドルの回動操作量を検出するセンサと、
該センサの検出値に応じて上記昇降機構による上記テーブルの上昇速度を可変させる制御手段と、を備え
上記センサの検出値は、上記操作ハンドルの回動操作量が大きくなるほど大きくなり、上記制御手段は、上記センサの検出値が大きいほど上記昇降機構による上記テーブルの上昇速度を速くするよう構成されており、
作業者が上記操作ハンドルを上側に操作するときには、該操作ハンドルを把持した作業者から上記テーブルに、該テーブルを上昇させる力が作用するよう構成されていることを特徴とする昇降台車にある。
【発明の効果】
【0008】
上記昇降台車においては、テーブルを昇降させるための操作ハンドルに工夫をし、昇降機構によるテーブルの上昇速度を可変可能にしている。
具体的には、操作ハンドルの回動操作量はセンサによって検出され、制御手段は、センサの検出値に応じて昇降機構によるテーブルの上昇速度を可変させる。これにより、被対象物からワークが離れているときには、テーブルの上昇速度を速くして、ワークを迅速に被対象物に近づけることができる。また、被対象物にワークが近づいたときには、テーブルの上昇速度を遅くして、被対象物へのワークの高さ位置の微調整をすることができる。そして、作業者は、操作ハンドルの回動操作量の大きさに応じて、テーブルの上昇速度を任意に変更することができる。そのため、被対象物に対してワークを接近させる作業の効率化を図ることができ、その作業時間を短縮させることができる。
【0009】
また、操作ハンドルはテーブルに回動操作可能に設けられており、作業者は、操作ハンドルを把持しながら、テーブルを上昇させる力をテーブルに直接作用させることができる。これにより、作業者は、テーブルを上昇させる操作に、自らの力の感覚を反映させることができる。
また、操作ハンドルは、付勢手段によって中立位置に付勢されている。そして、作業者が操作ハンドルの回動操作を解除するときには、操作ハンドルは中立位置に戻される。
【0010】
このように、上記昇降台車によれば、操作ハンドルの用い方に工夫をしたことにより、被対象物に対してワークを接近させる作業性を向上させ、その作業時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例にかかる、昇降台車を、図3におけるA矢視方向から見た状態で示す説明図。
図2】実施例にかかる、昇降台車を、図3におけるB矢視方向から見た状態で示す説明図。
図3】実施例にかかる、昇降台車のテーブル及びジップチェーン昇降装置の周辺を、上方から見た状態で示す説明図。
図4】実施例にかかる、図1における操作ハンドルの周辺を拡大して示す説明図。
図5】実施例にかかる、昇降台車の電気的構成を示すブロック図。
図6】実施例にかかる、横軸に時間をとり、縦軸にテーブルの上昇高さをとって、自動車ボディへのワークの搭載作業にかかる時間を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した昇降台車における好ましい実施の形態について説明する。
上記昇降台車においては、上記操作ハンドルは、上下方向に回動操作可能に上記テーブルに設けられており、上記付勢手段は、上記操作ハンドルを上下方向の互いに逆方向へ付勢して、該操作ハンドルを、上記原位置としての、上記上下方向の中立位置に保つ一対の付勢バネであり、上記センサの検出値は、上記操作ハンドルの回動操作量が大きくなるほど大きくなり、上記制御手段は、上記センサの検出値が大きいほど上記昇降機構による上記テーブルの上昇速度を速くするよう構成されていてもよい。
【0013】
この場合には、操作ハンドルの操作性を高めることができる。また、操作ハンドルの回動操作量が大きくなるほど、昇降機構によるテーブルの上昇速度を速くすることができる。
また、付勢手段は、付勢バネである以外にも、ガススプリング、弾性変形可能なゴム、空気圧式又は油圧式のダンパ等であってもよい。
【0014】
また、上記昇降機構は、複数のチェーン片が連なった2本のジップチェーンが互いに噛み合って、上記テーブルを支持する支持柱を形成するジップチェーン昇降装置と、上記2本のチェーンを駆動するためのモータとを有していてもよい。
この場合には、ジップチェーン昇降装置の本体部を、テーブルの下方に小さく収納することができる。そのため、昇降台車の高さ寸法を効果的に小さくすることができ、昇降台車の小型化を図ることができる。
【実施例】
【0015】
以下に、昇降台車にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の昇降台車1は、図1図3に示すように、台車本体11、テーブル2、昇降機構3、操作ハンドル4、付勢手段5、センサ6及び制御手段7を備えている。台車本体11は、複数の車輪112によって移動可能に構成されている。テーブル2は、台車本体11に昇降可能に配設されており、載置されるワーク8を受けるよう構成されている。昇降機構3は、台車本体11に配設されており、台車本体11に対してテーブル2を昇降させるよう構成されている。操作ハンドル4は、テーブル2に移動操作可能に設けられており、テーブル2に作業者の力を作用させることが可能になっている。付勢手段5は、操作ハンドル4が移動操作されるときに、操作ハンドル4を原位置としての中立位置401に戻すよう付勢している。センサ6は、操作ハンドル4の操作量を検出するよう構成されている。制御手段7は、センサ6の検出値に応じて昇降機構3によるテーブル2の上昇速度を可変させるよう構成されている。
【0016】
以下に、本例の昇降台車1について、図1図6を参照して詳説する。
本例の昇降台車1は、自動車ボディに対して、ワーク8としてのサスペンション、ショックアブソーバ等の足回り部品を組み付けるために用いる。昇降台車1は、作業者の手動操作によってワーク8を搬送するよう構成されている。
図4に示すように、中立位置401にある状態の操作ハンドル4は、テーブル2の下部から水平方向に引き出されている。操作ハンドル4は、ハンドル本体部41の左右両側に、作業者が把持するための把持部42を有している。操作ハンドル4は、テーブル2の回動支持部21に支持された回動軸部43を中心に、上下方向に回動操作可能にテーブル2に設けられている。操作ハンドル4の中立位置401は、上下方向への回動範囲の中立位置401として設定されている。操作ハンドル4は、台車本体11を移動させるときにも、作業者によって把持されるよう構成されている。操作ハンドル4には、台車本体11を移動させるときに、操作ハンドル4の上下方向への回動を止める回動停止手段(図示略)が設けられている。
【0017】
同図に示すように、付勢手段5は、操作ハンドル4を中立位置401に保つ一対の付勢バネ51によって構成されている。操作ハンドル4は、一対の付勢バネ51によって上下方向の互いに逆方向へ付勢されて中立位置401に保たれている。一対の付勢バネ51は、それぞれ引張バネによって構成されている。上側の付勢バネ51は操作ハンドル4の把持部42を下方へ付勢し、下側の付勢バネ51は、操作ハンドル4の把持部42を上方へ付勢している。そして、操作ハンドル4の把持部42が上方へ回動されるときには、上側の付勢バネ51が操作ハンドル4の把持部42を下側へ付勢する力が大きくなる。一方、操作ハンドル4の把持部42が下方へ回動されるときには、下側の付勢バネ51が操作ハンドル4の把持部42を上側へ付勢する力が大きくなる。また、作業者が操作ハンドル4の回動操作を解除するときには、操作ハンドル4は中立位置401に戻される。
【0018】
図3に示すように、センサ6は、操作ハンドル4の回動位置を検出可能なエンコーダによって構成されている。センサ6は、操作ハンドル4を回動可能に支持する、テーブル2の回動支持部21に取り付けられている。図1図2に示すように、テーブル2には、ワーク8を受けるための治具部22が設けられている。ワーク8は、テーブル2に載置される治具部22によって支持される。テーブル2は、台車本体11の上方において、昇降可能に配置されている。台車本体11は、直方体の骨枠形状に形成されたフレーム部111と、フレーム部111の底部に設けられた4つの車輪112とを有している。
【0019】
図1図2図4に示すように、昇降機構3は、ジップチェーン昇降装置31と、ジップチェーン昇降装置31を駆動するためのモータ32と、モータ32の回転力をジップチェーン昇降装置31に伝達する伝達機構部33とを有している。ジップチェーン昇降装置31は、複数のチェーン片313が連なった2本のジップチェーン312が、本体部311から引き出されるときに互いに噛み合って、テーブル2を支持する支持柱を形成するよう構成されている。ジップチェーン昇降装置31は、テーブル2の下方であって、台車本体11の上部に配設されている。2本のジップチェーン312は、テーブル2が下降しているときには、台車本体11の上部に設けられた本体部311内に収納される。また、ジップチェーン312は、テーブル2が上昇するときには、フレーム部111の上方に引き出される。
【0020】
図3に示すように、ジップチェーン昇降装置31は、上昇時のテーブル2の剛性を維持するために、テーブル2の平面内における4箇所を支持するよう、台車本体11の4箇所に配設されている。また、テーブル2が鉛直方向の軸線回りに捩じられにくくするために、ジップチェーン昇降装置31を構成する2本のジップチェーン312が互いに対向する方向は、隣接するジップチェーン昇降装置31間で互いに90°ずれている。
なお、ジップチェーン昇降装置31は、台車本体11の1箇所又は2箇所に配設し、台車本体11には、テーブル2の昇降を案内するための複数の支持ガイドを配設することもできる。この場合には、複数の支持ガイドによって、テーブル2が鉛直方向の軸線回りに捩じられにくくすることができる。
【0021】
図1に示すように、伝達機構部33は、ジップチェーン312に噛合するスプロケット314に回転力を伝達する回転軸部34と、回転軸部34に同軸状に設けられた第1回転車331と、モータ32と第1回転車331とを中継するための第2回転車332及び第3回転車333と、第1〜第3回転車331〜333に掛け渡された第1環状部材336とを有している。第2回転車332には、さらに別の第4回転車334が同軸状に設けられている。第4回転車334と、モータ32の出力軸に設けられた第5回転車335とには、別の第2環状部材337が掛け渡されている。
【0022】
第1〜第5回転車331〜335は、スプロケット、プーリ、歯付きプーリ等によって構成することができる。第1、第2環状部材336,337は、スプロケットに係合するチェーン、プーリに係合するベルト、歯付きプーリに係合する歯付きベルト等によって構成することができる。
図3図4に示すように、伝達機構部33は、回転軸部34の回転力を複数のジップチェーン昇降装置31に伝達する上部伝達部35を有している。上部伝達部35は、ジップチェーン昇降装置31の2本のジップチェーン312にそれぞれ噛合する2つのスプロケット314を、互いに逆方向に回転させる第6回転車351、回転軸部34の回転力を第6回転車351の一方に伝達する第7回転車352を有している。第6回転車351及び第7回転車352は、スプロケット、プーリ、歯付きプーリ、歯車等を用いて構成することができる。また、回転軸部34の軸線方向と、ジップチェーン昇降装置31のスプロケット314の軸線方向とが直交している箇所の第7回転車352には、かさ歯車等を用いることができる。
【0023】
モータ32が、テーブル2を上昇させる正回転方向に回転するときには、第1、第2環状部材336,337を介して第1〜第5回転車331〜335が正回転方向に回転し、かつ回転軸部34及び第6、第7回転車351,352が正回転方向に回転する。そして、各ジップチェーン昇降装置31における一対のジップチェーン312が上方に伸びて支持柱を形成し、この支持柱によってテーブル2が上昇する。
一方、モータ32が、テーブル2を下降させる逆回転方向に回転するときには、第1、第2環状部材336,337を介して第1〜第5回転車331〜335が逆回転方向に回転し、かつ回転軸部34及び第6、第7回転車351,352が逆回転方向に回転する。そして、各ジップチェーン昇降装置31における一対のジップチェーン312が本体部311内に収納されながらテーブル2が下降する。
【0024】
また、昇降機構3は、テーブル2の下降時に、テーブル2の下降速度を遅くするための減速機を有していてもよい。この場合、第3回転車333にワンウェイクラッチを設け、第3回転車333をワンウェイクラッチを介して減速機に接続する。そして、テーブル2が上昇するときにはワンウェイクラッチが空転し、テーブル2が下降するときのみ、ワンウェイクラッチを介して減速機を回転させることができる。
【0025】
図5に示すように、制御手段7は、センサ6からの上昇方向又は下降方向の入力信号を受け、モータ32を正回転方向又は逆回転方向に回転させるよう構成されている。制御手段7は、シーケンサ等を含む種々のコンピュータによって構成されている。
【0026】
次に、本例の昇降台車1を用いて、自動車ボディにワーク8を組み付ける動作、及び本例の作用効果について説明する。
作業者は、テーブル2の治具部22にワーク8を載置し、回動停止手段によって回動が止められた操作ハンドル4を把持して、昇降台車1を移動させる。そして、作業者は、自動車ボディにおける組付部位の下方にワーク8が配置される位置まで、昇降台車1を移動させる。次いで、作業者は、回動停止手段による操作ハンドル4の回動の停止を解除し、操作ハンドル4が上下方向に回動可能な状態を形成する。
【0027】
次いで、作業者は、操作ハンドル4の把持部42を上側に回動させて、ワーク8を自動車ボディの組付部位に近づける。このとき、ワーク8が自動車ボディから離れているため、作業者は、操作ハンドル4の把持部42の上側への回動操作量を大きくする。そして、回動操作量の大きさに比例してセンサ6の検出値が大きくなり、制御手段7は、テーブル2の上昇速度を速くして、ワーク8を迅速に自動車ボディに近づけることができる。
【0028】
次いで、ワーク8が自動車ボディに近づいたときには、作業者は、操作ハンドル4の把持部42の上側への回動操作量を小さくする。そして、センサ6の検出値が小さくなり、制御手段7は、テーブル2の上昇速度を遅くして、ワーク8を徐々に自動車ボディに近づけることができる。これにより、作業者は、自動車ボディへのワーク8の高さ位置の微調整をすることができる。そして、作業者は、操作ハンドル4の回動操作量の大きさに応じて、テーブル2の上昇速度を任意に変更することができる。
こうして、自動車ボディの組付部位にワーク8を接近させる作業の効率化を図ることができ、その作業時間を短縮させることができる。
【0029】
また、操作ハンドル4はテーブル2に移動操作可能に設けられており、作業者は、操作ハンドル4の把持部42を把持しながら、テーブル2を上昇させる力をテーブル2に直接作用させることができる。これにより、作業者は、テーブル2を上昇させる操作に、自らの力の感覚を反映させることができる。
このように、本例の昇降台車1によれば、操作ハンドル4の用い方に工夫をしたことにより、自動車ボディの組付部位に対してワーク8を接近させる作業性を向上させ、その作業時間を短縮させることができる。
【0030】
また、本例の昇降台車1においては、昇降機構3にジップチェーン昇降装置31を用いたことにより、油圧、空気圧式の昇降装置を用いる場合に比べて、昇降機構3が昇降台車1において占めるスペースを小さくすることができる。そのため、昇降台車1の小型化を図ることができる。また、ジップチェーン昇降装置31を用いることにより、昇降台車1の軽量化を図ることができ、人力(作業者の手動)による昇降台車1の移動を容易にすることができる。そのため、昇降台車1を移動(走行)させるための動力源を廃止することができる。
【0031】
図6は、横軸に時間をとり、縦軸にテーブルの上昇高さをとって、自動車ボディへのワーク8の搭載作業にかかる時間を示す。同図においては、操作ハンドル4によってテーブル2の上昇速度を任意に変更可能にした本例の昇降台車1を実線D1によって示し、操作ハンドル4によってテーブル2が一定速度で上昇する従来の昇降台車を破線D2によって示す。
【0032】
本例の昇降台車1においては、テーブル2の上昇速度を任意に変更して、テーブル2におけるワーク8を、車両ボディに対する搭載高さに迅速に合わせることができ、ワーク8の搭載時間T1の短縮を図ることができる。一方、従来の昇降台車においては、テーブル2が上昇した位置において、ワーク8の車両ボディに対する搭載高さを合わせる際に、上昇のオンオフを繰り返すインチング操作をする必要がある。そのため、ワーク8の搭載時間T2の短縮を図ることが困難である。
【符号の説明】
【0033】
1 昇降台車
11 台車本体
2 テーブル
3 昇降機構
31 ジップチェーン昇降装置
311 本体部
312 ジップチェーン
313 チェーン片
32 モータ
4 操作ハンドル
5 付勢手段
6 センサ
7 制御手段
8 ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6