【実施例】
【0015】
以下に、昇降台車にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の昇降台車1は、
図1〜
図3に示すように、台車本体11、テーブル2、昇降機構3、操作ハンドル4、付勢手段5、センサ6及び制御手段7を備えている。台車本体11は、複数の車輪112によって移動可能に構成されている。テーブル2は、台車本体11に昇降可能に配設されており、載置されるワーク8を受けるよう構成されている。昇降機構3は、台車本体11に配設されており、台車本体11に対してテーブル2を昇降させるよう構成されている。操作ハンドル4は、テーブル2に移動操作可能に設けられており、テーブル2に作業者の力を作用させることが可能になっている。付勢手段5は、操作ハンドル4が移動操作されるときに、操作ハンドル4を原位置としての中立位置401に戻すよう付勢している。センサ6は、操作ハンドル4の操作量を検出するよう構成されている。制御手段7は、センサ6の検出値に応じて昇降機構3によるテーブル2の上昇速度を可変させるよう構成されている。
【0016】
以下に、本例の昇降台車1について、
図1〜
図6を参照して詳説する。
本例の昇降台車1は、自動車ボディに対して、ワーク8としてのサスペンション、ショックアブソーバ等の足回り部品を組み付けるために用いる。昇降台車1は、作業者の手動操作によってワーク8を搬送するよう構成されている。
図4に示すように、中立位置401にある状態の操作ハンドル4は、テーブル2の下部から水平方向に引き出されている。操作ハンドル4は、ハンドル本体部41の左右両側に、作業者が把持するための把持部42を有している。操作ハンドル4は、テーブル2の回動支持部21に支持された回動軸部43を中心に、上下方向に回動操作可能にテーブル2に設けられている。操作ハンドル4の中立位置401は、上下方向への回動範囲の中立位置401として設定されている。操作ハンドル4は、台車本体11を移動させるときにも、作業者によって把持されるよう構成されている。操作ハンドル4には、台車本体11を移動させるときに、操作ハンドル4の上下方向への回動を止める回動停止手段(図示略)が設けられている。
【0017】
同図に示すように、付勢手段5は、操作ハンドル4を中立位置401に保つ一対の付勢バネ51によって構成されている。操作ハンドル4は、一対の付勢バネ51によって上下方向の互いに逆方向へ付勢されて中立位置401に保たれている。一対の付勢バネ51は、それぞれ引張バネによって構成されている。上側の付勢バネ51は操作ハンドル4の把持部42を下方へ付勢し、下側の付勢バネ51は、操作ハンドル4の把持部42を上方へ付勢している。そして、操作ハンドル4の把持部42が上方へ回動されるときには、上側の付勢バネ51が操作ハンドル4の把持部42を下側へ付勢する力が大きくなる。一方、操作ハンドル4の把持部42が下方へ回動されるときには、下側の付勢バネ51が操作ハンドル4の把持部42を上側へ付勢する力が大きくなる。また、作業者が操作ハンドル4の回動操作を解除するときには、操作ハンドル4は中立位置401に戻される。
【0018】
図3に示すように、センサ6は、操作ハンドル4の回動位置を検出可能なエンコーダによって構成されている。センサ6は、操作ハンドル4を回動可能に支持する、テーブル2の回動支持部21に取り付けられている。
図1、
図2に示すように、テーブル2には、ワーク8を受けるための治具部22が設けられている。ワーク8は、テーブル2に載置される治具部22によって支持される。テーブル2は、台車本体11の上方において、昇降可能に配置されている。台車本体11は、直方体の骨枠形状に形成されたフレーム部111と、フレーム部111の底部に設けられた4つの車輪112とを有している。
【0019】
図1、
図2、
図4に示すように、昇降機構3は、ジップチェーン昇降装置31と、ジップチェーン昇降装置31を駆動するためのモータ32と、モータ32の回転力をジップチェーン昇降装置31に伝達する伝達機構部33とを有している。ジップチェーン昇降装置31は、複数のチェーン片313が連なった2本のジップチェーン312が、本体部311から引き出されるときに互いに噛み合って、テーブル2を支持する支持柱を形成するよう構成されている。ジップチェーン昇降装置31は、テーブル2の下方であって、台車本体11の上部に配設されている。2本のジップチェーン312は、テーブル2が下降しているときには、台車本体11の上部に設けられた本体部311内に収納される。また、ジップチェーン312は、テーブル2が上昇するときには、フレーム部111の上方に引き出される。
【0020】
図3に示すように、ジップチェーン昇降装置31は、上昇時のテーブル2の剛性を維持するために、テーブル2の平面内における4箇所を支持するよう、台車本体11の4箇所に配設されている。また、テーブル2が鉛直方向の軸線回りに捩じられにくくするために、ジップチェーン昇降装置31を構成する2本のジップチェーン312が互いに対向する方向は、隣接するジップチェーン昇降装置31間で互いに90°ずれている。
なお、ジップチェーン昇降装置31は、台車本体11の1箇所又は2箇所に配設し、台車本体11には、テーブル2の昇降を案内するための複数の支持ガイドを配設することもできる。この場合には、複数の支持ガイドによって、テーブル2が鉛直方向の軸線回りに捩じられにくくすることができる。
【0021】
図1に示すように、伝達機構部33は、ジップチェーン312に噛合するスプロケット314に回転力を伝達する回転軸部34と、回転軸部34に同軸状に設けられた第1回転車331と、モータ32と第1回転車331とを中継するための第2回転車332及び第3回転車333と、第1〜第3回転車331〜333に掛け渡された第1環状部材336とを有している。第2回転車332には、さらに別の第4回転車334が同軸状に設けられている。第4回転車334と、モータ32の出力軸に設けられた第5回転車335とには、別の第2環状部材337が掛け渡されている。
【0022】
第1〜第5回転車331〜335は、スプロケット、プーリ、歯付きプーリ等によって構成することができる。第1、第2環状部材336,337は、スプロケットに係合するチェーン、プーリに係合するベルト、歯付きプーリに係合する歯付きベルト等によって構成することができる。
図3、
図4に示すように、伝達機構部33は、回転軸部34の回転力を複数のジップチェーン昇降装置31に伝達する上部伝達部35を有している。上部伝達部35は、ジップチェーン昇降装置31の2本のジップチェーン312にそれぞれ噛合する2つのスプロケット314を、互いに逆方向に回転させる第6回転車351、回転軸部34の回転力を第6回転車351の一方に伝達する第7回転車352を有している。第6回転車351及び第7回転車352は、スプロケット、プーリ、歯付きプーリ、歯車等を用いて構成することができる。また、回転軸部34の軸線方向と、ジップチェーン昇降装置31のスプロケット314の軸線方向とが直交している箇所の第7回転車352には、かさ歯車等を用いることができる。
【0023】
モータ32が、テーブル2を上昇させる正回転方向に回転するときには、第1、第2環状部材336,337を介して第1〜第5回転車331〜335が正回転方向に回転し、かつ回転軸部34及び第6、第7回転車351,352が正回転方向に回転する。そして、各ジップチェーン昇降装置31における一対のジップチェーン312が上方に伸びて支持柱を形成し、この支持柱によってテーブル2が上昇する。
一方、モータ32が、テーブル2を下降させる逆回転方向に回転するときには、第1、第2環状部材336,337を介して第1〜第5回転車331〜335が逆回転方向に回転し、かつ回転軸部34及び第6、第7回転車351,352が逆回転方向に回転する。そして、各ジップチェーン昇降装置31における一対のジップチェーン312が本体部311内に収納されながらテーブル2が下降する。
【0024】
また、昇降機構3は、テーブル2の下降時に、テーブル2の下降速度を遅くするための減速機を有していてもよい。この場合、第3回転車333にワンウェイクラッチを設け、第3回転車333をワンウェイクラッチを介して減速機に接続する。そして、テーブル2が上昇するときにはワンウェイクラッチが空転し、テーブル2が下降するときのみ、ワンウェイクラッチを介して減速機を回転させることができる。
【0025】
図5に示すように、制御手段7は、センサ6からの上昇方向又は下降方向の入力信号を受け、モータ32を正回転方向又は逆回転方向に回転させるよう構成されている。制御手段7は、シーケンサ等を含む種々のコンピュータによって構成されている。
【0026】
次に、本例の昇降台車1を用いて、自動車ボディにワーク8を組み付ける動作、及び本例の作用効果について説明する。
作業者は、テーブル2の治具部22にワーク8を載置し、回動停止手段によって回動が止められた操作ハンドル4を把持して、昇降台車1を移動させる。そして、作業者は、自動車ボディにおける組付部位の下方にワーク8が配置される位置まで、昇降台車1を移動させる。次いで、作業者は、回動停止手段による操作ハンドル4の回動の停止を解除し、操作ハンドル4が上下方向に回動可能な状態を形成する。
【0027】
次いで、作業者は、操作ハンドル4の把持部42を上側に回動させて、ワーク8を自動車ボディの組付部位に近づける。このとき、ワーク8が自動車ボディから離れているため、作業者は、操作ハンドル4の把持部42の上側への回動操作量を大きくする。そして、回動操作量の大きさに比例してセンサ6の検出値が大きくなり、制御手段7は、テーブル2の上昇速度を速くして、ワーク8を迅速に自動車ボディに近づけることができる。
【0028】
次いで、ワーク8が自動車ボディに近づいたときには、作業者は、操作ハンドル4の把持部42の上側への回動操作量を小さくする。そして、センサ6の検出値が小さくなり、制御手段7は、テーブル2の上昇速度を遅くして、ワーク8を徐々に自動車ボディに近づけることができる。これにより、作業者は、自動車ボディへのワーク8の高さ位置の微調整をすることができる。そして、作業者は、操作ハンドル4の回動操作量の大きさに応じて、テーブル2の上昇速度を任意に変更することができる。
こうして、自動車ボディの組付部位にワーク8を接近させる作業の効率化を図ることができ、その作業時間を短縮させることができる。
【0029】
また、操作ハンドル4はテーブル2に移動操作可能に設けられており、作業者は、操作ハンドル4の把持部42を把持しながら、テーブル2を上昇させる力をテーブル2に直接作用させることができる。これにより、作業者は、テーブル2を上昇させる操作に、自らの力の感覚を反映させることができる。
このように、本例の昇降台車1によれば、操作ハンドル4の用い方に工夫をしたことにより、自動車ボディの組付部位に対してワーク8を接近させる作業性を向上させ、その作業時間を短縮させることができる。
【0030】
また、本例の昇降台車1においては、昇降機構3にジップチェーン昇降装置31を用いたことにより、油圧、空気圧式の昇降装置を用いる場合に比べて、昇降機構3が昇降台車1において占めるスペースを小さくすることができる。そのため、昇降台車1の小型化を図ることができる。また、ジップチェーン昇降装置31を用いることにより、昇降台車1の軽量化を図ることができ、人力(作業者の手動)による昇降台車1の移動を容易にすることができる。そのため、昇降台車1を移動(走行)させるための動力源を廃止することができる。
【0031】
図6は、横軸に時間をとり、縦軸にテーブルの上昇高さをとって、自動車ボディへのワーク8の搭載作業にかかる時間を示す。同図においては、操作ハンドル4によってテーブル2の上昇速度を任意に変更可能にした本例の昇降台車1を実線D1によって示し、操作ハンドル4によってテーブル2が一定速度で上昇する従来の昇降台車を破線D2によって示す。
【0032】
本例の昇降台車1においては、テーブル2の上昇速度を任意に変更して、テーブル2におけるワーク8を、車両ボディに対する搭載高さに迅速に合わせることができ、ワーク8の搭載時間T1の短縮を図ることができる。一方、従来の昇降台車においては、テーブル2が上昇した位置において、ワーク8の車両ボディに対する搭載高さを合わせる際に、上昇のオンオフを繰り返すインチング操作をする必要がある。そのため、ワーク8の搭載時間T2の短縮を図ることが困難である。