【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 「非接触超音波の医療分野への応用に関する実現性の検討」地域イノベ医工連携フォーラム、一般社団法人・首都圏産業活性化協会(TAMA協会)、平成25年3月5日(火)開催でのパワーポイント資料にて発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記集束点位置合せ手段は、上記集束点の位置を上記集束超音波の伝搬方向に沿って可変する集束点位置可変手段を含むことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は、以下の順序にしたがって行う。
【0021】
1.超音波診断システムの構成例
2.超音波診断装置の構成例
2−1.超音波診断装置の回路構成例
2−2.超音波トランスデューサの構成例
3.動作原理及び動作
3−1.2次音源の形成
3−2.集束点制御
3−3.超音波ビームフォーミング
3−4.受信ビームフォーミング
4.模擬実験
【0022】
1.超音波診断システムの構成例
本発明が適用された超音波診断装置1が用いられた超音波診断システム40は、
図1に示すように、たとえば天井裏に設置された超音波診断装置本体1aと、超音波診断装置本体1aから延びる配線2aが多関節マニピュレータ7a,7b,7c,7d内を通って接続される集束型超音波トランスデューサアレイ50を有する超音波プローブ50aとを備えている。超音波診断システム40は、超音波プローブ50aによって取得した超音波画像構築のためのデータに信号処理を行い、配線2bを介して接続されるモニタ32に表示する。
【0023】
多関節マニピュレータは、天井に固定された固定アーム7dと、固定アーム7dに第1関節8cによって自在に回動可能に接続された第1アーム7cと、第1アーム7cに第2関節によって自在に回動可能に結合された第2アーム7bと、第2アームに第3関節8aによって自在に回動可能に接続された3軸変位アーム7aとを有する。3軸変位アーム7aの先端には、集束型超音波トランスデューサアレイ50を有する超音波プローブ50aが接続される。超音波プローブ50aは、操作者3が一方の手で3軸変位アーム7aを把持して、ベッド9に横臥する被験者6の体表から離間して保持される。3軸変位アーム7aは、水平面に対して常に鉛直方向を維持するように配置されるので、超音波プローブ50aの測定面は、水平面に対して常に水平方向を維持される。多関節マニピュレータ7a,7b,7c,7dの各関節8a,8b,8cによって、操作者3は、被験者6の体表に沿って超音波プローブ50aを水平方向及び鉛直方向に自在に移動することができる。各関節8a,8b,8cには、エンコーダが内蔵されており、超音波プローブ50aの位置は、エンコーダ出力情報に基づいて正確に同定することができる。
【0024】
操作者3は、超音波プローブ50aを動かしてモニタ32を見ながら観測箇所を確認することができる。また、他方の手に持ったリモコン5によって、モニタ32を見ながら超音波診断装置本体1aに対して指示を送信し、画像の描画モード等を制御することもできる。
【0025】
なお、
図1に示す超音波診断システム40では、超音波プローブ50aを構成する集束型超音波トランスデューサアレイ50が、超音波の発信及び受信を行うトランスデューサとして機能し、超音波の反射波(エコー波)を測定する場合の構成を示している。このほかにも、超音波プローブには、超音波の発信を行う超音波振動子を用い、被験者に対して反対側に設置された超音波受信器を用いて(
図1の場合では、ベッド側に設置)、被験者の体内を透過した超音波を測定するようにしてもよいのは言うまでもない。
【0026】
2.超音波診断装置の構成例
上述した超音波診断システム40を構成する本発明が適用された超音波診断装置1は、
図2に示すように、超音波を送受信する集束型超音波トランスデューサアレイ50と、集束型超音波トランスデューサアレイ50に接続され、電気信号に変換された超音波信号を入出力する制御回路ユニット10と、制御回路ユニット10に接続され、制御回路ユニット10に対して体内組織のイメージングのための送信用ビームフォーミングを行う体内組織のイメージング用送信ビームフォーマ17とを備える。
【0027】
また、
図3に示すように、超音波診断装置1は、制御回路ユニット10からの信号を入力して体内組織のイメージングのための受信用ビームフォームを形成する体内組織のイメージング用受信ビームフォーマ25と、体内組織のイメージング用受信ビームフォーマ25からの信号に対して、パルス圧縮、位相検波、フィルタリング等の信号処理を行う信号処理部29と、信号処理部29において信号処理された画像信号にしたがって表示画像構築を行うスキャンコンバータ30と、スキャンコンバータ30の出力信号に基づいて所定の画像処理を行う画像処理部31と、画像処理部31によって処理が施された画像信号を表示するモニタ32とを備える。
【0028】
体内組織のイメージング用送信ビームフォーマ17及び体内組織のイメージング用受信ビームフォーマ25は、超音波診断装置1の動作を設定し、測定の手順等を司る処理部(CPU,Central Processing Unit)26と、処理部26が実行する命令を展開し、処理データを格納する記憶部(メモリ)27とともにバス28に接続され、バス28を介して、処理部26からの命令の実行、処理等を行う。処理部26は、たとえばマイクロプロセサやマイクロコントローラ等であり、記憶部27は、マイクロプロセサに内蔵された揮発性メモリあるいは不揮発性メモリである。記憶部27は、マイクロプロセサに外付けされた揮発性メモリあるいは不揮発性メモリであってもよい。バス28は、マイクロコンピュータシステムにおいて標準的に用いられるバス、たとえばISAバスやPCIバス等でもよく、専用に設計されたバスであってもよい。なお、バス28を介して、処理部26及び記憶部27が別体の、たとえばスタンドアロンのパーソナルコンピュータやワークステーションが接続されるように構成されてもよい。
【0029】
制御回路ユニット10は、本発明が適用された超音波診断装置1の中核をなすユニットである。制御回路ユニット10は、複数個のトランスデューサエレメント61が1次元状に配列されたカラムアレイ60ごとに用意され、対応するカラムアレイ60に接続される。
【0030】
制御回路ユニット10は、
図2の破線内のブロック図で示されるように、体内組織の超音波画像イメージングを行うための伝搬超音波ビームの形態を設定する体内組織のイメージング用送信ビームフォーマ17が生成する信号に基づいて、送信ビームステアリング及び/又は送信ビームフォーミング用の遅延時間のパターンを生成するビームステアリング用遅延時間パターン生成部15と、被験者6の体表又はその直下に2次音源を形成するための集束点距離制御用の遅延時間のパターンを生成する2次音源形成用遅延時間パターン生成部16とを有する。制御回路ユニット10は、ビームステアリング用遅延時間パターン生成部15及び2次音源形成用遅延時間パターン生成部16で生成された遅延時間パターンを遅延加算する遅延時間加算部14を有する。また、遅延時間加算部14の出力信号をサイン波の振幅変調波に変換して被験者6の体表に2次音源を形成する2次音源形成用送信ビームフォーマ13を有している。2次音源形成用送信ビームフォーマ13が出力する振幅変調波は、トランスデューサエレメント61を駆動することができる振幅に増幅するパルサに送られて、それぞれのトランスデューサエレメント61を駆動する。制御回路ユニット10は、1列分のカラムアレイユニット60を構成するトランスデューサエレメント61の個数分だけパルサを配列したパルサアレイ12を有する。パルサアレイ12の出力は、マルチプレクサ11を経由して、配線束70によって集束型超音波トランスデューサアレイ50を構成するそれぞれのトランスデューサエレメント61に供給される。
【0031】
上述した超音波を発生し、送信する経路とともに、制御回路ユニット10は、超音波を受信し、信号処理する経路を有している。すなわち、制御回路ユニット10は、集束型超音波トランスデューサアレイ50を構成するトランスデューサエレメント61で受信され、電気信号に変換された超音波信号がマルチプレクサ11を介して入力されるレシーバアレイ18と、レシーバアレイ18で信号処理された信号が入力され、それぞれの信号を遅延加算処理する受信ビームフォーマ19とを有する。受信ビームフォーマ19の出力は、SW20を介して、受信信号の最大値を検出する最大値検出部21又は受信信号のドップラシフトを検出するドップラシフト検出部23に選択的に接続される。体表に超音波を集束させる超音波集束モードの場合には、集束型超音波トランスデューサアレイ50を有する超音波プローブ50aと被験者6の体表との離間距離を測定し、SW20は、受信ビームフォーマ19の出力が最大値検出部21と接続するように制御信号入力用端子201を有したSW20を介して制御される。また、被験者6の体表に超音波を集束させ、2次音源を形成して、被験者の体内を伝搬する伝搬超音波によって超音波画像構築する超音波画像構築モードの場合には、SW20は、受信ビームフォーマ19の出力がドップラシフト検出部23に接続されるように制御される。SW20の制御は、好ましくは、制御信号入力用端子201を有したsw20を介して処理部26の指示にしたがって実行される。
【0032】
受信ビームフォーマ19が接続された最大値検出部21は、受信信号の最大値を検出して2次音源形成用遅延時間パターン生成部16に入力し、送信信号パターン及び検出された受信信号に基づいて離間距離演算部24によって被験者6の体表と超音波プローブとの離間距離を測定し、バス28を介して処理部26に離間距離情報を伝送する。なお、本明細書では、2次音源とは、実体のあるトランスデューサ等を示すものではなく、前記の集束型超音波トランスデューサアレイ50によって体表に形成された集束点を言うものとする。
【0033】
受信ビームフォーマ19が接続されたドップラシフト検出部23の出力は、ドップラシフトされた周波数を電圧に変換するFV変換部24に入力され、電圧信号に変換された受信信号は、体内組織のイメージング用受信ビームフォーマ25に入力されて画像構築処理がなされる。
【0034】
2−2.超音波トランスデューサの構成例
本発明が適用された超音波診断装置1を構成する集束型超音波トランスデューサアレイ50は、
図2に示すように、m行n列の2次元状に配列されたトランスデューサエレメント61を有する。トランスデューサエレメント61が1次元状にm個配列されたカラム集束型超音波トランスデューサアレイユニット(以下、カラムアレイユニットともいう。)60ごとに被験者の体表上に2次音源を形成するように、制御回路ユニット10が接続されるのが好ましい。
【0035】
トランスデューサエレメント61は、超音波振動子からなり、材料や構成が特に限定されるものではなく周知のものを制限なく用いることができる。たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミクス材料によるものであってもよく、多孔質ポリプロピレン(セルラーPP)、強誘電性ポリマPVDF(ポリフッ化ビニリデン、PolyVinylidene DiFluoride)のような樹脂系材料のものであっても、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶でもよい。
【0036】
図4(A)に示すように、集束点軸63上のいずれかの位置に超音波の集束点を形成するように、カラムアレイユニット60は、集束点軸63を対称軸とする凹曲線状に基材62上に配列される複数のトランスデューサエレメント61によって構成される。
【0037】
カラムアレイユニット60を構成する各トランスデューサエレメント61は、後述するように、集束点軸63上に超音波が集束するように、それぞれ位相差を有する信号で駆動される。ここで、各トランスデューサエレメント61は、それぞれ集束点軸63に対して対称になるように配列されることによって、対称位置にあるトランスデューサエレメント61が同位相で駆動でき、接続配線の本数を減らすことができる。すなわち、
図4(B)に示すように、集束点軸63上のトランスデューサエレメント61aは、接続配線71aを有しており、トランスデューサエレメント61aに隣接するトランスデューサエレメント61b1,61b2は、同位相で駆動されるため同一の接続配線71bを有する。同様にトランスデューサエレメント61b1,61b2にそれぞれ隣接し、集束点軸63に対して対称位置にあるトランスデューサエレメント61c1,61c2は、同一の接続配線71cによって、同位相の信号で駆動される。以下同様にして最外のトランスデューサエレメント61n1,61n2まで、同一の接続配線71nによって駆動される。このような配線とすることによって、超音波を集束軸63上に集束させることができる。
【0038】
多数のトランスデューサエレメント61は2次元状に配列されて、集束型超音波トランスデューサアレイ50を構成することに代えて、cMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer、静電容量型マイクロマシンプロセスを用いて製造した超音波トランスデューサ)のように、単一の基材上に多数のトランスデューサエレメントを形成して、より小型化、軽量化を実現することもできる。
【0039】
単一基材上に多数のトランスデューサエレメントが形成された集束型超音波トランスデューサとして、コンポジット圧電体を用いることによって、凹曲面の形成が容易になり、好ましい。
【0040】
図5(A)〜
図5(C)に示すように、コンポジット圧電体による集束型超音波トランスデューサアレイ80は、コンポジット圧電体82を有する。コンポジット圧電体82は、周知の構成とすることができ、たとえば圧電体層上に形成された多数の微細柱状圧電素子である圧電ピラーと、その圧電ピラーの周囲を柔軟性樹脂で充填された構造となっている。コンポジット圧電体82は、片面が共通接地電極83であり、共通接地電極83は、通常、超音波送受面側に配置される。反対側の面、すなわちバッキング層85側の面に配置される分割電極81は、
図5(A)に示すように2次元に配列される。コンポジット圧電体82の圧電ピラーを埋める樹脂には、エポキシ等の高分子樹脂等の柔軟性のある樹脂を用いることができる。コンポジット圧電体82は、前述のように微細柱状圧電素子である圧電ピラーが柔軟性樹脂で連結された板状の圧電振動子であるため、容易に湾曲構造が実現でき、加えて同形状の圧電セラミクス板では実現不可能な大きな電気機械変換定数を持つことが特徴である。
【0041】
共通接地電極83上には音響整合層84が接合され、コンポジット圧電体82と空気との間の音響インピーダンス不整合を低減させ効率の良い超音波の送受信ができるようにしている。ただし、音響整合層84の厚さは、あつかう超音波の周波数fと音響整合層84の材料が持つ固有の音速vとから計算される波長λも1/4の厚さが最適とされ、この厚さの板が用いられる。したがって、送信時は周波数fの超音波を用いて音響整合が好適に実現されても、受信時にfと乖離した周波数の超音波をあつかうのでは超音波受信の効率を低減させてしまう。本発明の超音波診断装置1では、集束型超音波トランスデューサアレイ80のみを用いて、周波数fの空中超音波を体表に向けて送信し、体表直下に2次音源を形成し、周波数fの空中超音波よりも顕著に低周波f’(=(1/2)f以下となるエンベロープ周波数)の体内伝搬超音波をあつかうので、その周波数f’のままの超音波受信では、受信時の音響不整合を起こすことになる。
【0042】
音響整合層84に関する他の条件として、音響整合層84の音響インピーダンスの最適化とこの音響整合層84も湾曲構造とするので柔軟性が必要であり、これらの条件を勘案した音響整合層84を用いている。このような音響整合層84を形成することによって高い超音波送受信効率を持つ湾曲コンポジット超音波振動子を形成することができる。
【0043】
上述では、いずれの集束型超音波トランスデューサアレイにおいても、トランスデューサエレメントがm行n列の2次元マトリクス(格子状)に配列されている場合について示したが、たとえばAモード信号の送受信とし対象物を相対的に走査することによって画像構築する場合には、トランスデューサエレメントが同心円状に配列された単一のアニュラアレイ振動子構造であってもよく、その他公知のトランスデューサアレイの構造とすることができるのは言うまでもない。
【0044】
3.動作原理及び動作
3−1.2次音源の形成
上述したとおり、音響インピーダンスが大きく異なる空気と生体内(水中とほぼ等価)との間では超音波伝搬が困難であるため、本発明の超音波診断装置1では、音響放射圧、すなわち、強度の強い超音波が進行する方向に音響インピーダンスに大きな差がある媒体が存在する場合に、その媒体表面に直流的な圧力が発生するという原理を用いて、被験者の体表直下に形成された2次音源を利用する。
【0045】
図6に示すように、信号源によって、振幅Aの非線形信号Asinω
1t×sinω
2tを被験者6の体表6aに向けて放射する場合を考える。非線形信号Asinω
1t×sinω
2tは、三角関数の加法定理により、以下のように表わされる。
【0046】
sinω
1t×sinω
2t=−(1/2){cos(ω
1+ω
2)t
−cos(ω
1−ω
2)t} (3)
【0047】
ここで、ω=ω
1=ω
2とすると、(3)式は、第2高調波(2ω)とDC成分のみとなる。
【0048】
Asinω
1t×sinω
2t=−(1/2){cos(2ω)t−1} (3’)
【0049】
体表6aは、(3’)式の非線形超音波現象である放射圧のDC成分からなる音響放射圧によって信号の振幅に対象物の粘弾性特性を考慮した距離d
DCだけ凹む。
【0050】
このような音響放射圧に振幅変調をかけることによって、体表6aを押す圧力を変化させることができる。体表の圧力変化によって、体表6aを振動させて、生体内に縦波で伝搬する伝搬超音波を生成することができる。なお、
図6では、便宜的に集束超音波ではなく、平面波表示であるが、後述するように、実際には集束超音波を用いて、音響焦点において最大の超音波強度になるようにして、音響焦点で最大の非線形性が発揮できるようにする。
【0051】
図7(A)及び
図7(B)に示すように、超音波が体表6aに向かって進行し、体表6aは、変調された超音波信号の包絡曲線の波形で弾性振動する。この弾性振動は2次音源からの2次送信超音波となり体内深部に向かって伝搬する。この2次送信超音波が音響インピーダンスの異なる異常組織との境界部6bに達すると(
図7(A))、一部は透過波となり、裏面に到達し、残りは反射され、パルスエコー信号として体表6a側に到達する(
図7(B))。
【0052】
図8には、集束超音波発生手段であるカラムアレイユニット60を構成するいずれかのトランスデューサエレメント61を駆動するための印加電圧信号波形を示した。
【0053】
図8に示すように、カラムアレイユニット60に印加する電圧信号は、体内に伝搬する伝搬超音波のパルス幅T
pulse’の2次送信超音波パルス信号V
(body)transを体表に励起させるための空中超音波のパルス幅T
pulseを有する信号V
(air)burstと、生体内部から体表へ到達したパルスエコー信号V
(body)recをドップラ効果に基づいて受信する受信時間T
recを有する0Vではないベースライン信号V
(air)baseとからなる。空中超音波のパルス幅T
pulse及び受信時間T
recによって時間T
repの時間経過を所要し、この時間T
repを所要する1セットが繰り返される。このパルス信号V
(air)burstは、第1のバーストパルスV
b1、第2のバーストパルスV
b2、及びこれらのバーストパルスV
b1,V
b2に挟まれた0Vのベースライン時間T
base0とからなるパルス信号で、具体的にはサイン波の振幅変調波からなっていると言える。
図8の上側の波形図に示す印加電圧信号の印加によって、カラムアレイユニット60から集束超音波が体表に向かって伝搬し、伝搬時間T
airを経て、体表に2次音源を形成し、これが2次送信超音波パルスV
(body)transとなって体内深部に向かって伝搬する。この超音波信号V
(body)transは、カラムアレイユニット60の伝達関数H(ω)、空中伝搬時の超音波ロスAL(ω)、音響放射圧によるDC成分変換効率DC(ω)、及び体表組織の粘弾性特性TS(ω)による影響を積算的に受け、
図8の下側の図に示すようなパルス波形
V(body)transとなる。
【0054】
超音波V
(body)transは、体内深部に伝搬し、深部の特定の位置にある異常組織6bで反射した後、体表に向かって
図8の下側の図に示したようにパルスエコー信号V
(body)recが振幅減衰して体表6aにもどり、体表6aは、このパルスエコー信号波形V
(body)recに基づいて弾性変位振動する。この時、印加電圧の受信期間T
recにおいて、常時周波数fの超音波が体表6aに照射されているので、この照射信号であるパルスエコー信号V
(body)recは、ドップラシフトを受け、f±Δfの周波数となって、カラムアレイユニット60にもどってゆく。
【0055】
なお、前記した2次送信超音波パルスV
(body)transの波形は2つのバーストパルスからなる送信超音波パルス励起用信号の場合について記載したが、バーストパルスは、3つでも、4つでも、5つでもよい。
図9(A)〜
図9(C)に示すように、伝搬する生体内の粘弾性特性等の粘性特性によって、生体内を伝搬する縦波伝搬超音波の波形は変化し得る。
図9(B)及び図(C)に示すように、縦波伝搬超音波は、進行するにつれてゆるやかな波形となることもあるし、対象物の粘弾性特性によっては伝搬の最初から、
図9(B)や
図9(C)のような波形になっている場合もある。(
図9(A)、(B)、(C)の順で粘弾性特性が大きい。)
【0056】
異常部との境界部6bで反射された超音波のパルスエコー信号が被験者6の体表直下に到達すると、体表6aでは、周波数をfとした場合に、f×Δxの振動速度V
surfaceを持つ(ここで、f=1/(T
burst+T
base0)。
【0057】
図8にもどって、本発明による受信モードについて以下に説明する。
【0058】
受信期間T
recでは、周波数fの比較的振幅の小さいサイン波V
(air)baseが後続している。この区間ではその周波数と振幅に対応した比較的小さな音響放射圧による直流的な沈みこみ変位d
DCがT
recの間中発生すると同時に、同じ周波数のサイン波が反射しつづける。この状態において、体表6aにパルスエコー信号V
(body)recが到達すると、体表6aが周波数fと変位振幅に対応した振動速度の振動変位をするので、体表6aへ入射する周波数fの超音波はドップラシフトを受け、前記反射信号は、f±Δfのドップラ信号となって集束型超音波トランスデューサアレイ50に戻っていき受信される。一般には、Δfはfに比べてかなり小さいので、f±Δfが(1/2)fより小さくなることはなく、同一の音響整合層で受信時の音響整合効果を活用でき、受信感度を増加させることができる。
【0059】
3−2.集束点制御
上述したように、集束超音波を体表に照射することによって、体表に2次音源を形成し、体表を振動させて生体深部へ伝搬する2次送信超音波を形成することができる。さらに、超音波を体表直下に集束させることによって、体内への伝搬超音波を球面波あるいはシリンドリカル波として伝搬させることができ、このようにして形成された球面波、シリンドリカル波に対して、n個配列したカラムアレイユニット60のそれぞれにさらに位相制御を施すことによって、波面合成超音波ビームを形成し(ビームフォーミング)、形成した超音波ビームを集束(ビームフォーカシング)、リニア走査またはセクター走査(ビームステアリング)を実施し、関心領域の超音波診断画像を再構築できるようになる。
【0060】
図10では、2次音源のための集束点の垂直方向の位置制御方法を説明するために、
図2の制御回路ユニット10と、集束型超音波トランスデューサアレイ50を構成するカラムアレイユニット60と、対応する体表6aの部分とを取り出して示している。集束点の垂直方向の位置制御方法においては、制御回路ユニット10内の遅延時間パターン生成部15,16のうち、ビームステアリング用遅延時間パターン生成部15は、初期状態では信号を出力せず、2次音源形成用遅延時間パターン生成部16のみが動作する。
【0061】
n個配列した集束型超音波トランスデューサアレイ50の中の1番目の最初の集束型超音波トランスデューサアレイ60と体表6aとの離間距離X1とし、n番目のカラムアレイ集束型超音波トランスデューサアレイ60と体表6aとの離間距離Xnとする。この場合に、一般的には、X1≠Xnである。最初のカラムアレイユニット60を構成するm個のトランスデューサエレメント61が、2次音源形成用遅延時間パターン生成部16によって生成された遅延時間パターンによって空中集束超音波B1を発生する。この空中集束超音波B1が体表6a上に音響焦点F1として位置している。X1≠Xnなので、n番目のカラムアレイユニット60に対して、2次音源形成用遅延時間パターン生成部16が一番目のカラムアレイユニット60と同じ遅延時間パターンを生成しても、n番目のカラムアレイユニット60が発生する空中超音波Bnは、体表6a上に集束し音響焦点を結ばない。なお、カラムアレイユニット60は、所定の曲率半径の湾曲形状をしていて、それによる固定音響焦点を有しているので、集束点制御量はその固定集束点を中心に増減させる制御が行われる。
【0062】
図11(A)〜
図11(D)は、音響焦点位置合わせ制御の手順例を送受信の波形について示すものである。上述した
図10の1番目のカラムアレイユニット60について、
図11(A)に示すようなパルサアレイ12が出力する電圧信号S1(1),S2(1)...Si(1)...Sm(1)からなる遅延時間パターン11(11の前の1は1番目のカラムアレイユニット60に関しての場合を示し、後の1は1つ目の遅延パターンを示す)の場合に、
図11(C)のR1(1)に示すような受信ビームフォーマ19による加算処理後の受信パルス信号が得られる。同様に1番目のカラムアレイユニット60に対し
図11(B)に示した2つ目の送信遅延パターン12、すなわち電圧信号S1(2),S2(2)...Si(2)...Sm(2)からなる遅延時間パターン12を設定した場合の受信ビームフォーマ19による加算処理後の受信パルスは
図11(C)のR1(2)となる。さらにi番目のカラムアレイユニット60に対し、図に示していないi番目の送信遅延パターン1i、すなわち電圧信号S1(i),S2(i)...Si(i)...Sm(i)からなる遅延時間パターン1iを設定した時の受信ビームフォーマ19による加算処理後の受信パルスは、
図11(C)のR1(i)となる。そして、それぞれの受信信号レベルは、最大値検出部21で取得される。上記の様に受信信号R1(1)は、送信された遅延時間パターン11によって得られる受信パルス信号であり、R1(2)は、送信された遅延時間パターン2によって得られる受信波形であり、同様にR1(3)、R1(4)、R1(i)は
図11(A)に図示していない3番目,4番目,i番目に得られる受信パルス信号である。これらの受信パルス信号のうち、パルスの最大振幅値が最大になる時が音響焦点が体表に一致した場合であり、すなわち
図11(C)においてはR1(2)である。最大振幅値が最大になる送信遅延時間パターンの決定は、以下の様に行われる。送信遅延時間パターン11に対応して得られる受信パルス信号R1(1)の最大振幅値Vppが検出され、検出結果に基づいて離間距離演算部22で、体表6aとカラムアレイユニット60との離間距離が計算される。計算された結果をバス28を介して処理部26に送り、処理部26は、あらたな遅延信号パターンを生成するように2次音源形成用遅延時間パターン生成部16に指示する。2次音源形成用遅延時間パターン生成部16は、あらたな遅延時間パターン12をパルサアレイ12により送信する(
図11(B))。あらたな遅延時間パターン12に対する
図8(C)に示した受信信号R1(2)を取得して、上述と同様に最大値を取得する。同様にして受信信号の最大振幅値が最大になる送信遅延パターンが見つかるまで送信遅延パターンを変更し、見つかった時点で、その送信遅延パターンを記憶させ、同時に、受信パルス信号の発生時刻を評価することによって、カラムアレイユニット60から体表6aまでの距離が判明する。R1(2)なる受信パルスが得られた時の送信遅延時間パターン2に固定することによって、1番目のカラムアレイユニット60に関して、体表6aへの音響焦点合わせが完了することになる。2番目、3番目、・・・,i番目、・・・n番目のカラムアレイユニット60についても同様の音響焦点合わせをして体表に焦点合わせが実施されて2次音源アレイが構築されたことになる。
【0063】
上述のように、空中超音波を発信する各トランスデューサエレメント61のそれぞれの遅延時間を制御して受信信号のレベルが最大になる遅延時間パターン(位相パターン)を集束点を取得したものとして採用する。
図2において、集束点制御を行う集束点制御モードでは、SW20を最大値検出部21の側に接続することによって行う。各カラムアレイユニット60ごとに取得された遅延時間パターンを記憶部27に格納して、伝搬超音波を受信して超音波画像を構築する超音波画像構築モードにおいて、体表位置(距離)を制御しつつ、SW20をドップラシフト検出部23側に切り替えて、伝搬超音波信号、すなわち音響インピーダンスの異なる異物を透過した透過超音波信号を背面側から、又は、異物との境界で反射したパルスエコー信号を体表側から取得する。
【0064】
3−3.超音波ビームフォーミング
本発明が適用された超音波診断装置1では、上述したように、2次音源は、被験者6の体表6aに点状に形成され、形成された2次音源は、体内に向かって球面波又はシリンドリカル波として伝搬する2次送信超音波を体内深部に伝搬させる。ここで、トランスデューサアレイを構成するカラムアレイユニット60がそれぞれ生成する2次音源に対して、さらに位相制御を行うことによって、伝搬超音波が形成する合成波面Swの曲率と向きを任意に設定することができる。
【0065】
図12に示すように、2次音源形成用遅延時間パターン生成部16が生成する遅延時間パターンに、ビームステアリング用遅延時間パターン生成部15が生成する遅延時間パターンを加算することによって、2次音源が生成する伝搬超音波のビームフォーミング、すなわちビームフォーカシングによる焦点形成と、ビームステアリングを走査、すなわちビームステアリングとを行うことができる。たとえば、最初のカラムアレイユニット60の空中超音波B1による集束点F1に形成される2次音源は、球面波又は円筒波となりその波頭が所定のタイミングで被験者6の体内の位置Sw1に合成波面を形成する。n番目のカラムアレイ60の空中超音波Bnにより集束点Fnに形成される2次音源が生成する2次送信超音波の位相をF1に形成される2次音源のものよりもt
delayだけ位相を遅らせてカラムアレイ60を駆動することによって、最初のカラムアレイ60による2次音源が生成する伝搬超音波と、n番目のカラムアレイ60による2次音源が生成する伝搬超音波とでは、伝搬距離差X
delay=1500[m/s]×t
delayが生ずる。生体内を伝搬する超音波の速度1500[m/s]は一定なので、2次音源ごとにt
delayを設定する、すなわち位相制御することにより、各2次音源の生成する球面波の波面が形成する合成波面の曲率と向きを制御することができる。形成された合成波Swは、伝搬超音波ビームBBを形成して体内を伝搬し、ビーム焦点FBを形成する。また、2次音源ごとにt
delayを動的に制御することによって、合成波面Swの曲率と向きを動的に変更することができ、
図12の矢印Locus
steerの方向にセクター走査ができる。
【0066】
なお、ビームステアリング用遅延時間パターン生成部15によって、位相制御してビームフォーミング及び/又はビームステリングを行う手法については、周知のものを用いることができるのは言うまでもない。
【0067】
3−4.受信ビームフォーミング
受信された超音波信号は、レシーバアレイ18を構成する各レシーバにおいて所定の信号処理がなされて、受信ビームフォーマ19に入力される。受信ビームフォーマ19では、m個の受信信号(m行n列の集束型超音波トランスデューサアレイの場合)が遅延加算処理されて1つの受信信号が形成される。受信ビームフォーマ19には、周知の構成を用いることができる。
【0068】
なお、受信ビームフォーマ19の出力信号はドップラ効果の影響を受けた信号であり、送信信号の周波数をfとすると、f±Δfの周波数成分からなっていて、ドップラシフト±Δfの中に異物境界で反射したパルスエコー信号が体表に到達し体表を振動変位させている情報が含まれている。その情報を解析するためには±Δfをドップラシフト検出器23によって取り出し、さらにFV変換器24で電圧信号に変換する。このFV変換信号は、n個の制御回路ユニット10の1つずつに出力されるので、それらを体内組織のイメージング用受信ビームフォーマ25で遅延加算処理を行い、加算処理後の受信信号を対数増幅、ダイナミックフィルタリング、STC処理等の周知の信号処理29を行い、その出力信号をスキャンコンバータ30で画像信号に変換し、輪郭強調、ガンマ補正、明度、コントラスト強化などの画像処理31を行いモニタ32に表示する。本発明が適用された超音波診断装置では、上述したように、サイン波による振幅変調波を用いた音響放射圧に基づく伝搬超音波には、基本周波数fに加えて、第2高調波成分等の高調波成分が含まれるので、この高調波成分を用いることによってより高い空間分解能で画像構築することもできる。
【0069】
4.模擬実験
水を入れ、一部に体表に相当するメンブレン(ポリエチレン製の膜)を形成した水槽を生体(密度がほぼ等しく、超音波の伝搬速度がほぼ等しい)に見立てて、メンブレンに集束超音波をあてて、2次音源を形成し、水中を伝搬する伝搬超音波を生成する実験を行った。
【0070】
図13には、2次音源による伝搬超音波生成実験のための測定系の概要を示す。集束超音波を発信する集束型超音波トランスデューサ100は、所定の離間距離だけ離間させた水槽105の壁面の一部に形成されたメンブレン102上に超音波101を集束させるように配置した。水槽105には水107が満たされている。水107中には、生体内の骨に見立てた3本の木製の棒104a,104b,104cを等間隔に配置した。木製の棒104aと104cとの距離は、4.8cmであった。
【0071】
集束型超音波トランスデューサ100から非線形超音波を発信し、水107中を伝搬する伝搬超音波106を生成し、水槽105の反対側の面にマイクロフォン108を配置して、集束型超音波トランスデューサ100とマイクロフォン108をセットにして水槽に対しX,Y方向に移動させて、移動量に対してマイクロフォン108の出力電圧をプロットすることにより得られた超音波像を
図14に示した。
【0072】
図14に測定結果と、比較のために行ったコンピュータシミュレーションの結果を示す。
図14(A)には、
図13の測定系によって測定した超音波信号を画像処理して表示した結果であり、集束型超音波トランスデューサ100から発信される超音波の周波数は、40kHzを用いている。
【0073】
図14(B)及び
図14(C)には、実測値との比較のために行ったコンピュータシミュレーションの結果であり、
図14(B)には、実測の場合と同じ周波数の超音波を用いた場合の結果を示す。
図14(C)には、超音波の周波数を400kHzにした場合のコンピュータシミュレーション結果を示す。
【0074】
これらの結果より、3本の木製の棒の位置を正確に示していることが検証された。また、
図14(B)及び
図14(C)の対比により、超音波の周波数をさらに高周波化することによって分解能を向上させることができることが示唆されている。