特許第6132095号(P6132095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132095
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】信号変換装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 3/02 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   H03M3/02
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-152749(P2013-152749)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-23544(P2015-23544A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】有水 毅
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−165330(JP,A)
【文献】 特開2013−009083(JP,A)
【文献】 特開2010−193282(JP,A)
【文献】 特開平04−006917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/00−11/00
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算増幅器と抵抗とコンデンサとで構成され、第1の基準電圧に基づいて積分を行うスイッチング周期が制御可能な積分器と、
前記積分器の出力信号を第2の基準電圧に基づいてデジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部の出力信号をパルス信号に変換して前記積分器のスイッチング周期制御信号として帰還するパルス幅信号変換部を含むA/D変換器とで構成された信号変換装置において、
前記A/D変換器のA/D変換部とパルス幅信号変換部の間に、前記積分器におけるコンデンサの両端電位を等しくするために前記A/D変換部の出力信号を増幅して前記パルス幅信号変換部へ出力するデジタルゲイン演算部を設けたことを特徴とする信号変換装置。
【請求項2】
前記デジタルゲイン演算部は、前記積分器の出力信号が前記A/D変換部に入力されたとき、前記積分器におけるコンデンサの両端電位を等しくするため、前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧に応じたゲインを演算し、前記A/D変換部の出力信号を前記ゲインに基づき増幅することを特徴とする請求項1に記載の信号変換装置。
【請求項3】
前記A/D変換器は、ΔΣ型A/D変換器であることを特徴とする請求項1または2に記載の信号変換装置。
【請求項4】
前記ΔΣ型A/D変換器はシングルチップマイクロコンピュータで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の信号変換装置。
【請求項5】
前記制御器のコンデンサはセラミックコンデンサであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の信号変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号変換装置に関し、詳しくは、ΔΣ型A/D変換器を用いた信号変換装置の高速化および高精度化に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のシングルチップマイクロコンピュータSMCで構成されているΔΣ型A/D変換器を含む信号変換装置の構成例を示すブロック図である。図3において、積分器INTは、演算増幅器OAと抵抗RとコンデンサCとで構成されている。演算増幅器OAの非反転入力端子にはアナログ入力電圧Vinが入力され、演算増幅器OAの反転入力端子と出力端子間にはコンデンサCが接続され、演算増幅器OAの反転入力端子とコンデンサCの接続点には抵抗Rの一端が接続されている。
【0003】
抵抗Rの他端には切換スイッチSWの可動接点aが接続されている。切換スイッチSWの一方の固定接点bは第1の基準電圧Vref1の電源線に接続され、他方の固定接点cは共通電位点に接続されている。
【0004】
演算増幅器OAの出力端子は、シングルチップマイクロコンピュータSMCに内蔵されているA/D変換部ADCの入力端子に接続されている。A/D変換部ADCには、第2の基準電圧Vref2の電源線が接続されている。
【0005】
A/D変換部ADCの出力端子は、デジタルフィルタDFの入力端子に接続されるとともにパルス幅信号変換部PWCの入力端子に接続されている。
【0006】
パルス幅信号変換部PWCの出力端子は、切換スイッチSWの可動接点aを切換駆動する制御系統に接続されている。
【0007】
このような構成において、A/D変換部ADCは、積分器INTの出力信号の振幅レベルを、第2の基準電圧Vref2および変換クロックCLKに基づいてデジタル信号Doutに変換する。
【0008】
パルス幅信号変換部PWCは、A/D変換部ADCで変換されたデジタル信号Doutを、所定のパルス幅(デューティ比)を有するパルス信号Poutに変換する。
【0009】
切換スイッチSWの可動接点aは、パルス幅信号変換部PWCから変換出力されるパルス信号Poutのパルス幅(デューティ比)に応じて、固定接点bまたはcに切換接続される。
【0010】
これにより、演算増幅器OAの反転入力端子の電圧Vaは、パルス信号Poutのデューティ比0%で共通電位点(GND)レベルになり、デューティ比100%で基準電圧Vref1となる。すなわち、演算増幅器OAの入力スパンはVref1となる。
【0011】
パルス幅信号変換部PWCにおけるパルス信号Poutへの変換は、第2の基準電圧Vref2を基準にして行われる。すなわち、パルス幅信号変換部PWCの入力スパンはVref2となる。
【0012】
ここで、Vin=Vref1の時、帰還制御によりデューティ比100%となる。この時の演算増幅器OAの出力はVref2となり、(Vref2/Vref1)倍に増幅された電圧がA/D変換部ADCに入力されることになる。
【0013】
デジタルフィルタDFは、たとえばデシメーションフィルタおよび商用周波除去フィルタで構成される。
【0014】
デシメーションフィルタは、たとえばSinc2フィルタによって構成されており、A/D変換部ADCで変換されたデジタル信号Doutに対する間引き処理機能と高周波除去機能とを有している。このデシメーションフィルタの出力更新間引き率TRは任意に設定することができる。たとえば、TR=P(Pは任意の値)とし、クロック周波数をFSとすると、デシメーションフィルタの出力レートはFS/Pで表される。
【0015】
商用周波除去フィルタは、アナログ入力電圧Vinに重畳している商用電源の周波数成分を除去するためのフィルタであり、たとえばFIRフィルタによって構成されている。この商用周波除去フィルタの出力更新間引き率TRも任意に設定することができる。たとえば、TR=Q(Qは任意の値)とすると、商用周波除去フィルタの出力レートは(FS/P)/Qで表される。
【0016】
なお、商用周波除去フィルタは、アプリケーションとして要求される周波数特性を実現するために設けられたフィルタであり、アナログ入力電圧Vinに商用電源以外のノイズ成分が重畳している場合には、そのノイズ成分を除去するようなフィルタを適宜設ければよい。
【0017】
このようなデジタルフィルタDFによりデジタル信号Doutに対するデシメーションフィルタリング処理が行われ、その処理結果としてアナログ入力電圧Vinに応じたデジタル信号デジタル信号Doutが生成される。
【0018】
なお、アナログ入力電圧Vinのレベルを高い分解能で変換する必要があれば、デシメーションフィルタの出力更新間引き率TRを大きく設定することで、十分な変換精度を持ったA/D変換器を実現できる。
【0019】
特許文献1には、ΔΣ型A/D変換器の長所を備え、かつアナログ部品への精度要求の低い低コストのA/D変換器の技術が記載されている。
【0020】
特許文献2には、ΔΣ型A/D変換器の長所を備え、かつシングルチップマイクロコンピュータと簡易なアナログ部品で構成されたA/D変換器の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2010−193282号公報
【特許文献2】特開2013−9083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、図3に示す従来の信号変換装置において、コンデンサCの両端電位差はVa−Vbであり、Vref1≠Vref2の場合はこの電圧によりコンデンサCに充放電が発生してしまう。
【0023】
これにより、VinがVin1からVin2にステップ状に変化すると、演算増幅器OAの出力は、たとえば図4に示すように、コンデンサCと抵抗Rの積分作用により、時定数τ=R*Cで立ち上がることになる。
【0024】
一般的なCRの一次応答の場合、時定数τの10倍の時間におけるVbは、
【0025】
【数1】
となり、V2の0.0045%以下の誤差でA/D変換器へ入力されることになる。
【0026】
ところが、積分器に使用するコンデンサCは誘電体吸収とよばれる特性を持つ。これは充電されたコンデンサCを短絡させて放電した後オープンにすると、コンデンサCの両端に一定電圧が発生する現象であって、一般的なセラミックコンデンサの場合は充電電圧の0.2%程度といわれている。
【0027】
図5図4の一点鎖線で囲んだX部分におけるVin2とVbの電圧差を縦軸にとったグラフである。図5のグラフは、誘電体吸収の影響により誘電体吸収が無い場合と同等以下の誤差に収まるまでに、時定数τの500倍程度の時間を要することを示している。
【0028】
この誤差を無くすためには時定数τの500倍程度の時間を待つ必要があることから、コストを抑えるためにA/D変換速度を犠牲にするか、A/D変換速度を高めるためにコストを犠牲にして高価でサイズの大きい誘電体吸収現象の小さいフィルムコンデンサを使用しなければならない。
【0029】
しかし、コンデンサCとして安価なセラミックコンデンサを用いると充放電による誘電吸収現象が発生し、前述のようなA/D変換器の誤差や変換速度の低下を招いてしまう。
【0030】
本発明は、このような課題を解決するものであって、その目的は、安価なセラミックコンデンサを使用しても誘電吸収現象が発生することはなく、高速で高精度のA/D変換が行える信号変換装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
演算増幅器と抵抗とコンデンサとで構成され、第1の基準電圧に基づいて積分を行うスイッチング周期が制御可能な積分器と、
前記積分器の出力信号を第2の基準電圧に基づいてデジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部の出力信号をパルス信号に変換して前記積分器のスイッチング周期制御信号として帰還するパルス幅信号変換部を含むA/D変換器とで構成された信号変換装置において、
前記A/D変換器のA/D変換部とパルス幅信号変換部の間に、前記積分器におけるコンデンサの両端電位を等しくするために前記A/D変換部の出力信号を増幅して前記パルス幅信号変換部へ出力するデジタルゲイン演算部を設けたことを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、前記デジタルゲイン演算部は、前記積分器の出力信号が前記A/D変換部に入力されたとき、前記積分器におけるコンデンサの両端電位を等しくするため、前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧に応じたゲインを演算し、前記A/D変換部の出力信号を前記ゲインに基づき増幅することを特徴とする。
【0032】
請求項3記載の発明は、前記A/D変換器は、ΔΣ型A/D変換器であることを特徴とする。
【0033】
請求項4記載の発明は、前記ΔΣ型A/D変換器はシングルチップマイクロコンピュータで構成されていることを特徴とする。
【0034】
請求項5記載の発明は、前記制御器のコンデンサはセラミックコンデンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
これらにより、高速で高精度のA/D変換が行える信号変換装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
図2】本発明に基づく信号変換装置の具体例を示すブロック図である。
図3】従来の信号変換装置の構成例を示すブロック図である。
図4図3の演算増幅器OAの出力波形例図である。
図5図4の一点鎖線で囲んだX部分におけるVin2とVbの電圧差を縦軸にとったグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、A/D変換部ADCとパルス幅信号変換部PWCの間には、デジタルゲイン演算部DGOが接続されている。
【0038】
図1において、アナログ入力電圧Vinは積分器INTを構成する演算増幅器OAの非反転入力端子に入力され、演算増幅器OAの出力信号は従来と同様にシングルチップマイクロコンピュータSMCに内蔵されているA/D変換部ADCでデジタル信号に変換される。
【0039】
演算増幅器OAの反転入力端子の電圧Vaは、パルス幅信号変換部PWCから切換スイッチSWの制御信号として変換出力されるパルス信号Poutのパルス幅(デューティ比)0%で共通電位点(GND)レベルになり、デューティ比100%で基準電圧Vref1となる。すなわち、演算増幅器OAの入力スパンはVref1となる。
【0040】
パルス幅信号変換部PWCにおけるパルス信号Poutへの変換は、第2の基準電圧Vref2を基準にして行われる。すなわち、パルス幅信号変換部PWCの入力スパンはVref2となる。
【0041】
ここで、Vin=Vref1の時、帰還制御によりデューティ比100%となる。具体的には、デジタルゲイン演算部DGOは、演算増幅器OAの出力Vref1がA/D変換部ADCに入力された時にデューティ比100%となるように、シングルチップマイクロコンピュータ内部のA/D変換部ADCの出力信号を(Vref2/Vref1)倍に増幅することから、演算増幅器OAの出力は常にVinと等しくなる。
【0042】
この結果、コンデンサCの両端電位(VaとVb)が等しくなるためコンデンサCに充放電は発生しなくなり、最終的にVinはデジタルフィルタDFで平均化されてデジタル信号Doutとして出力される。
【0043】
VinがVin1からVin2にステップ状に変化した場合でも、コンデンサCにおける充放電が発生しないため誘電吸収現象そのものが発生せず、演算増幅器OAの出力はCRの時定数τで立ち上がり、10τ程度で所望の誤差に収めることができる。
【0044】
これにより、積分器INTを構成するコンデンサCとして安価なセラミックコンデンサを使用することができる。
【0045】
そして、誘電吸収現象が発生しないことから、シングルチップマイクロコンピュータに内蔵されているA/D変換部ADCを用いてΔΣ型A/D変換器を構成する場合においても、変換速度を犠牲にすることなく高精度化が実現できる。
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、高速で高精度のA/D変換が行える信号変換装置を実現でき、各種物理量測定装置におけるA/D変換などに好適である。
【符号の説明】
【0047】
INT 積分器
OA 演算増幅器
R 抵抗
C コンデンサ
SW 切換スイッチ
SMC シングルチップマイクロコンピュータ
ADC A/D変換部
DF デジタルフィルタ
PWC パルス幅信号変換部
DGO デジタルゲイン演算部
図1
図2
図3
図4
図5