特許第6132081号(P6132081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132081
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】缶体のピンホール検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   G01N21/90 P
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-152835(P2012-152835)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-16198(P2014-16198A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】小路 泰広
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 友規
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−317356(JP,A)
【文献】 特開2002−365230(JP,A)
【文献】 実開昭62−165551(JP,U)
【文献】 特開2011−191248(JP,A)
【文献】 特開昭57−007545(JP,A)
【文献】 米国特許第04455225(US,A)
【文献】 特開平06−109661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通する透孔を有する回転ターレットと、前記透孔と同軸に缶体を載置する缶体保持部材と、前記缶体に光を照射する光源と、前記回転ターレットに対向して固定フレーム側に設けられる可動板と、缶体の内部に漏れ出た光を検出する光検出器と、を備える缶体のピンホール検査装置であって、
前記回転ターレットに摺接する前記可動板の摺接部材の表面に、該可動板の貫通孔と同心円状に複数の断面矩形状の環状溝が溝幅より狭い間隔で密に配置された遮蔽機構として形成されることを特徴とする缶体のピンホール検査装置。
【請求項2】
前記光源に白色LED光を用いたことを特徴とする請求項1に記載の缶体のピンホール検査装置。
【請求項3】
前記缶体保持部材は、前記缶体を保持するチャックの支持軸にロッドを介してチャックとともに移動可能に固定される請求項1又は2に記載の缶体のピンホール検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は缶体の胴部等に発生したピンホールを検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属缶体、例えば、絞りしごき成形によって作られるシームレス缶体(以下、単に缶体と略称する。)の製造工程において、前記缶体の胴部等に孔や亀裂等のピンホールが発生することがある。前記ピンホールの有無は、前記缶体の検査工程において用いられるピンホール検査装置によって検査されることが一般的である。
【0003】
特許文献1に示されたピンホール検査装置は、図7に示されるように、右側が検査される缶体を保持する検査ターレット、左側が缶体内部光検出装置で構成されている。また、摺動リング板と摺接して摺接面をシールする封緘リング板が固定されているピストン状封緘部が、摺動リング板側の第1フレーム先端面に摺接可能に設けられている。これにより、ピンホール検査時に高速回転する摺動リング板に対しピストン状封緘部をエアー圧により付勢させて、摺接面におけるシール効果を高め、外光及び光源光等からなる外乱光が、前記摺接面から光検出器側に到達することを阻止している。
【0004】
前述の通り、ピンホール検査時は、高速回転する摺動リング板に封緘リング板を押圧状態とするため、通常は封緘リング板と摺動リング板の摺接面から外乱光が光検出器に到達することはない。しかしながら、種々の要素、例えば何らかの外力が加わる、又は封緘リング板及び摺動リング板の表面状態等に起因して、両部材の間に瞬間的に間隙を生じて、前記間隙からの外乱光が光検出器に到達し、良品を不良品として誤検出してしまうおそれがあった。
【0005】
ここで、特許文献2には、固定側ディスクと回転ディスクとの間にすき間を設け、何れかのディスク面に角度の異なる傾斜面からなるV溝を形成して、移動体と基体との間の隙間から基体の開口内へ入り込む迷光の入射を抑制することができる旨が記載されている。
また、特許文献3には、回転ディスクの可動板との対向面に周方向を向く環状の周溝を形成し、この周溝内に固定側ディスクの先端部を位置させて構成される光遮蔽部によって、光源から照射された光が固定側ディスクと回転ディスクとの間を介して光導入路内に侵入することが防止される旨が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2では、移動体の周縁部及び内縁部にカバー状部材が取り付けられているものの、固定側ディスクと回転ディスクとの間にすき間を設けることを前提としたものであるから、ピンホールの検出感度を上げるために高光度の光源を採用した場合、固定側ディスク及び回転ディスクの内表面間で乱反射する相当量の迷光が光検出器の配置されている開口内に至るものと推定される。
また、特許文献3に記載の光遮蔽部は、周溝には対向する固定側ディスクが嵌り込むという複雑な構造が採られるため、その位置調整が難しく、また、固定側ディスク表面に光を侵入方向へ戻すトラップを設けることも明細書中には開示されているが、その作用効果は十分に説明されておらず、未だ前述の問題を十分に解決するには至っていない。
【0007】
また、光検出器の性能上、従来の缶体のピンホール検査装置の検査対象となるピンホール径は20μm程度であり、更に小径のピンホールの有無を検査する場合、ピンホールから缶体内へ侵入する光が微弱となり、検知可能な光量に達しないおそれがある。ここで、従来よりも高光度の光源を用いて光検出器が検知可能な光量を確保する方法が考えられるが、従来の装置構成では外乱光の対策が十分に取られておらず、光量の増加に起因する誤検出の発生率が高まるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4715988号公報
【特許文献2】特開2002―365230号公報
【特許文献3】特許第4230269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の問題を踏まえ、本発明の第一の目的は、表面状態等に起因して生ずる回転ターレットと可動板の間隙から光検出器側に外乱光が到達することを有効に防止することができる缶体のピンホール検査装置を提供することにある。また、第二の目的は、前記第一の目的を達成することで高光度の光源を用いることが可能となって、更に小径のピンホールを検出することが可能となり、検査精度が更に向上した缶体のピンホール検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の缶体のピンホール検査装置は、貫通する透孔を有する回転ターレットと、前記透孔と同軸に缶体を載置する缶体保持部材と、前記缶体に光を照射する光源と、前記回転ターレットに対向して固定フレーム側に設けられる可動板と、缶体の内部に漏れ出た光を検出する光検出器と、を備える缶体のピンホール検査装置であって、前記回転ターレットに摺接する前記可動板の摺接部材の表面に、該可動板の貫通孔と同心円状に複数の断面矩形状の環状溝が溝幅より狭い間隔で密に配置された遮蔽機構として形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の缶体のピンホール検査装置は、以下の形態を採用することができる。
1.前記光源に白色LED光を用いる。
2.前記缶体保持部材は、前記缶体を保持するチャックの支持軸にロッドを介してチャックとともに移動可能に固定される。
【発明の効果】
【0012】
前述の本発明の缶体のピンホール検査装置によれば、高速回転する回転ターレットと可動板との間隙から侵入した外乱光が、遮蔽機構として可動板の表面に形成された断面矩形状の環状溝の空間に到達する毎に減衰又は吸収されて、可動板に形成された貫通孔に至る光量を効果的に低減して、光検出器側に外乱光が到達することを有効に防止することができる。
また、本発明の缶体のピンホール検査装置によれば、高光度の光源を用いることが可能となったので、缶体の外周面に光を照射する光源を備え、前記光源に従来の蛍光灯に換え白色LED光を用いることにより、光検出器側に外乱光が到達することを有効に防止しつつ、更に小径(数μm程度)のピンホールの検出が可能となる。
また、前記缶体を保持するチャックの支持軸にロッドを介してチャックとともに移動可能に固定される缶体保持部材を用いることで、検査用ターレットが不要となって缶体に光を照射する光源(特に下部光源)の設置自由度が広がるため、光源を増設して光量を増加させることが可能となる。また、回転ターレットに対して軸方向に移動する缶体の胴部が、検査用ターレットのポケットの端面と摺接して生じる不具合、例えば缶体の胴部の傷、凹み等、を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の缶体のピンホール検査装置で、缶体を検査する形態を説明する概略図である。
図2】本発明の缶体のピンホール検査装置の検査領域を示す図である。
図3図2における遮蔽機構の断面図及び平面図である。
図4】本発明の遮蔽機構及び回転ターレットの摺接時における部分拡大図である。
図5】本発明の遮蔽機構による遮蔽機能を説明する図である。
図6】本発明に適用可能な缶体を保持する機構を示す図である。
図7】従来の缶体のピンホール検査装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の缶体のピンホール検査装置の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の缶体のピンホール検査装置で、缶体を検査する形態を説明する概略図であって、供給ターレット2によって検査用ターレット3のポケット3aに供給された缶体1が、X方向に連続回転する検査用ターレット3によって後述する上部光源10a,下部光源10b(以下、両方をまとめて光源10とも称す)が配置される検査ステーションAに搬送されて良否判定が行われた後、送出ターレット4によって次工程に送出される手順を示している。
【0015】
図2は、本発明の缶体のピンホール検査装置の検査領域を示す図である。
まず、本発明の缶体のピンホール検査装置は、検査用ターレット3、回転ターレット5、チャック6、上部光源10a,下部光源10bを備えている。検査用ターレット3は検査ステーションAを通過する缶体1を後述の透孔8と同軸に戴置する缶体保持部材であり、その外周縁部には缶体1の胴部を戴置可能な凹部であるポケット3aが複数形成されている。
回転ターレット5は、その両面間を貫通する透孔8を複数有し、一端が開放した缶体1の開口端が押しつけられるスポンジ質の開口受け部7が、透孔8の一方の周縁に取付リング7aを介して取り付けられている。
【0016】
チャック6は、缶体1の底部をバキューム吸引によって支持する部材であり、支持軸9に固定して回転ターレット5に対向するように設けられる。また、図示しないカム及びカムフォロワーにより、回転ターレット5の開口受け部7に缶体1の開口端が密着するよう、チャック6及び支持軸9は回転ターレット5に対して軸方向に移動可能となっており、その際は缶体1も同様にポケット3a上を滑るように軸方向に移動する。また、支持軸9は、回転ターレット5の回転軸に固定された部材に、図示しないスライド機構等を介して取り付けられ、回転ターレット5の透孔8と略対向する位置に配置されている。
さらに、固定フレーム11の内部には、回転ターレット5と対向し、缶体1の内部に漏れ出た光を検出する高感度の光電子増倍管(フォトマル)等の光検出器13が、透孔8及び後述する可動板20の貫通孔21と同軸上に設けられている。
【0017】
また、可動板20は回転ターレット5に対向して設けられ、中央に貫通孔21を有するピストン部材22、リング板25及び摺接部材26からなる各部材の総称であり、筒状の脚部23と頂面板24からなるピストン部材22の頂面板24には、リング板25がボルトによって固定されており、さらにリング板25の天面には、回転ターレット5との摺接がスムーズに行われるよう、黒色非光沢かつ低摩擦係数で比較的柔軟なプラスチック、例えば弗素樹脂系軟質プラスチックからなる摺接部材26が、不透明の接着剤を介して固定されている。
尚、本実施形態のようにピストン部材22の頂面板24に固定されるリング板25に摺接部材26を接着させることが望ましいが、ピストン部材22の頂面板24に摺接部材26を直接接着することも可能である。
【0018】
また、ピストン部材22の脚部23は固定フレーム11に形成された嵌合ガイド溝に嵌合されており、エアー圧によってピストン作用で回転ターレット5側に進退可能とされている。また、脚部23と該嵌合ガイド溝の摺接部の密封を図るために、脚部23の内外周部には一対のオーリングが設けられている。このような構成とすることにより、可動板20を付勢して回転ターレット5と摺接させて摺接面をシールし、外乱光が摺接面から光検出器13側に到達することを防止している。
【0019】
また、前記形態において、ポケット3a及びチャック6によって、保持及び支持された缶体1が固定フレーム11側に設置された光検出器13に対峙する位置(検査ステーションA)に移動した時に、光源10として、缶体1の胴部に上下方向から光を照射する上部光源10a,下部光源10bが配置されている。また、光源10aには、光源からの光が装置外方に漏れることを防止するカバー10cが取付けられている。
この種のピンホール検査の光源としては紫外線から赤外線までの全領域波長を有する白色光が好ましく、本実施形態では高光度の光源として白色LEDライトを採用し、それを複数個配列させている。これにより、後述の遮蔽機構によって光検出器13側に外乱光が到達することを有効に防止しつつ、検査精度を上げて更に小径のピンホールの検出が可能となる。
【0020】
そして、連続回転により順次搬送されてくる缶体1を検査する場合、ポケット3aに保持された缶体1はチャック6によって支持されつつ、その開口端が回転ターレット5の開口受け部7に密接した状態となる。その後、検査ステーションAにおいて上部光源10a,下部光源10bの照明を受けながら、回転ターレット5の透孔8が、可動板20の貫通孔21と同軸上で一致したタイミング(検出位置)で、缶体1内に漏れ出た光が光検出器13で受光され、その光量によってピンホールの有無を判定する構成が採られている。
【0021】
また、本実施形態では、図3及び4に示すように、可動板20の摺接部材26の表面に貫通孔21と同心円状に複数の断面矩形状の環状溝27(ここに示す例では7本)が遮蔽機構として形成されている。このような構成とすることで、高速回転する回転ターレット5と可動板20との間隙から侵入した外乱光が、遮蔽機構として可動板の摺接部材26の表面に形成された断面矩形状の環状溝27の空間に到達する毎に減衰又は吸収されて、可動板20に形成された貫通孔21に至る光量を効果的に低減して、光検出器13側に外乱光が到達することを有効に防止することができる。
【0022】
図5は本発明の遮蔽機構による遮蔽機能を説明する図であり、回転ターレット5と可動板20の周縁部から両部材の間隙に侵入する外乱光は、上部光源10a,下部光源10bから照射された直接光、及び缶体1又はピンホール検査装置の各部材からの反射光であり、図5において左方向からの光線A,B,Cとなる。ここで、前記左方向からの光線をサンプルとし、反射の際ガウス分布に基づき、もっとも強い反射となる正反射方向の光線がどの様に伝搬するか検証する。
【0023】
光線A乃至Cは、可動板20の摺接部材26の表面に入射し、前記間隙内にて反射を繰り返しながら中央方向に伝搬され、断面矩形状の環状溝27aに到達する。光線A乃至Cは環状溝27aの空間に到達すると、環状溝27aの壁面で多数回の反射を繰り返す際に、減衰又は吸収される。その後、光量の減少した光線A乃至Cが、更に内側(中央側)に向かって反射を繰り返し伝搬して環状溝27bに至ると、前述の場合と同様に、多数回の反射を繰り返して減衰又は吸収される。ここで、光線の入射角度はA>B>Cの順となっており、その反射回数についてもA>B>Cの順となっている。また、光線Bの場合、環状溝27aに侵入して複数回反射を繰り返した後、前記間隙の入口側に戻されて外方に放出されるようになっている。
尚、回転ターレット5と可動板20の摺接部材26表面に平行な角度から入射した外来光は、反射回数も少なく光量を減衰させることは本来難しい。しかしながら、環状溝27aは反射を繰り返してきた間隙と比較して広い空間となっているため、光線A乃至Cは環状溝27aの空間に到達すると拡散して減衰される。すなわち、平行な角度から入射した外来光においても、前述の減衰効果によって、十分に低い光量とすることができる。
【0024】
以上、3つのサンプル光線の反射形態を解析して分かるように、本発明の遮蔽機構によれば、可動板の摺接部材26の表面に複数の環状溝27を設けたことにより、内方の環状溝27に到達する毎に光減衰効果が重畳されていき、前記間隙内に侵入した外来光を十分に低い光量とすることができる。
さらに、前述したように回転ターレット5と摺接部材26の表面は黒色非光沢に表面処理されているので、反射光は散乱光となり、実際の反射は回転ターレット5と摺接部材26の表面で四方に散乱されながら、この散乱を繰り返されるものと理解するのが相当である。従って、光の伝搬量は環状溝27a、環状溝27b、・・・と順次進むに連れて減衰してゆくことになる。
【0025】
図6(A)乃至(C)は、本発明の実施形態の検査用ターレット3に替えて用いられる缶体保持部材3hを示している。尚、図6(A)は缶体1を保持した缶体保持部材3hの底面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
缶体保持部材3hはプレート状の部材であって、その上部に缶体1を戴置可能な凹部が形成されており、缶体1を保持するチャック6の支持軸8にロッド3rを介してチャック6とともに移動可能に固定される。また、缶体1の胴部上端及び下端近傍を支持するため、缶体保持部材3hは複数のロッド3rに所定の間隔を有して取付けられている。そして、缶体保持部材3h及びチャック6は、図示しないカム及びカムフォロワーにより、回転ターレット5の開口受け部7に缶体1の開口端が密着するよう、缶体1を保持したまま回転ターレット5に対して軸方向に移動可能となっている。
前記構成とすることによれば、検査用ターレット3が不要となって缶体1に光を照射する光源10(特に下部光源10b)の設置自由度が広がるため、光源を増設して光量を増加させることが可能となる。また、回転ターレット5に対して軸方向に移動する缶体1の胴部が、検査用ターレット3のポケット3aの端面と摺接して生じる不具合、例えば缶体1の胴部の傷、凹み等、を防止することができる。
【0026】
次に、本発明の遮蔽機構による減光効果を確認した試験データを示す。
本発明の可動板に設けられる遮蔽機構、すなわち、低摩擦係数で比較的柔軟なプラスチック、例えば弗素樹脂系軟質プラスチックからなる黒色非光沢の表面の摺接部材26の各寸法は以下のように設定されている。
<実施例>
摺接部材26 直径:φ192mm
貫通孔21 直径:φ71mm
環状溝27a 中心位置の径:φ153mm
環状溝27b 中心位置の径:φ143mm
環状溝27c 中心位置の径:φ133mm
環状溝27d 中心位置の径:φ123mm
環状溝27e 中心位置の径:φ113mm
環状溝27f 中心位置の径:φ103mm
環状溝27g 中心位置の径:φ93mm
環状溝27a乃至g 幅:7.3mm
環状溝27a乃至g 深さ:1.5mm
<比較例>
環状溝27a乃至gを設けない点以外は、実施例と同様の摺接部材26を用いる。
<測定位置>
缶体1の軸芯位置と光検出器13の軸心が一致する角度を0°とし、回転ターレット5の回転位置が時計方向に進んだ角度を+とし、反時計方向に遅れた角度を−で表示し、−12°、−6°、0°、6°、12°位置で光検出器13により検出光量を測定した。ここで、「−12°」及び「12°」の位置は、回転ターレット5の透孔8の周縁部と、可動板20の貫通孔21の周縁部が重なる始点及び終点の位置を示している。この時のデータを表1に示す。なお、本発明のピンホール検査装置において測定が行われるタイミングは−3°〜3°の範囲内である。
<測定方法>
本発明の缶体のピンホール検査装置における検査用ターレット3のポケット3aの任意の1箇所に缶体1を保持させて、缶体1の開口端を開口受け部7に接触させた状態とし、回転ターレット5を徐々に回転させて、回転ターレット5の透孔8と可動板20に形成された貫通孔21が同軸上で一致するようにした後、回転ターレット5を非回転状態で減光試験を行った。尚、本実施例の遮光効果を確認するため、可動板20を付勢するエアーシリンダを作動させず、敢えて可動板20と回転ターレット5の間に0.12mmの間隙(シム量)を設定し、光検出器13による測定結果の光量はmVで表す。
【表1】
表1にて示すように、角度0°となる測定タイミングでの比較例の値は570mVであったが、本発明に係る実施例では98mVであった。尚、可動板と回転ターレットの間隙を0.12mmとしたのは減光効果をより顕著に把握するために設定したものであり、前記間隙を更に狭く設定すれば、更なる減光効果を発揮することができる。
【0027】
以上、本発明によれば、表面状態等に起因して生ずる可動板と回転ターレットの間隙から光検出器側に外乱光が到達することを有効に防止することができる。
また、本発明の光遮蔽効果は大きいため、さらに高光度の光源を用いることが可能となって、更に小径(数μm程度)のピンホールを検出することが可能となり、検査精度が更に向上した缶体のピンホール検査装置を提供することが可能となる。
さらに、所望の減光効果を達成していれば、可動板と回転ターレットの間隙を設定して両者を非接触状態として検出作業を行うことが可能となり、可動板と回転ターレットの摺接による装置疲労を防止すると共に、従来から問題視されていた摺接面の摩擦による振動及び摩擦熱に起因する光検出器の誤作動についても解決され、ピンホール検出作業の精度及び効率を大幅に高めることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 缶体
2 供給ターレット
3 検査用ターレット
3a ポケット
3r ロッド
4 送出ターレット
5 回転ターレット
6 チャック
9 支持軸
10 光源
10a,10b 上下部光源
11 固定フレーム
13 光検出器(光電子増倍管)
20 可動板
22 ピストン部材
25 リング板
26 摺接部材
27a乃至g 環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7