特許第6132088号(P6132088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132088
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】海流発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/26 20060101AFI20170515BHJP
   F03B 13/10 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F03B13/26
   F03B13/10
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-89437(P2013-89437)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-214601(P2014-214601A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年2月23日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23−26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「風力等海洋エネルギー技術研究開発/次世代海洋エネルギー発電技術研究開発(水中浮遊式海流発電)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】半田 典久
(72)【発明者】
【氏名】長屋 茂樹
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−535188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0212350(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0257492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/26
F03B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海流を受けて回転する水平軸型のタービン及び該タービンの回転により発電する発電機を具備して、互いに並列に連結される一対のポッドと、
海底に設置したシンカーと、
前記シンカーを介して前記一対のポッドを海底に係留する2本の係留索を備えた双発水中係留式の海流発電装置において、
前記2本の係留索の各々は、前記一対のポッドにそれぞれ連結され、
前記ポッドには、前記係留索の連結位置を変更して前記一対のポッドの姿勢を制御する連結位置調整機構を設け
前記連結位置調整機構は、前記一対のポッドの少なくともいずれか一方に軸心方向に沿って固定されるヨー方向の位置調整用ガイドレールと、該位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能に設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している
ことを特徴とする海流発電装置。
【請求項2】
前記連結位置調整機構は、前記一対のポッドに軸心方向に沿ってそれぞれ固定されるヨー方向及びピッチ方向の位置調整用ガイドレールと、これらの位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能にそれぞれ設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している請求項1に記載の海流発電装置。
【請求項3】
前記連結位置調整機構は、前記一対のポッドの少なくともいずれか一方に鉛直方向に沿って固定されるロール方向の位置調整用ガイドレールと、該位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能に設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している請求項1または請求項2に記載の海流発電装置。
【請求項4】
海流を受けて回転する水平軸型のタービン及び該タービンの回転により発電する発電機を具備して、互いに並列に連結される一対のポッドと、
海底に設置したシンカーと、
前記シンカーを介して前記一対のポッドを海底に係留する2本の係留索を備えた双発水中係留式の海流発電装置において、
前記2本の係留索の各々は、前記一対のポッドにそれぞれ連結され、
記シンカーには、前記係留索の連結位置を変更して前記一対のポッドの姿勢を制御する連結位置調整機構を設け
前記連結位置調整機構は、前記2本の係留索が連結される前記シンカーに少なくとも1本固定されるヨー方向の位置調整用ガイドレールと、該位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能に設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している
ことを特徴とする海流発電装置。
【請求項5】
前記一対のポッドの少なくともいずれか一方に配置されて、前記係留索の巻き取り繰り出しを行う係留索巻き取り繰り出し機構を、前記係留索の長さ寸法を変化させて前記一対のポッドの姿勢を制御する係留索長さ調整機構として設けた請求項1に記載の海流発電装置。
【請求項6】
前記2本の係留索が連結される前記シンカーに配置されて、少なくともいずれか一方の係留索の巻き取り繰り出しを行う係留索巻き取り繰り出し機構を、前記係留索の長さ寸法を変化させて前記一対のポッドの姿勢を制御する係留索長さ調整機構とした請求項に記載の海流発電装置。
【請求項7】
前記連結位置調整機構の前記スライダに、前記係留索の巻き取り繰り出しを行う係留索巻き取り繰り出し機構が配置されている請求項のいずれか1つの項に記載の海流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海流(潮流)を受けて回転するタービンを有する発電部を備えた浮上及び沈降可能な水中浮遊式の海流発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海流(潮流)等の海水の流れを利用して発電を行う海流発電装置が開発されている。
このような海水の流れを利用して発電を行う海流発電装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがあり、この海流発電装置は、いわゆる双発の水中浮遊式発電装置であって、海流を受けて回転する水平軸型のタービンを有する一対の発電部同士を連結ビームにより並列に連結して成っている。
【0003】
この双発水中係留式の海流発電装置は、連結ビームにより連結された一対の発電部を深度制御用の浮力付与支柱及び3本の係留ケーブルを介して海底に係留するようになっており、浮力付与支柱に配置される長さ制御部によって、浮力付与支柱と海底とを結ぶ3本の係留ケーブルのうちの少なくとも1本の係留ケーブルの長さをコントロールすることで、一対の発電部の深度や姿勢を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010-531956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような水中浮遊式の海流発電装置は、海中において発電を行う都合上、装置構成や制御系を可能な限りシンプルにすることが求められる。
しかしながら、一対の発電部を浮力付与支柱及び3本の係留ケーブルを介して海底に係留するようにした上述の海流発電装置にあっては、その装置構成や姿勢を変更する姿勢制御系がシンプルであるとは言い難く、これを解決することが従来の課題となっている。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、装置構成や制御系をシンプルなものとしたうえで、一対のタービンを含む装置本体の姿勢制御を確実に行うことが可能である海流発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明では、海流を受けて回転する水平軸型のタービン及び該タービンの回転により発電する発電機を具備して、互いに並列に連結される一対のポッドと、海底に設置したシンカーと、前記シンカーを介して前記一対のポッドを海底に係留する2本の係留索を備えた双発水中係留式の海流発電装置において、前記2本の係留索の各々は、前記一対のポッドにそれぞれ連結され、前記ポッドには、前記係留索の連結位置を変更して前記一対のポッドの姿勢を制御する連結位置調整機構を設け、前記連結位置調整機構は、前記一対のポッドの少なくともいずれか一方に軸心方向に沿って固定されるヨー方向の位置調整用ガイドレールと、該位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能に設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している構成としたことを特徴としており、この構成の海流発電装置を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
ここで、海流を受けて回転する水平軸型のタービンには、直径数十mのものが用いられ、このタービンの回転により発電する発電機は、水深数十mの位置に浮遊するようにして海底に係留され、双発の水中浮遊式発電装置の場合、発電容量はおおよそ数MWである。なお、この発電容量は仕様等の違いに応じて上下する。
そして、このような双発の水中浮遊式発電装置は、海中において発電ファームを形成するべく複数台並べて配置される。
【0009】
本発明に係る海流発電装置の一対のポッドは、係留されて海水の流れに対向するようにして浮遊(海水の流れに対して平行(水平)に浮沈)する。つまり、一対のポッドのヨー方向の姿勢は、海水の流れにより決まるので、運用中において、本来、ヨー方向の姿勢制御はほとんど必要ない。
しかしながら、上記発電ファームでは、そのエリアの肥大化を防ぎつつ複数の一対のポッドを発電に適した間隔をもって配置する都合上、例えば、片側のタービンの故障や破損等により左右のタービン間に微妙なトルクのズレが生じたり、海流の流速分布が変化したりした場合には、隣接する一対のポッド同士が接近して接触することも起こり得ることから、この接触を回避するために、ヨー方向の姿勢制御が必要になる。
【0010】
本発明に係る海流発電装置では、例え一対のポッドがヨー方向の回転(鉛直軸回りの回転)を始めたとしても、ポッドに設けられた連結位置調整機構を作動させることで、一対のポッドのヨー方向回転を抑え得ることとなり、その結果、発電ファームにおいて、隣接する一対のポッド同士が接近して接触する懸念を払拭し得ることとなる。
【0011】
つまり、ポッドに対する係留索の連結位置を変更するといった簡単な構成及び制御により、一対のポッドのヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0013】
また、本発明の請求項に係る海流発電装置では、一対のポッドがヨー方向の回転を始めたとしても、ヨー方向の位置調整用ガイドレール上において、この回転を止める方向のトルクを生じさせるべくスライダを移動させることで、一対のポッドのヨー方向回転を抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、一対のポッドのヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0014】
本発明の請求項に係る海流発電装置において、前記連結位置調整機構は、前記一対のポッドに軸心方向に沿ってそれぞれ固定されるヨー方向及びピッチ方向の位置調整用ガイドレールと、これらの位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能にそれぞれ設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している構成としている。
【0015】
本発明の請求項に係る海流発電装置では、本発明の請求項に係る海流発電装置と同様に、一対のポッドのヨー方向回転を抑え得るのに加えて、一対のポッドがピッチ方向の回転(水平軸回りの回転)を始めたとしても、一対のポッドの双方に配置したスライダをいずれもポッドの一端側(或いは他端側)に移動させることで、一対のポッドのピッチ方向回転を抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、一対のポッドのピッチ方向回転をも確実に抑え得ることとなる。
【0016】
本発明の請求項に係る海流発電装置において、前記連結位置調整機構は、前記一対のポッドの少なくともいずれか一方に鉛直方向に沿って固定されるロール方向の位置調整用ガイドレールと、該位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能に設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している構成としている。
【0017】
本発明の請求項3に係る海流発電装置では、一対のポッドがロール方向の回転(ポッド間の軸心回りの回転)を始めたとしても、ロール方向の位置調整用ガイドレール上において、この回転を止める方向のトルクを生じさせるべくスライダを移動させることで、一対のポッドのロール方向回転を抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、一対のポッドのロール方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0018】
本発明の請求項に係る発明では海流を受けて回転する水平軸型のタービン及び該タービンの回転により発電する発電機を具備して、互いに並列に連結される一対のポッドと、海底に設置したシンカーと、前記シンカーを介して前記一対のポッドを海底に係留する2本の係留索を備えた双発水中係留式の海流発電装置において、前記2本の係留索の各々は、前記一対のポッドにそれぞれ連結され、前記シンカーには、前記係留索の連結位置を変更して前記一対のポッドの姿勢を制御する連結位置調整機構を設け、前記連結位置調整機構は、前記2本の係留索が連結される前記シンカーに少なくとも1本固定されるヨー方向の位置調整用ガイドレールと、該位置調整用ガイドレールに沿って往復移動可能に設けられて前記係留索が連結されるスライダを具備している構成としている。
【0019】
本発明の請求項に係る海流発電装置では、一対のポッドがヨー方向の回転を始めたとしても、シンカーに固定したヨー方向の位置調整用ガイドレール上において、この回転を止める方向のトルクを生じさせるべくスライダを移動させることで、一対のポッドのヨー方向回転を抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、一対のポッドのヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0020】
本発明の請求項に係る海流発電装置は、前記一対のポッドの少なくともいずれか一方に配置されて、前記係留索の巻き取り繰り出しを行う係留索巻き取り繰り出し機構を、前記係留索の長さ寸法を変化させて前記一対のポッドの姿勢を制御する係留索長さ調整機構として設けた構成としている。
【0021】
本発明の請求項に係る海流発電装置では、一対のポッドがヨー方向の回転を始めたとしても、一対のポッドの少なくともいずれか一方に配置される係留索巻き取り繰り出し機構を動作させて、上記回転を止める方向のトルクを生じさせるべく係留索の巻き取り(或いは繰り出し)を行うことで、一対のポッドのヨー方向回転を抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、一対のポッドのヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0022】
本発明の請求項に係る海流発電装置は、前記2本の係留索が連結される前記シンカーに配置されて、少なくともいずれか一方の係留索の巻き取り繰り出しを行う係留索巻き取り繰り出し機構を、前記係留索の長さ寸法を変化させて前記一対のポッドの姿勢を制御する係留索長さ調整機構とした構成としている。
【0023】
本発明の請求項に係る海流発電装置では、一対のポッドがヨー方向の回転を始めたとしても、シンカーに配置される係留索巻き取り繰り出し機構を動作させて、上記回転を止める方向のトルクを生じさせるべく係留索の巻き取り(或いは繰り出し)を行うことで、一対のポッドのヨー方向回転を抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、一対のポッドのヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0024】
本発明の請求項に係る海流発電装置は、前記連結位置調整機構の前記スライダに、前記係留索の巻き取り繰り出しを行う係留索巻き取り繰り出し機構が配置されている構成としている。
【0025】
本発明の請求項に係る海流発電装置では、例えば、一対のポッドがヨー方向及びロール方向の回転を始めたとしても、ロール方向の位置調整用ガイドレール上において、ロール方向回転を止めるべくスライダを移動させることで、一対のポッドのロール方向回転を抑え得ることとなり、この際、スライダに配置した係留索巻き取り繰り出し機構を動作させて、上記ヨー方向回転を止めるべく係留索の巻き取り(或いは繰り出し)を行うことで、一対のポッドのヨー方向回転をも抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、一対のポッドのヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る海流発電装置では、装置構成や制御系をシンプルなものとしたうえで、一対のタービンを含む装置本体の姿勢を確実に制御することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例による海流発電装置を示す全体斜視説明図である。
図2図1に示した海流発電装置における装置本体の底面説明図(a)及び側面説明図(b)である。
図3】本発明の他の実施例による海流発電装置を示す図1R方向からの矢視説明図(a),連結位置調整機構の拡大説明図(b)及び連結位置調整機構における他の構成例の部分拡大説明図(c)である。
図4】本発明のさらに他の実施例による海流発電装置における装置本体の底面説明図(a)及び側面説明図(b)である。
図5】本発明のさらに他の実施例による海流発電装置におけるシンカーの平面説明図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は本発明に係る海流発電装置の一実施例を示している。
【0029】
図1に示すように、この海流発電装置1は、いわゆる双発の水中浮遊式発電装置であって、白抜き矢印で示す海流を受けて回転する水平軸型のタービン(回転軸が海水の流れに対して平行(水平)となる水平軸型のタービン)3を有する一対のポッド4,4及びこれらのポッド4,4同士を並列に連結する連結ビーム5を具備した装置本体2と、海底に設置したシンカー9と、このシンカー9を介して装置本体2を海底に係留する2本の係留索6,6を備えている。
【0030】
タービン3は、海流の流れに沿う一対のポッド4,4の各下流側(図示左側)に配置されており、2本の係留索6,6は、装置本体2の一対のポッド4,4にそれぞれ連結され、シンカー9に対しては1本に纏められて連結されている。
【0031】
一対のポッド4,4の各下流側端部には、増速機7介してタービンシャフト3aと連結する発電機8がそれぞれ内蔵されており、これらのポッド4,4の各タービン3,3は、各々の回転トルクを相殺するべく互いに反対方向に回転する。また、一対のポッド4,4には、深度計や角度センサがそれぞれ内蔵されているほか、海中における発電時に深度の調整を行うためのバラストタンクがそれぞれ内蔵されており、このバラストタンクは、必要に応じて連結ビーム5内にも配置される。
【0032】
この場合、装置本体2の一対のポッド4,4には、図2に示すように、係留索6,6の連結位置を変更して装置本体2の姿勢を制御する連結位置調整機構10が設けてある。
【0033】
この連結位置調整機構10は、一対のポッド4,4に軸心方向に沿ってそれぞれ固定されるヨー方向及びピッチ方向の位置調整用ガイドレール11,11と、これらの位置調整用ガイドレール11,11に沿って往復移動可能にそれぞれ設けられて係留索6,6が連結されるスライダ12,12を具備している。
【0034】
この連結位置調整機構10では、例えば、左右のタービン3,3間に微妙なトルクのズレが生じて、装置本体2がヨー方向の回転を始めたとしても、位置調整用ガイドレール11,11上において、この回転を止める方向のトルクを生じさせるべくスライダ12,12を移動させることで、装置本体2のヨー方向回転を抑えるようにしている。
【0035】
具体的には、図2(a)において装置本体2が時計回り方向に回転を始めた場合には、位置調整用ガイドレール11,11上において、スライダ12,12を一点鎖線で示す位置に移動させて、装置本体2に反時計回り方向のトルクを与えることで、装置本体2のヨー方向回転を抑え、一方、図2(a)において装置本体2が反時計回り方向に回転を始めた場合には、位置調整用ガイドレール11,11上において、スライダ12,12を二点鎖線で示す位置に移動させて、装置本体2に時計回り方向のトルクを与えることで、装置本体2のヨー方向回転を抑えるようにしている。
【0036】
また、この連結位置調整機構10では、例えば、海中における浅い層と深い層との各流速の違いにより、図2(b)において装置本体2が重心Gを中心にして時計回り方向にピッチ方向回転を始めた場合には、スライダ12,12をいずれもポッド4,4の各一端側である一点鎖線で示す位置に移動させて、装置本体2に反時計回り方向のトルクを与えることで、装置本体2のピッチ方向回転を抑え、一方、図2(b)において装置本体2が重心Gを中心にして反時計回り方向にピッチ回転を始めた場合には、ポッド4,4の各他端側である二点鎖線で示す位置に移動させて、装置本体2に時計回り方向のトルクを与えることで、装置本体2のピッチ方向回転を抑えるようにしている。
【0037】
したがって、この海流発電装置1では、ポッド4,4に対する係留索6,6の連結位置を変更するといった簡単な構成及び制御により、装置本体2のヨー方向回転及びピッチ方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0038】
なお、この実施例において、連結位置調整機構10の位置調整用ガイドレール11を一対のポッド4,4の双方に設置しているが、ピッチ方向の姿勢制御が必要でない場合には、位置調整用ガイドレール11を一対のポッド4,4のいずれか一方にのみ設置するようにしてもよく、この場合には、構成及び制御がより一層シンプルなものとなる。
【0039】
図3は本発明に係る海流発電装置の他の実施例を示している。
図3(a),(b)に示すように、この海流発電装置1では、連結位置調整機構10Aが、一対のポッド4,4の双方に配置したスライダ12,12に鉛直方向に沿ってそれぞれ固定されるロール方向の位置調整用ガイドレール13,13と、これらの位置調整用ガイドレール13,13に沿って往復移動可能にそれぞれ設けられて耳金14a,14aを介して係留索6,6が連結されるロール方向の位置調整用スライダ14,14を具備している構成を成しており、他の構成は、先の実施例に係る海流発電装置1と同じである。
【0040】
この海流発電装置1の連結位置調整機構10Aでは、図3(a)において装置本体2が重心Gを中心にして時計回り方向にロール回転を始めた場合には、ロール方向の位置調整用ガイドレール13,13上において、ロール方向の位置調整用スライダ14,14のうちの図示左側のスライダ14を上方に移動させると共に、図示右側のスライダ14を下方に移動させることで、装置本体2のロール回転を抑え、一方、図3(a)において装置本体2が重心Gを中心にして反時計回り方向にロール回転を始めた場合には、図示左側のスライダ14を下方に移動させると共に、図示右側のスライダ14を上方に移動させることで、装置本体2のロール回転を抑えるようにしている。
【0041】
この実施例において、連結位置調整機構10Aのスライダ14に対して、耳金14aを介して係留索6を連結するようにしているが、図3(c)に示すように、スライダ14に、係留索6の巻き取り繰り出しを行う係留索巻き取り繰り出し機構15を配置するようにしてもよく、この場合には、連結位置調整機構10Aによるヨー方向制御に比して制御代が大きなヨー方向制御を行い得ることとなる。
【0042】
図4は本発明に係る海流発電装置のさらに他の実施例を示している。
図4(a),(b)に示すように、この海流発電装置1では、装置本体2の一対のポッド4,4の双方に、係留索6,6の長さ寸法を変化させて装置本体2の姿勢を制御する係留索長さ調整機構としての係留索巻き取り繰り出し機構15を設けた構成としている。
【0043】
この実施例の海流発電装置1では、装置本体2がヨー方向の回転を始めたとしても、一対のポッド4,4のうちのいずれか一方の係留索巻き取り繰り出し機構15に繰り出し動作を行わせると共に、いずれか他方の係留索巻き取り繰り出し機構15に巻き取り動作を行わせることで、装置本体2のヨー方向回転を抑え得ることとなる、すなわち、簡単な構成及び制御により、装置本体2のヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0044】
なお、この実施例において、係留索巻き取り繰り出し機構15を一対のポッド4,4の双方に設置しているが、係留索巻き取り繰り出し機構15を一対のポッド4,4のいずれか一方にのみ設置するようにしてもよく、この場合には、構成及び制御がより一層シンプルなものとなる。
【0045】
図5(a)は本発明に係る海流発電装置のさらに他の実施例を示している。
図5(a)に示すように、この海流発電装置1では、2本の係留索6,6が連結されるシンカー9に、係留索6,6の連結位置を変更して装置本体2の姿勢を制御する連結位置調整機構10を設けており、この連結位置調整機構10も、シンカー9に固定されるヨー方向の位置調整用ガイドレール11,11と、これらの位置調整用ガイドレール11,11に沿って往復移動可能にそれぞれ設けられて係留索6,6が連結されるスライダ12,12を具備している。
【0046】
この実施例による海流発電装置1では、シンカー9に固定したヨー方向の位置調整用ガイドレール11,11上において、スライダ12,12を一点鎖線で示す位置に移動させることで、図外の装置本体2に反時計回り方向のトルクを付与すると共に、スライダ12,12を二点鎖線で示す位置に移動させることで、図外の装置本体2に時計回り方向のトルクを付与するようにしている。
【0047】
したがって、この海流発電装置1においても、シンカー9に対する係留索6,6の連結位置を変更するといった簡単な構成及び制御により、装置本体2のヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0048】
図5(b)は本発明に係る海流発電装置のさらに他の実施例を示している。
図5(b)に示すように、この海流発電装置1では、2本の係留索6,6が連結されるシンカー9に、係留索6,6の長さ寸法を変化させて装置本体2の姿勢を制御する係留索長さ調整機構としての係留索巻き取り繰り出し機構15,15を設けた構成としている。
【0049】
この実施例の海流発電装置1では、いずれか一方の係留索巻き取り繰り出し機構15に繰り出し動作を行わせると共に、いずれか他方の係留索巻き取り繰り出し機構15に巻き取り動作を行わせることで、図外の装置本体2にヨー方向回転を抑えるトルクを付与するようにしており、このように、シンカー9側において係留索6,6の長さ寸法を変化させるといった簡単な構成及び制御により、装置本体2のヨー方向回転を確実に抑え得ることとなる。
【0050】
なお、この実施例において、係留索6,6の個々に対応して2個の係留索巻き取り繰り出し機構15,15をシンカー9上に設置しているが、シンカー9に係留索巻き取り繰り出し機構15を1個のみ設置するようにしてもよく、この場合には、構成及び制御がより一層シンプルなものとなる。
【0051】
本発明に係る海流発電装置の構成は、上記した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 海流発電装置
3 タービン
4 ポッド
6 係留索
8 発電機
9 シンカー
10,10A 連結位置調整機構
11 ヨー方向及びピッチ方向の位置調整用ガイドレール
12 ヨー方向及びピッチ方向の位置調整用スライダ
13 ロール方向の位置調整用ガイドレール
14 ロール方向の位置調整用スライダ
15 係留索巻き取り繰り出し機構(係留索長さ調整機構)
図1
図2
図3
図4
図5