特許第6132295号(P6132295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132295
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 5/16 20060101AFI20170515BHJP
   B63H 25/38 20060101ALI20170515BHJP
   B63B 35/73 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B63H5/16 A
   B63H25/38 101
   B63B35/73 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-129083(P2012-129083)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-252774(P2013-252774A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510288910
【氏名又は名称】株式会社エスアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 清一
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−037693(JP,U)
【文献】 米国特許第04609360(US,A)
【文献】 西独国特許出願公開第02234813(DE,A)
【文献】 米国特許第03823684(US,A)
【文献】 特開平09−249192(JP,A)
【文献】 実開昭48−036595(JP,U)
【文献】 特開平04−266590(JP,A)
【文献】 米国特許第03937173(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H,B63B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船底において、船首方向から船尾方向に向けて形成した水流形成凹路内の船尾側にプロペラと舵を配置して成る船舶において、前記プロペラの後方であって水流形成凹路内に舵を配設すると共にこの舵の可動側を船首方向に向けて形成したこと、を特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターボート、遊覧船、客船、貨物船あるいは軍艦、船外機付ボート等の船舶に関し、更に詳しくは、これらの船舶において推進性能を向上させて省エネ化を図り、加えて操舵性能を向上させた船舶に関し、更に加えて救助用の船舶においては水面の浮遊物や水中の障害物等により舵行が阻害されない船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の船舶は、その推進用のプロペラ(スクリュー)及び舵は、船体の後底部において露出しており、この形態は動力で推進する方式となって以来基本的には変わっていない。
一方、推進性能の向上と操舵性能の向上を図る提案は多数あり、その例を次に紹介する。
【0003】
推進性能向上
【特許文献1】(特開2011―225169号公報) 船尾部に船尾部から船体後方向に突出させて、プロペラの回転軸を回転可能に支持する船尾管を設けた船舶において、船尾部の左右両側に夫々配置され、船尾管近傍の船尾部から船体幅方向外側及び船体上方向に向かって延びると共に船尾部に生じる船尾渦Sを船尾渦Sの渦中心Xから半径方向でさえぎるフィンを備えた船舶。
【0004】
【特許文献2】(特開2011―140293号公報) プロペラ前進回転方向と逆方向の旋回水流を増大させてプロペラに流入させることで、プロペラ後方の回転流の減少を増大させて推進効率向上を増大させる一方、装置自体の抵抗増加の増大は防止でき、比較的簡素な構成により優れた効果を有する船舶推進性能向上装置として従来のフィンより大きめのひねり角度を有する後フィンを設け、その前方域に従来のフィンより小さめのひねり角度を有する前フィンを設けることにより、その為に上フィン及び後フィン自体の抵抗が従来のものより増大されないで、従来のものよりプロペラ後方回転流減少効果が増大されて、結果として従来のものより推進性能向上効果が向上されて、船体が航海するときの所要馬力が低減される船舶。
【0005】
【特許文献3】(特開2011―121569号公報) リアクションフィンで発生する渦によりプロペラが損傷を受けることが防止される船舶の推進性能を向上させるため、推進性能向上装置は、プロペラの回転方向と逆向きの旋回流を発生させるようにプロペラの前方側に配置され、プロペラの回転軸Sを中心に放射状に延びる複数のリアクションフィンは、斜め上方に延びるリアクションフィンと、水平方向又は斜め下方に延びるリアクションフィンとを備え、回転軸Sからリアクションフィンの翼端までの第1距離は、プロペラのプロペラ半径より大きい。回転軸Sからリアクションフィンの翼端までの第2距離は、プロペラ半径より小さく設定する。
【0006】
操舵性能向上
【特許文献4】(特開2009―119934号公報) 従来から使用されている倒立台形の側面形状を具えた船舵の下端部の改良により、簡易な手段で、船舶の直進中の舵抵抗の減少を図ると共に、微小舵角の際の当て舵抵抗も極力減少させるようにして、船舶の保針性能の向上を図れるようにするため、船尾に設けられる舵が、倒立台形状を有する舵本体の下端に、翼型の縦断面を有する偏平な紡錐体としての付加物を外方へやや張り出すようにして備えており、同付加物の縦断面の中心線は、後方へ斜め上方に傾斜して、その傾斜角αは4〜10度に設定すると、付加物により、航行中に舵付近における船底部後方への流れを受けて揚力を発生し、その前向きの成分は推力として作用するため、舵抵抗の減少がもたらされるほか、操舵時の操舵力の増加を期待することができる。
【0007】
【特許文献5】(特開2007―186204号公報) 舵抵抗の増加をできるだけ小さく抑えた高揚水の舵形状を得るため、舵本体の水平断面形状において、前端部形状が円弧状またはこれに類似する形状からなり、舵本体の後方に向かって徐々に断面幅は増加して最大幅に達し、外側に凸の形状から緩やかな外側に凹の形状に変化しながら断面幅が減少してゆき、その後、後端まで、ほぼ平行な直線で形成される直線状部分を有し、有限幅をもつ後端を有する舵形状とする。
【0008】
【特許文献6】(特開2005―246996号公報) 軸心におけるプロペラ府お後流の回転エネルギーを効率よく揚力に変換して推進性能の向上を図ると共に、舵面積増加による舵性能の向上を図ることができる船舶用舵を得るため、船舶のプロペラ後方に配置される舵において、舵本体の前方又は斜め前方に、プロペラ後流を受けて揚力を発生するフィンを、該舵本体との間にプロペラ後流が流入する隙間Sを有して、該フィンのスパン方向が舵の上下方向になるように設ける。
【0009】
しかし、上記推進性能の向上手段にあっては、プロペラの位置はその全体が水中に位置するため、プロペラに作用する抵抗は波動抵抗を受けて推力が減殺されると共に後方に向けた推力が分散されることから、プロペラで発生した推力は可成り減少する。
【0010】
次に、上記操舵性能の向上手段にあっては、舵に作用する水の抵抗が操舵力になるがこ
の場合も舵はその全体が水中に位置するため、方向を決定づける水との接触とこの接触により発生する舵力は周囲の水中に分散し、十分な操舵力が得られない。
【0011】
以上で説明した課題は、船舶についての永遠の課題として、その改良、提案がなされ
て来ているが、現在に至っても決定的な改善案は提案されていない。
【0012】
また、従来の船舶であって、救助艇とか船外機付の場合、水面に浮遊物があったり、薄瀬のために岩があってプロペラや舵を損傷する危険があるため、目的場所へ近づけないことがある。
【0013】
また、船外機付ボート等の場合、船外機が故障すると、帰航できなくなるため、通常は予備機を積んであるが、この予備機の着け替えに特に一人の場合に時間と手間がかかるという問題がある。また、船外機付のボートの場合、地上(砂浜)に引き上げたり地上から水中に戻す際には、プロペラが邪魔になることから、いちいち船外機を船上に揚げておく必要があり、面倒である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、推進性能を向上させて燃料量の低減を図ると共に操舵性能を向上させて航行の安全性を確保することが可能であると共に船外機の場合には海上で簡単にこの船外機の交換が可能な船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、船底において、船首方向から船尾方向に向けて形成した水流形成凹路内の船尾側にプロペラと舵を配置して成る船舶において、前記プロペラの後方であって水流形成凹路内に舵を配設すると共にこの舵の可動側を船首方向に向けて形成したことを特徴とするものある。
【0016】
この発明によると、プロペラは水流形成凹路内において船尾側に位置するため、プロペラで発生した推力は水流形成凹路内において集中的に後方に至る強力な水流をつくり、水流は船尾に開口した流出口から強力なジェット水流となって放出されるため、水中に全体が露出していた従来のプロペラによる推力に比較して、船舶に作用する推進力はプロペラによる推進力と凹路内のジェット流水による推力が加わり、格段に向上し、船舶の速度の向上と燃料費の節減が可能になる。
【0017】
また、舵の向きは従来の後向きではなく、船尾側においてプロペラの後方に配置すると共にその可動側を前向き(従来とは舵の向きが逆)としたことにより、プロペラで発生した強力な水流をこの前向きの舵で受けて、操舵力が向上し、従来に比較して旋回半径を縮小して操舵性の向上と万一の場合に危険の回避を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、舵を水流形成凹路内に配設し、その可動側を船首方向に向けて設定したことにより、操舵性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る船舶の説明図
図2】水流形成凹路及びプロペラ及び舵の説明用側面図
図3】水流形成凹路及びプロペラ及び舵の説明用平面図
図4】水流形成凹路及びプロペラ及び舵の説明用後面図
図5】水流形成凹路の説明図
図6】船底の対称位置に水流形成凹路とプロペラ及び舵を形成した実施例の説明図
図7】船底に堰壁で水流形成凹路を形成した実施例の説明図
図8】船外機の船底面の説明図
図9】船外機の側面図
図10】船外機を船尾方向から見た正面図
図11】船外機の取り付け状態の側面図
図12】(A)〜(C)船外機の操舵例の説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
図1ないし図4に基づいて請求項1に記載した本発明の実施例を詳細に説明する。
図1ないし図4において、符号の1は船舶全体を示し、2は船底である。3はこの船底の中央において、船尾4方向に向けて形成された水流形成凹路であって、この水流形成凹路3は、船首側はゆるやかなスロープ5で形成され、船尾4側に向けては断面逆U字状に形成された水路である。
【0021】
6は、水流形成凹路3内であって、その船尾4側に配設されたプロペラであって、動力源7により駆動される。
【0022】
8は、前記プロペラ6と水流形成凹路3の船尾開口部3a間に配設された舵であって、この舵8は、軸9に対して可動側8aが船首側を向くように取り付けられていて、操舵機10により操舵が行われる。
【0023】
以上の構成からなる船舶は、プロペラ6の回転により、水流形成凹路3内に水流が発生し、この水流により船舶1は前進する。勿論プロペラ6を反回転すると船舶1は後進する。
【0024】
この、前進に合わせて舵8の可動側8aを左方向(反時計方向)に一定の角度回転すると、水流形成凹路3内の流水は舵8の前面に当たり、船尾4が反時計方向に振られることにより、船舶1は左旋回を行う。
【0025】
舵8を時計方向に回転すると、上記とは反対に船舶1は右旋回を行う。
【0026】
このように、船舶1のプロペラ6は、制限された空間内(水流形成凹路3内)において回転しこの制限された空間内の水により反力を得て前進するため、プロペラ6による推力が有効に水流形成凹路3内の水に伝わり、大きな推進力となって船舶1に伝わる。また、水流形成凹路3内の区画された空間内の水は、船尾4の開口部3aからジェット流となって流出するため、このジェット流による推力も船舶1に作用する。
【0027】
一方、舵8は、前向きに形成されているため、水流形成凹路3内の流水は舵8に当たり、この舵8の向きと反対側の空間から船尾4側に流水するため、旋回力がこの流れにより更に高まる。この点、従来の後向きの舵の場合、舵に作用する水の抵抗分のみが旋回力に寄与するため、旋回半径は大きくならざるを得なかった。
【符号の説明】
【0028】
1 船舶
2 船底
3 水流形成凹路
4 船尾
5 スロープ
6 プロペラ
7 動力源
8 舵
8a 可動側
9 支軸
10 操舵機
11a、11b 堰壁
12 救助艇
13 縦溝
14 船外機
14a 予備用船外機
15 ガード板片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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