(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132042
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/25 20060101AFI20170515BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20170515BHJP
C07C 19/10 20060101ALI20170515BHJP
C07C 17/16 20060101ALI20170515BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20170515BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170515BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
C07C19/10
C07C17/16
C09K5/04 Z
!C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-31636(P2016-31636)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-164152(P2016-164152A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-37827(P2015-37827)
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大石 訓司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 倫明
【審査官】
井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第94/014737(WO,A1)
【文献】
特表2013−504658(JP,A)
【文献】
特表2012−509857(JP,A)
【文献】
特表2010−529111(JP,A)
【文献】
特開2010−235569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00−21/22
C09K 5/04
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)を脱フッ化水素する工程を含み、
前記脱フッ化水素を、液相で、反応時間8時間以下で行うか、又は気相で、接触時間100秒以下で行い、
生成物を連続的に抜き出す、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(1233yd)の製造方法。
【請求項2】
前記脱フッ化水素を、液相で行い、且つ、促進剤の存在下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脱フッ化水素を、触媒の存在下で行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記脱フッ化水素を、液相で行い、且つ、0〜150℃の範囲で行う、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールを塩素化して前記3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)を生成する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記塩素化において、分子状塩素、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル又は塩化リンを塩素化剤として使用する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
単一の反応器において、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールを塩素化して3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)を生成する工程と、244caを脱フッ化水素する工程とを含む、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(1233yd)、1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン(CHF2C≡CCl)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(1233zb)及び3-クロロ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(244fa)を含む組成物であって、前記1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン、1233zb及び244faの総量が5vol%以下である組成物。
【請求項9】
熱移動用媒体である、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(1233yd)は熱移動用媒体を構成する有用な化合物として期待されている。
【0003】
近年、熱移動用媒体としては2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)や、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze)などが汎用されており、それらの製造方法も多数開示されている。
【0004】
しかし、1233ydの具体的な製造方法については検討が進んでおらず、その製造方法であって、原料化合物の転化率及び1233ydの選択率が高い製造方法の確立が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5056946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、1233ydの製造方法であって、その原料化合物の転化率及び1233ydの選択率が高い製造方法を提供することである。
【0007】
1233ydの製造方法は開示されていないものの、特許文献1には、含塩素フルオロアルカンの脱フッ化水素による含塩素フルオロアルケンの製造方法が開示されており、その具体例として、3-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(CF
3CF
2CH
2Cl)(235cb)の脱フッ化水素によって1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(CF
3CF=CHCl)(1224yd)を製造する方法が開示されている。
【0008】
脱フッ化水素反応を行うための反応物としては、例えば1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CF
3CHFCHF
2)(236ea)が考えられるが、このような脱フッ化水素反応時に脱離する水素を複数有するものである場合、複数の化合物が生成し、目的生成物の選択率が低下することが知られている。
脱フッ化水素反応を用いて1233ydを生成する場合は、1233ydの組成式C
3H
2F
3ClにHとFを1つずつ加えた組成式C
3H
3F
4Clで表される原料化合物を用いる。例えば、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(CHF
2CF
2CH
2Cl)(244ca)、3-クロロ-1,1,2,3-テトラフルオロプロパン(CHF
2CHFCHFCl)(244ea)が原料化合物として挙げられる。そのうち、脱フッ化水素反応時に脱離する水素を複数有する原料化合物を用いて1233ydを生成する場合、用いる原料化合物と、脱離する水素の位置の組み合わせによっては、以下に示す副生成物が生成する場合がある。
このような副生成物としては、例えば、構造異性体である3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(CF
2=CFCH
2Cl)(1233yc)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(CHF=CFCHFCl)(1233ye)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(CHF
2CH=CFCl)(1233zb)、3-クロロ-1,1,3-トリフルオロプロペン(CF
2=CHCHFCl)(1233zc)等の他、更に上記原料化合物から脱塩化水素した1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(CHF
2CF=CHF)(1234ye)等がある。これらの副生成物と1233ydとの分子量はほとんど同じであるため、これらの副生成物の沸点と1233ydの沸点とが近接すると考えられる。よってこれらを蒸留等の一般的な手法により分離精製することは困難であると考えられる。従って、1233yc等が発生しにくく、かつ、1233ydの選択率が高い製造法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)を脱フッ化水素することにより、原料化合物の高い転化率を達成し、1233ydを高い選択率で製造できることを見出した。さらに、毒性が高く、1233ydとの分離が困難な副生成物である1233ycの生成を抑えられ、1233ydの選択率が極めて高くなるという予想外の効果を奏することを見出した。かかる知見に基づきさらに検討を加えて、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の1233ydの製造方法を提供する。
項1.3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)を脱フッ化水素する工程を含むことを特徴とする1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(1233yd)の製造方法。
項2.前記脱フッ化水素を、促進剤の存在下で行う、項1に記載の製造方法。
項3.前記脱フッ化水素を、液相で、触媒の存在下で行う、項1又は2に記載の製造方法。
項4.生成物を連続的に抜き出す、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5.2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールを塩素化して前記3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)を生成する工程をさらに含む、項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
項6.前記塩素化において、分子状塩素、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル又は塩化リンを塩素化剤として使用する、項5に記載の製造方法。
項7.単一の反応器において、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールを塩素化して3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(244ca)を生成する工程と、244caを脱フッ化水素する工程とを含む、項5又は6に記載の製造方法。
項8.1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(1233yd)と、1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン(CHF
2C≡CCl)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(1233zb)及び3-クロロ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(244fa)からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とを含む組成物であって、前記1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン、1233zb及び244faからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の総量が5vol%以下である組成物。
項9.熱移動用媒体である、項8に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、原料化合物の転化率が高く、1233ydを高い選択率で得られるとともに、1233ycの副生成を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、具体的に説明する。なお、本発明に関する主な各種プロパン及びプロペンについては、表1に示すとおり定義する。
【0013】
本発明は、244caを脱フッ化水素する工程を含むことを特徴とする1233ydの製造方法である。1233ydは、熱移動用媒体として好適に使用することができる。
【0014】
<原料化合物>
本発明においては、原料化合物として244caを用いる。244caは種々の方法で合成可能であり、例えば、塩素化剤により、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールを塩素化して244caを製造することができる。
【0015】
2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールの塩素化反応は、気相又は液相のいずれにおいても実施することができ、塩素化剤としては、分子状塩素、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化リン等を好適に用いることができる。
【0016】
また、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールはテトラフルオロエチレンとメタノールとを反応させることにより、製造することができる。
【0017】
<脱フッ化水素反応工程>
244caの脱フッ化水素反応は以下の反応式に従う。
【0018】
CHF
2CF
2CH
2Cl → CHF
2CF=CHCl + HF
(244ca) (1233yd)
【0019】
本発明における脱フッ化水素反応は、媒体中で実施することができ、通常、水を含む媒体が用いられる。水を含む媒体には、有機溶媒等の水以外の媒体を含んでいてもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、(o-、m-又はp-)キシレン等の芳香族炭化水素;へキサン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素等の疎水性有機溶媒が選ばれ、沸点が100℃以上のものが好ましい。より具体的にはトルエン、キシレン等が好ましい。
【0020】
用いる媒体の全量は、244ca 1重量部に対して、通常、1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部である。そのうち、水と水以外の媒体との重量比率は、通常、100:0〜10:90、好ましくは70:30〜30:70である。
【0021】
また、本発明の一態様における脱フッ化水素反応は、促進剤の存在下で行うことができる。
【0022】
本発明における244caの脱フッ化水素反応は、反応器に原料化合物である244caを連続的に仕込み、該反応器から生成物を連続的に抜き出す流通式又はバッチ式のいずれの方式によっても実施することができる。生成物が反応場に留まるとさらに脱フッ化水素反応が進行し得ることから、流通式で実施することが好ましい。
【0023】
244caは、上記した公知の方法で製造することができ、244caの原料を244caに変換する反応設備と、244caを1233ydに変換する反応設備を接続して、244caの原料から、1233ydを連続して製造することができる。さらに、244caの原料を244caに変換する反応と、244caを1233ydに変換する反応とを単一の反応器中で行うことも可能であり、反応効率、作業効率、設備コスト、エネルギーコスト等の観点から単一の反応器中で行うことが好ましい。
【0024】
<促進剤・触媒>
本発明における脱フッ化水素化反応を行う反応場には、脱フッ素化を促進する促進剤及び触媒のいずれか又は両方を存在させることが好ましい。
【0025】
促進剤は、原料化合物からフッ素を脱離させ、そのフッ素又はフッ化水素と反応することにより、原料化合物から1233ydへの反応速度を大きくすることができる。また、これにより、反応場に触媒が存在する場合、その触媒の活性及び寿命等を向上させることができる。
【0026】
促進剤は、原料化合物に対して当量以上存在することが好ましく、1〜3当量程度が特に好ましい。
【0027】
促進剤としては、特に限定されないが、金属水酸化物、金属酸化物等のアルカリ又は塩基化合物を使用することができ、液相で脱フッ化水素反応を行う場合においてはこれらのアルカリ又は塩基化合物を使用することが好ましい。
【0028】
促進剤として使用されるアルカリ又は塩基化合物は、脱フッ化水素反応を促進させ炭素−炭素二重結合を形成するために用いられる。水に溶解し得るものであれば有機塩基又は無機塩基を問わない。
【0029】
有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン類が挙げられる。無機塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられる。そのうち、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化カリウムである。
【0030】
有機塩基又は無機塩基においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムを促進剤として用いることが好ましく、特に水酸化カリウムを用いることが好ましい。
【0031】
促進剤として使用されるアルカリ又は塩基化合物の量は、通常、原料化合物1モルに対して1〜5モル、好ましくは1.5〜3.5モルとすればよい。塩基の量が増えるほど原料化合物の転化率及び1233ydの選択率は向上する傾向にある。
【0032】
触媒としては、スルホン酸、リン酸等のブレンステッド酸、金属酸化物、金属ハロゲン化物等のルイス酸等を使用することができる。
【0033】
気相で脱フッ化水素反応を行う場合には、特に限定されないが、触媒を用いることが好ましい。例えば、活性炭、金属、金属の酸化物から成る群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。また、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化スズ、塩化鉄、フッ化アルミニウム、フッ化酸化アルミニウム、フッ化酸化クロム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化フッ化ランタン、フッ化ランタン、ニッケル、酸化ニッケル、ないしこれらを二種以上混合、複合させた触媒等を用いることができる。さらに、担体にこれらの触媒を担持させたものを用いることができる。これらの触媒の中でも、フッ化酸化アルミニウム、フッ化酸化クロムが特に好ましい。
【0034】
<相間移動触媒・界面活性剤>
本発明における脱フッ化水素反応では、上記の水及び有機溶媒(特に、疎水性有機溶媒)のいずれか又は両方を含む媒体を用いることができる。反応媒体を2相形成する場合には、2相間の物質の反応を促進させるため、前記促進剤又は触媒とは別に、相間移動触媒、界面活性剤等を存在させることができる。
【0035】
相間移動触媒は、反応の起こる相に原料化合物を移動させる作用を有する。水の存在する液相、すなわち水相と有機相が共存し、両相に反応物が存在する反応系で脱フッ化水素反応を行う場合には、2相間の反応物の反応を促進させるため、相間移動触媒を用いることが特に好ましい。
【0036】
相間移動触媒としては特に限定されないが、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(TOMAC)等の第四級アンモニウム塩;塩化テトラブチルホスホニウムクロライド(TBPC)等のホスホニウム塩;15−クラウン5、18−クラウン6などのクラウンエーテル類等の他、アルキルアンモニウム塩、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩等の公知の物質を使用することができる。その中で第4級アンモニウム塩が好ましく、例えば、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、Aliquat336(登録商標)等を好適に用いることができる。
【0037】
相間移動触媒を用いる場合、その量は、媒体として用いる水の重量に対して、0.05〜10重量%、好ましくは0.08〜5重量%である。
【0038】
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ジエタノールアミド等の非イオン性界面活性剤、アルキルトリエチルアンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、モノアルキル硫酸塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。このうち、耐熱性の観点から両性界面活性剤が好ましい。
【0039】
界面活性剤を用いる場合、その量は、媒体として用いる水の重量に対して、通常、0.05〜10重量%、好ましくは0.08〜5重量%である。
【0040】
<反応条件>
脱フッ化水素反応は液相又は気相のいずれにおいても行うことができるが、液相で行うことが好ましい。
【0041】
脱フッ化水素反応の反応温度は特に限定的でなく、通常、0〜500℃程度の範囲とすることができる。また、液相の場合、好ましくは0〜150℃程度の範囲とすることができ、より好ましくは30〜100℃程度の範囲とすることができる。気相の場合、好ましくは100〜450℃の範囲とすることができる。液相又は気相のいずれの相で反応させる場合でも、反応温度が高すぎると生成した1233ydがさらに反応したり、脱フッ化水素の選択性が低下したりするなどして収率や選択率が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0042】
脱フッ化水素反応の反応時間は特に限定的ではなく、液相反応においては反応時間、気相反応においては接触時間を長くすれば転化率を上げることができるが、長くし過ぎると生成した1233ydがさらに反応してしまい収率や選択率が低下したり、設備が必要以上に大きくなったりするなど非効率であるため、反応促進剤の添加量や反応温度など他の条件も勘案して適当な反応時間又は接触時間を選択する必要がある。通常は、液相の場合反応時間を4〜8時間、気相の場合接触時間を1〜100秒程度の範囲とすればよい。
【0043】
脱フッ化水素反応の圧力も特に限定的ではなく、減圧、常圧又は加圧下にて反応を行うことができる。通常は、大気圧(0.1MPa)近傍の圧力下で実施すればよいが、0.1MPa未満の減圧下においても円滑に反応を進行させることができる。
【0044】
<作用>
本発明によれば、原料化合物の転化率が高く、1233ydを高い選択率で得られるとともに、原料化合物244caの構造上、脱離する水素の位置から副生が予想される1233ycの副生成を抑えることができる。また、調達が容易な原料化合物を使用し、製造コスト及び設備コストを抑え、簡便に、且つ、効率的に1233ydを得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示し、本発明の特徴を明確にする。本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1
244ca 12gを、水酸化カリウム17g、水23g及び相間移動触媒である第4級アンモニウム塩(Aliquat336(登録商標))0.18gを混合して得られたアルカリ性の水溶液と混合し、フラスコ中で100℃に加熱して8時間反応させた。留出分を集めてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、244caの転化率が90%、1233ydの選択率が94.8%であった。
【0047】
他の生成物はすべて1233yd由来のものであり、1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン(CHF
2C≡CCl)が1.6%、1233zbが2.1%、244faが0.2%であった。異性体の1233ycは生成しなかった。