特許第6132324号(P6132324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132324
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】リーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20170515BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20170515BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170515BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20170515BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20170515BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J37/02 301B
   B01J37/02 301L
   B01D53/94 223
   B01D53/94 245
   B01D53/94 400
   B01D53/94 280
   F01N3/28 301P
   F01N3/28 Q
   F01N3/10 A
   F01N3/08 A
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-558847(P2015-558847)
(86)(22)【出願日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2015051276
(87)【国際公開番号】WO2015111555
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-9810(P2014-9810)
(32)【優先日】2014年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312016218
【氏名又は名称】ユミコア日本触媒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梅野 高弘
(72)【発明者】
【氏名】半沢 公也
(72)【発明者】
【氏名】林 嘉行
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/093471(WO,A1)
【文献】 特開2009−221913(JP,A)
【文献】 特開2002−011347(JP,A)
【文献】 特開2013−063404(JP,A)
【文献】 特表2013−536757(JP,A)
【文献】 特開2010−104910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属およびセリアを含む触媒成分が、三次元構造体に担持されてなるリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒であって、
前記触媒成分は、さらに少なくとも1種の耐火性無機酸化物をさらに含み、
触媒全体において、前記セリアの担持量は、触媒1Lあたり140〜300g/Lであり、かつ、触媒全体おいて、全コート量に対する前記セリアの割合は50〜98質量%であり、
前記セリアの50質量%以上は、前記貴金属と同じ触媒層に含まれ、
当該触媒層に含まれる前記貴金属の量は、当該触媒層に含まれる前記セリアの量に対し、0.1質量%以上である、リーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記耐火性無機酸化物のBET比表面積は、50〜750m/gである、請求項1に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記耐火性無機酸化物は、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、ランタナ、シリカ、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−ランタナ、チタニア−ジルコニア、ゼオライト、およびシリカ−アルミナからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記触媒成分は、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類(但し、セリウムを除く)、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む助触媒を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記の助触媒は、ナトリウム、カリウム、バリウム、ストロンチウム、ランタン、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項4に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項6】
前記貴金属は、パラジウム、白金、およびロジウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項7】
前記三次元構造体上に、第1の触媒層と、第2の触媒層とが順次積層されてなり、
前記第1の触媒層および前記第2の触媒層の少なくとも一方は、前記触媒成分を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項8】
前記第1の触媒層及び前記第2の触媒層は、共に前記触媒成分を含む、請求項7に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒。
【請求項9】
前記三次元構造体に、前記触媒成分を担持させることを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項10】
前記触媒成分は、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類(但し、セリウムを除く)、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素である助触媒、および/または、少なくとも1種の耐火性無機酸化物を含む、請求項9に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項11】
前記三次元構造体上に、前記第1の触媒層を形成する工程と、
前記第1の触媒層上に、前記第2の触媒層を形成する工程と、
を有する、請求項またはに記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒をリーンバーンエンジン排ガスに接触させることを含む、排ガスの浄化方法。
【請求項13】
前記リーンバーンエンジン排ガスは、酸化雰囲気(リーン)の排ガスに定期的に還元剤を導入したものである、請求項12に記載の排ガスの浄化方法。
【請求項14】
前記リーンバーンエンジン排ガスは、還元剤を導入した時の排ガスに含まれるHC(メタン換算)とNOxとのモル比(HC/NOx)が1〜50である、請求項13に記載の排ガスの浄化方法。
【請求項15】
前記リーンバーンエンジン用触媒を、触媒入口温度が150〜250℃、空間速度(SV)が30,000〜100,000h−1で前記リーンバーンエンジン排ガスに接触させる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の排ガスの浄化方法。
【請求項16】
前記リーンバーンエンジン用触媒を、触媒入口温度が250〜700℃、空間速度(SV)が30,000〜200,000h−1で前記リーンバーンエンジン排ガスに接触させる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の排ガスの浄化方法。
【請求項17】
前記リーンバーンエンジン用触媒を、触媒入口温度が400〜700℃、空間速度(SV)が100,000〜200,000h−1で前記リーンバーンエンジン排ガスに接触させる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の排ガスの浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒に関する。より詳しくは、本発明は、ガソリンリーンバーンエンジン、ディーゼルエンジン等のリーンバーンの内燃機関の排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等を浄化する排ガス浄化触媒において、特にNOxの浄化性能を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中のNOxは、光化学スモッグや酸性雨の原因となる。そのため、NOx発生源の一つである内燃機関を備えた自動車などからのNOxの排出が社会的な問題となっている。このため、今後、NOxの排出量に関して法規制を厳しくする方向で検討が進められている。
【0003】
ところが、ディーゼルエンジンやガソリンリーンバーンエンジンは、燃費の点では有利であるが、理論空燃比よりも薄い(リーン)混合気を燃焼する希薄燃焼(リーンバーン)であるため、燃焼温度が高温になると多量に含まれる空気中の窒素と酸素とが反応するなどして、NOxの発生量が多いことが知られている。また、リーン雰囲気では排ガス中にも酸素が多く含まれるため、NOxを十分に還元処理することは困難である。
【0004】
従来から、様々なNOx浄化技術が提案されている。例えば、リーン雰囲気時にNOxを触媒に吸蔵し、後にエンジン制御によりCOやHCを導入し、一時的に還元雰囲気(リッチ雰囲気)にして、吸蔵したNOxを浄化する、NOx吸蔵処理方法が提案されている(特許文献1)。さらに、NOx吸蔵処理方法の欠点を補う技術として、排ガス流れの上流側にHC、COを酸化する触媒を配置し、下流側にNOx浄化触媒を設置する方法が提案されている(特許文献2)。また、排ガス中に含まれる水素(H)を有効に活用するために、排ガス流れの上流側でHC、COを選択的に浄化し、残ったHを用いて下流側でNOxを浄化する技術が開示されている。さらには、アンモニアなどの還元剤を積極的に排ガス中に導入してNOxを浄化する技術が提案されている(特許文献3)。また、特に低温条件での運転領域において高いNOx浄化性能を有する排ガス浄化触媒が開示されている(特許文献4)。また、NOx吸着能を有するセリア(酸化セリウム(IV);CeO)とHC吸着能を有するゼオライトとを組み合わせて、高いNOx浄化性能を有する排ガス浄化触媒が開示されている(特許文献5)。また、SOxによる被毒を抑制するために、最表層にセリアのみからなる層を設けた3層コートの排ガス浄化触媒が開示されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−248471号公報
【特許文献2】特開2001−123827号公報
【特許文献3】特開2006−326437号公報
【特許文献4】特開2009−22821号公報(米国特許出願公開第2010/0204036号明細書)
【特許文献5】特開2001−219070号公報
【特許文献6】特開平11−156159号公報(欧州特許出願公開第0905354号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、更に高いNOx浄化効率が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、十分なNOx浄化性能を有するリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、驚くべきことに、従来の排ガス浄化触媒と比較して多量のセリアを貴金属と共に同一の触媒層に担持させることにより、NOx浄化効率が有意に向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒は、貴金属およびセリアを含む触媒成分が、三次元構造体に担持されてなる。触媒全体において、セリアの担持量は、触媒1L(リットル)あたり140〜300g/Lであり、かつ、触媒全体において、全コート量に対するセリアの割合は50〜98質量%である。そして、セリアの50質量%以上は、貴金属と同じ触媒層に含まれ、当該触媒層に含まれる貴金属の量は、当該触媒層に含まれるセリアの量に対し、0.1質量%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、十分なNOx浄化性能を有するリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例および比較例のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒について、触媒入口温度500℃、空間速度65,000h−1で定常評価した時の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。
図2】実施例および比較例のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒について、触媒入口温度450℃、空間速度150,000h−1で定常評価した時の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。
図3】実施例および比較例のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒について、触媒入口温度250℃、空間速度40,000h−1で定常評価した時の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。
図4】実施例および比較例のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒について、触媒入口温度300℃、空間速度65,000h−1で定常評価した時の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。
図5】実施例および比較例のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒について、触媒入口温度450℃、空間速度170,000h−1で定常評価した時の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は、下記の形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書では、「リーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒」を単に「触媒」とも称する。また、本明細書中の「A〜B」は「A以上、B」を意味し、「Cおよび/またはD」とは、CおよびDのいずれか一方または両方を意味する。また、本明細書中において、「質量」と「重量」とは同義語として扱う。本明細書で挙げられている各種物性は、特記しない限り、後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0013】
<排ガス浄化触媒>
本発明の一形態に係るリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒は、貴金属およびセリアを含む触媒成分が、三次元構造体に担持されてなる。触媒全体において、セリアの担持量は、触媒1Lあたり140〜300g/Lであり、かつ、触媒全体において、全コート量に対するセリアの割合は、50〜98質量%である。そして、セリアの50質量%以上は、貴金属と同じ触媒層に含まれ、当該触媒層に含まれる貴金属の量は、当該触媒層に含まれるセリアの量に対し、0.1質量%以上であることを特徴とする。このような構成を有する本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒は、優れたNOx浄化性能を有する。特に、本発明の触媒は、従来の触媒において十分なNOx浄化性能を発揮することができなかった、ディーゼルエンジンやガソリンリーンバーンエンジン等のリーン雰囲気、高温域または低温域の排ガス、高空間速度(高SV)条件下であっても、高いNOx浄化性能を発揮することが可能である。このように本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒が上記したような効果を奏する理由は不明であるが、本発明者らは以下のメカニズムに基づくものであると推測している。なお、本発明は、下記メカニズムによって限定されるものではない。
【0014】
すなわち、本発明の触媒は、多量のセリアを貴金属と共に同一の触媒層に担持させることを特徴とするが、このような構成とすることにより、排ガス中に含まれる炭素鎖の長い高沸点炭化水素と、セリア自身が持つ酸素とが、貴金属を触媒として、より炭素鎖の短いオレフィン類等に分解(部分酸化)されると考えられる。この炭素鎖の短いオレフィン類が、NOxの還元反応における還元剤として機能するため、NOx浄化性能が向上するものと推測される。そのため、従来の触媒において十分なNOx浄化性能を発揮することができなかった、ディーゼルエンジンやガソリンリーンバーンエンジン等のリーン雰囲気、高温域または低温域の排ガス、高空間速度(高SV)条件下においても、優れたNOx浄化性能を発揮することが可能となるのである。以下、本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒について、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0015】
[触媒成分]
本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒は、触媒成分として、貴金属およびセリアを必須に含み、さらに、必要に応じて、助触媒および/または耐火性無機酸化物を含みうる。
【0016】
(貴金属)
本発明において、貴金属は、排ガスに含まれる各成分の酸化・還元反応の触媒として機能する。本発明における貴金属の種類は、特に制限はなく、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)など、本技術分野で使用されうる貴金属元素を適宜採用することができる。なかでも、白金、パラジウム、ロジウム、およびイリジウムの少なくとも1種を含むことが好ましく、白金、パラジウム、およびロジウムの少なくとも1種を含むことがより好ましい。これらの貴金属を含有することにより、酸化・還元反応を起こさせることができる。なお、これらの貴金属は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0017】
貴金属として白金を含む場合の、当該白金の含有量は、触媒1Lあたり、好ましくは0.05〜15g/Lであり、より好ましくは0.1〜10g/Lである。0.05g/L以上の白金を加えると、白金を増加させていくにつれて排ガス浄化率が向上していくが、15g/Lを超えて白金を増加させると、増加量に応じたNOx浄化効率が得られず、コストパフォーマンスの低下を招く。
【0018】
出発原料としての白金(Pt)源は、特に制限されることなく、排ガス浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、ハロゲン化物、無機塩類、カルボン酸塩、および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。これらのうち、硝酸塩、ジニトロジアンミン塩、塩化物、テトラアンミン塩、ビスエタノールアミン塩、ビスアセチルアセトナート塩が好ましい。より好ましくは、硝酸塩、テトラアンミン塩、ジニトロジアンミン塩、ビスエタノールアミン塩が挙げられる。なお、本発明では、上記白金源は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0019】
貴金属としてパラジウムを含む場合の、当該パラジウムの含有量は、触媒1Lあたり、好ましくは0.05〜15gであり、より好ましくは0.1〜10gである。0.05g/L以上のパラジウムを加えると、パラジウムを増加させていくにつれて排ガス浄化率が向上していくが、15g/Lを超えてパラジウムを増加させると、増加量に応じたNOx浄化効率が得られず、コストパフォーマンスの低下を招く。
【0020】
出発原料としてのパラジウム(Pd)源は、特に制限されることなく、排ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、ハロゲン化物、無機塩類、カルボン酸塩、および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、アミン塩、テトラアンミン塩、炭酸塩が挙げられる。これらのうち、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、テトラアンミン塩が好ましく、硝酸パラジウムがより好ましい。なお、上記パラジウム源は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0021】
貴金属としてロジウムを含む場合の、当該ロジウムの含有量は、触媒1Lあたり、好ましくは0.05〜15gであり、より好ましくは0.1〜10gである。ロジウムの量が上記範囲内であると、十分な触媒性能を発揮させることができる。0.05g/L以上のロジウムを加えると、ロジウムを増加させていくにつれて排ガス浄化率が向上していくが、15g/Lを超えてロジウムを増加させると、増加量に応じたNOx浄化効率が得られず、コストパフォーマンスの低下を招く。
【0022】
出発原料としてのロジウム(Rh)源は、特に制限されることなく、排ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、ハロゲン化物、無機塩類、カルボン酸塩、および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは、硝酸塩、アンモニウム塩、アミン塩、炭酸塩が挙げられる。これらのうち、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、へキサアンミン塩であり、硝酸ロジウムがより好ましい。なお、上記ロジウム源は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0023】
貴金属の担持形態は、特に制限されないが、酸化・還元反応促進の観点から、後述の耐火性無機酸化物またはセリアに担持されていることが好ましく、耐火性無機酸化物に担持されていることがより好ましい。2種以上の貴金属を併用する場合、当該2種以上の貴金属は、その全てが同一の耐火性無機酸化物またはセリアに担持されていてもよいし、そのうちの一部が同一の耐火性無機酸化物またはセリアに担持されていてもよいし、各々別の耐火性無機酸化物またはセリアに担持されていてもよい。
【0024】
貴金属を耐火性無機酸化物またはセリアに担持させる方法は、特に制限されず、本技術分野で使用される担持方法を適宜採用することができる。具体的には、(1)耐火性無機酸化物またはセリアと貴金属水溶液とを混合し、これを乾燥、焼成する方法;(2)耐火性無機酸化物またはセリアと貴金属水溶液とを混合した後に、還元剤を加えて貴金属イオンを還元して貴金属を析出させ、耐火性無機酸化物またはセリアに付着させる方法;(3)耐火性無機酸化物またはセリアと貴金属水溶液とを混合した後に加熱し、貴金属を耐火性無機酸化物またはセリアに吸着させる方法などが挙げられる。
【0025】
(セリア)
本発明において、セリア(酸化セリウム(IV);CeO)は、主にNOx吸蔵(吸着)材として機能する。また、上述のように、貴金属と同一の触媒層に含まれるセリアは、排ガス中の炭素鎖の長い炭化水素を炭素鎖の短い炭化水素へと分解(部分酸化)するのに寄与していると考えられる。
【0026】
本発明の触媒は、セリアの担持量が、触媒1Lあたり、必須に140〜300g/Lであり、好ましくは175〜275g/Lであり、より好ましくは190〜230g/Lである。加えて、セリアの担持量は、全コート量に対して、必須に50〜98質量%であり、好ましくは50〜75質量%であり、より好ましくは59〜75質量%である。セリア担持量が、触媒1Lあたり140g/L未満、または、全コート量に対し50質量%未満であると、セリアのNOx吸蔵(吸着)機能が十分に発揮できなくなるおそれがある。一方、セリア担持量が、触媒1Lあたり300g/Lを超える、または、全コート量に対し、98質量%を超えると、触媒層の機械的強度が著しく低下するおそれがある。
【0027】
本発明において、セリアの原料(CeO源)は特に制限されず、本技術分野で用いられている原料を適宜採用することができる。具体的には、固体状のセリア(セリア粉末)や、セリウム塩が使用されうる。セリウム塩としては、具体的には、硝酸第一セリウムなどの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、などが挙げられる。なかでも、硝酸塩が好ましく使用される。上記CeO源は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0028】
(助触媒)
本発明の触媒は、触媒成分として、上記貴金属およびセリアの他に、助触媒を含むことが好ましい。助触媒は、特に制限はないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類(但し、セリウムを除く)、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
【0029】
アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。希土類(但し、セリウムを除く)としては、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウムなどからなる群より選択される希土類元素が挙げられる。なかでも、NOx吸蔵(吸着)特性の観点から、ナトリウム、カリウム、バリウム、ストロンチウム、ランタン、およびマグネシウムを含むことが好ましく、カリウム、バリウム、およびストロンチウムを含むことがさらに好ましい。これらの助触媒は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。これらの元素は酸化物、炭酸塩、硫酸塩などの形態で用いることができ、好ましくは酸化物、または炭酸物である。
【0030】
助触媒の含有量も、特に制限はないが、触媒1Lあたり、通常0〜150g/Lであり、好ましくは5〜100g/Lであり、より好ましくは5〜50g/Lである。
【0031】
(耐火性無機酸化物)
本発明の触媒は、触媒成分として、上記貴金属およびセリアの他に、少なくとも1種の耐火性無機酸化物を含むことが好ましい。上記貴金属等の微粒子を耐火性無機酸化物の表面に担持されることによって、貴金属の表面積を確保し、触媒としての性能を効果的に発揮させることができる。本発明で用いられる耐火性無機酸化物は、特に制限されず、本技術分野で使用されるものを適宜採用することができる。例えば、α−アルミナ(Al)、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナ、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、ランタナ(La)、シリカ(SiO)などの単独酸化物、これらの複合酸化物であるアルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−ランタナ、チタニア−ジルコニア、ゼオライト(アルミナケイ酸塩)、シリカ−アルミナなどが挙げられる。好ましくは、γ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、ランタナ、シリカ、などの単独酸化物、およびこれらの複合酸化物が使用される。また、一部の金属元素が希土類元素で安定化された耐火性無機酸化物でもよく、上述のセリアと複合酸化物を形成していてもよい。上記耐火性無機酸化物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0032】
耐火性無機酸化物の平均粒子径は、特に制限されないが、通常2.0〜60μmであり、好ましくは5.0〜50μmであり、より好ましくは5.0〜40μmである。なお、本明細書中、「平均粒子径」は、レーザー回折法や動的光散乱法などの公知の方法によって測定される耐火性無機酸化物粉末の粒子径の平均値を算出することによって求められる。また、耐火性無機酸化物のBET比表面積も、特に制限されないが、好ましくは50〜750m/g、より好ましくは150〜750m/gである。このような耐火性無機酸化物を使用することにより、触媒成分(例えば、貴金属)を十分に担持させることができる。
【0033】
本発明の触媒における耐火性無機酸化物の担持量は、特に制限されないが、好ましくは触媒1Lあたり、好ましくは1〜299g/Lであり、より好ましくは57〜274g/Lであり、さらに好ましくは62〜165gである。耐火性無機酸化物の担持量が1g/L以上であると、触媒成分(例えば、貴金属)を十分に分散させることができるとともに、貴金属のシンタリングが抑制されるため、触媒の耐久性を向上させることができる。一方、担持量が299g/L以下であれば、触媒層の厚みが厚くなり過ぎず、貴金属と排ガスとの接触状態が良好となり、圧力損失が大きくなったり、触媒層の機械的強度が低下したりするのを防ぐとともに、触媒性能を十分に発揮させることができる。
【0034】
なお、本発明の触媒は、上記触媒成分の総量が、触媒1L当たり、好ましくは143〜600g/Lであり、より好ましくは233〜550g/Lであり、さらに好ましくは253〜396g/Lである。このような範囲であれば、本発明の触媒は上記したような各触媒成分により十分な機能を発揮することができる。
【0035】
[三次元構造体]
本発明の触媒は、上記触媒成分が、三次元構造体に担持されてなる。言い換えると、本発明の触媒は、三次元構造体の表面が上記触媒成分により被覆された構造を有する。本発明で使用される三次元構造体は、特に制限されず、一般的に排ガス浄化触媒の分野で使用されるものを適宜採用することができるが、好ましくは、耐火性材料から構成される三次元一体構造体(モノリス担体)が使用される。例えば、モノリスハニカム担体、メタルハニカム担体、プラグハニカム担体等が挙げられる。
【0036】
具体的には、特にコージェライト、ムライト、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン、アルミニウムチタネート、ベタライト、スポジュメン、アルミノシリケート、マグネシウムシリケート等のセラミックス材料から構成されるハニカム担体が好ましく、なかでもコージェライト質のものが特に好ましい。その他、ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金等の酸化抵抗性の耐熱性金属を用いて耐火性三次元構造体としたものも使用される。
【0037】
これらのモノリス担体は、ウォールフロー型、フロースルー型があり、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などで製造される。そのガス通過口(セル形状)の形は6角形、4角形、3角形またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は100〜900セル/平方インチあれば十分に使用可能であり、好ましくは200〜600セル/平方インチである。
【0038】
また、本発明の触媒は、三次元構造体上に触媒層が1層のみ形成されたものであってもよいし、2層以上の触媒層が形成されたものであってもよいが、2層以上の触媒層が形成されたものであることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態に係る触媒は、三次元構造体上に、第1の触媒層と、第2の触媒層とが順次積層されてなり、前記第1の触媒層および前記第2の触媒層の少なくとも一方は、前記触媒成分を含むことを特徴とする。三次元構造体上に2層以上の触媒層を設けることによって、触媒層ごとに異なる触媒成分を担持させることにより、各々の触媒層に異なる機能を付与することができるため、触媒全体としての排ガス浄化性能をより向上させることが可能となる。
【0039】
2層以上の触媒層を有する場合は、本発明の触媒に含まれるセリアのうち、一定量以上は、上記貴金属と同じ触媒層に含まれることが好ましい。具体的には、触媒に含まれるセリアの総量に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上が貴金属と同じ触媒層に含まれる。また、当該触媒層に含まれる貴金属の量は、当該触媒層に含まれるセリアの量に対し、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.2〜25質量%であり、さらに好ましくは0.4〜20質量%である。このように同一触媒層に所定の量(割合)のセリアおよび貴金属が含まれることにより、上述のように、排ガス中の軽油等に主に含まれる炭素鎖の長い高沸点炭化水素が、炭素鎖の短いオレフィン類等に分解(部分酸化)される反応がより促進されうる。これにより、NOxの還元反応における還元剤として機能する炭素鎖の短いオレフィン類等の量が増えるため、より一層優れたNOx浄化性能を発揮することが可能となると考えられる。
【0040】
<リーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒の製造方法>
本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒の製造方法は、特に制限されず、前記三次元構造体上に、前記触媒成分を担持させることを有する製造方法であれば、公知の手法を適宜参照することができる。具体的には、以下の方法により製造することができる。
【0041】
(1)固体状のセリア粉末またはセリウム塩と、助触媒成分と、貴金属塩と、耐火性無機酸化物とを、溶媒に入れた後、ボールミルなどの湿式粉砕機を用いてスラリーとし、当該スラリーに三次元構造体を浸し、余剰のスラリーを除き、乾燥、焼成して触媒を得る方法、(2)固体状のセリア粉末またはセリウム塩と、助触媒成分と、貴金属を担持した耐火性無機酸化物とを、溶媒に入れた後、ボールミルなどの湿式粉砕機を用いてスラリーとし、当該スラリーに三次元構造体を浸し、余剰のスラリーを除き、乾燥、焼成して触媒を得る方法、(3)固体状のセリア粉末またはセリウム塩と、耐火性無機酸化物とを、溶媒に入れた後、ボールミルなどの湿式粉砕機を用いてスラリーとし、当該スラリーに三次元構造体を浸し、余剰のスラリーを除き、乾燥又は焼成した後、貴金属の水溶性塩と助触媒成分の水溶性塩を含む水溶液に浸した後、余剰の液を除き、乾燥、焼成し触媒を得る方法、(4)固体状のセリア粉末またはセリウム塩と、助触媒成分と、耐火性無機酸化物とを、溶媒に入れた後、ボールミルなどの湿式粉砕機を用いてスラリーとし、当該スラリーに三次元構造体を浸し、余剰のスラリーを除き、乾燥又は焼成した後、貴金属塩を含む水溶液に浸し、余剰の液を除き、乾燥、焼成して触媒を得る方法、(5)助触媒成分と、貴金属を担持した耐火性無機酸化物とを、溶媒に入れた後、ボールミルなどの湿式粉砕機を用いてスラリーとし、当該スラリーに三次元構造体を浸し、余剰のスラリーを除き、乾燥又は焼成した後、セリアまたはセリウムの水溶性塩を含む水溶液に浸し、余剰の液を除き、乾燥、焼成して触媒を得る方法、(6)貴金属を担持した固体状のセリア粉末またはセリウム塩と、助触媒成分と、耐火性無機酸化物とを、溶媒に入れた後、ボールミルなどの湿式粉砕機を用いてスラリーとし、当該スラリーに三次元構造体を浸し、余剰のスラリーを除き、乾燥、焼成して触媒を得る方法などである。
【0042】
なお、2層以上の触媒層が形成される場合の触媒の製造方法も、特に制限されず、前記三次元構造体上に、前記第1の触媒層を形成する工程と、前記第1の触媒層上に、前記第2の触媒層を形成する工程と、を有する製造方法であれば、従来公知の手法を適宜参照することができる。具体的には、上記(1)〜(6)によって下層(1層目)の触媒層を形成した後、適宜(1)〜(6)における操作を繰り返し、2層目以上の触媒層を形成することによって完成触媒を製造することができる。
【0043】
上記方法において、スラリーを調製するために使用される溶媒は、特に制限されず、本技術分野で使用されるものを適宜採用することができる。この際、触媒成分の溶媒中の濃度は、所望の量が三次元構造体に担持できる量であれば、特に限定されない。好ましくは、溶媒中の触媒成分の濃度が、20〜60質量%、より好ましくは25〜50質量%となるような量である。また、触媒活性成分を溶媒に混合した後に、混合物を湿式粉砕することが好ましいが、この際、湿式粉砕の方法は、通常公知の方法によって行われ、特に制限されない。例えば、ボールミルなどを用いて湿式粉砕を行う。三次元構造体上にコートした後の、乾燥・焼成条件は、特に制限されず、本技術分野で使用される条件を適宜採用することができる。
【0044】
<排ガス浄化方法>
上述のように、本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒は、高いNOx浄化性能を発揮させることができるため、リーンバーンの内燃機関等の排ガス浄化に好適である。すなわち、本発明の他の一形態によると、リーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒をリーンバーンエンジン排ガスに接触させることを含む、排ガスの浄化方法が提供される。
【0045】
本発明による触媒を用いて排ガスを処理する場合には、対象とする排ガスは、ディーゼルエンジン、ガソリンリーンバーンエンジンなどの内燃機関の排ガスである。特に、酸化雰囲気(リーン)の排ガスに定期的に還元剤を導入したときに優れた効果を発揮するものである。また、エンジン下流側に装着し、酸化雰囲気(リーン)の排ガスに還元剤、好ましくは燃料を噴射する運転を繰り返しながら、NOxを浄化することができる。噴射方法は筒内噴射でも排気管噴射でもよい。ここで還元剤(燃料)を噴射したときの排ガスに含まれるHC(メタン換算)とNOxとのモル比(HC/NOx)が1〜50であることが好ましく、2〜25であることがより好ましい。
【0046】
なお、本発明の触媒は、上述のようにリーン雰囲気においても十分なNOx浄化性能を発揮することができるという特徴を有する。したがって、本発明の触媒は、リーンバーンエンジン排ガスの浄化に特に好適に使用される。
【0047】
排ガスの空間速度(SV)は通常の速度であってもよいが、特に20,000〜300,000h−1、好ましくは30,000〜200,000h−1の高SV条件下の時に効率よくNOxを浄化できる。
【0048】
排ガス温度(触媒入口温度)は100℃付近から1000℃であってもよく、好ましくは150℃から700℃である。特に排ガス温度が低温(低温域)の場合は、100〜300℃、より好ましくは150〜250℃の間で効率よくNOxを浄化できる。また排ガス温度が高温の場合は350〜800℃、好ましくは400〜700℃の間で効率よくNOxを浄化できる。
【0049】
より具体的には、(条件1)触媒入口温度が150〜250℃、空間速度(SV)が30,000〜100,000h−1;(条件2)触媒入口温度が250〜700℃、空間速度(SV)が30,000〜200,000h−1;(条件3)触媒入口温度が400〜700℃、空間速度(SV)が100,000〜200,000h−1;の条件下において、より効率よくNOxを浄化することができる。
【0050】
本発明の触媒は、上記触媒入口温度および排ガスの空間速度(SV)からなる排ガス条件1〜3のうちのいずれか1つを含む運転条件下で用いられてもよいし、これらの条件1〜3のうちの2以上(すなわち、条件1および2;条件1および3;条件2および3;または、条件1、2、および3)を組み合わせた運転条件下で用いられてもよい。
【0051】
本発明のリーンバーンエンジン用排ガス浄化触媒は、排ガスの通路に設置することで排ガスを処理することができ、エンジンのマニホールド下流付近から自動車の床下に設置することができる。さらに、他の機能を有する触媒と併用することもできる。例えば、炭化水素吸着機能を有するHCトラップ触媒・吸着体、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、三元触媒や酸化触媒(DOC)、選択的NOx還元触媒(SCR)である。好ましい併用条件は、本発明の排ガス浄化触媒を排気ガスの上流側に設置し、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)や選択的NOx還元触媒(SCR)を下流側に設置するシステムである。
【実施例】
【0052】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0053】
(実施例1)
アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積約135m/g)、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径103mm、長さ130mm、体積1.083L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、完成触媒(A)を得た。
【0054】
この触媒(A)は、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム18g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物144g/L、セリア198.3g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は54.5質量%であった。
【0055】
(実施例2)
アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積約135m/g)、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径103mm、長さ130mm、体積1.083L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、完成触媒(B)を得た。
【0056】
この触媒(B)は、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム18g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物139g/L、セリア203.0g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は55.8質量%であった。
【0057】
(実施例3)
アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積約135m/g)、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径103mm、長さ130mm、体積1.083L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、完成触媒(C)を得た。
【0058】
この触媒(C)は、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム18g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物110g/L、セリア232.0g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は63.8質量%であった。
【0059】
(実施例4)
アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積135m/g)、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径103mm、長さ130mm、体積1.083L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、内層コート担体を得た。
【0060】
さらに、アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積135m/g)、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液、炭酸バリウム、セリア、と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに内層コート担体を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、外層(最表面層)コートを有する完成触媒(D)を得た。
この触媒(D)は、2層の触媒層を有しており、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム18g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物120g/L、セリア222.0g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は61.1質量%であった。また、内層(第1の触媒層)において白金1.35g/L、パラジウム0.15g/L、炭酸バリウム12.2g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物93.8g/L、セリア174g/Lが担持されており、内層のコート量に対する内層のセリア量の比率は61.8質量%であった。表層(第2の触媒層)においては白金1.35g/L、パラジウム0.45g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム5.8g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物26.2g/L、セリア48g/Lが担持されていた。
(実施例5)
アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積135m/g)、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径143.8mm、長さ100mm、体積1.624L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、内層コート担体を得た。
【0061】
さらに、アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積135m/g)、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液、炭酸バリウム、セリア、と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに内層コート担体を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、外層(最表面層)コートを有する完成触媒(E)を得た。
この触媒(E)は、2層の触媒層を有しており、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム32.5g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物99.8g/L、セリア233g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は63.2質量%であった。また、内層(第1の触媒層)において白金1.35g/L、パラジウム0.3g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム26.7g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物72.35g/L、セリア190g/Lが担持されており、内層のコート量に対する内層のセリア量の比率は65.3質量%であった。表層(第2の触媒層)においては白金1.35g/L、パラジウム0.3g/L、炭酸バリウム5.8g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物27.45g/L、セリア43g/Lが担持されていた。
【0062】
(比較例1)
アルミナ−ランタナ複合酸化物、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径103mm、長さ130mm、体積1.083L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、完成触媒(F)を得た。
【0063】
この触媒(F)は、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム17g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物196g/L、セリア146.7g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は40.4質量%であった。
【0064】
(比較例2)
アルミナ−ランタナ複合酸化物、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径103mm、長さ130mm、体積1.083L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、完成触媒(G)を得た。
【0065】
この触媒(G)は、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム22g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物255g/L、セリア83.3g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は22.9質量%であった。
(比較例3)
アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積135m/g)、炭酸バリウム、セリア、硝酸パラジウム、ビスエタノールアミン白金溶液と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(400セル/平方インチ、直径143.8mm、長さ100mm、体積1.624L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、内層コート担体を得た。
【0066】
さらに、アルミナ−ランタナ複合酸化物(平均粒子径35μm、BET比表面積135m/g)、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、ビスエタノールアミン白金溶液、炭酸バリウム、セリア、と水適量を混合し、水性スラリーを得た。この水性スラリーに内層コート担体を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで20分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で1時間焼成し、外層(最表面層)コートを有する完成触媒(H)を得た。
この触媒(H)は、2層の触媒層を有しており、担体に対して、白金2.7g/L、パラジウム0.6g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム32.5g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物150g/L、セリア182.9g/Lが担持されており、全コート量に対するセリアの割合は49.6質量%であった。また、内層(第1の触媒層)において白金1.35g/L、パラジウム0.15g/L、ロジウム0.2g/L、炭酸バリウム26.7g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物108.9g/L、セリア153.7g/Lが担持されており、内層のコート量に対する内層のセリア量の比率は52.8質量%であった。表層(第2の触媒層)においては白金1.35g/L、パラジウム0.45g/L、炭酸バリウム5.8g/L、アルミナ−ランタナ複合酸化物41.1g/L、セリア29.2g/Lが担持されていた。
【0067】
(NOx還元評価結果)
上記実施例1〜5で調製した完成触媒(A)〜(E)および比較例1〜3で調製した完成触媒(F)〜(H)について、下記試験を行った。
【0068】
完成触媒をそれぞれディーゼルエンジンベンチのエンジン下流側に装着し、定常状態の酸化雰囲気(リーン)に、触媒の上流側の排ガスに定期的に軽油を噴射する運転を繰り返しながら、平均NOx浄化率(%)を測定した。NOx浄化率は下記式より算出した。
【0069】
【数1】
【0070】
また、各実験条件における定常運転下の排ガス組成ならびに軽油噴射時のHC(メタン換算)/NOx比を下記に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
結果を図1〜5に示す。
【0074】
図1は、触媒入口温度500℃(高温域)、空間速度65,000h−1で定常評価した時の、完成触媒(A)〜(D)、(F)、および(G)の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。実施例1〜4の完成触媒(A)〜(D)は、比較例の完成触媒(F)および(G)に比べ、NOx浄化率が3割ほど高いことが示された。
【0075】
図2は、触媒入口温度450℃(高温域)、空間速度150,000h−1(高SV領域)で定常評価した時の、完成触媒(A)〜(D)、(F)、(G)の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。実施例1〜4の完成触媒(A)〜(D)は、比較例の完成触媒(F)、(G)に比べ、NOx浄化率が2〜4割ほど高いことが示された。
【0076】
図3は、触媒入口温度250℃(低温域)、空間速度40,000h−1で定常評価した時の、完成触媒(A)〜(D)、(F)、(G)の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。実施例1〜4の完成触媒(A)〜(D)は、比較例の完成触媒(F)、(G)に比べ、NOx浄化率が3割ほど高いことが示された。
【0077】
図4は、触媒入口温度300℃(中温域)、空間速度65,000h−1で定常評価した時の、完成触媒(E)、(H)の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。実施例5の完成触媒(E)は、比較例3の完成触媒(H)に比べ、NOx浄化率が3割弱ほど高いことが示された。
【0078】
図5は、触媒入口温度450℃(高温域)、空間速度170,000h−1(超高SV領域)で定常評価した時の、完成触媒(E)、(H)の平均NOx浄化率(%)を示すグラフである。実施例5の完成触媒(E)は、比較例3の完成触媒(H)に比べ、NOx浄化率が6割ほど高いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、リーンバーンエンジンの排ガス処理に好適に利用されうる。特に、低温域でNOxを浄化することができ、さらに高温域や高SV条件においても高いNOx浄化性能を発揮することができる。
【0080】
本出願は、2014年1月22日に出願された日本国特許出願第2014−009810号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
図1
図2
図3
図4
図5