(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132313
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】トレーラの16輪サスペンションシステム
(51)【国際特許分類】
B60G 5/00 20060101AFI20170515BHJP
B60G 11/27 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
B60G5/00
B60G11/27
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-256665(P2014-256665)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-117330(P2016-117330A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】515280034
【氏名又は名称】名北技研販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 将也
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06286857(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0175806(US,A1)
【文献】
米国特許第07077410(US,B2)
【文献】
米国特許第07731211(US,B2)
【文献】
米国特許第05083812(US,A)
【文献】
米国特許第03140880(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 5/00
11/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラの後部に設けられ、車体幅方向に8車輪を1列として、車体前後方向に2列の計16輪の車輪が、4輪ずつ装着される4基のエアサスペンションユニットからなり、
前記エアサスペンションユニットは、中心軸線が、車体幅方向、且つ、水平となるようにトレーラの車体フレームに設けられた支持軸と、一端が前記支持軸に支持され、該支持軸を中心として車体前後方向の鉛直面内で揺動自在とされたビームと、を有してなり、且つ、前記ビームの車体幅方向両側に各2車輪が配置可能とされ、前記ビームの上側で、前記車輪の車軸よりも前記支持軸側の位置に1基のブレーキ装置が配置され、前記ビームに対して、前記支持軸と反対側の位置には、ショックアブソーバが前記車体フレームに連結されて配置されたトレーラの16輪サスペンションシステムであって、
前記車輪の車軸が挿通されるトラニオンシリンダを備え、一端が前記ビームの他端に支持されるトラニオンブロックと、
前記トラニオンブロックの他端と前記車体フレームとの間に装架されるエアベローズと、
を有してなり、
前記トラニオンブロックは、
前記トラニオンシリンダの下側位置の、前記トラニオンシリンダと平行な面内で、車体前後方向に配置され、前記ビームの他端に、これと同軸的に連結されたトラニオンシャフトと、
前記トラニオンシリンダ、及び、前記トラニオンシャフトが挿通されるトラニオンシャフト挿通部を備えたトラニオン部と、
を有し、
前記ショックアブソーバは2本設けられ、各々の一端が、前記エアベローズの下側位置で、前記トラニオンブロックの車体幅方向両側位置に連結されていることを特徴とするトレーラの16輪サスペンションシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記トラニオンブロックは、前記支持軸の車体前後方向後側に配置され、前記エアベローズは、前記トラニオンブロックの車体前後方向後側に配置されていることを特徴とするトレーラの16輪サスペンションシステム。
【請求項3】
請求項2において、
前記トラニオンブロックの他端にはトラニオンフランジが設けられ、このトラニオンフランジには、前記エアベローズの下端を支持するスプリングブラケット及び前記ショックアブソーバの一端を支持するアブソーバブラケットが設けられていて、
前記支持軸は車体フレームの下側に、これと一体に設けられた支持軸ブラケットにより支持され、
前記4基のうち前側の2基のエアサスペンションユニットにおける前記ショックアブソーバの他端は、前記4基のうちの後側の2基のエアサスペンションユニットにおける前記支持軸ブラケットに支持されていることを特徴とするトレーラの16輪サスペンションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量の大きい精密機械を含む種々の重機を積載するのに適した、16輪の車輪を有するトレーラの16輪サスペンションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
後部
に多数の車輪を備えた重機用トレーラとして、例えば特許文献1に開示されているような16輪タイプのものがある。
【0003】
車輪の数が16輪の場合の重機用トレーラ1は、
図7及び
図8に示されるように、トレーラ後部に軸2A、2Bの2軸を備え、それぞれの軸位置に4本のアクスル3A〜3Dが設けられ、それぞれのアクスル3A〜3Dの両側には2本の車輪Wが一対として装着され、前側のアクスル3A、3Cと、後側のアクスル3B、3Dが、それぞれ軸廻りに回転自在にウォーキングビーム4A、4Bによって結合され、これらのウォーキングビーム4A、4Bが、車体フレーム5に固定されたブラケット6A、6Bに挿入されたトラニオンシャフト7A、7B
(図9A、図9B参照)に回転自在に装着された構成とされている。
【0004】
このようなトレーラの16輪サスペンションにおいては、大型の重機などを運ぶものであるため、板ばねなどのクッション部材を設けることが無く、通常のサスペンションと比較してクッション性に劣るという問題点があった。
【0005】
特に、
図8に示されるように、軸2Aと2Bとが、ウォーキングビーム4A又は4Bを介して繋がっていて、
図9Aに示された状態から、例えば道路上の石などの物体を、アクスル3Aに支持される前側の車輪Wが乗り上げる場合、
図9Bに示されるように、前側の車輪Wの乗り上げ高さに対応して後側のアクスル3Bに支持される車輪Wが押し下げられる。
【0006】
即ち、軸2A、2Bがウォーキングビーム4A(4B)を介して繋がっていると、一方の車輪Wから対応する軸2A又は2Bが受けた影響が、直接他方の軸及び車体側に伝達されてしまうという問題点があった。
【0007】
また、
図10に示されるように、車体幅方向8輪のうち、例えば、1輪が乗り上げたとき(片側乗り上げ)は、車体フレーム5が車体幅方向に傾いてしまうという問題点があった。
【0008】
このため、従来の16輪サスペンション構造のトレーラでは、例えば重量のある精密機械などを搬送することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−257265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであって、重量のある精密機械などを含む多種多様の重量物の運搬を可能とするトレーラの16輪サスペンションシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、以下の実施例により上記課題を解決することができる。
【0012】
(1)トレーラの後部に設けられ、車体幅方向に8車輪を1列として、車体前後方向に2列の計16輪の車輪が、4輪ずつ装着される4基のエアサスペンションユニットからなり、前記エアサスペンションユニットは、中心軸線が、車体幅方向、且つ、水平となるようにトレーラの車体フレームに設けられた支持軸と、一端が前記支持軸に支持され、該支持軸を中心として車体前後方向の鉛直面内で揺動自在とされたビームと、を有してなり、且つ、前記ビームの車体幅方向両側に各2車輪が配置可能とされ、前記ビームの上側で、前記車輪の車軸よりも前記支持軸側の位置に1基のブレーキ装置が配置され、前記ビームに
対して、前記支持軸と反対側の位置には
、ショックアブソーバが
前記車体フレームに連結されて配置されたトレーラの16輪サスペンションシステムであって、前記車輪の車軸が挿通されるトラニオンシリンダを備え、一端が前記ビームの他端に支持されるトラニオンブロックと、前記トラニオンブロックの他端と前記車体フレームとの間に装架されるエアベローズと、を有してなり、前記トラニオンブロックは、前記トラニオンシリンダの下側位置の、前記トラニオンシリンダと平行な面内で、車体前後方向に配置され、前記ビームの他端に、これと同軸的に連結されたトラニオンシャフトと、前記トラニオンシリンダ、及び、前記トラニオンシャフトが挿通されるトラニオンシャフト挿通部を備えたトラニオン部と、を有し、前記ショックアブソーバは2本設けられ、各々の一端が、前記エアベローズの下側位置で、前記トラニオンブロックの車体幅方向両側位置に連結されていることを特徴とするトレーラの16輪サスペンションシステム。
【0014】
(
2)(1
)において、前記トラニオンブロックは、前記支持軸
の車体前後方向後側に配置され、前記エアベローズは、前記トラニオンブロック
の車体前後方向後側に配置されていることを特徴とするトレーラの16輪サスペンションシステム。
【0015】
(
3)(
2)において、前記トラニオンブロックの
他端にはトラニオンフランジが設けられ、このトラニオンフランジには、前記エアベローズの下端を支持するスプリングブラケット及び前記ショックアブソーバの
一端を支持するアブソーバブラケットが設けられていて、前記支持軸は車体フレームの下側に、これと一体に設けられた支持軸ブラケットにより支持され、前記4基のうち前側の2基のエアサスペンションユニットにおける前記ショックアブソーバの
他端は、前記4基のうちの後側の2基のエアサスペンションユニットにおける前記支持軸ブラケットに支持されていることを特徴とするトレーラの16輪サスペンションシステム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トレーラ後部の16輪サスペンションシステムにおける前側軸と後側軸とを独立させて、16輪の車輪を、4基のエアサスペンションユニットに4輪ずつ装着できるようにして、前側及び後側の軸の一方の変位が他方の軸の変位を生じることなく、また、車体幅方向には、車輪が片側乗り上げをしたときにおける車体の幅方向の変位を生じないようにして、重量のある精密機械を含む多種多様の重量物を運搬できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例に係るトレーラの16輪サスペンションシステムを示す車体側面図
【
図2】同実施例の16輪サスペンションシステムを示す平面図
【
図3】同実施例におけるエアサスペンションユニットを模式的に示す斜視図
【
図4】同エアサスペンションユニットを、車軸部分、エアベローズ、及びショックアブソーバを取り外した状態で示す斜視図
【
図5】同実施例のエアサスペンションユニットを、支持軸、ブレーキ装置、車軸、トラニオンブロック、スプリングブラケットを取り除いた状態で示す斜視図
【
図6】同実施例に係る16輪サスペンションを備えたトレーラの車輪が片側乗り上げをした状態を模式的に示す車体後面図
【
図7】従来の16輪サスペンションを備えたトレーラ及びトラックを模式的に示す車体側面図
【
図8】同トレーラ及びトラックを模式的に示す平面図
【
図9A】同サスペンションにおける平常状態を模式的に示す車体側面図
【
図9B】同サスペンションにおける段差乗り越え時の車輪及び軸の状態を模式的に示す車体側面図
【
図10】同サスペンションにおける片側乗り上げ時の状態を模式的に示す車体後面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例に係る16輪サスペンションシステム10は、トレーラ12の後部に設けられ、車体幅方向に8車輪を1列として、車体前後方向に2列の計16輪の車輪Wが4輪ずつ装着されるほぼ同一構造の4基のエアサスペンションユニット14A、14B、16A、16Bから構成されている。
【0020】
4基のうち車体幅方向左側の前及び後のエアサスペンションユニット14A、14Bについて詳細に説明する。なお、エアサスペンションユニット14Aと16A、14Bと16Bとは各々全く同一構造であるので、16A、16Bについては説明を省略する。
【0021】
前側のエアサスペンションユニット16Aは、中心軸線が車体幅方向、且つ、水平となるようにトレーラ12の車体フレーム18に設けられた支持軸20と、一端が支持軸20に支持され、該支持軸20を中心として車体前後方向の鉛直面内で揺動自在とされたビーム22と、車輪Wの車軸W
Aが挿通されるトラニオンシリンダ24を備え、一端がビーム22の他端に支持されるトラニオンブロック26と、トラニオンブロック26の他端と車体フレーム18との間に装架されるエアベローズ28と、エアベローズ28の下側位置で、一端がトラニオンブロック26に連結され、他端が車体フレーム18に連結されたショックアブソーバ30とを備えて構成されている。
【0022】
トラニオンブロック26は、
図4、
図5に示されるように、トラニオンシリンダ24の下側位置の、トラニオンシリンダ24と平行な面内で、車体前後方向に配置され、ビーム22の他端にこれと同軸的に連結されたトラニオンシャフト32と、トラニオンシリンダ24が挿通されるトラニオンシャフト挿通部34を含むトラニオン部36と、を備えて構成されている。
【0023】
トラニオンブロック26の後端には、トラニオンフランジ38が設けられ、このトラニオンフランジ38には、エアベローズ28の下端を支持するスプリングブラケット40が設けられていて、支持軸20は車体フレーム18の下側に、これと一体に設けられた支持軸ブラケット19A又は19Bにより支持されている。
【0024】
支持軸ブラケット19A、19Bは、4基のエアサスペンションユニット14A、14B、16A、16Bのそれぞれの車体前後方向前側に、車体フレーム18から垂下されるように車体フレーム18に取り付けられている。
【0025】
図1に拡大して示されるように、前側のエアサスペンションユニット14A、16Aにおけるショックアブソーバ30の後端(上端)は、後側のエアサスペンションユニット14B、16Bにおける支持軸ブラケット19Bに支持されている。
【0026】
また、後側のエアサスペンションユニット14B、16Bにおけるショックアブソーバ30の後端(上端)は、車体フレーム18の下側面に直接支持されている。
【0027】
図1及び
図2における符号42は、各エアサスペンションユニット14A、14B、16A、16Bに各々装着されたブレーキ装置を示す。
【0028】
この実施例に係る16輪サスペンションシステムにおいては、4基のエアサスペンションユニット14A、14B、16A、16Bがそれぞれ独立して、且つ、エアベローズ28及びショックアブソーバ30からなるエアサスペンションを備えているので、前後2軸の一方が道路上の石などを乗り越えたとき、その変位が他方のエアサスペンションユニットに伝達されることがなく、クッション性が高く、大重量の精密機械をも運搬することができる。
【0029】
更に、各エアサスペンションユニットにおいて、前側の支持軸から後側のエアベローズまでの間が車体前後方向に整列して配置され、且つ、車軸W
A、W
Bは、ビーム22を中心として左右に揺動可能であるので、例えば
図6に示されるように、一つのエアサスペンションユニット内で、車体幅方向の一方の2輪が道路上の石などに片側乗り上げをしたとき、エアサスペンションによってその衝撃、あるいは変位を吸収して、車体フレーム5の傾きを抑制することができる。
【0030】
なお、上記実施例において、トラニオンブロック26は、支持軸20の車体前後方向後側に配置され、更に、エアベローズ28は、トラニオンブロック26の後側に配置される構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアサスペンションユニットの設置方向を実施例とは反対方向、即ち、支持軸の前側にトラニオンブロック、エアベローズを設けるような配置にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、重量物を運搬するトレーラの16輪サスペンションに利用可能性がある。
【符号の説明】
【0032】
W…車輪
W
A、W
B…車軸
1…重機用トレーラ
2A、2B…軸
3A〜3D…アクスル
4A、4B…ウォーキングビーム
5、18…車体フレーム
6A、6B…ブラケット
7A、7B、32…トラニオンシャフト
10…16輪サスペンションシステム
12…トレーラ
14A、14B、16A、16B…エアサスペンションユニット
19A、19B…支持軸ブラケット
20…支持軸
22…ビーム
24…トラニオンシリンダ
26…トラニオンブロック
28…エアベローズ
30…ショックアブソーバ
34…トラニオンシャフト挿通部
36…トラニオン部
38…トラニオンフランジ
40…スプリングブラケット
42…ブレーキ装置