特許第6132278号(P6132278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6132278
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】記憶装置の破壊装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   G11B33/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-137428(P2016-137428)
(22)【出願日】2016年7月12日
【審査請求日】2016年7月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503174763
【氏名又は名称】株式会社創朋
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(72)【発明者】
【氏名】樫原 富雄
(72)【発明者】
【氏名】原科 勝
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−054037(JP,A)
【文献】 特開2009−146546(JP,A)
【文献】 実開昭63−106529(JP,U)
【文献】 特開平11−196798(JP,A)
【文献】 実開平05−061890(JP,U)
【文献】 特開2004−071057(JP,A)
【文献】 特開2004−158172(JP,A)
【文献】 実開平02−034531(JP,U)
【文献】 特開2001−055283(JP,A)
【文献】 特開2011−028902(JP,A)
【文献】 特開2006−147044(JP,A)
【文献】 特開2014−166599(JP,A)
【文献】 特開2004−316841(JP,A)
【文献】 米国特許第08763940(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/00 − 33/08
B09B 1/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置が載置可能なテーブルと、
前記テーブルを昇降させる昇降機構と、
前記テーブルに対向するように設けられ、前記テーブルの下降方向へ向かって付勢されている対向板と、
前記対向板を挿通するように設けられ、前記テーブルが前記対向板とで前記記憶装置を挟持した状態で前記対向板と共に上昇する際に前記記憶装置を圧壊する圧壊部材と、
前記対向板を前記下降方向へ向かって付勢する付勢部材と、
を備え、
前記対向板は、前記付勢部材の付勢力に抗い、前記記憶装置に接触した状態で前記テーブルと共に上昇し、
前記昇降機構は、加圧することで前記テーブルを上昇させる油圧ジャッキであり、
前記テーブルは、前記油圧ジャッキの加圧が開放されると、前記付勢部材に付勢された前記対向板に押されて前記記憶装置と共に下降する、記憶装置の破壊装置。
【請求項2】
前記対向板から見て前記テーブルとは反対側に設けられ、前記圧壊部材が固定されている固定ブロックを更に備える、
請求項1に記載の記憶装置の破壊装置。
【請求項3】
前記圧壊部材は、前記記憶装置を挟持した状態の前記テーブル及び前記対向板の上昇に比例して前記記憶装置の内部に入り込み、前記記憶装置を圧壊する、
請求項1又は2に記載の記憶装置の破壊装置。
【請求項4】
前記テーブルに前記記憶装置のマウンタの両側面を押圧するように設けられ、前記テーブルに対して前記記憶装置を位置決めする位置決め部材を更に備え、
前記位置決め部材は、前記テーブルにおいて前記記憶装置の挿入方向に沿って両側に複数配置された弾性部材であり、挿入中の前記記憶装置をガイドする、
請求項1からのいずれか1項に記載の記憶装置の破壊装置。
【請求項5】
前記テーブルは、前記記憶装置がセットされたトレイが載置されるトレイ載置部を有し、
前記圧壊部材は、前記テーブルが前記対向板とで前記記憶装置及び前記トレイを挟持した状態で前記対向板と共に上昇する際に、前記記憶装置を圧壊する、
請求項1からのいずれか1項に記載の記憶装置の破壊装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク等の記憶装置を圧壊する破壊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク等の記憶装置のデータを消去するために、物理的に記憶装置を圧壊する破壊装置が利用されている。
例えば、特許文献1には、油圧シリンダの先端に設けられたパンチヘッドが、収納ケースに収納されたハードディスクに貫通穴を形成して破壊するハードディスクの破壊装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−71057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1の破壊装置では、パンチヘッドがハードディスクを破壊する際に発生する破片がハードディスクから飛散してしまい、その後の作業の安全性が損なわれる恐れがある。
また、パンチヘッドがハードディスク内に突き刺さったままだと、その後にパンチヘッドをハードディスクから抜き出す作業が必要となり、作業性が低下する恐れがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、記憶装置を容易かつ安全に圧壊可能な破壊装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、記憶装置が載置可能なテーブルと、前記テーブルを昇降させる昇降機構と、前記テーブルに対向するように設けられ、前記テーブルの下降方向へ向かって付勢されている対向板と、前記対向板を挿通するように設けられ、前記テーブルが前記対向板とで前記記憶装置を挟持した状態で前記対向板と共に上昇する際に前記記憶装置を圧壊する圧壊部材と、を備える、記憶装置の破壊装置を提供する。
【0007】
また、前記破壊装置は、前記対向板から見て前記テーブルとは反対側に設けられ、前記圧壊部材が固定されている固定ブロックを更に備えることとしてもよい。
【0008】
また、前記破壊装置は、前記対向板を前記下降方向へ向かって付勢する付勢部材を更に備え、前記対向板は、前記付勢部材の付勢力に抗い、前記記憶装置に接触した状態で前記テーブルと共に上昇することとしてもよい。
【0009】
また、前記圧壊部材は、前記記憶装置を挟持した状態の前記テーブル及び前記対向板の上昇に比例して前記記憶装置の内部に入り込み、前記記憶装置を圧壊することとしてもよい。
【0010】
また、前記昇降機構は、加圧することで前記テーブルを上昇させる油圧ジャッキであり、前記テーブルは、前記油圧ジャッキの加圧が開放されると、前記付勢部材に付勢された前記対向板に押されて下降することとしてもよい。
【0011】
また、前記記憶装置は、マウンタ付きのハードディスクであり、前記破壊装置は、前記テーブルに前記記憶装置の両側面を押圧するように設けられ、前記テーブルに対して前記記憶装置を位置決めする位置決め部材を更に備えることとしてもよい。
【0012】
また、前記テーブルは、前記記憶装置がセットされたトレイが載置されるトレイ載置部を有し、前記圧壊部材は、前記テーブルが前記対向板とで前記記憶装置及び前記トレイを挟持した状態で前記対向板と共に上昇する際に、前記記憶装置を圧壊することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記憶装置を容易かつ安全に圧壊可能な破壊装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る破壊装置1の外観図である。
図2】カバーを外した状態の破壊装置1を示す図である。
図3】記憶装置100の内部構成の一例を説明するための図である。
図4】記憶装置であるマウンタ付きハードディスクを説明するための図である。
図5】昇降機構40の構成を説明するための図である。
図6】記憶装置100を圧壊工具70で圧壊する流れを説明するための図である。
図7】位置決め機構の構成の一例を説明するための図である。
図8】位置決め機構の変形例を説明するための図である。
図9】記憶装置100用のトレイを説明するための図である。
図10】SSDを破壊する際に利用される交換ツールブロック210を説明するための図である。
図11】記憶装置100の破壊作業の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.記憶装置の破壊装置の構成>
図1及び図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る記憶装置の破壊装置1について説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る破壊装置1の外観図である。図2は、カバーを外した状態の破壊装置1を示す図である。なお、図1(a)には、前面側から見た破壊装置1が示され、図1(b)には、背面側から見た破壊装置1が示されている。
【0017】
破壊装置1は、図1及び図2に示すように、本体部10と、カバー20と、テーブル30と、昇降機構40と、プッシャー板50と、圧縮バネ60と、圧壊工具70とを有する。破壊装置1は、テーブル30に載置された記憶装置100を圧壊工具70で圧壊する装置である。記憶装置100は、例えばハードディスクドライブ(以下、単にハードディスクと呼ぶ)やSSD(Solid State Drive)である。
【0018】
本体部10は、破壊装置1の骨格部であり、ここでは図2に示すようにフレーム構造を成している。これにより、本体部10の内部に設けられた昇降機構40である油圧ジャッキが発生する押上荷重に耐えられる。本体部10は、図2に示すように、ツールブロック11と、トッププレート12と、ベースブロック13と、ベースプレート14と、左フレーム15と、右フレーム16と、補助金具17と、サポート板18とを有する。
【0019】
ツールブロック11は、直方体形状の固定ブロックであり、本体部10の上部に位置する。ツールブロック11には、圧壊工具70が取り付けられている。トッププレート12は、ツールブロック11の上部に固定されている。このトッププレート12の上面には、ハンドル12aが取り付けられている。作業者は、ハンドル12aを把持して破壊装置1を運ぶ。
【0020】
ベースブロック13は、ツールブロック11と同様に直方体形状のブロックであり、本体部10の下部に位置している。ベースブロック13は、ベースプレート14に固定されている。また、ベースブロック13及びツールブロック11は、それぞれ左フレーム15及び右フレーム16にボルトで連結されている。
【0021】
補助金具17は、右フレーム16とツールブロック11の間に設けられており、ツールブロック11の固定を補助する機能を有する。サポート板18は、左フレーム15の下部とベースブロック13に接触するように設けられており、本体部10のフレーム構造を補強するための部材である。
【0022】
カバー20は、本体部10を覆っている。カバー20は、図1に示すように、挿入口21と、レバー操作用穴22と、インジケータ用穴23と、ピン調整用穴24と、クランプ用穴25とを有する。
【0023】
挿入口21は、カバー20の前面に設けられており、記憶装置100を挿入するための矩形状の開口である。レバー操作用穴22は、カバー20の前面において挿入口21の右下に設けられており、昇降機構40のレバーを上下操作するための長穴形状の開口である。インジケータ用穴23は、カバー20の上面に設けられており、インジケータ39(図7参照)を確認するための開口である。ピン調整用穴24は、カバー20の背面に設けられており、作業者が突き当てピン38の位置を調整するための開口である。クランプ用穴25は、カバー20の背面に設けられており、破壊装置1を作業台300に固定するためのクランプ工具310の片側を挿入するための開口である。
【0024】
テーブル30は、図2に示すように、記憶装置100を載置するための部材である。例えば、作業者は、挿入口21から記憶装置100を挿入してテーブル30上に載置する。テーブル30は、昇降機構40のヘッド44(図5参照)に連結されており、ヘッド44と共に上昇又は下降する。なお、テーブル30には、詳細は後述するが、記憶装置100を位置決めするための位置決め機構が設けられている。
【0025】
図3は、記憶装置100の内部構成の一例を説明するための図である。図3に示す記憶装置100は、3.5インチサイズのハードディスクであるものとする。ハードディスクは、プラッタ101と、スピンドルモータ102と、磁気ヘッド103と、ボイスコイルモータ104と、スクイズ板105とを有する。プラッタ101、スピンドルモータ102、磁気ヘッド103、ボイスコイルモータ104及びスクイズ板105は、アルミ製のケース106の内部に収納されている。なお、図3では、ケース106の上蓋が省略されている。
【0026】
プラッタ101は、アルミやガラス等の円板に磁性体が塗布されたものである。プラッタ101は、複数枚の円板を積層している。スピンドルモータ102は、プラッタ101の中央部に設けられており、プラッタ101を高速回転させる。磁気ヘッド103は、アクセスアームの先端に設けられており、プラッタ101の磁性体の磁化状態を変化させることでデータを記憶させる。ボイスコイルモータ104は、磁気ヘッド103をアクセスアームを介して揺動させる。スクイズ板105は、プラッタ101の外周部を覆っている。スクイズ板105は、プラッタ101の高速回転時のバタツキを抑制する機能を有する。
【0027】
ハードディスクにおいては、破壊装置1の圧壊工具70をプラッタ101に圧入してプラッタ101に孔を形成したり変形させたりすることで、データのアクセスを不能にする。図3に示すようにスクイズ板105及びスピンドルモータ102を有するハードディスクにおいては、スクイズ板105及びスピンドルモータ102に圧壊工具70が圧入されないようにする必要がある。具体的には、スクイズ板105とスピンドルモータ102の間の圧入位置Pに、圧壊工具70を圧入させることが望ましい。さらに、プラッタ101が完全に圧壊されたことを作業者が目視で確認できるようにするために、圧壊工具70の直下のケース106の底面106aに圧壊工具70によるヒビ割れが発生していることが望ましい。底面106aのヒビ割れは、圧壊工具70がプラッタ101を挟んで底面106aに達することで発生する。また、本実施形態に係る破壊装置1は、詳細は後述するが、記憶装置100の位置決めを行う位置決め機構を有する。
【0028】
また、破壊装置1は、図4に示すマウンタ付きハードディスクを、物理的に破壊可能である。すなわち、破壊装置1は、ハードディスクがマウンタに固定された状態のままで、物理的に破壊可能である。これにより、ハードディスクをマウンタから取り外す作業が不要となる。
【0029】
図4は、記憶装置であるマウンタ付きハードディスクを説明するための図である。マウンタ付きハードディスクは、例えば大量のデータを保存するデータセンターに設置されたサーバ装置に着脱可能に装着されている。マウンタ付きハードディスクにおいては、ハードディスク100Aが複数(例えば4本)のネジでマウンタ110に固定されている。なお、マウンタ付きハードディスクがサーバ装置に多用される理由は、システムを稼動したままでハードディスクを交換できるホットスワップ機能を実現するためである。
【0030】
ハードディスク100Aのマウンタ110への固定状態は、外部と電気的に接続するためのコネクタ108がハードディスク100Aの端面107aと端面107bのどちらに設けられるかによって異なる。図4(a)に示す状態では、プラッタ101が端面107aに設けられたコネクタ108から離れた位置(以下、正位置とも呼ぶ)に位置し、図4(b)に示す状態では、プラッタ101が端面107bに設けられたコネクタ108に近い位置(以下、逆位置とも呼ぶ)に位置している。破壊装置1は、詳細は後述するが、プラッタ101が正位置と逆位置のいずれの位置に位置しても、プラッタ101を圧壊可能な構成となっている。
【0031】
昇降機構40は、テーブル30を昇降するための機構である。昇降機構40は、ここでは図5に示す油圧ジャッキである。昇降機構40は、内部の液体を加圧させることで増力されて、テーブル30を上昇させる。
【0032】
図5は、昇降機構40の構成を説明するための図である。昇降機構40は、操作レバー41と、ポンプピストン42と、ラム43と、ヘッド44と、リリースバルブ45とを有する。油圧ジャッキは、ここでは約6トンの荷重でラム43が上昇する能力を有する。なお、昇降機構40の操作レバー41以外の部分は、本体部10(図2)の内部に収容されている。
【0033】
操作レバー41は、作業者がテーブル30を上下動するために操作を行うレバーである。操作レバー41は、ポンプピストン42に連結されている。操作レバー41は、伸縮可能な構成となっている。なお、操作レバー41は、ポンプピストン42に対して抜き差し可能に連結されている。例えば、破壊装置1を使用しない場合には、操作レバー41は取り外される。
【0034】
ポンプピストン42は、操作レバー41の上下動に連動して上下動し、ラム43及びヘッド44を上下動させる。ヘッド44にはテーブル30が連結されているので、テーブル30も上下動可能である。なお、ヘッド44の中心は、テーブル30の中心と同じ位置である。
【0035】
リリースバルブ45は、油圧ジャッキ内の液体を加圧可能な閉状態と、加圧を開放する開状態との間で回動可能なバルブである。例えば、作業者が、閉状態に位置するリリースバルブ45を反時計方向に90度回動させると、リリースバルブ45が開状態に切り替わる。リリースバルブ45が閉状態に位置した状態で、作業者が操作レバー41を上下動すると、ラム43及びヘッド44が上昇する。これに伴い、テーブル30も上昇する。一方で、リリースバルブ45を閉状態から開状態に切り替えると、テーブル30は、引っ張りバネ32(図6参照)により引っ張られて下降する。
【0036】
プッシャー板50は、テーブル30に対向する対向板である。具体的には、図2に示すように、プッシャー板50は、記憶装置100を挟んでテーブル30と対向している。プッシャー板50は、ガイド軸55を介して、ツールブロック11に取り付けられている。ガイド軸55は、ツールブロック11の貫通孔11a内を上下動可能に設けられている。プッシャー板50には、圧壊工具70が挿通可能な貫通穴51が複数設けられている。
【0037】
圧縮バネ60は、プッシャー板50とトッププレート12の間に設けられており、プッシャー板50を付勢している付勢部材である。すなわち、圧縮バネ60は、プッシャー板50を下降方向へ向かって付勢している。圧縮バネ60は、ツールブロック11の貫通孔11bを挿通している。
【0038】
圧壊工具70は、テーブル30に載置された記憶装置100を圧壊する軸状の部材である。圧壊工具70の先端は、例えば図2に示すように円錐形状となっている。圧壊工具70は、図3に示す圧入位置Pに圧入して、プラッタ101に孔を形成したり変形させたりする。圧壊工具70の先端とは反対側は、ツールブロック11に固定されている。すなわち、圧壊工具70は、移動せずに、テーブル30がプッシャー板50とで記憶装置100を挟持した状態でプッシャー板50と共に上昇する際に記憶装置100を圧壊する。ツールブロック11には、4本の圧壊工具70が取付け可能であるが、少なくとも1本の圧壊工具70を取り付けてもよい。
【0039】
図6は、記憶装置100を圧壊工具70で圧壊する流れを説明するための図である。図6(a)は、テーブル30が待機位置に位置している状態を示し、図6(b)は、テーブル30の上昇に伴いテーブル30とプッシャー板50が記憶装置100を挟持している状態を示し、図6(c)は、圧壊工具70が記憶装置100の内部に入り込んで圧壊している状態を示している。
【0040】
図6(a)に示すテーブル30の待機位置は、テーブル30が引っ張りバネ32に引っ張られて下降している位置である。テーブル30が待機位置に位置する状態で、圧壊される記憶装置100が載置され、又は圧壊後の記憶装置100が取り除かれる。テーブル30が待機位置に位置する際には、プッシャー板50は記憶装置100とは接触していない。また、圧壊工具70の先端は、プッシャー板50の下面より突出していない。
【0041】
作業者が、リリースバルブ45(図1)を閉状態(油圧ジャッキ内の液体を加圧する状態)にして操作レバー41を上下動することで、テーブル30は待機位置から上昇する。そして、テーブル30が所定量上昇すると、図6(b)に示すように、テーブル30上の記憶装置100の上面がプッシャー板50と接触する状態(密着する状態)となる。すなわち、テーブル30及びプッシャー板50が、記憶装置100を挟持する状態となる。
【0042】
図6(b)の状態から作業者が更に操作レバー41を上下動することで、図6(c)に示すように、記憶装置100を挟持するテーブル30及びプッシャー板50が、共に上昇する。特に、プッシャー板50は、圧縮バネ60の付勢力に抗い上昇する。そして、テーブル30及びプッシャー板50が共に上昇するに従い、圧壊工具70の先端がプッシャー板50の下面よりも突出するようになる。そして、圧壊工具70は、プッシャー板50の上昇に比例して記憶装置100の内部に入り込み、記憶装置100を圧壊する。すなわち、圧壊工具70が、記憶装置100のプラッタ101に孔を形成したり変形させたりする。
【0043】
圧壊工具70による記憶装置100の圧壊後に、作業者がリリースバルブ45を開状態に切り替えると、油圧ジャッキ内の液体の加圧が開放される。これに伴い、プッシャー板50は、圧縮バネ60の付勢力によって下降する(図6(b)参照)。これに伴い、記憶装置100及びテーブル30は、プッシャー板50に押されて下降し、記憶装置100の内部に入り込んでいた圧壊工具70が、記憶装置100から抜かれる。その後、テーブル30は、引っ張りバネ32に引っ張られて、図6(a)に示す待機位置に位置する。
【0044】
<2.位置決め機構について>
テーブル30には、記憶装置100の位置決めを行うための位置決め機構が設けられている。位置決め機構は、記憶装置100のプラッタ101の中心がツールブロック11の中心に一致するように、位置決めする。
【0045】
図7は、位置決め機構の構成の一例を説明するための図である。図7では、記憶装置100が一点鎖線で示されている。テーブル30には、図7に示すように、一対のガイド板35と、板バネ36、37と、突き当てピン38とが設けられている。
【0046】
一対のガイド板35は、テーブル30の手前においてテーブル30の両側に設けられている。ガイド板35は、作業者が記憶装置100をテーブル30上で移動する際に、記憶装置100をガイドする。なお、ガイド板35は、テーブル30の両側面に固定されている。
【0047】
板バネ36、37は、テーブル30の長手方向においてガイド板35よりも奥側に設けられている。板バネ36は、テーブル30の左側に設けられ、板バネ37は、テーブル30の右側に設けられている。板バネ36、37は、それぞれ押圧部36a、37aを複数有する。押圧部36a、37aは、図7に示すように記憶装置100の両側面を押圧することで、記憶装置100の中心をテーブル30の中心に位置させる。この結果、テーブル30の短手方向において記憶装置100を位置決めできる。このように、板バネ36、37は、位置決め部材としての機能を有する。なお、板バネ36、37は、ガイド板35と同様に、記憶装置100をガイドする機能も有する。
【0048】
突き当てピン38は、テーブル30の奥側の中央部に設けられている。記憶装置100を突き当てピン38に突き当てることで、テーブル30の長手方向において記憶装置100を位置決めできる。なお、突き当てピン38は、図7において実線で示す第1位置又は、破線で示す第2位置に位置可能である。例えば、作業者は、図4(a)に示すようにプラッタ101が正位置に位置する記憶装置100がテーブル30に載置される場合には、突き当てピン38を第1位置に位置させる。一方で、作業者は、図4(b)に示すようにプラッタ101が逆位置に位置する記憶装置100がテーブル30に載置される場合には、突き当てピン38を第2位置に位置させる。これにより、プラッタ101の正位置及び逆位置のいずれの場合にも、プラッタ101の中心がツールブロック11の中心と一致することになり、プラッタ101の所望の位置(図3の圧入位置P)を圧壊工具70で圧壊できる。
【0049】
なお、テーブル30と記憶装置100との間には、図7に示すように、記憶装置100のテーブル30に対する高さを調整するための矩形板状のスペーサ33が設けられていてもよい。これにより、圧壊工具70が記憶装置100の内部へ入り込む量を調整できる。これにより、記憶装置100のケース106の底面106a(図3)に、ヒビ割れを安定して発生させることができる。この結果、作業者は、発生したヒビ割れによって、プラッタ101が完全に圧壊されたことを適切に認識することが可能となる。
また、板バネ37よりも奥側には、板状のインジケータ39がテーブル30の側面から上方へ向けて延びている。インジケータ39は、テーブル30の上昇に伴い圧壊工具70が記憶装置100を圧壊する際に先端がインジケータ用穴23(図1)から突出するように、設けられている。作業者は、インジケータ39がインジケータ用穴23から突出した状態を見ることで、記憶装置100が圧壊されたことを認識できる。
【0050】
図8は、位置決め機構の変形例を説明するための図である。図8(a)の下半分には、テーブル30の下方から見た構成が示され、図8(a)の上半分には、テーブル30の上方から見た構成が示されている。図8(b)には、テーブル30の側面側から見た構成が示されている。
【0051】
テーブル30の裏面30b側において、テーブル30の短手方向の両側に固定リンク91a、91b、92a、92bが設けられている。短手方向一端側の固定リンク91a、91bは、それぞれ支点91c、91dを中心に揺動可能であり、短手方向他端側の固定リンク92a、92bは、それぞれ支点92c、92dを中心に揺動可能である。固定リンク91a、91bは、連結リンク91eによって連結され、固定リンク92a、92bは、連結リンク92eによって連結されている。連結リンク91e、92eは、テーブル30の表面30a(図8)側に突出しており、例えば記憶装置100の両側面を押圧可能である。
【0052】
また、固定リンク91a、92aは、それぞれスライダ93と連結されている。スライダ93は、テーブル30の裏面30b側に配置されており、ガイド部94によってテーブル30の長手方向に移動可能である。スライダ93の端部には、作業者が把持可能なノブ95が設けられている。例えば、作業者が、ノブ95を手前に動かすと、固定リンク91a、91b等が揺動することで、連結リンク91e、92eが中央側へ向かう。これにより、連結リンク91e、92eが、記憶装置100の両側面を押圧して、記憶装置100をテーブル30の短手方向において中央に位置決めできる。
【0053】
<3.記憶装置100用のトレイ>
上記では、記憶装置100として図4に示すマウンタ付きのハードディスクがテーブル30に載置されることとしたが、これに限定されず、例えばマウンタが付いていないハードディスクがテーブル30に載置されてもよい。本実施形態では、マウンタが付いていないハードディスクをテーブル30の所望の位置に載置するために、図9に示すトレイ80、85が用いられる。なお、トレイ80、85は、テーブル30のトレイ載置部である表面30a側に載置される。
【0054】
図9は、記憶装置100用のトレイを説明するための図である。トレイとしては、ここでは、記憶装置100が3.5インチサイズのハードディスク100Aである場合には、図9(a)に示すトレイ80が使用され、記憶装置100が2.5インチサイズのハードディスク100Bである場合には、図9(c)に示すトレイ85が使用される。トレイ80、85を使用する場合には、テーブル30がプッシャー板50とで記憶装置100及びトレイ80、85を挟持した状態でプッシャー板50と共に上昇する際に、圧壊工具70が記憶装置100を圧壊する。
【0055】
図9(a)に示すトレイ80は、矩形板状の形状を成している。トレイ80は、凹部82と、切り欠き部83とを有する。凹部82は、ハードディスク100Aと同じ大きさに形成されている。凹部82に3.5インチサイズのハードディスク100Aの下面側がはめ込まれてセットされる(図9(b)参照)。切り欠き部83は、突き当てピン38に接触することで、テーブル30の長手方向においてトレイ80を位置決めする。また、テーブル30の板バネ36、37の押圧部36a、37aは、トレイ80の両側面を押圧することで、テーブル30の短手方向においてトレイ80を位置決めする。この結果、トレイ80にセットされたハードディスク100Aのプラッタ101の中心が、ツールブロック11の中心と一致する。
【0056】
図9(c)に示すトレイ85は、トレイ80と同じ大きさであり、矩形板状の形状を成している。トレイ85も、トレイ80と同様に、中央部に2.5インチサイズのハードディスク100Bがセットされる凹部が設けられている。また、トレイ85は、突き当てピン38に接触することでテーブル30に対する位置決めをする切り欠き部88を有する。
【0057】
<4.SSD用の交換ツールブロック>
上記では、破壊装置1が、記憶装置100としてのハードディスクを圧壊するものとして説明したが、記憶装置100としてのSSD(Solid State Drive)を破壊可能である。SSDを破壊する場合には、圧壊工具70が多く取り付けられた交換ツールブロック210に交換される。
【0058】
図10は、SSDを破壊する際に利用される交換ツールブロック210を説明するための図である。図10(a)には、交換ツールブロック210の内部構成が示され、図10(b)には、交換ツールブロック210に対する圧壊工具70の配置状態が示されている。
【0059】
記憶装置100が図10(a)に示すSSD100Cである場合には、多くの圧壊工具70が交換ツールブロック210に取り付けられる。例えば、図10(b)に示すように、交換ツールブロック210に対して15個の圧壊工具70が所定間隔で配置されている。このように多くの圧壊工具70を用いることで、SSD100Cを確実に破壊することができる。また、交換ツールブロック210とツールブロック11を交換することで、一台の破壊装置1を用いて、ハードディスクとSSDの両方を破壊することが可能となる。
【0060】
なお、交換ツールブロック210においては、図10(a)に示すように圧縮バネ60がガイド軸55を覆うように配置されている。これにより、省スペースの中で、圧縮バネ60及びガイド軸55を配置できる。
【0061】
<5.記憶装置の破壊作業の手順>
図11を参照しながら、記憶装置100の破壊作業の手順について説明する。
【0062】
図11は、記憶装置100の破壊作業の手順を説明するためのフローチャートである。ここでは、記憶装置100がハードディスクであるものとする。まず、作業者は、ハードディスクがマウンタ付きハードディスクである場合には(ステップS102:Yes)、プラッタ101が正位置(図4(a)に示す位置)であるか否かを確認する(ステップS104)。そして、プラッタ101が正位置である場合には(ステップS104:Yes)、作業者は、突き当てピン38を第1位置(図7で実線で示す位置)にセットする(ステップS106)。一方で、プラッタ101が逆位置である場合には(ステップS104:No)、作業者は、突き当てピン38を第2位置(図7で破線で示す位置)にセットする(ステップS108)。
【0063】
次に、作業者は、マウンタ付きハードディスクを挿入口21から挿入して、テーブル30上に位置決めする(ステップS110)。具体的には、板バネ36、37がマウンタ付ハードディスクの両側面を押圧することで、テーブル30の短手方向においてマウンタ付きハードディスクを位置決めする。また、マウンタ付きハードディスクの端面を突き当てピン38に突き当てることで、テーブル30の長手方向においてマウンタ付きハードディスクを位置決めする。
【0064】
ステップS102でハードディスクがマウンタ付きのハードディスクでない場合には(No)、作業者は、突き当てピン38を第1位置にセットする(ステップS112)。次に、作業者は、ハードディスクをトレイ80上にセットする(ステップS114)。この際、作業者は、ハードディスクのプラッタ101が手前に位置するようにセットする。次に、作業者は、ハードディスクがセットされたトレイ80を挿入口21から挿入して、テーブル30上に位置決めする(ステップS116)。具体的には、板バネ36、37がトレイ80の両側面を押圧することで、テーブル30の短手方向におけるハードディスクの位置決めがされる。また、トレイ80の端面を突き当てピン38に突き当てることで、テーブル30の長手方向におけるマウンタ付きハードディスクの位置決めがされる。
【0065】
テーブル30に対してハードディスクが位置決めされると、作業者は、リリースバルブ45を閉状態にする(ステップS118)。そして、作業者が操作レバー41を上下動することで(ステップS120)、テーブル30が上昇する。そして、テーブル30の上昇中に、圧壊工具70が、テーブル30とプッシャー板50に挟持されたハードディスクの内部に入り込み、プラッタ101に孔を形成したり変形させたりする。
【0066】
その後、作業者は、リリースバルブ45を開状態にする(ステップS122)。これにより、圧縮バネ60によりプッシャー板50が押されて、圧壊工具70がハードディスクから抜かれる。また、テーブル30は、引っ張りバネ32に引っ張られて待機位置に移動する。そして、作業者は、プラッタ101が破壊されたハードディスクを挿入口21から取り出す(ステップS124)。これにより、一連の手順が完了する。
なお、上記では、記憶装置100としてハードディスクを圧壊する際の手順を説明したが、記憶装置100がSSDである場合にも同様な手順である。
【0067】
<6.本実施形態における効果>
上述した破壊装置1において、プッシャー板50を挿通するように設けられた圧壊工具70は、テーブル30がプッシャー板50とで記憶装置100を挟持した状態でプッシャー板50と共に上昇する際に、記憶装置100を圧壊する。
かかる場合には、記憶装置100がテーブル30及びプッシャー板50に密着しているので、圧壊工具70が記憶装置100を圧壊する際に発生する破片等が、記憶装置100から飛散しない。この結果、作業者は、その後の作業を安全に行える。また、プッシャー板50がテーブル30の下降方向に付勢されていることで、圧壊後にプッシャー板50が下降することで圧壊工具70が記憶装置100から抜かれる。この結果、記憶装置100の圧壊後の作業性が向上する。
【0068】
また、本実施形態に係る破壊装置1は、小型であるため、作業者が持ち運びしやすい。そして、サーバが設置されたデータセンター等で記憶装置100を破壊しやすくなる。特に、マウンタ付きハードディスクの場合には、マウンタが装着された状態のままで破壊可能であるので、ハードディスクをマウンタから外す作業が不要となり、作業性が向上する。
さらに、本実施形態に係る破壊装置1の場合には、記憶装置100が破壊されたことを容易に確認できる。また、圧壊工具70がプラッタ101に孔を形成したり変形したりすることで記憶装置100を破壊するため、記憶装置100の破壊による外形の大幅変化を伴わないので、記憶装置100の金属回収を目的とした取り扱い作業が複雑化すること無くリサイクル作業が容易である。
【0069】
なお、上記では、昇降機構40が油圧ジャッキであることとしたが、これに限定されず、他の方式であってもよい。
また、上記では、プッシャー板50を付勢する付勢部材が圧縮バネ60であることとしたが、これに限定されず、例えば板バネであってもよい。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0071】
1 破壊装置
11 ツールブロック
30 テーブル
36、37 板バネ
36a、37a 押圧部
38 突き当てピン
40 昇降機構
50 プッシャー板
60 圧縮バネ
70 圧壊工具
100 記憶装置
【要約】
【課題】記憶装置を容易かつ安全に圧壊可能な破壊装置を提供する。
【解決手段】記憶装置100の破壊装置1は、記憶装置1が載置可能なテーブル30と、テーブル30を昇降させる昇降機構40と、テーブル30に対向するように設けられ、テーブル30の下降方向へ向かって付勢されているプッシャー板50と、プッシャー板50を挿通するように設けられ、テーブル30がプッシャー板50とで記憶装置100を挟持した状態でプッシャー板50と共に上昇する際に記憶装置100を圧壊する圧壊工具70と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11