(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3次元データ取得部で取得された前記3次元データに基づいて、当該3次元データが人体に関するものであるか否かを判定する人体判定部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の脊椎側弯症の評価システム。
前記中心線検出部は、前記3次元データに基づいて前記被験者の背部の外形線を求め、当該外形線に基づく背部の幅から垂直方向の中心線を検出することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の脊椎側弯症の評価システム。
前記中心線検出部は、別途撮影される前記被験者の背部のX線撮影画像データと、前記3次元データとを重ね合わせて、垂直方向の中心線を検出することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の脊椎側弯症の評価システム。
前記中心線検出部は、別途撮影される前記被験者の背部のモアレ画像データと、前記3次元データとを重ね合わせて、垂直方向の中心線を検出することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の脊椎側弯症の評価システム。
前記凹凸状態検出部による検出結果および前記左右差算出部による算出結果の少なくとも一方に基づいて、予め設定される閾値との比較によって、前記被験者の側弯症の程度を評価する評価部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の脊椎側弯症の評価システム。
【背景技術】
【0002】
脊椎側弯症(以下、単に「側弯症」と呼ぶ)は、脊柱(背骨)について側方への湾曲や捻じれを生じる病気であり、特に女性に多く発症する。
【0003】
脊柱の湾曲は、捻じれを伴うため、症状が進行すると肋骨の張り出しも生じる。また、高度の湾曲になると、腰背部痛に加え、胸郭の圧迫と変形による呼吸器障害や循環器障害など内臓にも影響を及ぼす。
【0004】
この側弯症の診断には、定量的な計測が必要である。特に、手術を行うか否かの判定や、治療によりどの程度症状が改善されたかの評価には定量的な計測が欠かせない。
【0005】
従来においては、側弯症の診断には、X線撮影装置を用いたX線検査法が多く用いられている。X線検査法は、X線で胸部を撮影し、脊柱の湾曲度を医師の判定により計測する手法である。
図11にX線撮影装置を用いた撮影例を示す。
図11に示すように、X線撮影画像により、脊柱の側方への湾曲度を把握することができる。
【0006】
しかし、一般的なX線検査法では、側方への湾曲度合いは判定できても、体表面の凹凸の程度は判定できないという難点があった。なお、被験者の側方など、多方向からX線撮影すれば凹凸の程度の判定も可能ではあるが、人体の被曝の問題もあるため、多方向からの複数回の撮影はできるだけ避けたいという要望がある。
【0007】
また、CT(Computed Tomography)装置を用いた計測も考えられるが、装置が高価で大型であるため、小規模の病院等への適用が難しいという問題がある。また、CT検査では、被験者が寝た状態で撮影されるため、重力の影響などで脊柱や肋骨の状態が変わってしまい、側弯症の症状を正確に評価できないという難点もあった。また、X線検査法と同様に、人体の被曝の問題もある。
【0008】
X線撮影装置やCT装置を用いない生体の歪み検出装置としては、例えば、特許文献1に開示の技術が挙げられる。
【0009】
この検出装置は、第1センサ及び第2センサから構成される測定手段を有する。各々のセンサは、生体の左右の上腕に取り付けられ、当該センサ自体の3次元的な姿勢を測定する。そして、生体が両腕を用いた所定動作を終えた状態において、得られたデータから、生体の左右の腕の姿勢を決定し、左右の腕の姿勢の差違に応じて、上半身の筋肉の強い部位を決定する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここで、図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。
【0027】
本実施形態に係る脊椎側弯症の評価システムS1は、
図1のブロック図に示すように、被験者Hの背部を撮影してその3次元データを取得する3次元センサ(または3次元カメラ)100(3次元データ取得手段)と、被験者Hの背部について湾曲の程度を測定すべき特徴部位を指定する特徴部位指定部102(特徴部位指定手段)と、この特徴部位指定部102で指定された特徴部位について、前記3次元データに基づいて水平方向の体表面の凹凸状態を検出する凹凸状態検出部103(凹凸状態検出手段)と、この凹凸状態検出部103による検出結果を表示する表示モニタ200(表示手段)を備える。
【0028】
また、表示モニタ200は、凹凸状態検出部103による検出結果に基づいて取得される凹凸のピーク位置を併せて表示するようになっている。
【0029】
また、評価システムS1は、3次元センサ100で取得された3次元データに基づいて被験者Hの背部の垂直方向の中心線を検出する中心線検出部104(中心線検出手段)と、特徴部位指定部102で指定された特徴部位について、中心線を境にした左右のピーク位置の高低差を算出する左右差算出部105(左右差算出手段)とをさらに備えている。
【0030】
そして、表示モニタ200は、左右差算出部105による算出結果を併せて表示するようになっている。
【0031】
また、評価システムS1は、3次元センサ100で取得された3次元データに基づいて、当該3次元データが人体に関するものであるか否かを判定する人体判定部106(人体判定手段)をさらに備える。
【0032】
さらに、凹凸状態検出部103による検出結果および左右差算出部105による算出結果の少なくとも一方に基づいて、予め設定される閾値との比較によって、被験者Hの側弯症の程度を評価する自動評価部107(評価手段)を備える。
【0033】
そして、表示モニタ200は、自動評価部107による評価結果を併せて表示するようになっている。
【0034】
なお、本実施形態において、特徴部位指定部102、凹凸状態検出部103、中心線検出部104、左右差算出部105、人判定部106および自動評価部107は、パーソナルコンピュータ等で構成されるコンピュータ装置101で実行されるプログラム(ソフトウェア)で構成される。
【0035】
また、3次元センサ100とコンピュータ装置101とは、USBケーブル等を介して接続される。
【0036】
3次元センサ100としては、TOF(time−of−flight)の3次元センサを適用することができる。
【0037】
TOF方式の3次元センサは、アクティブに近赤外光(LED光)を照射し、その反射光を用いて距離を測定する。
【0038】
即ち、例えば赤外線などの不可視光をパルス変調して画角内に照射し、イメージ・センサ側でこのパルスの位相遅れを計測することで、対象物までの往復の距離を割り出す。
【0039】
このTOF方式の3次元センサは、従来においては500〜1000万円程度もする高価な機器であったが、昨今は低廉化が進み数万円以下のカメラも開発されている。
【0040】
また、3次元センサ100として、レーザパターン投影方式の3次元センサを適用することができる。
【0041】
図2に示す構成例では、レーザパターン投影方式の3次元センサ100を用いている。
【0042】
レーザパターン投影方式の3次元センサ100は、赤外線パターンを対象物体に照射して三角測量により距離画像を取得している。
【0043】
より具体的には、レーザパターン投影方式の3次元センサ100としては、マイクロソフト社製のKinectセンサ(マイクロソフト社の登録商標)を適用することができる。このKinectセンサは、当初ゲーム機用のセンサであったが、コンピュータ装置(パーソナルコンピュータ)101にもUSB端子を介して接続可能である。
【0044】
そして、マイクロソフトリサーチ社が提供する「Kinect for Windows(登録商標) SDK(Software Development Kit)」を用いれば、C言語で記述したプログラムによりKinectセンサをコンピュータ装置101から制御することできる。
【0045】
このKinectセンサは、約1万数千円程度で入手可能であり、本評価システムS1の低コスト化を図ることができる。
【0046】
図3に、3次元センサ(Kinectセンサ)100の外観を示す。3次元センサ100は、赤外線レーザ発光部150と、RGBカラー映像認識用カメラ151と、奥行き測定用赤外線カメラ152とを搭載している。
【0047】
なお、この3次元センサ100は、電動チルト機構を備え、縦方向に30度首振りが可能になっており、被験者Hの身長等に合わせてコンピュータ装置101側から調整することができる。
【0048】
3次元センサ100の内部には3軸加速度センサ、64MBのDDR2 SDRAMメインメモリ、信号処理専用プロセッサ等が内蔵されている。
【0049】
より精密な測定を行う場合には、3次元センサ100に水準器を設けて、水平度等を調整するようにしてもよい。
【0050】
図2に示すように、本評価システムS1は、高さ調整可能(例えば、0.5〜1.5mの範囲で高さ調整可能)な三脚300に取付けられた3次元センサ100と、特徴部位指定部102、凹凸状態検出部103、中心線検出部104、左右差算出部105、人判定部106および自動評価部107等の機能を実現可能なプログラム(ソフトウェア)をインストールしたノート型パーソナルコンピュータ101とで構成することができる。
【0051】
なお、3次元センサ100と被験者Hとの距離は、1〜2m程度とするとよい。
【0052】
ここで、
図4〜
図6を参照して、レーザパターン投影方式の3次元センサ100の計測原理について簡単に説明する。
【0053】
図4に示すように、3次元センサ100の赤外線レーザ発光部150(
図3参照)から一定の照射角度で照射された赤外線レーザは、物体500に当たって反射され、奥行き測定用赤外線カメラ152(
図3参照)に入射して検出される。この場合に、底辺と両端の角度から物体500までの距離を計算することができる。なお、赤外線レーザが照射された物体500の画像は(a)のように示される。また、受光角度は画像から計測する。
【0054】
また、
図5に示すように、物体500が3次元センサ100側に移動した場合においても、同様に底辺と両端の角度から物体500までの距離を計算することができる。なお、赤外線レーザが照射された物体500の画像は(b)のように示される。また、受光角度は画像から計測する。
【0055】
上述のKinectセンサでは、
図6(a)、6(b)に示すように、予め既知の光学パターンを画角内に照射し、そのパターンの幾何学的な歪み具合から対象物の3次元構造を復元している。例えば、光源を一度、拡散板で拡散させた後、マイクロレンズが並んだ透過板を使って投影パターンを作り出す方式などが適用される。
【0056】
なお、Kinectセンサ等の3次元センサ100は、静止画像のほかに、動画を取得することができる。本実施形態に係る評価システムS1においても、原則は静止画像に基づいて側弯症の評価を行うが、被験者に所定の動作をさせ、その状態を動画で取得して側弯症の評価を総合的に行うことも可能である。
【0057】
次に、
図7のフローチャートを参照して、本実施形態に係る評価システムS1で実行される側弯症評価処理の処理手順について説明する。
【0058】
ステップS10では、3次元センサ100により被験者Hの背部を撮影して、3次元計測データを取得する。実際には、取得された3次元計測データは、コンピュータ装置101が備えるハードディスク装置やメモリ等に格納される。
【0059】
ステップS11では、人体判定部106によって、取得された3次元計測データに基づいて、当該3次元計測データが人体のものであるか否かが判定される。
【0060】
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS10に戻り、「Yes」の場合にはステップS12に移行する。
【0061】
ステップS11の人体判定は、具体的には、予め人体の背部のパターンを格納しておき、そのパターンと3次元計測データとのパターンマッチング処理等により実現することができる。このような人体判定を行うことにより、以降の処理を自動化することができる。即ち、3次元センサ100による3次元計測データの取得状態を継続し、被験者Hが3次元センサ100側に背部を向けて所定の姿勢をとった際に、人体であると判定することにより以降の処理に自動的に移行させることができ、効率的に検査を行うことができる。
【0062】
次いで、ステップS12では、取得された3次元計測データについてフィルタによりノイズを除去する処理を行う。
【0063】
ステップS13では、3次元計測データについて背景データを削除する処理を行う。
【0064】
ステップS14では、3次元計測データに基づいて、画像のエッジを検出して、被験者Hの背部の外形線を取得する。
【0065】
ステップS15では、中心線検出部104によって、被験者H(人体)の背部の中心線を検出する。この中心線は、被験者Hの背部を左右に分けて評価を行う基準となるので、中心線を如何にして検出するかは重要である。
【0066】
中心線の検出に仕方としては次のような手法が考えられる。
【0067】
ステップS14で取得された被験者Hの背部の外形線に基づく背部の幅から垂直方向の中心線を検出するようにできる。より具体的には、外形線に基づいて被験者Hの背部の各位置における幅を取得し、例えばその幅の1/2の所定位置を結んで中心線とすることが考えられる。
【0068】
また、凹凸状態検出部103で検出された被験者Hの背部の凹凸状態に基づいて垂直方向の中心線を検出するようにしても良い。即ち、人体の背部において脊柱の有る位置は、凹状態となっているため、背部の凹凸状態のデータにおいて略中央で凹状態の底となっている所定位置を結んで中心線とすることが考えられる。
【0069】
また、別途撮影される被験者Hの背部のX線撮影画像データと、3次元計測データとを重ね合わせて、垂直方向の中心線を検出するようにしても良い。即ち、3次元計測データのみでは中心線を把握し難い場合や、より精密な評価を行いたい場合には、X線撮影画像を参照して垂直方向の中心線を決定するようにできる。
【0070】
また、別途撮影される被験者Hの背部のモアレ画像データと、3次元計測データとを重ね合わせて、垂直方向の中心線を検出するようにしても良い。即ち、3次元計測データのみでは中心線を把握し難い場合や、より精密な評価を行う場合には、モアレ画像を参照して垂直方向の中心線を決定するようにできる。
【0071】
その他、例えば、被験者Hの脊柱の位置に反射テープ等で構成したマーカを予め貼付し、3次元センサ100が備えるRGBカメラ151(
図3参照)の撮影画像でそのマーカの位置を検出して中心線を決定するようにしても良い。
【0072】
次いで、ステップS16では、特徴部位指定部102で、被験者Hの背部について湾曲の程度を測定すべき特徴部位を指定する。
【0073】
特徴部位の指定は、自動的に指定を行う場合と、操作者が手動で行う場合とが考えられる。
【0074】
例えば、予め測定すべき特徴部位に関するデータを登録し、そのデータに基づいて複数の被験者に対して、同じ特徴部位について湾曲の程度を測定するようにできる。より具体的には、例えば特徴部位を「第7頚椎」として、被験者Hの「第7頚椎」の位置を3次元計測データあるいはRGBカメラ151の撮影画像に基づいて自動的に検出し、その位置の湾曲の程度を測定するようにしても良い。同様に、「肩部」、「腰部」等を特徴部位として登録して自動的に測定を行うようにしても良い。
【0075】
また、脊椎側弯症の評価システムS1の操作者や医師等が、例えば、マウスやトラックパッド等のポインティングデバイスを操作して、湾曲の程度を測定すべき部位を特徴部位として指定するようにしても良い。また、予め「第7頚椎」、「肩部」、「腰部」等の選択ボタンを表示パネル上に表示し、その選択ボタンをポインティングデバイスで選択して特徴部位を指定するようにしても良い。
【0076】
次いで、ステップS17では、ステップS16で指定された特徴部位について、凹凸状態検出部103で、3次元計測データに基づいて水平方向の体表面の凹凸状態を検出し、その凹凸状態に基づいて体表面のピーク位置を検出する。
【0077】
これにより、従来のX線検査では把握できなかった側弯症による脊柱や肋骨等の捻じれ具合を容易に把握することができる。
【0078】
次いで、ステップS18では、3次元計測データに基づいて被験者Hの背部の各部位を推定する処理を行う。これにより、例えば、腰部や臀部の位置を推定して、その部位を捻じれの基準とすることができる。即ち、一般的に、腰部や臀部は略水平面を形成すると考えることができるので、この腰部や臀部を「第7頚椎」や「肩部」等の特徴部位の捻じれ具合の基準とすることができる。
【0079】
ステップS19では、ステップS16で指定された特徴部位について、前記中心線を境にした左右のピーク位置の高低差を左右差算出部105で算出する。これにより、特徴部位の捻じれ具合を把握することができる。
【0080】
ステップS20では、計測結果を表示モニタ200に表示して処理を終了する。
【0081】
表示形式は、特には限定されず、既存の表示形式の何れであっても適用することができる。
【0082】
図8に示した表示形式の例では、平面グラフ表示部601と、ピーク検出等を示す画像処理結果602と、画像および数値データからなる解析結果603と、被験者Hの背部のカメラ画像604が表示されている。また、図示は省略したが、3次元データ表示部を設け、3次元データをポリゴンやワイヤーフレーム等で表示するようにしてもよい。また、ボタン操作やポインティングデバイス操作により、3次元画像の視点等を切り換えるようにしてもよい。
【0083】
また、表示した画像やデータを印刷できる機能を設けてもよい。
【0084】
脊椎側弯症の評価システムS1の操作者や医師は、表示された計測結果に基づいて、被験者Hに脊椎側弯症の症状があるか否か、或いは、脊椎側弯症の進行度がどの程度であるか等を評価することができる。
【0085】
また、自動評価部107によって、被験者Hに脊椎側弯症の症状があるか否か、或いは、脊椎側弯症の進行度がどの程度であるか等を自動的に評価することもできる。
【0086】
即ち、凹凸状態検出部103による検出結果および左右差算出部105による算出結果の少なくとも一方に基づいて、予め設定される閾値との比較によって、被験者Hの側弯症の程度を評価することができる。
【0087】
図9に計測結果の例を示す。
図9(a)は健常者についての計測結果を、
図9(b)は側弯症患者の計測結果を示す。
【0088】
図9(a)においては、左側から被験者(健常者)の背部の画像701、ピーク検出等を示す画像処理結果702、平面グラフ703が表示されている。
【0089】
図9(b)においては、左側から被験者(側弯症患者)の背部の画像801、ピーク検出等を示す画像処理結果802、平面グラフ803が表示されている。
【0090】
なお、図示は省略したが、3次元データ表示部を設け、3次元データをポリゴンやワイヤーフレーム等で表示するようにしてもよい。
【0091】
そして、脊椎側弯症の評価システムS1の操作者や医師は、
図9(a)、9(b)のように表示された計測結果に基づいて、脊椎側弯症の進行度がどの程度であるか等を総合的に評価する
また、自動評価を行う場合には、例えば、平面グラフ803におけるグラフの傾きが予め設定された閾値を超えた際に、「軽度の側弯症の症状がみられます」、「中度の側弯症の症状がみられ、要観察と思われます」、「重度の側弯症の症状がみられ、手術等の治療が必要とおもわれます」等のメッセージを表示するようにしても良い。
【0092】
勿論、脊椎側弯症についての手術や各種治療の要否等の最終判断は、専門医によって行われることは言うまでもない。
【0093】
また、被験者Hの計測結果のデータ等は、個人情報を含むため、データの閲覧などにはパスワード等を設定し、厳重に管理されることが望ましい。
【0094】
図10〜
図12は、脊椎側弯症の症例を示す参考資料である。
【0095】
図10に示す符号Aは、脊柱において湾曲した箇所を示す。
【0096】
また、
図12に示すような症例は、脊柱および肋骨に捻じれを生じ、平面で見た場合に所定の高低差hを有している。
【0097】
このような症例について、従来のX線検査法では、脊柱の湾曲具合は分かっても、体表面の凹凸状態が分からなかった。
【0098】
これに対して、本実施形態に係る脊椎側弯症の評価システムS1によれば、
図12に示すような症例について、脊柱の湾曲程度に加えて、体表面の凹凸状態を容易且つ的確に把握することができ、脊椎側弯症を適切に評価することができる。
【0099】
以上述べたように、本発明の実施形態に係る脊椎側弯症の評価システムS1によれば、次のような効果を得ることができる。
【0100】
(1)側弯症を簡易的に計測することができる。
【0101】
本評価システムS1は、従来の装置と比較して小型、軽量にすることができるため、持ち歩いて様々な場所での計測が可能になる。また、特に広いスペースも必要ではなくなるため、診察室などの中での計測が可能となる。
【0102】
(2)体表面形状を定量的に計測することできる。
【0103】
側弯症の定量的な評価には、X線検査で計測した脊柱の曲がりが評価されているが、体表面形状の評価が定量的に行われていなかった。体表面形状を定量的に評価する事ができれば、手術の必要性の判断や手術後の改善評価が行えるようになるだけでなく、病状の早期発見、早期治療が可能となる。
【0104】
(3)自然な状態で側弯症の症状を計測することができる。
【0105】
即ち、CTを利用した計測のように寝た状態での計測ではなく、自然に立った状態での評価が行えるため、実際に問題になっている位置の評価を正しく行うことが可能となる。
【0106】
(4)その場で計測結果を確認することができる。
【0107】
本評価システムS1では、計測結果がその場で表示されるため、診察室等で計測を行った後、その場で患者を交えた確認や病状に対する説明等を行う資料として用いることができ、利便性が向上される。
【0108】
(5)脊椎側弯症の評価システムを安価に提供することができる。
【0109】
本評価システムS1によれば、従来の装置と比較して安価に脊椎側弯症の評価システムとして提供が可能になるため、システムの普及が期待できる。特に病院等に限らず、各種学校などで行われる健康診断等に適用して、若年層の脊椎側弯症の早期発見、早期治療が可能となる。
【0110】
次に、
図14を参照して、上述の脊椎側弯症の評価システムS1に適用される評価用器具900について説明する。
【0111】
評価用器具900は、被験者Hの腰部の水平方向の表面に接触される水平板部901と、この水平版部901から被験者Hの腰部の両側部に接触される一対の側板部902とを備えている。
【0112】
また、水平板部901の3次元センサ側の表面には、所定高さ(例えば、1cm程度)の突起部903が設けられている。
【0113】
なお、側板部902は、被験者Hの腰部の幅に合わせて、左右方向に移動できるように構成しても良い。
【0114】
このような構成の評価用器具900を用いた場合には、前述の「第7頚椎」や「肩部」等の特徴部位の捻じれ具合の基準を正確に計測することができる。即ち、評価用器具900を被験者Hの腰部に予め取り付けて、3次元センサ100で3次元計測データを取得することにより、人体からは精度が出難い水平面のデータを評価用器具900から取得することができる。そして、この評価用器具900から取得した水平面の3次元計測データを基準に用いることにより、特徴部位の捻じれ具合をより正確に計測することができる。
【0115】
また、水平板部901に設けられた突起部903を3次元センサ100で計測することにより、3次元計測のキャリブレーションを行うことができる。
【0116】
即ち、突起部903を設けることにより、突起部903の3次元形状を計測し、その計測結果と実際のデータを比較する。その結果、幅、高さ、長さが合わない場合には補正係数を算出して計測結果に補正を行う。また、突起部903が有する四角形の形状等から3次元センサ100のレンズの歪も求めて補正を行うこともできる。
【0117】
以上本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、あくまでも請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、請求の範囲の記載技術と均等な技術および請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0118】
例えば、3次元センサ100で取得した3次元計測データに基づいて、脊椎側弯症患者等の矯正用具や車椅子用のクッションの設計を行うことができる。
【0119】
また、3次元センサ100で取得した3次元計測データと、体重計による体重データとに基づいて、椎側弯症患者等の肥満度等を評価することもできる。
【0120】
また、計測結果の表示について、3次元計測データに基づく体表面の凹凸を強調する処理を行なって、操作者や医師が凹凸状態をより把握し易くするようにしても良い。
【0121】
また、3次元計測データに基づく体表面の凹凸に適当な彩色を施す処理を行なって、操作者や医師が凹凸状態をより把握し易くするように表示しても良い。