(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のポリカーボネート樹脂積層体を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、熱硬化性樹脂を含有する第一のガラスクロス層と、第一のポリカーボネート樹脂層と、第二のガラスクロス層と、を含むポリカーボネート樹脂積層体であって、熱硬化性樹脂が縮合反応性シリコーン樹脂であり、第一のガラスクロス層の単位面積あたりの重量が、100g/m
2以上220g/m
2以下であり、熱硬化性樹脂を含有する第一のガラスクロス層における熱硬化性樹脂の含有量が5g/m
2以上30g/m
2以下であり、熱硬化性樹脂を含有する第一のガラスクロス層が最表層であるものである。
以下、ポリカーボネート樹脂積層体を構成する各材料について詳細に説明する。
<縮合反応性シリコーン樹脂>
第一のガラスクロス層に用いられる熱硬化性樹脂としては、不燃性を発現する効果を有する縮合反応性シリコーン樹脂が挙げられる。
縮合反応性シリコーン樹脂は、樹脂積層体に含まれる主材料のうちの1つである。
本発明で用いられる縮合反応性シリコーン樹脂は縮合反応性基を有するシリコーン樹脂(ポリシロキサン樹脂)であれば特に限定されず、例えば下記式(1)で表されるシラン化合物および/またはその部分縮合物(以下、シラン化合物(1))と、下記式(2)で表されるシラン化合物および/またはその部分縮合物(以下シラン化合物(2))とを、有機溶媒、有機塩基および水の存在下に加熱して、加水分解および縮合させて得られるものが挙げられる。
【0009】
(化1)
X
|
(R
1)
n−Si−(Y1)
3-n (1)
〔式(1)において、Xはエポキシ基を1個以上有する1価の有機基であり、Y1は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基であり、R1は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状の置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、そしてnは0〜2の整数である。〕
【0010】
(化2)
(R
2)
m−Si−(Y
2)
4−m (2)
〔式(2)において、Y2は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基であり、R2は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状の置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、そして、mは0〜3の整数である。〕
【0011】
式(1)において、Xのエポキシ基を1個以上有する1価の有機基としては、特に限定されるものではなく、例えば、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(3,4−エポキシシクロペンチル)メチル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル基、2−(3,4−エポキシシクロペンチル)エチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、2−(3,4−エポキシシクロペンチル)プロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、3−(3,4−エポキシシクロペンチル)プロピル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等の炭素数5〜20の基を挙げることができる。
これらのエポキシ基を1個以上有する1価の有機基のうち、γ−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等が好ましく、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が特に好ましい。
式(1)において、Y1は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基である。これらの基は、有機塩基および水の存在下における加水分解と縮合反応の過程でシラノール基を生成し、該シラノール基同志で縮合反応を生起し、あるいは該シラノール基と塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子ないし該アルコキシ基を有するケイ素原子との間で縮合反応を生起することにより、シロキサン結合を形成する基である。
式(1)において、Y1の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
式(1)におけるY1としては、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
式(1)において、R1の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0012】
また、R1の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状の置換アルキル基としては、例えばフルオロアルキル基、クロロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、(メタ)アクリロキシアルキル基およびメルカプトアルキル基を挙げることができる。これらの具体例としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、(トリフルオロメチル)メチル基、ペンタフルオロエチル基、3−フルオロ−n−プロピル基、2−(トリフルオロメチル)エチル基、(ペンタフルオロエチル)メチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、4−フルオロ−n−ブチル基、3−(トリフルオロメチル)−n−プロピル基、2−(ペンタフルオロエチル)エチル基、(ヘプタフルオロ−n−プロピル)メチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、5−フルオロ−n−ペンチル基、4−(トリフルオロメチル)−n−ブチル基、3−(ペンタフルオロエチル)−n−プロピル基、2−(ヘプタフルオロ−n−プロピル)エチル基、(ノナフルオロ−n−ブチル)メチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、6−フルオロ−n−ヘキシル基、5−(トリフルオロメチル)−n−ペンチル基、4−(ペンタフルオロエチル)−n−ブチル基、3
−(ヘプタフルオロ−n−プロピル)−n−プロピル基、2−(ノナフルオロ−n−ブチル)エチル基、(パーフルオロ−n−ペンチル)メチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、7−(トリフルオロメチル)−n−ヘプチル基、6−(ペンタフルオロエチル)−n−ヘキシル基、5−(ヘプタフルオロ−n−プロピル)−n−ペンチル基、4−(ノナフルオロ−n−ブチル)−n−ブチル基、3−(パーフルオロ−n−ペンチル)−n−プロピル基、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチル基、(パーフルオロ−n−ヘプチル)メチル基、パーフルオロ−n−オクチル基、9−(トリフルオロメチル)−n−ノニル基、8−(ペンタフルオロエチル)−n−オクチル基、7−(ヘプタフルオロ−n−プロピル)−n−ヘプチル基、6−(ノナフルオロ−n−ブチル)−n−ヘキシル基、5−(パーフルオロ−n−ペンチル)−n−ペンチル基、4−(パーフルオロ−n−ヘキシル)−n−ブチル基、3−(パーフルオロ−n−ヘプチル)−n−プロピル基、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル基、(パーフルオロ−n−ノニル)メチル基、パーフルオロ−n−デシル基、4−フルオロシクロペンチル基、4−フルオロシクロヘキシル基等のフルオロアルキル基;ならびにクロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロ−n−プロピル基、4−クロロ−n−ブチル基、3−クロロシクロペンチル基、4−クロロシクロヘキシル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシシクロペンチル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−(メタ)アクリロキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基等を挙げることができる。
【0013】
また、R1の炭素数2〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−メチルビニル基、1−プロペニル基、アリル基(2−プロペニル基)、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−シクロペンテニル基、3−シクロヘキセニル基等を挙げることができる。
また、R1の炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、1−ナフチル基等を挙げることができる。
また、R1の炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。式(1)におけるR1としては、メチル基、エチル基等が好ましい。
【0014】
シラン化合物(1)の具体例としては、n=0の化合物として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等;
n=1の化合物として、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジエトキシシラン等;
n=2の化合物として、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジエチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エトキシ)ジエチルシラン等
をそれぞれ挙げることができる。
【0015】
シラン化合物(1)の部分縮合物としては、商品名で、例えば、ES1001N、ES1002T、ES1023(以上、信越シリコーン(株)製);メチルシリケートMSEP2(三菱化学(株)製)等を挙げることができる。
本発明において、シラン化合物(1)およびその部分縮合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
上記式(2)において、Y2は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基を示す。これらの基は、有機塩基および水の存在下における加水分解と縮合反応の過程でシラノール基を生成し、該シラノール基同志で縮合反応を生起し、あるいは該シラノール基と塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子ないし該アルコキシ基を有するケイ素原子との間で縮合反応を生起することにより、シロキサン結合を形成する基である。
式(2)において、Y2の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基としては、例えば、前記式(1)におけるY1の対応する基について例示したものと同様の基等を挙げることができる。
式(2)におけるY2としては、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が好ましい。
【0017】
式(2)において、R2の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状の置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、前記式(1)におけるR1のそれぞれ対応する基について例示したものと同様の基等を挙げることができる。
式(2)におけるR2としては、フッ素原子、メチル基、エチル基、2−(トリフルオロメチル)エチル基、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−(メタ)アクリロキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、フェニル基等が好ましい。
【0018】
シラン化合物(2)の具体例としては、
m=0の化合物として、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等;
m=1の化合物として、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、
フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、
メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、
2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、
2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n
−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、
2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、
ヒドロキシメチルトリクロロシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−i−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−sec−ブトキシシラン、
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、
3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、
ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、
アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリ−i−プロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、
フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン等:
m=2の化合物として、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジ−i−プロポキシシラン、メチルジ−n−ブトキシシラン、メチルジ−sec−ブトキシシラン、
ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、
(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジエメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−sec−ブトキシシラン、
(メチル)(γ−グリシドキシプロピル)ジクロロシラン、(メチル)(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(γ−グリシドキシプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)
(γ−グリシドキシプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(γ−グリシドキシプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(γ−グリシドキシプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、
(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、
(メチル)(ビニル)ジクロロシラン、(メチル)(ビニル)ジメトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジエトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−sec−ブトキシシラン、
ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、
ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン等;
m=3の化合物として、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、
クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n−プロポキシトリメチルシラン、i−プロポキシトリメチルシラン、n−ブトキシトリメチルシラン、sec−ブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、
(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(エトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、
(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン、(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン、(エトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等
をそれぞれ挙げることができる。
【0019】
これらのシラン化合物(2)のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が好ましい。
【0020】
また、シラン化合物(2)の部分縮合物としては、商品名で、例えば、KC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、(以上、信越シリコーン(株)製);グラスレジン(昭和電工(株)製);SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420、SR2440(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製);FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー(株)製);DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33
、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PDS−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ(株)製);メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学(株)製);エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート(株)製);GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工(株)製)等を挙げることができる。
【0021】
本発明において、シラン化合物(2)およびその部分縮合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
ポリオルガノシロキサン(α)は、シラン化合物(1)等とシラン化合物(2)等とを、有機溶媒、有機塩基および水の存在下に加熱して、加水分解および縮合させることにより製造することが好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール等を使用することができる。水と均一に混合しない溶媒が好ましい。
【0022】
前記炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等;前記ケトンとしては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等;前記エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等;前記エーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;前記アルコールとしては、例えば、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等をそれぞれ挙げることができる。
【0023】
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部、より好ましくは50〜5,000重量部である。
前記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン等の1〜2級の有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等を挙げることができる。
これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミンが好ましい。
【0024】
ポリオルガノシロキサン(α)を製造する際に、有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環などの副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサン(α)を得ることができるため、生産安定性がよく、また良好な硬化性を示す組成物を得ることができる。
有機アミンの使用量は、有機アミンの種類、温度などの反応条件等により異なり、特に限定されないが、全シラン化合物に対して、好ましくは0.01〜3倍モル程度、より好ましくは0.05〜1倍モル程度である。なお、有機アミン類以外の有機塩基を用いる場合の使用量も、ほぼ有機アミンに準じる量で十分である。
ポリオルガノシロキサン(α)を製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5〜100倍モル程度、より好ましくは1〜30倍モル程度である。
ポリオルガノシロキサン(α)を製造する際の加水分解および縮合反応は、シラン化合物
(1)等とシラン化合物(2)等とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合し、次いで例えば油浴などで加熱することにより実施することができる。
【0025】
加水分解と縮合反応時には、加熱温度を、好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜120℃とし、好ましくは0.5〜12時間程度、より好ましくは1〜8時間程度加熱するのが望ましい。なお、加熱操作中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に放置してもよい。
反応終了後、反応液から有機溶媒層を分取して、好ましくは水で洗浄する。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液などで洗浄することにより、洗浄操作が容易になる。洗浄は洗浄後の水が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥したのち、濃縮することにより、目的とするポリオルガノシロキサン(α)を得ることができる。
このようにして得られるポリオルガノシロキサン(α)は、残存する加水分解性基例えば、アルコキシ基等やシラノール基が少ないため、溶剤で希釈しなくても室温で1ヶ月以上ゲル化することなく保存できる。また所望により、反応終了後に、残存するシラノール基をヘキサメチルジシラザン等によりトリメチルシリル化することによって、さらにシラノール基を減らすことができる。
【0026】
また、有機塩基および水の存在下における加水分解と縮合反応には、シラン化合物(1)等中のエポキシ基の開環反応や重合反応などの副反応を生起することがなく、しかも含金属触媒を用いる場合に比べて、ポリオルガノシロキサン(α)中のナトリウム、カリウム、白金、ルテニウム等の金属不純物が少なくなるという利点がある。
ポリオルガノシロキサン(α)のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは500〜1,000,000、より好ましくは1,000〜100,000である。
ポリオルガノシロキサン(α)は、エポキシ当量が1,600g/モル以下であり、好ましくは160〜900g/モル、さらに好ましくは180〜600g/モルである。エポキシ当量が1,600g/モルを超えると、得られるポリオルガノシロキサンに耐熱性の低下や着色などの不具合を生じるようになる。
【0027】
また、ポリオルガノシロキサン(α)は、シラン化合物(2)に由来する構造単位の含有率が、全構造単位の、5モル%以上であるのが好ましい。該構造単位の含有率が全構造単位の5モル%未満であると、得られるポリオルガノシロキサンに耐熱性の低下や着色などの不具合を生じるおそれがある。
さらに、ポリオルガノシロキサン(α)は、3つ以上の酸素原子に結合しているケイ素原子の全ケイ素原子に対する割合が、好ましくは10%以上であることが望ましい。3つ以上の酸素原子に結合しているケイ素原子の全ケイ素原子に対する割合が10%未満であると、後述する各光半導体接着剤用組成物から得られる硬化物の硬度や電極との密着性に不具合を生じるおそれがある。
ポリオルガノシロキサン(α)は、後述する各光半導体接着剤用組成物における主要成分として極めて好適に使用することができるほか、単独でまたは一般のポリオルガノシロキサンと混合して、例えば、成型品、フィルム、ラミネート材、塗料等としても有用である。ポリオルガノシロキサン(α)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
<ガラスクロス>
ガラスクロスは、樹脂積層体に含まれる主材料のうちの1つであり、樹脂積層体の不燃性や強度を向上させる機能を有するものである。
【0029】
本発明の第一および第二のガラスクロス層に用いるガラスクロスシートとしては、特に限定されず、公知のガラス繊維シート、例えば、ガラスクロスシートを使用できる。その素材であるガラス繊維としては、特に制限はなく、汎用の無アルカリガラス繊維、耐酸性の含アルカリガラス繊維、高強度・高弾性率ガラス繊維、耐アルカリ性ガラス繊維等のいずれであってもよい。ガラス繊維織物の織布方法も、平織り、綾織り、朱子織り、斜子織り、畦織り等のいずれであってもよい。ガラス繊維を構成するフィラメントの直径は、例えば、1μm以上20μm以下である。
また、ガラスクロスシートの単位面積当たりの重量(目付け量)は、耐久性や縮合反応性シリコーン樹脂の含浸性の点から、例えば、10g/m
2以上300g/m
2以下であり、好ましくは50g/m
2以上220g/m
2以下である。
ガラスクロスの厚さは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。例えば、0.001mm以上1mm以下であり、好ましくは0.01mm以上0.5mm以下であり、さらに好ましくは、0.05mm以上0.3mm以下である。ガラスクロスの厚さを、前記範囲内に設定することにより、不燃性を達成することができ、透光性を確保することができる。
ガラス繊維は、長繊維および短繊維のいずれからなっていてもよく、前記ガラス繊維が長繊維の場合は適宜の数だけ引き揃えて固めたものを使用することができるが、短繊維のものは撚りをかけて、つなぎ合わせた糸、すなわち紡績糸として使用することができる。
使用されるガラス繊維の番手は、通常、1〜1000tex、好ましくは5〜850tex、より好ましくは5〜200tex、さらに好ましくは5〜150texの範囲である。また、前記ガラス繊維として長繊維を用いる場合には、該ガラス繊維は、撚りがかけられていることが好ましい。撚り数は特に制限がないが、100cm当たり20〜200回程度のものを使用するとよい。撚り方向として公知の右撚り(S撚り)、左撚り(Z撚り)のいずれであってもよい。また、撚り糸の形態としては、片撚り糸、諸撚り糸、ビッコ諸撚り糸、強ねん糸、壁撚り糸および駒撚り糸のいずれであってもよい。
ガラスクロスの密度は、経糸、緯糸共に、10〜80本/25mm程度であることが好ましく、20〜60本/25mm程度であることがより好ましい。ガラスクロスの密度を、前記範囲内に設定することにより、十分な引張強度、可とう性、柔軟性を得ることができる。
【0030】
第一のガラスクロス層の単位面積あたりの重量は、100g/m
2以上220g/m
2以下であることが好ましく、より好ましくは110g/m
2以上220g/m
2以下である。第一のガラスクロス層の単位面積あたりの重量を前記範囲内に設定することにより、不燃性を達成することができる。
第二のガラスクロス層の単位面積あたりの重量は、50g/m
2以上110g/m
2以下であることが好ましく、より好ましくは60g/m
2以上100g/m
2以下である。第二のガラスクロス層の単位面積あたりの重量を前記範囲内に設定することにより、外観において干渉縞の発生を抑制し、不燃性を達成することができる。
第一のガラスクロス層の単位面積あたりの重量は、第二のガラスクロス層の単位面積あたりの重量より大きいことが好ましい。第二のガラスクロス層の単位面積あたりの重量に対する、第一のガラスクロス層の単位面積あたりの重量の比:[第一のガラスクロス層の単位面積あたりの重量/第二のガラスクロス層の単位面積あたりの重量]は1より大きいことが好ましく、より好ましくは1.1以上5.0以下、特に好ましくは1.1以上4.0以下である。[第一のガラスクロス層の単位面積あたりの重量/第二のガラスクロス層の単位面積あたりの重量]を前記範囲内に設定することにより、外観において干渉縞の発生を抑制し、不燃性を達成することができる。
【0031】
本発明に使用する縮合反応性シリコーン樹脂を含有するガラスクロス層は、上記の縮合反応性シリコーン樹脂を含むシリコーン樹脂組成物を、ガラスクロスシートの少なくとも一方の面上に塗工するか、又は上記の縮合反応性シリコーン樹脂を含むシリコーン樹脂組
成物をガラスクロスシートに含浸させることにより製造できる。
縮合反応性シリコーン樹脂を含むシリコーン樹脂組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、例えば、キスコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ワイヤーコーティングなどの公知の塗布方法により、直接塗布して、塗膜を形成し、必要に応じて、例えば、80℃〜150℃程度の温度で乾燥することにより、ガラスクロスの片面又は両面にシリコーン樹脂からなるシリコーン樹脂を含有するガラスクロス層を得ることができる。シリコーン樹脂を含有するガラスクロス層の厚さは、例えば、1μm以上200μm以下、好ましくは5μm以上100μm以下である。
【0032】
本発明に使用する縮合反応性シリコーン樹脂を含有する第一のガラスクロス層は、縮合反応性シリコーン樹脂を含有する第一のガラスクロス層における縮合反応性シリコーン樹脂の含有量が5g/m
2以上30g/m
2以下であることが好ましく、より好ましくは5g/m
2以上20g/m
2以下、特に好ましくは5g/m
2以上15g/m
2以下である。縮合反応性シリコーン樹脂の含有量を前記範囲内に設定することにより、不燃性を達成することができる。
【0033】
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂は、樹脂積層体に含まれる主材料のうちの1つであり、樹脂積層体の透明性、強度、耐衝撃性を向上させる機能を有するものである。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物とともにホスゲンと反応させる界面重合法により得られる。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えばビスフェノールとアセトンから合成されるビスフェノールAが挙げられる。また、その他ビスフェノールAを原料としてエステル交換法、ピリジン法等によって製造することができる。
また、ビスフェノールAとジカルボン酸誘導体、例えば、テレ(イソ)フタル酸ジクロリド等との共重合体により得られるポリエステルカーボネート、ビスフェノールAの誘導体、例えば、テトラメチルビスフェノールA等の重合により得られるものも例示することができる。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、通常の押出成形によりシートを製造できる程度の粘度となる分子量が好ましく、具体的には、重量平均分子量として13000以上45000以下が好ましく、より好ましくは16000以上38000以下であり、さらに好ましくは18000以上30000以下である。ポリカーボネート樹脂の分子量を前記範囲内に設定することにより、流動性、押出し成形性が良好となり、前記ポリカーボネート樹脂積層体の耐衝撃性を向上させることができる。
また、ポリカーボネート樹脂の特性を損なわない範囲で、例えば安定剤、滑剤、加工助剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、分散剤、増粘剤、光拡散剤などの成分を適宜配合しても差し支えない。
【0034】
なお、本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、熱硬化性樹脂を含有する第一のガラスクロス層、第一のポリカーボネート樹脂層、第二のガラスクロス層の少なくとも3層を備える構成であり、熱硬化性樹脂を含有する第一のガラスクロス層が最表層であれば良く、さらに第三や第四のガラスクロス層および/または第二や第三のポリカーボネート樹脂層を備える構成のものであっても良い。
第三や第四のガラスクロス層は、第一のガラスクロス層と同様の構成のものであれば良く、第一または第二のガラスクロス層と同一であっても、異なっていても良いが、樹脂積層体の外観において干渉縞の発生を抑制する点から、第一または第二のガラスクロス層と異なっていることが好ましい。
第二や第三のポリカーボネート樹脂層は、第一のポリカーボネート樹脂層と同様の構成のものであれば良く、第一のポリカーボネート樹脂層と同一であっても、異なっていても
良い。
上記のような構成とすることで、強度、成形性、反りなどの外観に優れるものとなる。
【0035】
ポリカーボネート樹脂積層体の厚さは、0.05mm以上2.0mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.08mm以上1.8mm以下であり、より好ましくは、0.10mm以上1.6mm以下である。ポリカーボネート樹脂積層体の厚さを前記範囲内に設定することにより、樹脂積層体の不燃性、外観、軽量化に優れるものとなる。
ポリカーボネート樹脂積層体の透過率は、20%以上65%以下であることが好ましく、22%以上63%以下がより好ましく、さらに好ましくは、25%以上60%以下である。ポリカーボネート樹脂積層体の透過率を前記範囲内に設定することにより、光源の形状を視認させずに、樹脂積層体の外観に優れる効果を有するものとなる。
【0036】
以上のようなポリカーボネート樹脂積層体は、例えば、以下のような製造方法を用いて製造することができる。
<ポリカーボネート樹脂積層体の製造方法>
熱硬化性樹脂を含有する第一のガラスクロス層、第一のポリカーボネート樹脂層、第二のガラスクロス層を、この順序で重ね合わせ、圧着する。上記圧着方法としては、公知の方法を採用することができるが、例えば、熱圧着(熱ラミネーション)が挙げられ、熱ロール、加熱プレス等を用いることができる。
【0037】
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、鉄道車両、航空機、自動車、船舶、エレベーター、エスカレーターなどの輸送機の内装部材照明装置、とりわけ、照明カバーとして好適に利用できる。
本発明の照明機器は、上記のポリカーボネート樹脂積層体を用いた照明装置であって、照明に用いられる光を発生させる光源と、前記光源を覆うように設置され、前記ポリカーボネート樹脂積層体を備えることで光源の形状を視認させずに、外観に優れ、照度を確保できる特徴を有するものである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
[1]シリコーン樹脂の作製
撹拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン60g、ジメチルジメトキシシラン40g、メチルイソブチルケトン500g、トリエチルアミン10gを加え、室温で混合した。
次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下したのち、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液で、洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒および水を留去して、縮合反応性シリコーン樹脂Aを透明液体として得た。
ガラスクロスシート(日東紡製、単位面積当たりの重量(目付け量):110g/m
2、厚さ:0.1mm)を上記作製した縮合反応性シリコーン樹脂Aに浸漬し、一定速度で引
き上げるディッピング法によりシリコーン樹脂を付着させた。その後、200℃条件下で1時間焼成を行い、縮合反応性シリコーン樹脂Aが含浸された第一のガラスクロス層(a)を得た。第一のガラスクロス層(a)における縮合反応性シリコーン樹脂Aの含有量は10g/m
2であった。
【0040】
[2]ポリカーボネート樹脂積層体の作製
第一のポリカーボネート樹脂層として、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリング
プラスティックス株式会社製、製品名:E−2000、重量平均分子量:27000)と
単軸押出機とT型ダイス、ポリシングロール等を用いてシート状に押し出し、シート厚さ0.40mmの第一のポリカーボネート樹脂層(b)を得た。
第二のガラスクロス層(c)(日東紡製、単位面積当たりの重量(目付け量):60g/m
2、厚さ:0.05mm)を準備した。
第一のガラスクロス層(a)と、第一のポリカーボネート樹脂層(b)と、第二のガラスクロス層(c)とを、この順で重ね合わせ、これをプレス板に挟んで、ホットプレス機を用い、下板および上板を約180℃に加熱すると共に、その熱でポリカーボネート樹脂を溶融させながらプレスして一体化したのち急冷することにより、縦400mm、横400mm、厚さ0.50mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。
【0041】
(実施例2)
ポリカーボネート樹脂積層体を構成する材料を表1に示すものに変更し、含浸させる縮合反応性シリコーン樹脂Aの量を変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.60mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。第一のガラスクロス層における縮合反応性シリコーン樹脂Aの含有量は20g/m
2であった。
【0042】
(実施例3)
ポリカーボネート樹脂積層体を構成する材料を表1に示すものに変更し、含浸させる縮合反応性シリコーン樹脂Aの量を変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.40mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。第一のガラスクロス層における縮合反応性シリコーン樹脂Aの含有量は6g/m
2であった。
【0043】
(実施例4)
ポリカーボネート樹脂積層体を構成する材料を表1に示すものに変更し、含浸させる縮合反応性シリコーン樹脂Aの量を変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.45mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。第一のガラスクロス層における縮合反応性シリコーン樹脂Aの含有量は24g/m
2であった。
【0044】
(実施例5)
ポリカーボネート樹脂積層体を構成する材料を表1に示すものに変更し、含浸させる縮合反応性シリコーン樹脂Aの量を変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.30mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。第一のガラスクロス層における縮合反応性シリコーン樹脂Aの含有量は12g/m
2であった。
【0045】
(比較例1)
実施例1の第一のガラスクロス層(a)に用いるガラスクロス層の単位面積当たりの重量(目付け量)を変更し(日東紡製、単位面積当たりの重量(目付け量):40g/m
2
、厚さ:0.1mm)、縮合反応性シリコーン樹脂Aを浸漬させなかった以外は、実施例
1と同様にして厚さ0.50mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。
【0046】
(比較例2)
第一のポリカーボネート樹脂層(厚さ:0.5mm)のみより構成される。
【0047】
(比較例3)
実施例1の第一のガラスクロス層(a)に用いるガラスクロス層の単位面積当たりの重量(目付け量)を変更し(日東紡製、単位面積当たりの重量(目付け量):40g/m
2
、厚さ:0.1mm)、縮合反応性シリコーン樹脂Aの代わりに、ポリテトラフルオロエ
チレン樹脂Cとして、ポリテトラフルオロエチレン水性分散液(ダイキン工業社製、ポリフロン PTFE D−210C)に浸漬し、その後、100℃にて乾燥し、更に380
℃条件下で5分間焼成を行った以外は、実施例1と同様にして厚さ0.50mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。第一のガラスクロス層におけるポリテトラフルオロエチレン樹脂Cの含有量は35g/m
2であった。
【0048】
(比較例4)
実施例1の第一のガラスクロス層(a)に含浸させる縮合反応性シリコーン樹脂Aの量を変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.50mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。第一のガラスクロス層における縮合反応性シリコーン樹脂Aの含有量は3g/m
2であった。
【0049】
(比較例5)
実施例1の第一のガラスクロス層(a)に用いるガラスクロス層の単位面積当たりの重量(目付け量)を変更し(日東紡製、単位面積当たりの重量(目付け量):40g/m
2
、厚さ:0.1mm)、含浸させる縮合反応性シリコーン樹脂Aの量を変更した以外は、
実施例1と同様にして厚さ0.50mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。第一のガラスクロス層における縮合反応性シリコーン樹脂Aの含有量は35g/m
2であった。
【0050】
前記のようにして得られた各実施例および各比較例のポリカーボネート樹脂積層体について、以下のような評価を行った。
【0051】
[3]ポリカーボネート樹脂積層体の評価
[評価項目]
[3.1]全光透過率の評価
ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて、JIS K7361に準じて、各実施例および各比較例のポリカーボネート樹脂積層体の全光線透過率(%)を測定した。
【0052】
[3.2]干渉縞の評価
各実施例および各比較例のポリカーボネート樹脂積層体を蛍光灯にかざし干渉縞の有無を目視確認し、以下の基準で評価した。レベル1および2を良好と判断した。
レベル1: 干渉縞が全く認められない。
レベル2: 干渉縞が少し認められるが、実用上問題がない程度である。
レベル3: 実用上問題となる程度の干渉縞が認められる。
【0053】
[3.3]燃焼性評価(着火・着炎、発煙量、炭化試験)
図1に示す燃焼試験装置を用い、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の燃焼試験(一般材;鉄道車両用非金属材料の45°アルコール試験)に準じて燃焼試験を行った。
図1に示すように、11は試験片(182mm×257mm)、12はアルコール容器(鉄製17.5φ×7.1、0.8t)、コルク等熱伝導率の低いものを使用した容器受け台13を示した。
試験片下面中心から容器底面までの距離は、25.4mm(1インチ)である。
上記作製したポリカーボネート樹脂積層体(試験片)を、
図1の燃焼試験装置に45°傾斜させて保持し、燃料容器(アルコール容器)の底の中心が、試験片の下面中心の垂直下方を25.4mmのところになるように、燃料容器をコルク台に乗せ、燃料容器にアルコール0.5ccを入れて、着火し、燃料が燃え尽きるまで放置した。試験片の着火および着炎、炭化の有無・状態を目視確認し、下記の基準で評価した。
鉄道車両用材料試験の試験方法における不燃性適合での要求基準は、以下のとおりで、これらの基準を満たせば合格とした。
<1>燃焼中
・着火・着炎:着火、着炎がないこと。
・発煙量 :僅少以下のこと。(「僅少」は、不燃性の区分である。)
<2>燃焼後
・炭化の大きさ:炭化の長さが100mm以下のこと。
・変形の大きさ:変形の最大長さが100mm以下のこと。
・残炎・残塵 :火源消火後に残炎、残塵が残らないこと。
・溶融滴下性 :溶融滴下がなく、平滑性が保たれること。
【0054】
[3.4]外観の評価
各実施例および各比較例のポリカーボネート樹脂積層体を用いて、照明用カバーとして照明装置を作製した。外観として光源の視認性を確認し、光源の形状を視認できないものを良好な外観:○、光源の形状が視認できるものを外観不良:×とした。
以上の各評価結果を表1、表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1に示したように、各実施例におけるポリカーボネート樹脂積層体は、不燃性と干渉縞の発生がない良好な外観を備える結果となった。
【0058】
これに対して、比較例におけるポリカーボネート樹脂積層体は、不燃性と外観の双方を満足する結果を得ることができなかった。