特許第6132097号(P6132097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132097
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 9/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   G01D9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-197650(P2013-197650)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-64262(P2015-64262A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】滝口 潤一
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−160505(JP,A)
【文献】 実開平04−127532(JP,U)
【文献】 特開2004−318315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 9/00
G08C 13/00−25/04
G01K 7/00
G06F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主入力信号と副入力信号とを含んだ入力信号を順次切り替えて測定し、測定データをメモリに格納する測定処理モジュールと、
前記測定処理モジュールに所定間隔で測定データ取得要求を送り、前記メモリに格納されている各測定データを取得する演算処理モジュールとを備え、
前記測定処理モジュールは、前記主入力信号の後に前記副入力信号を測定するように測定順序が定められた取得パターンにしたがって前記測定を行ない、
前記測定データ取得要求を受け付けると、前記取得パターンにしたがった測定を中断し、前記取得パターンの先頭に戻って測定を再開することを特徴とする測定システム。
【請求項2】
前記取得パターンは複数種類用意されており、前記測定処理モジュールは、前記取得パターンにしたがった測定が完了すると、別の取得パターンにしたがった測定を開始することを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記測定処理モジュールは、前回の測定データ取得要求の受け付け後、前記取得パターンにしたがった測定の完了前に今回の測定データ取得要求を受け付けた場合に、その旨を前記演算処理モジュールに通知することを特徴とする請求項1または2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記演算処理モジュールは、前記通知を受け取ると、次回の測定データ取得要求を送る際の間隔を前記所定間隔より長くすることを特徴とする請求項3に記載の測定システム。
【請求項5】
主入力信号と副入力信号とを含んだ入力信号を順次切り替えて測定し、測定データをメモリに格納する測定処理モジュールと、前記測定処理モジュールに測定データ取得要求を送り、前記メモリに格納されている各測定データを取得する演算処理モジュールとを備えた測定システムにおける測定方法であって、
前記測定処理モジュールが、前記主入力信号の後に前記副入力信号を測定するように測定順序が定められた取得パターンにしたがって前記測定を行ない、
前記測定データ取得要求を受け付けると、前記取得パターンにしたがった測定を中断し、前記取得パターンの先頭に戻って測定を再開することを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサ値を取得して測定値に変換する測定処理モジュールと測定値を用いて演算を行なう演算処理モジュールとを備えた測定システムおよびそのような測定システムにおける測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等では各種のフィールド機器が用いられているが、代表的なフィールド機器として温度、圧力、流量等の物理量を測定して出力する測定システムがある。
【0003】
測定システムでは、センサ等から取得した測定データに基づいて演算を行ない、演算結果を測定結果として出力することが多いが、一般に、これらの一連の処理は単一の処理装置で行なわれている。近年、装置の共用化を図るために、機能毎にモジュール化することが行なわれるようになっており、測定システムでも測定データを取得する取得処理部と演算を行なう演算処理部とでモジュール化を進めることにより、それぞれのモジュールの汎用化や組み合わせ自由度の向上等が期待される。
【0004】
図5は、モジュール化を行なった場合に想定される測定システムの構成例を示すブロック図である。本図に示すように測定システム300は、測定処理モジュール310、演算処理モジュール320を備えている。測定処理モジュール310と演算処理モジュール320とは独立に構成されており、Modbus等の通信プロトコルにより情報のやり取りを行なうものとする。
【0005】
測定処理モジュール310は、切り替えスイッチ311、AD変換器312、測定管理部313を備えている。切り替えスイッチ311は、センサ等から入力される複数の入力チャンネルの信号を、測定管理部313の制御により順次切り替えてAD変換器312に導く。センサは測定対象に応じたデバイスが利用される。例えば、測定対象が温度であれば、熱電対、測温抵抗体等が用いられる。
【0006】
ここで、入力信号は、主入力信号と副入力信号の2種類に分類される。主入力信号は、例えば、センサから出力される被測定物理量に応じた信号等である。一方、副入力信号は、配線抵抗値、ゼロ点測定値等の主入力信号の補償あるいは正規化に用いられる信号や、配線の断線検知等の故障診断のための信号等である。主入力信号は、可能な限り高い応答性が求められる特徴を有し、副入力信号は優先順位が主入力信号より低く、必ずしも即時応答性は問われない特徴を有している。ここでは、主入力信号のチャンネル数をn個とし、副入力信号のチャンネル数をm個とする。
【0007】
AD変換器312は、切り替えスイッチ311を介して入力されたアナログ信号の主入力信号および副入力信号をデジタル変換して測定データとして測定管理部313に出力する。
【0008】
測定管理部313は、CPU、メモリ、入出力回路等を備えたマイクロコントローラ等で構成され、切り替えスイッチ311を制御することにより入力信号から順次取得した測定データを測定データメモリ314に格納する。
【0009】
図6に示すように、測定管理部313は、1つの入力信号に対して、まず、その入力信号がAD変換器312に入力されるように切り替えスイッチ311を制御する(タイミングt0)。そして、AD変換器312から入力信号に対応する完全な測定データが出力するまで待機し(タイミングt1)、測定データを取得して、測定データメモリ314に格納する。1つの入力信号に対して行なう測定処理に要する時間をTinとする。
【0010】
測定データメモリ314は、測定管理部313内のメモリ領域であり、図7に示すように、n個の主入力信号の測定データとm個の副入力信号の測定データとを格納する。各測定データは、入力の度に上書き更新される。
【0011】
測定データメモリ314に格納された各測定データは、演算処理モジュール320からの取得要求に応じて演算処理モジュール320に一括して受け渡される。これは、演算処理モジュール320がスペック上要求される測定結果の出力レートに間に合うように測定データを自主的に取得する必要があるのと、通信プロトコルの要求から、演算処理モジュール320をマスタとして動作させ、測定処理モジュール310をスレーブとして動作させるためである。
【0012】
図5に示すように、演算処理モジュール320は、演算処理部321と表示器322とを備えている。演算処理部321は、CPU、メモリ、入出力回路等を備えたマイクロコントローラ等で構成され、所定の周期Treqで測定管理部313に測定データの取得要求を送り、測定データメモリ314に格納された各測定データを一括して取得する。そして、取得した主入力信号の測定データを副入力信号の測定データやあらかじめ定められた調整値等を用いて補正し、さらに単位変換、スケール変換等の必要な演算を行なって、演算結果を表示器322に表示させたり、上位装置に伝送したりする。
【0013】
測定処理モジュール310の測定管理部313は、入力信号を連続的に順次測定していく。図8は、測定管理部313における入力信号の測定サイクルを説明する図である。本図に示すように、測定管理部313は1サイクルの間に、主入力信号についてはn個全部を測定するが、副入力信号については、即時応答性が問われないため、m個のうちk個(1≦k<m)を測定する。そして、測定サイクル毎に取得する副入力信号を変化させるようにする。
【0014】
ここで、図9に示すように、測定管理部313において、n個の主入力信号測定データの測定に要する時間をTma(=n×Tin)とし、1サイクルに要する時間をTcy(=(n+k)×Tin)とする。Tinは、上述のように、1つの測定データの測定に要する時間である。
【0015】
測定管理部313の測定データ格納タイミングと、演算処理部321の測定データ取得タイミングとは非同期であり、それぞれ独立した周期でデータの処理を行なうものとする。ただし、演算処理部321の取得要求の周期Treqは、(n+1)×Tin≦Treq<(n+m)×Tinを満たしているとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2013−160505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
演算処理部321は、取得要求の返信として、測定データメモリ314に格納された測定データを一括して取得するため、前回の取得要求の後に格納された測定データの値のみが更新され、前回の取得要求から上書きされていない測定データは前回と同じ値が取得される。
【0018】
一般に、測定システムでは測定レートのスペック上の要求を満たすために、主入力信号に関しては、1回の取得要求でn個のすべての測定データが更新されている必要がある。このため、測定管理部313の1サイクルの時間Tcyよりも、演算処理部321の取得要求の間隔Treqが長くなるようにしている。
【0019】
しかしながら、測定管理部313と演算処理部321とは非同期で動作しているのに加え、測定管理部313の1サイクルの時間Tcyや、演算処理部321の取得要求の間隔Treqは、リアルタイム性の低下やノイズの影響等で変化する場合がある。変動分を含んだ時間をそれぞれTcy'、Treq'とすると、図10に示すように、Tcy'>Treq'となって、主入力信号の一部の測定データが更新されないおそれがある。
【0020】
そこで、本発明は、主入力信号と副入力信号とを含んだ入力信号を順次切り替えて測定し、測定データをメモリに格納する測定処理モジュールと、測定処理モジュールに測定データ取得要求を送り、メモリに格納されている各測定データを取得する演算処理モジュールとを備えた測定システムにおいて、主入力信号の測定データが測定データ取得毎に更新されているようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である測定システムは、主入力信号と副入力信号とを含んだ入力信号を順次切り替えて測定し、測定データをメモリに格納する測定処理モジュールと、前記測定処理モジュールに所定間隔で測定データ取得要求を送り、前記メモリに格納されている各測定データを取得する演算処理モジュールとを備え、前記測定処理モジュールは、前記主入力信号の後に前記副入力信号を測定するように測定順序が定められた取得パターンにしたがって前記測定を行ない、前記測定データ取得要求を受け付けると、前記取得パターンにしたがった測定を中断し、前記取得パターンの先頭に戻って測定を再開することを特徴とする。
ここで、前記取得パターンは複数種類用意されており、前記測定処理モジュールは、前記取得パターンにしたがった測定が完了すると、別の取得パターンにしたがった測定を開始するようにしてもよい。
また、前記測定処理モジュールは、前回の測定データ取得要求の受け付け後、前記取得パターンにしたがった測定の完了前に今回の測定データ取得要求を受け付けた場合に、その旨を前記演算処理モジュールに通知するようにしてもよい。
このとき、前記演算処理モジュールは、前記通知を受け取ると、次回の測定データ取得要求を送る際の間隔を前記所定間隔より長くすることができる。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である測定方法は、主入力信号と副入力信号とを含んだ入力信号を順次切り替えて測定し、測定データをメモリに格納する測定処理モジュールと、前記測定処理モジュールに測定データ取得要求を送り、前記メモリに格納されている各測定データを取得する演算処理モジュールとを備えた測定システムにおける測定方法であって、前記測定処理モジュールが、前記主入力信号の後に前記副入力信号を測定するように測定順序が定められた取得パターンにしたがって前記測定を行ない、前記測定データ取得要求を受け付けると、前記取得パターンにしたがった測定を中断し、前記取得パターンの先頭に戻って測定を再開することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、主入力信号と副入力信号とを含んだ入力信号を順次切り替えて測定し、測定データをメモリに格納する測定処理モジュールと、測定処理モジュールに測定データ取得要求を送り、メモリに格納されている各測定データを取得する演算処理モジュールとを備えた測定システムにおいて、主入力信号の測定データが測定データ取得毎に更新されているようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の測定システムの構成例を示すブロック図である。
図2】測定サイクルの取得パターンについて説明する図である。
図3】本実施形態の測定管理部の動作を説明するフローチャートである。
図4】取得要求があったときの動作を説明するタイミング図である。
図5】モジュール化を行なった場合に想定される測定システムの構成例を示すブロック図である。
図6】1つの入力信号から測定データを取得するタイミングを説明する図である。
図7】測定データメモリの構造を示す図である。
図8】測定管理部における入力信号の測定サイクルを説明する図である。
図9】1サイクルの時間と取得要求の間隔とを説明する図である。
図10】主入力信号の一部の測定データが更新されないおそれがあることを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る測定システムの構成を示すブロック図である。本図に示すように測定システム100は、測定処理モジュール110、演算処理モジュール120を備えている。測定処理モジュール110と演算処理モジュール120とは独立に構成されており、Modbus等の通信プロトコルにより情報のやり取りを行なうものとする。
【0025】
測定処理モジュール110は、切り替えスイッチ111、AD変換器112、測定管理部113を備えている。切り替えスイッチ111は、センサ等から入力されるn個の主入力信号、m個の副入力信号を、測定管理部113の制御により順次切り替えてAD変換器112に導く。センサは測定対象に応じたデバイスが利用される。例えば、測定対象が温度であれば、熱電対、測温抵抗体等が用いられる。
【0026】
AD変換器112は、切り替えスイッチ111を介して入力されたアナログ信号の主入力信号および副入力信号をデジタル変換して測定データとして測定管理部113に出力する。
【0027】
測定管理部113は、CPU、メモリ、入出力回路等を備えたマイクロコントローラ等で構成され、切り替えスイッチ111を制御することにより入力信号から順次取得した測定データを測定データメモリ114に格納する。
【0028】
測定データメモリ114は、図7に示した構成とする。すなわち、n個の主入力信号の測定データとm個の副入力信号の測定データとを格納する。各測定データは、入力の度に上書き更新される。測定データメモリ114に格納された各測定データは、演算処理モジュール120からの取得要求に応じて演算処理モジュール120に一括して受け渡される。
【0029】
測定処理モジュール110の測定管理部113は、入力信号を連続的に順次取得していく。測定管理部113は1サイクルの間に、主入力信号についてはn個全部を取得するが、副入力信号については、m個のうちk個(1≦k<m)を取得する。そして、測定サイクル毎に取得する副入力信号を変化させるようにする。
【0030】
ここで、測定サイクル毎に取得する副入力信号は、図2に示すような取得パターンとして定められているものとする。本図に示すように、取得パターンは、1サイクルにおける入力信号の取得順番を定めたものであり、測定管理部113は取得パターンにしたがって切り替えスイッチ111を制御する。
【0031】
取得パターンは、先にn個すべての主入力信号を取得してからk個の副入力信号を取得するように定められている。すなわち、各測定サイクルにおいて、必ずn個すべての主入力信号が副入力信号よりも先に測定される。
【0032】
各取得パターンで定められるk個の副入力信号は、m個の副入力信号の中から抽出されたものである。k個の副入力信号は、取得パターンを変化させたときに、各副入力信号が同じ頻度で取得されるように定めてもよいし、副入力信号の性質に応じて取得頻度を定めるようにしてもよい。例えば、比較的頻繁に値が変動する副入力信号の取得頻度を高くし、ほとんど値が変化しない副入力信号の取得頻度を低くしてもよい。なお、主入力信号は、各取得パターンにおいて副入力信号より先にn個すべてが取得されるが、取得順序は変化させてもよい。
【0033】
図1の説明に戻って、測定管理部113は、測定サイクル同期処理部115を備えている。測定管理部113は、演算処理モジュール120から測定データの取得要求を受け付けると、測定データメモリ114に格納されている測定データを一括して演算処理モジュール120に受け渡すが、本実施形態では、さらに、測定サイクル同期処理部115が、実行中の測定サイクルを中断し、改めてその測定サイクルの取得パターンを先頭から開始する。
【0034】
演算処理モジュール120は、演算処理部121と表示器122とを備えている。演算処理部121は、CPU、メモリ、入出力回路等を備えたマイクロコントローラ等で構成され、所定の周期Treqで測定管理部113に測定データの取得要求を送り、測定データメモリ114に格納された各測定データを一括して取得する。そして、取得した主入力信号の測定データを副入力信号の測定データやあらかじめ定められた調整値等を用いて補正し、さらに単位変換、スケール変換等の必要な演算を行なって、演算結果を表示器122に表示させたり、上位装置に伝送したりする。
【0035】
次に、本実施形態の測定システム100の測定管理部113の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
動作を開始すると、まず取得パターンを設定する(S101)。取得パターンは、所定の順序にしたがって設定することができる。そして、設定された取得パターンで測定サイクルを開始する(S102)。測定サイクルでは、測定対象の入力信号を特定し(S103)、その入力信号がAD変換器112に導かれるように切り替えスイッチ111を制御する(S104)。
【0037】
測定対象の入力信号について測定データ出力が完了すると(S106:Yes)、測定データを測定データメモリ114に格納する(S107)。以上の処理を、取得パターンにしたがって測定対象を切り替えながら測定サイクルが終了するまで繰り返す。測定サイクルが終了すると(S108:Yes)、次の取得パターンを設定し(S101)、設定された取得パターンで測定サイクルを開始する(S102)。
【0038】
測定サイクルの途中で、演算処理部121から測定データの取得要求があると(S105:Yes)、測定データメモリ114に格納されている測定データを一括して演算処理部121に受け渡す(S109)。このとき、前回の一括受け渡しから更新されている測定データを特定する情報を付加して演算処理部121に受け渡すようにしてもよい。なお、演算処理部121からの取得要求判定処理(S105)は、便宜的に処理(S104)と処理(S106)との間で行なうようにしているが、取得要求は外部からの割り込みであるため、このタイミングに限られるものではない。
【0039】
そして、測定サイクル同期処理部115が、実行中の測定サイクルを中断し(S110)、改めて現在設定されている取得パターンを先頭から開始する(S102)。ただし、次の取得パターンを設定して先頭から開始するようにしてもよい。
【0040】
各取得パターンでは、先にn個すべての主入力信号を測定してからk個の副入力信号を測定するように定められている。取得要求に基づいて測定データを受け渡すと、改めて取得パターンを先頭から開始するため、各測定サイクルでは、n個の主入力信号が必ず先に測定されることになる。このため、時間的な変動が生じて測定サイクルの時間Tcy'>取得要求の間隔Treq'となっても、取得要求を受けた時点で主入力信号はすべて更新されていることになる。もちろん、最大の時間変動が生じても、主入力信号n個の測定時間Tma'≦Treq'が保証されるように設計を行なうものとする。
【0041】
一方、取得要求後の副入力信号の測定はそのサイクルでは行なわれないが、同じ取得パターンで改めて測定サイクルを開始するため、変動が解消されると副入力信号は予定通り取得されることになる。
【0042】
例えば、Tcy'<Treq'の正常状態であれば、図4(a)に示すように、取得パターンAの測定サイクルが完了して、次の取得パターンBの測定サイクルが開始された後で取得要求を受け付けることになる。この場合、取得パターンBの測定サイクルを中断し、改めて取得パターンBの測定サイクルを先頭から開始することになる。このとき、演算処理部121には、n個の主入力信号とk個の副入力信号のすべてが更新された(2回以上の更新を含む)測定データが受け渡されることになる。
【0043】
一方、時間変動が生じてTcy'>Treq'の状態になると、図4(b)に示すように、取得パターンAの測定サイクルの完了前に、取得要求を受け付けることになる。この場合、取得パターンAの測定サイクルを中断し、改めて取得パターンAの測定サイクルを先頭から開始することになる。このとき、演算処理部121には、n個の主入力信号すべてとk個の副入力信号中の一部が更新された測定データが受け渡されることになる。
【0044】
なお、Tcy'>Treq'が発生したこと、すなわち、前回の測定データ取得要求の受け付け後、その測定サイクルの完了前に今回の測定データ取得要求を受け付けたことを測定管理部113から演算処理部121に通知するようにしてもよい。この場合、次の測定サイクルではTcy'<Treq'の状態を確保できるように、演算処理部121は、この通知に応じて、次回の取得要求のタイミングを遅らせるように微調整するようにしてもよい。調整量は、任意とすることができるが、例えば、Treqの最大時間変動幅を超えない程度とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 測定システム
110 測定処理モジュール
111 切り替えスイッチ
112 AD変換器
113 測定管理部
114 測定データメモリ
115 測定サイクル同期処理部
120 演算処理モジュール
121 演算処理部
122 表示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10