特許第6132227号(P6132227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132227
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】香り付きポケットティシュー製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20170515BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20170515BHJP
   A47K 10/20 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B65D83/08 D
   A47K7/00 B
   A47K10/20 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-210272(P2012-210272)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-65504(P2014-65504A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】保井 秀太
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−152981(JP,A)
【文献】 特開2010−052815(JP,A)
【文献】 特開平11−079263(JP,A)
【文献】 実開平03−066883(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
A47K 7/00
A47K 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれたティシュペーパーが複数枚重ねられたティシュペーパーの束が、樹脂製の個包装フィルムにより個包装されたポケットティシュー製品であって、
前記個包装フィルムのティシュペーパー束の上面に対面する部分にティシュペーパーの取り出し口を備え、
前記個包装フィルムとティシュペーパー束の底面との間にシート材が介在され、
そのシート材の外面に香料を封入したマイクロカプセルが担持され、
マイクロカプセルが担持されている部分が、個包装フィルムとティシュペーパー束の底面との間であってかつ個包装フィルム外面側からの外圧により前記マイクロカプセルが崩壊して香料を個包装フィルム内に揮散させる位置にある、
ことを特徴とする香り付きポケットティシュー製品。
【請求項2】
前記シート材が、紙又は不織布である請求項1記載の香り付きポケットティシュー製品。
【請求項3】
前記シート材に、徐放性の異なる複数種のマイクロカプセルが担持されている請求項1又は2記載の香り付きポケットティシュー製品。
【請求項4】
前記シート材に、香料の異なる複数種のマイクロカプセルが担持されている請求項1〜3の何れか1項に記載の香り付きポケットティシュー製品。
【請求項5】
香料の異なる複数種のマイクロカプセルが、シート材の異なる位置に担持されている請求項3又は4記載の香り付きポケットティシュー製品。
【請求項6】
マイクロカプセル担持部位の少なくとも一つが、シート材のティシュペーパー束に対面する面にある1〜5記載の香り付きポケットティシュー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケットティシュー製品、特に香り付きポケットティシュー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパー製品には、10〜20組程度の比較的少ない組数(複数プライ或いは複数枚で一組とされる)を樹脂製フィルムによって個包装したポケットティシュー製品と称されるものがある。
また、ティシュペーパー製品には、香料を付与した香り付きティシュペーパーを包装したものがある。この種の香り付きティシュペーパー製品では、特に、使用時に適度な香りが確実に感じられることが重要である。
従来の香り付きのティシュペーパーは、ティシュペーパーにスプレー塗布等によって香料を直接に付与する、或いは、香料を封入したマイクロカプセルをティシュペーパーに付与する等して製造されていた。
【0003】
しかし、ティシュペーパーに香料を付与する場合、直接的に付与するにしても、マイクロカプセルに封入して付与するにしても、製造時、設備に香料が付着したり、周囲に香料が飛散したりすることによる製造箇所周辺の環境が悪化する。
このため、香り付きティシュペーパー専用の製造ラインを設ける或いは、香り付きティシュペーパーの製造後に製造ラインの香料除去のための清掃作業が必須となるという問題があった。
【0004】
また、特に直接的に付与する場合には、ポケットティシュー製品は、その包装形態が内外に連通する取り出し口形成用のミシン目線を有し、そのミシン目線を開口すると内部容積に対して比較的広い取り出し口が形成されるものであるため、繊維間がポーラスなティシュペーパーに香料成分を直接的に付与して包装しても、開封前の保管期間、さらに開封後の使用時のいずれの状態であっても、香料が短時間で蒸散してしまうという問題があり、使用時に香りが感じられないことがあった。
【0005】
他方、特に、香料を封入したマイクロカプセルをティシュペーパーに付与するものは、製造する工程が、ティシュペーパー原紙にマイクロカプセルを付与した後に、裁断工程、折畳み工程などを経てティシュペーパー製品に用いる束にするという工程になるため、係るマイクロカプセル付与後の後工程でマイクロカプセルが少なからず崩壊する。
このため、無駄となるマイクロカプセルが多く、コスト高になる問題があった。また、そのような製造時のマイクロカプセルの崩壊を考慮して、香りの強さを設計することが難しかった。
【0006】
以上のとおり、従来、ポケットティシュー製品では、製造上の問題点があり、また、使用時に適度な香りのティシュペーパーとすることが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−254005号公報
【特許文献2】特開2007−182248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、製造が容易で、製造コストも安く、保管期間や開封後の期間が長くとも、ティシュペーパーを使用する際に適度な香りが確実に感じられるようにした香り付きポケットティシュー製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
折り畳まれたティシュペーパーが複数枚重ねられたティシュペーパーの束が、樹脂製の個包装フィルムにより個包装されたポケットティシュー製品であって、
前記個包装フィルムのティシュペーパー束の上面に対面する部分にティシュペーパーの取り出し口を備え、
前記個包装フィルムとティシュペーパー束の底面との間にシート材が介在され、
そのシート材の外面に香料を封入したマイクロカプセルが担持され、
マイクロカプセルが担持されている部分が、個包装フィルムとティシュペーパー束の底面との間であってかつ個包装フィルム外面側からの外圧により前記マイクロカプセルが崩壊して香料を個包装フィルム内に揮散させる位置にある、
ことを特徴とする香り付きポケットティシュー製品。
【0010】
(作用効果)
本発明は、包装フィルムとティシュペーパー束の底面との間にシート材が介在し、そのシート材の外面に香料を封入したマイクロカプセルを担持させた。このため、ポケットティシュー製品を鞄等に入れて持ち運ぶ携帯の際や手で掴んだ際に、シート材に担持されたマイクロカプセルが少なからず崩壊する。その際に、香料が蒸散して、ティシュペーパーに香りが付与される。
さらに、保管期間や使用開始からの期間が長期となり、ティシュペーパーに付与された香気が低下した際にも、シート材の介在部位を外面側から押したり揉んだりして、意図的にマイクロカプセルを崩壊させて、個包装フィルム内に香気を再度蒸散させることができる。
他方、本発明に係るティシュペーパー製品では、ティシュペーパーに香料を付与する必要がない。したがって、香り付きティシュペーパーを製造した設備を洗浄する手間や、香り付きティシュペーパーの専用設備を設ける必要がなくなる。
また、ティシュペーパー束や個包装フィルムとは別にシート材を予め製造しておき、ティシュペーパー製品の最終工程であるティシュペーパー束を個包装フィルムで包む作業の際に、当該シート材を挿入することで製造できるため製造過程でマイクロカプセルが崩壊するおそれが格段に小さく、無駄となるマイクロカプセルの量は少なく、マイクロカプセルの付与量の設計がし易い。
さらに、ティシュペーパー自体に香料或いは香料入りマイクロカプセルを付与する場合と比較して製造は格段に容易である。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
前記シート材が、紙又は不織布である請求項1記載の香り付きポケットティシュー製品。
【0012】
(作用効果)
シート材を紙又は不織布としたので、マイクロカプセルが崩壊して、外部に漏れ出た香料がシート材に吸収された後、そのシート材から香料が個包装フィルム内に拡散するようになり、ティシュペーパー束を構成する各ティシュペーパーに間接的に香りが移り、ほのかな適度な香りを付与することができるようになる。
【0013】
〔請求項3記載の発明〕
前記シート材に、徐放性の異なる複数種のマイクロカプセルが担持されている請求項1又は2記載の香り付きポケットティシュー製品。
【0014】
(作用効果)
香料が拡散しやすい即効性のマイクロカプセルと、香料が揮散しづらい遅効性のマイクロカプセルとを担持させることで、長期間にわたり継続的に個包装フィルム内に香気を蒸散させることができるようになり、継続的に安定してほのかに香りをティシュペーパーに付与することができるようになる。また、製造後に経時的に香りが異なるようにすることもできる。
【0015】
〔請求項4記載の発明〕
前記シート材に、香料の異なる複数種のマイクロカプセルが担持されている請求項1〜3の何れか1項に記載の香り付きポケットティシュー製品。
【0016】
(作用効果)
本発明によれば、ティシュペーパーに異なる香りを別々に付与したり、或いは混合した香りを付与したりすることができるようになる。
【0017】
〔請求項5記載の発明〕
香料の異なる複数種のマイクロカプセルが、シート材の異なる位置に担持されている請求項3又は4記載の香り付きポケットティシュー製品。
【0018】
(作用効果)
香料の異なる複数種のマイクロカプセルが、シート材の異なる位置に担持されていると、その異なる位置毎に、ティシュペーパー製品を押したり揉んだりする位置を変化させることで、異なる香料のマイクロカプセルを崩壊させることができる。よって、異なる香気を意図してティシュペーパーに付与することができるものとなる。
【0019】
〔請求項6記載の発明〕
マイクロカプセル担持部位の少なくとも一つが、シート材のティシュペーパー束に対面する面にある1〜5記載の香り付きポケットティシュー製品。
【0020】
(作用効果)
ティシュペーパー束に対面する面にあれば、香料がよりティシュペーパー束に移りやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、製造が容易で、製造コストも安く、保管期間や開封後の期間が長くとも、ティシュペーパーを使用する際に適度な香りが確実に感じられる香り付きポケットティシュー製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るポケットティシュー製品の斜視図である。
図2】本発明に係るポケットティシュー製品の図1のII-II位置での断面図である。
図3】本発明に係るポケットティシュー製品の図1の平面図である。
図4】本発明に係る他のポケットティシュー製品の図1のII-II位置での断面図である。
図5】本発明に係る他のポケットティシュー製品の図1の平面図である。
図6】本発明に係る別のポケットティシュー製品の図1のII-II位置での断面図である。
図7】本発明に係るさらに別のポケットティシュー製品の図1のII-II位置での断面図である。
図8】本発明に係るそのさらに別のポケットティシュー製品の図1の平面図である。
図9】本発明に係るポケットティシュー製品を複数個、まとめて包装した製品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次いで、本発明の実施の形態を図1〜9を参照しながら以下に詳述する。
【0024】
本発明に係るポケットティシュー製品100は、既知のポケットティシューの折り方にしたがって折り畳まれたティシュペーパーが10〜20組程度重ねられてなるティシュペーパーの束2を、個包装フィルム1により個包装したものである、
その形状は、略長方形状の上下面(上面を符号11で示す)及びこれらを繋ぐ長側縁12及び短側縁13とからなる座布団様の偏平状の立体形状の外形をなし、その大きさは、概ね短側縁13の長さL1×長側縁12の長さL2×厚さが、75±10mm×125±10mm×15±5mmである。
【0025】
個包装フィルム1によるティシュペーパー束2の包装形態は、既知のポケットティシュー製品の包装形態にしたがえばよく、特に限定されない。図1に示す例は、ポケットティシュー製品によく用いられる一般的な包装態様であり、個包装フィルム1でティシュペーパーの束2を巻き三つ折りのようにして包み、その両端面開口部を融着処理により封止した包装態様である(熱融着部は符号15で示す)。本発明に係るポケットティシュー製品もこの包装態様を採ることができる。
【0026】
他方、本発明に係るポケットティシュー製品100は、既知の製品と同様に、個包装フィルム1のティシュペーパー束2の上面21に対面する部分のほぼ幅方向中央に、長側縁12に沿って取出口形成部としてのミシン目線14が形成されている。このミシン目線14を裂開することで形成されるスリット状の取出口から内部のティシュペーパーが取出し可能となる。
図示の形態では、既知の包装態様にしたがって、フィルム縁部同士が重ならない面がティシュペーパー束2の上面21に対面するように構成されているが、この形態に限定されない。
内包されるティシュペーパー束2を構成するティシュペーパーは、既知のものが使用できる。
【0027】
ここで、本発明に係るポケットティシュー製品100では、個包装フィルム1とティシュペーパー束2の底面22との間にシート材40が介在され、そのシート材40の外面に香料を封入したマイクロカプセルが担持されている。(図中、マイクロカプセル担持部分を符号30,30A〜30Dで示す)。シート材40と個包装フィルム1とは、接着されていても接着されていなくてもよい。
シート材40に担持されたマイクロカプセルが外圧等により崩壊して香料が揮散することにより、個包装フィルム1で包まれた空間内に香料が放たれ、ティシュペーパー束2に香りが付与される。
【0028】
前記シート材40の素材は、特に限定されないが、ティシュペーパー製品全体の剛性を過度に高めるものは望ましくない。好適には、上質紙クレープ紙、薄葉紙などの紙又は不織布等のポーラスな素材であるが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルム素材も用いることができる。但し、シート材40を紙や不織布とするとマイクロカプセルが崩壊して漏出した香料がシート材40に吸収され、そのシート材40から香料が揮散することになるため、ティシュペーパー束20全体に香りをほのかに付与することができるようになる効果が得られる。
【0029】
係るシート材40へのマイクロカプセルの担持は、バインダーを用いることにより行なうことができる。バインダーとしては、乾燥後に粘着性を示さないものが望ましく、具体的には、アクリルエマルジョン系接着剤、ポリエステル系接着剤、天然ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ホットメルト接着剤、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの中でも、アクリルエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコールが、製造時の取り扱い性に優れ、マイクロカプセルを良好に担持させることができるため望ましい。
【0030】
マイクロカプセルをシート材に担持させる方法としては、上記バインダーにマイクロカプセルを分散させたものを、フレキソ印刷、グラビア印刷、スプレー塗布等によって塗布等することにより行なうことができる。但し、グラビア印刷は版胴をドクターブレードで掻き取る際にマイクロカプセルが破損するおそれがあり、スプレー塗布は、噴霧時により気化熱により液温が下がりバインダー固形化又は高粘度化して、詰まりが発生するおそれがある。フレキソ印刷については、版胴が樹脂製であり刷圧が低いためマイクロカプセルに過度な負荷がかからず、また、貯留タンクで一定の液温に加温した塗布液を均一に塗布することが可能である。したがって、フレキソ印刷を用いてシート材40にマイクロカプセルを担持させるのがよい。
シート材1へのマイクロカプセルの担持態様は、シート材の全体にベタ付与するようにしてもよいし、点在的に付与してもよい。適宜の模様を描くように付与してもよい。
【0031】
マイクロカプセルのシート材40への担持量としては、0.35〜20.0g/m2が望ましく、特に3〜10g/m2であるのが望ましい。0.35g/m2未満であると香料量が少なくなりすぎてティシュペーパーに香りが付与されないおそれがあり、20.0g/m2を超えて担持させてもティシュペーパーへの香りの付与効果がそれ以上にほとんど向上せず、コスト高となるだけである。
【0032】
本発明に係るマイクロカプセルの外郭は、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂とすることができるが、中でも、ティシュペーパー製品の通常の取り扱う過程でほどよく崩壊する適度な硬さであり、しかも密度が高く、香料の経時的な揮散の防止効果も高い、尿素樹脂が望ましい。
【0033】
用いるマイクロカプセルの平均粒子径は、6〜30μm、特に10〜20μmであるのがよい。なお、ここでの平均粒子径とは、レーザー解析散乱法により測定される粒度分布に基づく算術平均粒径(体積平均粒径)である。平均粒子径が6μm未満であると取り扱い性が悪化し、製造コストも高くなる。また、30μmを超えると、バインダーに分散させて付与する際、特にフレキソ印刷での加工時に実粒径の大小で転写量が安定しないおそれがある。
【0034】
マイクロカプセルの平均粒子径を6〜30μmとする場合には、マイクロカプセルにおける香料割合は、15〜55重量%であるのが望ましい。ティシュペーパー製品の一般的な取り扱いの過程でマイクロカプセルが適度に崩壊してティシュペーパーに香りが付与され、かつ、加工時及び製品としてからの経時の劣化耐性が十分な強度が得られる外郭の厚さ(膜厚)とすることができる。
【0035】
マイクロカプセルに封入する香料は、特に限定されるものではない。具体例としては、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。
【0036】
マイクロカプセルの外郭の香料封入方法は、特に限定されない。界面重合法、in situ重合法等の既知の方法により行なうことができる。
【0037】
他方、本発明に係るティシュペーパー製品100では、シート材40に担持させるマイクロカプセルは一種に限られず複数種とすることができる。香料の異なる複数種のマイクロカプセルを担持させてもよいし、外郭の異なる複数種類のマイクロカプセルを担持させてもよい。香料が異なるマイクロカプセルを担持させた場合には、複数の異なる香りが感じられる、或いは複数の香りを混合した香りが感じられるティシュペーパー製品100となる。
【0038】
複数種類のマイクロカプセルをシート材に担持させるのであれば、徐放性が異なる複数種のマイクロカプセルを担持させるようにするのが望ましい。徐放性を異ならしめるには、揮発性の異なる香料が封入された複数種類のマイクロカプセルを担持させればよい。揮発性が高く即効性のある香料と遅効性の香料とをシート材40に含有させることができるようになり、シート材40から個包装フィルム内に長期にわたり継続的に安定して香気が放たれることとなり、適度な香りをティシュペーパー束2に継続的に安定して移せるものとすることができるようになる。また、徐放性を異ならしめるにあたり、上記のマイクロカプセルの外郭の膜厚や材質を異ならしめてマイクロカプセルの崩壊のし易さに差を設けるようにしてもよい。
【0039】
複数種類のマイクロカプセルをシート材40に担持させる場合、その複数種類のマイクロカプセルを同一のバインダーに混合してシート材40に担持させる態様の他、図4及び図5に示すように、複数種類のマイクロカプセルをシート材40のティシュペーパー束2の底面22と対向する面1Aの異なる位置に担持させるようにしてもよい(図中符号30A,30Bとして示す)。このように異なる位置に担持することで、図4に示すティシュペーパー製品のA位置とB位置とを押した際に、異なる香りや揮発性のマイクロカプセルが崩壊することになり、異なる種類のマイクロカプセルを個別に崩壊させることができるようになる。このように個別に崩壊させることができれば、意図的に異なる香りをティシュペーパーに付与したり、徐放性を意図的にコントロールしたりすることができるようになる。もちろん、異なる種類は2種類に限定されず、また、異なる位置も2箇所に限定されるわけではない。図6に示すように、4種類の異なるマイクロカプセルを、4箇所の別々に位置に担持させるようにしてもよい。
【0040】
他方、シート材40におけるマイクロカプセル担持面と、ティシュペーパー束との位置関係は、図2図4図6に示されるように、ティシュペーパー束2の底面22と対面する面1Aに担持させると、より確実にティシュペーパー束2に香りを移すことができる点で望ましい。但し、図8に示すように、両面に設けてもよい。また、図示はしないがシート材のティシュペーパー束2の底面22に対面しない面に設けてもよい。この場合には、マイクロカプセルの崩壊により漏出した香料が直接にティシュペーパーに付着し難く、その付着したティシュペーパーのみ香りが強く感じられるものとなるなど、ティシュペーパー束2を構成する特定のティシュペーパー、特に底面側に位置するティシュペーパーの香りが過度に強くなるおそれがなくなる利点がある。
【0041】
他方、ティシュペーパー束2とシート材40とを包含して包む個包装フィルム1は、ポケットティシュー製品100の個包装フィルムとして用いられている既知のフィルム素材を用いることができる。具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどである。上記のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムの中では、本発明に係るティシュペーパー製品100では、個包装フィルム内に揮散した香料が個包装フィルム1を透過して外部に拡散しないほうが望ましいため、よりガス透過性の低いポリプロピレンフィルムであるのが望ましい。
【0042】
また、外部への香料の拡散の防止性をより高めるために、個包装フィルム1として、よりガス透過度の低いものを選択してもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムである。その他、酸素の透過度が200cc/m2・day・atm未満、炭酸ガスの透過度が900cc/m2・day・atm未満であるフィルム素材であれば、外部への香料の拡散性が格段に小さいものとすることができる。
【0043】
個包装フィルム1の厚みは、20〜260μmであるのが望ましい。20μm未満では、個包装フィルム1として十分な強度を確保することが難しくなる。反対に260μmを超えると、強度の問題はないものの、硬くなりポケットティシュー製品として使用し難く、またコストも高くなる。
【0044】
他方、本発明に係るティシュペーパー製品100では、上述のとおり図示例の巻き三つ折り態様を基礎とする包装態様を採用することができるが、この包装態様は個包装フィルム1の底面側に隙間60が形成される。本発明に係るティシュペーパー製品100では、当該間隙部分を熱融着などにより封止して、個包装フィルム内の気密性を高めることにより、香料の外部への放散を防止して、ティシュペーパー束2へ香料がより移りやすいものとしてもよい。
【0045】
他方、本発明に係るポケットティシュー製品100は、その製造方法について限定されるものではないが、例えば、図示例の包装態様であれば、連続個包装フィルムシートを搬送する過程で、平行して搬送される予めマイクロカプセルを担持させたシート材40上にティシュペーパー束2を載せたものを包むようにして連続個包装フィルムシートの両側縁を折り返して巻き三つ折りのようにし、その後にティシュペーパー束2の搬送方向の前後縁のやや外方位置を熱融着して封止し、裁断して製造することができる。
【0046】
なお、本発明に係るポケットティシュー製品100では、香料をティシュペーパーに付与する態様は採らない。
その本発明に係るポケットティシュー製品100について説明すると、内包されるティシュペーパー束2を構成するティシュペーパーは、2枚〜3枚の薄葉紙が積層されたプライ構造を有する。
【0047】
その薄葉紙の原料パルプとしては、NBKPとLBKPとを配合したものであり、適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0048】
本発明に係るティシュペーパーの各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの米坪は、好ましくは9〜25g/m2、より好ましくは10〜15g/m2である。米坪が9g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
【0049】
他方、本発明に係るティシュペーパーの紙厚は、2プライの状態で100〜160μm、より好ましくは120〜140μmであるのが望ましい。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパーとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、160μm超では、ティシュペーパーの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
【0050】
なお、紙厚及び上述の個包装フィルム1の厚さの測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。紙厚は各プライを剥がすことなく組とした状態で測定する。
【0051】
具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。
【0052】
なお、ポケットティシュー製品100は、販売などするにあたって、図8に示すように複数個をまとめてポリプロピレンフィルム等の樹脂製の外装フィルム101によって包装した形態のポケットティシュー製品包装体200とするのが望ましい。
【0053】
ポケットティシュー製品単体では、ミシン目線のカット部等から少なからず香料が拡散するが、上記包装体200では、ポケットティシュー製品自体がフィルム包装されるため、係る外装フィルム101外へ香料が飛散することなく、例えば商品陳列の際等に、隣接製品への香りが移るようなこともない。この商品陳列の際の香料飛散を確実にするためには、外装フィルム101として、ポリプロピレン樹脂など、安価かつガス透過性の低い樹脂製フィルムを用いるのがよい。
【符号の説明】
【0054】
100…ポケットティシュー製品、1…個包装フィルム、1A…個包装フィルムのティシュペーパー束の底面に対向する面、2…ティシュペーパー束、11…ポケットティシュー製品の上面、12…ポケットティシュー製品の長側縁、13…ポケットティシュー製品の短側縁、L1…短側縁の長さ、L2…長側縁の長さ、15…熱融着部、21…ティシュペーパー束の上面、22…ティシュペーパー束の底面、14…取出口(取出口形成用ミシン目線)、30,30A,30B、30C、30D…マイクロカプセル担持部分、40…シート材、60…間隙、101…外装フィルム、200…ポケットティシュー製品包装体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9