特許第6132083号(P6132083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132083
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】消泡方法および消泡装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/02 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B01D19/02
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-204018(P2012-204018)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-57914(P2014-57914A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】辰見 栄隆
(72)【発明者】
【氏名】城宝 司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 友里
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−011807(JP,A)
【文献】 特開2005−035610(JP,A)
【文献】 特開2008−174297(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡方法であって、
前記パウチ容器の開口部の開口面積を拡張する開口拡張工程と、
前記パウチ容器を押圧して充填された内容物の液面を上昇させる液面上昇工程と、
上昇した内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡工程とを有し、
前記消泡工程が、前記パウチ容器の開口部の上方から上昇した内容物の液面に衝撃波を投射する衝撃波投射工程であり、
前記液面上昇工程と前記消泡工程が、前記開口拡張工程により前記パウチ容器の開口部の開口面積を拡張して行われ
前記衝撃波投射工程が、パルス状レーザー光を集光してレーザー誘起ブレークダウンを発生させ、該レーザー誘起ブレークダウンの衝撃によって発生するパルス状音波を、前記パルス状レーザー光の入射孔側のテーパ部と端部開口側のストレート部から成る導波管によって前記パウチ容器の開口部の上方から内容物の液面に向かって衝撃波として投射することを特徴とする消泡方法。
【請求項2】
前記液面上昇工程より前に、前記パウチ容器の開口部側の端縁を保持する保持工程を有し、
前記液面上昇工程および消泡工程が、前記パウチ容器の開口部側端縁を保持した状態で行われることを特徴とする請求項1に記載の消泡方法。
【請求項3】
前記開口拡張工程が、前記液面上昇工程と同時あるいは液面上昇工程より前に行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の消泡方法。
【請求項4】
前記保持工程が、前記パウチ容器の開口部側の端縁の両サイドを把持するものであり、
前記開口拡張工程が、把持された前記パウチ容器の両サイドを近づけることで開口部の開口面積を拡げるものであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の消泡方法。
【請求項5】
パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡装置であって、
前記パウチ容器の開口部側の端縁を保持し、前記容器の開口部の開口面積を拡張する保持手段と、
内容物が充填された前記パウチ容器の側面を押圧して内容物の液面の上昇を行う液面上昇手段と、
前記パウチ容器の開口部の上方に設けられ、内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡手段とを有し、
前記消泡手段が、前記パウチ容器の開口部の上方から内容物の液面に向かって衝撃波を投射する衝撃波投射機構を含み、
前記内容物の液面の上昇と、前記内容物の液面上の泡を減少または消滅が、前記容器の開口部の開口面積を拡張して行われ
前記衝撃波投射機構が、パルス状レーザー光を集光してパルス状音波を発生させるレーザー照射部と、発生した該パルス状音波を誘導して衝撃波として投射する導波管とを有し、
前記導波管が前記パルス状レーザー光の入射孔側のテーパ部と端部開口側のストレート部からなることを特徴とする消泡装置。
【請求項6】
前記液面上昇手段が、1対の押圧部材と、該1対の押圧部材を接近する方向に移動させる押圧駆動部とを有することを特徴とする請求項5に記載の消泡装置。
【請求項7】
前記液面上昇手段が、前記パウチ容器の密封時に使用される脱気手段を兼ねることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の消泡装置。
【請求項8】
前記保持手段が、前記パウチ容器の開口部側の端部の両サイドを把持する1対の把持部と、該1対の把持部を接近する方向に移動させる開口駆動部とを有することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の消泡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡方法および消泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周縁をシールされ袋状に形成された複数のシート材からなるパウチ容器に内容物を充填・密封してなるパウチ製品が広く使用されている。
パウチ製品は、一般に、上辺以外の周縁がシールされ上辺のみが開口した状態のパウチ容器に対し、充填機において上方から内容物を充填した後、密封装置(ホットシール等)により上辺の開口部を密封することで製造される。
このように製造されるパウチ製品において、充填された内容物の品質を保持するため、特に内容物がコーンスープ、コンソメジュレスープ等のスープ類の場合は内容の変質の防止、あるいは、味や香りを維持するためには、内容物が充填・密封されたパウチ容器内の残存酸素量を低減することが重要であり、密封前にパウチ容器内の空気を脱気する脱気工程や不活性ガスによる置換工程を設けて残存酸素量を低減することが行われている。
【0003】
しかしながら、内容物が前述した内容物等の場合、内容物の充填時の泡の発生が不可避であり、この泡には空気中の酸素が含まれているため、脱気工程や置換工程後に泡が残存するとパウチ容器内の残存酸素量が多くなる。
また、発生した泡が脱気工程や置換工程時に外部に飛散して設備を汚染したり、パウチ容器の上辺の密封箇所に付着して密封不良が発生する虞がある。
【0004】
このため、内容物の泡を極力減少させる必要があるが、泡の発生を抑えるために充填速度を遅くしたり、泡が消滅するまでに十分な時間を取ることはパウチ製品の製造効率の低下につながるという問題がある。
また、泡を抑制するために、内容物に消泡剤を混合する手法も考えられるが、内容物の味、香り、食感等に影響を与える場合があり、また、消泡剤の適用が困難な内容物の場合はこの手法は採用できない。
【0005】
そこで、内容物の充填時に発生する泡を、密封前に積極的に短時間で減少または消滅させることが望ましく、そのための消泡技術として様々なものが提案されている。
例えば、内容物の液面上の泡に向かって乾燥空気や熱風等を吹きつけて泡を減少または消滅させる技術が公知である(特許文献1等参照。)。
また、外部エネルギーであるレーザー光を照射する消泡技術が提案されており、例えば、レーザー光の光ビームで、泡膜を形成している分子間結合と膜内の水分子或いは有機分子を振動励起させ、分子間結合を切断して泡を減少または消滅させる技術が公知である(特許文献2等参照。)。
さらに、本出願人は、パルス状レーザー光のレーザー誘起ブレークダウンの衝撃によって発生するパルス状音波が消泡に対して優れた効果を発揮することを見出し、「パルス状音波を用いて泡沫を破壊して消泡する消泡方法」を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−251813号公報
【特許文献2】特開昭63−252509号公報
【特許文献3】国際公開2007−086339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した公知の技術をパウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡に対して適用する場合、パウチ容器の上方の開口部から内容物を充填した直後は、内容物の液面は低い位置で開口部からは遠い位置にあり、消泡のための機構を開口部の上方に設けた場合、高速にかつ効果的に泡を減少または消滅させることが困難であるという問題があった。
また、パウチ容器が柔軟で不定形なため、同一の充填量であっても内容物の液面の位置が一定しないため、前述した公知の技術を適用する際に最適な設定が困難であるという問題があった。
特許文献1に記載の技術の場合では、高速に泡を減少または消滅させようとすると、噴出する乾燥空気や熱風の圧力を高めて高速、高圧とする必要があるが、高速、高圧の気体が容器上部乱流を発生して泡の外部への飛散量が増えて、設備を汚染したり、パウチ容器の上辺の密封箇所に付着して密封不良が発生するという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術の場合、そもそも、レーザー光の光ビームで各泡を照射するため、消泡に長時間を要して高速で消泡することができず、また、容器内周面近傍の泡も効果的に消泡することができず、開口部上方から照射すると液面上の泡までの距離が遠くなり、高速にかつ効果的に泡を減少または消滅させることが困難であるという問題があり、液面の位置が一定しないことで、さらに効果的に泡を減少または消滅させることが困難であった。
また、特許文献3に記載の技術の場合、レーザー光発振装置、集光レンズなどの集光光学系等の位置から液面上の泡までの距離が遠くなり、レーザー光の集光性が低下して効果的に泡を減少または消滅させることが困難であるという問題があった。
【0009】
これらの問題を解決するために、消泡のための機構を開口部から挿入して液面上の泡に近づけることも考えられるが、そのためには消泡のための機構を上下動させる可動手段が必要となり設備が複雑化する。
また、パウチ容器が柔軟で不定形なため、同一の充填量であってもパウチ容器が一定の形状とはならず、消泡のための機構が挿入時にパウチ容器と接触するおそれがあり、損傷や破損を防ぐためには挿入する速度を抑える必要があり、全体としての泡を減少または消滅させる時間が長くかかってしまう。
さらに、同一の充填量であっても内容物の液面の位置が一定しないため、常に最適な位置まで挿入することは困難である。
【0010】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を外部に飛散させることなく、高速にかつ効果的に減少または消滅させる消泡方法および消泡装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本請求項1に係る発明は、パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡方法であって、前記パウチ容器の開口部の開口面積を拡張する開口拡張工程と、前記パウチ容器を押圧して充填された内容物の液面を上昇させる液面上昇工程と、上昇した内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡工程とを有し、前記消泡工程が、前記パウチ容器の開口部の上方から上昇した内容物の液面に衝撃波を投射する衝撃波投射工程であり、前記液面上昇工程と前記消泡工程が、前記開口拡張工程により前記パウチ容器の開口部の開口面積を拡張して行われ、前記衝撃波投射工程が、パルス状レーザー光を集光してレーザー誘起ブレークダウンを発生させ、該レーザー誘起ブレークダウンの衝撃によって発生するパルス状音波を、前記パルス状レーザー光の入射孔側のテーパ部と端部開口側のストレート部から成る導波管によって前記パウチ容器の開口部の上方から内容物の液面に向かって衝撃波として投射することにより、前記課題を解決するものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る消泡方法の構成に加え、前記液面上昇工程より前に、前記パウチ容器の開口部側の端縁を保持する保持工程を有し、前記液面上昇工程および消泡工程が、前記パウチ容器の開口部側端縁を保持した状態で行われることにより、前記課題を解決するものである。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る消泡方法の構成に加え、前記開口拡張工程が、前記液面上昇工程と同時あるいは液面上昇工程より前に行われることにより、前記課題を解決するものである。
請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に係る消泡方法の構成に加え、前記保持工程が、前記パウチ容器の開口部側の端縁の両サイドを把持するものであり、前記開口拡張工程が、把持された前記パウチ容器の両サイドを近づけることで開口部の開口面積を拡げるものであることにより、前記課題を解決するものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡装置であって、前記パウチ容器の開口部側の端縁を保持し、前記容器の開口部の開口面積を拡張する保持手段と、内容物が充填された前記パウチ容器の側面を押圧して内容物の液面の上昇を行う液面上昇手段と、前記パウチ容器の開口部の上方に設けられ、内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡手段とを有し、前記消泡手段が、前記パウチ容器の開口部の上方から内容物の液面に向かって衝撃波を投射する衝撃波投射機構を含み、前記内容物の液面の上昇と、前記内容物の液面上の泡を減少または消滅が、前記容器の開口部の開口面積を拡張して行われ、前記衝撃波投射機構が、パルス状レーザー光を集光してパルス状音波を発生させるレーザー照射部と、発生した該パルス状音波を誘導して衝撃波として投射する導波管とを有し、前記導波管が前記パルス状レーザー光の入射孔側のテーパ部と端部開口側のストレート部からなることにより、前記課題を解決するものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る消泡装置の構成に加え、前記液面上昇手段が、1対の押圧部材と、該1対の押圧部材を接近する方向に移動させる押圧駆動部とを有することにより、前記課題を解決するものである。
請求項7に係る発明は、請求項5または請求項6に係る消泡装置の構成に加え、前記液面上昇手段が、前記パウチ容器の密封時に使用される脱気手段を兼ねることにより、前記課題を解決するものである。
請求項8に係る発明は、請求項5乃至請求項7のいずれかに係る消泡装置の構成に加え、前記保持手段が、前記パウチ容器の開口部側の端部の両サイドを把持する1対の把持部と、該1対の把持部を接近する方向に移動させる開口駆動部とを有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
本請求項1に係る消泡方法および本請求項5に係る消泡装置によれば、パウチ容器を押圧して充填された内容物の液面を上昇させることで、液面上の泡をパウチ容器の開口部付近まで上昇させることができるため、泡との距離が近い状態で内容物の液面上の泡を減少または消滅させることができ、泡を外部に飛散させることなく、高速にかつ効果的に減少または消滅させることが可能となる。
また、パウチ容器を押圧することでパウチ容器を所定の形状とすることができ、液面を所定の位置とすることができるため、消泡のための機構を固定した状態でも液面との位置関係を常に最適なものとすることが可能となり、簡単な構成で、高速にかつ効果的に泡を減少または消滅させることが可能となる。
【0016】
また、衝撃波の投射位置を容器内とする必要がないため、衝撃波投射機構を汚損することなく投射位置と泡とを近づけることが可能となり、高速にかつ効果的に泡を減少または消滅させることが可能となる。
さらに、パウチ容器の開口部の開口面積を拡げることにより、高速にかつ効果的に減少または消滅させることが可能となる。
また、衝撃波の発生点を液面、および、パウチ容器から遠ざけることが可能となるため、光学系を汚損することなく高速にかつ効果的に泡を減少または消滅させることが可能となるとともに、設備の設計自由度が向上し簡単な構成とすることが可能となる。
さらに、パルス状レーザー光の入射孔側のテーパ部と端部開口側のストレート部から成る導波管によってパウチ容器の開口部の上方から内容物の液面に向かって衝撃波として投射することで、液体表面に対向する導波管の端部開口方向に向けられ進行する各方向の反射波のパルス状音波が端部開口に達するまでの時間差を少なくして、集中的に液面方向に投射することができる。
請求項2に記載の構成によれば、液面上昇時にパウチ容器を押圧しても開口部の形状を最適に保持することができるため、消泡工程を確実に行うことが可能となり、高速にかつ効果的に減少または消滅させることが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の構成によれば、開口拡張工程のための処理時間を別途設ける必要がないため、充填、密封を含む全体の処理時間を増加させることがない。
請求項4および本請求項8に記載の構成によれば、開口拡張工程の処理を保持工程の処理を同一の機構で行うことができるため、設備全体をより簡単な構成とすることが可能となる。
請求項6に記載の構成によれば、簡単な構成で内容物の液面の上昇を行うことが可能となる。
請求項7に記載の構成によれば、液面上昇手段が脱気手段を兼ねることで、設備全体をより簡単な構成とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る消泡方法および消泡装置の概略説明図。
図2】本発明の実施形態に係る消泡方法の工程説明図。
図3】本発明の実施形態に係る消泡装置の液面上昇手段の説明図。
図4】本発明の実施形態に係る消泡装置の衝撃波投射機構の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の消泡方法は、パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡方法であって、パウチ容器の開口部の開口面積を拡張する開口拡張工程と、パウチ容器を押圧して充填された内容物の液面を上昇させる液面上昇工程と、上昇した内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡工程とを有し、消泡工程が、パウチ容器の開口部の上方から上昇した内容物の液面に衝撃波を投射する衝撃波投射工程であり、液面上昇工程と消泡工程が、開口拡張工程によりパウチ容器の開口部の開口面積を拡張して行われ、前記衝撃波投射工程が、パルス状レーザー光を集光してレーザー誘起ブレークダウンを発生させ、該レーザー誘起ブレークダウンの衝撃によって発生するパルス状音波を、前記パルス状レーザー光の入射孔側のテーパ部と端部開口側のストレート部から成る導波管によって前記パウチ容器の開口部の上方から内容物の液面に向かって衝撃波として投射するものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
また、本発明の消泡装置は、パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡装置であって、パウチ容器の開口部側の端縁を保持し、容器の開口部の開口面積を拡張する保持手段と、内容物が充填されたパウチ容器の側面を押圧して内容物の液面の上昇を行う液面上昇手段と、パウチ容器の開口部の上方に設けられ、内容物の液面上の泡を減少または消滅させる消泡手段とを有し、消泡手段が、パウチ容器の開口部の上方から内容物の液面に向かって衝撃波を投射する衝撃波投射機構を含み、内容物の液面の上昇と、内容物の液面上の泡を減少または消滅が、容器の開口部の開口面積を拡張して行われ、衝撃波投射機構が、パルス状レーザー光を集光してパルス状音波を発生させるレーザー照射部と、発生した該パルス状音波を誘導して衝撃波として投射する導波管とを有し、導波管が前記パルス状レーザー光の入射孔側のテーパ部と端部開口側のストレート部からなるものであって、簡単な構成で、パウチ容器の開口部から充填された内容物の液面上の泡を外部に飛散させることなく、高速にかつ効果的に減少または消滅させるものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
【0020】
本発明の消泡方法および消泡装置の概略を説明する。
消泡装置100は、図1に示すように、消泡手段110と液面上昇手段120とを備えており、消泡手段110はパウチ容器101の開口部102直上に配置され、液面上昇手段120は、パウチ容器101の側方に配置された1対の押圧部材121が押圧駆動部122によってパウチ容器101を挟み込んで押圧可能に構成されている。
パウチ容器101は、図2に示すように、保持手段130の1対の把持部131により開口部102近傍の端縁を保持されており(図1では保持手段130は図面裏表方向に存在するため図示を省略した。)、1対の把持部131が開口部102近傍の端縁を保持したまま図示しない駆動部によって接離方向に移動することにより、開口部102の開口面積を変更可能に構成されている。
【0021】
パウチ容器101は柔軟で不定形であり、図2(b)に示すように、保持手段130によって開口部102の近傍でのみ保持され、開口部102が上方に開放した状態で内容物103が充填されているため、図1(a)に示すように、中間部が膨れて液面が開口部102から遠い位置にある状態である。
この状態から、保持手段130を固定したまま、押圧駆動部122によって1対の押圧部材121を互いに接近する方向に駆動して、図1(b)に示すように、パウチ容器101を挟み込んで内容物103の液面を上昇させることで、液面上の泡104が開口部102近くに上昇し、開口部102直上に配置された消泡手段110によって、高速にかつ効果的に泡104を減少または消滅させることが可能となる。
【0022】
また、保持手段を固定し、1対の押圧部材121を一定位置まで接近させた場合、パウチ容器101は常に一定の形状となり、内容物103の量が一定であれば液面の位置も一定となるため、開口部102直上に配置された消泡手段110は、最適な位置に固定的に設ければよく、液面位置に応じた移動や調整のための設備が不要で、設備全体の構成を簡素化することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の実施形態に係る消泡方法および消泡装置を適用したパウチ製品の製造装置およびその製造工程の一実施例について説明する。
該パウチ製品105の製造装置200は、図3に示すように、タレット210に複数の保持手段130が円周上に等間隔に配置され、該タレット210が間歇的に回転することにより、各保持手段130が容器供給部211、内容物充填部212、消泡密封部213、容器排出部214の各処理部に臨み、後述する各工程の処理を行うように構成されている。
【0024】
まず、容器供給部211において、パウチ容器101が外部から供給され、保持手段130の1対の把持部131により開口部102近傍の端縁を保持する(保持工程)。
内容物充填部212には、パウチ容器101の上方に内容物供給手段220が配置されており、内容物充填部212において、保持手段130の1対の把持部131を接近させてパウチ容器101の開口部102を内容物が充填可能に拡張し(開口工程)、内容物供給手段220から内容物を充填する(充填工程)。
なお、開口工程は、容器供給部211で保持工程直後に行ってもよく、タレット210の回転中に行ってもよい。
また、開口工程で、パウチ容器101の上方を側方から拡げる手段を追加してもよい。
【0025】
消泡密封部213には、前述した消泡装置100が配置されている。すなわち、パウチ容器101の上方に消泡手段110が配置され、パウチ容器101の側方に液面上昇手段120の1対の押圧部材121が配置されている。
また、パウチ容器101の開口部102側の端縁を溶着するための溶着手段230が配置されている。
なお、本実施例では、前述した消泡装置100の保持手段130は、タレット210に配置された保持手段130である。
消泡密封部213において、保持手段130の1対の把持部131を接近させてパウチ容器101の開口部102の開口面積を最大まで拡張し(開口拡張工程)、1対の押圧部材121を互いに接近する方向に駆動しパウチ容器101を挟み込んで内容物103の液面を上昇させ(液面上昇工程)、消泡手段110を作動させて液面上の泡を減少または消滅させる(消泡工程)。
なお、開口拡張工程は、内容物充填部212で充填工程直後に行ってもよく、タレット210の回転中に行ってもよく、液面上昇工程と同時に行なってもよい。
また、前述の開口工程で開口部102の開口面積が最大まで拡張して、開口工程が開口拡張工程を兼ねてもよい。
【0026】
そして、保持手段130の1対の把持部131を離間させてパウチ容器101の開口部102を閉じ(閉口工程)、溶着手段230によってパウチ容器101の上辺の開口部102を密封する(密封工程)。
なお、前述した液面上昇工程によって脱気が行われるが、必要に応じてさらに同様の脱気工程、或いは窒素ガス等の不活性ガスによるガス置換工程を設けてもよく、また、閉口工程は別に設けてもよい。
容器排出部214において、保持手段130の1対の把持部131による開口部102近傍の端縁を保持が解除され、内容物が充填され密封されたパウチ容器101(パウチ製品105)が外部に排出される(排出工程)。
【0027】
なお、本実施例では、タレット210に保持手段130を90°毎に配置し、90°毎に配置された4つの処理部に臨むよう間歇回転するものとしたが、保持手段130の数を増やし処理部の配置、間欠回転の角度をそれに応じて変えてもよく、各処理工程を細分して、処理部を増やしてもよい。
さらに、密封工程の溶着時間を長くしたい場合は、消泡密封部213の直後に、密封工程を行う溶着手段230を配置した追加密封部を1つ以上設けたり、溶着で高温となったパウチ容器101の上辺を冷却する冷却部や、パウチ製品105の密封の良否を検査する検査部等を容器排出部214の前に設けてもよい。
【0028】
また、本実施例では、各処理部へのパウチ容器101の移動を、複数の保持手段130が配置されたタレット210の間歇回転により行なっているが、保持手段130をいかなる手段で移動させてもよく、また、パウチ容器101の移動を別の手段で行い各処理部に固定的な保持手段を設けてもよい。
また、パウチ容器101の移動の動作に応じて、各処理部を直線的に配置したり、ジグザグに配置する等、適宜設計してもよい。
【0029】
次に、本発明の消泡手段110の具体的な一実施例として、パルス状レーザー光を集光してパルス状音波を発生させるレーザー照射部112と、発生した該パルス状音波を誘導して衝撃波として投射する導波管113とを有する衝撃波投射機構111で構成されたものを、図4に基づいて説明する。
パルス状の光Lを発生するパルス状レーザー光発振装置114、該パルス状レーザー光発振装置114より発振されたパルス状レーザー光Lを焦点Sに集光する集光光学系115、及び導波管113とから構成され、該導波管113の端部開口116が消泡対象の液面に対して、鉛直方向上方に面するように配置されている。
本実施例では、消泡密封部213において内容物103が充填されたパウチ容器101の上方に導波管113を垂直に配置し、該導波管113の軸心方向からパルス状レーザー光Lを照射するように、パルス状レーザー光発振装置114及び集光光学系115が配置されている。
【0030】
前記パルス状レーザー光発振装置114としては、レーザー媒質に蓄えられていたエネルギーを光パルスとして一気に放出させることができるパルス状レーザー光を発振するものが好適である。パルス状レーザーとしては、Qスイッチ発振が可能なYAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザーや、TiSレーザーなどのフェムト秒レーザーが挙げられる。これらのパルス状レーザーは、数Hz〜数十kHzの繰返し周期を持つが、この繰返し周期の間蓄えられたエネルギーを数フェムト秒(fs)乃至数十ナノ秒(ns)という極めて短い時間幅で放出する。
【0031】
そのため、少ない入力エネルギーから高いピークパワーを効率的に得ることができる。
パルス状レーザー光発振装置114としては、このほかに、CO2レーザー、エキシマレーザー、半導体レーザーなど、各種のレーザー光を発振するパルス状レーザー光発振装置を用いることもできる。また、これらのレーザー光の基底波から波長変換素子により生成した高調波光も用いることができる。これらのパルス状レーザー光には、連続発振(CW)パルス状レーザー光も含まれるが、この場合においても、シャッターなどの光制御部材を用いて、パルス状の光を生成することができる。
【0032】
本実施例における集光光学系115は、パルス状レーザー光発振装置114と導波管113との間に配置される1枚の集光レンズ117を図示しているが、必ずしもそれに限定されるものではない。
また、集光光学系115は、パルス状レーザー光発振装置114と別体に形成してもよいが、パルス状レーザー光発振装置114に一体に設けることも可能である。
さらに、集光光学系115にプリズムや反射鏡等を設けてパルス状レーザー光Lを屈曲させて集光し、パルス状レーザー光発振装置114の照射方向が導波管113の軸心方向以外の方向となるように配置しても良い。
【0033】
導波管113は、レーザー光入射孔118側のテーパ部113tと端部開口116側のストレート部113sからなり、前記テーパ部113tはパルス状レーザー光の少なくとも焦点S或いはその近傍から前記端部開口116に向かって内周面の内径が増加するように形成されている。そして、集光光学系115により集光されたパルス状レーザー光Lは、導波管113の前記テーパ部113tの内部空間に前記焦点Sが位置するようにレーザー光入射孔118から内部に照射される。
【0034】
そして、このレーザー照射の結果、レーザー誘起ブレークダウンの衝撃により発生したパルス状音波Pは球面波として伝播するので、自由空間でパルス状音波Pを発生させると、単位面積当たりの音波強度は距離の二乗に反比例して急激に減衰するが、導波管113を採用することで、パルス状音波Pの導波管113の内周面における反射波が、液体表面に対向する導波管113の端部開口116方向に向けられ進行する各方向の反射波のパルス状音波Pが端部開口116に達するまでの時間差を少なくして、集中的に液面方向に投射するものである。
【0035】
すなわち、レーザー光の焦点S側に導波管113のテーパ部113tを設けることにより、導波管113の内周面に向かうパルス状音波Pは、導波管113の軸心方向との角度が小さくなるように反射されて端部開口116側に向けて進行し、パルス状音波Pの進行する各方向の前記反射波がほとんど時間差を生じることなく端部開口116向けて進行する。このため、反射波の端部開口116に到達する反射回数が減少し、反射によるエネルギーの減衰も低減できる。また、導波管113の内周面に向かうパルス状音波Pは一部が直射波となり、導波管113の端部開口116側に向けて直接進行するが、前記反射波と直射波とにおいても時間差が少なくなる。
【0036】
このため、自由空間でパルス状音波Pを発生させた場合と比較して、相対的に長い距離を導波管113により、前記パルス状音波Pの単位面積当たりのエネルギーを減衰させずに伝えることができ、かつ、進行する各方向の反射波の端部開口116に達するまでの時間差を少なくすることによって、液体表面に作用するパルス状音波Pの時間あたりのエネルギーの減少も小さいものとなる。そして、レーザー光の焦点Sの液体表面からの距離を長くすることが可能になり、また、前記導波管113を用いることにより、前述した汚染を防止し、集光効率の良い焦点距離の短いレンズを用いて集光性を高めることが可能となる。
【0037】
理論的には、直接端部開口116に達する直射波以外のパルス状音波Pが、導波管113の内周面で1回だけ反射して端部開口116方向に向かう内周面形状とするのが理想的である。
しかしながら、実質的には、導波管113の内周面で数回反射しても近似的に十分な効果を得ることが可能で、そのために、導波管113が、少なくとも焦点P近傍において端部開口116に向かって内周面の内径が増加するように形成されていることで十分に効果を奏する。具体的には、製作が簡単で、容易に効果が得られる形状として、導波管113の内周面が、端部開口116に向かってテーパ部113tを有していれば良い。
特に、反射波の進行方向を導波管113の軸心方向に対して40°以下とすることで顕著な効果が認められ、そのためには、前記導波管113の内周面のテーパ部が一段のテーパ部113tから成り、テーパ角度が軸心方向に対して25°乃至60°に形成されていることが望ましい。
【0038】
そして、導波管113の内周面を全長にわたってテーパとすると、焦点Pから端部開口116までの距離が長くなるにつれて端部開口116の面積が大きくなるため、端部開口116をパウチ容器101の上面のみにパルス状音波Pのエネルギーを集中させるように、ストレート部113sが設けられるのが好適である。
また、より理想的な内周面形状に近い形状とするためには、前記テーパ部113tが、導波管113の開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる二段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°に形成されていることがより望ましい。
【0039】
さらに、より一層、理想的な内周面形状に近い形状とするために、前記テーパ部113tが、導波管113の端部開口116に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる三段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°、10°乃至20°に形成されているのがより一層望ましい。
また、導波管113の端部開口116は、端部開口116におけるパルス状音波の伝播損失を抑制するためにホーン形状に形成してもよい。
導波管113の長さは、長くても短くても良く、特に限定されない。また、導波管113の内部において、焦点Sの位置は、パルス状音波Pの波面を均等に端部開口116に伝達するために、導波管113の中心軸上とするのが好ましい。
【0040】
本実施例では、内容物103液面上の泡104に近接する部分は、導波管113の端部開口116であり、パルス状レーザー光発振装置114や集光光学系115を有するレーザー照射部112は泡104から遠い位置に配置されるため、導波管113の端部開口116を極力パウチ容器101の開口部102に近接させ、内容物103の液面を限界まで上昇させても、光学系を汚損することなく高速にかつ効果的に泡を減少または消滅させることが可能となるとともに、設備の設計自由度が向上し簡単な構成とすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の消泡方法および消泡装置は、パウチ容器に液状等の内容物を充填する際に発生する泡の消泡に好適であるが、内容物をパウチ容器に充填する際に限らず、パウチ容器に類似する柔軟で不定形の容器内の液面上の泡を消泡する技術として、種々の産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
100 ・・・ 消泡装置
101 ・・・ パウチ容器
102 ・・・ 開口部
103 ・・・ 内容物
104 ・・・ 泡
105 ・・・ パウチ製品
110 ・・・ 消泡手段
111 ・・・ 衝撃波投射機構
112 ・・・ レーザー照射部
113 ・・・ 導波管
114 ・・・ パルス状レーザー光発振装置
115 ・・・ 集光光学系
116 ・・・ 端部開口
117 ・・・ 集光レンズ
118 ・・・ レーザー光入射孔
120 ・・・ 液面上昇手段
121 ・・・ 押圧部材
122 ・・・ 押圧駆動部
130 ・・・ 保持手段
131 ・・・ 把持部
200 ・・・ パウチ製品の製造装置
210 ・・・ タレット
211 ・・・ 容器供給部
212 ・・・ 内容物充填部
213 ・・・ 消泡密封部
214 ・・・ 排出部
220 ・・・ 内容物供給手段
230 ・・・ 溶着手段
図1
図2
図3
図4