(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132034
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20170515BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
H01L23/02 J
H01L23/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-557735(P2015-557735)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2014082632
(87)【国際公開番号】WO2015107804
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-6436(P2014-6436)
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 力宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 孝仁
【審査官】
馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−130015(JP,A)
【文献】
特開2005−123219(JP,A)
【文献】
特開平10−93016(JP,A)
【文献】
特開2004−281727(JP,A)
【文献】
特開2011−199213(JP,A)
【文献】
特開2008−252055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/08
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを備えた複数の絶縁回路基板と、
前記絶縁回路基板の外縁部のうち隣接する絶縁回路基板と対向する第1外縁部に当接する桟部、および前記絶縁回路基板の外縁部から前記第1外縁部を除いた第2外縁部に当接する枠部を持った樹脂枠体と、
前記桟部を跨いで前記絶縁回路基板間を電気的に接続する導電部材と、
前記樹脂枠体の上部の開口を覆う蓋部、および前記蓋部の前記絶縁回路基板と対向する面から突出し前記桟部の一部に当接する隔壁部を持った上蓋と、
を備えることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
前記上蓋が、前記蓋部の前記絶縁回路基板と対向する面から突出して絶縁回路基板に当接する柱状部を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記樹脂枠体は、
該樹脂枠体の内壁に沿って配設された段差部を備え、
軸部と、脚部と、前記軸部又は前記脚部よりも狭い幅で前記軸部と前記脚部を連結する屈曲されたヒンジ部とを持った金属端子を備え、
前記脚部が前記段差部の上段面上に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記金属端子が、前記軸部の一部と前記脚部の一部とを露出した状態で、前記樹脂枠体の枠部に埋設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
半導体チップを備えた複数の絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の外縁部のうち隣接する絶縁回路基板と対向する第1外縁部に当接する桟部、および前記絶縁回路基板の外縁部から前記第1外縁部を除いた第2外縁部に当接する枠部を持った樹脂枠体と、前記桟部を跨いで前記絶縁回路基板間を電気的に接続する導電部材と、前記樹脂枠体の上部の開口を覆う蓋部、および前記蓋部の前記絶縁回路基板と対向する面から突出し前記桟部の一部に当接する隔壁部を持った上蓋とを備えた半導体モジュールの製造方法であって、
前記桟部が前記第1外縁部に当接され、前記枠部が前記第2外縁部に当接されるように、前記絶縁回路基板と前記樹脂枠体とを配置する第1工程と、
前記桟部を跨いで前記絶縁回路基板間を前記導電部材で電気的に接続する第2工程と、
前記上蓋の前記蓋部が前記樹脂枠体上部の開口を覆い、前記上蓋の前記隔壁部が前記桟部の一部に当接するように、前記上蓋を前記樹脂枠体に固定する第3工程と、
を備えることを特徴とする半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の絶縁回路基板を用いて形成した回路を、蓋付きケースに収容した半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ケースに収容された1つの基板の中央部に遮蔽板を設ける構造は、特許文献1が知られている。特許文献1には、1つの基板上に光受信ICと増幅器ICが搭載されており、光受信ICと増幅器ICとの間の基板中央部に左右の切り欠きが設けられ、この切り欠き部分で基板の全厚み部分と係合するように遮蔽板が挿入され、基板上に設けられた信号配線と遮蔽板との当接を避けるべく、遮蔽板の下面の信号配線に対向する部分には切り欠きが形成されていることが記載されている。ケースと遮蔽板の上には、蓋が配置されている。
【0003】
また、特許文献2には、蓋板の裏面に突起を設けて制御回路用プリント基板を上側から押さえつけることにより、前記プリント基板の上方向の変位を抑制し、このプリント基板とリードピンのはんだ接合部に生じる応力を緩和するパワー半導体モジュールが記載されている。
【0004】
また、端子に関する文献として、特許文献3には、複数の半導体チップと、ボンディングワイヤと、樹脂ケースと、樹脂ケース内にインサート成型された外部導出用金属端子(以降、金属端子)とを備える半導体モジュールが記載されている。樹脂ケースの外周枠に金属端子をインサート成型することによりケース内側の空間を広くして、ボンディングワイヤだけで絶縁回路基板や半導体チップや端子間の配線を行い、金属端子を絶縁回路基板上に直接はんだ接合しない構造である。この構造では、金属端子が樹脂ケースに確実に固定されていることが求められる。金属端子が樹脂ケースから浮いていると、金属端子に対してワイヤボンディングを行う際に、接続不良を起こす可能性が高くなるからである。そこで従来は、金属端子をL字状に曲げ、金属端子におけるワイヤボンディングすべき下端部を確実に支持できるように、樹脂ケース部分を階段状にし、下端部に外側に突出する凸部を設けることで、金属端子と樹脂ケースとの固定を強化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−50974号公報
【特許文献2】特開2000−68446号公報
【特許文献3】特開2000−208655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一枚の絶縁回路基板を用いる半導体モジュールは、半導体チップサイズやチップ数がさらに増加すると、絶縁回路基板に必要な面積が増大する。絶縁回路基板の面積が大きくなりすぎると、熱膨張係数の違いに起因する応力により絶縁回路基板の反りや割れが生じるおそれがある。従って、絶縁回路基板がさらに大きくなる構造では、絶縁回路基板の反りの影響を低減して絶縁回路基板とヒートシンクとの密着性を向上するため、
その1枚の絶縁回路基板を複数に分割して組み立てる構造が用いられる。しかしながら、複数の絶縁回路基板を用いて形成した回路を、蓋付きケースに収容し、複数の絶縁回路基板のそれぞれの全周辺を上から押さえて固定する半導体モジュールに関する記載は上記文献には無い。
図6のように、単に、樹脂ケース205aの外枠だけでなく中央部にも絶縁回路基板201の周辺を
押える壁205cを設ける構造では、この壁205cが障害となって、絶縁回路基板201間のボンディングワイヤによる接続ができないという問題点があった。
【0007】
また、上記特許文献3のように金属端子の外側に凸部を備えていると、原材料である金属板から金属端子を製造する際、金属板の単位面積当たりの金属端子の製造個数が少なくなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、前述した点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の絶縁回路基板を有する構造であっても、絶縁回路基板間の電気的な接続を容易にし、絶縁回路基板の反り変形を抑制でき、半導体チップの発熱を良好に放熱することのできる半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解消して、発明の目的を達成するために、本発明の半導体モジュールは、半導体チップを備えた複数の絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の外縁部のうち隣接する絶縁回路基板と対向する第1外縁部に当接する桟部、および前記絶縁回路基板の外縁部から前記第1外縁部を除いた第2外縁部に当接する枠部を持った樹脂枠体と、前記桟部を跨いで前記絶縁回路基板間を電気的に接続する導電部材と、前記樹脂枠体の上部の開口を覆う蓋部、および前記蓋部の前記
絶縁回路基板と対向する面から突出し前記桟部の一部に当接する隔壁部を持った上蓋とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体モジュールによれば、隔壁部に邪魔されることなく、桟部を跨ぐ導電部材によって絶縁回路基板間を電気的に接続できる。また、上蓋の隔壁部が樹脂枠体の桟部を押圧し、さらに桟部が絶縁回路基板の第1外縁部を押圧するので、絶縁回路基板が反ることを抑制できる。
【0011】
本発明の半導体モジュールにおいて、前記上蓋が、前記蓋部の前記絶縁回路基板と対向する面から突出して絶縁回路基板に当接する柱状部を備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、上蓋の柱状部が絶縁回路基板の中央部分を押圧するので、絶縁回路基板が反ることを抑制できる。なお、前記上蓋は、前記樹脂枠体に接着されていてもよい。この構成によれば、上蓋を樹脂枠体に取り付けることが容易になる。また、前記上蓋を前記樹脂枠体に固定させる係合部を備える構成でもよい。この構成によれば、上蓋を樹脂枠体に取り付けることがより容易になる。
【0013】
本発明の半導体モジュールにおいて、前記樹脂枠体は、該樹脂枠体の内壁に沿って配設された段差部を備え、軸部と、脚部と、前記軸部又は前記脚部よりも狭い幅で前記軸部と前記脚部を連結する屈曲されたヒンジ部とを持った金属端子を備え、前記脚部が前記段差部の上段面上に配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ヒンジ部の幅が、軸部の幅と脚部の幅の少なくとも一方もしくはその両方より狭くされて樹脂枠体に係合され、ヒンジ部から折り曲げられた脚部を段差部の上段面上に固定できるので、金属端子と樹脂枠体との位置ずれを抑制できる。また、金属端子の樹脂枠体と係合するヒンジ部分は、金属端子の全幅より狭くした形状であるために、
金属端子をプレス加工で製造する際には、狭ピッチでレイアウトして、端材の量を減らし、単位面積当たりの金属端子の製造個数を増加できる。
【0015】
本発明の半導体モジュールにおいて、前記金属端子が、前記軸部の一部と前記脚部の一部とを露出した状態で、前記樹脂枠体の枠部に埋設されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、金属端子の軸部は樹脂枠体に埋設されており、ボンディングワイヤの接続点となる金属端子の脚部のみが露出しているので、ワイヤボンディング作業が容易になり、且つ高信頼性の接続とすることができる。
【0017】
本発明の半導体モジュールの製造方法は、半導体チップを備えた複数の絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の外縁部のうち隣接する絶縁回路基板と対向する第1外縁部に当接する桟部、および前記絶縁回路基板の外縁部から前記第1外縁部を除いた第2外縁部に当接する枠部を持った樹脂枠体と、前記桟部を跨いで前記絶縁回路基板間を電気的に接続する導電部材と、前記樹脂枠体の上部の開口を覆う蓋部、および前記蓋部の前記絶縁回路基板と対向する面から突出し前記桟部の一部に当接する隔壁部を持った上蓋とを備えた半導体モジュールの製造方法であって、前記桟部が前記第1外縁部に当接され、前記枠部が前記第2外縁部に当接されるように、前記絶縁回路基板と前記樹脂枠体とを配置する第1工程と、前記桟部を跨いで前記絶縁回路基板間を前記導電部材で電気的に接続する第2工程と、前記上蓋の前記蓋部が前記樹脂枠体上部の開口を覆い、前記上蓋の前記隔壁部が前記桟部の一部に当接するように、前記上蓋を前記樹脂枠体に固定する第3工程とを備える。
【0018】
本発明の半導体モジュールの製造方法によれば、隔壁部に妨げられることなく、桟部を跨ぐ導体によって絶縁回路基板間を容易に接続することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
半導体モジュールが半導体も複数の絶縁回路基板を有する構造であっても、絶縁回路基板間の電気的な接続を容易にし、絶縁回路基板の反り変形を抑制でき半導体チップの発熱を良好に放熱できる半導体モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の半導体モジュールについて、組み立てる前の半導体モジュールの分解斜視図である。
【
図2】
図1(c)の絶縁回路基板9上に、
図1(b)の樹脂枠体5を載せた状態の斜視図である。
【
図3】半導体チップが搭載された絶縁回路基板に樹脂枠体5を
図2のように載せ、ボンディングワイヤ(導電部材)7を接続した後の上面図である。
【
図4】
図3のB1−B2断面図に上蓋8の断面図を追加して示した概略断面図である。見易くするために、半導体チップおよびチップ周辺のボンディングワイヤ7a,7b等を省略して記載している。
【
図5】
図4の上蓋8を適正な位置にセットした状態のB1−B2断面の概略断面図である。
図4と同様に、半導体チップおよびチップ周辺のボンディングワイヤ7a,7b等を省略して記載している。
【
図6】従来の複数の絶縁回路基板を用いる半導体モジュールの概略構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の半導体モジュールにかかる実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明に用いられる添付図面は、見易くまたは理解し易くするために正確なスケール、寸法比で描かれていない。また、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施形態の記載に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態にかかる半導体モジュールの一部について、組み立てる前の半導体モジュールの分解斜視図である。
【0023】
図1(a)は、上蓋8の斜視図である。上蓋8は、隔壁部8bと、柱状部8aを備えている。隔壁部8bと柱状部8aは、上蓋8の絶縁回路基板9に面する側に配置されている。隔壁部8bは、
図1(b)に示した樹脂枠体5の桟部5aの一部を押圧する。柱状部8aは、
図1(c)に示した各絶縁回路基板9の中央部分をそれぞれ押圧する。
【0024】
図1(b)は、金属端子4a,4bを枠部5cにインサート成型した樹脂枠体5である。樹脂枠体5は、桟部5aと枠部5cと段差部5eを備えている。開口部5bは、桟部5aと枠部5cで囲まれた部分であり、貫通孔が開いている。段差部5eは、樹脂枠体5の内壁に沿って配設され、段差部5eの上段面は金属端子4a,4bを設置する面になっている。樹脂枠体5は、図示しないヒートシンクに半導体モジュールを固定するための貫通孔6を備えている。樹脂枠体5および上蓋8の材料としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)などから選ばれる樹脂が好ましい。
【0025】
図1(c)は、半導体チップとボンディングワイヤ(導電部材)を省いて描いた絶縁回路基板9である。絶縁回路基板9としては、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素などの公知の絶縁性セラミックスが用いられる。各絶縁回路基板9のおもて面側には銅箔などからなる回路パターン9aが接合され、各絶縁回路基板9の裏面側には周辺を残して全面に銅箔が接合されている。後述の
図3に示すように、回路パターン9a上には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やFWD(Free Wheeling Diode)などの半導体チップ2a、2bがはんだ接合により搭載される。
【0026】
図2は、
図1(c)の絶縁回路基板9上に、
図1(b)の樹脂枠体5を載せた状態の斜視図である。金属端子4a,4bは、樹脂枠体5に埋め込まれている。金属端子の脚部4cは、樹脂枠体5から延出されて、段差部5eの上段面に配置されている。段差部5eの上段面は平坦でもよいが、図示されるように金属端子4a,4bの脚部と嵌合する凹部を備えてもよい。このようにすると、金属端子4a,4bが安定し、位置ずれを防ぐことができる。樹脂枠体5の中央に設けられる開口部5bは絶縁回路基板の大きさより少し小さくされているので、樹脂枠体5は絶縁回路基板9の周辺を均等に押圧し接着することができる。樹脂枠体5の桟部5aは隣接する絶縁回路基板9の外縁近傍を押圧し接着する。
【0027】
図3は、半導体チップが搭載された絶縁回路基板に樹脂枠体5を
図2のように載せ、ボンディングワイヤ(導電部材)7を接続した後の上面図である。IGBTやFWDのような半導体チップ2a,2bは、ハンダを介して回路パターン9aに接続される。次いで、所要のインバータ回路などを構成するため
のボンディング
ワイヤ7a,7bが、半導体チップ2a、2b間、絶縁回路基
板および金属端子の脚部4cとの間などに施される。さらに、ボンディングワイヤ7が、樹脂枠体5の桟部5aの上を跨いで隣接する絶縁回路基板9の回路パターン9a面間に施され、電気的に接続している。なお、導電部材は、上記ボンディングワイヤに限定されず、扁平な板材であってもよい。
【0028】
図4は、
図3のB1−B2断面図に上蓋8の断面図を追加して示した概略断面図である。見易くするために、半導体チップおよびチップ周辺のボンディングワイヤ7a,7b等を省略して記載している。金属端子4a,4bは、軸部4dと、脚部4cと、前記軸部4dと前記脚部4cを連結して屈曲されたヒンジ部4eと備えている。ヒンジ部4eは、前記軸部4dまたは前記脚部4cより幅が狭くされて樹脂枠体に係合され、ヒンジ部4eから折り曲げられた脚部4cは段差部5eに固定されるので、金属端子4a,4bと樹脂枠体5との位置ずれを抑制できる。
【0029】
なお、本発明の金属端子4a,4bは、樹脂枠体5と係合するヒンジ部分4eを軸部4dまたは脚部4cよりも幅を狭くした形状であるために、
金属端子をプレス加工で製造する際には、狭ピッチでレイアウトして、端材の量を減らし、単位面積当たりの金属端子の製造個数を増加できる。
【0030】
図4の断面図に示した半導体モジュールは、金属端子4a,4bの脚部4cの一部を樹脂枠体5の内側の段差部5eの平坦な上段面上に露出させ、軸部4dの一部を外部に導出させた状態で、金属端子4a,4bを一体モールド成型により保持している。ただし、金属端子4a,4bは、樹脂枠体5に必ずしも一体モールド成型しなくともよい。モールド成型した樹脂枠体に金属端子を嵌め込みにより一体化してもよい。このように金属端子4a,4bをワイヤボンディング配線領域外の樹脂枠体5に集め、ヒンジ部でL字状に折り曲げられた脚部4cのみを樹脂枠体5の内側の段差部5e上に露出させることにより、金属端子の軸部4dは樹脂枠体5に埋設されており、ボンディングワイヤの接続点となる金属端子の脚部のみが露出しているので、ワイヤボンディング作業が容易になり、且つ高信頼性の接続とすることができる。
【0031】
図5は、
図4の上蓋8を適正な位置にセットした状態のB1−B2断面の概略断面図である。
図4と同様に、半導体チップおよびチップ周辺のボンディングワイヤ7a,7b等を省略して記載している。
図1(a)に破線で示したように、上蓋8は、下側に隔壁部8bと柱状部8aを備えている。
図4、
図5に示すように、隔壁部8bは、上蓋8を樹脂枠体5の上部の開口に被せたときに、樹脂枠体5の桟部5aの上面を押圧するように配置されている。柱状部8aは、絶縁回路基板9の中央近辺を押圧するように配置されている。
【0032】
しかし、前述したように、ボンディングワイヤ7が樹脂枠体5の桟部5aを跨いで接続されている箇所が存在するので、隔壁部8bの下端面を桟部5aの上面と同寸法にすると、隔壁部8bがボンディングワイヤ7と干渉することになる。そこで本発明では、上蓋8に設けられている隔壁部8bがボンディングワイヤ7と干渉しない形状にされていることを特徴とする。例えば、
図3に示したボンディングワイヤ7のように、ボンディングワイヤ7が絶縁回路基板9の両端近辺の位置に設けられている場合には、隔壁部8bがボンディングワイヤ7に接触しないように、隔壁部8bは、ボンディングワイヤ7
に挟まれた桟部5aの上面
の一部のみに接触する形状にされている。このように隔壁部8bの寸法をボンディングワイヤ7に接触しないように下側の桟部5aより短い形状にしても、隔壁部8bが桟部5aを介して絶縁回路基板9を押圧する。そのため、複数の絶縁回路基板9は、樹脂枠体5の外周である枠部5cおよび桟部5aによって、各絶縁回路基板9の周縁を均等に接触されるので、絶縁回路基板9に対してほぼ均等な押圧力を与えることができる。複数の絶縁回路基板9は、樹脂枠体5の枠部5cの下面や桟部5aの下面と接着剤で接着されている。その結果、半導体モジュール1は、絶縁回路基板9の反り変形を抑制することができる。ヒートシンクは、絶縁回路基板9の裏面と対向する面が平坦面に成形されており、複数の絶縁回路基板9の裏面の銅箔に接触されている。前記平坦面には、ネジ溝が形成されており、樹脂枠体5は、貫通孔6を通したネジでヒートシンクに固定される。従って、半導体チップ2a,2bの発熱を、図示しないヒートシンクに放熱することができる。また、上蓋8に関して、隔壁部8bは桟部5aを介して絶縁回路基板9を押圧するので、隔壁部8bの上蓋8からの長さは、柱状部8aの上蓋8からの長さよりも、短くなる。このことも上記実施の形態の一例の構造的な特徴である。
【0033】
本発明にかかる半導体モジュール1は、
図1、
図2の斜視図、
図3の上面図に示すように、相互に近接して併置された複数の絶縁回路基板9と、この絶縁回路基板9の周辺上に接着させる樹脂枠体5と、この樹脂枠体5の上側の開口を閉じる上蓋8を備える。この上蓋8を樹脂枠体5の上側の開口に被せる方法は、樹脂枠体5へ接着剤で接着させる方法でもよい。また、上蓋8を樹脂枠体5に固定させる係合部を備えてもよい。係合部は、例えば、嵌合、ネジ止め、かみ合わせなどの構造にする。上蓋8の柱状部8a、隔壁部8bによる絶縁回路基板9に対する押圧力を確実にすることができる。
【0034】
本発明の半導体モジュール1の製造方法は、桟部5aが絶縁回路基板9間の対向する第1外縁部上に配置され、樹脂枠体5の枠部5cが複数の絶縁回路基板9の第2外縁部上に配置されるように絶縁回路基板9と樹脂枠体5とを配置する第1工程と、桟部5aを跨いで絶縁回路基板9間を導電部材7で電気的に接続する第2工程と、上蓋8の蓋部8cが樹脂枠体上部の開口を覆い、上蓋8の隔壁部8bが桟部5aの一部に突き合わせた状態になるように上蓋8が樹脂枠体5に固定される第3工程とを備える。第3工程で樹脂枠体5に上蓋8を被せる前に、樹脂枠体5と絶縁回路基板9とで囲まれる空間内部にシリコーンゲルなどを注入し封止する第4工程が含まれることがより好ましい。
【0035】
以上、説明した実施の形態にかかる半導体モジュールによれば、複数の絶縁回路基板を有する構造であっても、絶縁回路基板間の電気的な接続を容易にし、絶縁回路基板の反り変形を抑制でき半導体チップの発熱を良好に放熱できる半導体モジュールを提供できる。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体モジュール
2a、2b 半導体チップ
4a、4b 金属端子
4c 金属端子の脚部
4d 金属端子の軸部
4e 金属端子のヒンジ部
5 樹脂枠体
5a 桟部
5b 開口部
5c 枠部
5d 樹脂枠体側の係合部
5e 段差部
6 貫通孔
7、7a ボンディングワイヤ(導電部材)
8 上蓋
8a 柱状部
8b 隔壁部
8c 蓋部
8d 上蓋側の係合部
9 絶縁回路基板
9a 回路パターン
200 半導体モジュール
201 絶縁回路基板
203 半導体チップ
204 外部導出金属端子
205a 樹脂ケース
205b 上蓋
205c 壁