(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングに差し込まれた前記信号伝達部材の一方面にある信号端子に接触可能な信号接点部が設けられた、前記差込口奥側から前記差込口手前側に延設された上ビーム、および、前記差込口奥側から前記差込口手前側に延設され、前記上ビームと共に前記信号伝達部材を挟持できるよう前記上ビームに対向して配置されており、前記差込口奥側の端部に基板と接続可能な接続部が設けられている下ビームを有し、且つ、前記差込口とは逆側の挿入口から、前記差込口奥側から前記差込口手前側に移動するようにして前記ハウジングに挿入され、前記下ビームが、前記リブ部で形成された溝に保持されている第2のコンタクトを、更に備え、
前記差込口手前側に位置する前記リブ部の端部は、前記第2のコンタクトの前記下ビームの端部よりも、前記差込口奥側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器に実装される比較的小型なFPCやFFC等の信号伝達部材と、各種の電気部品が実装される配線基板との電気的連結は、該配線基板に電気的接続がなされて固定されている(実装されている)電気コネクタが用いられて行われることが多い。
【0003】
該配線基板に実装される電気コネクタにおいては、該電気コネクタを構成する、導電性材料からなるコンタクトの接続部(電気コネクタが実装される配線基板の電極に例えばハンダ付けされる部分)とその接続部に対向する絶縁性材料からなるハウジング壁面との間隔、および、接続部から延びる下ビームとその下ビームに対向するハウジング壁面との間隔が狭い場合、配線基板と接続部のリフローハンダ付けの際に、ハンダ或いはフラックスが、接続部とハウジング壁面との間を伝い、さらには、下ビームとハウジング壁面との間を伝うことがある。
【0004】
そして、ハンダ或いはフラックスが、下ビームおよびその下ビームに対向して配置される上ビームを連結する連結部と、その連結部に対向するハウジング壁面との間を伝い、上ビームと、その上ビームに対向するハウジング壁面との間を伝い、上ビームに設けられた信号接点部(信号伝達部材の信号端子と接触可能な部分)に付着することがある。
【0005】
ここで、フラックスとは、ハンダより先に溶解し、溶けたハンダの表面および金属部分の酸化物、汚れを除去する、松ヤニ等の植物性天然樹脂を含有するものである。
【0006】
フラックスが信号接点部に付着すると、信号接点部と信号伝達部材の信号端子との導通に支障が生じ得る。これを防止可能な電気コネクタとして、例えば、特許文献1に記載のコネクタが知られている。
【0007】
特許文献1に記載されている電気コネクタは、接続部とその接続部に対向するハウジング壁面との間隔が、下ビームとその下ビームに対向するハウジング壁面との間隔よりも、広い(例えば、特許文献1の
図11参照)。これにより、ハンダ或いはフラックスが接続部とハウジング壁面との間を伝うことを、即ち、接続部とハウジング壁面との間に毛細管現象が発生することを、防止している。
【0008】
なお、特許文献1に記載されている電気コネクタでは、接続部とハウジング壁面との間にハンダ或いはフラックスが伝わないので、下ビームとハウジング壁面との間にも、ハンダ或いはフラックスが伝うことがない。このため、特許文献1に記載されている電気コネクタは、フラックスが信号接点部に付着することを防止可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されている電気コネクタ等では、電気部品全体の小型化の要請に伴い、上ビームおよび下ビームを有するコンタクトの配置間隔の短縮化(狭ピッチ化)が進められている。これに伴って、接続部とその接続部に対向するハウジング壁面との間隔、および、コンタクトとそのコンタクトに対向するハウジング壁面との間隔も、短縮化が進められている。
【0011】
上述の短縮化が行われた場合、特許文献1に記載されている電気コネクタでは、接続部とハウジング壁面との間隔、および、コンタクトとハウジング壁面との間隔が、ハンダ或いはフラックスが伝い得る狭さになる。即ち、毛細管現象が発生し得る狭さになる。このため、特許文献1に記載されている電気コネクタでは、上述の短縮化が行われた場合、フラックスが信号接点部に付着することを防止できない可能性があるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コンタクトの配置間隔の短縮化が行われても、フラックスが信号接点部に付着することを防止可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、この発明に係る電気コネクタは、
板状の信号伝達部材を差し込み可能な差込口が形成された絶縁性のハウジングと、
ハウジングに差し込まれた信号伝達部材の一方面にある信号端子に接触可能な信号接点部が設けられた、差込口奥側から差込口手前側に延設された上ビーム、および、差込口奥側から差込口手前側に延設され、上ビームと共に信号伝達部材を挟持できるよう上ビームに対向して配置されており、差込口手前側の端部に基板と接続可能な接続部が全面露出した状態で設けられている下ビームを有する、導電性の複数の第1のコンタクトと、を備え、
ハウジングは、
差込口奥側から差込口手前側に延設され、且つ、下ビームの配列方向に延設された平板状の、下ビームが載置される載置面を有する下受部と、
載置面に設けられ、下ビームを保持するための溝を形成する、差込口奥側から差込口手前側に延設されたリブ部と、を備え、
差込口手前側に位置するリブ部の端部は、差込口手前側に位置する下受部の端部よりも、差込口奥側に配置されており、
第1のコンタクトは、差込口手前側から差込口奥側に移動するようにして、差込口からハウジングに挿入され、下ビームが、リブ部で形成された溝に保持されており、
下ビームは、
載置面に載置された、差込口奥側から差込口手前側に延設された下長ビームと、
下長ビームの差込口手前側の端部と接続部との間に配置され、載置面に対して隙間を形成するために、載置面に対向する面が上ビームに向かって屈曲した屈曲部と、を備え、
差込口手前側に位置するリブ部の端部は、下長ビームと屈曲部との接続位置よりも、差込口奥側に配置されており、
屈曲部は、差込口手前側に位置する下受部の端部から離れて接続部が配置されるよう、差込口手前側に位置する下受部の端部より先まで延設されている。
【0016】
また
、ハウジングに差し込まれた信号伝達部材の一方面にある信号端子に接触可能な信号接点部が設けられた、差込口奥側から差込口手前側に延設された上ビーム、および、差込口奥側から差込口手前側に延設され、上ビームと共に信号伝達部材を挟持できるよう上ビームに対向して配置されており、差込口奥側の端部に基板と接続可能な接続部が設けられている下ビームを有し、且つ、差込口とは逆側の挿入口から、差込口奥側から差込口手前側に移動するようにしてハウジングに挿入され、下ビームが、リブ部で形成された溝に保持されている第2のコンタクトを、更に備え、
差込口手前側に位置するリブ部の端部は、第2のコンタクトの下ビームの端部よりも、差込口奥側に配置されている、
ものでもよい。
【0017】
また、ハウジングに対して移動可能に取り付けられ、
第1のコンタクトに当接可能に構成された
カム部を有し、その
カム部の移動による
第1のコンタクトへの押圧によって、信号接点部と信号端子との接触を行うアクチュエータを備える、
ものでもよい。
【0018】
また、
第1のコンタクトは、上ビームと下ビームとを連結する連結部を備えた略H字状の外形であり
、
カム部は、連結部を境界にして差込口奥側にある、上ビームと下ビームとに挟まれており、
アクチュエータは、カム部の回動によって、差込口奥側の上ビームをカム部で押し上げることで、連結部を境界にして差込口手前側の上ビームを揺動させて、信号接点部と信号端子との接触を行う、
ものでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、差込口手前側に位置する、下ビームを保持するための溝を形成するリブ部の端部は、差込口手前側に位置する、下ビームが載置される載置面を有する下受部の端部よりも、差込口奥側に配置されている。このため、例えば基板の電極に接続部がハンダ付けされた際に、ハンダ或いはフラックスが、接続部を伝い、下ビームと下受部の載置面との間を伝ったとしても、それらが、下ビームとリブ部との間に伝うことを、防止可能である。即ち、下ビームとリブ部との間に毛細管現象が発生することを、防止可能である。
【0020】
従って、本発明によれば、上ビームの信号接点部にフラックスが付着することを防止可能であり、コンタクトの配置方向において、部材同士の間隔を空ける必要がないので、コンタクトの配置間隔の短縮化が行われても、フラックスの付着防止を実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る電気コネクタ10を説明する。なお、各図において、電気コネクタ10の短手方向をx軸方向、長手方向をy軸方向、厚さ方向をz軸方向とする直交座標系を設定し、適宜参照する。また、各軸の矢印方向を+(プラス)で表し、その反対方向を−(マイナス)で表す。
【0023】
図1,2に示すように、電気コネクタ10は、略矩形状のハウジング11と、ハウジング11に配置された複数のコンタクト12と、ハウジング11に回動可能に取り付けられたアクチュエータ13と、ハウジング11の長手方向の両側端に夫々配置されたロック部14と、を備える。
【0024】
ハウジング11は、樹脂等の絶縁材から構成され、例えば電子機器等の配線基板に配置される。ハウジング11には、板状の信号伝達部材の一例であるFPC50を差し込み可能な差込口15が形成されている。差込口15は、手前側の開口が広く、奥側の開口が狭い形状である。
【0025】
また、ハウジング11は、差込口15奥側から差込口15手前側に延設され、且つ、コンタクト12の配列方向に延設された平板状の、コンタクト12が載置される載置面Saを有する下受部11aを備える。
【0026】
また、ハウジング11は、下受部11aの載置面Saに設けられ、複数のコンタクト12を保持するための対応する凹み状の溝Zaを形成する、差込口15奥側から差込口15手前側に延設されたリブ部11bを備える。
【0027】
ハウジング11の差込口15に差し込まれるFPC50は、配線に接続された電極51を有する。電極51は、FPC50の一端側に設けられた第1の電極51aと、FPC50の一端側から離れて設けられた第2の電極51bと、から構成されている。また、FPC50には、ロック部14に係止される切り欠き部52が形成されている。
【0028】
コンタクト12は、板状の金属等から形成される導電体であって、弾性を有している。コンタクト12は、ハウジング11に差し込まれたFPC50の、第1の電極51aに対応する位置に配置されている第1のコンタクト12aを備える。また、コンタクト12は、ハウジング11に差し込まれたFPC50の、第2の電極51bに対応する位置に配置されている第2のコンタクト12bを備える。
【0029】
第1のコンタクト12aは、電気コネクタ10の組み立ての際(アクチュエータ13がハウジング11に取り付けられる前に)、差込口15手前側から差込口15奥側に移動するようにして、差込口15からハウジング11に挿入される。
【0030】
一方、第2のコンタクト12bは、電気コネクタ10の組み立ての際(アクチュエータ13がハウジング11に取り付けられる前に)、差込口15とは逆側の挿入口16から、差込口15奥側から差込口15手前側に移動するようにしてハウジング11に挿入される。
【0031】
このとき、第1のコンタクト12aおよび第2のコンタクト12bが、ハウジング11の溝Za等に挿入されることで、ハウジング11に対して固定された状態になる。第1のコンタクト12aおよび第2のコンタクト12bは、ハウジング11の長手方向(y軸方向)に交互に配置されている。
【0032】
第1のコンタクト12aは、
図3(
図2に示すA−A線での断面図)に示すように、一対のビーム12a1,12a2(上ビーム12a1、上ビーム12a1よりも長い下ビーム12a2)を備える。
【0033】
上ビーム12a1および下ビーム12a2は、差込口15奥側から差込口15手前側に延設されている。上ビーム12a1は、差込口15手前側の端部に、第1の電極51aに接触可能に配置された第1の信号接点部12aaを備える。
【0034】
下ビーム12a2は、上ビーム12a1と共に、ハウジング11に差し込まれたFPC50を挟持できるよう上ビーム12a1に対向して配置されている。下ビーム12a2は、差込口15手前側の端部に、例えば電子機器等の配線基板の電極にハンダ付けされる(電極に接続可能な)第1の接続部12abを備える。第1の接続部12abは、接続面を除いて全面露出した状態である。
【0035】
また、下ビーム12a2は、下受部11aの載置面Saに載置された、差込口15奥側から差込口15手前側に延設された下長ビーム12a2_aを備える。下長ビーム12a2_aは、リブ部11bで形成された溝Zaに保持されている。
【0036】
また、下ビーム12a2は、下長ビーム12a2_aの差込口15手前側の端部と第1の接続部12abとの間に配置され、載置面Saに対して隙間を形成するために、載置面Saに対向する面が上ビーム12a1に向かって屈曲した屈曲部12a2_bを備える。
【0037】
上述した第1のコンタクト12aは、上ビーム12a1と下ビーム12a2とを接続する支柱部12a3を備える。上ビーム12a1と下ビーム12a2とが支柱部12a3で接続されることで、第1のコンタクト12aの外形は、略H字状を成している。
【0038】
支柱部12a3を境界として第1のコンタクト12aの一方側にある一対のビーム(上ビーム12a1および下ビーム12a2)は、ハウジング11の差込口15の内周に配置されており、第1の信号接点部12aaの一部が突出した状態で露出している。
【0039】
また、支柱部12a3を境界として第1のコンタクト12aの他方側にある一対のビーム(上ビーム12a1および下ビーム12a2)は、ハウジング11の挿入口16側に配置されている。そして、上ビーム12a1が露出している。
【0040】
第1のコンタクト12aの他方側にある一対のビーム(上ビーム12a1および下ビーム12a2)の間には、後述するアクチュエータ13の、断面が楕円形状をなすカム部13cが位置している。
【0041】
第1のコンタクト12aの他方側にある一対のビームで、アクチュエータ13のカム部13cを保持することで、アクチュエータ13は、ハウジング11に対して回動可能である。このため、カム部13cは、アクチュエータ13の回動に合わせて軸心13d周りに回転可能であり、また、第1のコンタクト12aの他方側にある上ビーム12a1は、カム部13cの直上位置に設けられたスリット13eに挿通されている。
【0042】
続いて
図4に示されるように、第2のコンタクト12bは、一対のビーム12b1,12b2(上ビーム12b1、上ビーム12b1よりも長い下ビーム12b2)を備える。
【0043】
上ビーム12b1および下ビーム12b2は、差込口15奥側から差込口15手前側に延設されている。上ビーム12b1は、差込口15手前側の端部に、第2の電極51bに接触可能に配置された第2の信号接点部12baを備える。
【0044】
下ビーム12b2は、上ビーム12b1と共に、ハウジング11に差し込まれたFPC50を挟持できるよう上ビーム12b1に対向して配置されている。下ビーム12b2は、リブ部11bで形成された溝Zaに保持されている。
【0045】
また、下ビーム12b2は、ハウジング11の挿入口16側の端部に(差込口15奥側の端部に)、例えば電子機器等の配線基板の電極にハンダ付けされる第2の接続部12bbを備える。
【0046】
上述した第2のコンタクト12bは、上ビーム12b1と下ビーム12b2とを接続する支柱部12b3を備える。上ビーム12b1と下ビーム12b2とが支柱部12b3で接続されることで、第2のコンタクト12bの外形は、略H字状を成している。
【0047】
支柱部12b3を境界として第2のコンタクト12bの一方側にある一対のビーム(上ビーム12b1および下ビーム12b2)は、ハウジング11の差込口15の内周に配置されており、第2の信号接点部12baの一部が突出した状態で露出している。
【0048】
また、支柱部12b3を境界として第2のコンタクト12bの他方側にある一対のビーム(上ビーム12b1および下ビーム12b2)は、ハウジング11の挿入口16側に配置されている。そして、上ビーム12b1が露出している。この一対のビーム(上ビーム12b1および下ビーム12b2)の間には、第1のコンタクト12aと同様に、アクチュエータ13のカム部13cが配置されている。これにより、アクチュエータ13のカム部13cは、第2のコンタクト12bの他方側にある一対のビームでも保持されている。
【0049】
アクチュエータ13は、例えば、
図1,2に示すように、ハウジング11の挿入口16側(差込口15側とは反対側)に配置されている。アクチュエータ13は、ハウジング11の長手方向(y軸方向)に沿って延在する操作部13aを備える。また、アクチュエータ13は、
図2に示すように、操作部13aの長手方向の両端部に配置された当接部13bを備える。操作部13aの長手方向は、ハウジング11の長手方向に略沿うように配置されている。
【0050】
当接部13bは、ハウジング11の側端部に設けられた窪みに収容される。これにより、アクチュエータ13が、ハウジング11に取り付けられ、また、該窪みは、アクチュエータ13に予期せぬ力が加わった時にハウジング11に対しての抜け止めとして機能する。
【0051】
また、アクチュエータ13には、
図3,4に示すように、当接部13bからスリット13eを介して一体的に延び、第1のコンタクト12aおよび第2のコンタクト12bを作動させ、その断面が直交する短辺と長辺とからなる複数のカム部13cが一体的に設けられる。カム部13cは、前述の通り、第1のコンタクト12aの他方側にある一対のビーム(上ビーム12a1および下ビーム12a2)、および第2のコンタクト12bの他方側にある一対のビーム(上ビーム12b1および下ビーム12b2)に保持される。
【0052】
また、カム部13cは、ロック部14にも接触可能に構成されている。ロック部14は、第1のコンタクト12a,第2のコンタクト12bと同様、
図5(
図2に示すC−C線での断面図)に示すように、一対のビーム14a,14b(上ビーム14a、上ビーム14aよりも長い下ビーム14b)を備える。
【0053】
また、ロック部14は、上ビーム14aと下ビーム14bとを接続する支柱部14cを備える。上ビーム14aと下ビーム14bとが支柱部14cで接続されることで、ロック部14の外形は、第1のコンタクト12a,第2のコンタクト12bと同様、略H字状を成している。
【0054】
支柱部14cを境界としてロック部14の一方側(差込口15側)にある一対のビームは、ハウジング11の差込口15の内周に配置されている。ロック部14の一方側にある一対のビームのうち、上ビーム14aの端部には、FPC50の切り欠き部52に係止するための突起である爪部14dが設けられている。
【0055】
また、支柱部14cを境界としてロック部14の他方側(挿入口16側)にある一対のビーム(上ビーム14aおよび下ビーム14b)の間には、アクチュエータ13のカム部13cが配置されている。これにより、カム部13cは、ロック部14の他方側にある一対のビームでも保持されている。
【0056】
上述した各部材からなる電気コネクタ10の接続動作について、説明する。配線基板の電極に少なくとも第1の接続部12abおよび第2の接続部12bbが半田付けにより既に接続された電気コネクタ10において、アクチュエータ13が、例えば、
図3〜
図5に示すように、開放状態のとき(アクチュエータ13がFPC50の差し込み方向に対して略垂直な状態のとき)、第1のコンタクト12a、第2のコンタクト12b、およびロック部14の各一対のビームは、カム部13cの断面上の短辺を形成する2点を挟むような状態である。
【0057】
これにより、第1のコンタクト12a、第2のコンタクト12b、およびロック部14の各一対のビームの間隔が、アクチュエータ13がロック状態のときよりも広い(アクチュエータ13がFPC50の差し込み方向に対して略水平な状態のときよりも広い)。このとき、第1のコンタクト12aの一方側にある一対のビームの間隔、および、第2のコンタクト12bの一方側にある一対のビームの間隔も、アクチュエータ13がロック状態のときよりも広い。
【0058】
このため、FPC50に対してコンタクト12の接触圧力が掛かっていない、あるいは微少に掛かっている状態になるので、ユーザは、ハウジング11の差込口15にFPC50を差し込んで、FPC50をハウジング11に収容することができる(+x方向に移動させることができる)。
【0059】
開放状態のアクチュエータ13を、操作者が回動操作すると、アクチュエータ13は、
図6(a)〜
図6(c)に示すように、FPC50の差し込み方向に対して略水平な状態、即ち、ロック状態になる。アクチュエータ13が開放状態からロック状態に回動操作されている最中、アクチュエータ13のカム部13cは、軸心13dを中心に回転する。
【0060】
アクチュエータ13がロック状態のとき、
図6(b)(
図6(a)に示すD−D線での断面図)に示すように、第1のコンタクト12aの他方側にある一対のビーム(上ビーム12a1および下ビーム12a2)は、カム部13cの断面上の長辺を形成する2点を挟む状態である。これにより、第1のコンタクト12aの他方側にある上ビーム12a1が押し上げられる。
【0061】
同様に、アクチュエータ13がロック状態のとき、
図6(c)(
図6(a)に示すE−E線での断面図)に示すように、第2のコンタクト12bの他方側にある一対のビーム(上ビーム12b1および下ビーム12b2)は、カム部13cの断面上の長辺を形成する2点を挟む状態である。これにより、第2のコンタクト12bの他方側にある上ビーム12b1が押し上げられる。
【0062】
よって、第1のコンタクト12aの一方側にある上ビーム12a1、および、第2のコンタクト12bの一方側にある上ビーム12b1が揺動する。このとき、第1のコンタクト12aの一方側にある一対のビームの間隔、および、第2のコンタクト12bの一方側にある一対のビームの間隔は、アクチュエータ13が開放状態のときよりも狭い。従って、第1の信号接点部12aaおよび第1の電極51aと、第2の信号接点部12baおよび第2の電極51bとが、接触状態になる(FPC50に対してコンタクト12の接触圧が掛かった状態となる)。
【0063】
また、アクチュエータ13がロック状態になると、ロック部14の他方側にある一対のビーム(上ビーム14aおよび下ビーム14b)も、カム部13cの断面上の長辺を形成する2点を挟む状態になる。
【0064】
よって、ロック部14の一方側にある上ビーム14aが揺動する。このとき、ロック部14の一方側にある一対のビーム(上ビーム14aおよび下ビーム14b)の間隔は、アクチュエータ13が開放状態のときよりも狭い。このため、ロック部14の一方側にある上ビーム14aに設けられた爪部14dが切り欠き部52に係止される。従って、FPC50がハウジング11に正規の位置に収容された状態になり、FPC50の抜去方向となる−x方向の移動が規制され、ハウジング11に対して収容が完了し、FPC50の第1の電極51aおよび第2の電極51bと配線基板の夫々に対応する電極とが接続された状態になる。
【0065】
上述した電気コネクタ10における本発明の作用について、説明する。
図7(
図2に示すF−F線での断面図)および
図8(
図2に示すG−G線での断面図)に示すように、差込口15手前側に位置する下受部11aの端部11aaから第1の接続部12abが離れて配置されるよう、屈曲部12a2_bは、下受部11aの端部11aaより先まで延設されている。
【0066】
よって、第1の接続部12abを、可能な限り、下受部11aの端部11aaから離して配置できる。また、第1の接続部12abを、全面露出した状態にできる。
【0067】
これにより、第1の接続部12abが例えば配線基板の電極にハンダ付けされた際、ハンダ或いはフラックスが、下長ビーム12a2_aと下受部11aの載置面Saとの間に到達することを防止可能である。このため、ハンダ或いはフラックスが、下長ビーム12a2_aとリブ部11bの内壁面との間に伝うことを防止可能である。従って、フラックスが、上ビーム12a1の第1の信号接点部12aaに付着することを防止可能である。
【0068】
なお、第2の接続部12bbも、第1の接続部12abと同様、ハウジング11の挿入口16側の端部11cから離れて配置されている。また、第2の接続部12bbも、全面露出した状態である。よって、第2の接続部12bbが例えば配線基板の電極にハンダ付けされた際、ハンダ或いはフラックスが、下ビーム12b2とリブ部11bの内壁面との間に伝うことを防止可能である。従って、フラックスが、上ビーム12b1の第2の信号接点部12baに付着することを防止可能である。
【0069】
また、電気コネクタ10において、差込口15手前側に位置するリブ部11bの端部11baは、
図7に示すように、下長ビーム12a2_aと屈曲部12a2_bとの接続位置Taよりも、差込口15奥側に配置されている。
【0070】
ここで、接続位置Taから先の部分(差込口15手前側の部分)では、屈曲部12a2_bの、載置面Saに対向する面が、上ビーム12a1に向かって屈曲している。このため、屈曲部12a2_bと載置面Saとの間隔が、下長ビーム12a2_aと載置面Saとの間隔に比べて、広くなる。更には、屈曲部12a2_bの全面が露出した状態になる。
【0071】
これにより、第1の接続部12abが例えば配線基板の電極にハンダ付けされた際、第1の接続部12abに付着したハンダ或いはフラックスが、下長ビーム12a2_aと下受部11aの載置面Saとの間に到達することを防止可能である。よって、ハンダ或いはフラックスが、下長ビーム12a2_aと載置面Saとの間を伝うことを防止可能である。従って、フラックスが、上ビーム12a1の第1の信号接点部12aaに付着することを防止可能である。
【0072】
また、電気コネクタ10において、下ビーム12a2,12b2を保持するための溝Zaを形成するリブ部11bは、下ビーム12a2,12b2が載置される下受部11aの載置面Saに設けられ、ハウジング11と一体成形されている。
【0073】
ここで、差込口15手前側に位置するリブ部11bの端部11baは、差込口15手前側に位置する下受部11aの端部11aaよりも、差込口15奥側に配置されている。このため、下長ビーム12a2_aの、端部11baから露出した部分に対向するのは、載置面Saだけである。
【0074】
よって、第1の接続部12abが例えば配線基板の電極にハンダ付けされた際、ハンダ或いはフラックスが、下長ビーム12a2_aと載置面Saとの間を伝い、それらが、下長ビーム12a2_aとリブ部11bの内壁面との間に伝うことを抑えることができる。即ち、下長ビーム12a2_aとリブ部11bの内壁面との間で、毛細管現象が発生することを防止可能である。従って、ハンダ或いはフラックスが、上ビーム12a1の第1の信号接点部12aaに付着することを防止可能である。
【0075】
また、差込口15手前側に位置するリブ部11bの端部11baは、
図8に示すように、第2のコンタクト12bの下ビーム12b2の端部12b2_sよりも、差込口15奥側に配置されている。
【0076】
ここで、リブ部11bは、コンタクト12a,12bが配列された方向において、下ビーム12a2,12b2のそれぞれの端部が適正な位置を保てる程度の保持性を有すればよい。このため、下ビーム12b2の端部12b2_sが、リブ部11bの端部11baから露出していてもよい。
【0077】
このように、下ビーム12b2の端部12b2_sが露出する程度にまで、リブ部11bの端部11baを、差込口15奥側に配置することができる。これにより、第1の接続部12abが例えば配線基板の電極にハンダ付けされた際、ハンダ或いはフラックスが、下ビーム12b2とリブ部11bの内壁面との間に伝うことを防止する効果が、より顕著になる。
【0078】
上述したように、本実施の形態の電気コネクタ10では、差込口15手前側に位置するリブ部11bの端部11baは、差込口15手前側に位置する下受部11aの端部11aaよりも、差込口15奥側に配置されている。
【0079】
このため、第1の接続部12abが例えば配線基板の電極にハンダ付けされた際、ハンダ或いはフラックスが、何らかの要因で、下長ビーム12a2_aと下受部11aの載置面Saとの間を伝ったとしても、それらが、下長ビーム12a2_aとリブ部11bの内壁面との間に伝うことを防止可能である。
【0080】
従って、本実施の形態の電気コネクタ10によれば、フラックスが、上ビーム12a1の第1の信号接点部12aaに付着することを防止可能である。
【0081】
また、本実施の形態の電気コネクタ10によれば、第2の接続部12bbも、第1の接続部12abと同様、ハウジング11の挿入口16側の端部11cから離れて配置されている。また、第2の接続部12bbも、全面露出した状態である。よって、第2の接続部12bbが例えば配線基板の電極にハンダ付けされた際、ハンダ或いはフラックスが、下ビーム12b2とリブ部11bの内壁面との間に伝うことを防止可能である。従って、フラックスが、上ビーム12b1の第2の信号接点部12baに付着することを防止可能である。
【0082】
また、本実施の形態の電気コネクタ10によれば、コンタクト12a,12bの配置方向において、部材同士の間隔を空ける必要がない。このため、上述したフラックスの付着防止は、コンタクト12a,12bの配置間隔の短縮化が行われても、実現可能である。
【0083】
また、本実施の形態の電気コネクタ10では、下長ビーム12a2_aとリブ部11bの内壁面との間、および、下ビーム12b2とリブ部11bの内壁面との間に、ハンダ或いはフラックスが伝うことを防止可能なので、下受部11aに、ハンダ或いはフラックスを排出するための貫通孔を設ける必要がない。よって、電気コネクタ10が実装される配線基板に、配線が禁止される領域を設ける必要がない。従って、本実施の形態の電気コネクタ10によれば、配線基板の有効利用が可能である。
【0084】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0085】
例えば、上述した実施の形態の電気コネクタ10では、アクチュエータ13は、ハウジング11に対して回動するタイプであったが、これに限られるものではない。アクチュエータは、ハウジング11に対してスライドするタイプのものでもよい。
【0086】
この場合、アクチュエータは、差込口15側から挿入口16側に、および、挿入口16側から差込口15側に、スライド移動可能に、ハウジング11に取り付けられている。
【0087】
このアクチュエータは、差込口15側に移動した場合、支柱部12a3を境界として第1のコンタクト12aの一方側にある上ビーム12a1、および、支柱部12b3を境界として第2のコンタクト12bの一方側にある上ビーム12b1に当接し、それらを押圧する。
【0088】
これにより、第1のコンタクト12aの一方側にある上ビーム12a1、および、第2のコンタクト12bの一方側にある上ビーム12b1が揺動する。このとき、第1のコンタクト12aの一方側にある一対のビームの間隔、および、第2のコンタクト12bの一方側にある一対のビームの間隔は、アクチュエータが挿入口16側に移動したときよりも狭い。従って、第1の信号接点部12aaおよび第1の電極51aと、第2の信号接点部12baおよび第2の電極51bとが、接触状態になる。
【0089】
一方、このアクチュエータは、挿入口16側に移動した場合、支柱部12a3を境界として第1のコンタクト12aの一方側にある上ビーム12a1、および、支柱部12b3を境界として第2のコンタクト12bの一方側にある上ビーム12b1に対し、当接を解除する。
【0090】
これにより、第1のコンタクト12aの一方側にある上ビーム12a1、および、第2のコンタクト12bの一方側にある上ビーム12b1が押圧されていない状態に戻る。このとき、第1のコンタクト12aの一方側にある一対のビームの間隔、および、第2のコンタクト12bの一方側にある一対のビームの間隔は、アクチュエータが差込口15側に移動したときよりも広い。従って、第1の信号接点部12aaおよび第1の電極51aと、第2の信号接点部12baおよび第2の電極51bとが、非接触状態になる(或いは、軽く接触する程度の状態になる)。
【0091】
このように、電気コネクタ10は、ハウジング11に対してスライド移動可能なアクチュエータを、ハウジング11に対して回動可能なアクチュエータ13の代わりに備えていてもよい。
【0092】
また、上述した実施の形態の電気コネクタ10では、第2のコンタクト12bの下ビーム12b2の端部12b2_sが、リブ部11bの端部11baから露出していたが、これに限られるものではない。例えば、下ビーム12b2の端部12b2_sは、リブ部11bの端部11baと同じ位置になるように配置してもよく、リブ部11bの端部11baよりも差込口15奥側に配置してもよい。
【0093】
また、上述した実施の形態の電気コネクタ10では、ロック部14を備えていたが、これに限られるものではない。即ち、上述した実施の形態の電気コネクタ10は、ロック部14を備えなくてもよい。
【0094】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、上述した実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。