特許第6131884号(P6131884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131884
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ベルト構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B60N2/44
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-49910(P2014-49910)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-174470(P2015-174470A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 眞則
(72)【発明者】
【氏名】磯江 光治
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−069814(JP,A)
【文献】 米国特許第02889807(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に内蔵されている動作レバーを、前記装置の外部から操作するためのベルト構造であって、
一端部側が前記動作レバーに連結されて、他端部側が前記装置の外に配置されており、その他端部側にリング形状の把持部が設けられている変形自在なベルト本体部と、
前記ベルト本体部の把持部の周方向の一部に設けられており、姿勢保持可能な姿勢保持部とを有しており、
前記姿勢保持部は、前記ベルト本体部が前記動作レバーと連結している位置、又は、その近傍位置まで延びていることを特徴とするベルト構造。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト構造であって、
前記姿勢保持部は、前記ベルト本体部と等しい素材に対して、樹脂板が縫い付けられることにより構成されていることを特徴とするベルト構造。
【請求項3】
請求項2に記載のベルト構造であって、
前記ベルト本体部の把持部は、そのベルト本体部の長手方向端部を長手方向途中位置に縫い付けることによりリング形状に形成されており、
前記樹脂板は、前記ベルト本体部の把持部の内周面に縫い付けられ、さらに、前記ベルト本体部の長手方向端部と長手方向途中位置とに挟まれてその位置に縫い付けられる構成であることを特徴とするベルト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に内蔵されている動作レバーを、前記装置の外部から操作するためのベルト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベルト構造に関する技術が、特許文献1に記載されている。特許文献1のベルト構造200が使用される車両用シート100は、図5に示されている。車両用シート100は、車両の後部座席に設けられ、シートバック101を前倒しにすることで、車室内の収納スペースを広くできる。シートバック101には、前記前倒し操作を禁止するロック機構102と、そのロック状態を解除するロック解除ロッド103とが内蔵されている。ロック解除ロッド103には、ベルト本体部201が連結されている。ベルト本体部201は、端部がシートバック101の上端部の開口部104から外部に突出しており、その端部に把持部204が設けられている。このため、把持部204を掴んで引き操作することで、シートバック101の内部のロック解除ロッド103を動作させて、ロック機構102のロック状態を解除できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−170767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ベルト本体部201の把持部204は変形が可能なため、把持部204のリング形状が自重によって潰れることがあり、掴み難くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的な課題は、把持部をリング状態に保持することで、把持部を掴み易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、次の発明によって解決される。請求項1の発明は、装置に内蔵されている動作レバーを、前記装置の外部から操作するためのベルト構造であって、一端部側が前記動作レバーに連結されて、他端部側が前記装置の外に配置されており、その他端部側にリング形状の把持部が設けられている変形自在なベルト本体部と、前記ベルト本体部の把持部の周方向の一部に設けられており、姿勢保持可能な姿勢保持部とを有しており、前記姿勢保持部は、前記ベルト本体部が前記動作レバーと連結している位置、又は、その近傍位置まで延びていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、ベルト本体部の把持部の周方向の一部が、姿勢保持可能な姿勢保持部から構成されている。これにより、姿勢保持部によって、把持部のリング形状が保持されるようになり、把持部が掴み易くなる。また、ベルト本体部の把持部が、装置外部の所定位置で位置決めされるようになるため、装置内部に入り込んでしまうことを防止できる。
【0009】
請求項2の発明によると、姿勢保持部は、ベルト本体部と等しい素材に対して、樹脂板を縫い付けることにより構成されていることを特徴とする。これにより、姿勢保持部を単純な構造によって構成することができるようになるため、製造コストを低下させることができる。
【0010】
請求項3の発明によると、ベルト本体部の把持部は、そのベルト本体部の長手方向端部を長手方向途中位置に縫い付けることによりリング形状に形成されており、樹脂板は、前記ベルト本体部の把持部の内周面に縫い付けられ、さらに、前記ベルト本体部の長手方向端部と長手方向途中位置とに挟まれてその位置に縫い付けられる構成であることを特徴とする。これにより、把持部を単純な構造によって構成することができるようになるため、製造コストを低下させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、把持部のリング状態が保持されるようになり、把持部を掴み易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係るベルト構造を備える車両用シートの斜視図である。
図2】前記実施形態に係るベルト構造の模式図(図1のII−II線断面図)である。
図3】前記実施形態に係るベルト構造を引き操作した状態を表す模式図である。
図4】前記実施形態に係るベルト構造に外力が加わった状態を表す模式図である。
図5】従来のベルト構造を現す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1図4に基づいて、本発明の実施形態1に係るベルト構造20の説明を行う。本実施形態に係るベルト構造20は、車両の後部座席に設けられ、前倒し可能に構成されている車両用シート10に設けられている。なお、図中の前後左右、及び上下は、車両用シート10の前後左右、及び上下に対応している。
【0014】
<車両用シート10の概要>
ベルト構造20の説明を行う前に、車両用シート10の説明を簡単に行う。車両用シート10は、図1に示すように、シートクッション11とシートバック12とを備えている。シートバック12の上端部12uには、開口ベゼル15が設けられ、開口部16が形成されている。シートバック12の内部には、図2に示すように、例えば、シートバック12の骨格構造をなすシートバックフレーム13と、クッション材の働きをするシートバックパッド14等が設けられている。シートバックパッド14は、シートバック12の内部に、開口部16と通じて上下方向に延びる空間(ベルト通路T)が形成されるように、適宜のスペースを空けて充填されている。ベルト通路Tの下方には、シートバック12の前倒し操作を禁止するロック機構(図示せず)と、ロック機構に連結しているロック解除レバー17とが配置されている。このロック解除レバー17は、ベルト構造20で使用されるベルト本体部21と連結しており、常に図2に示すような初期位置(ロック機構がロック状態となる位置)に戻るように下方に付勢されている。即ち、シートバック12が、本願発明に係る装置に相当する。また、ロック解除レバー17が、本願発明に係る動作レバーに相当する
【0015】
<ベルト構造20の概要>
ベルト構造20は、車両用シート10のシートバック12の内部に設けられているロック解除レバー17を、シートバック12の外部で動作させるためのものである。ベルト構造20は、ロック解除レバー17に連結されているベルト本体部21と、姿勢保持可能に構成されている姿勢保持部30とを備えている。
【0016】
<ベルト本体部21について>
ベルト構造20に使用されているベルト本体部21は、いわゆるシートベルトのベルト部分と同様にポリエステル素材を編んで形成される帯状の可撓ベルト素材22からなり、変形自在に構成されている。ベルト本体部21の下端部21d側(一端部側)には、図2に示すように、ベルト本体部21の端部を折り返して縫い合わせた連結部23が設けられている。ベルト本体部21の上端部21u側(他端部側)には、後記する把持部40が設けられている。ベルト本体部21は、図2に示すように、把持部40がシートバック12の外部に位置するように、シートバック12の上端部12uに設けられている開口部16を通されている。ベルト本体部21の連結部23は、ピン18によって、ロック解除レバー17に連結されている。即ち、可撓ベルト素材22が、本願発明に係るベルト本体部と等しい素材に相当する。
【0017】
<姿勢保持部30について>
姿勢保持部30は、ベルト本体部21の延びる方向に沿って設けられ、自重や把持部40の重量によって変形せずに姿勢保持可能なように構成されている。姿勢保持部30は、図2に示すように、ベルト本体部21の上端部21uから、連結部23の直上位置まで延びているため、ベルト本体部21を自動的に起立した姿勢に保持することができる。これにより、把持部40をシートバック12の外部で位置決めさせることができるようになり、例えば、図4に示すように、荷物Gが把持部40の上に乗ってしまう等した場合でも、把持部40が、シートバック12の内部(ベルト通路T)に落ち込むことを防止できる。姿勢保持部30は、ベルト本体部21を構成する可撓ベルト素材22に対して、例えば、中軟質のポリプロピレン製樹脂素材からなる矩形の樹脂板31を、縫い付けることで形成されている。より詳細には、姿勢保持部30の下端部30d側では、図2に示すように、樹脂板31の基端部31dが、ベルト本体部21の連結部23に近接するように配置された後、樹脂板31の板面の前後両側を可撓ベルト素材22のベルト面に面接触させた状態で、可撓ベルト素材22と樹脂板31の基端部31dとが合わされた位置S2で共縫いされる。一方、姿勢保持部30の上端部30u側では、樹脂板31の先端部31uが、板面の前側のみを可撓ベルト素材22のベルト面に面接触させた状態で、可撓ベルト素材22と樹脂板31の先端部31uとが合わされた位置S3で共縫いされる。その後、樹脂板31の先端部31uよりも上方に余っている可撓ベルト素材22を、適宜の余裕をもたせて後方に折り返して、前記位置S3よりも下方の位置S4で、樹脂板31の板面の後側に面接触させ、この位置S4で、樹脂板31と可撓ベルト素材22とを共縫いすることで形成されている。上記のように形成される姿勢保持部30では、樹脂板31の先端部31uの後側に、可撓ベルト素材22が円弧を描くようなリング部22wが形成される。即ち、樹脂板31の先端部31uの板面の後面と、リング部22wのベルト面との間には、図2に示すように、適宜の隙間が空くことになり、この空間に指を入れられるように設定することで、把持部40が設けられている。
【0018】
<把持部40について>
把持部40は、操作者が指を掛けたり掴んだりして、引き操作することができる部分である。把持部40は、図2に示すように、略リング形状を有している。把持部40のリング形状の周方向の前側は、図2に示すように、姿勢保持部30の上端部30u(樹脂板31の先端部31u)から構成されており、後側は、可撓ベルト素材22のリング部22wから構成されている。姿勢保持部30は、上記したように、硬い構造であるため、可撓ベルト素材22からなるリング部22wの重量は、姿勢保持部30の上端部30uによって支えられる。
【0019】
<本実施形態に係るベルト構造20の動作について>
ベルト本体部21の把持部40が引き操作されていない状態では、動作レバー17は、図2に示すように、初期位置に位置決めされている。このとき、上記したように、姿勢保持部30によって、ベルト本体部21は、自動的に起立した所定の姿勢に保持される。また、把持部40を構成する可撓ベルト素材22のリング部22wは、上記したように、姿勢保持部30の上端部30uによって支えられているため、把持部40のリング形状が保持される。この状態から、把持部40のリング形状に指を掛けて掴み、把持部40を引き操作すると、図3に示すように、動作レバー17が初期位置よりも上方に引き上げられ、ロック機構のロック状態が解除される。この状態から手を離すと、動作レバー17が、付勢力によって初期位置に戻ろうとするため、ベルト本体部21も下方に引き下げられ、図2に示すように、把持部40を引き操作する前の状態に戻る。
【0020】
<本実施形態に係るベルト構造20の長所>
本実施形態のベルト構造20によると、ベルト本体部21の把持部40の周方向の一部が、姿勢保持可能な姿勢保持部30の上端部30uから構成されている。これにより、姿勢保持部30の上端部30uによって、把持部40の把持部40のリング形状が保持されるようになり、把持部40が掴み易くなる。また、ベルト本体部21の把持部40が、シートバック12の外部の所定位置で位置決めされるようになるため、シートバック12の内部(ベルト通路T)に入り込んでしまうことを防止できる。また、姿勢保持部30を単純な構造によって構成することができるようになるため、製造コストを低下させることができる。また、把持部40を単純な構造によって構成することができるようになるため、製造コストを低下させることができる。
【0021】
[ベルト構造20の変形例]
なお、本発明に係るベルト構造にあっては、上記した実施形態1のベルト構造20の構成に限定されるものではなく、適宜変更が加えられて構成されるものであってもよい。
【0022】
例えば、姿勢保持部30は、樹脂板31を用いずに、可撓ベルト素材22に対して多数の縫い目を設けることで形成されるものであっても良いし、例えば、樹脂を可撓ベルト素材22に対して含浸させる等して形成されるものであっても良い。
【0023】
また、本実施形態では、姿勢保持部30が連結部23の直上位置まで延びている例、即ち、図2に示すように、樹脂板31の下端部31dが、ベルト本体部21の連結部23の近傍位置にある例を示した。しかし、樹脂板31の下端部31dを連結部23まで延ばし、例えば、樹脂板31の下端部31dに直接ピン18を通すような構造であっても良い。
【0024】
また、本実施形態では、ベルト構造20を、車両用シート10のシートバック12について用いる例を示した。しかし、ベルト構造20は、例えば、車両用以外のシートにも利用可能であるし、シート以外でもロック機構を備えるその他の装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
12 シートバック(装置)
17 ロック解除レバー(動作レバー)
20 ベルト構造
21 ベルト本体部
21d ベルト本体部の下端部(一端部)
21u ベルト本体部の上端部(他端部)
22 可撓ベルト素材(ベルト本体部と等しい素材)
30 姿勢保持部
31 樹脂板
40 把持部
図1
図2
図3
図4
図5