(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
扱胴軸(12)によって扱室(10)内に回転自在に支持される脱穀装置の扱胴であって、前記扱胴軸(12)に支持された回転体(61)の外周面に、前記扱胴軸(12)の軸心方向に沿う凸部(114)と凹部(115)を交互に形成し、該隣接する凸部(114)の間にわたって装着されて、該隣接する凸部(114)の間に前記凹部(115)を形成する第1板体(112)を備え、前記凹部(115)上に装着される着脱自在な第2板体(121)を備え、該第2板体(121)を前記凹部(115)上に装着することで、前記凹部(115)の深さよりも浅い第2凹部(115a)が形成される構成とした脱穀装置の扱胴。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、基本構成から詳説する。なお、理解を容易にする為に便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
汎用コンバインは、
図1、
図2に示すとおり、機体フレーム1の下方には土壌面を走行する為の左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の上方左側には脱穀・選別を行なう脱穀装置3が設けられ、脱穀装置3の前方には圃場の穀桿を収穫する刈取前処理装置4が設けられている。脱穀装置3で脱穀・選別された穀粒は脱穀装置3の右側に設けられたグレンタンク5に貯留され、貯留された穀粒は排出筒7により外部へ排出される。また、機体フレーム1の上方右側には操作者が搭乗する操作部を備えた操縦部6が設けられている。
【0022】
刈取前処理装置4は、掻込み装置4Aと、横刈刃装置4Bと、オーガ装置4Cと、フィーダハウス4D等によって構成され、掻込み装置4Aと、横刈刃装置4Bによって刈取られた稲、麦、大豆、そば等の穀稈は、オーガ装置4Cによってフィーダハウス4Dの前方に寄せ集められた後、フィーダハウス4Dによって脱穀装置3に揚上搬送される。
【0023】
脱穀装置3は、
図3〜
図5に示すとおり、上部に穀稈の脱穀を行う扱室10を備え、扱室10の下側に脱穀された穀粒の選別を行なう選別室20を備えている。また、扱室10で脱穀された排藁は、扱胴11によって後方に搬送された後、扱胴11の終端部から外部に排出される。なお、
図3、
図5の矢印は、扱胴11の回転方向を示しており、正面視において、扱胴11は反時計方向に回転している。
【0024】
(扱室)
扱室10の前後板10A、10Cには、機体前後方向に延伸する扱胴11を軸架する扱胴軸12の前後端部がそれぞれ回転自在に軸支され、扱室10の中板10Bには、
図6、
図7に示すとおり、扱胴11の下側に張設される扱網50が支持されている。なお、中板10Bの上部は、脱穀されながら後方に搬送される穀稈への抵抗を低減するべく、上部から基部に向かって円弧状の切欠き部が形成されている。また、供給される穀稈の量に応じて中板10Bを上下方向に移動する移動手段を設けることがより好適である。
【0025】
(扱胴)
扱胴11は、
図8、
図21、
図22に示すとおり、扱胴軸12の前端部に設けられた前側板(前部支持部材)13と、扱胴軸12の前側部に設けられた中側板(中間部支持部材)14と、扱胴軸12の後端部に設けられた後側板(後部支持部材)15によって支持された筒体(請求項の「回転体」)61によって形成され、筒体61は前部に円錐台状の取込み螺旋部16を備え、後部に円筒状の筒部17を備えている。筒部17の外周面には扱歯60Aが立設されたプレート60が周方向に60度の間隔を持って周設されている。なお、扱歯60Aは扱歯18A、19A(第1扱歯18A,第2扱歯19A)を含み、プレート60はプレート18、19(第1プレート18,第2プレート19)を含む。
【0026】
鋼材等からなる円柱状の扱胴軸12の前側部(前後方向の中心よりも前側の部位)には、中側板14を固定する略三角形の固定部材12Aが設けられ、後端部には、後側板15を固定する略三角形の固定部材12Bが設けられている。また、固定部材12Aの前面には、ボルト等の締結部材が溶接によって固着されており、固定部材12Bの後面には、ボルト等の締結部材が溶接によって固着されている。なお、本実施形態においては、1個の中側板14に対応して、扱胴軸12の前側部に1個の固定部材12Aが設けられているが、設置する中側板14の数、位置に応じて、固定部材12Aの数、位置は異なる。
【0027】
鋼材等からなる円盤状の前側板13は、供給された穀稈の前方への脱落を防止するべく、取込み螺旋部16の前端部の外径よりも大径に形成されている。また、前側板13の中心部は、溶接等によって扱胴軸12に固着され、前側板13の後面は、取込み螺旋部16の前端部の中心に向かって延伸する折曲げ部にボルト等の締結手段によって連結されている。
【0028】
鋼材等からなる円盤状の中側板14は、扱胴軸12と、筒部17を連結する部材であり、一度に多量の穀稈が供給されたときに穀稈の押圧によって筒部17が変形することを防止する。
【0029】
中側板14の外周部には、
図11に示すとおり、筒部17の内周部に溶接等によって固着された支持部材17Aを緩嵌させるべく、周方向に60度の間隔を持って略矩形上の切込み部14Aが形成され、各切込み部14Aの右側に隣接する部位には、
図10に示す筒部17の内周部に形成された切欠き部17Dと係合する突起部14Bが形成されている。また、中側板14の中心部は、
図9に示すとおり、扱胴軸12上に設けられた固定部材12Aにボルト等の締結手段によって連結されている。
【0030】
後方に搬送される穀稈は、シーブ23の前側部の上方に設けられた扱室10の中板10Bによって抵抗を受けるので、中板10Bの前側には多量の穀稈が滞留し、滞留した穀稈は、扱胴11の筒部17を押圧する。従って、滞留した穀稈の押圧によって筒部17の変形を防止すべく、扱胴11の中側板14を中板10Bの前方の近傍位置に設けるのが好適である。なお、本実施例においては、前後方向に延伸する筒部17の前側部(前後方向の中心よりも前側の部位)に1枚の中側板14を設けているが、2枚以上の中側板14を設けることもできる。また、複数の中側板14を筒部17の前側部から後側部(前後方向の中心よりも後側の部位)に亘って設けることもできる。
【0031】
中側板14の外周部は、突起部14Bを筒部17の溝部17Dに係合させるとともに、溶接等によって筒部17の内周部に固着される。中側板14の中心部と扱胴軸12の固定部材12Aの連結は、中側板14に形成された略三角形の挿入孔14Cと、後側板15に形成された略三角形の挿入孔15Cに扱胴軸12を挿通し、扱胴軸12を60度回転させた後に連結する。また、扱胴軸12の固定部材12Aへのボルト等の連結作業は、筒部17の前側部に設けられた開閉自在な作業窓(図示省略)を開放にして行う。
【0032】
鋼材等からなる円盤状の後側板15は、一度に多量の穀稈が供給された場合に、穀稈の押圧によって筒部17の変形を防止べく、扱胴軸12と、筒部17を連結する部材である。
【0033】
後側板15の外周部には、
図12に示すとおり、周方向に60度の間隔を持って突起部15Bが形成されている。突起部15Bは、
図10に示す筒部17の内周部に形成された切欠き部17Eと係合する。また、後側板15の中心部は、
図9に示すとおり、扱胴軸12上に設けられた固定部材12Bにボルト等の締結手段によって連結されている。さらに、後側板15の後面には、扱胴11の終端部から機外に排出される排藁の扱胴軸12や固定部材12Bへの巻き付きを防止するべく、鋼材等からなるアングル状の除去部材15Dが、回転方向に約30度の後退角度を持たせて周方向に180度の間隔を持って溶接によって後側板15に固着されている。
【0034】
後側板15の外周部は、突起部15Bを筒部17の溝部17Eに係合した後に、溶接等によって筒部17の内周部に固着される。中側板15の中心部と扱胴軸12の固定部材12Bの連結は、中側板14に形成された略三角形の挿入孔14Cと、後側板15に形成された略三角形の挿入孔15Cに扱胴軸12を挿通し、扱胴軸12を60度回転させた後に連結する。また、扱胴軸12の固定部材12Bへのボルト等の連結作業は、筒部17の後方から行う。
【0035】
鋼材等からなる円錐台状の取込み螺旋部16の外周面には、供給された穀稈を後方に搬送するべく、後側に向かって傾斜した搬送螺旋16Aが設けられ、搬送螺旋16Aの下部は、周方向に所定の間隔をもって略三角形のリブ16Bを設けることで、搬送螺旋16Aの剛性を高めている。また、取込み螺旋部16の終端部は、筒部17の前端部に溶接等によって固着されている。
【0036】
鋼材等からなる円筒状の筒部17の内周面には、
図11、
図12に示すとおり、複数の扱歯18Aが立設されたプレート18及び複数の扱歯19Aが立設されたプレート19をそれぞれ固定する前後方向に延伸する支持部材17Aが周方向に60度の間隔を持って溶接等によって固着されている。
【0037】
支持部材17Aは、断面形状が門型のチャンネル材であり、その頂部17B(筒部の内周面と対向する部位)は、外方に向かって円弧状に形成されており、筒部17の内周面と支持部材17Aを強固に固着するべく、頂部17Bの曲率は、筒部17の曲率と略同一にされている。また、支持部材17Aの頂部17Bの内面には、ナット等の締結部材が溶接によって固着され、支持部材17Aの内方に向かって延伸する両脚部17Cは、中側板14の切込み部14A及び後側板15の切込み部15Aに緩嵌されており、中側板14及び後側板15には、溶接等によって固着されていない。
【0038】
筒部17の外周面には、前後方向に複数の扱歯18Aが立設された鋼材等からなる略板状のプレート18と、前後方向に複数の扱歯19Aが立設された鋼材等からなる略板状のプレート19が周方向に60度の間隔を持って交互に周設されている。プレート18、19は、
図11、
図12に示すとおり、筒部17の内周面に固着された支持部材17Aとボルト等の締結手段(締結具)17Gによって着脱自在に取付けられ、支持部材17Aとプレート18、19によって筒部17を挟持する構成となっている。また、プレート18、19は、外方に向かって円弧状に形成されており、プレート18、19の曲率は、筒部17の曲率と略同一にされている。
【0039】
本実施形態においては、筒部17の外周面に扱歯18Aが立設されたプレート18と、扱歯19Aが立設されたプレート19を周方向に60度の間隔を持って交互に周設しているが、
図13に示すとおり、扱歯18Aが立設されたプレート18と、扱歯19Aが立設されたプレート19を周方向に45度の間隔を持って交互に周設することもできる。また、略板状のプレート18、19に替えて、鋼材等からなる角管状のプレート18、19にすることもできる。
【0040】
図14に示すとおり、部品点数を削減すべく、外方部に突出部98B、99Bが形成されたプレート98、99を筒部97にボルト等の締結部材で連結し、扱歯98A、99Aをプレート98、99の突出部98B、99Bに形成された孔と筒部97に形成された孔に挿通し、扱歯98A、99Aとプレート98、99を溶接等によって固着させることもできる。また、
図15に示すとおり、外方部に突出部98B、99Bが形成されたプレート98、99を2枚積層し、筒部97にボルト等の締結部材で連結し、扱歯98A、99Aをプレート98、99の突出部98B、99Bに形成された孔に挿通し、扱歯98A、99Aとプレート98、99を溶接等によって固着させることもできる。なお、この場合、筒部97の外周面に孔を加工する必要が無くなり、製作費用の低減にも繋がる。
【0041】
筒部17の外周面に隣接して取付けられたプレート18の扱歯18Aの間隔と、プレート19の扱歯19Aの間隔は、
図8に示すとおり、扱歯19Aの間隔を、扱歯18Aの間隔の2倍とし、扱歯18Aと扱歯19Aの位相を1/2位相(1/2間隔)相違させて、側面視において、扱歯18Aと扱歯19Aが相互に重ならない配置とすることで、供給された穀稈の扱歯18、19への絡みつきを防止し、脱穀性能を高め、後方への穀稈の搬送を効率的に行うことができる。
【0042】
本実施形態においては、扱歯19Aの間隔を、扱歯18Aの間隔の2倍としているが、扱歯19Aの間隔を、扱歯18Aの間隔の3倍、4倍とすることもできる。また、
図16に示すとおり、プレート18、19を前後方向に2分割にすることができる。2分割にした場合、前側プレート18C、19Cに立設された扱歯18A、19Aに摩耗が生じた場合、後側プレート18D、19Dを筒部17の外周面に取付けたまま、前側プレート18C、19Cのみを取り外すことができ交換作業が容易になる。なお、
図16に示す本実施形態においては、プレート18、19を前後方向に2分割にしているが、3分割にすることもできる。
【0043】
鋼材等からなる扱歯18A、19Aは、
図8、
図11、
図12に示すとおり、円柱状に形成することで、供給された穀稈の絡みつきによる脱穀性能の低下を防止する。また、扱歯18A、19Aは、扱胴11の回転方向を基準として約10度の後退角を持ってそれぞれプレート18、19に溶接等によって固着されている。なお、扱胴11の前側部で脱穀性能を高め、扱胴11の後側部で穀稈の搬送性能を高めるべく、プレート18、19の前側部(中側板14より前方に位置する部位)に立設される扱歯18A、19Aの後退角を小さくし、プレート18、19の後側部(中側板14より後方に位置する部位)に立設される扱歯18A、19Aの後退角を大きくするか、後述する扱室10後部の案内板10Eの前端よりも後方に位置する扱歯18A、19Aの後退角を大きくすることが好適であり、また、前側から後側に向かうに従って段階的、連続的に扱歯18A、19Aの後退角を大きくすることもできる。
【0044】
扱網50からの濾過率を高め、穀物の表面への外傷を防止するべく、前側部の扱歯18A、19Aの高さを低くし、後側部の扱歯18A、19Aの高さを高くするのが好適である。また、前側から後側に向かうに従って段階的、連続的に扱歯18A、19Aの高さを高くすることもできる。
【0045】
プレート18、19が2分割されている場合においては、
図17に示すとおり後側プレート18D、19Dと筒部17の間にスペーサ18E、19Eを設け、後側プレート18D、19Dに立設される扱歯18A、19Aの高さを、前側プレート18C、19Cに立設された扱歯18A、19Aよりも高くすることができる。また、
図18に示すとおり、支持部材17Aの頂部17Bの内面に基端部にネジ等が形成された扱歯18A、19Aを締結するナット等の締結部材17Fを溶接によって固着し、扱歯18A、19Aのネジ込み量によって、扱歯18A、19Aの高さを調整することもできる。なお、扱歯18A、19Aの高さとは、筒部17の外表面から、扱歯18A、19Aの先端部までの高さを言う。
【0046】
扱室10の上部には、
図3〜
図5に示すとおり、内面に複数の送塵ガイド42が並設された扱胴カバー40が設けられている。扱胴カバー40は、正面視において、前後方向に延伸する軸41を中心に開閉する。
【0047】
図5に示すとおり、扱胴11は、扱胴軸12によって扱室10の前後板10A、10Cに支持されており、後述する送塵ガイド42による穀稈の後方への搬送を効率的に行うべく、扱胴11の筒部17の外周面と扱胴カバー40の頂部40Aの距離X1を、扱胴11の筒部17の外周面と扱胴カバー40の側部40B、40Cの距離X2よりも大きく設定している。
【0048】
また、扱胴11の筒部17の外周面と扱網50の下部50Aの距離Y1を、扱胴11の筒部17の外周面と扱網50の側部50B、50Cの距離Y2よりも小さく設定することで、脱穀を効率的に行なって扱ぎ残しを低減する。
【0049】
脱穀された排藁は、扱胴11の終端部から扱室10の後部に設けられた排出口10Dを通過して外部に排出される。排出口10Dは、
図5に示すとおり、扱胴11の回転方向の下流側の上部(扱胴11の12持〜3時に対向する位置)に設けているので、排藁を外部に効率的に排出することができる。また、扱室10の扱網50の終端部の下方には、扱胴11の終端部から漏下する排藁等の排塵物を揺動選別装置21の後側に誘導するべく、左右方向に延伸し、後下り傾斜する案内板10Eが設けられ、扱室10の扱胴11の終端部の下方には、排出口10Dを通過した排藁を外部に誘導するべく、略四角形の寄せ板10Fが前後方向に沿って設けられている。
【0050】
扱胴カバー40の内面には、穀稈の後方への搬送を効率的に行うべく、6枚の鋼材等からなる送塵ガイド42が並設されている。
送塵ガイド42の下端部は、穀稈への抵抗を低減するべく、左端部(扱胴11の回転方向の上流側)から下方に向かって傾斜した後、穀稈の後方への搬送の効率を高めるべく、扱胴11の外周面に対向して下端部から基部に向かって円弧状に切欠かれた後、排藁の漏下を効率的に行うべく、略幅方向の中間部から下方に向かって再び傾斜しており、送塵ガイド42の下端部と扱胴11の外周面の間隔が広がっている。
【0051】
回転レバー46を揺動させて送塵ガイド42の傾斜角度を変更することで、後方への穀稈の搬送を効率的に行うことができる。
各送塵ガイド42は、送塵ガイド42の幅方向の略中心に設けられた軸43に回転自在に支持されており、各送塵ガイド42の左側上部は、前後に延伸している連結レバー44によって相互に連結されている。連結レバー44の前部は、軸45の下部に溶接等によって固着され、軸45は、扱胴カバー40の外面に設けられた支持部材47に回転自在に支持され、軸45の上部には、連結レバー44に略直交する方向に延伸した回転レバー46が溶接等によって固着されている。なお、後方への搬送される穀稈の押圧によって送塵ガイド42の傾斜角度の変動を防止するべく、軸43は、送塵ガイド42の幅方向の中心よりも左側(扱胴11の回転方向側)に配置するのが好適である。
(第2形態)
次に、第2形態の扱胴11について詳述する。また、同一部材については、同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0052】
筒部17の外周面に隣接して取付けられたプレート78の扱歯78Aの間隔と、プレート79の扱歯79Aの間隔は、後方への穀稈の搬送を効率的に行い、扱網50からの濾過率を高めるべく、
図19に示すとおり、プレート78、79の前側部に立設された扱歯78A、79Aの間隔を、プレート78、79の後側部に立設された扱歯78A、79Aの間隔の2倍としている。また、隣接して取付けられたプレート78、79の扱歯78A、79Aは前側部では、位相を相違させて、側面視において、扱歯78Aと扱歯79Aが相互に重ならない配置とし、後側部では、位相を一致させて、側面視において、扱歯78Aと扱歯79Aが相互に重なっている。なお、前述したとおり、プレート79に立設された扱歯79Aの間隔を、周方向に隣接するプレート78に立設された扱歯78Aの間隔の2〜4倍大きくすることもできる。
(第3形態)
次に、第3形態の扱胴11について詳述する。また、同一部材については、同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0053】
供給された穀稈の扱歯88、89への絡みつきを防止し、脱穀性能を高め、後方への穀稈の搬送を効率的に行うべく、
図20に示すとおり、筒部17の前側部においては、扱歯88Aが立設されたプレート88と、扱歯89Aが立設されたプレート89を周方向に90度の間隔を持って交互に周設し、後側部においては、扱歯88Aが立設されたプレート88と、扱歯89Aが立設されたプレート89を周方向に60度の間隔を持って交互に周設している。また、第3実施形態においては、扱歯88Aの間隔と扱歯89Aの間隔は等しく、側面視において、扱歯88Aと扱歯89Aの位相を一致させて、側面視において、扱歯88Aと扱歯89Aが相互に重なっている。なお、前述したとおり、プレート89に立設された扱歯89Aの間隔を、周方向に隣接するプレート88に立設された扱歯88Aの間隔の2〜4倍大きくすることもできる。
【0054】
(選別室)
扱室10の下側には、扱室10から漏下する脱穀処理物を穀粒とそれ以外の藁屑等に選別するための選別室20が設けられている。選別室20の上部には揺動選別装置21が設けられ、選別室20の下部には揺動選別装置21に空気を送風する唐箕25と、揺動選別装置21から漏下する穀粒を回収する一番受樋28と、揺動選別装置21から漏下する枝梗等が付着した穀粒を回収する二番受樋29が、前側から後側に向かって設けられている。なお、一番受樋28で回収された穀粒はグレンタンク5に移送され、二番受樋29で回収された穀粒等は扱胴11の前部に移送され、再び扱胴11によって脱穀される。
【0055】
揺動選別装置21は、唐箕25の上方に配置された移送棚22と、移送棚22の下流側に配置されたシーブ23と、さらにシーブ23の下流側に配置されたストローラック24によって構成されている。
【0056】
移送棚22は、扱室10から漏下する穀粒を下流側に配置されたシーブ23に移送できればよく、移送棚22の後部を後下がりに傾斜させたり、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりすることができる。
【0057】
シーブ23は、移送棚22から移送された穀粒又は扱室10から直接漏下する穀粒と藁屑等の異物を選別する篩であり、下流側の部位ほど高くなる傾斜姿勢の薄い板状体からなる固定シーブ部材を揺動選別装置21の揺動方向に所定の間隔を置いて平行に複数並設したものである。
【0058】
ストローラック24は、シーブ23から漏下しなかった比較的大きな藁屑中から枝梗等が付着した穀粒等を篩い選別する篩である。
唐箕25の送風口26には、風割27によって上下に形成された上側風路26Aと下側風路26Bが設けられている。また、送風口26の後側に設けられた一番受樋28の内部には、グレンタンク5に連通する螺旋コンベア式の一番コンベア28Aが配置され、二番受樋29の内部には、扱胴11の前部に連通する螺旋コンベア式の二番コンベア29Aが配置されている。
(本発明の扱胴の実施形態)
図23以降の実施例では、上述の脱穀装置に対して扱胴11の構成と回転方向のみが異なる。選別室20と扱網50等の構成は共通であるため、説明を省略する。
【0059】
即ち、
図23〜
図29に示すように、扱胴軸12の前部と中間部4箇所と後部に、前端部の円板状の第1支持板(請求項の「前部支持部材」)100と、前部の第2支持板101と、中間部の第3支持板102と、後部の第4支持板103と、後端部の第5支持板(請求項の「後部支持部材」)104が、扱胴軸12に溶接された5つの三角板12Pを介して固定されている。すなわち、これらの支持板101〜104の中心部には、三角形状の穴12Hが形成されており、この穴12Hに上記の三角板12Pを通過させながら、扱胴軸12を扱胴11の内部に挿入し、扱胴11と扱胴軸12の回転位相を変えて、各三角板12Pと支持板101〜104を3つのボルト110Aで締結固定する構成である。尚、扱胴11の前部内周面には、環状の補強板105が溶接されている。
【0060】
図26に示すように、上記第2支持板101の外周部と、第3支持板102の外周部と、第4支持板103の外周部と、第5支持板104の外周部は、それぞれ凹凸形状に形成されており、この凸部と、上記第1支持板100には、ボルト孔106がそれぞれ形成されている。
【0061】
断面形状をコ字型に形成した2つの鋼材を、その開放側を対向させて嵌合して溶接し、角パイプ状の6本の支持フレーム107を構成する。
この支持フレーム107の下壁(内側壁)には、各支持板に対応する部位に、取付ステー108が起立姿勢で溶接されており、この取付ステー108にはボルト挿入用の2つの長孔109が形成されている。
【0062】
これにより、支持フレーム107を第2支持板101と第3支持板102と第4支持板103と第5支持板104の外周部に形成した凸部の上面に当てるようにして、支持板側のボルト孔106と支持フレーム107側の長孔109とにボルト110を挿入して締結固定する。支持フレーム107側の長孔109を利用して、各支持板の凸部上面に対する支持フレーム107の位置を、扱胴11の直径方向に調節することができる。
【0063】
また、各支持フレーム107の前端部に溶接された取付ステー108は、第1支持板100の後側面に当てて、上記と同様に長孔を介してボルト110で締結固定する。
このようにして固定された支持フレーム107の上面から、各支持板101〜104の外周部に形成された凹部に沿い、この支持フレーム107に隣接する支持フレーム107の上面に至るように屈折成形した鋼板(請求項の「第1板体」)112を設ける。
【0064】
この鋼板112の両端部にはボルト孔が形成されており、一方、上記の各支持フレーム107の上壁(外側壁)の内側面には、ウエルドナット111が溶接されている。これによって、鋼板112の両端部を、隣接する支持フレーム107の上壁に載せ、上記の鋼板112側のボルト孔と支持フレーム107側のウエルドナット11にボルト113を挿入し、鋼板112を支持フレーム107に締結固定する。これによって、支持フレーム107の上側に重合する鋼板112の端部を上面とする凸部114と、各支持板101〜104の外周部の凹部に沿う鋼板112の中間部を下面とする凹部115が形成される。また、鋼板112において、上記凸部114の上面から凹部115の下面へ連続する面を傾斜させ、傾斜面112Sを形成する。
【0065】
一方、への字形状に屈折成形した長尺の帯状鋼板116の幅方向中央部に、多数の丸棒状の扱歯60Aの基部を溶接し、この帯状鋼板116の幅方向両端部に、ボルト孔を形成する。これによって、帯状鋼板116の幅方向両端部に形成したボルト孔と、鋼板112の端部に形成したボルト孔と、支持フレーム107側のウエルドナットにボルト113を挿入し、共締め状態に締結固定する。尚、扱歯60Aは、扱胴11の回転方向に対して後退角を持たせて帯状鋼板116に溶接しており、扱胴軸12の軸心を中心とした放射方向に対して15度だけ傾斜させている。また、扱歯60Aにおける扱胴11の回転方向下手側には、この扱歯60Aを補強する補強ステー117が、扱歯60Aと帯状鋼板116にわたって溶接されている。
【0066】
また、第1支持板100の前側には、テーパ面を有する掻込部118が固定され、この掻込部118の外周面には、取り込み用の搬送螺旋119が溶接されている。搬送螺旋119の側面と掻込部118の外周面の間には、補強ステー120を溶接している。上記掻込部118と回転体61によって、扱胴11が形成される。尚、搬送螺旋119の巻き方向は上述の構成とは逆向きとし、扱胴11の回転方向は、上述の構成とは逆方向となる。
【0067】
以上の構成により、扱胴軸12に支持された回転体61の外周面に、扱胴軸12の軸心方向に沿う凸部114と凹部115が交互に形成され、凸部114に多数の棒状の扱歯60Aが備えられる。
【0068】
また、扱胴軸12の軸心方向から視て、凸部114の上面から凹部115の下面へ連続する傾斜面112Sが設けられ、凹部115内における扱胴軸12の軸心を中心とした円周方向での幅が、扱胴軸12の軸心から離れるほど大きくなる。
【0069】
隣接する凸部114の間にわたって装着し、隣接する凸部114の間に凹部115を形成する第1板体112が備わる。
(円筒扱胴への組替構成)
図29に示すように、各支持フレーム107の上面間に亘る幅を有した6枚の円弧状鋼板(請求項の「第2板体」)121を設け、この円弧状鋼板121の両端部にボルト孔を形成する。この円弧状鋼板121の曲率半径は、扱胴軸12の軸心から各支持フレーム107の上面に至る長さである。
【0070】
これによって、各支持フレーム107の上面に、鋼板(第1板体)112の両端部を載せ、この上に円弧状鋼板121の両端部を重ね、更にこの上に帯状鋼板116を重ねてボルト113で共締め状態に締結固定すると、凹部115が塞がれ、回転体61は円筒形状となる。すなわち、円弧状鋼板121を、隣接する凸部114の上面間にわたって装着した状態では、扱胴軸12の軸心方向から視て、回転体61の外周縁が円形を呈する。
【0071】
尚、上記鋼板112と円弧状鋼板121を取り外し、支持フレーム107に帯状鋼板116だけをボルト113で締結固定して使用することも可能である。
(扱胴の後端部)
図22、
図27に示すように、上記回転体61の後端部には、この回転体61よりも直径の大きい皿状の巻付防止の円盤122を固定し、回転体61の後端と扱室10の後板10Cの間の隙間を塞ぎ、扱胴軸12への藁の巻き付きを防止する構成としている。
(扱胴組替構成の別実施例)
図30に示すように、上述の円弧状鋼板(第2板体)121を,浅く曲げた平板状の鋼板に変更し、この第2板体121を凹部115上に装着することで、上述の凹部115の深さよりも浅い第2凹部115aが、隣接する凸部114の間に形成される構成としてもよい。
【0072】
これによって、収穫する作物の状態に応じて扱室10内の容積を調節し、扱室10内での詰りや過負荷状態の発生を少なくし、脱穀作業を円滑に行なうことができ、穀粒の収穫損失を低減することができる。
【0073】
図31、
図32に示すように、上述の円弧状鋼板(第2板体)121の曲率を小さくし、この円弧状鋼板121を、表裏逆に装着できる構成としてもよい。
これによって、
図31のように、隣接する凸部114の間に、底辺を円弧状とした浅い凹部115が形成される状態と、
図32のように、隣接する凸部114の間に、扱胴11の外周から外方へ膨出する膨出部が形成される。
【0074】
これにより、収穫する作物の状態に応じて扱室10内の容積を変更することができ、扱室10内の容積を拡大すれば、扱室10内での詰まりや過負荷状態の発生を少なくして脱穀作業を円滑に行なうことができ、また、扱室10内の容積を小さくすれば、扱ぎ残しの発生を少なくすることができる。
【0075】
また、
図33に示すように、上述の凹部115の底部に、扱胴11の回転によって扱室10内の脱穀処理物を移送案内する案内板200を設けてもよい。この案内板200は、扱胴軸12に対して斜めに交差する姿勢で第1板体112の表面に固定される。
【0076】
これによって、扱室10内での脱穀処理物の移送能力を高め、扱室10内での詰まりや過負荷状態の発生を少なくして脱穀作業を能率よく行なうことができる。
また、
図34に示すように、前記第2板体121を凹部115に装着した状態で、この第2板体121の姿勢が、扱胴11の回転方向上手側の部位が扱胴11の下手側の部位よりも高くなるように傾斜する構成としてもよい。
【0077】
これによって、扱胴11の回転に伴なって脱穀処理物が凸部114側へ円滑に移動し、この凸部114に備えた棒状の扱歯60Aの作用を十分に受けることができる。
また、
図35に示すように、上記第1板体112と第2板体121を一体の箱型に形成してもよい。これによって、円筒形状とした扱胴11の表面強度が高まり、脱穀処理物から受ける反力によって変形しにくくなる。