【実施例】
【0023】
本発明の実施形態に係る消泡方法および消泡装置を適用したパウチ製品の製造装置およびその製造工程の一実施例について説明する。
該パウチ製品105の製造装置200は、
図3に示すように、タレット210に複数の保持手段130が円周上に等間隔に配置され、該タレット210が間歇的に回転することにより、各保持手段130が容器供給部211、内容物充填部212、消泡密封部213、容器排出部214の各処理部に臨み、後述する各工程の処理を行うように構成されている。
【0024】
まず、容器供給部211において、パウチ容器101が外部から供給され、保持手段130の1対の把持部131により開口部102近傍の端縁を保持する(保持工程)。
内容物充填部212には、パウチ容器101の上方に内容物供給手段220が配置されており、内容物充填部212において、保持手段130の1対の把持部131を接近させてパウチ容器101の開口部102を内容物が充填可能に拡張し(開口工程)、内容物供給手段220から内容物を充填する(充填工程)。
なお、開口工程は、容器供給部211で保持工程直後に行ってもよく、タレット210の回転中に行ってもよい。
また、開口工程で、パウチ容器101の上方を側方から拡げる手段を追加してもよい。
【0025】
消泡密封部213には、前述した消泡装置100が配置されている。すなわち、パウチ容器101の上方に消泡手段110が配置され、パウチ容器101の側方に液面上昇手段120の1対の押圧部材121が配置されている。
また、パウチ容器101の開口部102側の端縁を溶着するための溶着手段230が配置されている。
なお、本実施例では、前述した消泡装置100の保持手段130は、タレット210に配置された保持手段130である。
消泡密封部213において、保持手段130の1対の把持部131を接近させてパウチ容器101の開口部102の開口面積を最大まで拡張し(開口拡張工程)、1対の押圧部材121を互いに接近する方向に駆動しパウチ容器101を挟み込んで内容物103の液面を上昇させ(液面上昇工程)、消泡手段110を作動させて液面上の泡を減少または消滅させる(消泡工程)。
なお、開口拡張工程は、内容物充填部212で充填工程直後に行ってもよく、タレット210の回転中に行ってもよく、液面上昇工程と同時に行なってもよい。
また、前述の開口工程で開口部102の開口面積が最大まで拡張して、開口工程が開口拡張工程を兼ねてもよい。
【0026】
そして、保持手段130の1対の把持部131を離間させてパウチ容器101の開口部102を閉じ(閉口工程)、溶着手段230によってパウチ容器101の上辺の開口部102を密封する(密封工程)。
なお、前述した液面上昇工程によって脱気が行われるが、必要に応じてさらに同様の脱気工程、或いは窒素ガス等の不活性ガスによるガス置換工程を設けてもよく、また、閉口工程は別に設けてもよい。
容器排出部214において、保持手段130の1対の把持部131による開口部102近傍の端縁を保持が解除され、内容物が充填され密封されたパウチ容器101(パウチ製品105)が外部に排出される(排出工程)。
【0027】
なお、本実施例では、タレット210に保持手段130を90°毎に配置し、90°毎に配置された4つの処理部に臨むよう間歇回転するものとしたが、保持手段130の数を増やし処理部の配置、間欠回転の角度をそれに応じて変えてもよく、各処理工程を細分して、処理部を増やしてもよい。
さらに、密封工程の溶着時間を長くしたい場合は、消泡密封部213の直後に、密封工程を行う溶着手段230を配置した追加密封部を1つ以上設けたり、溶着で高温となったパウチ容器101の上辺を冷却する冷却部や、パウチ製品105の密封の良否を検査する検査部等を容器排出部214の前に設けてもよい。
【0028】
また、本実施例では、各処理部へのパウチ容器101の移動を、複数の保持手段130が配置されたタレット210の間歇回転により行なっているが、保持手段130をいかなる手段で移動させてもよく、また、パウチ容器101の移動を別の手段で行い各処理部に固定的な保持手段を設けてもよい。
また、パウチ容器101の移動の動作に応じて、各処理部を直線的に配置したり、ジグザグに配置する等、適宜設計してもよい。
【0029】
次に、本発明の消泡手段110の具体的な一実施例として、パルス状レーザー光を集光してパルス状音波を発生させるレーザー照射部112と、発生した該パルス状音波を誘導して衝撃波として投射する導波管113とを有する衝撃波投射機構111で構成されたものを、
図4に基づいて説明する。
パルス状の光Lを発生するパルス状レーザー光発振装置114、該パルス状レーザー光発振装置114より発振されたパルス状レーザー光Lを焦点Sに集光する集光光学系115、及び導波管113とから構成され、該導波管113の端部開口116が消泡対象の液面に対して、鉛直方向上方に面するように配置されている。
本実施例では、消泡密封部213において内容物103が充填されたパウチ容器101の上方に導波管113を垂直に配置し、該導波管113の軸心方向からパルス状レーザー光Lを照射するように、パルス状レーザー光発振装置114及び集光光学系115が配置されている。
【0030】
前記パルス状レーザー光発振装置114としては、レーザー媒質に蓄えられていたエネルギーを光パルスとして一気に放出させることができるパルス状レーザー光を発振するものが好適である。パルス状レーザーとしては、Qスイッチ発振が可能なYAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザーや、TiSレーザーなどのフェムト秒レーザーが挙げられる。これらのパルス状レーザーは、数Hz〜数十kHzの繰返し周期を持つが、この繰返し周期の間蓄えられたエネルギーを数フェムト秒(fs)乃至数十ナノ秒(ns)という極めて短い時間幅で放出する。
【0031】
そのため、少ない入力エネルギーから高いピークパワーを効率的に得ることができる。
パルス状レーザー光発振装置114としては、このほかに、CO2レーザー、エキシマレーザー、半導体レーザーなど、各種のレーザー光を発振するパルス状レーザー光発振装置を用いることもできる。また、これらのレーザー光の基底波から波長変換素子により生成した高調波光も用いることができる。これらのパルス状レーザー光には、連続発振(CW)パルス状レーザー光も含まれるが、この場合においても、シャッターなどの光制御部材を用いて、パルス状の光を生成することができる。
【0032】
本実施例における集光光学系115は、パルス状レーザー光発振装置114と導波管113との間に配置される1枚の集光レンズ117を図示しているが、必ずしもそれに限定されるものではない。
また、集光光学系115は、パルス状レーザー光発振装置114と別体に形成してもよいが、パルス状レーザー光発振装置114に一体に設けることも可能である。
さらに、集光光学系115にプリズムや反射鏡等を設けてパルス状レーザー光Lを屈曲させて集光し、パルス状レーザー光発振装置114の照射方向が導波管113の軸心方向以外の方向となるように配置しても良い。
【0033】
導波管113は、レーザー光入射孔118側のテーパ部113tと端部開口116側のストレート部113sからなり、前記テーパ部113tはパルス状レーザー光の少なくとも焦点S或いはその近傍から前記端部開口116に向かって内周面の内径が増加するように形成されている。そして、集光光学系115により集光されたパルス状レーザー光Lは、導波管113の前記テーパ部113tの内部空間に前記焦点Sが位置するようにレーザー光入射孔118から内部に照射される。
【0034】
そして、このレーザー照射の結果、レーザー誘起ブレークダウンの衝撃により発生したパルス状音波Pは球面波として伝播するので、自由空間でパルス状音波Pを発生させると、単位面積当たりの音波強度は距離の二乗に反比例して急激に減衰するが、導波管113を採用することで、パルス状音波Pの導波管113の内周面における反射波が、液体表面に対向する導波管113の端部開口116方向に向けられ進行する各方向の反射波のパルス状音波Pが端部開口116に達するまでの時間差を少なくして、集中的に液面方向に投射するものである。
【0035】
すなわち、レーザー光の焦点S側に導波管113のテーパ部113tを設けることにより、導波管113の内周面に向かうパルス状音波Pは、導波管113の軸心方向との角度が小さくなるように反射されて端部開口116側に向けて進行し、パルス状音波Pの進行する各方向の前記反射波がほとんど時間差を生じることなく端部開口116向けて進行する。このため、反射波の端部開口116に到達する反射回数が減少し、反射によるエネルギーの減衰も低減できる。また、導波管113の内周面に向かうパルス状音波Pは一部が直射波となり、導波管113の端部開口116側に向けて直接進行するが、前記反射波と直射波とにおいても時間差が少なくなる。
【0036】
このため、自由空間でパルス状音波Pを発生させた場合と比較して、相対的に長い距離を導波管113により、前記パルス状音波Pの単位面積当たりのエネルギーを減衰させずに伝えることができ、かつ、進行する各方向の反射波の端部開口116に達するまでの時間差を少なくすることによって、液体表面に作用するパルス状音波Pの時間あたりのエネルギーの減少も小さいものとなる。そして、レーザー光の焦点Sの液体表面からの距離を長くすることが可能になり、また、前記導波管113を用いることにより、前述した汚染を防止し、集光効率の良い焦点距離の短いレンズを用いて集光性を高めることが可能となる。
【0037】
理論的には、直接端部開口116に達する直射波以外のパルス状音波Pが、導波管113の内周面で1回だけ反射して端部開口116方向に向かう内周面形状とするのが理想的である。
しかしながら、実質的には、導波管113の内周面で数回反射しても近似的に十分な効果を得ることが可能で、そのために、導波管113が、少なくとも焦点P近傍において端部開口116に向かって内周面の内径が増加するように形成されていることで十分に効果を奏する。具体的には、製作が簡単で、容易に効果が得られる形状として、導波管113の内周面が、端部開口116に向かってテーパ部113tを有していれば良い。
特に、反射波の進行方向を導波管113の軸心方向に対して40°以下とすることで顕著な効果が認められ、そのためには、前記導波管113の内周面のテーパ部が一段のテーパ部113tから成り、テーパ角度が軸心方向に対して25°乃至60°に形成されていることが望ましい。
【0038】
そして、導波管113の内周面を全長にわたってテーパとすると、焦点Pから端部開口116までの距離が長くなるにつれて端部開口116の面積が大きくなるため、端部開口116をパウチ容器101の上面のみにパルス状音波Pのエネルギーを集中させるように、ストレート部113sが設けられるのが好適である。
また、より理想的な内周面形状に近い形状とするためには、前記テーパ部113tが、導波管113の開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる二段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°に形成されていることがより望ましい。
【0039】
さらに、より一層、理想的な内周面形状に近い形状とするために、前記テーパ部113tが、導波管113の端部開口116に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる三段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°、10°乃至20°に形成されているのがより一層望ましい。
また、導波管113の端部開口116は、端部開口116におけるパルス状音波の伝播損失を抑制するためにホーン形状に形成してもよい。
導波管113の長さは、長くても短くても良く、特に限定されない。また、導波管113の内部において、焦点Sの位置は、パルス状音波Pの波面を均等に端部開口116に伝達するために、導波管113の中心軸上とするのが好ましい。
【0040】
本実施例では、内容物103液面上の泡104に近接する部分は、導波管113の端部開口116であり、パルス状レーザー光発振装置114や集光光学系115を有するレーザー照射部112は泡104から遠い位置に配置されるため、導波管113の端部開口116を極力パウチ容器101の開口部102に近接させ、内容物103の液面を限界まで上昇させても、光学系を汚損することなく高速にかつ効果的に泡を減少または消滅させることが可能となるとともに、設備の設計自由度が向上し簡単な構成とすることが可能となる。