特許第6132291号(P6132291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132291
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】圧縮リミッタを有するガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20170515BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F16J15/08 M
   F02F11/00 D
【請求項の数】15
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-512624(P2015-512624)
(86)(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公表番号】特表2015-517639(P2015-517639A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】US2013025667
(87)【国際公開番号】WO2013172886
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2016年1月6日
(31)【優先権主張番号】13/475,025
(32)【優先日】2012年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダビッドソン,マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】レスナウ,エドワード,ザ・フォース
(72)【発明者】
【氏名】ラフレンズ,クリス
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−314691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材との間に封止を確立するためのガスケットであって、
少なくとも1つの開口と、平面から突出する圧縮ビードとを有する少なくとも1つの層を備え、前記圧縮ビードは、少なくとも前記開口の周りを延在し、ガスケットはさらに、
前記少なくとも1つの層と一体に形成されるとともに前記圧縮ビードから間隔を空けられた少なくとも1つのストッパを備え、
前記ストッパは、平坦な上昇面へ上方に延在する外壁と、前記上昇面から下方内表面へ下方に延在する内壁とを含み、前記下方内表面は、前記内壁の周囲の間を連続的に延在するとともに前記上昇面に対して凹んでおり、前記平坦な上昇面は、囲い形状を通って延在する、ガスケット。
【請求項2】
前記ストッパは、逆円錐台の開口を有する円錐台の形状を有する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
記平坦な上昇面は円環形状を有する、請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記少なくとも1つのストッパは、複数のストッパとしてさらに規定される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項5】
複数の前記ストッパは、前記開口とは反対側において前記圧縮ビードに取り付けられる、請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記少なくとも1つの圧縮ビードおよび前記少なくとも1つのストッパは同じ層上に形成される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項7】
前記少なくとも1つの圧縮ビードと前記少なくとも1つのストッパとを有する前記少なくとも1つの層は機能層である、請求項6に記載のガスケット。
【請求項8】
シリンダヘッドとエンジンブロックとの間に気密封止を確立するためのシリンダヘッドガスケットであって、
少なくとも1つの開口と少なくとも1つの圧縮ビードとを有する少なくとも1つの機能層を備え、前記少なくとも1つの圧縮ビードは、前記少なくとも1つの開口の周囲を少なくとも部分的に延在し、シリンダヘッドガスケットはさらに、
前記少なくとも1つの機能層と一体に形成されるとともに前記少なくとも1つの圧縮ビードおよび前記少なくとも1つの開口から間隔を空けられた少なくとも1つのストッパを備え、
前記少なくとも1つのストッパは、逆円錐台の開口を示す上部を有する円錐台の形状を有する、シリンダヘッドガスケット。
【請求項9】
前記少なくとも1つのストッパは、複数のストッパとしてさらに規定される、請求項8に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項10】
前記ストッパは上昇面を有する、請求項8に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項11】
前記ストッパの前記上昇面は円環状の形状を有する、請求項10に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項12】
前記ストッパは、前記上昇面に対して凹んだ窪み面を有する、請求項11に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項13】
前記ストッパは前記少なくとも1つの圧縮ビードと同じ機能層内に一体に形成される、請求項8に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項14】
前記ストッパは、前記少なくとも1つの圧縮ビードにおいて前記少なくとも1つの開口とは反対側から間隔を空けられる、請求項8に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項15】
ガスケットを製造する方法であって、
少なくとも1つの開口と前記少なくとも1つの開口を少なくとも部分的に囲う少なくとも1つの圧縮ビードとを有する機能層を準備するステップと、
上部を有する円錐台の形状と上部の逆円錐台の形状とを有する少なくとも1つのストッパに加圧するステップとを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、概して、ともにクランプされる2つの部材間の気密封止を確立するように使用されるタイプのガスケットに関し、特にシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
シリンダヘッドおよびエンジンブロックのような、ともにクランプされる2つの部材間において気密封止を確立する際、1つ以上の層を要するシリンダヘッドガスケットを使用することが一般的である。一般的に、時に機能層とも呼ばれる、層の少なくとも1つは、気密封止を確立するために、シリンダヘッドとエンジンブロックとの間に挟まれた時に弾性的に変形する圧縮ビードを有する。ガスケットは、1つ以上の距離層も含み得て、距離層は、ストッパを積載して圧縮ビードの圧縮を制限するように構成され得て、これによって疲労抵抗を向上させる。残念ながら、シリンダヘッドをエンジンブロックに固定している間、圧縮ビードは過剰に圧縮され、実質的に平坦化され得る。圧縮ビードが過剰に圧縮されると、気密封止を維持する能力が失われることに加え、疲労クラックが最初のクランプ時または使用時に圧縮ビードの領域において形成され得る。疲労クラックは、シリンダ内において燃焼時に上方に持ち上げられて圧縮によりガスケットに戻るシリンダヘッドの動きによっても形成され得る。疲労クラックは、形成された場合、静的ガスケットが気密封止を維持する能力を究極的には低下させ、それによって、エンジンの寿命および性能を減じる。
【0003】
一部のガスケット製造業者は、シリンダヘッドとエンジンブロックとの間における圧縮ビードの平坦化を防ぐための、またはそれを少なくとも減らすための圧縮リミッタを含む複数層ガスケットを製造し始めている。しかしながら、これらの圧縮リミッタは、多くの場合、生産のコストが高く労力を要する、または圧縮ビードの平坦化を十分に防ぎ得ない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明の一局面は、第1の部材と第2の部材との間に封止を確立するためのガスケットを提供し、ガスケットは、少なくとも1つの開口と少なくとも1つの圧縮ビードとを有する少なくとも1つの層を含む。少なくとも1つの圧縮ビードは、平面から突出し、開口の周りを少なくとも部分的に延在する。ガスケットは、層の少なくとも1つと一体に形成されるとともに圧縮ビードから間隔を空けられた少なくとも1つのストッパまたは圧縮リミッタをさらに含む。ストッパは、概して平坦な上昇面へ上方に延在する外壁と、上昇面から下方内表面へ下方に延在する内壁とを含む。下方内表面は、内壁の周囲の間を連続的に延在するとともに上昇面に対して凹んでいる。概して平坦な上昇面は、円環形状、三角形状、四角形状などの囲い形状を通って延在する。ストッパは、迅速かつ低コストで形成され、圧縮ビードの完全な平坦化を防止するために層の厚さを効果的に増大させ得る。
【0005】
本発明の他の局面によれば、ガスケットは、エンジンブロックとシリンダヘッドとの間に気密封止を確立するためのシリンダヘッドガスケットである。機能層は、複数のストッパを含み、各ストッパは、上部を有する概して円錐台の形状と、その上部に形成された逆円錐台の形状とを含み、二重壁の円錐形状となる。
【0006】
本発明のこれらならびに他の特徴および利点は、以下の詳細な記載を添付の図面と関連して考慮しながら参照することにより、より一層理解され、容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例示的なガスケットを示す上面立面図である。
図2】冷却通路開口およびボルト取付開口を囲う例示的なガスケットの一部を示す拡大図である。
図3】複数のストッパを含む、例示的なガスケットの図2に示される部分とは異なる部分を示す他の拡大図である。
図4図3の4−4線に沿った例示的なガスケットを示す断面図である。
図5】例示的なストッパの1つを示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
可能な実施形態の説明
図面を参照すると、対応する部品が複数の図を通して同様の符号で示され、本発明の一局面に従って構成されたガスケット20は、概して図1に示される。例示的なガスケット20は、シリンダヘッド(図示せず)とエンジンブロック(図示せず)との間に気密封止を確立するように構成されるが、多くの他の自動車への用途または自動車でないものへの用途にも使用され得る。すなわち、ガスケット20は、任意の望ましいタイプの第1および第2の部材を封止するために採用され得る。
【0009】
例示的なガスケット20は、当該技術において一般的なように、エンジンブロックのシリンダボア(図示せず)に対応して配置およびサイズ設定された複数のシリンダボア開口24を有する単一の機能層22を含む。また、例示的な機能層22は、当該技術において一般的なように、エンジンブロックとシリンダヘッドとの間にエンジン冷却剤を運ぶための流体通路(図示せず)に対応する複数の流体通路開口26と、取付ボルト(図示せず)を受けてシリンダヘッドをエンジンブロックと接合させる複数のボルト開口28とを含む。例示的なガスケット20は単一の機能層22のみを含み、距離層を含まないが、ガスケット20は、機能層22に加えて、任意の望ましい数の機能層および/または距離層を含み得ることを理解すべきである。機能層22は、ばね鋼から形成されるのが好ましい。しかしながら、任意の適した弾性材料から形成され得ることを理解すべきである。
【0010】
例示的な機能層22は、複数の圧縮ビード30を含み、圧縮ビード30の各々は、シリンダヘッドとエンジンブロックとの間に気密封止を確立する弾性的な変形のために、開口24,26,28の少なくとも1つの周囲を囲う。圧縮ビード30は、特定の用途に応じて、ハーフビード(half beads)または完全圧縮ビード(full compression beads)であり得る。機能層22は、シリンダボア開口24の各々および流体通路開口26の各々の周りを延在する少なくとも1つの圧縮ビード30を含むのが好ましい。
【0011】
例示的な機能層22は、加えて、シリンダヘッドをエンジンブロックに最初に取り付ける時およびシリンダ内の点火の間の両方においてエンボス部が圧縮することができる距離を制限するために特定の所定領域内において機能層22の厚さを効果的に増大させる複数のストッパ32または圧縮リミッタを含む。これらの領域において機能層22の有効な厚さを増大させることには、機能層22内における疲労クラックの形成のリスクを減少させる効果がある。加えて、圧縮ビード30の完全な平坦化を防止することにより、ストッパ32は、エンジンブロックとシリンダヘッドとの間の封止を向上させる。
【0012】
例示的な実施形態において、ストッパ32は、圧縮ビード30から機能層22へ一体的に形成される。しかしながら、複数層を有するガスケットについては、ストッパは任意の望ましい層に形成され得る。たとえば、ガスケットが距離層を有する場合、ストッパは、機能層または距離層のいずれかに形成され得る。ガスケットが複数の機能層を含む場合、ストッパは、機能層の一部または全てに形成され得る。図3に示されるように、例示的なストッパ32は、圧縮ビード30に隣接する機能層22の所定領域において、これらの領域のみにおいて機能層22の厚さが効果的に増大するように、互いに非常に近接して取り付けられる。しかしながら、ストッパ32は、それらが圧縮ビード30から間隔を空けられている限り、ガスケット20の任意の層の任意の望ましい平坦な表面に形成され得ることを理解すべきである。たとえば、ストッパ32は、圧縮ビード30と、それらの開口24,26,28との間に形成され得る、および/または、開口24,26,28とは反対側において圧縮ビード30から間隔を空けられ得る。一般的に、互いに近いストッパ32は、互いに距離を空けられたストッパ32よりも高い剛性をもたらす。しかしながら、ストッパ32は、任意の望ましい距離だけ互いに間隔を空けられ得る。
【0013】
ここで図5を参照すると、例示的な実施形態のストッパ32の各々は、概して円錐台の形状を有し、形状の上部において逆円錐台の開口を有し、二重壁の円錐形状がもたらされる。例示的な二重壁を有する円錐形ストッパ32は、円環形状の概して平坦な上昇面34と、上昇面34に対して凹んだ概して平坦な窪み表面36とを含む。外壁38は、ストッパ32を囲う機能層22の領域から上昇面34へ上方に延在し、内壁40は、上昇面34から窪み表面36へ下方に延在する。ストッパ32の外壁38および内壁40は、ストッパ32を囲う機能層22の部分に対して45度から90度の角度で延在することが好ましい。この構成は、シリンダ内における点火に応答して、または点火の間に動作するシリンダヘッドからの力に抗する望ましい程度の剛性をもたらすことが分かった。動作時において、ストッパ32は、機能層22の特定の領域に剛性をもたらし、シリンダ内における点火時および点火の間における圧縮ビード30の完全な平坦化を防止し、圧縮ビードの膨張と縮小を制限する。たとえば、完全に圧縮された凸部の高さは、図4において点線42で示される。示されるように、完全に圧縮された高さは、ストッパ32の平坦な隣接部分に対して上昇し、ストッパ32が圧縮ビード30の完全な平坦化を防止する。
【0014】
例示的な窪み表面36は、概して平坦であり、開口、リブ、またはいずれの他の形状部分も含まない。加えて、図4に示されるように、窪み表面36は、ストッパ32に隣接する機能層22の一部とともに概して平坦である。しかしながら、必要であれば、凹面36はストッパ32に隣接する機能層22の部分に対して交互に高低が付けられ得ることを理解すべきである。加えて、例示的な実施形態において、ストッパ32を含む機能層22の所定領域は、機能層22の他の部分に対して凹んでいる。これは、機能層22の両側、すなわち上部および底部の両方において、機能層22の厚さを効果的に増大させることから有益であり得る。しかしながら、ストッパ32を含む機能層の所定領域は、代替的に、機能層22の他の領域とともに平坦である、またはそれに対して上昇し得ることを理解すべきである。
【0015】
ネガティブ型の凹んだ内部領域を有する上昇した窪み部を有する限りにおいて、図に示すとともに上に記載された二重壁の円錐形状以外の多くの形態をとり得ることを理解すべきである。加えて、ストッパ32の上昇面34は、たとえば、正方形、三角形、六角形、楕円形、または不確定な形状を含む、任意の望ましい囲い形状を通って延在し得る。
【0016】
ストッパ32は、圧縮ビード30に沿ってプレス加工またはエンボス加工によって形成されるのが好ましい。したがって、ストッパ32は、迅速に形成されるとともに、製造コストもしくは時間が非常に小さくなる、追加で発生しない。しかしながら、ストッパ32は、代替的に、圧縮ビード30の形成の前もしくは後に形成することができ、ストッパ32は、任意の望ましい成形工程を開始て形成され得る。
【0017】
明らかに、本発明に対する多くの変更および変形が上記の教示に鑑みて可能であり、具体的に記載されていない点についても添付の請求項の範囲内において実施され得る。
図1
図2
図3
図4
図5