(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
X線の透過像により調査対象の内部を非破壊で検査する技術は、医療、工業用非破壊検査の分野などにおいて、欠くことのできない技術となっている。特にX線の透過像を電子データとして直接取り込むX線イメージセンサは、撮影の迅速性、画像処理による読影補助、動画対応可能などの理由から、広く用いられるようになった。このX線イメージセンサとして主に用いられているのは、FPD(フラットパネルディテクタ)と呼ばれるデバイスである。FPDは2次元に配置された各画素に、X線を電荷に変換する光電変換部と、光電変換部に蓄積された信号電荷を外部に取り出すスイッチング素子を配置したものである。FPDは、ガラスなどの大面積基板上に薄膜半導体技術を用いて作製される。それは、X線が可視光とは異なり、縮小光学系を容易に作ることができないため、FPDの大きさが調査対象と同等以上必要となるからである。従って、画素に配置されるスイッチング素子として、TFT(薄膜トランジスタ)が用いられる。
【0003】
FPDはX線を電荷に変換する方式の違いにより大きく2つに分類される。一つは、X線を蛍光に変換し、その蛍光を電荷に変換する間接変換方式であり、もう一つは、X線を直接電荷に変換する直接変換方式である。
【0004】
間接変換方式のFPDの従来例として特許文献1の第1図に開示された構造がある。これは、フォトダイオードとトランジスタの形成部に絶縁膜を介して蛍光体層が積層された構造を有している。X線の照射により蛍光体層が蛍光を発し、それをフォトダイオードで電荷に変換している。また、ここで用いるフォトダイオードとトランジスタをa−Si(アモルファスシリコン)で形成する例を開示している。
【0005】
直接変換方式のFPDの従来例として特許文献2の第1図に開示された構造がある。これはトランジスタに光導電層が接続された画素が、基板上に形成された構造を有している。X線は光導電層で吸収され直接電荷に変換される。また、ここでは光導電体層としてZnO、CdS、CdSeなどを用いる例を開示している。この両方式のFPD共に、信号は電荷として出力され、外部に設けられた積分器等の信号検出回路で電圧に変換され、デジタル化される。
【0006】
近年、医療の分野において、X線診断装置に対し、低被曝化、高精細化が強く求められるようになってきた。低被曝化の為にX線照射量を減らすと、FPDで検出される信号電荷が減少しS/N比を劣化させる。また、高精細化の為にFPDの画素サイズを小さくしても、それに応じて信号電荷も減少しS/N比が劣化する。つまり、低被曝化と高精細化を両立させるには、FPDのS/N比を高くすることが必要不可欠となるのである。
【0007】
イメージセンサの高S/N化の技術として、CMOSイメージセンサに適用されているAPS(アクティブピクセルセンサ)という技術がある。このAPSは、固体撮像素子開発初期に既に提案されていた技術であり、例えば非特許文献1にその内容が記載されている。
図16は、非特許文献1に記載されたAPS技術による画素の回路図を示したものである。COLUMN PULSE n、LINE PULSE mによりトランジスタT4、T5が導通状態となる期間に、ダイオードD1の電圧がトランジスタT3により出力配線であるCOMMON OUTPUTに出力されるという動作を行う。つまり、信号はトランジスタT3で増幅され、バッファリングされて出力されるのである。従って、出力配線などでノイズが混入され難く、高いS/N比を得ることが可能となる。
【0008】
上述のAPS技術を薄膜半導体に適用したイメージセンサの従来例として、特許文献3、特許文献4で開示された方法がある。特許文献3で開示された方法は、信号を増幅するトランジスタとしてa−Si TFTを用いる方法である。特許文献4で開示された方法は、信号を増幅するトランジスタとして多結晶Si TFTを用いる例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら実際には、a−Si TFTや多結晶Si TFTをイメージセンサの信号増幅に用いた装置は殆ど実用化されていない。その理由を以下に説明する。
【0012】
a−Si TFTを信号の増幅に用いた場合、TFTのゲート‐ソース間に常にTFTを導通状態とする電位が印加され続ける。a−Si TFTでは、ゲート-ソース間に電圧が印加され続けると、電圧の極性に依らず閾値電圧が大きく変動する。そのため、信号増幅用にa−Si TFTを用いると、イメージセンサを使用し続けることで、その特性が変動し、出力される信号も変動してしまうという信頼性上の問題が生ずるのである。
【0013】
多結晶Si TFTの場合、ゲート−ソース間に電圧を印加し続けても、それに伴う閾値変動はa−Si TFTに比べはるかに小さい。しかし、多結晶Si TFTの場合、閾値電圧の初期特性ばらつきがa−Si TFTに比べ極めて大きい。この特性ばらつきは、多結晶Siの結晶粒径のばらつきなどに起因する本質的な問題であり、極めて近傍に配置された素子間でも閾値電圧の差が大きい。このような閾値電圧のばらつきが生ずると、出力される信号にもばらつきが生じ、これがイメージセンサの画素毎にばらつくことから、FPN(固定パターンノイズ)を発生させるのである。
【0014】
上記説明したように、X線診断装置の低被曝化、高精細化を実現するために、トランジスタとしてTFTを用いるFPDにAPS技術を適用しても、a−Si TFTの閾値電圧変動が生ずるという課題や、p−Si TFTの特性ばらつきに起因するFPNの発生という課題が生じるのである。
【0015】
本発明の目的は、信号増幅回路に用いられる薄膜半導体の閾値変動を大幅に抑制する信号増幅回路およびその駆動方法を提供し、その信号増幅回路を各画素に配置した信頼性上の問題を生じさせない、S/N比の高い放射線撮像装置用イメージセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る増幅回路は、入力端子に印加された電圧に応じた電流を出力する増幅回路であって、前記増幅回路は少なくとも一つの
酸化物半導体からなるトランジスタを含み、前記トランジスタのゲート端子は前記入力端子に接続され、前記トランジスタのソース端子は出力端子に接続され、前記増幅回路は信号を出力する出力期間と、信号を出力しない停止期間を有する動作を行い、
前記トランジスタのドレイン端子の電位は、前記ゲート端子の電位よりも常に高い電位に設定されており、前記停止期間において、制御部により前記トランジスタのソース端子の電位が、前記トランジスタのドレイン端子の電位と等しくなるように制御さ
れることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る増幅回路は、
ソースフォロワ回路を含む構成であることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る増幅回路を用いたイメージセンサは、各画素に増幅回路と光電変換部を設けたイメージセンサであって、前記光電変換部は、直列に接続された光電変換素子と第1のトランジスタで構成され、前記増幅回路を構成する第2のトランジスタは、ゲート端子が前記光電変換素子と前記第1のトランジスタの接点に接続され、ソース端子が第3のトランジスタを介して読み出し配線に接続され、前記第1のトランジスタは第1の制御信号により光電変換素子を一定電位にリセットする機能を有し、前記第3のトランジスタは第2の制御信号により
前記増幅回路の出力を前記読み出し配線に出力する機能を有しており、
前記第2のトランジスタのドレイン端子の電位が、前記第2のトランジスタのゲート端子の電位よりも常に高い電位に設定されており、前記増幅回路の出力が前記読み出し配線に出力されている期間以外において、制御部により、前記第2のトランジスタのソース端子の電位が、前記第2のトランジスタのドレイン端子の電位と同電位になるように制御され、
少なくとも前記第2のトランジスタは酸化物半導体であることを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の第4の観点に係る増幅回路を用いたイメージセンサは、前記制御部が、前記第2のトランジスタのソース端子とドレイン端子に並列に接続された第4のトランジスタを有しており、前記第4のトランジスタのゲート端子は前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号とは異なる第3の制御信号により制御されることを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の第5の観点に係る増幅回路を用いたイメージセンサは、前記制御部が、前記第2のトランジスタのソース端子とドレイン端子に並列に接続された第4のトランジスタと、ドレイン端子とゲート端子が前記第1の制御信号に接続され、ソース端子が第4のトランジスタのゲート端子に接続された第5のトランジスタと、ゲート端子が前記第2の制御信号に接続され、ソース端子が電源に接続され、ドレイン端子が前記第4のトランジスタのゲート端子に接続された第6のトランジスタを有していることを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の第6の観点に係る増幅回路を用いたイメージセンサは、前記制御部が、直列に接続された第7のトランジスタと、第1の容量を有しており、前記第7のトランジスタのゲート端子は第1の制御信号に接続され、ドレイン端子は前記第2のトランジスタのドレイン端子と接続され、ソース端子は前記第2のトランジスタのソース端子と接続されることを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明の第
7の観点に係る増幅回路を用いたイメージセンサは
、前記光電変換素子が、フォトダイオードと蛍光体で構成されることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明の第8の観点に係る増幅回路を用いたイメージセンサは
、前記光電変換素子が、2つの電極に狭持された光導電層と前記光導電層に直列に接続された第2の容量とで構成され、前記第1のトランジスタのドレイン端子が、前記光導電層と前記第2の容量との接点に接続されることを特徴とする。
また、本発明の第9の観点に係る増幅回路を用いたイメージセンサは、前記増幅回路は、ソースフォロワ回路を含む構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、信頼性上の問題を生じることない薄膜半導体を用いた増幅回路を実現することができる。
【0026】
さらに本発明によれば、信頼性上の問題を生じることなく、イメージセンサの高S/N化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面における各構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するために適宜変更して記載している。また、各図面におけるハッチングは、各構成要素を区別するためのものであり、必ずしも切断面を意味するものではない。
【0029】
図1は、本発明に係るイメージセンサの構成を示したものである。基板100上に読み出し配線D1〜D4、走査線G1〜G5が縦横に配置されている。読み出し配線、走査線で区画された位置には、画素200がマトリクス状に配置されている。各読み出し配線は読み出し回路300に接続され、各走査線は走査回路400に接続されている。ここでは、画素が縦横に4×4配置された例を示しているが、画素の数は必要に応じて変えることができるのは言うまでも無い。ただし、走査線の数は画素の縦方向の数よりも1以上多く設ける必要がある。
【0030】
図2は、画素の構成要素を示した回路図である。各画素には光電変換部210、光電変換部に接続された増幅用トランジスタ220、増幅用トランジスタ220の出力を制御する読み出し用トランジスタ230、増幅用トランジスタ220のソース電位を制御する、制御部240とで構成されている。光電変換部は、間接変換方式、直接変換方式のどちらとも用いることができる。
【0031】
図3は、光電変換部に間接変換方式を用いた場合の一構成例を示したものである。この光電変換部は、フォトダイオード212とリセット用トランジスタ211と、図示していないが蛍光体とで構成される。リセット用トランジスタ211のゲート端子は走査線の一つであるGm+1に接続され、フォトダイオード212とリセット用トランジスタ211の接点であるノードaは、増幅用トランジスタ220に接続される。またリセット用トランジスタ211のドレイン端子はバイアス電源Veに接続される。
【0032】
読み出し回路300は、電圧増幅回路や電流−電圧変換回路を読み出し配線の数以上に設けることで構成することができる。
図4は、読み出し回路300を電圧増幅回路で構成した場合の単位回路を示したものである。これは、オペアンプ310の入力抵抗に抵抗311を、負帰還抵抗に抵抗312を接続した構成である。
【0033】
走査回路400は、走査線を順次駆動するパルスを出力する回路であり、例えば液晶表示装置のゲートドライバ回路と同様の構成のものを用いることができる。
【0034】
読み出し回路及び走査回路は、イメージセンサ基板上に形成しても良く、基板上にCOG(チップオングラス)接続したり、ケーブルを介して接続しても良い。
【0035】
先に示したトランジスタは、酸化物薄膜半導体により構成する。光電変換部に間接変換方式を用いる場合は、フォトダイオードとしてa−Si:H(水素化アモルファスシリコン)薄膜を用いることができる。特にp、i、n型の積層構造にすることが性能上望ましい。
【0036】
次に、
図5のタイミングチャートを用い動作について説明する。これは、4×4の画素を有する本発明のイメージセンサの全画素の信号を読み出す期間の動作について記したものである。図中のVa1〜Va4はそれぞれ異なる行の画素のノードaの電位を示しており、Vb1〜Vb4はそれぞれ異なる行の画素のノードbの電位を示している。また、Vgs1〜Vgs4はそれぞれ異なる行の画素の増幅用トランジスタ220のソース−ゲート間電圧を示している。
【0037】
期間Txにおいて、X線が放射され、調査物を透過したX線がイメージセンサに照射される。光電変換部に間接変換方式を用いた場合、イメージセンサに照射されたX線は蛍光体を励起し光を放射させる。蛍光体から放射された光は、フォトダイオード212を照射し、フォトダイオード212でホール、エレクトロンのペアが生成される。ここで、フォトダイオード212はVeに逆バイアスされ、リセット用トランジスタ211が非導通状態であるため、ホール及びエレクトロンはそれぞれ内部電界により逆方向に走行し、フォトダイオード212に蓄積された電荷を減らす。従って、ノードaの電圧が変化することになる。この電荷の変動量をΔQとすると、ノードaの電圧変化量Vsは以下のようになる。
【0038】
【数1】
ここで、Cdはフォトダイオードの容量である。
【0039】
期間T1において、走査線G1に読み出し用トランジスタ230が導通状態となるパルスが印加される。これにより走査線G1に読み出し用トランジスタ230が接続された全ての画素で、読み出し用トランジスタ230が導通状態となる。この期間において制御部240が増幅用トランジスタ220のソース(ノードb)電位を、ドレイン電位(ノードc)と同じに保つ動作を停止する。すると、光電変換部のノードaの電位に応じた電流が、増幅用トランジスタ220のソース−ドレイン間に流れる。これが、読み出し用トランジスタ230を介して読み出し配線に流れ、読み出し回路に入力される。ここで、読み出し回路として
図4に示した構成の回路を用い、抵抗311を十分大きな抵抗値に設定すると、増幅用トランジスタ220は、ソースフォロワ回路として機能するため、増幅用トランジスタ220のソース(ノードb)の電位Vbは以下の式で近似される電圧となる。
【0040】
【数2】
ここで、Vthは増幅用トランジスタ220の閾値電圧である。
【0041】
この電圧Vbが読み出し回路により増幅され出力される。検出回路の出力電圧は入力抵抗311の値R1と帰還抵抗312の抵抗値R2とで以下のように決まる。
【0042】
【数3】
ここで、VbがX線の照射強度に依存した電圧Vsの関数であるから、出力電圧Voutにより、X線の照射強度を測定することが可能となる。
【0043】
期間T2において、走査線G1の電位が読み出し用トランジスタ230を非導通状態とする電位に変わり、走査線G2に読み出し用トランジスタ230を導通状態とするパルスが印加される。これにより、走査線G1に読み出し用トランジスタ230が接続された全ての画素において、読み出し用トランジスタ230が非導通状態となり、制御部240が増幅用トランジスタ220のソース(ノードb)をドレイン(ノードc)と同電位とする。そして、光電変換部のリセットトランジスタ211が導通状態となる。
【0044】
リセットトランジスタ211のドレイン端子はフォトダイオード212をバイアスする電圧Veが印加されており、リセットトランジスタ211が導通状態となることで、フォトダイオード212が逆バイアスされる。ここで示した例では、フォトダイオード212のカソード端子をGNDレベルとしているので、Veは正の電圧とする。
【0045】
またこの期間T2では、走査線G2に読み出し用トランジスタ230が接続された全ての画素で、ノードaの電位に依存した増幅用トランジスタ220のソース(ノードb)の電圧が、読み出し用トランジスタ230を介して読み出し配線に出力され、読み出し回路により増幅され出力される。
【0046】
これら動作を全ての走査線に対して行なうことにより、イメージセンサの全画素の信号が読み出され、フォトダイオードが所定の電圧Veにリセットされる。
【0047】
ノードaの電位は、最大GNDからVeの範囲まで変動するので、増幅用トランジスタ220のドレイン端子に印加する電圧Vpは、少なくともVeにトランジスタの閾値電圧Vthを加えた以上の電圧に設定する。
【0048】
本発明によれば、信頼性上の問題を生じさせることなく、イメージセンサのS/N比を高めることが可能となる。その理由について、以下に説明する。
【0049】
まず高S/N化が実現できる理由について説明する。従来のFPDでは、光電変換部の信号が電荷の形で読み出し回路に転送されていた。一方、検出される信号電荷は数pC程度と小さく、検出回路に要求される精度は1pC以下であった。また、FPDの外形は、通常のCCDセンサやCMOSセンサに比べ遥かに大きくなる為、信号電荷を転送する読み出し配線は長くなり、ノイズの影響を受けやすい。さらにイメージセンサ内で、読み出し配線は他の配線と多くの交差部を持ち、この交差部で形成される容量結合を介してノイズが混入する。読み出し配線の長さはイメージセンサの外形とほぼ等しく、アンテナの様に外乱ノイズの影響も受けやすくなる。従って、従来のFPDのように信号を電荷として読み出すイメージセンサでは、S/N比を高くするのが困難であった。
【0050】
一方、本発明では、信号電荷は増幅用トランジスタで電流増幅され、読み出し回路で電圧として検出される。つまり増幅用トランジスタにより出力インピーダンスを低くできるため、ノイズに強くなるのである。結果として高S/N化が実現できる。
【0051】
次に信頼性上の問題を抑制できる理由について説明する。
図2に示したような増幅用トランジスタ220を画素に設けると、通常、増幅用トランジスタのソース−ゲート間には正の極性の電圧が印加され続ける。これは、ソース電位がゲート電位よりも閾値分だけ低くなるからである。たとえ読み出し用トランジスタ230で、増幅用トランジスタ220のソースが負荷となる読み出し配線や読み出し回路300から遮断されていたとしても、読み出し用トランジスタ230のリークにより、増幅用トランジスタ220のソース電位はゲート電位よりも低くなり、ソース−ゲート間に正の極性の電圧が印加されることになる。
【0052】
図6は、a−Siトランジスタと、酸化物半導体トランジスタのゲートバイアスを印加した際の閾値変動測定した結果である。酸化物半導体の材料としてはIn−Ga−Zn−Oを用いている。これによれば、a−Siトランジスタ、酸化物半導体トランジスタ共に、ソース−ゲート間に正のバイアスを印加し続けると閾値が変動することがわかる。従って、従来のAPS構成の画素では、増幅用トランジスタ220の閾値電圧が変動してしまう。一方、ソース−ゲート間に負のバイアスを印加した場合、a−Siトランジスタでは、閾値電圧が変動するが、酸化物半導体トランジスタでは、閾値電圧が殆ど変動しないことを発明者らは発見した。
【0053】
本発明よるイメージセンサではトランジスタを酸化物半導体で構成している。そして、画素の増幅用トランジスタ220のソース電位を、制御部240により、読み出し用トランジスタ230が導通する期間以外でドレイン電位と同じになるように制御している。ここで、ゲート電位の最大値はVe、ドレイン電位はVpであり、VpをVeよりも高く設定していることから、読み出し用トランジスタ230が同通する期間以外では、ソース−ゲート間電位は負の極性となっている。つまり
図5で示したように、増幅用トランジスタ220のソース−ゲート間電圧Vgs1〜Vgs4は、信号を読み出している期間である読み出し用トランジスタ230が導通している期間を除いて常に負の電圧となるのである。したがって、閾値電圧が殆ど変動しない。よって信頼性上の問題を大幅に抑制することが可能となる。
【0054】
以上の説明では、光電変換部に間接変換方式を用いる例を示したが、直接変換方式を用いても同様の効果が得られる。
図7は、光電変換部に直接変換方式を用いた場合の一構成例を示したものである。この光電変換部は、光導電層213とリセット用トランジスタ211、容量214で構成される。リセット用トランジスタ211のゲート端子は走査線の1つGm+1に接続され、光導電層213の一端と容量214の一端とリセット用トランジスタ211のドレインとが接続されたノードaは、増幅用トランジスタ220のゲートに接続される。また、光導電層213のもう一端はバイアス電源Vfに接続され、容量214のもう一端とリセット用トランジスタ211のソース端子は電源Vhに接続される。この光導電層213には、CdSなどを数百μm以上積層した厚膜を電極で挟んだ構造のものを用いることができる。
【0055】
光電変換部にX線が照射されると、X線は光導電層213で吸収されホール、エレクトロンのペアを生成する。ここで、光導電層213には電圧Vf−Vhが印加されており、リセット用トランジスタ211が非導通であるため、光導電層213で生成されたホール及びエレクトロンは、内部電界により光導電層213内を走行し、電極に保持された電荷を減少させる。
【0056】
動作方法は、間接変換方式と同様の方法を用いることができる。先ず、リセット用トランジスタ211で、ノードaをVhの電位に充電することで容量214の電荷をリセットする。その後、X線が照射されると光導電層213で生成されたホール、エレクトロンのペアにより光導電層213の両端に保持された電荷が減少する。これに伴いノードaの電位が変動する。このVaの値は以下のようになる。
【0057】
【数4】
ここで、ΔQはX線照射により減少した電荷量であり、Cp、Csはそれぞれ、光導電層213の容量と容量214の容量である。従って、想定される最大のΔQmaxを元に、増幅用トランジスタ220のドレイン電圧Vpを以下のように設定する。尚、Vthは増幅用トランジスタの閾値電圧である。
【0059】
上記構成及び動作方法によれば、読み出し用トランジスタ230が導通する期間において、このノードaの電位を増幅用トランジスタ220で電流増幅して読み出すことにより、X線の照射強度に応じた信号電圧を得ることができる。
【0060】
本発明の要点は、イメージセンサの各画素に増幅用トランジスタを配置した構成を用い、そのトランジスタを酸化物半導体で形成する点と、増幅用トランジスタから信号を出力しない期間の殆どの期間において、増幅用トランジスタのソース端子をドレイン端子と同電位にすることである。これにより、先述の効果を得ることが可能となる。
【実施例1】
【0061】
図8は、本発明のイメージセンサの第1の実施例の画素部の構成を示したものである。これは、光電変換部に間接変換方式を用い、制御部の構成を詳細に示したものである。制御部以外の構成は、本発明の実施形態として示した構成と同じである。トランジスタには酸化物半導体を用いる。
【0062】
この実施例における制御部は、増幅用トランジスタ220のソース端子とドレイン端子に並列にトランジスタ241が配置された構成である。トランジスタ241のゲート端子は、制御線Admに接続されている。
【0063】
図9は動作を示したタイミングチャートである。図示していないが、期間Tmの前にX線がイメージセンサに照射されており、画素にはX線照射強度に応じた電荷が発生し、フォトダイオード212のカソード端子が接続されているノードaの電圧がVeよりVsだけ減少しているとする。期間Tmでは、走査線Gmにトランジスタを導通状態とするパルスが印加され、読み出し用トランジスタ230が導通状態となる。制御線Admにはトランジスタを非導通状態とする電位が印加され、トランジスタ241が非導通状態となる。すると、増幅用トランジスタ220のソース−ドレイン間には、ノードaの電圧に応じた電流が流れ、読み出し用トランジスタ230及び読み出し配線Dnを介して、読み出し回路に入力され信号が読み出される。
【0064】
期間Tm+1では、走査線Gm+1にトランジスタを導通状態とするパルスが印加され、リセット用トランジスタ211が導通状態となることで、フォトダイオード212がVeに逆バイアスされる。また、走査線Gmの電位はトランジスタを非導通状態とする電位であり、読み出し用トランジスタ230は非導通状態となる。制御線Admの電位は、期間Tm以外にトランジスタを導通状態とする電位が印加され続けるので、トランジスタ241が導通状態となる。すると、トランジスタ241により増幅用トランジスタ220のソース電位がドレイン電位と等しくVpとなる。従って、増幅用トランジスタ220のソース−ゲート間電圧は、信号を読み出す期間以外は常に負極性の電圧となる。
【0065】
実施例1によるイメージセンサでは、信頼性上の問題を生じさせることなく、イメージセンサのS/N比を高めることが可能となる。
【0066】
S/N比が高くなる理由は、本発明の実施形態によるイメージセンサで説明した理由と同じである。
【0067】
信頼性上の問題を生じさせない理由は、増幅用トランジスタ220が酸化物半導体で構成されており、さらに信号を読み出す期間以外において、トランジスタ241により、増幅用トランジスタ220のソース端子の電圧がドレイン端子の電圧と等しく保たれるため、ソース−ゲート間電圧が負極性電圧となる。従って、本発明の実施形態によるイメージセンサで説明した理由と同じで、信頼性上の問題を生じさせない。
【実施例2】
【0068】
図10は、本発明のイメージセンサの第2の実施例の画素部の構成を示したものである。これは、光電変換部に間接変換方式を用い、制御部の構成を詳細に示したものである。制御部以外の構成は、本発明の実施形態として示した構成と同じである。トランジスタには酸化物半導体を用いる。
【0069】
この実施例における制御部は、増幅用トランジスタ220のソース端子とドレイン端子に並列に、トランジスタ241が配置された構成である。トランジスタ241のゲート端子は、ドレイン端子が走査線Gm+1に接続されたトランジスタ243のソース端子と、ソース端子がGNDに接続されたトランジスタ242のドレイン端子に接続されている。トランジスタ243のゲート端子は走査線Gm+1に接続され、トランジスタ242のゲート端子は走査線Gmに接続されている。ここで図示していないが、トランジスタ241のゲート端子に一端が固定電位に接続された容量を接続しても良い。
【0070】
図11は動作を示したタイミングチャートである。図示していないが、期間Tmの前にX線がイメージセンサに照射されており、画素にはX線照射強度に応じた電荷が発生し、フォトダイオード212のカソード端子が接続されているノードaの電圧がVeよりVsだけ減少しているとする。期間Tmでは、走査線Gmにトランジスタを導通状態とするパルスが印加され、読み出し用トランジスタ230が導通状態となる。同時に制御部のトランジスタ242も導通状態となる。ここで走査線Gm+1はトランジスタを非導通状態とする電位であるので、トランジスタ243は非導通状態である。その為、トランジスタ241のゲート電位がGNDレベルになり、トランジスタ241は非導通状態となる。すると、増幅用トランジスタ220のソース−ドレイン間には、ノードaの電圧に応じた電流が流れ、読み出し用トランジスタ230及び読み出し配線Dnを介して、読み出し回路に入力され信号が読み出される。
【0071】
期間Tm+1では、走査線Gm+1にトランジスタが導通状態となるパルスが印加され、リセット用トランジスタ211が導通状態となることで、フォトダイオード212がVeに逆バイアスされる。同時にトランジスタ243も導通状態となる。走査線Gmの電位はトランジスタを非導通状態とする電位であり、読み出し用トランジスタ230は非導通状態となる。同時にトランジスタ242が非導通状態となる。従って、トランジスタ241のゲート電位は走査線Gm+1に印加された電圧よりもトランジスタ243の閾値電圧分だけ小さい電圧となる。ここで、この期間の走査線Gm+1に印加されるパルスの波高を電圧Vpよりも少なくともトランジスタ243の閾値電圧以上に設定することで、トランジスタ243は導通状態となる。これにより増幅用トランジスタ220のソース電位がドレイン電位と等しくVpとなる。走査線Gm、Gm+1は、次に読み出し動作を行うまでトランジスタを非導通状態とする電位のままであるため、トランジスタ241のゲート電位は、トランジスタ241を導通状態とする電位を保つことになる。ここで、トランジスタ242、243のリーク電流が無視できない場合は、トランジスタ241に容量を接続すれば良い。
【0072】
この動作では、増幅用トランジスタ220のソース−ゲート間電圧は、信号を読み出す期間以外は常に負極性の電圧となる。
【0073】
第2の実施例によるイメージセンサでは、信頼性上の問題を生じさせることなく、イメージセンサのS/N比を高めることが可能となる。
【0074】
その理由は第1の実施例で説明した理由と同じである。
【0075】
さらに第2の実施例によるイメージセンサでは、フォトダイオード212の受光面積を大きくすることが可能となる。
【0076】
その理由は、基板上に配線やトランジスタをレイアウトする場合、配線の面積の方が大きくなるのが普通である。これは、配線が上下、左右に隣接する画素間を結ぶようにレイアウトされることが考えれば明らかである。第2の実施例では、1つの画素に設けるトランジスタの数は増えるが、配線の数は減っている。従って、フォトダイオードの受光面積を大きくすることが可能となる。これにより、S/N比のさらなる向上が得られる。
【実施例3】
【0077】
図12は、本発明のイメージセンサの第3の実施例の画素部の構成を示したものである。これは、光電変換部に間接変換方式を用い、制御部の構成を詳細に示したものである。制御部以外の構成は、本発明の実施形態として示した構成と同じである。トランジスタには酸化物半導体を用いる。
【0078】
この実施例における制御部は、増幅用トランジスタ220のソース端子にソース端子が接続され、ドレイン端子が電源Vpに接続されたトランジスタ244と、増幅用トランジスタ220のソース端子に一端が接続され、もう一端がGND配線に接続された容量245で構成される。トランジスタ244のゲート端子は走査線Gm+1に接続されている。
【0079】
図13は動作を示したタイミングチャートである。図示していないが、期間Tmの前にX線がイメージセンサに照射されており、画素にはX線照射強度に応じた電荷が発生し、フォトダイオード212のカソード端子が接続されているノードaの電圧がVeよりVsだけ減少しているとする。期間Tmでは、走査線Gmにトランジスタを導通状態とするパルスが印加され、読み出し用トランジスタ230が導通状態となる。これにより、増幅用トランジスタ220のソース−ドレイン間には、ノードaの電圧に応じた電流が流れ、読み出し用トランジスタ230及び読み出し配線Dnを介して、読み出し回路300に入力され信号が読み出される。
【0080】
期間Tm+1では、走査線Gm+1にトランジスタが導通状態となるパルスが印加され、リセット用トランジスタ211が導通状態となることで、フォトダイオード212がVeに逆バイアスされる。同時にトランジスタ244も導通状態となる。これにより容量245に電圧Vpが書き込まれる。ここで、容量245の容量値を、トランジスタ230のリーク電流と読み出し周期との積で決まるリーク電荷が生じても電圧変動が無視できる程度の値に設定すると、増幅用トランジスタ220のソース電位は、ほぼVp電位を保つ。
【0081】
この動作では、増幅用トランジスタ220のソース−ゲート間電圧は、信号を読み出す期間以外は常に負極性の電圧となる。
【0082】
第3の実施例によるイメージセンサでは、信頼性上の問題を生じさせることなく、イメージセンサのS/N比を高めることが可能となる。
【0083】
その理由は第1の実施例で説明した理由と同じである。
【0084】
さらに第3の実施例によるイメージセンサでは、フォトダイオード212の受光面積を大きくすることが可能となる。
【0085】
その理由は、制御部を構成するトランジスタの数が第1の実施例と等しく、配線の数は第1の実施例よりも少ないからである。これにより、S/N比のさらなる向上が得られる。
【0086】
上記に説明した本発明のイメージセンサは、以下のように製造することができる。
【0087】
図14は、本発明のイメージセンサで、光電変換部に間接変換方式を用いた場合のデバイス構造を示したものである。
【0088】
基板510の上にゲート金属520の積層し、パターニングを行なう。基板510には、ガラス基板などを用いることができる。ゲート金属520には、Al合金などを用いることができる。次に、ゲート絶縁膜521を成膜する。ゲート絶縁膜521には、SiO
2やSiO
2とSiNの積層膜などを用いることができるが、次に積層する酸化物半導体との界面はSiO
2となるようにすることが望ましい。その後、酸化物半導体層522を積層し、パターニングを行なう。酸化物半導体層522には、In−Ga−Zn−Oなどを用いることができる。次に、チャネル保護膜523となるSiO
2を成膜し、パターニングを行い、ソース、ドレイン金属524を積層、パターニングを行なう。ソース、ドレイン金属524には酸化物半導体とのオーミック性を考慮し、Mo、Ti及びその積層膜などを用いる。次に層間膜525を積層する。層間膜525にはSiO
2、SiO
2とSiNの積層膜などを用いることができる。ここまでがトランジスタ形成の為のプロセスとなる。
【0089】
次にフォトダイオードの形成を行なう。層間膜525の上にフォトダイオードの下部電極530を積層し、パターニングする。下部電極530にはCr、Al合金などを用いることができる。その上にn+a−Si(540)、i−a−Si(541)、p+a−Si(542)を連続成膜し、上部電極となる透明金属膜550を成膜する。透明金属膜550にはITOなどを用いることができる。これらをパターニングした後に、平坦化膜551を積層する。平坦化膜551にはアクリル樹脂等を用いることができる。その上にバイアス配線となる金属膜552を成膜、パターニングする。バイアス配線552にはAl合金等を用いることができる。その上に保護膜553を形成し、その上に蛍光体560を積層する。保護膜553にはアクリル樹脂等を用いることができ、蛍光体560にはCsIの柱状結晶などを用いることができる。
【0090】
尚、各種金属膜間を電気的に接続するためのコンタクトホールは、必要に応じてゲート絶縁膜521、層間膜525、平坦化膜551、保護膜553に形成する。
【0091】
図15は、本発明のイメージセンサで、光電変換部に直接変換方式を用いた場合のデバイス構造を示したものである。
【0092】
トランジスタを形成するまでのプロセスは、間接変換方式と同じである。層間膜525の上に、下部電極530を積層し、パターニングする。下部電極530にはCr、Al合金などを用いることができる。その後、光導電層570を積層する。光導電層570にはCdSeなどを用いることができる。その上に上部電極580となる金属膜を積層する。上部電極580には、ITOやAl等を用いることができるが、X線の透過率を考慮し原子数の少ないものを選択するのが望ましい。
【0093】
各種金属膜間を電気的に接続するためのコンタクトホールは、必要に応じてゲート絶縁膜521、層間膜525等に形成する。