特許第6132341号(P6132341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6132341可動接点部材および可動接点部材を用いたスイッチ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132341
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】可動接点部材および可動接点部材を用いたスイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/48 20060101AFI20170515BHJP
   H01H 13/52 20060101ALI20170515BHJP
   H01H 1/20 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H01H13/48
   H01H13/52 F
   H01H1/20
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-98986(P2013-98986)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-220130(P2014-220130A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩間 尚也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】貞松 伊鶴
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−127385(JP,A)
【文献】 特開昭62−176013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/48
H01H 1/20
H01H 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨出して形成されたドーム部と、
前記ドーム部の外縁部に設けられ前記ドーム部を支持する脚部と、
操作に応じて移動可能な接触部と、前記膨出する方向からの平面視で前記ドーム部の中央位置に配置される開口部と、を有する前記膨出する方向からの押圧により反転する可動接点部材であり、
前記接触部は、前記膨出する方向からの平面視で前記開口部の中央位置に配置されるとともに、前記ドーム部の内方へ突出し、
前記ドーム部から内方へ延出された撓み変形可能な連結部によって、前記接触部と前記ドーム部とが連結されていることを特徴とする可動接点部材。
【請求項2】
前記ドーム部が反転することを特徴とする請求項1に記載の可動接点部材。
【請求項3】
下方に押圧されたとき、前記ドーム部が反転することなく、前記接触部が前記脚部と同じ高さまで下降することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可動接点部材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の可動接点部材と、
前記可動接点部材と電気的に接続可能な固定接点部を備えた基板と、を有し、
前記可動接点部材が押圧され、前記接触部が前記固定接点部に接触し電気的接続がなされた後において、更に前記可動接点部材が押圧されたとき、前記ドーム部および前記連結部が撓み、前記ドーム部が反転するスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点部材および可動接点部材を用いたスイッチ装置に関し、特に、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応することができる可動接点部材および可動接点部材を用いたスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器に用いられるスイッチ装置において、確実なスイッチングができ、明確な操作感触のあるスイッチ装置が求められている。このようなスイッチ装置としては、オーバーストロークに対応したスイッチ装置が用いられることが多い。オーバーストロークに対応していないスイッチ装置においては、可動接点部材が押圧され、反転動作を行なった後(操作感触を発生させた後)に可動接点部材と固定接点部とが接触し、電気的なスイッチングが行なわれる。オーバーストロークに対応したスイッチ装置においては、可動接点部材が押圧され、反転動作を行なう前に可動接点部材と固定接点部とが接触し、電気的なスイッチングが行なわれる。その後、更に可動接点部材を押圧することで、可動接点部材が反転動作する(操作感触を発生させる)構造となっている。このような構造とすることで、可動接点部材と固定接点部とはより長い時間接触することとなり、確実なスイッチングが行なえ、明確な操作感触も得ることができる。なお、電気的なスイッチングを行なった後に、操作感触を発生させる構造となっているスイッチ装置を、オーバーストロークに対応したスイッチ装置とする。このようなオーバーストロークに対応したスイッチ装置としては、下記の特許文献1に記載のスイッチ装置およびスイッチ装置に用いられている可動接点部材が知られている。
【0003】
以下、図12を用いて、特許文献1に記載のスイッチ装置について説明する。図12は、特許文献1に記載のスイッチ装置900の外観を示す図であり、図12(a)はスイッチ装置900の外観を示す平面図であり、図12(b)はスイッチ装置900の外観を示す側面図である。
【0004】
特許文献1に記載のスイッチ装置900は、ドーム状に形成された薄板(可動接点部材)903と、電気回路が形成された絶縁基板902と、を有している。薄板903は外周端部から外方へ突出した4本の脚部915(915a、915b、915c、915d)が等間隔に配置されている。対向して配置された脚部915aと脚部915dとの長さは同じであり、同様に対向して配置された脚部915bと脚部915cとの長さは同じである。しかし、脚部915aと脚部915dとの長さは、脚部915bと脚部915cとの長さよりも長く形成されている。
【0005】
絶縁基板902は、第1固定接点部906aと第2固定接点部906bと第3固定接点部906cとを備えた導電ゾーン906と、第4固定接点部907dを備えた導電ゾーン907と、が一方の面に電気回路として形成されている。第1固定接点部906a、第2固定接点部906b、第3固定接点部906cおよび第4固定接点部907dはそれぞれ離間して配置され、電位気的に絶縁されている。また、第1固定接点部906a、第2固定接点部906b、第3固定接点部906cおよび第4固定接点部907dは同一円の上となるように配置され、第2固定接点部906bと第3固定接点部906cとが対向する位置に配置され、第1固定接点部906aと第4固定接点部907dとが対向する位置に配置されている。また、第2固定接点部906bと第3固定接点部906cとを結ぶ直線と、第1固定接点部906aと第4固定接点部907dとを結ぶ直線と、は直交している。
【0006】
薄板903は絶縁基板902の上に配置され、未操作時には第1固定接点部906aに接触して脚部915aが配置されるとともに、第4固定接点部907dに接触して脚部915dが配置され、第1固定接点部906aと第4固定接点部907dとは薄板903を介して電気的に接続されている。なお、脚部915aと脚部915dとは、脚部915bと脚部915cとの長さより長いため、脚部915cは第3固定接点部906cの上方に離間して配置されるとともに、脚部915bは第2固定接点部906bの上方に離間して配置されている。以下、脚部915bと脚部915cとを可動脚部、脚部915aと脚部915dとを固定脚部、とよぶ。
【0007】
駆動体904を用いて薄板903を上から押圧操作を行なうと、薄板903は下方へ撓み、薄板903が下方へ撓むことで、脚部915cは第3固定接点部906cと接触し、脚部915bは第2固定接点部906bと接触する。これにより薄板903を介して新たな電気的な接続が得られ、出力することができる。このように新たな電気的な接続が得られたのちも更に薄板903を押圧操作することができ、更に押圧操作すると薄板903は反転動作を行ない、操作者に反転時の瞬間的な作動力の変化を操作感触として伝えることができる。すなわち、オーバーストロークに対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−67989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、特許文献1に記載のスイッチ装置900は、薄板903を脚部915aと脚部915dとで支持した状態から、薄板903を押圧して脚部915a、脚部915b、脚部915cおよび脚部915dとで支持する状態になることでスイッチングが行なわれる構造である。したがって、スイッチングが行なわれるタイミングを遅らせたい場合には、固定脚部の長さと可動脚部の長さの差をより大きくする必要がある。この長さの差が大きくなると、押圧操作の途中で薄板903が傾くなどして各脚部915の撓み具合が異なり、スイッチングの動作を行なう時の操作感触がばらつくことが懸念される。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決して、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応することができる可動接点部材および可動接点部材を用いたスイッチ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の可動接点部材においては、膨出して形成されたドーム部と、前記ドーム部の外縁部に設けられ前記ドーム部を支持する脚部と、操作に応じて移動可能な接触部と、前記膨出する方向からの平面視で前記ドーム部の中央位置に配置される開口部と、を有する前記膨出する方向からの押圧により反転する可動接点部材であり、前記接触部は、前記膨出する方向からの平面視で前記開口部の中央位置に配置されるとともに、前記ドーム部の内方へ突出し、前記ドーム部から内方へ延出された撓み変形可能な連結部によって、前記接触部と前記ドーム部とが連結されている、という特徴を有する。
【0012】
請求項2に記載の可動接点部材においては、前記ドーム部が反転する、という特徴を有する。
【0013】
請求項3に記載の可動接点部材においては、下方に押圧されたとき、前記ドーム部が反転することなく、前記接触部が前記脚部と同じ高さまで下降する、という特徴を有する。
【0014】
請求項4に記載の可動接点部材を用いたスイッチ装置においては、請求項1ないし請求項3に記載の可動接点部材と、 前記可動接点部材と電気的に接続可能な固定接点部を備えた基板と、を有し、前記可動接点部材が押圧され、前記接触部が前記固定接点部に接触し電気的接続がなされた後において、更に前記可動接点部材が押圧されたとき、前記ドーム部および前記連結部が撓み、前記ドーム部が反転する、という特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、脚部はドーム部を保持する機能に特化することで、脚部の長さを長くした場合にも安定してドーム部を保持することができ、ドーム部の傾きによる操作感触のバラツキが発生し難い。また、接触部をドーム部の中央位置に設け、ドーム部の内方へ突出して形成し、前記ドーム部から内方へ延出された撓み変形可能な連結部によって、前記接触部と前記ドーム部とが連結することで、可動接点部材を押圧操作したときに、接触部が接触した後に連結部およびドーム部が撓み、ドーム部が反転するため、オーバーストロークに対応することができる。したがって、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応することができる可動接点部材を提供することができる、という効果を奏する。
【0016】
請求項2によれば、ドーム部が反転することで、操作者に対する操作感触を発生させることができる、という効果を奏する。
【0017】
請求項3の発明によれば、下方に押圧されたとき、ドーム部が反転することなく、接触部が脚部と同じ高さまで下降することで、電気的スイッチングを行った後に、操作感触を発生させることができる、という効果を奏する。


【0018】
請求項4の発明によれば、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応可能なスイッチ装置を提供することができる、という効果を奏する。
【0019】
以上より、本発明によれば、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応することができる可動接点部材および可動接点部材を用いたスイッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態におけるスイッチ装置100の外観を示す模式図である。
図2】本実施形態におけるスイッチ装置100の構成を示す模式断面図である。
図3】本実施形態における可動接点部材1の概観を示す図である。
図4】本実施形態における基板2および固定接点部3の外観を示す図である。
図5】本実施形態における駆動体4の外観を示す図である。
図6】本実施形態における保持シート5の外観を示す図である。
図7】駆動体4が押圧操作され、接触部1cと第2固定接点部3bとが接触した状態のスイッチ装置100を示す模式断面図である。
図8図7に示す状態からさらに駆動体4が押圧操作され、ドーム部1aが反転した状態のスイッチ装置100を示す模式断面図である。
図9】本実施形態における可動接点部材1の変形例の一つを示す平面図である。
図10】本実施形態における可動接点部材1の変形例の一つを示す平面図である。
図11】本実施形態における可動接点部材1の変形例の一つを示す平面図である。
図12】特許文献1に記載のスイッチ装置900の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下に本実施形態における可動接点部材1を用いたスイッチ装置100について説明する。
【0022】
まず始めに本実施形態におけるスイッチ装置100の構成について図1ないし図6を用いて説明する。図1は本実施形態におけるスイッチ装置100の外観を示す模式図である。図2は本実施形態におけるスイッチ装置100の構成を示す模式断面図である。図2においては、説明を容易にするため、実際の形状や断面と異なる部分もある。図3は本実施形態における可動接点部材1の外観を示す図であり、図3(a)は図2に示すZ1方向側から見た状態の可動接点部材1の外観を示す平面図であり、図3(b)は図3(a)に示す断面A−Aを示す断面図である。なお、図3(b)においては説明を容易にするため、連結部1eの断面も模式的に図示している。図4は本実施形態における基板2および固定接点部3の外観を示す図であり、図4(a)は基板2および固定接点部3の外観を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)に示すX2方向側から見た状態の基板2および固定接点部3の外観を示す側面図である。図5は本実施形態における駆動体4の外観を示す図であり、図5(a)は駆動体4の外観を示す平面図であり、図5(b)は図5(a)に示すY2方向側から見た状態の駆動体4の外観を示す側面図である。図6は本実施形態における保持シート5の外観を示す図であり、図6(a)は保持シート5の外観を示す平面図であり、図6(b)は図6(a)に示す断面B−Bを示す断面図である。
【0023】
スイッチ装置100は、図2に示すように、弾性および導電性を有する可動接点部材1と、可動接点部材1と電気的に接続可能な固定接点部3を備えた基板2と、可動接点部材1を押圧する駆動体4と、可動接点部材1を基板2に保持する保持シート5と、カバー部材6と、を有する。
【0024】
可動接点部材1は、弾性および導電性を有する金属板からなり、図3に示すように、膨出して形成されたドーム部1aと、ドーム部1aの外縁部に設けられドーム部1aを支持する脚部1bと、操作に応じて移動可能な接触部1cと、を有している。
【0025】
ドーム部1aは、膨出する方向(Z1方向)からの平面視で円形状であり、頂部に開口部1dを有している。開口部1dとドーム部1aとの境界部である開口部1dの外方部1gは、ドーム部1aの円形状に相似した円弧形状となっている。
【0026】
脚部1bは、ドーム部1aの外延部から外方へ延出して4つ形成されている。脚部1bは、所定の間隔で配置された2つが対を成し、2組形成されている。なお、本実施形態においては、所定の間隔を脚部1bの先端同士の距離寸法(図3に示すDS)で規定しており、ドーム部1aの直径以下の寸法とすることが望ましく、所定の間隔をドーム部1aの直径の寸法とほぼ同一としている。また、脚部1bの先端は、可動接点部材1をZ1方向側から平面視したときに、ドーム部1aの外形の中心(図3に示す点CP)と同じ中心の仮想の同一円の上に位置し、脚部1bの対同士は点対称の位置に配置されている。
【0027】
接触部1cは、ドーム部1aが膨出する方向からの平面視で開口部1dの中央位置に配置されるとともに、撓み変形可能な連結部1eによりドーム部1aに連結され、ドーム部1aの内方(Z2方向)へ突出している。すなわち、接触部1cはドーム部1aの開口部1dが形成された頭頂部よりも下方(Z2方向側)に位置している。また、連結部1eは、桟状に形成された複数の腕部1fからなる。本実施形態においては、接触部1cの周囲に等間隔に3つの腕部1fが配置され、放射線状に延出して形成されている。
【0028】
基板2は、リジット基板(紙フェノール基板)であり、図4に示すように、長方形の平板状に形成されている。基板2の上面には導電性インクを印刷し、焼成してなる固定接点部3が形成されている。固定接点部3は、円環状に形成され可動接点部材1の脚部1bと接触可能な第1固定接点部3aと、円環状に形成された第1固定接点部3aの中心位置に形成され、可動接点部材1の接触部1cと接触可能な第2固定接点部3bと、を有する。第1固定接点部3aと第2固定接点部3bとは絶縁されており、それぞれ外部と電気的に接続可能な外部接続端子3cに接続されている。
【0029】
駆動体4は、合成樹脂材からなり、図5に示すように、円盤状に形成されたベース部4aと、ベース部4aの上面(Z1方向側の面)の中央に上方へ突出し、円柱状に形成された操作部4bと、ベース部4aを挟んで操作部4bと対向する位置(下面の中央)に円柱状に形成された押圧部4cと、を有する。円柱状に形成された押圧部4cの直径寸法は、可動接点部材1の開口部1dの直径寸法よりも大きく形成されている。
【0030】
保持シート5は合成樹脂材からなり、図6に示すように、可撓性を有し長方形のシート状に形成されたシート部5aを有し、シート部5aは可動接点部材1を覆うことが可能な大きさに形成されている。また、保持シート5は、シート部5aの一方の面(Z2方向側の面)に粘着剤からなる粘着層5bが形成されている。ただし、保持シート5の一方の面の中心部には、粘着剤が塗布されていない非粘着部5cが形成されている。非粘着部5cは、可動接点部材1の開口部1dとほぼ同一の大きさおよび形状に形成されている。
【0031】
カバー部材6は、金属板からなり、図1および図2に示すように、中空で下方(Z2方向側)が開放した直方体の箱状に形成されている。カバー部材6は、長方形の平板状に形成された天面部6aを有し、天面部6aには駆動体4の操作部4bを挿入可能な挿通孔6bが形成されている。天面部6aの四辺には、天面部6aに連続して下方(Z2方向)へ延設された側壁6cが形成されている。
【0032】
次にスイッチ装置100の構造について図2を用いて説明する。
【0033】
図2に示すように、可動接点部材1は脚部1bがそれぞれ第1固定接点部3aに接するように基板2の上に配置されている。また、可動接点部材1に重ねて保持シート5が配置されており、保持シート5は粘着層5bが可動接点部材1と接触する向きにして配置されるとともに、非粘着部5cは可動接点部材1の開口部1dに対向して配置されている。このように配置された保持シート5が可動接点部材1に粘着するとともに、基板2に粘着することで、可動接点部材1は基板2上に係止される。なお、保持シート5は可撓性を有しているため、可動接点部材1は保持シート5と一体に上下方向(Z1−Z2方向)へ変形可能に係止されている。駆動体4は、押圧部4cが可動接点部材1の開口部1d(接触部1c)に対向するように、保持シート5に重ねて配置されている。また、駆動体4の操作部4bは、カバー部材6の挿通孔6bに、側壁6cが延設される側から挿入して配置され、カバー部材6は側壁6cが基板2に当接するように基板2上に係止されている。これにより、駆動体4は、上下方向に移動可能に、カバー部材6と保持シート5(可動接点部材1)との間に保持されている。このようにしてスイッチ装置100は形成される。
【0034】
次にスイッチ装置100の動作について図2図7および図8を用いて説明する。図7は駆動体4が押圧操作され、接触部1cと第2固定接点部3bとが接触した状態のスイッチ装置100を示す模式断面図である。図8図7に示す状態からさらに駆動体4が押圧操作され、ドーム部1aが反転した状態のスイッチ装置100を示す模式断面図である。なお、図7および図8においては、説明を容易にするため、実際の形状や断面と異なる部分もある。
【0035】
スイッチ装置100が操作されていないとき(初期状態)においては、図2に示すように、可動接点部材1は第1固定接点部3aとは接触しているが、第2固定接点部3bとは離間した状態である。すなわち、第1固定接点部3aと第2固定接点部3bとの間には電気的な導通がない状態である。
【0036】
図2に示す状態から駆動体4の操作部4bを下方に押圧すると、駆動体4の押圧部4cは保持シート5を介して可動接点部材1を押圧する。なお、押圧部4cの直径寸法は、可動接点部材1の開口部1dの直径寸法よりも大きく形成されているため、押圧部4cは開口部1dの外周端部付近のドーム部1aを押圧する。下方へ押圧されたドーム部1aは下方へ撓む。ドーム部1aの撓みに連動して、接触部1cは下方へ移動し、図7に示すように、第2固定接点部3bと接触する。すなわち、第1固定接点部3aと第2固定接点部3bとの間は、可動接点部材1を介して電気的に導通される。
【0037】
図7に示す状態からさらに駆動体4の操作部4bを下方に押圧すると、第1固定接点部3aと第2固定接点部3bとの間の電気的な導通を保持したまま、ドーム部1aはさらに下方へ撓むとともに、腕部1fも下方へ撓み、図8に示すように、ドーム部1aは反転する。反転は瞬間的に行なわれ、押圧に抗する力が急激に変化するため、駆動体4を介して操作者に操作感触として伝わる。前述の通り、電気的なスイッチングを行なった後に、操作感触を発生させる構造となっているスイッチ装置を、オーバーストロークに対応したスイッチ装置と定義している。したがって、本実施形態のスイッチ装置100は、電気的なスイッチングを行なった後に、操作感触を発生させる構造であることから、オーバーストロークに対応していると言える。なお、操作部4bへの押圧を解除すると、可動接点部材1の弾性力により、初期状態に復帰し、第1固定接点部3aと第2固定接点部3bとの間の電気的な導通はなくなる。このように第1固定接点部3aと第2固定接点部3bとの間の電気的な導通状態が切り換わることでスイッチ装置として機能する。
【0038】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0039】
本実施形態の可動接点部材1では、膨出して形成されたドーム部1aと、ドーム部1aの外縁部に設けられドーム部1aを支持する脚部1bと、操作に応じて移動可能な接触部1cと、を有する可動接点部材であり、ドーム部1aは頂部に開口部1dを有しており、接触部1cは、膨出する方向からの平面視で開口部1dの中央位置に配置されるとともに、ドーム部1aに撓み変形可能な連結部1eにより連結され、ドーム部1aの内方へ突出している、構成とした。
【0040】
これにより、脚部1bはドーム部1aを保持する機能に特化することで、脚部1bの長さを長くした場合にも安定してドーム部1aを保持することができ、ドーム部1aの傾きによる操作感触のバラツキが発生し難い。また、接触部1cをドーム部1aの中央位置に設け、ドーム部1aの内方へ突出して形成することで、可動接点部材1を押圧操作したときに、接触部1cが接触した後に連結部1eおよびドーム部1aが撓み、ドーム部1aが反転するため、オーバーストロークに対応することができる。したがって、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応することができる可動接点部材1を提供することができる、という効果を奏する。
【0041】
また、本実施形態の可動接点部材1では、脚部1bは、所定の間隔で配置された2つが対を成し、2組形成されており、連結部1eは、桟状に形成された複数の腕部1fからなる、構成とした。
【0042】
このように脚部1bを配置することで、ドーム部1aをバランスよく支持することができる。また、複数の腕部1fで接触部1cを支持することで、接触部1cをバランスよく支持することができる。したがって、押圧操作時の姿勢がより安定し操作感触のばらつきが発生し難くなる、という効果を奏する。
【0043】
また、本実施形態の可動接点部材1では、対を成す脚部1bの所定の間隔は、ドーム部1aの直径以下の寸法とした。これにより、少なくともある方向における可動接点部材1の寸法はドーム部1aの直径以下に抑えられるので、スイッチ装置に可動接点部材1を配置した時の占有面積を小さくすることできる。したがって、小型のスイッチ装置にも対応しやすいという効果を奏する。さらに、所定の間隔をドーム部1aの直径の寸法とほぼ同一とすることで、小型のスイッチ装置にも対応しやすくなるとともに、可動接点部材1は傾いたりし難くなり、基板2上に安定した配置をしやすくなるという効果を奏する。
【0044】
また、本実施形態の可動接点部材1では、ドーム部1aは、膨出する方向からの平面視で円形状であり、開口部1dとドーム部1aとの境界部である開口部1dの外方部1gは、ドーム部1aの円形状に相似した円弧形状となっている、構成とした。
【0045】
これにより、開口部1dの外方部1gをドーム部1aの円形状に相似した円弧形状とすることで、押圧操作時に応力が特定の箇所に集中し難くなり、応力集中による操作感触のばらつきを低減することができる、という効果を奏する。
【0046】
本実施形態の可動接点部材1を用いたスイッチ装置100では、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応することができる可動接点部材1と、可動接点部材1と電気的に接続可能な固定接点部3を備えた基板2と、を有する、構成とした。
【0047】
これにより、操作感触がばらつき難い可動接点部材1を用いることで、操作感触がばらつき難く、オーバーストロークに対応可能なスイッチ装置を提供することができる、という効果を奏する。
【0048】
本実施形態の可動接点部材1を用いたスイッチ装置100では、保持シート5は、非粘着部5cが可動接点部材1の開口部1dに対向して配置される構造とした。これにより、連結部1e(腕部1f)は粘着層5bには接触しないため、粘着層5bの粘着力により連結部1e(腕部1f)の動作に悪影響を及ぼし難くなるという効果を奏する。
【0049】
以上のように、本発明の実施形態に係る可動接点部材および可動接点部材を用いたスイッチ装置を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0050】
(1)本実施形態の可動接点部材1において、連結部1eは、図3に示すように、桟状に形成された複数の腕部1fからなり、接触部1cの周囲に等間隔に3つの腕部1fが配置され、放射線状に延出して形成されている構造としたが、腕部1fの数や形状などを変えたものでも良い。例えば、連結部1eは、図3に示した形状ではなく、図9ないし図11に示すような構造であっても良い。なお、図9は本実施形態における可動接点部材1の変形例の一つを示す平面図である。図10は可動接点部材1の変形例の一つを示す平面図である。図11は可動接点部材1の変形例の一つを示す平面図である。図9に示す変形例においては、連結部1eは、接触部1cの周囲に等間隔に3つの腕部1fが配置され、腕部1fはそれぞれ蛇行するように延出して形成されている。なお、腕部1fは同一形状に形成されている。図10に示す変形例においては、連結部1eは、接触部1cを挟んで対称な位置に1つずつ腕部1fが配置され、腕部1fはそれぞれ蛇行するように延出して形成されている。なお、腕部1fは同一形状に形成されている。図9および図10に示す変形例のように、腕部1fを蛇行するように延出して形成することで、放射線状に延出させた場合に比べて、腕部1fの長さを長く取ることができるため、腕部1fの撓み量を大きくすることができる。図11に示す変形例においては、連結部1eは、接触部1cの周囲に1つの腕部1fが配置され、腕部1fは直線状に延出して形成されている。腕部1fが1つしかないが、図3図9および図10に示す形状にした場合と同様の効果が得られる。
【0051】
(2)本実施形態のスイッチ装置100において、可動接点部材1、固定接点部3等の数は1つとしたが、可動接点部材1、固定接点部3等の数を増やして、複数のスイッチング操作が可能な構造としても良い。
【0052】
(3)本実施形態のスイッチ装置100において、基板2はリジット基板としているが、用途に応じてフレキシブル基板を用いても良い。
【0053】
(4)本実施形態のスイッチ装置100において、固定接点部3を基板2に印刷して設ける構造としたが、固定接点部3を金属板で形成し、固定接点部3を合成樹脂材にインサート成形して基板2を形成する構造でも良い。
【0054】
(5)本実施形態のスイッチ装置100において、駆動体4の押圧部4cは円柱状に形成されているが、外方部1g(開口部1d)の周囲のドーム部1aを押圧可能であれば、押圧部4cは円筒状に形成されていてもよい。
【0055】
(6)本実施形態のスイッチ装置100において、可動接点部材1は、第1固定接点部3aと第2固定接点部3bとを電気的に導通させる機能を持っているが、以下に示すように操作時の感触だしの板ばねとして使用しても良い。例えば、メンブレンスイッチの接点部の上方に可動接点部材1を配置し、可動接点部材1を介してメンブレンスイッチの接点部を操作する構成のスイッチ装置とする。このような構成とすることで、可動接点部材1は、メンブレンスイッチの接点部を押圧するアクチュエータとして機能するとともに、メンブレンスイッチにオーバーストロークの機能(操作感触)を持たせることができる。したがって、オーバーストロークに対応可能なメンブレンスイッチを提供することができる、という効果を奏する。
【符号の説明】
【0056】
1 可動接点部材
1a ドーム部
1b 脚部
1c 接触部
1d 開口部
1e 連結部
1f 腕部
1g 外方部
2 基板
3 固定接点部
3a 第1固定接点部
3b 第2固定接点部
3c 外部接続端子
4 駆動体
4a ベース部
4b 操作部
4c 押圧部
5 保持シート
5a シート部
5b 粘着層
5c 非粘着部
6 カバー部材
6a 天面部
6b 挿通孔
6c 側壁
100 スイッチ装置
図1
図2
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図12