(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変ドメインと、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインとを含む、請求項5に記載の抗体。
前記1つ以上の遊離システインアミノ酸が、Kabatナンバリング・コンベンションに従う軽鎖の15、43、110、144、168および205、ならびにEUナンバリング・コンベンションに従う重鎖の41、88、115、118、120、171、172、282、375、および400から選択される位置の1つ以上の遊離システインアミノ酸を含む、請求項8に記載の抗体。
ヒト化抗CD79b抗体を作製する方法であって、該方法は、(a)請求項1〜6および8〜9のいずれか一項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドの発現に適切な条件下で真核生物細胞およびCHO細胞を含む群から選択される宿主細胞を培養する工程と、(b)該抗体を単離する工程とを包含する、方法。
Lが6−マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、バリン−シトルリン(val−cit)、アラニン−フェニルアラニン(ala−phe)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(SMCC)、N−スクシンイミジル(4−ヨード−アセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、SPDB、BMPEO、またはMC−val−cit−PABである、請求項12に記載のイムノコンジュゲート。
前記ガンが、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、またはマントル細胞リンパ腫である、請求項27または28に記載の組成物。
CD79bを含有すると疑われるサンプル中のCD79bの存在を決定する方法であって、該方法は、該サンプルを請求項1〜6および8〜9のいずれか一項に記載の抗体に対して曝露する工程と、該サンプル中のCD79bへの該抗体の結合を決定する工程とを包含し、該サンプル中のCD79bへの該抗体の結合が該サンプル中の該タンパク質の存在の指標である、方法。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、哺乳動物における造血系腫瘍の処置に有用な組成物を特定するための方法、組成物、キットおよび製品、ならびにこのような処置のためにこれらの組成物を用いる方法を提供する。
【0052】
これらの方法、組成物、キットおよび製品の詳細は、本明細書に提供される。
【0053】
I.
一般的技術
本発明の実行は、他に示さない限り、当該分野の技術の範囲内である、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を使用する。このような技術は、文献中に、例えば、「Molecular Cloning:A
Laboratory Manual」、第2版(Sambrookら、1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait,編,1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney,編,1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら、編集,1987、および定期更新版);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」、(Mullisら、編集,1994);「A Practical Guide to Molecular Cloning」(Perbal Bernard V.,1988);「Phage Display:A Laboratory Manual」(Barbasら、2001)中に詳細に説明される。
【0054】
II.
定義
本明細書を解釈する目的で、以下の定義を適用し、かつ適切であれば、単数で用いられる用語はまた、複数を包含し、その逆も真である。示される任意の定義が出典明記によって本明細書に援用される任意の文書と矛盾する場合には、下に示される定義が優先する。
【0055】
本明細書において「B細胞表面マーカー」または「B細胞表面抗原」とはB細胞表面抗原に結合するアンタゴニストで標的され得るB細胞の表面上で発現される抗原であって、これには限定するものではないが、自然に存在するB細胞抗原に対するリガンドの結合を拮抗し得るB細胞表面抗原または可溶性B細胞表面抗原に対する抗体が挙げられる。例示的なB細胞表面カーカーとしては、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85およびCD86という白血球表面マーカー(説明については、The Leukocyte Antigen Facts Book、第2版.1997、編集.Barclay et al.Academic Press、Harcourt Brace & Co.、New Yorkを参照のこと)が挙げられる。他のB細胞表面マーカーとしては、RP105、FcRH2、B細胞CR2、CCR6、P2X5、HLA−DOB、CXCR5、FCER2、BR3、BAFF、BLyS、Btig、NAG14、SLGC16270、FcRH1、IRTA2、ATWD578、FcRH3、IRTA1、FcRH6、BCMA、および239287が挙げられる。特定の目的のB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織に比較してB細胞上で優先的に発現され、前駆体B細胞および成熟B細胞の両方の上で発現され得る。
【0056】
本明細書において用いる場合、「CD79b」という用語は、他に示さない限り、霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル(cyno))およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然のCD79bをいう。ヒトCD79bはまた、「PRO36249」(配列番号2)と呼ばれ、本明細書において「DNA225786」とも呼ばれるヌクレオチド配列(配列番号1)によってコードされる。「CD79b」という用語は、「全長」のプロセシングされていないCD79bならびに細胞中のプロセシングから生じる任意の形態のCD79bを包含する。この用語はまた、CD79bの自然に存在する改変体、例えば、スプライシング改変体、対立遺伝子改変体およびアイソフォームを包含する。本明細書に記載されるCD79bポリペプチドは、種々の供給源から、例えば、ヒト組織型からもしくは別の供給源から単離されてもよいし、または組み換え方法もしくは合成方法によって調製されてもよい。「天然の配列CD79bポリペプチド」は、自然に生じる対応するCD79bポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このような天然の配列のCD79bポリペプチドは、自然から単離されてもよいし、組み換えもしくは合成の手段によって産生されてもよい。「天然の配列のCD79bポリペプチド」という用語は詳細には、特定のCD79bポリペプチドの自然に存在する短縮型もしくは分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列)、このポリペプチドの自然に存在する改変対型(例えば、選択的スプライシング型)および自然に存在する対立遺伝子改変体を包含する。本発明の特定の実施例では、本明細書に開示される天然の配列CD79bポリペプチドとは、添付の図面に示される全長アミノ酸配列を含む成熟または全長の天然の配列ポリペプチドである。開始コドンおよび終止コドン(示す場合)は、図面中に太字でかつ下線を付して示している。添付の図面中に「N」として示される核酸残基は、任意の核酸残基である。添付の図面中に開示されるCD79bポリペプチドは、この図面中でアミノ酸位置1として本明細書で指定されるメチオニン残基で開始することが示されるが、この図面中のアミノ酸位置1から上流または下流に位置する他のメチオニン残基がCD79bポリペプチドの出発アミノ酸残基として使用されてもよいと考えられ、かつ可能である。
【0057】
本明細書に用いられる「2F2」という用語は、マウス抗CD79bモノクローナル抗体(本明細書では、「mu2F2」または「マウス2F2」とも呼ばれる)またはキメラ抗体(本明細書では「ch2F2」とも呼ばれる)を指す。
【0058】
「mu2F2」または「マウス2F2」とは本明細書では、マウス抗CD79bモノクローナル抗体を指すのに特に用いられ、このマウス抗体は、配列番号10の軽鎖可変ドメイン(
図7)および配列番号14の重鎖可変ドメイン(
図8A〜B)を含む。mu2F2は、2006年7月11日にATCCにPTA−7712として寄託されたハイブリドーマから生成され得る。
【0059】
「ch2F2」または「キメラ2F2抗体」とは本明細書において、特にキメラ抗体(2006年8月3日提出、米国特許出願番号第11/462,336号に以前に記載)を指して用いられ、このキメラ抗体は、配列番号4(
図4)の軽鎖を含み、ここでこの軽鎖は、配列番号10(
図7)の可変ドメインおよびヒトIgG1の軽鎖定常ドメインを含む。このキメラ抗体はさらに、配列番号6(
図6)の重鎖を含み、ここでこの軽鎖は配列番号14の可変ドメイン(
図8A〜
図8B)およびヒトIgG1の重鎖定常ドメインを含む。
【0060】
「2F2−グラフト」または「2F2移植型‘ヒト化’抗体」または「hu2F2グラフト」とはこれを本明細書で用いて、マウス2F2抗体(mu2F2)由来の超可変領域をアクセプターヒトコンセンサスVLκI(huKI)およびヒトサブグループIIIコンセンサスVH(huIII)中に、R71A、N73TおよびL78Aで移植することによって作製されるグラフトを特に指している(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992))(実施例1Aおよび
図7(配列番号11)および8(配列番号15)を参照のこと)。
【0061】
本明細書に用いられるアミノ酸残基/位置の「改変」とは、出発アミノ酸配列に比較したときの一次アミノ酸配列の変化を指しており、この変化は、このようなアミノ酸残基/位置に関与する配列変更から生じる。例えば、代表的な改変としては、別のアミノ酸での残基(またはその位置での)置換(例えば、保存的または非保存的置換)、この残基/位置に隣接する1つ以上の挿入(一般には5または3つより少ない)アミノ酸の挿入、およびこのような残基/位置の欠失が挙げられる。「アミノ酸置換」またはその変形は、所定の(出発)アミノ酸配列における既存のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することを指す。一般には、そして好ましくは、この改変は、出発(または「野性型」)アミノ酸配列を含んでいるポリペプチドに比較して改変ポリペプチドの少なくとも1つの物理化学的活性における変化を生じる。例えば、抗体の場合には、変更される物理化学的活性は、標的分子に対する、結合親和性、結合能力および/または結合効果であり得る。
【0062】
「抗体」という用語は、広義で用い、詳細には、例えば、単一の抗CD79bモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、全長またはインタクトなモノクローナル抗体)、ポリエピトープ性の特異性を有する抗CD79b抗体組成物、ポリクローナル抗体、多価抗体、多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体(それらが所望の生物学的活性を示す限り))、(少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される)、単鎖抗CD79b抗体、および抗CD79b抗体のフラグメント(以下を参照のこと)が挙げられ、これは、Fab、Fab’、F(ab’)
2およびFvフラグメント、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)が挙げられる(それらが、所望の生物学的または免疫学的活性を示す限り)。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において抗体と交換可能に用いられる。抗体は、ヒト抗体であっても、ヒト化抗体であっても、および/または親和性成熟抗体であってもよい。
【0063】
「抗CD79b抗体」または「CD79bに結合する抗体」という用語は、十分な親和性でCD79bと結合し得る抗体であって、その結果その抗体がCD79bを標的するのに診断剤および/または治療剤として有用であるような抗体を指す。好ましくは、無関係の非CD79bタンパク質に対する抗CD79b抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合、CD79bに対する抗体の結合のうち約10%未満である。特定の実施形態では、CD79bに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMという解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗CD79b抗体は、種々の種由来のCD79bの間で保存されているCD79bのエピトープに結合する。
【0064】
「単離された抗体」とは、その天然の環境の成分から同定、ならびに分離、および/または回収されたものである。その天然環境の混入成分とは、抗体に関する治療用途を妨害する物質であり、それらとしては、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を挙げることができる。好ましい実施形態において、抗体は、(1)ローリー法による測定で抗体の95重量%を超えるまで、そして最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップ(spinning cup)シークエネーターの使用により、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルー、または好ましくは銀染色を用いた還元条件または非還元条件下でのSDS−PAGEによって均一まで精製されるであろう。単離抗体としては、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので組換え細胞内でインサイチュである抗体が挙げられる。しかし、通常は、単離抗体は少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0065】
塩基性4鎖抗体単位は、2本の同一軽(L)鎖および2本の同一重(H)鎖から構成されるヘテロテトラマー糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に5つの塩基性ヘテロテトラマー単位からなり、従って10個の抗原結合部位を含むが、一方、分泌IgA抗体は、J鎖と共に2〜5つの塩基性4鎖単位を含む多価集合を形成するように重合化できる)。IgG類の場合、4鎖単位は、一般に約150,000ダルトンである。各々のL鎖は、1つのジスルフィド共有結合によりH鎖に結合され、一方、2本のH鎖は、H鎖のアイソタイプ次第で1つ以上のジスルフィド結合により互いに結合されている。H鎖およびL鎖の各々はまた、規則正しく間隔を空けた鎖内ジスルフィド架橋を有する。H鎖の各々は、N末端の可変性ドメイン(V
H)、続いてαおよびγ鎖の各々に関して3つの定常ドメイン(C
H)ならびにμおよびεアイソタイプに関して4つのC
Hドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変性ドメイン(V
L)、続いてその他の末端に定常ドメイン(C
L)を有する。V
Lは、V
Hとアラインメントされ、C
Lは、重鎖(C
H1)の第一の定常ドメインとアラインメントされる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変性ドメインと重鎖可変性ドメインとの間の接合面を形成すると考えられている。V
HおよびV
Lのペアリングは一緒に、単一の抗原結合部位を形成する。種々のクラスの抗体の構造および性質に関しては、例えば、
Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P.Stites、Abba I.TerrおよびTristram G.Parslow(編集者)、Appleton & Lange、Norwalk、CT、1994年、71頁および6章を参照のこと。
【0066】
任意の脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に異なるタイプの1つに帰属させることができる。重鎖(C
H)の定常ドメインのアミノ酸配列次第で、免疫グロブリンを、種々のクラスまたはイソタイプに帰属させることができる。5つのクラスの免疫グロブリン:それぞれα、δ、ε、γ、およびμと命名された重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在する。γおよびαクラスは、C
H配列および機能における比較的小さな相違に基づいてサブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2を発現する。
【0067】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインをいう。重鎖の可変ドメインは、「VH」と言われる場合もある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と言われる場合もある。これらのドメインは一般に抗体の最も可変性の部分であって、抗原結合部位を含む。
【0068】
「可変性」という用語は、可変性ドメインのある一定のセグメントが、抗体間で配列が広範囲にわたって異なるという事実を言う。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する。しかし、その可変性は、可変性ドメインの110アミノ酸の範囲にわたって等しく分布されていない。その代わり、V領域は、各々9〜12のアミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域によって分けられている15〜30のアミノ酸のフレームワーク領域(FRs)と呼ばれる相対的に不変性のストレッチからなる。天然の重鎖および軽鎖の可変性ドメインは各々、4つのFRsを含んでおり、たいていは3つの超可変性領域によって接続されたβシート配置を採用しており、これがβシート構造に接続し、ある場合においてはそのβシート構造の一部を形成しているループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRsにより近接して一緒に保持され、他の鎖の超可変性領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら、
Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethasda、MD(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体依存細胞の細胞毒性(ADCC)における抗体の関与など、種々のエフェクター機能を示す。
【0069】
「インタクトな」抗体とは、抗原結合部位ならびにC
L、および少なくとも重鎖定常ドメイン、C
H1、C
H2およびC
H3を含む抗体である。この定常ドメインは、天然の配列の定常ドメイン(例えば、ヒトの天然の配列定常ドメイン)またはそれらのアミノ酸配列変異体であってもよい。好ましくは、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0070】
本明細書の目的のための「裸の抗体」とは、細胞毒性部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0071】
「抗体フラグメント」とは、インタクトな抗体の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変性領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体(linear antibody)(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、
Protein Eng.8(10):1057〜1062頁[1995]を参照のこと);単鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成された多特異的抗体が挙げられる。一実施形態では抗体フラグメントは、インタクトな抗体の抗原結合部位を含み、従って抗原に結合する能力を保持している。
【0072】
抗体のパパイン消化によって、容易に結晶化する能力を反映する呼称である、「Fab」フラグメント、および残りの「Fc」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントが生成される。Fabフラグメントは、H鎖の可変性領域ドメイン(V
H)と一緒の全L鎖、および1本の重鎖の第一の定常ドメイン(C
H1)からなる。Fabフラグメントの各々は、抗原結合に関して一価である。すなわち、それは、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fabフラグメントにおおよそ対応し、かつ依然として抗原と交差結合できる単一の大型F(ab’)
2フラグメントが生成する。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域から1つ以上のシステインを含むC
H1ドメインのカルボキシ末端にさらに2,3の残基を有することによってFabフラグメントとは異なる。本明細書においてFab’−SHとは、定常ドメインのシステイン残基(単数または複数)が遊離チオール基を保有しているFab’に関する呼称である。元来、F(ab’)
2抗体フラグメントは、それらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として生成された。抗体フラグメントの他の化学的結合もまた知られている。
【0073】
Fcフラグメントは、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により判定され、その領域はまた、ある一定のタイプの細胞上に見られるFcレセプター(FcR)により認識される部分でもある。
【0074】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、密な非共有結合にある1本の重鎖および1本の軽鎖の可変領域ドメインの二量体からなる。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインが、可塑性のペプチドリンカーによって共有結合されて、その結果、軽鎖および重鎖が二本鎖のFv種におけるものと類似の「二量体」構造で会合し得る。これらの2つのドメインの折り畳みによって、抗原結合のアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの超可変性ループ(H鎖およびL鎖由来の各々3つのループ)が出現する。しかし、単一の可変性ドメイン(または抗原に特異的な3つだけのCDRを含むFvの半分)であっても、抗原を認識し、かつ結合する能力を有しているが、ただし結合部位全体よりは低い親和性である。
【0075】
「sFv]または「scFv」としても略記される「単鎖Fv」とは、単一ポリペプチド鎖に結合されたV
HおよびV
L抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、抗原結合のためにsFvが所望の構造を形成できるV
HドメインとV
Lドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの総説文献に関しては、Pluckthunの
The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編集、Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994);Borrebaeck 1995年、(下記)を参照のこと。
【0076】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントであって、同じポリペプチド鎖(VH−VL)中の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体フラグメントをいう。低分子抗体フラグメントは、Vドメインの鎖内の対合ではなくて鎖間の対合が達成され、二価のフラグメント、すなわち2つの抗原結合部位を有するフラグメントが生じるように、V
HドメインとV
Lドメインとの間に短いリンカー(約5〜10の残基)によりsFVフラグメント(前述の段落を参照のこと)を構築することによって調製される。ダイアボディは、二価であっても二重特異性であってもよい。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のV
HドメインとV
Lドメインとが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第93/11161号;およびHudsonら、Nat.Med.9:129〜134(2003);およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448頁(1993)において、さらに詳細に記載されている。トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)もHudsonら,Nat.Med.9:129〜134(2003)に記載されている。
【0077】
明細書に用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指す。すなわち、この集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して方向づけされており、高度に特異的である。さらに、種々の決定基群(エピトープ群)に関する種々の抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に関する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体による汚染なしに合成できるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、何らかの特定の方法による抗体の産生が必要なものとして解釈すべきではない。例えば、本発明に有用なモノクローナル抗体は、Kohlerら、
Nature、256:495頁(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製してもよし、または細菌細胞、真核動物細胞または植物細胞における組換えDNA法を用いて作製できる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら、
Nature、352:624〜628(1991)およびMarksら、
J.Mol.Biol.、222:581〜597頁(1991)に記載された技法を用いてファージ抗体ライブラリーからも単離できる。
【0078】
本明細書のモノクローナル抗体としては、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列と同一か、またはそれに相同性である「キメラ」抗体が挙げられ、一方、所望の生物活性を示す限り、鎖(単数または複数)の残りは、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにこのような抗体のフラグメントにおいて、対応する配列と同一か、またはそれに相同性である(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855(1984)を参照のこと)。本明細書における目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)に由来する可変性ドメイン抗原結合配列、およびヒトの定常領域配列を含んでいる「霊長類化」抗体が挙げられる。
【0079】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」型とは、非ヒト抗体から誘導された最小配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は大部分が、レシピエントの超可変性領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性(アフィニティー)、および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類など、非ヒト種(ドナー抗体)の超可変性領域からの残基により置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの場合、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基により置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに改善するために成される。一般に、ヒト化抗体は、全てまたは実質的に全ての超可変性ループが、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、全てまたは実質的に全ての複数のFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、代表的には2つの可変性ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた必要に応じて、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも1つの部分、代表的にはヒト免疫グロブリンの部分を含む。さらなる詳細に関して、Jonesら、
Nature 321:522〜525頁(1986);Riechmannら、
Nature 332:323〜329頁(1988);およびPresta、
Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596頁(1992)を参照のこと。また以下の総説文献およびそこに引用される参考文献も参照のこと:VaswaniおよびHamilton,Ann.Allergy,Asthma and Immunol.,1:105〜115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions,23:1035〜1038(1995);HurleおよびGross,Curr.Op.Biotech.,5:428〜433(1994)。
【0080】
「チオ」とは、抗体について言及するために本明細書において用いる場合、システイン操作した抗体を指すが、「hu」とは、本明細書において抗体について言及するために用いる場合、ヒト化抗体を指す。
【0081】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体、および/または本明細書で開示されたヒト抗体を製造するための任意の技術を用いて製造された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでいるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、ファージ−ディスプレイライブラリーを含んで、当該分野で公知の種々の技術を用いることによって生産することが可能である。HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.,222:581(1991))。またヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能なのは、Coleら、Monoclonal
Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss.77頁(1985);Boernerら、J.Immunol.,147(1):86〜95(1991)に記載の方法である。またvan Dijkおよびvan de
Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368〜74(2001)も参照のこと。抗原性の刺激に応答してこのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性の遺伝子座が無効にされているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウス(xenomice)に抗原を投与することによってヒト抗体を調製してもよい(例として、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照のこと)。また、例えば、ヒトのB細胞ハイブリドーマ技術によって生成したヒト抗体に関するLiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557〜3562(2006)も参照のこと。
【0082】
「超可変領域」、「HVR」または「HV」という用語は、本明細書において用いる場合、配列中で超可変であるか、および/または構造的に規定されるループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つの超可変領域;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)を含む。多数の超可変領域の描写が用いられており、かつ本明細書に包含される。Kabatの相補性決定領域(CDR)は配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabatら,Sequences
of Proteins of Immunological Interest,第5版 Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901〜917(1987))。Chothia CDR−H1ループの末端は、Kabatのナンバリングの慣例を用いてナンバリングした場合、ループの長さに応じてH32とH34との間で変化する(これは、KabatのナンバリングスキームがH35AとH35Bに位置するという理由であり;35Aも35Bも存在しない場合、ループの末端は32であり;35Aのみが存在する場合、ループは33で終わり;35Aも35Bも両方存在する場合は、ループは34で終わる)。AbM超可変領域は、KabatのCDRとChothia構造的ループの間の妥協に相当し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより用いられる。「Contact」超可変領域は、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらの超可変領域の各々に由来する残基は下に注記する。
【0083】
【数1】
超可変領域は、以下のような「伸長された超可変領域」を含んでもよい:VL中の24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56(L2)および89〜97(L3)と、VH中の26〜35B(H1)、50〜65、47〜65または49〜65(H2)および93〜102、94〜102、または95〜102(H3)である。可変ドメイン残基は、これら各々を規定するために、Kabatら、(上掲)に従ってナンバリングする。
【0084】
「フレームワーク」または「FR」残基は、ここで定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0085】
「Kabatによる可変ドメイン残基ナンバリング」または「Kabatに記載のアミノ酸位ナンバリング」という用語およびその変形は、Kabatら、Sequences
of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service,National Instirutes of Health,Bethesda,MD.(1991)の抗体の編集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに用いられるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを用いれば、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDR内の短縮または挿入に相当する2、3のアミノ酸または付加的なアミノ酸を含んでもよい。例えば、重鎖可変ドメインには、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)、および重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばKabatによる残基82a、82bおよび82cなど)を含んでもよい。残基のKabatナンバリングは、「標準の」Kabatナンバリング配列によって抗体の配列の相同性領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。
【0086】
可変ドメインの残基を指す場合には一般にKabatナンバリングシステムを用いる(およそ、軽鎖の残基1〜107と重鎖の残基1〜113)(例えば、Kabatら、Sequences of Immunological Interest.第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。一般的に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」を用いる(例えば、EUインデックスはKabatら(上掲)に報告されている)。「KabatにおけるEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。本明細書中で特に述べない限り、抗体の可変ドメイン内の残基の番号の言及は、Kabatナンバリングシステムによってナンバリングした残基を意味する。本明細書中で特に述べない限り、抗体の定常ドメイン内の残基の番号の言及は、EUナンバリングシステムによってナンバリングした残基を意味する(例えば、米国特許仮出願第60/640323号、EUナンバリングについての図を参照のこと)。
【0087】
「親和性成熟」抗体とは、その1つ以上のHVRに1つ以上の変更を有する抗体であって、そのような変更(単数または複数)を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる抗体である。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有する。親和成熟抗体は、当該分野において公知の手順により生産できる。Marksら、Bio/Technology,10:779〜783(1992年)では、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を記載している。HVRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発は、Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809〜3813(1994);Schierら、Gene,169:147〜155(1995);Yeltonら、J.Immunol.,155:1994〜2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.,154(7):3310〜9(1995);およびHawkinsら、J.Mol.Biol.,226:889〜896(1992)に記載されている。
【0088】
「ブロッキング」抗体または「アンタゴニスト」抗体とは、抗原が結合する生物学的活性を阻害または低減する抗体である。好ましいブロッキング抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0089】
本明細書において用いる場合、「アゴニスト抗体」とは、目的のポリペプチドの機能的活性のうち少なくとも1つを模倣する抗体である。
【0090】
「種依存性抗体」、例えば、哺乳動物抗ヒトIgE抗体とは、第二の哺乳動物種由来のその抗原の相同体が有するよりも、最初の哺乳動物種由来の抗原について強力な結合親和性を有する抗体である。通常は、種依存性の抗体は、ヒト抗原に対して「特異的に結合する」(すなわち、約1×10
−7M以下、好ましくは約1×10
−8以下および最も好ましくは約1×10
−9M以下という結合親和性(Kd)値を有する)が、第二の非ヒト哺乳動物種由来の抗原の相同体については、ヒト抗原についてのその結合親和性よりも少なくとも約50分の1、または少なくとも約500分の1、または少なくとも約1000分の1弱い結合親和性を有する。種依存性抗体は、上記のような抗体の任意の種々のタイプであってもよいが、好ましくはヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0091】
「結合親和性」とは一般的に、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的な相互作用の総合計的な強度を意味する。別段示さない限り、本明細書において「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する内因性結合親和性を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般的に、解離定数(Kd)として表すことができる。親和性は、本明細書中に記載のものを含む当業者に公知の共通した方法によって測定してもよい。低親和性抗体は一般に抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は一般に抗原によりはやく結合し、より長く結合したままとなる傾向である。結合親和性の種々の測定方法が当該分野で公知であり、それらのいずれかを本発明のために用いることができる。以下に具体的な例示的実施形態を記載する。
【0092】
「またはより良好(or better)」とは、結合親和性を指して本明細書において用いる場合、分子とその結合パートナーとの間のさらに強力な結合をいう。「またはより良好な」とは本明細書において用いる場合、より小さい数のKd値で示される、より強力な結合を指す。例えば、「0.6nMまたはそれより良好な」抗原親和性を有する抗体では、抗原についての抗体の親和性は0.6nM未満、すなわち、0.59nM、0.58nM、0.57nMなど、または0.6nM未満の任意の値である。
【0093】
一実施形態では、本発明による「Kd」または「Kd値」、「Kd」または「Kd値」は、段階的な力価の非標識抗原の存在下で、最小濃度の(
125I)−標識抗原にてFabを均衡化し、次いで抗Fab抗体でコーティングしたプレートに結合した抗原を捕獲することによって、抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する以下のアッセイで示されるような(Chen,ら、(1999)J.Mol Biol 293:865−881)、目的の抗体のFabバージョンとその抗原を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。アッセイの条件を決めるために、マイクロタイタープレート(Dynex)を5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて一晩コーティングして、引き続いて2%(w/v)のウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温(およそ23℃)で2〜5時間、ブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)に、100pMまたは26pMの[
125I]抗原を段階希釈した目的のFabと混合する(例えば、Prestaら、(1997)Cancer Res.57:4593〜4599の抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一致する)。ついで目的のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは確実に平衡状態に達するまでに長時間(例えば65時間)かかる場合もある。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。次いで、溶液を取り除き、プレートを0.1%のTween20を含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したとき、150μl/ウェルのシンチラント(scintillant)(MicroScint−20;Packard)を加え、そのプレートをTopcountγ計測器(Packard)にて10分間カウントする。最大結合の20%かまたはそれ以下濃度のFabを選択してそれぞれ競合結合測定に用いる。別の実施形態によれば、〜10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)にて表面プラズモン共鳴アッセイを用いてKdまたはKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIAcore Inc.)を、供給業者の説明書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(約0.2μM)に希釈し、その後結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流速で0.05%Tween20(PBST)を含むPBS中に注入する。会合および解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one−to−one Langmuir binding model)(BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(K
on)および解離速度(K
off)を算出する。平衡解離定数(Kd)をK
off/K
on比として算出する。例えば、Chen,Y.,ら、(1999)J.Mol Biol 293:865〜881を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる結合速度が10
6M
−1S
−1を上回るならば、その結合速度は、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop−flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)中で、25℃の、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加または減少を測定する蛍光クエンチング技術を用いて測定され得る。
【0094】
本発明による「結合速度」または「会合の速度」または「会合速度」または「k
on」はまた上記のように、BIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた上記と同じ表面プラズモン共鳴技術にて測定され得る。
【0095】
本明細書で用いられる、「実質的に類似」、または「実質的に同じ」という句は、2つの数値(一般には、一方は本発明の抗体に関連する数値、および他方は参照/比較抗体に関連する数値)の間の有意に高い程度の類似性であって、その結果、この値(例えばKd値)によって測定される生物学的特徴において有意差が、生物学的および/または統計学的にわずかであるかまたは全くないと認められる類似性を意味する。前記2つの値間の差異は好ましくは、参照/比較値の抗体の値の関数として約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
【0096】
本明細書で用いる場合、「実質的に減少」、または「実質的に異なる」という句は、当業者が2つの数値(一般に、本発明の抗体に関連する数値、および参照/比較分子に関連する他の数値)の間の差異に、この値(例えばKd値、HAMA反応)によって測定される生物学的性質上統計学的に有意であると認められるほどの、この2つの数値の間の有意に高い程度の差異を意味する。この2つの値間の差異は、参照/比較抗体の値の関数として、好ましくは約10%より大きく、好ましくは約20%より大きく、好ましくは約30%より大きく、好ましくは約40%より大きく、好ましくは約50%より大きい。
【0097】
「抗原」とは、抗体が選択的に結合し得る所定の抗原である。この標的抗原は、ポリペプチドであっても、炭水化物であっても、核酸であっても、脂質であっても、ハプテンであっても、または他の自然に存在するかもしくは合成の化合物であってもよい。好ましくは標的抗原はポリペプチドである。
【0098】
本願明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワークから、またはヒトコンセンサスフレームワークから由来するVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含んでいるフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「から得られる、〜に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよいし、または既存のアミノ酸配列変化を含んでもよい。既存のアミノ酸変化が存在する場合、好ましくは5以下、および好ましくは4以下、または3以下の既存のアミノ酸変化が存在する。既存のアミノ酸変化がVH中に存在する場合、好ましくは、それらの変化は位置71H、73Hおよび78Hの内の3つ、2つまたは1つでのみ起こり;例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73Tおよび/または78Aであってよい。一実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0099】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選別において、最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHの配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選別される。一般には、配列のサブグループは、Kabatら、によるサブグループである。一実施形態では、VLについて、このサブグループはKabatらによるサブグループκIである。一実施形態では、VHについて、このサブグループはKabatらによるサブグループIIIである。
【0100】
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabatらの可変重鎖サブグループIIIのアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施形態では、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、以下の配列のそれぞれの少なくとも一部または全部を含む:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号69)−H1−WVRQAPGKGLEWV(配列番号70)−H2−RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号71)−H3−WGQGTLVTVSS(配列番号72)。
【0101】
「VLサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、Kabatらの可変軽鎖κサブグループIのアミノ酸配列から得られたコンセンサス配列を含む。一実施形態では、VLサブグループIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、以下の配列のそれぞれの少なくとも一部または全部を含む:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号65)L1−WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号66)−L2−GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号67)−L3−FGQGTKVEIK(配列番号68)。
【0102】
「未改変のヒトフレームワーク」とは、アクセプターヒトフレームワークと同じアミノ酸配列を有する、例えば、アクセプターヒトフレームワークにおけるヒトアミノ酸から非ヒトアミノ酸への置換(単数または複数)を欠いている、ヒトフレームワークである。
【0103】
本明細書における目的のための「変更された超可変領域」とは、その中に1つ以上(例えば、1〜約16個の)アミノ酸置換(単数または複数)を含んでいる超可変領域である。
【0104】
本明細書の目的のための「未改変の超可変領域」とは、それが由来する非ヒト抗体と同じアミノ酸配列を有している超可変領域、すなわち、その中に1つ以上のアミノ酸置換がない超可変領域である。
【0105】
目的の抗原、例えば、腫瘍関連ポリペプチド抗原標的に「結合する」抗体とは、抗体が抗原を発現している細胞または組織を標的するのにおいて治療剤として有用であり、そして他のタンパク質とは、有意な交差反応を起こさないような十分な親和性で抗原に結合する抗体である。このような実施形態では、「非標的」タンパク質への抗体の結合の程度は、蛍光活性化細胞分取(FACS)分析または放射免疫沈降(RIA)により測定した場合に、抗体のその特定の標的タンパク質への結合の約10%未満である。標的分子への抗体の結合に関しては、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、非特異的な相互作用とは測定可能な相違がある結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般には結合活性を有しない同様の構造の分子であるコントロール分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定してもよい。例えば、特異的結合は、標的と同様のコントロール分子、例えば、過剰の非標識標的との競合により決定できる。この場合、プローブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的により競合的に阻害された場合に、特異的結合が示される。本明細書において用いる場合、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、例えば、少なくとも約10
−4M、あるいは少なくとも約10
−5M、あるいは少なくとも約10
−6M、あるいは少なくとも約10
−7M、あるいは少なくとも約10
−8M、あるいは少なくとも約10
−9M、あるいは少なくとも約10
−10M、あるいは少なくとも約10
−11M、あるいは少なくとも約10
−12Mまたはそれ以上の、標的に対するKdを有する分子により示され得る。ある実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する場合の結合のことをいう。
【0106】
「CD79bポリペプチドを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する」抗体または「増殖阻害性」抗体とは、適切なCD79bポリペプチドを発現するかまたは過剰発現するガン細胞の測定可能な増殖阻害を生じる抗体である。CD79bポリペプチドは、ガン細胞の表面上で発現される膜貫通ポリペプチドであってもよいし、またはガン細胞によって産生され、分泌されるポリペプチドであってもよい。好ましい増殖阻害性抗CD79b抗体は、適切なコントロールに比較して、20%より多く、好ましくは約20%〜約50%、さらに好ましくは50%より多くまで(例えば、約50%〜約100%)CD79b発現腫瘍細胞の増殖を阻害し、このコントロールとは代表的には、試験されている抗体で処理されない腫瘍細胞である。一実施形態では、増殖阻害は、細胞培養中で約0.1〜30μg/mlまたは約0.5nM〜200nMの抗体濃度で測定され得、この増殖阻害は、抗体に対する腫瘍細胞の曝露の1〜10日後に決定される。インビボでの腫瘍細胞の増殖阻害は、下の実験の実施例に記載されるような種々の方法で測定され得る。抗体は、抗CD79b抗体の体重あたり約1μg/kg〜約100mg/kgの投与が、抗体の最初の投与から約5日〜3カ月内に、好ましくは約5〜30日内に腫瘍サイズまたは腫瘍細胞増殖の減少を生じる場合にインビボで増殖阻害性である。
【0107】
「アポトーシスを誘導する」抗体とは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞の断片化、および/または膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成によって決定されるプログラムされた細胞死を誘導する抗体である。この細胞は通常は、CD79bポリペプチドを過剰発現する細胞である。好ましくはこの細胞は、腫瘍細胞、例えば、造血細胞、例えば、B細胞、T細胞、好塩基球、好酸球、好中球、単球、血小板または赤血球である。アポトーシスに関連する細胞事象を評価するには種々の方法が利用可能である。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位は、アネキシン結合によって測定され得る;DNA断片化は、DNAラダー形成を通じて評価され得る;そしてDNA断片化にともなう核/クロマチン凝縮は、低二倍性細胞におけるなんらかの増大によって評価され得る。好ましくは、アポトーシスを誘導する抗体は、アネキシン結合アッセイにおいて未処理の細胞に対するアネキシン結合の誘導を約2〜約50倍、好ましくは約5〜約50倍、最も好ましくは約10〜50倍生じる抗体である。
【0108】
「細胞死を誘導する」抗体とは、生存細胞を生育不能にさせる抗体である。この細胞は、一般に、CD79bポリペプチドを発現する細胞であり、特に、この細胞タイプは、CD79bポリペプチドを発現するかまたは過剰発現する。この細胞は特定の細胞型の癌性または正常な細胞であってもよい。CD79bポリペプチドは、ガン細胞の表面上で発現される膜貫通ポリペプチドであってもよいし、またはガン細胞によって産生および分泌されるポリペプチドであってもよい。この細胞は、ガン細胞、例えば、B細胞またはT細胞であってもよい。インビトロでの細胞死は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)によって誘導される細胞死を区別するために、補体および免疫エフェクター細胞の非存在下で決定されてもよい。従って、細胞死についてのアッセイは、熱不活化血清を用いて(すなわち、補体の非存在下で)かつ免疫エフェクター細胞の非存在下で行われてもよい。抗体が細胞死を誘導し得るか否かを決定するために、膜の完全性の損失(ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Mooreら、
Cytotechnology 17:1〜11(1995)を参照のこと)または7AADの取り込みによって評価されるような)が、非処理細胞と比較して評価され得る。好ましい細胞死誘導抗体は、BT474細胞におけるPI取り込みアッセイにおいて、PI取り込みを誘導する抗体である。
【0109】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプに応じて変わる。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害性;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)の下方制御;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0110】
「Fc領域」という用語は、本明細書において、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられ、これにはFc領域の天然の配列および改変体Fc領域が挙げられる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、またはPro230からそのカルボキシル末端まで伸展すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムに従って残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え操作することによって除去され得る。従って、インタクトな抗体の組成物は、除去される全てのK447残基を有する抗体集団、除去されるK447残基がない抗体集団、およびK447残基の有無の抗体の混合物を有する抗体集団を含んでもよい。
【0111】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的「エフェクター機能」としては、C1q結合;CDC;Fcレセプター結合;ADCC;食作用;細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター;BCR)の下方制御などが挙げられる。そのようなエフェクター機能は、通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさることを必要とし、例えば、本明細書の定義に開示されるような種々のアッセイを用いて評価され得る。
【0112】
「天然配列のFc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を包含する。天然配列のヒトFc領域としては、天然配列のヒトIgG1 Fc領域(非A−およびA−アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のヒトIgG3Fc領域;および天然配列のヒトIgG4Fc領域;ならびに、これらの自然に生じる改変体が挙げられる。
【0113】
「改変体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(単数または複数)により、天然配列のFc領域とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくはこの改変体Fc領域は、天然配列のFc領域もしくは親ポリペプチドのFc領域と比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列のFc領域または親のポリペプチドのFC領域におよそ1からおよそ10のアミノ酸置換、好ましくはおよそ1からおよそ5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の改変体Fc領域は、好ましくは、天然配列のFc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と、少なくともおよそ80%の相同性を有し、最も好ましくは、そのFc領域と少なくともおよそ90%の相同性を、より好ましくはそのFc領域と少なくともおよそ95%の相同性を有するであろう。
【0114】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞傷害エフェクター細胞が抗原−保有標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒素により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞傷害性の形態を指す。この抗体は、細胞傷害性細胞を「装備して」おり、このような殺傷には絶対的に必要である。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet,
Annu.Rev.Immunol,9:457〜92(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号または同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを行ってもよい。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞としては、末梢血液単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)が挙げられる。代わりとして、もしくは付加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynesら(USA)95:652〜656(1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0115】
「Fcレセプター」または「FcR」とは、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。好ましいFcRは天然配列のヒトFcRである。さらに好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するものであって、これにはFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスのレセプターが挙げられ、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的スプライシング型のものも含まれる。FcγRIIレセプターとしては、FcγRIIA(「活性型レセプター」)およびFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が挙げられ、これは主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有する。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine−based activation motif;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine−based inhibition motif;ITIM)を含んでいる(例としてDaeron,
Annu.Rev.immunol.15:203〜234(1997)を参照のこと)。FcRsは、RavetchおよびKinet,
Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991);Capelら、
Immunomethods 4:25〜34(1994);およびde Haasら、
J.Lab.Clin.Med.126:330〜41(1995)に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRsは本明細書において「FcR」という言葉によって包含される。この用語はまた、新生児レセプターであるFcRnを包含し、これは母性IgGの胎児への移送を担っている(Guyerら、
J.Immunol.117:587(1976)およびKimら、J.Immunol.24:249(1994))。
【0116】
インビボでのヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスまたはトランスフェクトされたヒト細胞株において、または改変体Fc領域を有するポリペプチドを投与された霊長類動物においてアッセイしてもよい。国際公開第2000/42072(Presta)には、FcRへの結合を向上または減弱させた抗体改変体が述べられている。例えば、Shieldsら、J.Biol.Chem.9(2):6591〜6604(2001)も参照のこと。
【0117】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞および好中球が挙げられ;PBMC細胞およびNK細胞が好ましい。このエフェクター細胞は、天然の供給源、例えば血液から単離してもよい。
【0118】
「補体依存細胞毒性」または「CDC」とは、補体存在下、標的細胞の細胞溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系の第一の成分(C1q)の、同族抗原に結合している抗体(適切なサブクラスの)への結合により開始される。補体活性を評価するために、例えば、Gazzano−Santoroら、
J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されたCDCアッセイを行うことができる。Fc領域アミノ酸配列が変更され、かつC1q結合能力が増大または減少したポリペプチド改変体(改変体Fc領域を有するポリペプチド)は、米特許第6,194,551号B1および国際公開第1999/51642号に記載される。例えば、Idusogieら、J.Immunol.164:4178〜4184(2000)も参照のこと。
【0119】
「Fc領域含有抗体」という用語は、Fc領域を含む抗体をいう。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムに従って残基447)は、例えば、抗体の精製の間に、または抗体をコードする核酸の組み換え操作によって除去され得る。従って、本発明によるFc領域を有する抗体を含んでいる組成物は、K447を有する抗体、除去される全K447を有する抗体、またはK447残基の有無の抗体の混合物を含んでもよい。
【0120】
CD79bポリペプチドの「細胞外ドメイン」または「ECD」とは、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを本質的に含まないCD79bポリペプチドの形態のことをいう。通常は、CD79bポリペプチドのECDは、1%未満のこのような膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインを有し、好ましくは0.5%未満のこのようなドメインを有する。本発明のCD79bポリペプチドについて同定される任意の膜貫通ドメインが、そのタイプの疎水性ドメインを同定するために当該分野で慣用的に使用されている基準に従って同定される。膜貫通ドメインの厳密な境界は変動し得るが、最もあり得るのは本明細書において最初に同定されたドメインのいずれかの末端において約5アミノ酸を超えないものである。従って、必要に応じて、CD79bポリペプチドの細胞外ドメインは、実施例または明細書において同定される膜貫通ドメイン/細胞外ドメインの境界のいずれかの側において約5個以下のアミノ酸を含んでよく、付随するシグナルペプチドを含むか含まないそのようなポリペプチドおよびそれらをコードする核酸は、本発明が意図している。
【0121】
本明細書に開示されたCD79bポリペプチドの「シグナルペプチド」のおよその位置は、本明細書および/または添付の図面に示している場合がある。しかしながら、シグナルペプチドのC末端の境界は、変動し得るが、最もあり得るのは本明細書において最初に同定されたシグナルペプチドのC末端の境界のいずれかの側において約5アミノ酸を超えないものであり、ここでそのシグナルペプチドのC末端の境界は、アミノ酸配列エレメントのそのような型を同定するために当該分野で慣用的に使用されている基準に従って同定され得る(例えば、Nielsenら、
Prot.Eng.10:1〜6(1997)およびvon Heinjeら、Nucl.Acids.Res.14:4683〜4690(1986))。さらに、いくつかの場合において、分泌ポリペプチドからのシグナル配列の切断は、完全に均一ではなく、2つ以上の分泌種をもたらすということも理解される。これらの成熟ポリペプチド(シグナルペプチドは、本明細書において同定されたシグナルペプチドのC末端の境界のいずれかの側の約5アミノ酸以内において切断されている)およびそれらをコードするポリヌクレオチドは、本発明が意図している。
【0122】
「CD79bポリペプチド改変体」とは、CD79bポリペプチド、好ましくは、本明細書で開示される全長の天然の配列のCD79bポリペプチド配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書中で定義される活性なCD79bポリペプチド、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを欠いているCD79bポリペプチド配列、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを含むかもしくは含まないCD79bポリペプチドの細胞外ドメイン、または本明細書中で開示される全長CD79bポリペプチド配列の任意の他のフラグメント(全長CD79bポリペプチドについての完全なコード配列の一部のみに相当する核酸によってコードされるものなど)のことを意味する。そのようなCD79bポリペプチド改変体としては、例えば、全長の天然のアミノ酸配列のN末端またはC末端において1以上のアミノ酸残基が付加または欠失されているCD79bポリペプチドが挙げられる。通常、CD79bポリペプチド改変体は、本明細書中で開示する全長の天然の配列のCD79bポリペプチド配列、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを欠いているCD79bポリペプチド配列、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを含むかもしくは含まないCD79bポリペプチドの細胞外ドメイン、または本明細書中で開示される全長CD79bポリペプチド配列の任意の他の特別に定義される任意のフラグメントに対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するか、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、CD79b改変体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であるか、あるいは、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600アミノ酸長もしくはそれ以上である。必要に応じて、CD79b改変体ポリペプチドは、天然CD79bポリペプチド配列と比較して、1個以下の保存的アミノ酸置換を有するか、あるいは天然CD79bポリペプチド配列と比較して、2、3、4、5、6、7、8、9または10個以下の保存的アミノ酸置換を有するであろう。
【0123】
本明細書において同定されるペプチドまたはポリペプチドの配列、すなわちCD79bポリペプチド配列に関して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、最大パーセントの配列同一性を達成するように必要に応じて配列をアラインメントし、ギャップを導入した後に、特定のペプチドまたはポリペプチドの配列、すなわちCD79bポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義され、いかなる保存的置換も配列同一性の部分とはみなされない。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の範囲内の種々の方法、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア(例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア)を用いて達成してもよい。当業者は、比較すべき配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要ないずれかのアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定してもよい。しかしながら、本明細書の目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて作成され、ここでALIGN−2プログラムに関する完全なソースコードを以下の表1に示す。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により作成され、そして以下の表1に示すソースコードは、米国著作権局Washington D.C.,20559においてユーザー文書と共に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるし、または、以下の表1に示すソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0D上で使用するためにコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメータはALIGN−2プログラムにより設定され、変更しない。
【0124】
アミノ酸配列比較のためにALIGN−2を使用する状況では、所定のアミノ酸配列Bに対する所定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(これは代替として、所定のアミノ酸配列Bに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所定のアミノ酸配列Aと表現できる)は、以下のように計算され:
100×分数X/Y
式中、Xは、AおよびBのプログラムのアラインメントにおいて配列アラインメントプログラムALIGN−2により同一でマッチングとスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合は、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならないことが理解されるであろう。
【0125】
「CD79b改変体ポリヌクレオチド」または「CD79b改変体核酸配列」とは、CD79bポリペプチド、好ましくは、本明細書に定義されており、かつ本明細書中で開示される全長の天然の配列のCD79bポリペプチド配列をコードする核酸配列と少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する活性なCD79bポリペプチド、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを欠いている全長の天然の配列のCD79bポリペプチド配列、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを含むかもしくは含まないCD79bポリペプチドの細胞外ドメイン、または、本明細書中で開示される全長CD79bポリペプチド配列の任意の他のフラグメント(例えば、全長CD79bポリペプチドについての完全なコード配列の一部分のみに相当する核酸によりコードされるもの)をコードする核酸分子を意味する。通常、CD79b改変体ポリヌクレオチドは、本明細書中で開示される全長の天然の配列のCD79bポリペプチド配列、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを欠いている全長の天然の配列のCD79bポリペプチド配列、本明細書中で開示されるシグナルペプチドを含むかもしくは含まないCD79bポリペプチドの細胞外ドメイン、または、本明細書中で開示される全長CD79bポリペプチド配列の任意の他のフラグメントをコードする核酸配列に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性を有するか、または、少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の核酸配列同一性を有する。改変体は、天然ヌクレオチド配列を包含しない。
【0126】
通常、CD79b改変体ポリヌクレオチドは、少なくとも約5ヌクレオチド長であるか、あるいは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990または1000ヌクレオチド長であり、ここで、この文脈において、「約」という用語は、参照ヌクレオチド配列長±その参照した長さの10%を意味する。
【0127】
本明細書において同定される、CD79bコード核酸配列に関する「核酸配列同一性パーセント(%)」とは、最大パーセントの配列同一性を達成するように必要に応じて配列をアラインメントし、ギャップを導入した後に、目的のCD79b核酸配列中のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。核酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当該分野の技術の範囲内の種々の方法、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて達成してもよい。しかしながら、本明細書の目的のためには、核酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて生成し、ここでALIGN−2プログラムに関する完全なソースコードを以下の表1に示す。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により作成され、そして以下の表1に示すソースコードは、米国著作権局Washington D.C.,20559においてユーザー文書と共に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手することができ、または、以下の表1に示すソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0D上で使用するためにコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメータはALIGN−2プログラムにより設定され、変更しない。
【0128】
核酸配列比較のためにALIGN−2を使用する状況において、所定の核酸配列Dに対するまたはその配列との所定の核酸配列Cの核酸配列同一性%(これは代替として、所定の核酸配列Dに対するまたはその配列との特定の核酸配列同一性%を有するか、または含む、所定の核酸配列Cと表現できる)は、以下:
100×分数W/Z
のように算出され、式中、Wは、CおよびDのプログラムのアラインメントにおいて配列アラインメントプログラムALIGN−2により同一でマッチングとスコア付けされたヌクレオチドの数であり、Zは、Dにおけるヌクレオチドの総数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと等しくない場合は、Dに対するCの核酸配列同一性%は、Cに対するDの核酸配列同一性%と等しくならないことが理解されるであろう。他に特段の記載がない限り、本明細書で使用する全ての核酸配列同一性%の値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを用いて直前の段落において記載したとおりに得られる。
【0129】
他の実施形態では、CD79b改変体ポリペプチドとは、CD79bポリペプチドをコードしており、かつ本明細書中で開示される全長CD79bポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下および洗浄条件下でハイブリダイズし得る核酸分子である。CD79b改変体ポリペプチドは、CD79b改変体ポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよい。
【0130】
「全長コード領域」という用語は、CD79bポリペプチドをコードする核酸を言及する際に使用する場合、本発明の全長CD79bポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列のことをいう(これは、添付図面において開始コドンと終止コドン(それらを含む)との間に示される場合が多い)。「全長コード領域」という用語は、ATCC寄託核酸を言及する際に用いられる場合、ATCCに寄託されているベクター内に挿入されているcDNAのうちCD79bポリペプチドをコードする部分のことをいう(これは、添付の図面において開始コドンと終止コドン(それらを含む)との間に示される場合が多い(開始コドンおよび終止コドンは図面中では太字にして、かつ下線を付している))。
【0131】
「単離された」とは、本明細書中で開示される種々のCD79bポリペプチドを説明するために用いる場合、その天然の環境の成分中から同定および分離および/または回収されたポリペプチドを意味する。その天然の環境の混入成分は、代表的にはポリペプチドの治療用途を妨害する物質であり、これらとしては、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が挙げられ得る。好ましい実施形態では、(1)スピニングカップ(spinning cup)配列決定装置を用いることによってN末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クマシーブルー染色もしくは好ましくは銀染色を用いた非還元または還元条件下のSDS−PAGEによって均質性となるように、このポリペプチドは精製される。単離されたポリペプチドとしては組換え細胞内のインサイチュのポリペプチドが挙げられるが、その理由はCD79bポリペプチドの自然環境の成分の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら通常は、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0132】
「単離された」CD79bポリペプチドコード核酸または他のポリペプチドコード核酸とは、ポリペプチドコード核酸の天然の供給源において通常関連する少なくとも1つの混入核酸分子から同定され、分離される核酸分子である。単離されたポリペプチドコード核酸分子とは、自然界にそれが存在する形態または状態以外のものである。従って、単離されたポリペプチドコード核酸分子は、天然の細胞内にそれが存在する場合、特定のポリペプチドコード核酸分子とは区別される。しかしながら、単離されたポリペプチドコード核酸分子は、例えば、その核酸分子が天然の細胞のものとは異なる染色体位置にある場合、通常そのポリペプチドを発現する細胞に含まれるポリペプチドコード核酸分子を包含する。
【0133】
「制御配列」という用語は、特定の宿主生物中の作動可能に連結されたコード配列の発現のために必要なDNA配列のことをいう。例えば、原核生物に適した制御配列としては、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列およびリボソーム結合部位を包含する。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが公知である。
【0134】
核酸は、それが別の核酸配列との機能的関連性におかれる場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーに対するDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合にはそのポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結されており;プロモーターもしくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響する場合にはコード配列に作動可能に連結されており;または、リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置付けられている場合にコード配列に作動可能に連結されている。一般的に「作動可能に連結された」とは、連結されるDNA配列が隣接しており、そして、分泌リーダーの場合は隣接し、かつリーディングフェーズにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、好都合な制限部位におけるライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを従来の慣行に従って用いる。
【0135】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」とは、当業者が容易に決定できるものであり、一般的にプローブ長、洗浄温度および塩濃度に依存した実験的計算値である。一般に、長いプローブほど適切なアニーリングのためにより高温を必要とするが、短いプローブほどより低温を必要とする。ハイブリダイゼーションは、一般に、相補鎖がその融点より低温の環境中に存在する場合、変性したDNAが再アニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高いほど、使用できる相対温度は高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントとする傾向があり、より低い温度は、その傾向が小さい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに関するさらなる詳細および説明については、Ausubelら、
Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,(1995)を参照のこと。
【0136】
「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」とは、本明細書において定義する場合、以下によって特定してもよい:(1)低いイオン強度および高い洗浄温度、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃において使用するか;(2)ハイブリダイゼーションの間、ホルムアミドなどの変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミド+0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5+750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを42℃で使用するか;または(3)50%のホルミアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/mL)、0.1%のSDSおよび10%デキストラン硫酸を42℃で使用し、そして10分の洗浄を42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)続いて55℃でEDTA含有0.1×SSCからなる10分の高ストリンジェンシー洗浄条件を使用する溶液中での一晩のハイブリダイゼーション。
【0137】
「中等度にストリンジェントな条件」とは、Sambrookら、
Molecular
Cloning;A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1989による説明と同一と考えてよく、そして、上記したものより低ストリンジェントな洗浄溶液およびハイブリダイゼーションの条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用を包含する。中等度にストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt溶液、10%デキストラン硫酸および20mg/mL変性撹拌サケ精子DNAを含む溶液中37℃での一晩のインキュベーションおよびその後の約37〜50℃における1×SSC中フィルターの洗浄である。プローブ長などのような因子を適合させるために必要に応じて温度、イオン強度などを調節する方法は当業者の認識するとおりである。
【0138】
「エピトープタグ化された」という用語は、本明細書において用いる場合、「タグポリペプチド」に融合されたCD79bポリペプチドまたは抗CD79b抗体を含むキメラポリペプチドのことをいう。タグポリペプチドは、対応する抗体が作製できるエピトープを提供するために十分な残基を有するが、融合相手のポリペプチドの活性を妨害しないくらい短い。タグポリペプチドは、好ましくは抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないほど高度に特有のものである。適切なタグポリペプチドは、一般に少なくとも6アミノ酸残基、そして通常は約8〜50アミノ酸残基(好ましくは約10〜20アミノ酸残基)を有する。
【0139】
「活性な」または「活性」とは、本明細書の目的では、天然のまたは自然に存在するCD79bの生物学的および/または免疫学的な活性を保持するCD79bポリペプチドの形態のことをいい、ここで、「生物学的」活性とは、天然のまたは自然に存在するCD79bが保有する抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外の天然または自然に存在するCD79bによって引き起こされる生物学的機能(抑制性または促進性のいずれか)のことをいい、そして「免疫学的」活性とは、天然のまたは自然に存在するCD79bが保有する抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力のことをいう。
【0140】
「アンタゴニスト」という用語は、最も広範な意味において使用され、そして天然のCD79bポリペプチドの生物学的活性を部分的もしくは完全にブロック、阻害または中和する任意の分子を包含する。同様の様式において、「アゴニスト」という用語は、最も広範な意味において使用され、そして天然のCD79bポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を包含する。適切なアゴニスト分子またはアンタゴニスト分子としては、特に天然のCD79bのポリペプチド、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、有機小分子などのアゴニストもしくはアンタゴニストの抗体または抗体フラグメント、フラグメントあるいはアミノ酸配列改変体が挙げられる。CD79bポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法は、CD79bポリペプチドと候補アゴニスト分子または候補アンタゴニスト分子とを接触させる工程、およびCD79bポリペプチドに通常関連している1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定する工程を包含し得る。
【0141】
「精製された」とは、ある分子が、その分子が含まれるサンプルの少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%の濃度でそのサンプル中に存在することを意味する。
【0142】
「単離された」核酸分子とは、その核酸分子が通常関連している、例えば、天然の環境中での少なくとも1つの他の核酸分子から分離されている核酸分子である。単離された核酸分子は、その核酸分子を通常発現する細胞中に含まれる核酸分子をさらに包含するが、その核酸分子は、染色体外にまたは自然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0143】
「ベクター」という用語は、本明細書において用いる場合、それが結合している別の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントが結合され得る環状の二重鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはファージベクターである。別の型のベクターはウイルスベクターであり、ここでは付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへ結合させることができる。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製してもよい(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターとエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示し得る。このようなベクターは本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「組換えベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く用いられているベクターの形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に用いる場合が多い。
【0144】
本明細書で交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNAおよびRNAが包含される。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、または合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質であってもよい。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびそれらのアナログを含んでもよい。存在する場合は、ヌクレオチド構造に対する修飾はポリマーのアセンブリの前に付与しても、または後に付与してもよい。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後にさらに例えば標識とのコンジュゲーションによりさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾としては、例えば1つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログによる「キャップ」置換、ヌクレオチド間修飾、例えば未荷電連結による(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カーバメートなど)、および、荷電連結(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)によるもの、ペンダント部分を含有するもの、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リジンなど)、インターカレーターを有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含有するもの(例えば金属、放射活性金属、ホウ素、酸化性金属など)、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結部を有するもの(例えばα芳香族核酸など)、ならびに、未修飾型のポリヌクレオチド(単数または複数)が挙げられる。さらにまた、糖に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホネート基、ホスフェート基により置き換えられているか、標準的な保護基により保護されているか、または、追加のヌクレオチドへの追加的連結部を作成するために活性化されていてもよく、あるいは、固体または半固体の支持体にコンジュゲートされていてもよい。5’および3’末端のOHはリン酸化されてもよいし、または、アミンもしくは炭素原子1〜20個の有機キャッピング基部分により置換されていてもよい。他のヒドロキシルはまた標準的保護基に誘導体化されていてよい。ポリヌクレオチドはまた当該分野で一般的に知られたリボースまたはデオキシリボース糖のアナログ形態、例えば2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環糖アナログ、α−アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環状アナログおよび非塩基性アナログ、例えばメチルリボシドなどを含んでもよい。1つ以上のホスホジエステル連結部が別の連結基により置き換えられていてよい。これらの代替的連結基としては、限定するものではないがホスフェートがP(O)S(チオエート)、P(S)S(ジチオエート)、(O)NR
2(アミデート)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH
2(「ホルムアセタール」)で置き換えられている実施形態を包含し、ここで各RまたはR’は独立して、Hまたは場合によりエーテル(−O−)結合を含有する置換または未置換のアルキル(1〜20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルキルである。ポリヌクレオチド中の全連結部が同一である必要はない。前記の説明はRNAおよびDNAを包含する本明細書に記載する全てのポリヌクレオチドにあてはまる。
【0145】
「オリゴヌクレオチド」とは本明細書において用いる場合、必須ではないが一般的に約200ヌクレオチド長未満の短鎖の一般的には1本鎖の一般的には合成されたポリヌクレオチドを一般的に指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は相互に排他的ではない。ポリヌクレオチドに関して上記した説明は等しく、そして完全にオリゴヌクレオチドに適用できる。
【0146】
「癌、ガン」および「癌性」という用語は、制御されない細胞増殖によって代表的には特徴付けられる哺乳動物の生理学的状態を指すかまたは記述する。ガンの例としては、限定するものではないが、造血系の癌、または血液関連の癌、例えば、リンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるだけでなく、脾臓のガンおよびリンパ節のガン、さらに癌腫、芽細胞腫、および肉腫も挙げられる。癌のさらに具体的な例としては、B細胞関連のガンが挙げられ、これには、例えば、高悪性度、中悪性度および低悪性度のリンパ腫(例えば粘膜内リンパ組織B細胞リンパ腫および非ホジキンリンパ腫(NHL)などのB細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球リンパ腫、周辺帯リンパ腫、拡散性大細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、およびホジキンリンパ腫およびT細胞リンパ腫を含む)、および白血病(二次性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えばB細胞白血病(CD5+Bリンパ球)、骨髄性白血病、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)および骨髄異形成症候群を含む)、ならびにその他の血液学的および/またはB細胞もしくはT細胞関連の癌が挙げられる。さらには追加的な造血性細胞の癌も含まれ、このような細胞としては、好塩基球、好酸球、好中球および単球等の多形核白血球、樹状細胞、血小板、赤血球およびナチュラルキラー細胞が挙げられる。また、以下から選択される癌性のB細胞増殖性障害も含まれる:リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫。B細胞癌の起源は以下のとおりである:周辺帯B細胞リンパ腫は周辺帯の記憶B細胞を起源とし、濾胞性リンパ腫および拡散性大B細胞リンパ腫は胚中心の軽帯(light zone)の中心細胞を起源とし、慢性リンパ性白血病および小リンパ球白血病はB1細胞(CD5+)を起源とし、マントル細胞リンパ腫はマントル帯のナイーブなB細胞を起源とし、そしてバーキットリンパ腫は胚中心の暗帯(dark zone)の中心芽細胞を起源とする。本明細書で「造血性細胞組織」と呼ばれる造血性細胞を含む組織としては、胸腺および骨髄および末梢性リンパ組織、例えば脾臓、リンパ節、粘膜に関連するリンパ組織、例えば消化管関連のリンパ組織、扁桃腺、パイアー斑(バイエル板)および虫垂、ならびにその他粘膜に関連するリンパ組織、例えば気管支内側が挙げられる。このような癌のさらに特別な例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸管癌、膵癌、グリア芽腫、子宮頚部癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮体癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、白血病、および他のリンパ増殖性の障害、および種々のタイプの頭頸部癌が挙げられる。
【0147】
本明細書の「B細胞悪性腫瘍」としては、非ホジキンリンパ腫(NHL)が挙げられ、これには軽度/濾胞性NHL、小リンパ球(SL)NHL、中程度/濾胞性NHL、中程度の拡散性NHL、重度の免疫芽細胞NHL、重度のリンパ芽球NHL、重度の非正円形細胞でない小細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症、非ホジキンリンパ腫(NHL)、リンパ球優位型ホジキン病(LPHD)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、再発性無痛性NHLおよびリツキシマブ難治性無痛性NHLを含む無痛性NHL;急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病を含む白血病;マントル細胞リンパ腫;および他の血液学的悪性腫瘍が挙げられる。このような悪性腫瘍は、CD79bのようなB細胞表面マーカーに対する抗体で処置され得る。このような疾患は本明細書では、CD79bのようなB細胞表面マーカーに対する抗体の投与によって処置されるものと考え、これには、コンジュゲートされていない(「裸の」)抗体、または本明細書に開示される細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗体の投与を包含する。このような疾患はまた、本発明の抗CD79b抗体または抗CD79b抗体薬物コンジュゲートを、同時にまたは連続して与えられる別の抗体または抗体薬物コンジュゲート、別の細胞毒性剤、放射線または他の処置と組み合わせて含んでいる併用療法によって処置されることが本明細書では考えられる。本発明の例示的な処置方法では、本発明の抗CD79b抗体は、抗CD20抗体、免疫グロブリン、またはそのCD20結合フラグメントと組み合わせて一緒にまたは連続して投与される。この抗CD20抗体は、裸の抗体であってもよいし、または抗体薬物コンジュゲートであってもよい。併用療法の実施形態では、抗CD79b抗体は、本発明の抗体であり、かつ抗CD20抗体はRituxan(登録商標)(リツキシマブ)である。
【0148】
「非ホジキンリンパ腫」または「NHL」という用語は、本明細書において用いる場合、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系の癌を意味する。一般に、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫とは、ホジキンリンパ腫にはリードシュテルンベルク細胞が存在し、非ホジキンリンパ腫にはこの細胞が不在であることにより区別できる。本明細書で用いる用語に含まれる非ホジキンリンパ腫の例としては、当該分野で公知の分類スキーム、例えばColor Atlas of Clinical Hematology第3版;A.Victor HoffbrandおよびJohn E.Pettit(編)(Harcourt Publishers Limited 2000)に記載の改訂版European−American Lymphoma(REAL)スキームのように当該分野で公知の分類スキームに従って当業者(例えば、腫瘍学者または病理学者)によって認識されるあらゆるものを含む。特に
図11.57、11.58および11.59を参照のこと。より具体的な例としては、限定するものではないが、再発性または抵抗性のNHL、前線低悪性度NHL、第III/IV期NHL、化学療法に抵抗性のNHL、前駆体Bリンパ芽球性白血病および/またはリンパ腫、小リンパ球リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病および/または前リンパ球性白血病および/または小リンパ球リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、免疫細胞腫および/またはリンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ系質細胞性リンパ腫、周辺帯B細胞リンパ腫、脾周辺帯リンパ腫、結節外周辺帯−MALTリンパ腫、結節周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、プラズマ細胞腫および/または形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞性中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度拡散性NHL、広汎性大B細胞リンパ腫、高悪性度NHL(高悪性度前線NHLおよび高悪性度再発性NHLを含む)、自己幹細胞移植後のまたは自己肝細胞移植に抵抗性のNHL再発、原発性縦隔大B細胞リンパ腫、原発性浸出リンパ腫、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度非切断小細胞性NHL、巨大病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆体(周辺性)大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫および/またはセザリー症候群、皮膚(皮膚性)リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管動原体リンパ腫が挙げられる。
【0149】
「障害」とは、本発明の物質/分子または方法での処置から利益を受ける任意の状態である。これには、該当の障害に対して哺乳動物を罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性および急性の障害または疾患が挙げられる。本明細書で処置されるべき障害の非限定的な例としては、癌性の状態、例えば、良性および悪性の腫瘍;白血病およびリンパ系の悪性腫瘍;神経系障害、膠細胞性障害、星状性障害、視床下部および他の腺性の障害、マクロファージ性障害、上皮性障害、間質性障害、および胚盤胞性障害;ならびに炎症性障害、免疫障害および他の血管系性関連障害が挙げられる。障害としてはさらに、癌性の状態、例えば、B細胞増殖性障害および/またはB細胞腫瘍、例えば、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。
【0150】
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、異常な細胞増殖にある程度関連している障害を意味する。一実施形態では、細胞増殖性疾患は癌である。
【0151】
「腫瘍」とは、本明細書において用いる場合、悪性か良性かにかかわらず、全ての腫瘍性細胞成長および増殖、ならびに全ての前癌性および癌性の細胞および組織を意味する。
【0152】
「自己免疫性疾患」とは、本明細書において、個体の自己組織もしくは器官または同時分離したものから生じ、それらに対して生じる疾患または症状、あるいはその徴候または結果として生じるその状態である。これら多くの自己免疫性および炎症性障害において、多くの臨床用および研究用のマーカーが存在してもよく、これには限定するものではないが、高ガンマグロブリン血症、高レベルの自己抗体、組織中の抗原抗体複合体蓄積、副腎皮質ステロイドまたは免疫抑制性治療の利益、および影響を受けた組織中のリンパ系細胞の凝集塊が挙げられる。B細胞が媒介する自己免疫性疾患に関していずれか1つの理論に限定されるものではないが、B細胞は、自己抗体産生、免疫複合体形成、樹状細胞およびT細胞活性化、サイトカイン合成、ケモカインの直接放出、および病巣への異所性新リンパ形成を含む、多くの機構的な経路によりヒト自己免疫性疾患において病理学的な影響を示すと考えられる。各々のこれらの経路は、自己免疫性疾患の病状の程度の違いに関与し得る。
【0153】
「自己免疫性疾患」とは、臓器特異的疾患(すなわち、免疫応答が、内分泌系、造血系、皮膚、循環器系、胃腸および肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、神経筋系、中枢神経系などといった臓器系に対して特異的である)または、複数の臓器系に影響し得る全身性疾患(例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性筋炎など)であってもよい。好ましい前記疾患としては、自己免疫性リウマチ学的障害(例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、強皮症、SLEおよびループス腎炎などの狼瘡、多発性筋炎/皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、および乾癬関節炎など)、自己免疫性胃腸および肝臓障害(例えば、炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病)、自己免疫性胃炎および悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆管萎縮症、原発性硬化性胆管炎、および小児脂肪便病など)、血管炎(例えば、チャング−シュトラウス血管炎、ウェゲナー肉芽腫症および顕微鏡的多発血管炎を含むANCA陰性の血管炎およびANCA関連血管炎など)、自己免疫性神経学的障害(例えば、多発性硬化症、眼球クローヌスミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、および自己免疫性多発性神経炎など)、腎臓疾患(例えば、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、およびベルガー病など)、自己免疫性皮膚科障害(例えば、乾癬、じんま疹(urticaria)、じんま疹(hives)、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、および皮膚紅班性狼瘡など)、血液系障害(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後の紫斑病、および自己免疫溶血性貧血など)、アテローム性動脈硬化、ブドウ膜炎、自己免疫性聴覚疾患(例えば、内耳疾患および聴力障害など)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植および自己免疫性内分泌系疾患(例えば、インスリン依存型糖尿病(IDDM)などの糖尿病関連の自己免疫性疾患、アジソン病および自己免疫性甲状腺疾患(例えばグレーブス病および甲状腺炎)など)が挙げられる。より好ましいこのような疾患としては、例えば、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、ANCA関連血管炎、狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎および糸球体腎炎が挙げられる。
【0154】
場合によって上記のものを包含する、本明細書中で定義されるような他の自己免疫性疾患の具体的な例としては、限定されるものではないが、関節炎(急性および慢性の関節リウマチ、例として、若年発症関節リウマチ炎およびステージ、例えば、関節リウマチ関節滑膜炎、痛風または痛風性関節炎、急性の免疫学的な関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、II型コラーゲン誘導性の関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、スティル病、椎骨関節炎、骨関節炎、慢性関節炎プログレジエンテ(progrediente)、変形性関節炎、慢性多発性関節炎プリマリア、反応性関節炎、閉経期の関節炎、エストロゲン−枯渇関節炎、および強直性脊椎炎/リウマチ様脊椎炎)、自己免疫性リンパ系増殖性疾患、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えば、プラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬および爪乾癬、アトピー、例として、アトピー性疾患、例えば、花粉症およびジョブ症候群、皮膚炎、例として、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激物接触皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎、X連鎖過剰IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、蕁麻疹、例えば、慢性アレルギー性蕁麻疹および慢性特発性蕁麻疹、例として、慢性自己免疫性蕁麻疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、全身性硬化症などの硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば、脊髄−視神経MS、原発性進行性MS(PPMS)、および再発性寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、皮膚硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、胃腸炎症、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸炎潰瘍、顕微鏡的大腸炎、膠原性大腸炎、多発性大腸炎、壊死性全腸炎、および経壁性大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎症、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例として、成人または急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、移植片対宿主病、遺伝性血管性浮腫などの血管性浮腫、髄膜炎の脳神経損傷、妊娠ヘルペス、妊娠性類天疱瘡、陰嚢掻痒、自己免疫性早期卵巣機能不全、自己免疫状態による急性聴力損失、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシーおよびアレルギー性鼻炎およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えば、ラスマッセンの脳炎および辺縁および/または脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例えば、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎または自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有するまたは有さない糸球体腎炎(GN)、例えば、慢性または急性の糸球体腎炎、例えば、原発性GN、免疫媒介性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、膜または膜性増殖性GN(MPGN)(タイプIおよびタイプIIを含む)、急速進行性GN(RPGN)、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例として形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、薄板状魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、妊娠前角化症、膿皮症壊疽、アレルギー性状態および応答、食物アレルギー、薬剤アレルギー、昆虫アレルギー、まれなアレルギー性障害、例として肥満細胞症、アレルギー性応答、湿疹、例として、アレルギー性またはアトピー性湿疹、乾皮性湿疹、異常発汗剤湿疹および小胞の掌蹠湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息および自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う状態および慢性炎症反応、妊娠中の胎児のABO式血液型など外来性抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、ループス、例としてループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、ジスコイドループス、および円板状エリテマトーデス、脱毛症ループス、SLE、例えば皮膚SLEまたは亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)および紅班性狼瘡汎発、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例として、小児IDDM、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性大腸炎、糖尿病性大動脈障害、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎(例として、リウマチ性多発性筋痛および巨細胞(高安)動脈炎などの大脈管脈管炎、川崎病および結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎などの中脈管炎、免疫血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、フィブリノイド壊死性血管炎および全身性壊死性血管炎などの壊死性血管炎、ANCA陰性の血管炎、およびチャーグ−ストラウス症候群(CSS)などのANCA関連の血管炎、ヴェゲナー肉芽腫、および顕微鏡的多発性血管炎)、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血または免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症または形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症(類)、例えば、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、外傷または出血の二次症状、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、単神経炎、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、天疱瘡または類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡、瘢痕性(粘液膜)類天疱瘡、皮膚類天疱瘡、尋常性天疱瘡、新生物関連天疱瘡、落葉状天疱瘡、
類天疱瘡粘液−膜天疱瘡、および紅斑性天疱瘡、後天性表皮水疱症、眼炎症、好ましくはアレルギー性眼性炎症、例えば、アレルギー性結膜、直鎖状IgA水疱性疾患、自己免疫誘導性結膜炎、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病または症候群、自己免疫性状態による熱性損傷、子癇前症、免疫複合体障害、例えば、免疫複合体腎炎、抗体が媒介する腎炎、神経炎症性障害、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎またはIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によって発症するもの)、例として、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑病(PTP)、ヘパリン誘発性血小板減少および自己免疫性または免疫媒介性血小板減少、例えば、慢性および急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、強膜炎、例えば、特発性のセラト強膜炎、上強膜炎、自己免疫性精巣炎および卵巣炎を含む精巣および卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例として、甲状腺炎、例えば、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)または亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、グレーブス眼疾患(眼障害または甲状腺関連の眼障害)、自己免疫多腺性症候群などの多腺性症候群、例えば、タイプI(または、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として、神経系新生物関連症候群、例えば、ランバート−イートン筋無力症症候群またはイートン−ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例えば、アレルギー性脳脊髄炎または脳脊髄炎性アレルギーおよび実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌスまたは眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)および感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫慢性活動性肝炎、間質性肺炎、例えば、リンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン−バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚病、急性発熱性好中性皮膚病、角層下膿疱症、一過性棘融解皮膚病、肝硬変、例として原発性胆管萎縮症および肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアックもしくはコエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、例として混合性クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(Lou Gehrig’s disease))、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例として、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、多発性軟骨炎、例えば、抵抗性または再発したもしくは再発性の多発性軟骨炎、肺胞状タンパク質症、コーガン症候群/非梅毒性間質性角膜炎などの角膜炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状ヘルペス関連疼痛、アミロイドーシス、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症(これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症および未同定の有意なモノクローナルガーモパチィ(monoclonal garnmopathy of undetermined significance)、MGUS)が含まれる)末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例えば、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺およびCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性または分節性または限局性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例えば、自己免疫脱髄性病および慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、ドレスラー症候群、円形脱毛症、完全脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症および毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、例えば、抗精子抗体によるもの、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えば、アレルギー性肺胞炎および繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、寄生虫病、例えば、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間隙肺線維形成、間質性肺線維形成、繊維化縦隔炎、肺線維形成、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性または慢性)またはFuchの毛様体炎)、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウイルス感染、敗血症(全身性炎症反応症候群(SIRS))、内毒血症、膵炎、甲状腺炎、パルボウイルス感染、風疹ウイルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタイン・バーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンの症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、慢性過敏性肺炎、結膜炎、例えば、春季カタル、乾性角結膜炎および流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化腎症、良性家族性および虚血−再灌流障害、移植臓器再灌流、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺性疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症障害、(大脳血管性不足)、例えば、動脈硬化脳症および動脈硬化症網膜症、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、らい性結節性紅斑、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、原発性特発性の粘液水腫、ネフローゼ、交感神経眼炎(交感性眼炎)、新生児眼炎、視神経炎、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、ケルヴァン(Quervain)甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、非悪性胸腺腫、リンパ濾胞性胸腺炎、白斑、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球−粘着力欠損、サイトカインおよびTリンパ球に媒介される急性および遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、自己免疫多腺性症候群、例えば多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋症、例えば、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性または非化膿性副鼻腔炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨または蝶形骨副鼻腔炎、アレルギー性副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症−筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギロームまたは好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、脊椎関節症、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット−アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、例えば、慢性関節リウマチ、リンパ節炎、血圧応答の減退、血管機能不全、組織損傷、心血管虚血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、および脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、虚血性再灌流障害、心筋または他の組織の再灌流損傷、リンパ腫気管気管支炎、炎症性皮膚病、急性炎症性成分を有する皮膚病、多臓器不全、水疱性疾患、腎皮質壊死、急性化膿性髄膜炎または他の中枢神経系炎症性障害、眼性および眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、ナルコレプシー、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、および子宮内膜症が挙げられる。このような疾患は、CD79bなどのB細胞表面マーカーに結合する抗体の投与によって治療されることが本明細書において意図されており、本明細書中で開示したような、コンジュゲートしていない(「裸の、ネイキッド」)抗体または細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗体の投与を含む。このような疾患はまた、別の抗体もしくは抗体薬物コンジュゲート、別の細胞毒性剤、放射線または他の同時もしくは連続して施される処置と組み合わせて、本発明の抗CD79b抗体もしくは抗CD79b抗体薬物コンジュゲートを含んでいる併用療法によって治療されることが、本明細書において意図される。
【0155】
「処置すること」または「処置」または「軽減」とは、治療的な処置と予防的または防止的な手段の両方のことをいい、その目的は、標的とする病理学的な状態または障害を予防するかまたは減速(低減)させることである。処置を必要とする者としては、すでにその障害を有する者ならびに障害を有する傾向にある者または障害を予防すべき者が挙げられる。被験体または哺乳動物は、本発明の方法に従って治療量の抗CD79b抗体を投与された後に、その患者が、以下のうち1つ以上の観察可能な減少および/もしくは測定可能な減少を示すかまたは以下の1つ以上が無くなることを示す場合に、CD79bポリペプチド発現ガンに対して首尾よく「処置され」ている:癌細胞の数の減少または癌細胞がなくなること;腫瘍の大きさの減少;軟部組織および骨への癌の伝播を含む末梢器官への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止);腫瘍増殖のある程度の阻害;および/または特定の癌に関連する症状の1つ以上のある程度の緩和;罹患率および死亡率の低下ならびに生活の質の問題の改善。抗CD79b抗体が、増殖を予防し得、そして/または既存の癌細胞を殺傷し得る程度に、それらは、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。これらの兆候または症状の減少はまた、患者が感じる場合もある。
【0156】
上記疾患における首尾よい処置および改善を評価するための上記のパラメータは、医師によく知られている慣用的な手順によって容易に測定可能である。癌治療に対して、有効性は、例えば、疾患が進行するまでの時間(TTP)を評価することおよび/または奏功率(RR)を確認することによって、測定され得る。転移は、ステージングテストによって、および骨への伝播を測定する骨スキャンならびにカルシウムレベルおよび他の酵素についての試験によって、確認され得る。CTスキャンもまた、骨盤およびその領域のリンパ節への伝播を観察するために行われ得る。胸部X線および公知の方法による肝臓酵素レベルの測定が、それぞれ肺および肝臓への転移を観察するために用いられる。この疾患をモニターするための他の慣用的な方法としては、経直腸超音波断層検査(TRUS)および経直腸的針生検(TRNB)が挙げられる。
【0157】
さらに局在性のガンである膀胱癌については、疾患の進行を決定するための方法としては、膀胱鏡検査による尿細胞検査、尿中の血液存在のモニタリング、超音波断層撮影または静脈性腎盂像、コンピュータ断層撮影法(CT)および磁気共鳴映像法(MRI)による尿路上皮性路の可視化が挙げられる。遠隔転移の存在は、腹部のCT、胸部X線、または骨格の放射性核種画像診断によって評価してもよい。
【0158】
「慢性、長期」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするための、急性方式とは対照的な連続的な方式での薬剤(単数または複数)の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ実際は周期的になされる処置である。
【0159】
「個体」とは脊椎動物である。特定の実施形態では、この脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、限定するものではないが、家畜動物(ウシなど)、スポーツ用動物、愛玩動物(ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが挙げられる。特定の実施形態では、哺乳動物とはヒトである。
【0160】
癌の症状の緩和の処置を目的とする「哺乳動物」とは、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、これにはヒト、家畜用および農場用動物、ならびに動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどが挙げられる。好ましくは、この哺乳動物とはヒトである。
【0161】
1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与とは、同時(同時期)と任意の順序での連続投与を包含する。
【0162】
「キャリア」とは、本明細書において用いる場合、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤であって、それに対して曝露される細胞または哺乳動物に対して、使用される用量および濃度において無毒性である薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤を包含する。生理的に受容可能なキャリアは、水溶性のpH緩衝溶液である場合が多い。生理的に受容可能なキャリアの例としては、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン;単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;および/または非イオン性界面活性物質、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICS(登録商標))が挙げられる。
【0163】
「固相」または「固体支持体」とは、本発明の抗体が、接着または付着できる非水性マトリックスを意味する。本明細書中において包含される固相の例としては、ガラス(例えば、制御されたポアガラス)、多糖類(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーンから部分的または完全に形成されたものが挙げられる。ある特定の実施形態において、その状況に応じて、固相は、アッセイプレートのウェルを含み得る;他に、固相は、精製カラム(例えば、アフィニティー・クロマトグラフィ・カラム)である。この用語はまた、別々の粒子の不連続の固相、例えば、米国特許第4,275,149号に記載されている固相も包含する。
【0164】
「リポソーム」とは、種々のタイプの脂質、リン脂質および/またはサーファクタントから構成される小胞であり、これは、哺乳動物への薬物(例えば、CD79b抗体)の送達に有用である。リポソームの成分は、通常、生物学的膜の脂質の配列に類似した二重層を形成して配置されている。
【0165】
「小型、低」分子または「小型、低」有機分子とは、本明細書においては、約500ダルトン未満の分子量を有するものと定義する。
【0166】
「個体」、「被験体」、または「患者」とは、脊椎動物である。特定の実施形態では、この脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、限定するものではないが、家畜動物(ウシなど)、スポーツ用動物、愛玩動物(例えば、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが挙げられる。特定の実施形態では、哺乳動物とはヒトである。
【0167】
「薬学的処方物」という用語は、活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態の調製物であって、その製剤が投与される被験体に許容されない毒性の追加の成分を含有しない調製物を指す。このような処方物は無菌であり得る。
【0168】
「無菌」処方物とは、全ての生きている微生物およびそれらの胞子を有さず無菌である。
【0169】
本明細書中に開示されるような抗体の「有効量」とは、特に述べられる目的を果たすのに十分な量である。「有効量」は、経験的におよび述べられる目的に関する慣用的な方法によって決定され得る。
【0170】
「治療上有効な量」という用語は、被験体または哺乳動物において疾患または障害を「処置する」のに有効な抗体または他の薬物の量のことをいう。癌の場合において、薬物の治療上有効な量は、癌細胞の数を減少させることが可能で;腫瘍の大きさを減少させることが可能で;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止)することが可能で;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止)することが可能で;腫瘍増殖をある程度阻害することが可能で;そして/またはその癌に関連する症状の1つ以上をある程度緩和することが可能である。「処置する」についての本明細書中の定義を参照のこと。薬物が増殖を予防し得、そして/または既存の癌細胞を殺傷し得る程度に、その薬物は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。「予防上有効な量」とは所望の予防的結果を達成するために必要な用量および時間での効果的な量を意味する。代表的にであって必ずしもというわけではないが、予防的な用量は疾患の初期段階またはそれより以前の被験体に用いるので、予防上有効な量は治療上有効な量よりも少ないであろう。
【0171】
抗CD79b抗体の「増殖阻害量」とは、細胞、特に、腫瘍、例えば、癌細胞の増殖をインビトロまたはインビボのいずれかで阻害できる量である。抗CD79b抗体の「増殖阻害量」は、新生細胞の増殖を阻害する目的については、経験的に、そして慣用的に行われている方式で決定してもよい。
【0172】
抗CD79b抗体の「細胞毒性量」とは、細胞、特に、腫瘍、例えば、癌細胞の破壊をインビトロまたはインビボのいずれかで引き起こすことができる量である。抗CD79b抗体の「細胞毒性量」は、新生細胞の増殖を阻害する目的について、経験的に、そして慣用的に行われている方式で決定してもよい。
【0173】
「CD79b発現細胞」とは、内因性のまたはトランスフェクトされたCD79bポリペプチドを細胞表面上または分泌型のいずれかで発現する細胞である。「CD79b発現癌」とは、細胞表面上に存在するCD79bポリペプチドを有する細胞、またはCD79bポリペプチドを産生して分泌する細胞を含む癌である。「CD79b発現癌」は必要に応じて、その細胞表面上に十分なレベルのCD79bポリペプチドを産生し、その結果抗CD79b抗体は、そこに結合し得、その癌に関して治療上の効果を有し得る。別の実施形態では、「CD79b発現癌」とは必要に応じて、十分なレベルのCD79bポリペプチドを産生しかつ分泌し、その結果抗CD79b抗体アンタゴニストは、そこに結合し得、その癌に関して治療上の効果を有する。後者に関しては、そのアンタゴニストは、腫瘍細胞による分泌されたCD79bポリペプチドの産生および分泌を減少、阻害または予防するアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。CD79bポリペプチドを「過剰発現する」癌とは、同じ組織タイプの癌でない細胞に比較して、その細胞表面に十分高レベルのCD79bポリペプチドを有するか、または産生および分泌する癌である。このような過剰発現は、遺伝子増幅によってまたは転写もしくは翻訳の増大によって生じ得る。CD79bポリペプチドの過剰発現は、細胞表面上に存在するか、または細胞によって分泌されるCD79bタンパク質のレベルの増大を評価することによって検出または予後予測アッセイで確認され得る(例えば、CD79bポリペプチドをコードする単離された核酸から組み換えDNA技術を用いて調製され得る単離されたCD79bポリペプチドに対して調製された抗CD79b抗体を用いる免疫組織化学アッセイを介して;FACS分析など)。あるいは、またはさらに、CD79bポリペプチドをコードする核酸またはmRNAの細胞中のレベルは、例えば、CD79bコード核酸またはその補体に対応する核酸ベースのプローブを用いる蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月公開、国際公開第98/45479号を参照のこと);サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、例えば、リアルタイムPCR(RT−PCR)を介して測定してもよい。血清などの体液中の脱落抗原を、例えば抗体ベースのアッセイを用いて測定することによってCD79bポリペプチド過剰発現を研究することも可能である(例えば、1990年6月12日発行の米国特許第4,933,294号;1991年4月18日公開の国際公開第91/05264号;1995年3月28日発行の米国特許第5,401,638号;ならびにSiasら、
J.Immunol.Methods132:73〜80(1990)を参照のこと)。上記のアッセイとは別に、種々のインビボのアッセイが当業者には利用可能である。例えば、検出可能な標識、例えば、放射性同位体で必要に応じて標識されている抗体に対して患者の体内で細胞を曝露することが可能であり、患者中の細胞に対する抗体の結合は、例えば、放射能について外部スキャンニングすることによって、または抗体に対して前に暴露された患者から採取された生検を分析することによって評価することが可能である。
【0174】
本明細書中で使用される場合、用語「イムノアドヘシン」とは、異種タンパク質の結合特異性(「アドヘシン」)と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた、抗体様分子を指す。構造的に、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識部位および抗原結合部位以外(すなわち、「異種」)の、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部は、代表的に、少なくともレセプターもしくはリガンドの結合部位を含んでいる、近接するアミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3もしくはIgG−4のサブタイプ、IgA(IgA−1およびIgA−2を含む)、IgE、IgD、またはIgMから得てもよい。
【0175】
本明細書中で使用される場合、「標識」という語句は、抗体に直接的もしくは間接的にコンジュゲートされて「標識された」抗体を生成する、検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自身で検出され得る(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)か、または、酵素標識の場合は、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学変化を触媒し得る。
【0176】
本明細書で用いられる「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害もしくは阻止し、および/または細胞の破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、およびLuの放射性同位体)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシンまたはその他インターカレート剤、酵素およびそのフラグメント、例えば核溶解性酵素、抗生物質、および毒素、例えば小分子毒素、または細菌、糸状菌、植物もしくは動物由来の酵素的に活性な毒素(そのフラグメントおよび/または変異体を含む)、そして下記に開示する種々の抗腫瘍または抗癌剤を含むものとする。他の細胞毒性剤が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0177】
「毒素」とは、細胞の成長または増殖に対して有害な作用を有し得る任意の物質である。
【0178】
「化学療法剤」は、作用機序にかかわらず、癌の処置に有用な化合物である。化学療法剤の分類としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:アルキル化剤、代謝拮抗剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼインヒビター、抗体、光増感剤、およびキナーゼインヒビター。化学療法剤としては、「標的化療法」および従来の化学療法に用いられる化合物が挙げられる。化学療法剤の例としては以下が挙げられる:エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi−Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS No.51−21−8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標),Lilly)、PD−0325901(CAS No.391210−10−9,Pfizer)、シスプラチン(cis−ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS No.15663−27−1)、カルボプラチン(CAS No.41575−94−4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.),トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、テモゾラミド(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミド、CAS No.85622−93−1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブタ−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチル−エタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))、およびドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、Akti−1/2,HPPD、およびラパマイシン。
【0179】
化学療法剤のさらなる例としては以下が挙げられる:オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ステント(sutent)(SUNITINIB(登録商標)、SU11248,Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標),Novartis)、イマチニブメシレート(GLEEVEC(登録商標),Novartis)、XL−518(Mekインヒビター,Exelixis,国際公開第2007/044515号)、ARRY−886(Mekインヒビター、AZD6244,Array BioPharma,Astra Zeneca)、SF−1126(PI3Kインヒビター、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3Kインヒビター、Novartis)、XL−147(PI3Kインヒビター、Exelixis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス,RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016,Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SARASAR(商標),SCH 66336,Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、BAY43−9006,Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT−11,Pfizer)、ティピファルニブ(tipifarnib)(ZARNESTRA(商標),Johnson & Johnson)、ABRAXANE(商標)(Cremophor非含有)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子処方物(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Il)、バンデタニブ(rINN,ZD6474,ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル,AG1478,AG1571(SU5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(pazopanib)(GlaxoSmithKline)、カンホスファミド(canfosfamide)(TELCYTA(登録商標)、Telik)、チオテパおよびシクロフォスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチルアメラミン、例として、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロメラミン;アセトゲニン(acetogenin)(特に、ブラタシン(bullatacin)およびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(例として、合成アナログのトポテカン);ブリオスタチン(bryostatin);カリスタチン(callystatin);CC−1065(例として、そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成アナログ);クリプトフィシン(cryptophycin)(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(例として、合成アナログのKW−2189およびCB1−TM1);エレウセロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine);抗生物質(例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、カリケアマイシンγ1IおよびカリケアマイシンωI1(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994)33:183〜186));ディネマイシン(dynemicin)ディネマイシンA;ビスホスホネート(例えば、クロドロネート);エスペラマイシン(esperamicin);ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルチノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ(例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート);プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤(anti−adrenal)例えば、アミノグルテチミド、ミトーテン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、葉酸;アセグラトン;アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフオルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン(epothilone);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)(例えば、マイタンシン(maytansine)およびアンサミトシン(ansamitocin));ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメト(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecene)(特に、T−2毒素、ベラクリンA(ベラクリンA)、ロリジンA(roridin A)およびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート(ibandronate);CPT−11;トポイソメラーゼインヒビターRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(例えば、レチン酸);ならびに任意の上記の薬学的に受容可能な塩、酸および誘導体。
【0180】
「化学療法剤」の定義に含まれるものとしては、以下もある:(i)腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように働く抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)、例として、例えば、タモキシフェン(例として、NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェン)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、およびFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフェン(toremifine citrate));(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素であるアロマターゼを阻害する、アロマターゼインヒビター、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール(vorozole))、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、およびARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)など;(iii)抗男性ホルモン、例えば、フルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);(iv)プロテインキナーゼインヒビター、例えば、MEKインヒビター(国際公開2007/044515号);(v)脂質キナーゼインヒビター;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド(特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するものであり、例えば、PKC−α、RafおよびH−Ras(例えば、オブリメルセン(oblimersen)(GENASENSE(登録商標),Genta Inc.));(vii)リボザイム、例えば、VEGF発現インヒビター(例えば、ANGIOZYME(登録商標))およびHER2発現インヒビター;(viii)ワクチン(例えば、遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、およびVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;トポイソメラーゼ1インヒビター、例えば、LURTOTECAN(登録商標);ABARELIX(登録商標)rmRH;(ix)抗脈管形成剤、例えば、ベバシツマブ(bevacizumab)(AVASTIN(登録商標),Genentech);ならびに任意の上記の薬学的に受容可能な塩、酸および誘導体。
【0181】
「化学療法剤」の定義に含まれるものはまた、治療用抗体、例えば、アレツズマブ(alemtuzumab)(Campath)、ベザシツマブ(bevacizumab)(AVASTIN(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(商標)、2C4,Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツズマブ(Bexxar,Corixia)、および抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシ(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)である。
【0182】
「増殖阻害剤」とは、本明細書において用いる場合、細胞、特にCD79bを発現するガン細胞の成長をインビトロまたはインビボのいずれかで阻害する化合物または組成物を意味する。従って、増殖阻害剤とは、S期でCD79bを発現する細胞の割合を有意に減少させるものであってもよい。増殖阻害剤の例としては、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)ブロックする薬剤、例えばG1停止またはM期停止を誘発する薬剤が挙げられる。古典的なM期ブロッカーとしては、ビンカ類(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン類、およびトポイソメラーゼII阻害剤類、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが挙げられる。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、およびアラ−Cである。さらなる情報は、
The Molecular Basis of Cancer,MendelsohnおよびIsrael,編,第1章,表題「Cell cycle regulation,oncogene,and antineoplastic drugs」,Murakamiら,(WB Saunders: Philadelphia,1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)の半合成アナログである。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化する。
【0183】
「ドキソルビシン」は、アントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの全化学名は、(8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキサピラニシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオンである。
【0184】
用語の「サイトカイン」は、細胞間伝達物質として別の細胞に作用する1つの細胞集団により放出されるタンパク質に関する一般名である。このようなサイトカイン類の例は、リンホカイン類、モノカイン類、および伝統的ポリペプチドホルモン類である。サイトカイン類の中に含まれるのは、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;上皮小体ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン類、例えば、濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体化ホルモン(LH);肝成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−αおよび−β;ミュラー抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);NGF−βなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αおよびTGF−βなどの形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子−Iおよび−II;エリトロポイエチン(EPO);造骨誘導因子;インターフェロン類、例えば、インターフェロン−α、−β、および−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、マクロファージ−CSF(M−CSF);顆粒細胞−マクロファージ−CSF(GM−CSF);および顆粒細胞−CSF(G−CSF);インターロイキン(IL)類、例えば、IL−1、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12;腫瘍壊死因子、例えば、TNF−αまたはTNF−β;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。本明細書に用いる場合、サイトカインという用語は、天然源または組換え細胞培養および天然の配列のサイトカイン類の生物活性等価体由来のタンパク質を包含する。
【0185】
「添付文書」という用語を用いて、このような治療用製品の使用に関する、適応症、使用法、投与量、投与法、禁忌および/または警告についての情報を含む治療用製品の商業包装に習慣的に含まれる説明書を指す。
【0186】
「細胞内代謝物」という用語は、抗体−抗原コンジュゲート(ADC)上の細胞内部で代謝プロセスまたは反応から生じている化合物に関する。代謝プロセスまたは反応はADCのペプチドリンカーのタンパク質切断、またはヒドラゾン、エステルもしくはアミドなどの官能基の加水分解といった酵素的な過程であってもよい。細胞内代謝物としては、限定するものではないが、細胞内への進入、拡散、取り込みまたは輸送後に細胞内切断が行われた抗体および遊離の薬物が挙げられる。
【0187】
「細胞内で切断される」および「細胞内切断」という用語は、抗体−薬物コンジュゲート(ADC)に対する細胞内の代謝プロセスまたは反応であって、これによって薬物部分(D)と抗体(Ab)間の共有結合、すなわちリンカーが壊れ、その結果、細胞内の抗体から遊離の薬物が解離される代謝プロセスまたは反応を指す。従って、ADCの切断された成分は細胞内代謝物である。
【0188】
「生物学的利用性、バイオアベイラビリティ」という用語は、患者に投与される薬物の所定の量の全身有効性(すなわち、血液/血漿濃度)を指す。生物学的利用性(バイオアベイラビリティ)は、投与された剤形から全身循環に達する薬物の時間(速度)と総量(程度)の両方の測定値を示す絶対的な用語である。
【0189】
「細胞傷害活性」という用語は、ADCまたはADCの細胞内代謝物の細胞殺傷効果、細胞増殖抑制効果または増殖阻害効果を指す。細胞傷害活性は、細胞の半分が生残する単位容量あたりの濃度(モルまたは質量)であるIC
50値として表されてもよい。
【0190】
「アルキル」という用語は、本明細書中で使用される場合、1個〜12個の炭素原子(C
1−C
12)の、飽和した直鎖もしくは分枝鎖の一価炭化水素基を指しており、このアルキル基は必要に応じ、下に記載される1つ以上の置換基で独立して置換されてもよい。別の実施形態では、アルキルラジカルは、1〜8個の炭素原子(C
1−C
8)、または1〜6個の炭素原子(C
1−C
6)である。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル(Me、−CH
3)、エチル(Et、−CH
2CH
3)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CH
2CH
2CH
3)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH
3)
2)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CH
2CH(CH
3)
2)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH
3)CH
2CH
3)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH
3)
3)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−ペンチル(−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
3)、3−ペンチル(−CH(CH
2CH
3)
2)、2−メチル−2−ブチル(−C(CH
3)
2CH
2CH
3)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH
3)CH(CH
3)
2)、3−メチル−1−ブチル(−CH
2CH
2CH(CH
3)
2)、2−メチル−1−ブチル(−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
3)、1−ヘキシル(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−ヘキシル(−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3)、3−ヘキシル(−CH(CH
2CH
3)(CH
2CH
2CH
3))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CH
3)
2CH
2CH
2CH
3)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH
3)CH(CH
3)CH
2CH
3)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH
3)CH
2CH(CH
3)
2)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH
3)(CH
2CH
3)
2)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CH
2CH
3)CH(CH
3)
2)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CH
3)
2CH(CH
3)
2)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH
3)C(CH
3)
3、1−ヘプチル、1−オクチルなどが挙げられる。
【0191】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの不飽和部位すなわち、炭素−炭素のsp
2二重結合を有する、2個〜8個の炭素原子(C
2−C
8)の、直鎖もしくは分枝鎖の一価炭化水素基を指しており、ここでアルケニル基は必要に応じて、本明細書に記載される1つ以上の置換基で独立して置換されてもよく、これには、「シス」配向および「トランス」配向、あるいは「E」配向および「Z」配向を有する基が挙げられる。例としては、限定するものではないが、エチレニルまたはビニル(−CH=CH
2)、アリル(−CH
2CH=CH
2)などが挙げられる。
【0192】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素間のsp三重結合を有する、2個〜8個の炭素原子(C
2−C
8)の直鎖もしくは分枝鎖の一価炭化水素基を指しており、ここでこのアルケニル基は必要に応じて、本明細書に記載される1つ以上の置換基で独立して置換されてもよい。例としては、限定するものではないが、エチニル(−C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、−CH
2C≡CH)などが挙げられる。
【0193】
「炭素環」、「カルボシクリル」、「炭素環式環」および「シクロアルキル」という用語は、単環式環としては3個〜12個の炭素原子(C
3−C
12)、または二環式環としては7個〜12個の炭素原子を有する、一価の非芳香族の飽和または部分不飽和環をいう。7個〜12個の原子を有する二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]系、ビシクロ[5,5]系、ビシクロ[5,6]系またはビシクロ[6,6]系として配置されてもよく、そして9個または10個の環原子を有する二環式炭素環は、ビシクロ[5,6]系またはビシクロ[6,6]系として、あるいは橋架系(例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンおよびビシクロ[3.2.2]ノナン)として配置されてもよい。単環式炭素環の例としては限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペンタ−1−エニル、1−シクロペンタ−2−エニル、1−シクロペンタ−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキサ−1−エニル、1−シクロヘキサ−2−エニル、1−シクロヘキサ−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
【0194】
「アリール」とは、親芳香族環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される、6個〜20個の炭素原子(C
6−C
20)の一価の芳香族炭化水素基を意味する。いくつかのアリール基は、例示的な構造において、「Ar」と表わされる。アリールは、飽和環、部分不飽和環、または芳香族の炭素環式環に縮合した芳香族環を含む、二環式の基を含む。代表的なアリール基としては、限定するものではないが、ベンゼン(フェニル)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフチルなどから誘導される基が挙げられる。アリール基は本明細書に記載される1つ以上の置換基で必要に応じて独立して置換される。
【0195】
「複素環」、「ヘテロシクリル」および「複素環式環」という用語は、本明細書中で交換可能に用いられ、そして飽和または部分不飽和(すなわち、環内に1つ以上の二重結合および/または三重結合を有する)の、3個〜20個の環原子(このうちの少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素およびイオウから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、Cであり、1つ以上の環原子は、以下に記載される1つ以上の置換基で必要に応じて独立して置換されている)の炭素環式基を指す。複素環は、3個〜7個の環員(2個〜6個の炭素原子、ならびにN、O、P、およびSから選択される1個〜4個のヘテロ原子)を有する単環であっても、または7個〜10個の環員(4個〜9個の炭素原子、ならびにN、O、P、およびSから選択される1個〜6個のヘテロ原子)を有する二環(例えば、ビシクロ[4,5]系、ビシクロ[5,5]系、ビシクロ[5,6]系、またはビシクロ[6,6]系)であってもよい。複素環は、Paquette,Leo A.;「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」(W.A.Benjamin,New York,1968)(特に、第1章、第3章、第4章、第6章、第7章、および第9章);「The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs」(John Wiley & Sons,New York,1950年〜現在)(特に、第13巻、第14巻、第16巻、第19巻、および第28巻);ならびにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。「ヘテロシクリル」はまた、複素環基が、飽和環、部分不飽和環、または芳香族の炭素環式環または複素環式環に縮合している基を含む。複素環式環の例としては、限定するものではないが、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリルキノリジニルおよびN−ピリジルウレア類が挙げられる。スピロ部分もまた、この定義の範囲内に含まれる。2個の環炭素原子がオキソ(=O)部分で置換されている複素環式基の例は、ピリミジノニルおよび1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。本明細書における複素環式基は必要に応じて、本明細書に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。
【0196】
「ヘテロアリール」という用語は、5員環、6員環または7員環の一価の芳香族基を指しており、そして5〜20個の原子(窒素、酸素、およびイオウから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む)の縮合環系(これらの環のうちの少なくとも1つが芳香族である)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば、2−ヒドロキシピリジニルが挙げられる)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば、4−ヒドロキシピリミジニルが挙げられる)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、チアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。ヘテロアリール基は必要に応じて本明細書に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。
【0197】
複素環基またはヘテロアリール基は、可能である場合、炭素で結合(炭素結合)されても窒素で結合(窒素結合)されてもよい。例えば、限定ではないが、炭素結合した複素環またはヘテロアリールは、ピリジンの2位、3位、4位、5位、または6位、ピリダジンの3位、4位、5位、または6、ピリミジンの2位、4位、5位、または6、ピラジンの2位、3位、5位、または6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールまたはテトラヒドロピロールの2位、3位、4位、または5位、オキサゾール、イミダゾールまたはチアゾールの2位、4位、または5位、イソオキサゾール、ピラゾール、またはイソチアゾールの3位、4位、または5位、アジリジンの2位または3位、アゼチジンの2位、3位、または4位、キノリンの2位、3位、4位、5位、6位、7位、または8位、あるいはイソキノリンの1位、3位、4位、5位、6位、7位、または8位で結合される。
【0198】
例としてであって限定ではないが、窒素結合した複素環またはヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、およびカルバゾールまたはβ−カルボリンの9位で結合される。
【0199】
「アルキレン」とは、1〜18の炭素原子であって、親のアルカンと同じまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を取り除くことによって誘導される2つの一価のラジカルセンターを有する、飽和した、分岐鎖または直鎖または環式の炭化水素基を指す。代表的なアルキレン基としては、限定するものではないが、メチレン(−CH
2−)1,2−エチル(−CH
2CH
2−)、1,3−プロピル(−CH
2CH
2CH
2−)、1,4−ブチル(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)などが挙げられる。
【0200】
「C
1−C
10アルキレン」とは、式−(CH
2)
1−10−の直鎖の飽和した炭化水素基である。C
1−C
10アルキレンの例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、およびデカレンが挙げられる。
【0201】
「アルケニレン」とは、2〜18の炭素原子であって、親のアルケンと同じまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を取り除くことによって誘導される2つの一価のラジカルセンターを有する、不飽和の、分岐鎖または直鎖または環式の炭化水素基を指す。代表的なアルケニレン基としては、限定するものではないが、1,2−エチレン(−CH=CH−)が挙げられる。
【0202】
「アルキニレン」とは、2〜18の炭素原子であって、親のアルキンと同じまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を取り除くことによって誘導される2つの一価のラジカルセンターを有する、不飽和の、分岐鎖または直鎖または環式の炭化水素基を指す。代表的なアルキニレン基としては、限定するものではないが、アセチレン(−C≡C−)、プロパルギル(−CH
2C≡C−)、および4−ペンチニル(−CH
2CH
2CH
2C≡C−)が挙げられる。
【0203】
「アリーレン」とは2つの共有結合を有しており、以下の構造:
【0204】
【化1】
で示すようなオルト、メタまたはパラの立体配置であってもよいアリール基であって、ここで、フェニル基は置換されていなくてもよいし、限定するものではないが、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2、および−CNを含む最大4つの基にて置換されてもよく、それぞれのR’は、H、−C
1−C
8アルキルおよびアリールから独立して選択される。
【0205】
「アリールアルキル」とは、炭素原子、代表的には末端またはsp
3炭素原子に結合した水素原子のうちの1つがアリール基で置換されている非環式アルキル基を指す。代表的なアリールアルキル基としては、限定するものではないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられる。アリールアルキル基は6〜20の炭素原子を含み、例えば、アルカニル、アルケニルまたはアルキニル基を含む、アリールアルキル基のアルキル部分は1〜6の炭素原子であり、アリール部分は5〜14の炭素原子である。
【0206】
「ヘテロアリールアルキル」とは、炭素原子、代表的には末端またはsp
3炭素原子に結合した水素原子のうちの1つがヘテロアリール基で置換されている非環式アルキル基を指す。代表的なヘテロアリールアルキル基としては、限定するものではないが、2−ベンズイミダゾリルメチル、2−フリルエチルなどが挙げられる。ヘテロアリールアルキル基は6〜20の炭素原子を含み、例えば、アルカニル、アルケニルまたはアルキニル基を含む、ヘテロアリールアルキル基のアルキル部分は1〜6の炭素原子であり、ヘテロアリール部分は5〜14の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3のヘテロ原子である。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール部分は3〜7員環を有するモノシクロ(2〜6の炭素原子)または7〜10員環を有するビシクロ(4〜9の炭素原子ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3のヘテロ原子)、例えばビシクロ[4,5]系、[5,5]系、[5,6]系、または[6,6]系であってもよい。
【0207】
本出願で用いられる「プロドラッグ」という用語は、親の化合物または薬物に比較して細胞に対する細胞傷害性が低い場合もあり、酵素的にもしくは加水分解的に活性化されるか、またはより活性な親型に変換され得る、本発明の化合物の前駆体または誘導体型を意味する。例えば、Wilman,「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」,Biochemical Society Transactions,14,:375〜382頁,第615回 Meeting,Belfast(1986)、およびStellaら、「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery,Borchardtら、(編)、247〜267頁,Humana Press(1985)を参照のこと。本発明のプロドラッグとしては、限定するものではないが、リン酸塩含有プロドラッグ、チオリン酸塩含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、必要に応じて置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、必要に応じて置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬物に変換され得る5−フルオロシトシンおよび他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられる。本発明での使用のためのプロドラッグ型に誘導体化可能な細胞毒性剤の例としては、限定するものではないが、本発明の化合物、および上記のような化学療法剤が挙げられる。
【0208】
「代謝物」とは、特定の化合物またはその塩の体内における代謝を通じて産生される産物である。化合物の代謝物は、当該分野において公知の慣用的な技術を用いて特定され、その活性は、本明細書に記載されたような試験法を用いて測定される。そのような生成物は、例えば、投与される化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミノ化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断などで生じ得る。従って、本発明は、本発明の化合物の代謝物を包含し、本発明の化合物を、それらの代謝生成物を得るのに充分な時間、哺乳動物と接触させる工程を包含するプロセスにより産生される化合物を包含する。
【0209】
「リポソーム」とは、種々の型の脂質、リン脂質および/またはサーファクタントからなる小胞であり、哺乳動物への薬物の送達に有用である。リポソームの成分は、通常は生物学的な膜の脂質配列に類似する二層形式に配列される。
【0210】
「リンカー」とは、共有結合を含む化学的な部分、または薬物部分に抗体を共有結合させる原子の鎖を指す。種々の実施形態では、リンカーとしては、二価の基、例えば、アルキルジイル、アリールジイル、ヘテロアリールジイル、アルキルオキシ(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)およびアルキルアミノ(例えばポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))の反復ユニットである−(CR
2)
nO(CR
2)
n−などの部分;ならびに、スクシナート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネートおよびカプロアミドを含む二酸エステルおよびアミドが含まれる。
【0211】
「キラル」という用語は、鏡像パートナーの重ね合わすことができない特性を有する分子を指し、一方、「アキラル」という用語は、鏡像パートナーの重ね合わすことができる分子を指す。
【0212】
「立体異性体」という用語は、同一の化学構造を有するが、空間の原子または基の配列に関しては異なる化合物を指す。
【0213】
「ジアステレオマー」とは、キラリティの2つ以上の中心を有し、その分子が互いの鏡像でない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的性質、例えば融点、沸点、分光特性および反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動およびクロマトグラフィなどの高分解能解析手順により分離され得る。
【0214】
「鏡像異性体」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である化合物の2つの立体異性体を指す。
【0215】
本明細書中で使用される立体化学的な定義および慣例は、一般に、S.P.Parker編、McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw−Hill Book Company、New York;ならびにEliel、E.およびWilen、S.、「Stereochemistry of Organic Compounds」 John Wiley&Sons、Inc.,New York、1994に従う。多くの有機化合物は、光学的に活性な型で存在し、すなわち、これらは、平面偏光面を回転する能力を有する。光学的に活性な化合物の説明では、接頭辞DおよびL、またはRおよびSを用いて、そのキラル中心(単数または複数)についての分子の絶対配置を示す。接頭辞dおよびlまたは(+)および(−)を使用して、その化合物による平面偏光の回転の徴候を示し、(−)またはlは、その化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞を有する化合物は、右旋性である。所定の化学構造について、これらの立体異性体は、これらが互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体を、エナンチオマーということもでき、このような異性体の混合物は、しばしば、エナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物を、ラセミ混合物またはラセミ体といい、これは、化学反応または化学的過程において立体選択または立体特異性がない場合に生じ得る。「ラセミ混合物」および「ラセミ体」という用語は、光学活性を欠く2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
【0216】
「互変異性体」または「互変異性形態」という語は、低エネルギー障壁を介して相互転換可能な異なるエネルギーの構造異性体をいう。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても公知)としては、プロトンの移動による相互変換、例えば、ケト−エノールおよびイミン−エナミン異性化が挙げられる。原子価互変異性体としては、いくつかの結合電子の再編成による相互変換が挙げられる。
【0217】
「薬学的に受容可能な塩」という語句は、本明細書において用いる場合、本発明の化合物の薬学的に受容可能な有機塩または無機塩を指す。例示的な塩としては、限定するものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられる。薬学的に受容可能な塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン、または他の対イオンなどの別の分子の含有を含んでもよい。対イオンは、親化合物の電荷を安定化する任意の有機部分または無機部分であってもよい。さらに、薬学的に受容可能な塩は、その構造中に2個以上の荷電原子を有してもよい。複数の荷電原子が薬学的に受容可能な塩の一部である例は、複数の対イオンを有してもよい。従って、薬学的に受容可能な塩は、2個以上の荷電原子および/または1つ以上の対イオンを有してもよい。
【0218】
本発明の化合物が塩基の場合、所望される薬学的に受容可能な塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸などの無機酸、あるいは酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(グルクロン酸またはガラクツロン酸など)、αヒドロキシ酸(クエン酸または酒石酸など)、アミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)、芳香族酸(安息香酸または桂皮酸など)、スルホン酸(p−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸など)などの有機酸などで遊離塩基を処理することにより、当該分野において利用可能な適切な任意の方法により調製され得る。
【0219】
本発明の化合物が酸の場合、薬学的に受容可能な望ましい塩は、例えば、遊離の酸を、アミン(1級、2級または3級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などの無機または有機の塩基で処理することにより、適切な任意の方法により調製され得る。適する塩の実例としては、限定するものではないが、グリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、1級、2級、および3級アミン、ならびにピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなどの環状アミンから誘導される有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムから誘導される無機塩が挙げられる。
【0220】
「薬学的に受容可能な」という語句は、その物質または組成物が、処方物に含まれる他の成分および/またはそれにより治療される哺乳動物と化学的および/または毒性学的に適合しなければならないことを示す。
【0221】
「溶媒和化合物」とは、1以上の溶媒分子と本発明の化合物との会合または複合体を意味する。溶媒和物を形成する溶媒の例としては、限定するものではないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが挙げられる。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を言う。
【0222】
「保護基」という用語は、化合物上の他の官能基と反応する間、特定の官能性をブロックまたは保護するために通常使用される置換基をいう。例えば、「アミノ保護基」とは、アミノ基と結合して化合物中のアミノ官能性をブロックまたは保護する置換基である。適切なアミノ保護基としては、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、および9−フルロレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。同様に、「ヒドロキシ保護基」とは、ヒドロキシ官能性をブロックまたは保護するヒドロキシル基の置換基をいう。適切な保護基としてはアセチルおよびシリルが挙げられる。「カルボキシ保護基」とは、カルボキシ官能性をブロックまたは保護するカルボキシ基の置換基をいう。一般的なカルボキシ保護基としては、フェニルスルホニルエチル、シアノエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、2−(p−トルエンスルホニル)エチル、2−(p−ニトロフェニルスルフェニル)エチル、2−(ジフェニルホスフィノ)−エチル、およびニトロエチルなどが挙げられる。保護基およびその使用の一般的説明については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons、New York,1991を参照のこと。
【0223】
「脱離基」とは、別の官能基によって置換され得る官能基を指す。特定の脱離基が当該分野で周知であり、例として、限定するものではないが、ハロゲン化物(例えば、クロライド、ブロマイド、イオジド)、メタンスルホニル(メシル)、p−トルエンスルホニル(トシル)、トリフルオロメチルスルホニル(トリフレート)、およびトリフルオロメチルスルホネートが挙げられる。
【0224】
省略記号
リンカー成分:
MC=6−マレイミドカプロイル
Val−Citまたは「vc」=バリン−シトルリン(プロテアーゼにより切断可能なリンカーの例示的なジペプチド)
シトルリン=2−アミノ−5ウレイドペンタン酸
PAB=p−アミノベンジルオキシカルボニル(「自己犠牲(self immolative)」リンカー成分の例)
Me−Val−Cit=N−メチル−バリン−シトルリン(リンカーペプチド結合が、カテプシンBによる切断を阻害するように修飾されているもの)
MC(PEG)6−OH=マレイミドカプロイル−ポリエチレングリコール(抗体システインに結合し得る)
細胞毒性薬物:
MMAE=モノメチルアウリスタチンE(MW718)
MMAF=薬物のC末端にフェニルアラニンを有するアウリスタチンE(MMAE)の改変体(MW731.5)
MMAF−DMAEA=C末端のフェニルアラニンに対するアミド連結にDMAEA(ジメチルアミノエチルアミン)を有するMMAF(MW801.5)
MMAF−TEG=フェニルアラニンにエステル化したテトラエチレングリコールを有するMMAF
MMAF−NtBu=MMAFのC末端にアミドとして結合した、N−t−ブチル
DM1=N(2’)−デアセチル−N(2’)−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン
DM3=N(2’)−デアセチル−N2−(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン
DM4=N(2’)−デアセチル−N2−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)−メイタンシン
さらに、略語は以下のとおりである:AEはアウリスタチンEであり、BocはN(tブトキシカルボニル)であり、citはシトルリンであり、dapはドラプロイン(dolaproine)であり、DCCは1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドであり、DCMはジクロロメタンであり、DEAはジエチルアミンであり、DEADはジエチルアゾジカルボキシレートであり、DEPCはジエチルホスホリルシアニダートであり、DIADはジイソプロピルアゾジカルボキシレートであり、DIEAはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、dilはドライソロイシンであり、DMAはジメチルアセトアミドであり、DMAPは4−ジメチルアミノピリジンであり、DMEはエチレングリコールジメチルエーテル(または1,2−ジメトキシエタン)であり、DMFは、N,N−ジメチルホルムアミドであり、DMSOは、ジメチルスルホキシドであり、doeはドラフェニン(dolaphenine)であり、dovはN,N−ジメチルバリンであり、DTNBは5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)であり、DTPAはジエチレントリアミンペンタ酢酸であり、DTTはジチオトレイトールであり、EDCIは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩であり、EEDQは、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンであり、ES−MSはエレクトロスプレー質量分析であり、EtOAcは酢酸エチルであり、FmocはN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)であり、glyはグリシンであり、HATUは、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートであり、HOBtは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールであり、HPLCは高速液体クロマトグラフィであり、ileはイソロイシンであり、lysはリジンであり、MeCN(CH
3CN)はアセトニトリルであり、MeOHはメタノールであり、Mtrは4−アニシルジフェニルメチル(または4−メトキシトリチル)であり、norは(1S,2R)−(+)−ノルエフェドリンであり、PBSはリン酸塩緩衝生理食塩水(pH7.4)であり、PEGはポリエチレングリコールであり、Phはフェニルであり、Pnpはp−ニトロフェニルであり、MCは6−マレイミドカプロイルであり、pheはL−フェニルアラニンであり、PyBropは、ブロモトリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイトであり、SECはサイズ排除クロマトグラフィであり、Suはスクシンイミドであり、TFAはトリフルオロ酢酸であり、TLCは薄層クロマトグラフィであり、UVは紫外線であり、valはバリンである。
【0225】
「遊離したシステインアミノ酸」とは、親抗体内へと操作されているシステインアミノ酸残基であって、チオール官能基(−SH)を有しており、対形成もしないし、分子内もしくは分子間ジスルフィド架橋の一部にもならないアミノ酸残基を指す。
【0226】
「チオール反応値」という用語は、遊離したシステインアミノ酸の反応性の定量的特徴づけである。チオール反応値は、チオール反応試薬と反応するシステイン操作された抗体の遊離したシステインアミノ酸の割合であって、1という最大値に変換される。例えば、ビオチン−マレイミド試薬などのチオール反応試薬と100%の収率で反応してビオチン標識抗体を形成するシステイン操作された抗体上の遊離システインアミノ酸は、チオール反応値が1.0である。チオール反応試薬と80%の収率で反応する同じまたは異なる親抗体内で改変された別のシステインアミノ酸はチオール反応値が0.8である。チオール反応試薬と完全に反応しない同じまたは異なる親抗体へと操作された別のシステインアミノ酸はチオール反応値が0である。特定のシステインのチオール反応値の測定は、ELISAアッセイ、質量分析、液体クロマトグラフィ、オートラジオグラフィ、または他の定量的な分析試験によって行ってもよい。
【0227】
「親抗体」とは、1つ以上のアミノ酸残基が1つ以上のシステイン残基に置き換わっているアミノ酸配列を含む抗体である。親抗体は、天然のまたは野生型の配列を含んでいてもよい。親抗体は、他の天然、野生型または修飾した形態の抗体と比較して既存のアミノ酸配列修飾(例えば付加、欠失および/または置換)を有してもよい。親抗体は、目的の標的抗原、例えば、生物学上重要なポリペプチドに対するものであってもよい。非ポリペプチド抗原(例えば腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5091178号を参照のこと)に対する抗体も考慮される。
【0244】
【表1-17】
III.本発明の組成物および方法
本発明は、抗CD79b抗体またはその機能的なフラグメント、および造血系の腫瘍の処置におけるその使用方法を提供する。
【0245】
一局面では、本発明は、上記または下記に記載の任意のポリペプチドに対して好ましくは特異的に結合する抗体を提供する。必要に応じて、この抗体は、モノクローナル抗体、抗体フラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)
2、およびFvフラグメントを含む)、ダイアボディ(diabody)、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、またはその各々の抗原性エピトープに対する抗CD79bポリペプチド抗体の結合を競合的に阻害する抗体である。本発明の抗体は、例えば、アウリスタチン、メイタンシノイド、ドロスタチン誘導体、またはカリケアマイシン、抗生物質、放射性同位体、核酸分解酵素などを含む毒素などの増殖阻害剤または細胞毒性剤に対して必要に応じてコンジュゲートされてもよい。本発明の抗体は必要に応じてCHO細胞または細菌細胞で産生されてもよく、好ましくはそれらが結合する細胞の死を誘導し得る。検出目的で、本発明の抗体は、検出可能に標識されても、固体支持体に結合されても、またはその他であってもよい。
【0246】
一局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしての抗体の親和性)は実質的に、
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)に示される軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、マウス抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのマウス抗体の親和性)またはキメラ抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性)と同じである。
【0247】
別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしての抗体の親和性)は低く、例えば、
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)に示される軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、マウス抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのマウス抗体の親和性)またはキメラ抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性)よりも少なくとも1、2または3分の1低い。
【0248】
別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしての抗体の親和性)は大きく、例えば、
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)に示される軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、マウス抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのマウス抗体の親和性)またはキメラ抗体の一価の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性)よりも少なくとも1、2または3倍大きい。
【0249】
一局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGフラグメントとしての抗体の親和性)は、
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)に示される軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、マウス抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGフラグメントとしてのマウス抗体の親和性)またはキメラ抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性)と実質的に同じである。
【0250】
別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGフラグメントとしての抗体の親和性)は低く、例えば、
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)に示される軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、マウス抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGフラグメントとしてのマウス抗体の親和性)またはキメラ抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性)よりも少なくとも1、2または3分の1低い。
【0251】
別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGフラグメントとしての抗体の親和性)は大きく、例えば、
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)に示される軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、マウス抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGフラグメントとしてのマウス抗体の親和性)またはキメラ抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するFabフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性)よりも少なくとも1、2または3倍大きい。
【0252】
別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は、2.0nMである。さらなる局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は2.0nM+/−0.5である。
【0253】
別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は、1nM以上である。別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は1.5nM以上である。別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は、2nM以上である。別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は2.5nM以上である。別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は、3nM以上である。別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は1nM〜3nMである。別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は、1.5nM〜2.5nMである。別の局面では、本発明は、ヒト化抗CD79b抗体を提供し、ここではCD79bに対するこの抗体の二価型の親和性(例えば、CD79bに対するIgGとしての抗体の親和性)は1.75nM〜2.25nMである。
【0254】
一局面では、CD79bに対するマウス抗体の一価の親和性は実質的に、
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)の可変ドメイン配列を含むFabフラグメントの結合親和性と同じである。別の局面では、CD79bに対するマウス抗体の一価の親和性は実質的に、2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作成された抗体の可変ドメイン配列を含んでいるFabフラグメント、または2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作成された抗体由来の可変ドメインを含んでいるキメラ抗体の結合親和性と同じである。
【0255】
当該分野で確立されているとおり、リガンドのそのレセプターに対する結合親和性は任意の種々のアッセイを用いて測定され、種々の数値として表され得る。従って、一実施形態では、結合親和性はKd値として表され、(例えば最小限の結合力での)内因性の結合親和性を反映する。一般的におよび好ましくは、結合親和性は、無細胞の設定または細胞を用いた設定のいずれであってもインビトロで測定される。本明細書中でさらに詳述するように、結合親和性の倍数的差異は、ヒト化抗体(例えばFab型)の一価の結合親和性値と、結合親和性値が類似のアッセイ条件で測定された参照/比較抗体(例えばFab型)(例えばドナー超可変領域配列を有するマウス抗体)の一価の結合親和性値との比に関して数量化してもよい。従って、一実施形態では、結合親和性の倍数的差異は、Fab型のヒト化抗体のKd値と前記参照/比較Fab抗体との比として測定される。例えば、一実施形態では、本発明の抗体(A)が、参照抗体(M)の親和性の「3分の1より低い」親和性を有する場合、AのKd値が3倍ならば、MのKd値を1倍とすると、MのKd値に対するAのKd値の比率は3:1であろう。逆に、一実施形態では、本発明の抗体(C)が参照抗体(R)の親和性より「3倍大きい」親和性を有する場合、CのKd値が1倍であるならば、RのKd値を3倍とすると、RのKd値に対するCのKd値の比率は1:3であろう。例えばBiacore、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびELISAを含め、本明細書中に記載のものを含む当該分野で公知の任意の多数のアッセイを用いて、結合親和性測定値を得ることができる。
【0256】
一局面では、CD79bに結合する抗体であって、以下を含む抗体が提供される:
(a)以下からなる群より選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVR:
(i)A1〜A16がKSSQSLLDSDGKTYLN(配列番号59)である配列A1〜A15を含んでいる、HVR−L1と、
(ii)LVSKLDS(配列番号60)である配列B1〜B7を含んでいる、HVR−L2と、
(iii)WQGTHFPYT(配列番号61)である配列C1〜C9を含んでいる、HVR−L3と、
(iv)GYTFTSYWMN(配列番号62)である配列D1〜D10を含んでいる、HVR−H1と、
(v)GMIDPSDSETHYNHIFKD(配列番号63)である配列E1〜E18を含んでいる、HVR−H2と、
(vi)F1〜F10がARNLYL(配列番号64)である配列F1〜F6を含んでいる、HVR−H3。
一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L1は、配列番号59の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L2は、配列番号60の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L3は、配列番号61の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H1は、配列番号62の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H2は、配列番号63の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H3は、配列番号64の配列を含む。一実施形態では、これらの配列を(本明細書に記載されるとおり組み合わせて)含んでいる本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0257】
一局面では、CD79bに結合する抗体であって、以下を含む抗体が提供される:
(a)以下からなる群より選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVR:
(i)A1〜A16がKSSQSLLDSDGKTYLN(配列番号59)である配列A1〜A15を含んでいる、HVR−L1と、
(ii)LVSKLDS(配列番号60)である配列B1〜B7を含んでいる、HVR−L2と、
(iii)WQGTHFPYT(配列番号61)である配列C1〜C9を含んでいる、HVR−L3と、
(iv)GYTFTSYWMN(配列番号62)である配列D1〜D10を含んでいる、HVR−H1と、
(v)GMIDPSDSETHYNHIFKD(配列番号63)である配列E1〜E18を含んでいる、HVR−H2と、
(vi)F1〜F10がARNLYL(配列番号64)である配列F1〜F6を含んでいる、HVR−H3;ならびに
(b)少なくとも1つの改変体HVRであって、この改変体HVR配列が、配列番号59、60、61、62、63または64に示される配列の少なくとも1つの残基の修飾を含む、改変体HVR。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L1は、配列番号59の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L2は、配列番号60の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L3は、配列番号61の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H1は、配列番号62の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H2は、配列番号63の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H3は、配列番号64の配列を含む。一実施形態では、これらの配列を(本明細書に記載されるとおり組み合わせて)含んでいる本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0258】
一局面では、本発明は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVRを含んでいる抗体を提供し、ここで各々のHVRは、配列番号59、60、61、62、63、および64からなる群より選択される配列を含むか、それらの配列からなるか、または本質的にそれらの配列からなり、ここで配列番号59は、HVR−L1に対応し、配列番号60はHVR−L2に対応し、配列番号61はHVR−L3に対応し、配列番号62はHVR−H1に対応し、配列番号63はHVR−H2に対応し、そして配列番号64はHVR−H3に対応する。一実施形態では、本発明の抗体は、HVR−L1、HVR−L2、HVR−L3、HVR−H1、HVR−H2、およびHVR−H3を含み、ここで各々が順番に配列番号59、60、61、62、63および64を含む。
【0259】
本発明の抗体における改変体HVRは、HVR内に1つ以上の残基の修飾を有し得る。一実施形態では、HVR−L3改変体は、以下の位置のうち任意の組み合わせで1〜2個(1または2個の)置換を含む:C1(F)およびC8(F)。以下の各々の位置のカッコ内の文字(単数または複数)は、例示としての置換(すなわち、置き換え)アミノ酸を示しており;当業者には明らかであるように、本明細書に記載の状況での置換アミノ酸としての他のアミノ酸の適切性は、当該分野で公知であるか、および/または本明細書に記載されている技術を用いて慣用的に評価できる。一実施形態では、改変体HVR−L3のC1はFである。一実施形態では、改変体HVR−L3中のC8はFである。一実施形態では、本発明の抗体は、C1がFであり、かつC8がFである改変体HVR−L3を含む。
【0260】
一実施形態では、本発明の抗体は、C1がFである改変体HVR−L3を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、C8がFである改変体HVR−L3を含む。いくつかの実施形態では、この改変体HVR−L3抗体はさらに、HVR−L1、HVR−L2、HVR−H1、HVR−H2およびHVR−H3を含み、ここで各々が順番に配列番号59、60、61、62、63および64に示される配列を含む。いくつかの実施形態では、これらの抗体はさらに、ヒトサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、このフレームワークコンセンサス配列は、位置71、73および/または78に置換を含む。これらの抗体のいくつかの実施形態では、位置71はAであり、73はTであるか、および/または78はAである。これらの抗体の一実施形態では、これらの抗体はさらに、ヒトκI軽鎖フレームワークコンセンサス配列を含む。
【0261】
一局面では、本発明は、
図9(配列番号18)に示されるHVR配列を含んでいる抗体を提供する。
【0262】
宿主被験体に用いるための治療剤は好ましくは、当該被験体における当該薬剤に対する免疫原性応答をほとんどもしくは全く誘発しない。一実施形態では、本発明はそのような薬剤を提供する。例えば、一実施形態では、本発明は、宿主被験体において配列番号10および14の配列を含んでいる抗体と比較して実質的に低減したレベルでヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を誘発するか、および/または誘発することが期待されるヒト化抗体を提供する。別の例では、本発明は、ヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を誘発するか、および/または最小限のヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を誘発するか、もしくは全く誘発しないと予想されるヒト化抗体を提供する。一実施例では、本発明の抗体は、臨床的に受容可能なレベルであるか、それよりも低い抗マウス抗体応答を誘発する。
【0263】
本発明のヒト化抗体は、その重鎖および/または軽鎖の可変ドメインに1つ以上のヒトおよび/またはヒトコンセンサス非超可変領域(例えばフレームワーク)配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒトおよび/またはヒトコンセンサス非超可変領域配列内に1つ以上の付加的な修飾が存在する。一実施形態では、本発明の抗体の重鎖可変ドメインはヒトコンセンサスフレームワーク配列を含んでおり、一実施形態では、この配列はサブグループIIIコンセンサスフレームワーク配列である。一実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも一アミノ酸位置が修飾された改変体サブグループIIIコンセンサスフレームワーク配列を含む。例えば、一実施形態では、改変体サブグループIIIコンセンサスフレームワーク配列は、位置71、73および/または78の1つ以上に置換を含んでもよい。一実施形態では、このような置換はR71A、N73Tおよび/またはL78Aのいずれかの組合せである。
【0264】
当該分野で公知であるように、また、本明細書でより詳細に後述するように、抗体の超可変領域を示すアミノ酸位置/境界域は、(以下に記載のように)当該分野で公知の種々の定義および状況によって異なってもよい。可変ドメイン内のいくつかの位置は、ある設定の定義のもとで超可変領域内と判断されても、異なる定義のもとでは超可変領域外であると判断され得るハイブリッド超可変位置とみなされる場合がある。また、1つ以上のこれらの位置は、拡張した超可変領域(以下にさらに定義する)に見出され得る。本発明は、これらハイブリッド超可変位置内に修飾を含有する抗体を提供する。一実施形態では、これらの超可変位置には、重鎖可変ドメイン内の位置26〜30、33〜35B、47〜49、57〜65、93、94および101〜102のうち1つ以上が含まれる。一実施形態では、これらハイブリッド超可変位置には、軽鎖可変ドメイン内の位置24〜29、35〜36、46〜49、56および97の1つ以上が含まれる。一実施形態では、本発明の抗体は、1つ以上のハイブリッド超可変位置が修飾されたヒト改変体ヒトサブグループコンセンサスフレームワーク配列を含む。
【0265】
一局面では、本発明の抗体は、位置26〜30、33〜35、48〜49、58、60〜63、93、および101のうち1つ以上で修飾された改変体ヒトサブグループIIIコンセンサスフレームワーク配列を含んでいる重鎖可変ドメインを含む。
【0266】
一局面では、本発明の抗体は、位置24、27〜29、56および97のうち1つ以上で修飾された改変体ヒトκサブグループIコンセンサスフレームワーク配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。
【0267】
一局面では、本発明の抗体は、位置26〜30、33〜35、48〜49、58、60〜63、93、および101のうち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16で、または全てで修飾された改変体ヒトサブグループIIIコンセンサスフレームワーク配列を含む重鎖可変ドメインを含む。本発明の一実施形態では、本発明の抗体は、位置71、73および/または78で修飾された改変体サブグループIIIコンセンサスフレームワーク配列を含んでいる。一実施形態では、このような置換はR71A、N73Tおよび/またはL78Aである。
【0268】
一局面では、本発明の抗体は、位置24、27〜29、56および97のうち1、2、3、4、5または全てで修飾された改変体ヒトκサブグループIコンセンサスフレームワーク配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。
【0269】
本発明の抗体は、任意の適切なヒトまたはヒトコンセンサス軽鎖フレームワーク配列を含んでもよく、ただし、この抗体は所望の生物学的特徴(例えば所望の結合親和性)を示すものとする。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトk軽鎖のフレームワーク配列の少なくとも一部(または全て)を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトkサブグループIフレームワークコンセンサス配列の少なくとも一部(または全て)を含む。
【0270】
一局面では、本発明の抗体は、配列番号9(
図7)および/または13(
図8A〜B)に示すフレームワーク配列を含んでいる重鎖および/または軽鎖可変ドメインを含む。
【0271】
一局面では、本発明の抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされたヒト化抗CD79b抗体である。一局面では、この細胞毒性剤にコンジュゲートされたヒト化抗CD79b抗体は、異種移植における腫瘍進行を阻害する。
【0272】
一局面では、ヒト化抗体およびキメラ抗体の両方とも一価である。一実施形態では、このヒト化抗体およびキメラ抗体の両方ともFc領域に連結された単一のFab領域を含む。一実施形態では、参照キメラ抗体は、ヒトFc領域に連結される
図7(配列番号10)および
図8A〜B(配列番号14)に示す可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、ヒトFc領域はIgGのもの(例えばIgG1、2、3または4)である。
【0273】
一局面では、本発明は、
図13(配列番号31〜33)に記載のHVR1−HC、HVR2−HCおよび/またはHVR3−HCの配列を含んでいる重鎖可変ドメインを含んでいる抗体を提供する。一実施形態では、この可変ドメインは、
図13(配列番号27〜30)に記載のFR1−HC、FR2−HC、FR3−HCおよび/またはFR4−HCの配列を含む。一実施形態では、この抗体は、
図13(配列番号34〜35)に記載のCH1配列および/またはFc配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、HVR1−HC、HVR2−HCおよび/またはHVR3−HCの配列(
図13、配列番号31〜33)を含んでいる重鎖可変ドメインと、FR1−HC、FR2−HC、FR3−HCおよび/またはFR4−HCの配列(
図13、配列番号27〜30)とを含んでいる重鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗体は、HVR1−HC、HVR2−HC、および/またはHVR3−HCの配列(
図13、配列番号31〜33)を含んでいる重鎖可変ドメインと、
図13(配列番号34〜35)に記載のCH1および/またはFC配列を含んでいる重鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗体は、HVR1−HC、HVR2−HC、および/またはHVR3−HCの配列(
図13、配列番号31〜33)を含んでいる重鎖可変ドメインと、FR1−HC、FR2−HC、FR3−HCおよび/またはFR4−HCの配列(
図13、配列番号27〜30)ならびにCH1および/またはFc(
図13、配列番号34〜35)とを含む。
【0274】
一局面では、本発明は、
図13(配列番号23〜25)に記載のHVR1−LC、HVR2−LCおよび/またはHVR3−LCの配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含んでいる抗体を提供する。一実施形態では、この可変ドメインは、
図13(配列番号19〜22)に記載のFR1−LC、FR2−LC、FR3−LCおよび/またはFR4−LCの配列を含む。一実施形態では、この抗体は、
図13(配列番号26)に記載のCL1配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、
図13に記載のHVR1−LC、HVR2−LC、および/またはHVR3−LCの配列(配列番号23〜25)と、FR1−LC、FR2−LC、FR3−LCおよび/またはFR4−LCの配列(配列番号19〜22)とを含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗体は、HVR1−LC、HVR2−LC、および/またはHVR3−LCの配列(配列番号23〜25)と、
図13に記載のCL1配列(配列番号26)を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗体は、HVR1−LC、HVR2−LC、および/またはHVR3−LCの配列(配列番号23〜26)を含んでいる軽鎖可変ドメインと、
図13に示されるFR1−LC、FR2−LC、FR3−LCおよび/またはFR4−LCの配列(配列番号19〜22)と、
図13(配列番号26)に示されるCL1配列とを含む。
【0275】
一局面では、本発明の抗体は、国際公開第2006/034488;米国特許出願公開第2007/0092940号(本明細書において出典明記によって全体が援用される)に開示されるように、親抗体の1個以上のアミノ酸が遊離したシステインアミノ酸で置換されているシステイン操作された抗体を包含する。任意の形態の抗CD79b抗体が操作、すなわち変異されてもよい。例えば、親Fab抗体フラグメントを操作して、本明細書中で「ThioFab」と称するシステイン操作Fabを形成してもよい。同様に、親のモノクローナル抗体を操作して、「ThioMab」を形成してもよい。単一の部位突然変異によりThioFabの単一の改変したシステイン残基が生じるのに対して、IgG抗体の二量体の性質に起因してThioMabでは、単一の部位突然変異により2つの操作されたシステイン残基が生じることに注意すべきである。本発明のシステイン操作された抗CD79b抗体としては、優先的に細胞関連のCD79bポリペプチドを結合するモノクローナル抗体、ヒト化もしくはキメラのモノクローナル抗体、および抗体の抗原結合フラグメント、融合ポリペプチドおよびアナログが挙げられる。あるいは、システイン操作抗体は、必ずしも親抗体を変える必要はなく、例えばファージディスプレイ抗体の設計や選別によって、または軽鎖および/または重鎖フレームワーク配列と定常領域の新規な設計によって、抗体の配列設計および/または選別により生じる、抗体またはFabの本明細書において開示される位置にシステインを含んでいる抗体を包含する。システイン操作抗体は、0.6〜1.0、0.7〜1.0または0.8〜1.0の範囲のチオール反応値を有する1個以上の遊離したシステインアミノ酸を含む。遊離システインアミノ酸は、親抗体内で操作されているシステイン残基であり、ジスルフィド架橋の一部でない。システイン操作抗体は、例えばマレイミドまたはハロアセチルを通じて、操作されたシステインの部位での、細胞傷害性化合物および/または造影化合物の接着に有用である。Cys残基のチオール官能基のマレイミド基に対する求核反応性は、リジン残基のアミノ基またはN末端アミノ基などのタンパク質の任意の他のアミノ酸官能基の、およそ1000倍である。ヨードアセチルおよびマレイミド試薬のチオール特異的官能基はアミン基と反応し得るが、より高いpH(>9.0)およびより長い反応時間が必要とされる(Garman,1997,Non−Radioactive Labelling:A Practical Approach,Academic Press,London)。
【0276】
ある局面では、本発明のシステイン操作された抗CD79b抗体は、以下のいずれか1つの位置に操作されたシステインを含み、この位置は、軽鎖ではKabatら(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MDを参照のこと)に従って、重鎖(Fc領域を含む)ではEUナンバリング(上掲のKabatら(1991)を参照のこと)に従ってナンバリングされ、
図17Aおよび
図18Aの下線で示す軽鎖定常領域は、位置109(Kabatナンバリング)で始まり、
図17Bおよび18Bの下線で示す重鎖定常領域は位置118(EUナンバリング)で始まる。また、この位置は、
図17〜18に示される全長の軽鎖もしくは重鎖のアミノ酸を順次ナンバリングする際にその位置で表されてもよい。本発明の一実施形態では、抗CD79b抗体は、LC−V205Cに操作されたシステインを含む(Kabat番号:Val205;
図18Aの連続番号210はその位置でCysになるように操作される)。軽鎖の操作されたシステインを
図18Aにおいて太字の二重線で示す。一実施形態によれば、抗CD79b抗体は、HC−A118Cに操作されたシステインを含む(EU番号:Ala118、Kabat番号114;
図17Bの連続番号118はその位置でCysになるように操作されている)。重鎖の操作されたシステインを
図17Bにおいて太字の二重線の文字で示す。一実施形態では、抗CD79b抗体は、Fc−S400Cで操作されたシステインを含む(EU番号:Ser400、Kabat番号396;
図17−18Bの連続番号400はその位置でCysになるように操作されている)。一実施形態では、この重鎖の操作されたシステイン(Fc領域を含んでいる)は、以下の位置(Kabatのナンバリングに従い、カッコ内はEUナンバリング)のうちのいずれか1つである:5、23、84、112、114(118 EUナンバリング)、116(120 EUナンバリング)、278(282 EUナンバリング)、371(375 EUナンバリング)または396(400 EUナンバリング)。従って、本発明の親のヒト化抗CD79b抗体のこれらの位置のアミノ酸の変化は、以下である:V5C、A23C、A84C、S112C、A114C(A118C EUナンバリング)、T116C(T120C EUナンバリング)、V278C(V282C EUナンバリング)、S371C(S375C EUナンバリング)またはS396C(S400C EUナンバリング)。従って、本発明の親キメラ抗CD79b抗体のこれらの位置でのアミノ酸の変化は以下である:Q5C、K23C、S84C、S112C、A114C(A118C EUナンバリング)、T116C(T120C EUナンバリング)、V278C(V282C EUナンバリング)、S371C(S375C EUナンバリング)またはS396C(S400C EUナンバリング)。他の実施形態では、軽鎖の操作されたシステインは、以下の位置(Kabatナンバリングによる)のうちのいずれか1つである:15、110、114、121、127、168、205。従って、本発明の親のヒト化抗体CD79b抗体のこれらの位置でのアミノ酸の変化は以下である:V15C、V110C、S114C、S121C、S127C、S168C、またはV205C。従って、本発明の親のキメラ抗CD79b抗体のこれらの位置でのアミノ酸の変化は以下である:I15C、V110C、S114C、S121C、S127C、S168C、またはV205C。
【0277】
一局面では、本発明は、システイン操作抗CD79b抗体を包含し、この抗体は、1つ以上の遊離システインアミノ酸を含み、ここではこのシステイン操作された抗CD79b抗体は、CD79bポリペプチドに結合するもであり、親の抗CD79b抗体の1つ以上のアミノ酸残基を、システインで置換する工程を包含するプロセスによって調製され、この親抗体は、以下から選択される少なくとも1つのHVR配列を含む:
(a)A1〜A16がKSSQSLLDSDGKTYLN(配列番号59)である配列A1〜A15を含んでいる、HVR−L1と、
(b)LVSKLDS(配列番号60)である配列B1〜B7を含んでいる、HVR−L2と、
(c)WQGTHFPYT(配列番号61)またはFQGTHFPFT(配列番号79)である配列C1〜C9を含んでいる、HVR−L3と、
(d)GYTFTSYWMN(配列番号62)である配列D1〜D10を含んでいる、HVR−H1と、
(e)GMIDPSDSETHYNHIFKD(配列番号63)である配列E1〜E18を含んでいる、HVR−H2と、
(f)F1〜F10がARNLYL(配列番号64)である配列F1〜F6を含んでいる、HVR−H3。
【0278】
特定の局面では、本発明は、本明細書において開示した全長アミノ酸配列を有するシステイン操作抗体、または本明細書において開示したシグナルペプチドを欠いているシステイン操作抗体アミノ酸配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有しているアミノ酸配列を含んでいる、システイン操作抗CD79b抗体に関する。
【0279】
よりさらなる局面では、本発明は、(a)本明細書に開示した全長アミノ酸配列を有しているシステイン操作抗体、(b)本明細書に開示したシグナルペプチドを欠いているシステイン操作抗体アミノ酸配列、(c)本明細書に開示した、シグナルペプチドを有するかまたは有さない、膜貫通型システイン操作抗体タンパク質の細胞外ドメイン、(d)本明細書に開示した任意の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、または(e)本明細書に開示した全長システイン操作抗体アミノ酸配列の任意の他の特異的に定義されるフラグメント、をコードしているDNA分子の相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでいる、単離されたシステイン操作抗CD79b抗体に関する。
【0280】
特定の局面では、本発明は、N末端シグナル配列を有さないかおよび/または開始メチオニンを有さない単離されたシステイン操作抗CD79b抗体であって、本明細書中に記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる抗体を提供する。本明細書中ではまた、前記抗体を産生するプロセスを記載しており、これらのプロセスは、システイン操作抗体の発現に適切な条件下で適切なコード化核酸分子を含むベクターを含んでいる宿主細胞を培養する工程と、細胞培養物からこのシステイン操作抗体を回収する工程とを包含する。
【0281】
本発明の別の局面では、膜貫通ドメインを欠失するか膜貫通ドメインを不活性化してある単離されたシステイン操作抗CD79b抗体を提供する。本明細書中ではまた、このような抗体を産生するプロセスを記載しており、これらのプロセスは、システイン操作抗体の発現に適切な条件下で適切なコード化核酸分子を含むベクターを含んでいる宿主細胞を培養する工程と、この細胞培養物からシステイン操作抗体を回収する工程とを包含する。
【0282】
他の局面では、本発明は、異種性(非CD79b)のポリペプチドに融合させた、任意の本明細書中に記載したシステイン操作抗体を含んでいる単離された抗CD79bキメラシステイン操作抗体を提供する。このようなキメラ分子の例は、例えば、エピトープタグ配列または免疫グロブリンのFc領域などの異種性のポリペプチドに融合させた、任意の本明細書中に記載したシステイン操作抗体を含む。
【0283】
システイン操作抗CD79b抗体は、それぞれの抗原エピトープへの抗CD79bポリペプチド抗体の結合を競合的に阻害する、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体または抗体であってもよい。本発明の抗体は必要に応じて、例えばアウリスタチン、メイタンシノイド、ドラスタチン誘導体またはカリケアマイシン、抗生物質、放射性同位体、核酸分解性の酵素などを含む毒素などの増殖阻害性剤もしくは細胞毒性剤にコンジュゲートさせてもよい。本発明の抗体は必要に応じて、CHO細胞または細菌細胞内で産生され、好ましくは結合する細胞の成長もしくは増殖を阻害するか、または死を誘導する。診断目的のために、本発明の抗体は、検出可能に標識されても、固体キャリアなどに結合されても、その他であってもよい。
【0284】
本発明の他の局面では、本発明は、任意の本明細書中に記載した抗CD79b抗体および抗CD79bシステイン操作抗体をコードするDNAを含んでいるベクターを提供する。任意のこのようなベクターを含んでいる宿主細胞も提供される。例として、宿主細胞は、CHO細胞、E.coli細胞または酵母細胞であってもよい。本明細書中に記載の任意のポリペプチドを産生するためのプロセスがさらに提供され、所望のポリペプチドの発現に適切な条件下で宿主細胞を培養する工程と、細胞培養物から所望のポリペプチドを回収する工程とを包含する。
【0285】
システイン操作抗体は癌の治療において有用であり、これには細胞表面および膜貫通型レセプター、および腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体が挙げられる。このような抗体は、裸の抗体(薬剤または標識成分にコンジュゲートしていない)として、あるいは抗体−薬物コンジュゲート(ADC)として用いられてもよい。本発明のシステイン操作抗体は、チオール反応性の試薬と、部位特異的かつ効率的にカップリングされてもよい。チオール反応性の試薬は、多機能リンカー試薬、捕獲標識試薬、蛍光体(発蛍光団)試薬または薬物−リンカー中間生成物であってもよい。システイン操作抗体は、検出可能な標識により標識されても、固相キャリアに固定されても、および/または、薬物部分とコンジュゲートされもよい。チオール反応性は、任意の抗体に対して一般化されてもよく、ここでは反応性のシステインアミノ酸によるアミノ酸の置換が以下のアミノ酸範囲から選択される軽鎖中の範囲内で:L10〜L20、L105〜L115、L109〜L119、L116〜L126、L122〜L132、L163〜L173、L200〜L210;および以下のアミノ酸範囲から選択される重鎖の範囲内で:H1〜H10、H18〜H28、H79〜H89、H107〜H117、H109〜H119、H111〜H121:およびH270〜H280、H366〜H376、H391〜401から選択される範囲内のFc領域で、作製され得、ここではアミノ酸位置のナンバリングは、Kabatナンバリングシステム(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health, Bethesda,MD)の位置1から始まり、その後は国際公開第2006034488号;米国特許出願公開第2007/0029240号に開示されるように、順次続ける。チオール反応性はまた、抗体の特定のドメイン、例えば軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3に対して一般化され得る。0.6以上のチオール反応値を生じるシステイン置換は、IgGサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2をそれぞれが含むインタクトな抗体:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの重鎖定常ドメインα、δ、ε、γおよびμに作製されてもよい。このような抗体およびそれらの使用は、国際公開第2006/034488号;米国特許出願公開第2007/0092940号に開示される。
【0286】
本発明のシステイン操作抗体は好ましくは、それらの野生型、親抗体対応物の抗原結合能を保持し得る。従って、システイン操作抗体は、抗原に対して好ましくは特異的に結合してもよい。このような抗原としては、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)、細胞表面レセプタータンパク質、および他の細胞表面分子、膜貫通タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞生存調節因子、細胞増殖調節因子、組織発達または分化に関連する(例えば機能的に寄与することが公知であるかまたは予測される)分子、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期調節に関与する分子、脈管形成に関与する分子、および血管新生に関連する(例えば機能的に寄与することが公知であるかまたは予測される)分子が挙げられる。腫瘍関連抗原は、クラスター分化因子(すなわち、CD79bを包含するがこれに限定されないCDタンパク質)であってもよい。本発明のシステイン操作抗CD79b抗体は、それらの親抗CD79b抗体対応物の抗原結合能を保持する。従って、本発明のシステイン操作抗CD79b抗体は、限定するものではないがB細胞などの細胞の表面上にこのような抗原が発現される場合を含め、ヒトの抗CD79bアイソフォームβおよび/またはαを含んでいるCD79b抗原に対して、好ましくは特異的に結合し得る。
【0287】
一局面では、本発明の抗体は、反応性部分、活性化部分、または反応性システインチオール基を通じて抗体に共有結合され得る標識部分とコンジュゲートされてもよい(Singhら、(2002)Anal.Biochem.304:147〜15;Harlow
E.and Lane,D.(1999)Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Lundblad R.L.(1991)Chemical Reagents for Protein Modification,第2版.CRC Press,Boca Raton,FL)。付着された標識は、(i)検出可能なシグナルを提供するか、(ii)第二標識と相互作用して、第一または第二標識によって生じる検出可能なシグナルを改変して、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)が生じるようにするか、(iii)抗原またはリガンドとの相互作用を安定させるかまたは結合の親和性を増加するか、(iv)電荷、疎水性、形状または他の物理学的なパラメータによって移動度、例えば電気泳動移動度または細胞透過性に作用するか、あるいは(v)捕獲部分を与えて、リガンド親和性、抗体/抗原結合またはイオン錯体形成を調節するように機能し得る。
【0288】
標識されたシステイン操作抗体は、例えば、特定の細胞、組織または血清における目的の抗原の発現を検出するための診断的アッセイに有用となり得る。診断用適用のために、抗体は代表的には検出可能な部分を用いて標識されるであろう。多くの標識が利用可能であり、この標識は一般には、以下のカテゴリに分類してもよい:
放射性同位体類(ラジオアイソトープ類)(放射性核種類)、例えば
3H、
11C、
14C、
18F、
32P、
35S、
64Cu、
68Ga、
86Y、
99Tc、
111In、
123I、
124I、
125I、
131I、
133Xe、
177Lu、
211At、または
213Bi。放射性同位体標識抗体は、レセプター標的撮像実験において有用である。抗体は、Immunology,Volumes 1 and 2,Coligenら、編集.Wiley−Interscience,New York,New York,Pubs.(1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて、リガンド試薬が抗体の操作されたシステインチオールと反応性がある場合にキレートを結合するか、それ以外の状況では放射性同位体金属と複合化するこのリガンド試薬により標識してもよい。金属イオンを錯化し得るキレート化リガンドとしては、DOTA、DOTP、DOTMA、DTPAおよびTETA(Macrocyclics,Dallas,TX)が挙げられる。放射性核種は、本発明の抗体−薬物コンジュゲートとの錯体形成により標的化され得る(Wuら(2005)Nature Biotechnology 23(9):1137〜1146)。
【0289】
リンカー試薬、例えば、DOTA−マレイミド(4−マレイミドブチルアミドベンジル−DOTA)は、イソプロピルクロロフォルメート(Aldrich)によって活性化される4−マレイミド酪酸(Fluka)とアミノベンジル−DOTAとの反応によって、その後のAxworthyら、(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(4):1802〜1807の手順によって調製されてもよい。DOTA−マレイミド試薬は、システイン操作抗体の遊離したシステインアミノ酸と反応して、抗体上の金属錯体形成リガンドを提供する(Lewisら、(1998)Bioconj.Chem.9:72〜86)。DOTA−NHS(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)などのキレート化リンカー標識試薬は、市販されている(Macrocyclics,Dallas,TX)。放射性核種標識抗体によるレセプター標的造影は、腫瘍組織の抗体の進行性蓄積の検出および定量化によって経路活性化のマーカーとなり得る(Albertら、(1998)Bioorg.Med.Chem.Lett.8:1207〜1210)。コンジュゲートした放射性金属は、リソソーム分解後に細胞内に残り得る。
【0290】
造影実験のための抗体標識として好適な金属−キレート複合体は以下に開示される:米国特許第5342606号;米国特許第5428155号;米国特許第5316757号;米国特許第5480990号;米国特許第5462725号;米国特許第5428139号;米国特許第5385893号;米国特許第5739294号;米国特許第5750660号;米国特許第5834456号;Hnatowichら、(1983)J.Immunol.Methods 65:147〜157;Mearesら、(1984)Anal.Biochem.142:68〜78;Mirzadehら、(1990)Bioconjugate Chem.1:59〜65;Mearesら、(1990)J.Cancer1990,Suppl.10:21〜26;Izardら、(1992)Bioconjugate Chem.3:346〜350;Nikulaら、(1995)Nucl.Med.Biol.22:387〜90;Cameraら、(1993)Nucl.Med.Biol.20:955〜62;Kukisら、(1998)J.Nucl.Med.39:2105〜2110;Verelら、(2003)J.Nucl.Med.44:1663〜1670;Cameraら、(1994)J.Nucl.Med.21:640〜646;Rueggら、(1990)Cancer Res.50:4221〜4226;Verelら、(2003)J.Nucl.Med.44:1663〜1670;Leeら、(2001)Cancer Res.61:4474〜4482;Mitchell,ら、(2003)J.Nucl.Med.44:1105〜1112;Kobayashiら、(1999)Bioconjugate Chem.10:103〜111;Miedererら、(2004)J.Nucl.Med.45:129〜137;DeNardoら、(1998)Clinical Cancer Research 4:2483〜90;Blendら、(2003)Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18:355〜363;Nikulaら、(1999)J.Nucl.Med.40:166〜76;Kobayashiら、(1998)J.Nucl.Med.39:829〜36;Mardirossianら、(1993)Nucl.Med.Biol.20:65〜74;Roselliら、(1999)Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals,14:209〜20。
【0291】
蛍光標識、例えば希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、フルオレセイン種、例として、FITC、5−カルボキシフルオレセイン、6カルボキシフルオレセイン;TAMRAを含むローダミン種;ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリトリン;テキサスレッド;およびこれらのアナログ。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートしてもよい。蛍光色素および蛍光標識試薬としては、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene,OR)およびPierce Biotechnology,Inc.(Rockford,IL)から市販されている試薬が挙げられる。
【0292】
種々の酵素基質標識が利用可能であるか、または開示されている(米国特許第4275149号)。一般に、酵素は、種々の技術を用いて測定してもよい色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定してもよい基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変え得る。蛍光の変化を定量化する技術は上記されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起されて、次いで、測定することが可能な(例えば化学ルミノメーターを用いて)か、またはエネルギーを蛍光受容基に与える光を発し得る。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O’Sullivanら(1981)、「Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay」in Methods in Enzym.(編集 J.Langone & H.Van Vunakis),Academic press,New York,73:147〜166に記載されている。
【0293】
酵素基質の組合せの例としては、例えば以下が挙げられる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、ここで水素ペルオキシダーゼが色素前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)または3,3’,5,5’テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)色素生産性基質としてリン酸パラ−ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);および
(iii)色素生産性基質(例えばp−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)−β−D−ガラクトシダーゼを有するβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)。
【0294】
多数の他の酵素基質の組合せが当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4275149号および米国特許第4318980号を参照のこと。
【0295】
標識は、アミノ酸側鎖、活性化されたアミノ酸側鎖、システイン操作抗体などと間接的にコンジュゲートされてもよい。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した標識の任意の大きな3つの分類はアビジンまたはストレプトアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にストレプトアビジンと結合し、従って、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、ポリペプチド改変体と標識とを間接的にコンジュゲートさせるために、このポリペプチド改変体は小ハプテン(例えばジゴキシン)とコンジュゲートさせ、前述した種々のタイプの標識のうちの1つは抗ハプテンポリペプチド改変体(例えば抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートさせる。従って、ポリペプチド改変体と標識とを間接的にコンジュゲートすることが可能である(Hermanson,G.(1996)in Bioconjugate Techniques Academic Press,San Diego)。
【0296】
本発明の抗体は、任意の公知のアッセイ方法、例えばELISA、競合結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイに使用してもよい(Zola,(1987)Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147〜158,CRC Press,Inc.)。
【0297】
検出標識は、結合または認識の事象を局所化し、可視化して、数値化するために有用であり得る。本発明の標識抗体は細胞表面レセプターを検出し得る。検出可能に標識した抗体についての別の用途は、ビーズに基づく免疫捕獲の方法であって、この方法は、蛍光標識抗体とビーズとをコンジュゲートさる工程と、リガンド結合の際の蛍光シグナルを検出する工程とを包含する。同様の結合検出方法論は、表面プラズモン共鳴(SPR)効果を利用して抗体−抗原相互作用を測定して検出する。
【0298】
蛍光色素および化学発光色素などの検出標識(Briggsら、(1997)「Synthesis of Functionalised Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino
Acids,」J.Chem.Soc.,Perkin−Trans.1:1051〜1058)は検出可能なシグナルを提供し、通常、好ましくは以下のような特性により標識化抗体に応用可能である:(i)標識抗体は、少量の抗体が無細胞アッセイおよび細胞に基づくアッセイにおいて鋭敏に検出されるように低いバックグランドで極めて高いシグナルを産生しなければならず;そして(ii)標識抗体は、有意に写真を退色させることなく、蛍光シグナルが観察され、モニターされ、記録されるように、光安定性でなければならない。膜または細胞表面、特に生きている細胞への標識抗体の細胞表面結合を伴う用途では、標識は、好ましくは、(iii)有効なコンジュゲート濃度と検出感度が達成されるように良好な水溶性であり、(iv)細胞の正常な代謝過程が破壊されないか、または早期に細胞死を引き起こさないように生きている細胞に対して毒性がない。
【0299】
細胞性蛍光強度の直接の定量化と蛍光標識事象、例えば、ペプチド−色素コンジュゲートの細胞表面結合の算出は、生きている細胞またはビーズによる非放射性アッセイである、混合と読み取り(mix−and−read)を自動化するシステム(FMAT(登録商標)8100 HTSシステム、Applied Biosystems,Foster City,Calif.)で行ってもよい(Miraglia,「Homogeneous cell− and bead−based assays for high throughput screening using fluorometric microvolume assay technology」,(1999)J.of Biomolecular Screening 4:193〜204)。標識抗体の使用にはまた、細胞表面レセプター結合アッセイ、免疫捕獲(immunocapture)アッセイ、蛍光結合免疫吸着アッセイ(FLISA)、カスパーゼ切断(Zheng,「Caspase−3 controls both cytoplasmic and nuclear events associated with Fas−mediated apoptosis in vivo」,(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:618〜23;米国特許第6372907号)、アポトーシス(Vermes,「A novel assay for apoptosis.Flow cytometric detection of phosphatidylserine expression on early apoptotic
cells using fluorescein labelled Annexin V」(1995)J.Immunol.Methods 184:39〜51)および細胞障害性アッセイが挙げられる。蛍光定量的マイクロ体積アッセイ技術を用いて、細胞表面を標識とする分子によって上方制御または下方制御を同定してもよい(Swartzman,「A homogeneous and multiplexed immunoassay for high−throughput screening using fluorometric microvolume assay technology」,(1999)Anal.Biochem.271:143〜51)。
【0300】
本発明の標識抗体は、種々の方法および以下のような生医学的かつ分子的撮像法の技術によってバイオマーカーおよびプローブを画像化するのに有用である:(i)MRI(磁気共鳴画像法);(ii)MicroCT(コンピュータ断層撮影法)、(iii)SPECT(単一光子放射型コンピュータ断層撮影法);(iv)PET(ポジトロン放出断層撮影)Chenら、(2004)Bioconjugate Chem.15:41〜49;(v)バイオルミネセンス、(vi)蛍光;および(vii)超音波。イムノシンチグラフィは、放射性物質によって標識された抗体が動物またはヒト患者に投与される造影手順であり、画像は抗体が局在する身体の部位のものである(米国特許第6528624号)。造影バイオマーカーは、客観的に測定され、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として評価されてもよい。バイオマーカーにはいくつかの種類がある場合がある:タイプ0は、疾患の自然な成長マーカーであって、公知の臨床指標、例えば関節リウマチの滑液炎症のMRI評価と長軸方向に相関する;タイプIマーカーは、例えばメカニズムが臨床転帰と関係していなくても、作用の機序(mechanism−of−action)の関係として介入の効果を捕らえる;タイプIIマーカーは代理のエンドポイントとして機能するものであり、このバイオマーカーの変化またはこのバイオマーカーのシグナルから、関節リウマチの骨浸食をCTで測定するなどの目的の応答を「有効と認める」ために臨床的な利点を予測する。従って、造影バイオマーカーは、(i)標的タンパク質の発現、(ii)標的タンパク質に対する治療用の結合、すなわち選択性、および(iii)クリアランスおよび半減期の薬物動態学的データについての薬物動態学的(PD)治療的情報を提供し得る。研究室ベースのバイオマーカーと比較したときのインビボ造影バイオマーカーの利点としては、以下が挙げられる:非侵襲性処置、定量化できる、全身評価、反復性投与および評価、すなわち複数の時点の投与と評価、および臨床前(小動物)の結果を臨床(ヒト)の結果に可能性として置き換えることができる効果。用途によっては、生体イメージングは、前臨床研究において多くの動物実験の代替となるかまたはそれを最小限にする。
【0301】
ペプチド標識方法は周知である。Haugland,2003,Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Inc.;Brinkley,1992,Bioconjugate Chem.3:2;Garman,(1997)Non−Radioactive Labelling:A Practical Approach,Academic Press,London;Means(1990)Bioconjugate Chem.1:2;Glazerら、(1975)Chemical Modification of Proteins.Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(T.S.WorkおよびE.Work,編集)American Elsevier Publishing Co.,New York;Lundblad,R.L.and Noyes,C.M.(1984)Chemical Reagents for Protein Modification,第I巻および第II巻,CRC Press,New York;Pfleiderer,G.(1985)「Chemical Modification of Proteins」,Modern Methods in Protein Chemistry,H.Tschesche,編集,Walter DeGryter,Berlin and New York;ならびにWong(1991)Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking,CRC Press,Boca Raton,Fla.);De Leon−Rodriguezら、(2004)Chem.Eur.J.10:1149〜1155;Lewisら、(2001)Bioconjugate Chem.12:320〜324;Liら、(2002)Bioconjugate Chem.13:110〜115;Mierら、(2005)Bioconjugate Chem.16:240〜237を参照のこと。
【0302】
十分近接した蛍光レポーターとクエンチャーの2つの成分にて標識されたペプチドおよびタンパク質は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を受ける。レポーター基とは、代表的には、特定の波長で光によって励起され、エネルギーをアクセプターまたはクエンチャー基に移動して、それによって最大の明るさで発光するための適切なストークスシフトを伴う蛍光色素である。蛍光色素には、広範な芳香族性を有する分子、例えば、フルオレセインおよびローダミン、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。蛍光レポーターは、インタクトなペプチドのクエンチャー成分によって部分的あるいは有意にクエンチングされ得る。ペプチダーゼまたはプロテアーゼによるペプチドの切断の際に、蛍光の検出可能な増大が測定され得る(Knight,C.(1995)「Fluorimetric Assays of Proteolytic Enzymes」,Methods in
Enzymology,Academic Press,248:18〜34)。
【0303】
本発明の標識抗体はまた、親和性精製剤として用いられてもよい。このプロセスでは、標識抗体は、当該分野で周知の方法を用いて、セファデックス樹脂または濾紙などの固相に固定される。固定された抗体を、精製される抗原を含んでいるサンプルと接触させ、その後、その支持体を、精製される抗原以外のサンプル中の実質的に全ての物質を取り除く適切な溶媒にて洗浄し、固定されたポリペプチド改変体に結合させる。最後に、支持体を別の適切な溶媒、例えばグリシン緩衝液、pH5.0にて洗浄して、その抗原をポリペプチド改変体から遊離させる。
【0304】
標識化試薬は、代表的には、(i)標識抗体を形成するためにシステイン操作抗体のシステインチオールと直接反応し得るか、(ii)リンカー−標識中間生成物を形成するためにリンカー試薬と反応し得るか、または(iii)標識抗体を形成するためにリンカー抗体と反応し得る反応官能基を保有する。標識試薬の反応性官能基としては、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドスクシンイミジルエステル(例えば、NHS、N−ヒドロキシスクシンイミド)、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびホスホラミダイトが含まれるが、他の官能基も用いられてよい。
【0305】
例示的な反応性官能基は、検出可能な標識、例えばビオチンまたは蛍光色素のカルボキシル置換基のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)である。標識のNHSエステルは予め形成しても、単離しても、精製しても、および/または特徴付けてもよく、あるいはインサイチュで形成して、抗体の求核基と反応させてもよい。代表的には、標識のカルボキシル型を、カルボジイミド試薬、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、またはユーロニウム試薬、例えば、TSTU(O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルユーロニウム テトラフルオロボレート)、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルユーロニウム・ヘキサフルオロホスフェート)、またはHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルユーロニウム ヘキサフルオロホスフェート)、活性化因子、例えば1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびN−ヒドロキシスクシンイミドのいくつかの組み合わせと反応させることによって活性化して、標識のNHSエステルを得る。場合によって、標識のインサイチュ活性化および抗体との反応によって標識と抗体とをカップリングさせて、一工程で標識−抗体コンジュゲートを形成させてもよい。他の活性化試薬およびカップリング試薬としては、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾ−1−イル)−1−1,3,3−テトラメチルユーロニウム・ヘキサフルオロホスフェート)、TFFH(N,N’,N”,N’”−テトラメチルユーロニウム 2−フルオロ−ヘキサフルオロホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、EEDQ(2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロ−キノリン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)、MSNT(1−(メシチレン−2−スルホニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール、およびアリール スルホニル ハロゲン化物、例えばトリイソプロピルベンゼンスルホニル クロライドが挙げられる。
【0306】
本発明のアルブミン結合ペプチド−Fab化合物:
一局面では、本発明の抗体はアルブミン結合タンパク質に融合される。血漿−タンパク質の結合は、短い寿命の分子の薬物動態学的な特性を向上させる有効な手段であり得る。アルブミンは血漿中で最も豊富なタンパク質である。血清アルブミン結合ペプチド類(ABP)は、組織取り込み、浸透および拡散の変更を含んでいる、融合した活性なドメインタンパク質の薬物動態を変更し得る。これらの薬物動態学的パラメータは、適切な血清アルブミン結合ペプチド配列を特異的に選別することによって調節され得る(米国特許出願公開第20040001827号)。一連のアルブミン結合ペプチドは、ファージディスプレイスクリーニングによって特定された(Dennisら(2002)「Albumin Binding As A General Strategy For Improving The Pharmacokinetics Of Proteins」J
Biol Chem.277:35035−35043;国際公開第01/45746号)。本発明の化合物としては、(i)Dennisら(2002)J Biol Chem.277:35035〜35043、表IIIおよびIV,35038頁、(ii)米国特許公開20040001827の[0076]配列番号9〜22、および(iii)国際公開第01/45746号の12〜13頁に教示されるABP配列が挙げられる、これらの文献は全て出典明記によって本明細書中に援用される。アルブミン結合(ABP)−Fabは、1:1の化学量論比(1ABP/1Fab)で、Fab重鎖のC末端にアルブミン結合ペプチドを融合させることによって操作される。アルブミンとのこれらABP−Fabの会合により、抗体の半減期がウサギおよびマウスの25倍以上に増加したことが示された。従って、上記の反応性のCys残基をこれらABP−Fabに導入し、細胞毒性薬物との部位特異的にコンジュゲーションに用い、その後にインビボ動物実験に用いてもよい。
【0307】
例示的なアルブミン結合ペプチド配列としては、限定するものではないが、配列番号80〜84に列挙されるアミノ酸配列が挙げられる:
CDKTHTGGGSQRLMEDICLPRWGCLWEDDF 配列番号80
QRLMEDICLPRWGCLWEDDF 配列番号81
QRLIEDICLPRWGCLWEDDF 配列番号82
RLIEDICLPRWGCLWEDD 配列番号83
DICLPRWGCLW 配列番号84
抗体−薬物コンジュゲート
別の局面では、本発明は、化学療法剤、薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物由来の酵素活性性毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの細胞毒性剤にコンジュゲートした抗体を含んでいる、イムノコンジュゲート、または抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。別の局面では、本発明はさらに、イムノコンジュゲートの使用方法を提供する。一局面では、イムノコンジュゲートは、細胞毒性剤または検出可能な薬剤に共有結合した任意の上記の抗CD79b抗体を含む。
【0308】
一局面では、本発明のCD79b抗体は、別のCD79b抗体によって結合されたCD79b上の同じエピトープに結合する。別の実施形態では、本発明のCD79b抗体は、2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作製されたモノクローナル抗体、配列番号10(
図7)および配列番号14(
図8A〜B)の可変ドメインを含んでいるモノクローナル抗体、または2006年7月11日にATCCに寄託されたPTA−7712ハイブリドーマから作製されたいずれかの抗体の可変ドメインおよびIgG1由来の定常ドメインを含んでいるキメラ抗体、または配列番号10(
図7)および配列番号14(
図8A〜B)の配列を含んでいるモノクローナル抗体の可変ドメインのFabフラグメントによって結合されるCD79b上の同じエピトープに結合する。別の実施形態では、本発明のCD79b抗体は、別のCD79b抗体(すなわち、CB3.1(BD Biosciences Catalog#555678;San Jose,CA)、AT105−1(AbD Serotec Catalog #MCA2208;Raleigh,NC)、AT107−2(AbD Serotec Catalog#MCA2209)、抗ヒトCD79b抗体(BD Biosciences Catalog #557592;San Jose,CA))によって結合されるCD79b上の同じエピトープに結合する。
【0309】
別の局面では、本発明のCD79b抗体は、別のCD79b抗体によって結合されたエピトープとは異なるCD79b上のエピトープに結合する。別の実施形態では、本発明のCD79b抗体は、2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作製されたモノクローナル抗体、配列番号10(
図7)および配列番号14(
図8A〜B)の可変ドメインを含んでいるモノクローナル抗体、または2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作製されたいずれかの抗体の可変ドメインおよびIgG1由来の定常ドメインを含んでいるキメラ抗体、または配列番号10(
図7)および配列番号14(
図8A〜B)の配列を含んでいるモノクローナル抗体の可変ドメインのFabフラグメントによって結合されるエピトープとは異なるCD79b上のエピトープに結合する。別の実施形態では、本発明のCD79b抗体は、別のCD79b抗体(すなわち、CB3.1(BD Biosciences Catalog#555678;San Jose,CA)、AT105−1(AbD Serotec Catalog #MCA2208;Raleigh,NC)、AT107−2(AbD Serotec Catalog#MCA2209)、抗ヒトCD79b抗体(BD Biosciences Catalog #557592;San Jose,CA))によって結合されるCD79b上のエピトープとは異なるCD79b上のエピトープに結合する。
【0310】
別の局面では、本発明のCD79b抗体は、2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作製されたモノクローナル抗体、配列番号10(
図7)および配列番号14(
図8A〜B)の可変ドメインを含んでいるモノクローナル抗体、または2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作製された抗体の可変ドメインおよびIgG1由来の定常ドメインを含んでいるキメラ抗体、または配列番号10(
図7)および配列番号14(
図8A〜B)の配列を含んでいるモノクローナル抗体の可変ドメインのFabフラグメントとは異なる(すなわち、そのフラグメントではない)。別の実施形態では、本発明のCD79b抗体は、別のCD79b抗体(すなわち、CB3.1(BD Biosciences Catalog#555678;San Jose,CA)、AT105−1(AbD Serotec Catalog #MCA2208;Raleigh,NC)、AT107−2(AbD Serotec Catalog#MCA2209)、抗ヒトCD79b抗体(BD Biosciences Catalog #557592;San Jose,CA))のFabフラグメントとは異なる(すなわちそのフラグメントではない)。
【0311】
一局面では、本発明の抗体は、第一動物種のCD79bと特異的に結合して、第二動物種のCD79bとは特異的に結合しない。一実施形態では、この第一動物種はヒトおよび/または霊長類(例えばカニクイザル)であり、第二動物種はマウス(例えばマウス)および/またはイヌである。一実施形態では、この第一動物種はヒトである。一実施形態では、この第一動物種は霊長類、例えばカニクイザルである。一実施形態では、この第二動物種はネズミ科、例えばマウスである。一実施形態では、この第二動物種はイヌである。
【0312】
一局面では、本発明は、本発明の1つ以上の抗体およびキャリアを含んでいる組成物を提供する。一実施形態では、このキャリアは薬学的に受容可能である。
【0313】
一局面では、本発明は、本発明のCD79b抗体をコードしている核酸を提供する。
【0314】
一局面では、本発明は、本発明の核酸を含んでいるベクターを提供する。
【0315】
一局面では、本発明は、本発明の核酸またはベクターを含んでいる宿主細胞を提供する。ベクターは、任意の種類、例えば発現ベクターなどの組換えベクターであってもよい。任意の種々の宿主細胞が用いられてもよい。一実施形態では、宿主細胞は原核細胞、例えばE.coli.である。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳類の細胞である。
【0316】
一局面では、本発明は、本発明の抗体の作製方法を提供する。例えば、本発明は、CD79b抗体(本明細書で定義されるように、その全長およびフラグメントを含む)の作製方法を提供し、この方法は、適切な宿主細胞において、この抗体(またはそのフラグメント)をコードする本発明の組み換えベクターを発現させる工程と、この抗体を回収する工程とを包含する。
【0317】
一局面では、本発明は、容器と;この容器内に含まれる組成物とを備える製品を提供し、この組成物は本発明の1つ以上のCD79b抗体を含む。一実施形態では、この組成物は本発明の核酸を含む。一実施形態では、抗体を含んでいる組成物はキャリアをさらに含み、いくつかの実施形態では、このキャリアは薬学的に受容可能である。一実施形態では、本発明の製品は、被験体に組成物(例えば、抗体)を投与するための説明書をさらに備える。
【0318】
一局面では、本発明は、本発明の1つ以上のCD79b抗体を含んでいる組成物を含む第一容器と、緩衝液を含んでいる第二容器とを備えるキットを提供する。一実施形態では、この緩衝液は薬学的に受容可能である。一実施形態では、アンタゴニスト抗体を含んでいる組成物はキャリアをさらに含み、いくつかの実施形態では、このキャリアは薬学的に受容可能である。一実施形態では、キットは、被験体に対してこの組成物(例えば、抗体)を投与するための説明書をさらに備える。
【0319】
一局面では、本発明は、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害などの疾患の治療的処置および/または予防的処置のための医薬の調製における本発明のCD79b抗体の使用を提供する。一実施形態では、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
【0320】
一局面では、本発明は、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害などの疾患の治療的処置および/または予防的処置のための医薬の調製における本発明の核酸の使用を提供する。一実施形態では、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
【0321】
一局面では、本発明は、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害などの疾患の治療的処置および/または予防的処置のための医薬の調製における本発明のベクターの発現の使用を提供する。一実施形態では、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
【0322】
一局面では、本発明は、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害などの疾患の治療的処置および/または予防的処置のための医薬の調製における本発明の宿主細胞の使用を提供する。一実施形態では、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
【0323】
一局面では、本発明は、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害などの疾患の治療的処置および/または予防的処置のための医薬の調製における本発明の製品の使用を提供する。一実施形態では、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
【0324】
一局面では、本発明は、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害などの疾患の治療的処置および/または予防的処置のための医薬の調製における本発明のキットの使用を提供する。一実施形態では、ガン、腫瘍、および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
【0325】
一局面では、本発明は、CD79bを発現する細胞の増殖を阻害する方法を提供し、この方法は、この細胞と、本発明の抗体とを接触させる工程と、それによってこの細胞の増殖の阻害を生じる工程とを包含する。一実施形態ではこの抗体は細胞毒性剤にコンジュゲートされる。一実施形態では、この抗体は、増殖阻害剤にコンジュゲートされる。
【0326】
一局面では、本発明は、CD79bを発現する細胞を含んでいる癌性腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置する方法を提供し、この方法は、本発明の抗体の治療上有効な量をこの哺乳動物に投与する工程と、これによってこの哺乳動物を有効に処置する工程とを包含する。一実施形態ではこの抗体は細胞毒性剤にコンジュゲートされる。一実施形態では、この抗体は、増殖阻害剤にコンジュゲートされる。
【0327】
一局面では、本発明は、CD79bの発現の増大に関連する細胞増殖性障害を処置または予防する方法を提供し、この方法は、このような処置の必要な被験体に対して本発明の抗体の有効な量を投与する工程と、これによってこの細胞増殖性障害を有効に処置または予防する工程とを包含する。一実施形態ではこの増殖性障害はガンである。一実施形態では、この抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされる。一実施形態では、この抗体は、増殖阻害剤にコンジュゲートされる。
【0328】
一局面では、本発明は、細胞の増殖を阻害するための方法を提供し、ここではこの細胞の増殖は、CD79bの増殖増強効果に少なくとも部分的に依存しており、この方法は、この細胞と、本発明の抗体の有効量とを接触させる工程と、それによってこの細胞の増殖を阻害する工程とを包含する。一実施形態ではこの抗体は細胞毒性剤にコンジュゲートされる。一実施形態では、この抗体は、増殖阻害剤にコンジュゲートされる。
【0329】
一局面では、本発明は、哺乳動物における腫瘍を治療的に処置する方法を提供し、ここで、この腫瘍の増殖は、CD79bの増殖増強効果に少なくとも部分的に依存しており、この方法は、この細胞と、本発明の抗体の有効量とを接触させる工程と、それによってこの腫瘍を有効に処置する工程とを包含する。一実施形態ではこの抗体は細胞毒性剤にコンジュゲートされる。一実施形態では、この抗体は、増殖阻害剤にコンジュゲートされる。
【0330】
一局面では、本発明は、本明細書に記載のイムノコンジュゲート、受容可能な希釈剤、キャリアまたは賦形剤を含んでいる薬学的処方物を患者に投与する工程を包含する、ガンを処置する方法を提供する。一実施形態では、このガンは、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。一実施形態では、患者は、抗体−薬物コンジュゲート化合物と組み合わせた細胞毒性剤を投与される。
【0331】
一局面では、本発明は、CD79bに対するイムノコンジュゲートの結合を可能にする条件下で、本発明の抗体を含んでいるイムノコンジュゲートに対して細胞を曝露する工程を包含する、B細胞増殖を阻害する方法を提供する。一実施形態では、B細胞増殖は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。一実施形態では、B細胞は異種移植片である。一実施形態では、曝露はインビトロで起こる。一実施形態では、この曝露はインビボで起こる。
【0332】
一局面では、本発明は、CD79bを含んでいると疑われるサンプル中のCD79bの存在を決定する方法を提供し、この方法は、このサンプルを本発明の抗体に対して曝露する工程と、このサンプル中のCD79bに対するこの抗体の結合を測定する工程とを包含し、ここでこのサンプル中のCD79bに対するこの抗体の結合は、このサンプル中のこのタンパク質の存在の指標である。一実施形態では、このサンプルは生物学的サンプルである。さらなる実施形態では、この生物学的サンプルはB細胞を含む。一実施形態では、この生物学的サンプルは、限定するものではないが、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫を包含するB細胞障害および/またはB細胞増殖障害を経験しているかまたは経験していると疑われる哺乳動物由来である。
【0333】
一局面では、本発明は、B細胞などの細胞における増大に関連する細胞増殖性障害を診断するための方法を提供し、CD79bの発現が提供され、この方法は、生物学的サンプル中の試験細胞と、任意の上記の抗体とを接触させる工程と;CD79bに対するこの抗体の結合を検出することによってこのサンプル中の試験細胞に対して結合した抗体のレベルを測定する工程と;コントロールサンプル中の細胞に対して結合した抗体のレベルを比較する工程とを包含し、ここで結合した抗体のレベルは、試験およびコントロールのサンプル中のCD79b発現細胞の数に対して正規化され、この試験サンプル中の結合した抗体のレベルがコントロールサンプルに比較して高いことは、CD79bを発現する細胞に関連する細胞増殖性障害の存在を示す。
【0334】
一局面では、本発明は、血液または血清中の可溶性CD79bを検出する方法を提供し、この方法は、B細胞増殖性障害を被っていると疑われる哺乳動物由来の血液または血清の試験サンプルと、本発明の抗CD79b抗体とを接触させる工程と、正常な哺乳動物由来の血液または血清のコントロールサンプルに対して試験サンプル中の可溶性CD79bの増大を測定する工程とを包含する。ある実施形態では、検出する方法は、哺乳動物の血液または血清中の可溶性CD79bの増大に関連するB細胞増殖性障害を診断する方法として有用である。
【0335】
一局面では、本発明は、CD79bを発現する細胞に対して本発明の抗体を結合する方法を提供し、この方法は、この細胞と、本発明の抗体とを接触させる工程を包含する。一実施形態では、この抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされる。一実施形態では、この抗体は、増殖阻害剤にコンジュゲートされる。
【0336】
本発明の方法は、任意の適切な病理学的状態、例えば、CD79bの発現に関連する細胞および/または組織に影響するように用いられ得る。一実施形態では、本発明の方法において標的化される細胞は造血系細胞である。例えば、造血系細胞は、リンパ球、白血球、血小板、赤血球およびナチュラルキラー細胞からなる群より選択される細胞であってもよい。一実施形態では、本発明の方法で標的される細胞とは、B細胞またはT細胞である。一実施形態では、本発明の方法で標的される細胞はガン細胞である。例えば、ガン細胞は、リンパ腫細胞、白血病細胞または骨髄腫細胞からなる群より選択される細胞であってもよい。
【0337】
本発明の方法は、さらに追加の処置工程を包含し得る。例えば、一実施形態では、ある方法は、放射線療法または化学療法剤に対して標的化細胞および/または組織(例えば、ガン細胞)を曝露する工程をさらに包含する。
【0338】
本明細書において記載される場合、CD79bとは、B細胞レセプターのシグナル伝達成分である。従って、本発明の方法の一実施形態では、標的される細胞(例えば、ガン細胞)とは、CD79bを発現しない細胞に比較してCD79bが発現されている細胞である。さらなる実施形態では、この標的化細胞は、ガン細胞であって、ここではCD79b発現が同じ組織タイプの正常な非ガン細胞に比べて増強されているガン細胞である。一実施形態では、本発明の方法は、標的された細胞の死滅をもたらす。
【0339】
本発明の一局面では、本発明は、本明細書に記載の任意の抗体をコードするDNAを含むベクターを提供する。また、任意のこのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例として、宿主細胞は、CHO細胞、E.coli細胞または酵母であってもよい。さらに、本明細書中に記載の任意の抗体を産生するためのプロセスが提供され、このプロセスは、所望の抗体の発現に適切な条件下で宿主細胞を培養する工程と、細胞培養物から所望の抗体を回収する工程とを包含する。
【0340】
なおさらなる局面では、本発明は、キャリアと組み合わせて、本明細書に記載のような抗CD79b抗体を含んでいる物質の組成物に関する。必要に応じて、このキャリアは薬学的に受容可能なキャリアである。
【0341】
本発明の別の局面は、抗CD79bポリペプチド抗体に対して反応性である状態の処置に有用な医薬の調製のための、本明細書に記載の抗CD79bポリペプチド抗体の使用に関する。
【0342】
本発明の別の局面は、式Iの抗体−薬物化合物の混合物を含んでいる組成物であって、ここでは1抗体あたりの平均の薬物ローディングは約2〜約5、または約3〜約4である。
【0343】
本発明の別の局面は式IのADC化合物、式IのADC化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和化合物の混合物、および薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアもしくは賦形剤を含む薬学的組成物である。
【0344】
別の局面では、式IのADC化合物および抗ガン特性または他の治療効果を有している第二の化合物を含んでいる薬学的な組み合わせが提供される。
【0345】
別の局面は、腫瘍細胞またはガン細胞を殺傷するかまたはその増殖を阻害するための方法であって、この方法は、この腫瘍細胞またはガン細胞を殺傷するかまたはその増殖を阻害するために有効である量の式Iの抗体−薬物コンジュゲート、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和化合物を用いてこの細胞を処理する工程を包含する。
【0346】
別の局面は、式IのADCを含んでいる薬学的組成物の治療上有効な量を患者に投与する工程を包含する、ガンを処置する方法である。
【0347】
別の局面としては製品、すなわち、キットが挙げられ、これのキットは、抗体−薬物コンジュゲートと、容器と、添付文書または処置を指示している表示とを備える。
【0348】
本発明の局面は、式Iの抗体薬物コンジュゲート化合物を作製するための方法であって、この方法は、以下の工程:(a)システイン操作された抗体の操作されたシステイン基と、リンカー試薬とを反応させて、抗体−リンカー中間生成物Ab−Lを形成する工程と;(b)Ab−Lと活性化薬物部分Dとを反応させ;これによってこの抗体−薬物コンジュゲートを形成する工程とを包含するか;または以下の工程:(c)薬物部分の求核性基と、リンカー試薬とを反応させて、薬物−リンカー中間生成物D−Lを形成する工程と;(d)D−Lとシステイン操作された抗体の操作されたシステイン基とを反応させ;これによってこの抗体−薬物コンジュゲートを形成する工程とを包含する。
【0349】
本発明の局面は、ガン細胞を検出するためのアッセイであって、このアッセイは以下を包含する:(a)システイン操作された抗CD79b抗体−薬物コンジュゲートに対して細胞を曝露する工程と;(b)この細胞に対するシステイン操作された抗CD79b抗体−薬物コンジュゲート化合物の結合の程度を測定する工程。
【0350】
A.抗CD79b抗体
一実施形態では、本発明は、本明細書において治療剤としての用途が見出され得る抗CD79b抗体を提供する。例示的な抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびヘテロコンジュゲート抗体が挙げられる。
【0351】
1.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって、動物において上昇される。免疫されるべき種において免疫原性であるタンパク質に関連抗原(特に合成ペプチドが用いられる場合)をコンジュゲートさせることは有用でありうる。例えば、この抗原を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、または大豆トリプシンインヒビターへ、二官能性剤または誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を通じたコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を通じたコンジュゲーション)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl
2、またはR
1N=C=NR(ここで、RおよびR
1は異なるアルキル基である)を用いてコンジュゲートさせてもよい。
【0352】
例えば、100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲート(それぞれウサギまたはマウスの場合)を3容量のフロイント完全アジュバントと混合すること、その溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して動物を免疫する。1ヵ月後、複数部位への皮下注射によりフロイント完全アジュバント中のペプチドまたは結合体の元の量の1/5〜1/10を用いて動物を追加免疫する。7〜14日後、その動物から採血し、その血清の抗体力価をアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。コンジュゲートはまた、タンパク質融合物として組換え細胞培養物中において作製することもできる。また、ミョウバンなどの凝集剤を適宜用いて、免疫応答を増強する。
【0353】
2.
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohlerら、
Nature,256:495(1975)により、初めて記述されたハイブリドーマ法を用いて作製されてもよいし、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)により作製されてもよい。
【0354】
ハイブリドーマ法においては、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターを上記したように免疫して、免疫に用いられるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生可能であるリンパ球を誘発させる。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。免疫の後、リンパ球を単離し、次いで適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを用いてミエローマ細胞株と融合することにより、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,
Monoclonal Antibodies,Principles and Practice,59〜103頁(Academic Press,1986))。
【0355】
このように調製されたハイブリドーマ細胞を適切な培養培地中に播種して生育させるが、その培地は、好ましくは、融合していない親ミエローマ細胞(融合パートナーとも呼ばれる)の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含む。例えば、親ミエローマ細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠失している場合は、ハイブリドーマに対する選択培養培地は、代表的には、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含み(HAT培地)、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の生育を妨害する。
【0356】
好ましい融合パートナーであるミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を支援し、そして融合していない親細胞に対して選択する選択培地に対して感受性であるものである。好ましいミエローマ細胞株は、マウスミエローマ株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAより入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍から得られるミエローマ、ならびにAmerican Type Culture Collection,Manassas,Virginia,USAより入手可能なSP−2および誘導体、例えば、X63−Ag8−653細胞である。ヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);およびBrodeurら、
Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51〜63頁(Marcel Dekker,Inc.New York,1987))。
【0357】
ハイブリドーマ細胞を生育させる培養培地は、抗原に対して指向されたモノクローナル抗体の産生に関してアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によってまたはインビトロの結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって測定する。
【0358】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munsonら、
Anal.Biochem.,107:220(1980)に記載のスキャッチャード分析により測定できる。
【0359】
所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が一旦同定されれば、限界希釈手順によりそのクローンをサブクローニングして、標準的な方法により生育させ得る(Goding,
Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59〜103(Academic Press,1986))。この目的のための適切な培地としては、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、例えば、マウスへの細胞のi.p.注射により、動物における腹水腫瘍としてインビボで生育させてもよい。
【0360】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の抗体精製手順、例えば、アフィニティクロマトグラフィ(例えば、プロテインAまたはプロテインG−セファロースを用いる)またはイオン交換クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析など)などにより、培養培地、腹水または血清から適宜に分離される。
【0361】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に単離および配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい起源となる。一旦、単離されると、そのDNAは、発現ベクター内に入れられてもよく、次いでこのベクターが宿主細胞、例えば、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはそれ以外では抗体タンパク質を産生しないミエローマ細胞にトランスフェクトされることにより、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成が行われる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する総説文献としては、Skerraら、
Curr.Opinion in Immunol.,5:256〜262(1993)およびPlueckthun,
Immunol.Revs.130:151〜188(1992)が挙げられる。
【0362】
さらなる実施形態では、モノクローナル抗体または抗体フラグメントは、McCaffertyら、
Nature,348:552〜554(1990)に記載の技術を用いて作製した抗体ファージライブラリーから単離できる。Clacksonら、
Nature,352:624〜628(1991)およびMarksら、
J.Mol.Biol.,222:581〜597(1991)は、ファージライブラリーを用いた、それぞれマウスおよびヒトの抗体の単離を記載している。その後の出版物では、チェーン・シャッフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の産生(Marksら、
Bio/Technology,10:779〜783(1992))ならびに極めて大型のファージライブラリーを構築するためのストラテジーとしてのコンビナトリアル感染およびインビボ組換え(Waterhouseら、
Nuc.Acids.Res.21:2265〜2266(1993))が記載されている。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替法である。
【0363】
抗体をコードするDNAは、例えば、相同なマウス配列についてヒトの重鎖および軽鎖の定常ドメイン(C
HおよびC
L)配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチド(異種ポリペプチド)についてコード配列の全部または一部に免疫グロブリンコード配列を融合することにより、キメラ抗体または融合抗体のポリペプチドが産生されるように改変してもよい。非免疫グロブリンポリペプチド配列は、抗体の定常ドメインについて置換してもよいし、またはそれらの配列を抗体の1つの抗原複合化部位の可変ドメインについて置換することにより、抗原に対する特異性を有する1つの抗原複合化部位および異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原複合化部位を含んでいるキメラ2価抗体を作製してもよい。
【0364】
3.ヒト抗体およびヒト化抗体
本発明の抗CD79b抗体としてはさらに、ヒト化抗体またはヒト抗体を挙げることができる。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンから得られる最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)
2または他の抗原結合サブ配列)である。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含し、これにおいては、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基で置き換えられている。一部の場合においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入されたCDR配列またはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、代表的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、これにおいては、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、そしてFR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、必要に応じてさらに免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、代表的には、ヒト免疫グロブリンのFc領域を含む[Jonesら、
Nature,
321:522〜525(1986);Riechmannら、
Nature,
332:323〜329(1988);およびPresta,
Curr.Op.Struct.Biol.,2:593〜596(1992)]。
【0365】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである起源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と呼ばれ、これらは、代表的には、「移入」可変ドメインに由来する。ヒト化は、本質的には、げっ歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより、Winterおよび共同研究者らの方法[Jonesら、
Nature,
321:522〜525(1986);Riechmannら、
Nature,
332:323〜327(1988);Verhoeyenら、
Science,
239:1534〜1536(1988)]に従って実施してもよい。従って、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種由来の対応する配列により置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際、ヒト化抗体とは、代表的には、ある程度のCDR残基および恐らくは、ある程度のFR残基が、げっ歯類抗体における類似の部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。
【0366】
ヒト化抗体の作製において用いられる軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗体がヒトの治療上の使用を意図している場合は、抗原性およびHAMA(ヒト抗マウス抗体)応答を低減するために極めて重要である。HAMA反応の低減または排除は、適切な治療剤の臨床開発の重要な局面である。例えば、Khaxzaeliら、J.Natl.Cancer Inst.(1988),80:937;Jaffersら、Transplantation(1986),41:572;Shawlerら、J.Immunol.(1985),135:1530;Searsら、J.Biol.Response Mod.(1984),3.138;Millerら、Blood(1983),62:988;Hakimiら、J.Immunol.(1991),147:1352;Reichmannら、Nature(1988),332:323;Junghansら、Cancer Res.(1990),50:1495を参照のこと。本明細書に記載するとおり、本発明はHAMA応答が低減または排除されるようにヒト化されている抗体を提供する。これらの抗体の改変体は、下に詳述する当該分野で公知の慣用的方法を用いてさらに得ることができる。いわゆる「ベストフィット法」によれば、げっ歯類の動物抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。げっ歯のものと最も近いヒトVドメイン配列を同定し、その中のヒトフレームワーク領域(FR)をヒト化抗体のために受け入れる(Simsら,
J.Immunol.,151:2296(1993);Chothiaら、
J.Mol.Biol.,196:901(1987))。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を用いる。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に用いてもよい(Carterら,
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Prestaら,
J.Immunol.151:2623(1993))。
【0367】
例えば、本明細書に記載される抗体に由来するアミノ酸配列は、フレームワークおよび/または超可変配列(単数または複数)の多様化のための出発(親)配列として機能できる。出発超可変配列が連結されている選択されたフレームワーク配列は本明細書においては、アクセプターヒトフレームワークと称される。アクセプターヒトフレームワークは、ヒト免疫グロブリン(そのVLおよび/またはVH領域)由来であってもよいし、またはこれから誘導されてもよいが、好ましくはアクセプターヒトフレームワークは、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来であるか、またはこれから誘導され、その理由はそのようなフレームワークはヒト患者における免疫原性が最小限であるか、または皆無であることがわかっているためである。
【0368】
アクセプターがヒト免疫グロブリンから誘導される場合は、必要に応じて、ヒトフレームワーク配列のコレクション中の種々のヒトフレームワーク配列とドナーフレームワーク配列とをアラインメントさせることによりこのドナーフレームワーク配列への自身の相同性に基づいて選択されたヒトフレームワーク配列を選択し、アクセプターとして最も相同性であるフレームワーク配列を選択してよい。
【0369】
一実施形態では、本明細書のヒトコンセンサスフレームワークは、VHサブグループIIIおよび/またはVLκサブグループIコンセンサスフレームワーク配列由来であるか、または、それから誘導される。
【0370】
従って、VHアクセプターヒトフレームワークは、以下のフレームワーク配列のうちの1つ、2つ、3つまたは全てであってもよい:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号69)を含むFR1、WVRQAPGKGLEWV(配列番号70)を含むFR2、
FR3を含むFR3であって、RFTISX
1DX
2SKNTX
3YLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号73)を含み、ここでX
1はAまたはRであり、X
2はTまたはNであり、かつX
3はAまたはLである、FR3
WGQGTLVTVSS(配列番号72)を含むFR4。
【0371】
VHコンセンサスフレームワークの例としては以下が挙げられる:
ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナスKabatのCDR(配列番号36);
ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナス伸長された超可変領域(配列番号37〜39);
ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatのCDR(配列番号40);
ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長された超可変領域(配列番号41〜43);
ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatのCDR(配列番号44);
ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長された超可変領域(配列番号45〜47);
ヒトVHアクセプターフレームワークマイナスKabatのCDR(配列番号48);
ヒトVHアクセプターフレームワークマイナス伸長された超可変領域(配列番号49〜50);
ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナスKabatのCDR(配列番号51);または
ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナス伸長された超可変領域(配列番号52〜54)。
【0372】
一実施形態では、VHアクセプターヒトフレームワークは、以下のフレームワーク配列のうち1つ、2つ、3つまたは全てを含む:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号69)を含んでいるFR1、
WVRQAPGKGLEWV(配列番号70)を含んでいるFR2、
RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号71)を含んでいるFR3、
RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCA(配列番号74)、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号75)、
RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCS(配列番号76)、または
RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSR(配列番号77)WGQGTLVTVSS(配列番号72)を含んでいるFR4。
【0373】
VLアクセプターヒトフレームワークは、以下のフレームワーク配列のうち1つ、2つ、3つまたは全てを含んでもよい:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号65)を含んでいるFR1、
WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号66)を含んでいるFR2、
GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号67)を含んでいるFR3、
FGQGTKVEIKR(配列番号68)を含んでいるFR4。
【0374】
VLコンセンサスフレームワークの例としては以下が挙げられる:
ヒトVLκサブグループIコンセンサスフレームワーク(配列番号55);
ヒトVLκサブグループIIコンセンサスフレームワーク(配列番号56);
ヒトVLκサブグループIIIコンセンサスフレームワーク(配列番号57);または
ヒトVLκサブグループIVコンセンサスフレームワーク(配列番号58)。
【0375】
アクセプターは、ヒト免疫グロブリンまたはヒトコンセンサスフレームワーク由来であるかにかかわらず、選択されたヒトフレームワーク配列に対して配列が同一であってもよいが、本発明は、ヒト免疫グロブリン配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列に対する既存のアミノ酸置換をアクセプター配列が含んでもよいものとする。これらの既存の置換は好ましくは最小限;通常はヒト免疫グロブリン配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列に対して、通常は4つ、3つ、2つまたは1個のアミノ酸が相違するのみである。
【0376】
非ヒト抗体の超可変領域残基は、VLおよび/またはVHアクセプターヒトフレームワーク内に取り込まれる。例えば、KabatのCDR残基、Chothiaの超可変ループ残基、Abmの残基および/または接触残基に相当する残基を取り込んでよい。必要に応じて、以下のような伸長超可変領域残基、24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、26〜35B(H1)、50〜65、47〜65または49〜65(H2)および93〜102、94〜102または95〜102(H3)が取り込まれる。
【0377】
超可変領域残基の「取り込み」を本明細書において考察しているが、当然ながらこれは種々の方法で達成することが可能で、例えば、所望のアミノ酸配列をコードする核酸は、自身のフレームワーク領域がアクセプターヒトフレームワーク領域に変化するようにマウス可変ドメイン配列をコードする核酸を突然変異させることによるか、または、超可変ドメインの残基が非ヒト残基に変化するようにヒト可変ドメイン配列をコードする核酸を突然変異させることによるか、または、所望の配列をコードする核酸を合成することによるなどによって、作製してもよい。
【0378】
本明細書の実施例においては、超可変領域グラフト改変体は各々の超可変領域に対する別個のオリゴヌクレオチドを用いて、ヒトアクセプター配列をコードする核酸のKunkel突然変異誘発により作成した。Kunkelら、Methods Enzymol.154:367〜382(1987)。適切な変化は適切な超可変領域抗原相互作用を補正して再構築するための日常的な手法を用いてフレームワークおよび/または超可変領域内に導入してもよい。
【0379】
ファージ(ミド)ディスプレイ(本明細書においては一部の観点においてファージディスプレイとも称する)は、配列無作為化により作成されたライブラリー内に多くの異なる潜在的改変体抗体を作成し、かつスクリーニングするための好都合で迅速な方法として使用できる。しかしながら、改変された抗体を作成してスクリーニングするための他の方法も当業者には利用可能である。
【0380】
ファージ(ミド)ディスプレイの技術は抗原のようなリガンドに結合する新規なタンパク質を作成して選択するための強力な手段を提供している。ファージ(ミド)ディスプレイの技術を用いて、高い親和性を有する標的分子に結合する配列を迅速にソーティングしてもよいタンパク質改変体の大型ライブラリーの作成が可能になる。改変体ポリペプチドをコードする核酸は一般的に、遺伝子IIIタンパク質または遺伝子VIIIタンパク質のようなウイルスのコートタンパク質をコードする核酸配列に融合される。タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列が遺伝子IIIタンパク質の一部分をコードする核酸配列に融合されている1価のファージミドディスプレイが開発されている(Bass,S.,Proteins,8:309(1990);Lowman and Wells,Methods:A Companion to Methods in Enzymology,3:205(1991))。1価のファージミドディスプレイ系においては、遺伝子融合は低水準で発現され、そして野生型の遺伝子IIIタンパク質もまた粒子の感染性が保持されるように発現される。ペプチドライブラリーを作成し、そのライブラリーをスクリーニングする方法は、多くの特許において開示されている(例えば米国特許第5,723,286号、米国特許第5,432,018号、米国特許第5,580,717号、例えば米国特許第5,427,908号および米国特許第5,498,530号)。
【0381】
抗体または抗原結合ポリペプチドのライブラリーは、ランダムなDNA配列の挿入によって単一遺伝子を変更することによって、または、関連遺伝子のファミリーのクローニングによって、などの多くの方法において作製されている。ファージ(ミド)ディスプレイを用いて抗体または抗原結合フラグメントを提示するための方法は米国特許第5,750,373号、同第5,733,743号、同第5,837,242号、同第5,969,108号、同第6,172,197号、同第5,580,717号、および同第5,658,727号に記載されている。次いで、所望の特性を有する抗体または抗原結合タンパク質の発現があるか、ライブラリーをスクリーニングする。
【0382】
テンプレート核酸内へ選択されたアミノ酸を置き換える方法は、当該分野で十分確立されており、その一部は本明細書に記載されるとおりである。例えば、超可変領域残基は、Kunkel法を用いて置換してもよい。例えば、Kunkelら、Methods Enzymol.154:367〜382(1987)を参照のこと。
【0383】
オリゴヌクレオチドの配列は、改変すべき超可変領域残基に対して設計されたコドンセット1つ以上を包含する。コドンセットは所望の改変体アミノ酸をコードするために用いられる種々のヌクレオチドの三つ組(トリプレット)配列のセットである。コドンセットは、IUBコードに従って以下に示すとおり、特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの等モル混合物を指定する文字を用いて表示してもよい。
【0384】
IUBコード
G グアニン
A アデニン
T チミン
C シトシン
R(AまたはG)
Y(CまたはT)
M(AまたはC)
K(GまたはT)
S(CまたはG)
W(AまたはT)
H(AまたはCまたはT)
B(CまたはGまたはT)
V(AまたはCまたはG)
D(AまたはGまたはT)H
N(AまたはCまたはGまたはT)。
【0385】
例えば、コドンセットDVKにおいて、DはアヌクレオチドAまたはGまたはTであってもよく;VはAまたはGまたはCであってもよく;そしてKはGまたはTであってもよい。このコドンセットは18種の異なるコドンに相当し得、そしてアミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、Ser、Arg、Asp、Glu、GlyおよびCysをコードし得る。
【0386】
オリゴヌクレオチドまたはプライマーセットは標準的な方法を用いて合成できる。あるセットのオリゴヌクレオチドは、例えば、コドンセットにより与えられる全ての可能な組み合わせのヌクレオチドの三つ組に相当し、アミノ酸の所望のグループをコードする配列を含有する固相合成により合成してもよい。特定の位置において選択されたヌクレオチド「縮重度」を有するオリゴヌクレオチドの合成は当該分野で周知である。特定のコドンセットを有するヌクレオチドのこのようなセットは市販の核酸合成装置(例えばApplied Biosystems,Foster City,CAより入手可能)を用いて合成してもよいし、または、市販品を購入してもよい(例えばLife Technologies,Rockville,MDより入手)。従って、特定のコドンセットを有する合成されたオリゴヌクレオチドのセットは、代表的には異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを包含し、その相違は、全体的配列内のコドンセットにより確立される。オリゴヌクレオチドは、本発明に従って用いる場合は、可変ドメイン核酸テンプレートへのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、そしてクローニング目的のための制限酵素部位を包含してもよい。
【0387】
1つの方法においては、改変体アミノ酸をコードする核酸配列はオリゴヌクレオチド媒介の突然変異誘発により作成できる。この技術はZollerら、Nucleic Acids Res.10:6487〜6504(1987)に記載されているとおり当該分野で周知である。要するに、DNAテンプレートに対して所望のコドンセットをコードするオリゴヌクレオチドセットをハイブリダイズさせることにより、改変体アミノ酸をコードする核酸配列を作成し、ここでは、テンプレートは可変領域核酸テンプレート配列を含有するプラスミドの1本鎖形態である。ハイブリダイゼーションの後、DNAポリメラーゼを用いて、テンプレートの完全な第2の相補鎖を合成し、これがオリゴヌクレオチドプライマーを取り込むことになり、そしてオリゴヌクレオチドセットにより提供されるコドンセットを含有することになる。
【0388】
一般的に、少なくとも25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドを用いる。最適のオリゴヌクレオチドは、突然変異(単数または複数)をコードするヌクレオチド(単数または複数)のいずれか側のテンプレートに完全に相補的である12〜15ヌクレオチドを有する。これによって、オリゴヌクレオチドは1本鎖DNAテンプレート分子に適切にハイブリダイズするようになる。オリゴヌクレオチドは、Creaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:5765(1978)に記載のもののような当該分野で公知の技術を用いて容易に合成される。
【0389】
DNAテンプレートは、バクテリオファージM13ベクター(市販品のM13mp18およびM13mp19ベクターが適している)から誘導されるベクター、または、Vieraら、Meth.Enzymol.,153:3(1987)により記載されている1本鎖ファージの複製起点を含有するベクターにより作製される。従って、突然変異されるべきDNAをこれらのベクターの1つに挿入することにより1本鎖テンプレートを作成してもよい。1本鎖テンプレートの製造は、上記Sambrookら、のセクション4.21〜4.41に記載されている。
【0390】
天然のDNA配列を改変するためには、オリゴヌクレオチドを適切なハイブリダイゼーション条件下で1本鎖テンプレートにハイブリダイズさせる。DNA重合酵素、通常はT7DNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントを次に添加することにより、合成のためのプライマーとしてオリゴヌクレオチドを用いながらテンプレートの相補鎖を合成する。このようにして、DNAの一方の鎖が遺伝子1の突然変異した型をコードし、そして他方の鎖(元のテンプレート)が遺伝子1の天然の未改変の配列をコードするようなヘテロ2本鎖分子が形成される。次にこのヘテロ2本鎖分子を適切な宿主細胞、通常は原核生物、例えばE.coliのJM101内に形質転換する。細胞を成育させた後、それらをアガロースプレートにプレートして、32−ホスフェートで放射標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてスクリーニングすることによって、突然変異したDNAを含有する細菌コロニーを特定する。
【0391】
すぐ上記した方法は、プラスミドの両方の鎖が突然変異(単数または複数)を含有する、ホモ2本鎖分子が形成されるように改変してもよい。この改変は以下のとおり行う:1本鎖オリゴヌクレオチドを上記したとおり1本鎖テンプレートにアニーリングする。3種のデオキシリボヌクレオチド、すなわちデオキシリボアデノシン(dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)およびデオキシリボチミジン(dTT)の混合物をdCTP−(aS)と称される修飾チオデオキシリボシトシン(Amershamから入手可能)と組み合わせる。この混合物をテンプレート−オリゴヌクレオチド複合体に添加する。この混合物にDNAポリメラーゼを添加すると、突然変異した塩基以外はテンプレートと同一のDNA鎖が形成される。さらに、DNAのこの新しい鎖はdCTPの代わりにdCTP−(aS)を含んでおり、このため、制限エンドヌクレアーゼによる消化から保護される。2本鎖のヘテロ二重鎖のテンプレート鎖が適切な制限酵素でニック処理された後、テンプレート鎖をExoIIIヌクレアーゼまたは別の適切なヌクレアーゼにより、突然変異誘発すべき部位(単数または複数)を含む領域を過ぎた部分で消化してもよい。次に反応を停止して一部分だけが1本鎖となった分子を残す。次に4種全てのデオキシリボヌクレオチドトリホスフェート、ATPおよびDNAリガーゼの存在下DNAポリメラーゼを用いて、完全な2本鎖のDNAホモ2本鎖を形成する。このホモ2本鎖分子を次に適切な宿主細胞中に形質転換する。
【0392】
上記したとおり、オリゴヌクレオチドセットの配列はテンプレート核酸にハイブリダイズするために十分な長さのものであり、そしてまた、必須ではないが、制限部位を含んでもよい。DNAテンプレートはバクテリオファージM13ベクターから誘導されるベクター、または、Vieraら、Meth.Enzymol.,153:3(1987)により記載されている1本鎖ファージの複製起点を含有するベクターにより生成され得る。このように、突然変異されるべきDNAをこれらのベクターの1つに挿入することにより1本鎖テンプレートを作成しなければならない。1本鎖テンプレートの製造は、上記Sambrookら、のセクション4.21〜4.41に記載されている。
【0393】
別の方法によれば、抗原結合は、修復された超可変領域の選択を通じて抗体のヒト化の間に復旧され得る(2005年2月18日出願の出願番号11/061,841号を参照のこと)。この方法は、アクセプターフレームワーク上に非ヒト超可変領域を組み込む工程と、さらに、このアクセプターフレームワーク配列を改変することなく1つ以上の超可変領域において1つ以上のアミノ酸置換を導入する工程とを包含する。あるいは、1つ以上のアミノ酸置換の導入は、アクセプターフレームワーク配列における改変によって達成してもよい。
【0394】
別の方法によれば、ライブラリーは、各々のセットが異なる配列のオリゴヌクレオチドの複数を有する、上流および下流のオリゴヌクレオチドセットを与えることにより形成することができ、この異なる配列はオリゴヌクレオチドの配列内に与えられるコドンセットにより確立される。可変ドメインテンプレート核酸配列に沿った上流および下流のオリゴヌクレオチドセットを、ポリメラーゼ連鎖反応において用いることによってPCR産物の「ライブラリー」を形成してもよい。PCR産物は、確立された分子生物学の技術を用いて、他の関連または未関連の核酸配列、例えばウイルスのコートタンパク質および2量体化ドメインとそれらが融合できることから、「核酸カセット」と称してもよい。
【0395】
PCRプライマーの配列は、超可変領域内の溶媒接触可能な高度に多様な位置に対して、設計されたコドンセット1つ以上を包含する。上記したとおり、コドンセットは、所望の変異体アミノ酸をコードするために用いられる異なるヌクレオチドの三つ組配列のセットである。
【0396】
適切なスクリーニング/選択工程を通じて選択された、所望の基準に合致する抗体の選択可能物は、標準的な組み換え手法を用いて単離し、そしてクローニングしてもよい。
【0397】
抗原に対する高い結合親和性および他の望ましい生物学的特性を保持しながら抗体をヒト化させることがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従って、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析のプロセスにより、ヒト化抗体が調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者によく知られているものである。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元高次構造を図示して表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を精査することにより、候補免疫グロブリン配列が機能する際の残基の可能性のある役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基を、レシピエントおよび移入配列から選択して組み合わせることが可能であり、その結果、所望の抗体特性、例えば、標的抗原(単数または複数)に対して増大した親和性が達成される。一般に、超可変領域残基が、抗原結合への影響において、直接、そして最も実質的に関与する。
【0398】
種々の形態のヒト化抗CD79b抗体が想定される。例えば、ヒト化抗体は、抗体フラグメント(例えば、Fab)であってもよく、これは、必要に応じて、イムノコンジュゲートを形成するために1個以上の細胞毒性剤(単数または複数)とコンジュゲートされる。あるいは、ヒト化抗体は、インタクトな抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体であってもよい。
【0399】
ヒト化の代替として、ヒト抗体が作製され得る。例えば、内因性免疫グロブリン産生のない状況下においてヒト抗体の完全なレパートリーを、免疫の際に産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが現在可能である。例えば、キメラマウスおよび生殖細胞系変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(J
H)遺伝子のホモ接合性の欠失は、内因性の抗体産生の完全な抑制をもたらすことが記載されている。ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイをそのような生殖細胞系変異マウスへの移入することは、抗原チャレンジ時のヒト抗体の産生をもたらすことになる。例えば、Jakobovitsら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovitsら、
Nature,362:255〜258(1993);Bruggemannら、
Year in Immuno.7:33(1993);米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,591,669号(全てGenPharm);同第5,545,807号;および国際公開第97/17852号を参照のこと。
【0400】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、
Nature 348:552−553[1990])を用いることにより、免疫されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体およびヒト抗体フラグメントをインビトロで作製してもよい。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を糸状バクテリオファージ、例えば、M13またはfdの主要なまたはマイナーなコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面上の機能的抗体フラグメントとして提示させる。糸状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能的特性に基づいた選択もまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。すなわち、ファージは、B細胞の特性のうちいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、例えば、Johnson,Kevin S.およびChiswell,David J.,
Current Opinion in Structural Biology 3:564〜571(1993)において概説されている種々の形式で実施できる。V遺伝子セグメントのいくつかの起源をファージディスプレイのために用いることができる。Clacksonら、
Nature,352:624〜628(1991)では、免疫したマウスの脾臓から得られたV遺伝子の小型のランダムなコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。免疫されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築することが可能で、そして抗原の多様なアレイ(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marksら、
J.Mol.Biol.222:581〜597(1991)またはGriffithら、
EMBO J.12:725〜734(1993)により記載された技術に本質的に従って単離してもよい。米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号も参照のこと。
【0401】
上記したように、ヒト抗体はまた、インビトロでの活性化されたB細胞により作製され得る(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照のこと)。
【0402】
4.
抗体フラグメント
特定の状況において、抗体全体ではなく、抗体フラグメントを用いることが有利である。より小さいサイズのフラグメントによって、迅速なクリアランスが可能になり、そして固形腫瘍への向上した到達がもたらされ得る。
【0403】
抗体フラグメントの作製のための種々の技術が開発されている。伝統的には、これらのフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解的消化に由来していた(例えば、Morimotoら、
Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107〜117(1992);およびBrennanら、
Science,229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、これらのフラグメントは、現在、組換え宿主細胞により直接作製することができる。Fab、FvおよびScFv抗体フラグメントは全て、E.coliにおいて発現させ、これより分泌させることができ、これにより、大量のこれらのフラグメントを効率的に産生できる。抗体フラグメントは、上記した抗体ファージライブラリーから単離できる。あるいは、Fab’−SHフラグメントを直接、E.coliから回収し、化学的に結合してF(ab’)
2フラグメントを形成することができる(Carterら、
Bio/Technology 10:163−167(1992)。別のアプローチによれば、F(ab’)
2フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離できる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含むインビボ半減期が延長したFabおよびF(ab)
2フラグメントは、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体フラグメントの産生のための他の技術は、当業者に明らかである。他の実施形態では、選択された抗体は、一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号;および米国特許第5,587,458号を参照のこと。FvおよびsFvは、定常領域を欠いたインタクトな複合化部位を有する唯一の種であり;すなわち、それらは、インビボにおける使用の間の低い非特異的結合に適している。sFv融合タンパク質を構築することにより、sFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにエフェクタータンパク質を融合させてよい。
Antibody Engineering,編集、Borrebaeck,前出を参照のこと。抗体フラグメントはまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載の「線状抗体」であってもよい。このような線状抗体フラグメントは、単一特異性であっても、または二重特異性であってもよい。
【0404】
5.
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、本明細書中に記載されるCD79bタンパク質の2つの異なるエピトープに結合することができる。他のそのような抗体は、CD79b結合部位を、別のタンパク質についての結合部位と組み合わせることができる。あるいは、CD79bを発現している細胞に対して細胞性の防御機構を集中させ、かつ局在化させるために、抗CD79bアームを、T細胞レセプター分子のような白血球上の誘引分子(triggering molecule)(例えば、CD3)、またはIgGについてのFcレセプター(FcγR)(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16))に結合するアームと組み合わせてもよい。二重特異性抗体はまた、CD79bを発現する細胞に対して、細胞毒性薬を局在化させるために用いてもよい。これらの抗体は、CD79b結合アームと、細胞毒性剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート、または放射性同位体ハプテン)に結合するアームとを保有している。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製できる。
【0405】
国際公開第96/16673号は、二重特異性抗ErbB2/抗FcγRIII抗体を記載しており、そして米国特許第5,837,234号は、二重特異性抗ErbB2/抗FcγRI抗体を開示している。二重特異性抗ErbB2/Fcα抗体は、国際公開第98/02463号に示されている。米国特許第5,821,377号は、二重特異性抗ErbB2/抗CD3抗体を教示している。
【0406】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である。全長二重特異性抗体の従来の作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいており、その場合、2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millsteinら、
Nature 305:537〜539(1983))。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖のランダムな取合せに起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、そのうちわずか1種のみが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティクロマトグラフィ工程により行われる正しい分子の精製は、かなり面倒であり、そして生成物収率は低い。同様の手順が国際公開第93/08829号およびTrauneckerら、
EMBO J,10:3655〜3659(1991)に開示されている。
【0407】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体抗原複合化部位)を、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合させる。好ましくは、融合は、少なくとも一部のヒンジ、C
H2およびC
H3領域を含んでいるIg重鎖定常ドメインと行う。融合物の少なくとも1つにおいて存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(C
H1)を有することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、および所望であれば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し安定な宿主細胞に同時トランスフェクトする。これにより、構築において用いられる3種のポリペプチド鎖の等しくない比率が、所望の二重特異性抗体の最適な収率をもたらす場合、その3種のポリペプチドフラグメントの相互の割合を調節する際に広範な柔軟性がもたらされる。しかしながら、等しい比率における少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合、または比率が所望の鎖の組み合わせの収率に有意に影響しない場合は、単一の発現ベクター内に2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖に関するコード配列を挿入することが可能である。
【0408】
このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにおいて第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにおいてハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)から構成される。この非対称の構造は、二重特異性分子の片方にのみ免疫グロブリン軽鎖が存在することにより、分離の効率的方法が提供されるため、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせから所望の二重特異性化合物を分離することを容易にすることが見出された。このアプローチは、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の作製のさらに詳細な説明は、例えば、Sureshら、
Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと。
【0409】
米国特許第5,731,168号に記載の別のアプローチによれば、抗体分子対の間の境界面を操作することにより、組換え細胞培養から回収されるヘテロ2量体の割合を最大限にすることができる。好ましい界面は、C
H3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の界面に由来する1つ以上の小型アミノ酸側鎖をより大きい鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換える。大型の側鎖(単数または複数)と同一または同様のサイズの代償的な「空洞」が、大型のアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはスレオニン)と置き換えることによって、第2の抗体分子の界面上に形成される。これによって、ホモ2量体などの他の望ましくない最終生成物よりもヘテロ2量体の収率を増大させるための機序が提供される。
【0410】
二重特異性抗体としては、架橋結合された抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体が挙げられる。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方をアビジンに、そして他方をビオチンに結合することができる。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に免疫系細胞を標的するため(米国特許第4,676,980号)およびHIV感染の処置のため(国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373および欧州特許第03089号)に提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋結合法を用いて作製され得る。適切な架橋結合剤は、当該分野で周知であり、そして多くの架橋結合の技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0411】
抗体フラグメントから二重特異性抗体を作製するための技術もまた、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、キメラ連結を用いて調製できる。Brennanら、
Science 229:81(1985)は、インタクトな抗体をタンパク質分解的に切断してF(ab’)
2フラグメントを作製する手順を記載している。これらのフラグメントをジチオール錯化剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元することにより、隣接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィドの形成を妨害する。次に、形成されたFab’フラグメントをチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次に、Fab’−TNB誘導体の1つを、メルカプトエチルアミンで還元することによりFab’−チオールに再変換して、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合することにより、二重特異性抗体を形成する。生成した二重特異性抗体を、酵素の選択的固定化のための薬剤として用いてもよい。
【0412】
最近の進歩により、化学的に結合することにより二重特異性抗体を形成することができる、E.coliからのFab’−SHフラグメントの直接の回収が容易になっている。Shalabyら、
J.Exp.Med.175:217〜225(1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)
2分子の作製を記載している。各々のFab’フラグメントを別個にE.coliから分泌させ、インビトロの指向性化学カップリングに供することにより、二重特異性抗体を作製した。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞および正常なヒトT細胞に結合することが可能で、同様にヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性をトリガーすることも可能であった。
【0413】
組換え細胞培養物から直接、二重特異性抗体フラグメントを作製して単離する種々の技術も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている。Kostelnyら、
J.Immunol.148(5):1547〜1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により2種の異なる抗体のFab’部分に連結した。その抗体のホモ2量体を、ヒンジ領域で還元することによりモノマーを形成し、次に、再び酸化して抗体ヘテロ2量体を形成させた。この方法はまた、抗体ホモ2量体の産生にも利用できる。Hollingerら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444〜6448(1993)に記載の「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための代替的な機序を提供している。そのフラグメントは、同じ鎖の2ドメイン間の対形成を可能とするには短すぎるリンカーによってV
Lに接続されたV
Hを含む。従って、1つのフラグメントのV
HドメインおよびV
Lドメインが別のフラグメントの相補的なV
LドメインおよびV
Hドメインに強制的に対形成させられ、これにより2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)2量体の使用による二重特異性抗体フラグメントを作製するための別のストラテジーも報告されている。Gruberら、
J.Immunol.,152:5368(1994)を参照のこと。
【0414】
2価より多価の抗体も企図される。例えば、3重特異性抗体が作製され得る。Tuttら、
J.Immunol.147:60(1991)。
【0415】
6.
ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内に含まれる。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体から構成される。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に免疫系細胞を標的するため[米国特許第4,676,980号]およびHIV感染の処置のため[国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号および欧州特許第03089号]に提案されている。この抗体は、架橋結合剤に関与する方法を包含する合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製可能であると考えられる。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合の形成によって構築され得る。この目的に適切な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデートならびに、例えば、米国特許第4,676,980号に開示されている試薬が挙げられる。
【0416】
7.
多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、2価抗体より急速に内部移行(および/または異化)され得る。本発明の抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外である)(例えば、4価抗体)であってもよく、その抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に作製できる。多価抗体は、二量体化ドメインおよび3つ以上の抗原結合部位を含んでもよい。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはそれからなる)。このシナリオにおいて、その抗体は、Fc領域、およびFc領域に対してアミノ末端側に3つ以上の抗原結合部位を含む。好ましい多価抗体は、本明細書中で3個〜約8個、好ましくは、4個の抗原結合部位を含む(またはそれからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(および好ましくは、2つのポリペプチド鎖)を含み、ここでそのポリペプチド鎖(単数または複数)は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、そのポリペプチド鎖(単数または複数)は、VD1−(X1)
n−VD2−(X2)
n−Fcを含み得、この式中、VD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1およびX2はアミノ酸またはポリペプチドに相当しており、かつnは、0または1である。例えば、そのポリペプチド鎖(単数または複数)は、VH−CH1−柔軟なリンカー−VH−CH1−Fc領域鎖;またはVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含む場合がある。本明細書中の多価抗体は、好ましくは、さらに少なくとも2つ(および好ましくは、4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含む。本明細書中の多価抗体は、例えば、約2個〜約8個の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでもよい。本明細書において企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、そして必要に応じて、さらにCLドメインを含む。
【0417】
8.
エフェクター機能の操作
例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を改変することが望ましい場合がある。これは、1つ以上アミノ酸置換を抗体のFc領域に導入することにより達成され得る。代替または追加として、システイン残基(単数または複数)をFc領域に導入してもよく、これによってこの領域における鎖間のジスルフィド結合の形成が可能となり得る。このように作製されたホモ2量体抗体は、向上した内部移行能力ならびに/または増大した補体媒介性の細胞の殺滅および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有し得る。Caronら、
J.Exp.Med.,176:1191〜1195(1992)およびShopes,B.
J.Immunol.148:2918〜2922(1992)を参照のこと。増強された抗腫瘍活性を有するホモ2量体抗体はまた、Wolffら、
Cancer Research 53:2560〜2565(1993)に記載されているように、ヘテロ2官能性架橋リンカーを用いて調製され得る。あるいは、二重のFc領域を有しており、それによって増強された補体溶解およびADCC能力を有し得る抗体を作製することもできる。Stevensonら、
Anti−Cancer Drug Design 3:219〜230(1989)を参照のこと。その抗体の血清中半減期を延長するために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されるように抗体(特に抗体フラグメント)中にサルベージレセプター結合エピトープを取り込んでよい。本明細書中で使用される場合、「サルベージレセプター結合エピトープ」という用語は、IgG分子(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3およびIgG
4)のインビボの血清中半減期を延長する原因となるIgG分子のFc領域のエピトープのことをいう。
【0418】
9.
イムノコンジュゲート
本発明はまた、細胞毒性剤、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素またはそのフラグメント)または放射性同位体(すなわち、ラジオコンジュゲート)にコンジュゲートされた抗体を含むイムノコンジュゲート(交換可能に「抗体−薬物コンジュゲート」または「ADC」と呼ばれる)に関する。
【0419】
特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、抗体および化学療法剤または他の毒素を含む。このようなイムノコンジュゲートの作製に有用な化学療法剤は、上記されている。使用され得る酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン(sarcin)、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、momordica charantiaのインヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、sapaonaria officinalisのインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテシン(tricothecene)が挙げられる。種々の放射性核種が、放射性結合体化抗体の作製のために使用できる。例としては、
212Bi、
131I、
131In、
90Yおよび
186Reが挙げられる。抗体と細胞毒性剤とのコンジュゲートは、種々の2官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、
Science,
238:1098(1987)に記載されているように調製され得る。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026を参照のこと。
【0420】
抗体および1つ以上の低分子毒素、例えば、カリケアマイシン、アウリスタチンペプチド、例えば、モノメチルアウリスタチン(MMAE)(ドラスタチンの合成アナログ)、メイタンシノイド、例えばDM1、トリコテン(trichothen)およびCC1065、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体のコンジュゲートもまた本明細書中で企図される。
【0421】
例示的なイムノコンジュゲート−抗体−薬物コンジュゲート
本発明のイムノコンジュゲート(または「抗体−薬物コンジュゲート」(「ADC」))は、以下の式Iのものであり、任意のリンカー(L)を通じて、1つ以上の薬物部分(D)に抗体がコンジュゲート(すなわち共有結合)しているものである。ADCはチオMAb薬物コンジュゲート(「TDC」)を含んでもよい。
【0422】
【化2】
従って、抗体は直接またはリンカーを介して薬物にコンジュゲートされてもよい。式Iでは、pは抗体あたりの薬物部分の平均数であり、例えば1抗体あたり、約1〜約20の薬物部分、ある実施形態では、1抗体あたり1〜約8の薬物部分の範囲であってもよい。本発明は、式Iの抗体−薬物化合物の混合物を含んでいる組成物を包含し、ここでこの1抗体あたりの平均の薬物ローディングは、約2〜約5、または約3〜約4である。
【0423】
a.例示的なリンカー
リンカーは、1つ以上のリンカー成分を含んでもよい。例示的なリンカー成分としては、6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」または「vc」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、ならびに以下のリンカー試薬:N−スクシンイミジル4(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(「SMCC」これは、本明細書では「MCC」とも呼ばれる)、およびN−スクシンイミジル(4−イオド−アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)とのコンジュゲーションから生じるものが挙げられる。種々のリンカー成分が当該分野で公知であり、そのいくつかを以下に記載する。
【0424】
リンカーは、細胞内での薬剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸に弱いリンカー(例えばヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えばペプチダーゼ感受性)リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chariら、Cancer Research 52:127〜131(1992);米国特許第5208020号)を用いてもよい。
【0425】
特定の実施形態では、リンカーは以下の式II:
【0426】
【化3】
に従って示されるとおりであり、式中Aは、ストレッチャーユニットであり、aは0〜1の整数であり;Wはアミノ酸単位であり、wは0〜12の整数であり;Yはスペーサーユニットであり、かつyは0、1または2であり;そして、Ab、Dおよびpは、式Iに関して上記に定義される。このようなリンカーの例示的な実施形態は、米国特許出願公開第2005−0238649号A1に記載されており、これは出典明記によって本明細書中に明確に援用される。
【0427】
いくつかの実施形態では、リンカーは、抗体を別のリンカー成分または薬物部分に連結する「ストレッチャーユニット」を含んでもよい。例示的なストレッチャーユニットを以下に示す(波線は抗体への共有結合の部位を示す):
【0428】
【化4】
いくつかの実施形態では、リンカー成分は、アミノ酸ユニットを含み得る。そのような実施形態の1つでは、アミノ酸ユニットにより、プロテアーゼによるリンカーの切断が可能となり、それによってリソソーム酵素などの細胞内プロテアーゼへの曝露によってイムノコンジュゲートからの薬物放出が促される。例えば、Doroninaら.,(2003)Nat.Biotechnol.21:778−784を参照のこと。例示的なアミノ酸単位としては、限定するものではないが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドが挙げられる。例示的なジペプチドとしては、バリン−シトルリン(vcまたはval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(afまたはala−phe);フェニルアラニン−リジン(fkまたはphe−lys);またはN−メチル−バリン−シトルリン(Me−val−cit)が挙げられる。例示的なトリペプチドとしては、グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)およびグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)が挙げられる。アミノ酸単位は、天然に存在するアミノ酸残基、ならびに微量のアミノ酸および天然には存在しないアミノ酸アナログ、例えばシトルリンを含んでもよい。アミノ酸ユニットは設計され、特に酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、CおよびDまたはプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性に最適化できる。
【0429】
いくつかの実施形態では、リンカー成分は、直接、あるいはストレッチャーユニットおよび/またはアミノ酸ユニットにより、抗体を薬物部分に連結する「スペーサー」ユニットを含んでもよい。スペーサーユニットは、「自己犠牲」または「非自己犠牲」であってもよい。「非自己犠牲」のスペーサーユニットは、ADCの酵素的な(例えばタンパク質分解性の)切断によりスペーサーユニットの一部または全てが薬物部分に結合したままとなっているユニットである。非自己犠牲のスペーサーユニットの例としては、限定するものではないが、グリシンスペーサーユニットおよびグリシン−グリシンスペーサーユニットが挙げられる。また、配列特異的な酵素的切断の影響を受けるペプチド性スペーサーの他の組合せも考慮される。例えば、グリシン−グリシンスペーサーユニットを含有するADCの腫瘍細胞関連のプロテアーゼによる酵素切断によって、残りのADCからグリシン−グリシン−薬物部分が放出されるであろう。そのような実施形態では、グリシン−グリシン−薬物部分は、腫瘍細胞の異なる加水分解処理を受け、それによってグリシン−グリシンスペーサーユニットが薬物部分から分離される。
【0430】
「自己犠牲」のスペーサーユニットは、別の加水分解工程を経ずに薬物部分を放出することを可能にする。特定の実施形態では、リンカーのスペーサーユニットは、p−アミノベンジルユニットを含む。このような実施形態では、p−アミノベンジルアルコールは、アミド結合によりアミノ酸ユニットに結合し、カルバメート、メチルカルバメートまたはカルボネートが、ベンジルアルコールと細胞毒性剤との間に作られる。例えば、Hamannら、(2005)Expert Opin.Ther.Patents(2005)15:1087〜1103を参照のこと。一実施形態では、スペーサーユニットは、p−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)である。ある実施形態では、p−アミノベンジルユニットのフェニレン部分はQmに置き換えられ、このQは−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロ、または−シアノであり;そしてmは0〜4の範囲の整数である。さらに、自己犠牲のスペーサーユニットの例としては、限定するものではないが、p−アミノベンジルアルコールに電子工学的に類似している芳香族化合物(例えば、米国特許公開第2005/0256030号A1を参照のこと)、例えば2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(Hayら、(1999)Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2237)およびオルソ−もしくはパラ−アミノベンジルアセタール類が挙げられる。アミド結合加水分解により環化されるスペーサー、例えば、置換されたおよび非置換の4−アミノ酪酸アミド類(Rodriguesら、Chemistry Biology,1995,2,223);適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm,ら、J.Amer.Chem.Soc.,1972,94,5815);および、2−アミノフェニルプロピオン酸アミド類(Amsberry,ら、J.Org.Chem.,1990,55,5867)が用いられてもよい。グリシンのa−位置で置換されているアミン含有薬剤の除去(Kingsbury,ら、J.Med.Chem.,1984,27,1447)もまたADCに有用な自己犠牲のスペーサーの例である。
【0431】
一実施形態では、以下に示すようなスペーサーユニットは分岐したビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)ユニットであり、これを用いて複数の薬剤の取り込みと放出が行われ得る。
【0432】
【化5】
ここで、Qは−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロ、または−シアノであり;mは0〜4の範囲の整数であり、nは0または1であり、そして、pは1〜約20の範囲である。
【0433】
別の実施形態では、リンカーLは、分岐した多機能性リンカー部分を通じて、2つ以上の薬物部分を抗体へ共有結合させるための樹状型リンカーであってもよい(Sunら(2002)Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213〜2215;Sunら(2003)Bioorganic &
Medicinal Chemistry 11:1761〜1768)。樹状のリンカーは抗体に対する薬剤のモル比、すなわちローディングを増大することができ、これはADCの力価に関連がある。従って、システイン操作された抗体が1つの反応性のシステインチオール基のみを有する場合、多くの薬物部分が樹状のリンカーを介して結合され得る。
【0434】
例示的なリンカー成分およびその組合せは、式IIのADCの状況では以下に示される:
【0436】
【化7】
ストレッチャー、スペーサーおよびアミノ酸ユニットを含んでいるリンカー成分は、例えば米国特許公開第2005−0238649号A1に記載の方法など、当該分野で公知の方法によって合成され得る。
【0437】
b.例示的な薬物部分
(1)メイタンシンおよびメイタンシノイド
いくつかの実施形態では、イムノコンジュゲートは1つ以上のメイタンシノイド分子とコンジュゲートしている抗体を含む。メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂インヒビターである。メイタンシンは、最初、東アフリカのシラブ(低木)Maytenus serrataから単離された(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノールおよびC−3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノールならびにその誘導体およびアナログは、例えば米国特許第4,137,230号;同第4,248,870号;同第4,256,746号;同第4,260,608号;同第4,265,814号;同第4,294,757号;同第4,307,016号;同第4,308,268号;同第4,308,269号;同第4,309,428号;同第4,313,946号;同第4,315,929号;同第4,317,821号;同第4,322,348号;同第4,331,598号;同第4,361,650号;同第4,364,866号;同第4,424,219号;同第4,450,254号;同第4,362,663号;および同第4,371,533号に開示されている。
【0438】
メイタンシノイド薬物部分は、(i)発酵または発酵産物の化学修飾もしくは誘導体化によって調製するために相対的に利用可能であり(ii)抗体に対するジスルフィドリンカーおよび非ジスルフィドリンカーによるコンジュゲーションに適切な官能基による誘導体化を受けやすく、(iii)血漿中で安定であり、そして(iv)種々の腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体−薬物コンジュゲートの魅力的な薬物部分である。
【0439】
メイタンシノイド薬物部分としての使用に適切なメイタンシン化合物は当該分野で周知であり、公知の方法に従って天然の供給源から単離してもよいし、または遺伝子工学技術および発酵技術を用いて産生してもよい(米国特許第6790952号;米国特許第出願公開第2005/0170475号;Yuら(2002)PNAS 99:7968〜7973)。マイタンシノールおよびマイタンシノールアナログはまた、公知の方法に従って合成して調製されてもよい。
【0440】
例示的なメイタンシノイド薬物部分としては、以下のような修飾された芳香族環を有する薬物部分が挙げられる:C−19−デクロロ(米国特許第4256746号)(アンサマイトシン(ansamytocin)P2の水素化アルミニウムリチウムによる還元で調製した);C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4361650号および同第4307016号)(StreptomycesもしくはActinomycesを用いる脱メチル化、またはLAHを用いる脱塩素によって調製);およびC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いるアシル化によって調製した)、ならびに他の位置で修飾を有する薬物部分。
【0441】
例示的なメイタンシノイド薬物部分としてはまた、以下のような修飾を有する薬物部分が挙げられる:C−9−SH(米国特許第4424219号)(H
2SまたはP
2S
5とのメイタンシノールの反応によって調製);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH
2OR)(米国特許第4331598号);C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH
2OHまたはCH
2OAc)(米国特許第4450254号)(Nocardiaから調製した);C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4364866号)(Streptomycesによるメイタンシノールの変換によって調製した);C−15−メトキシ(米国特許第4313946および4315929)(Trewia nudlfloraから単離した);C−18−N−デメチル(米国特許第4362663号および同第4322348号)(Streptomycesによるマイタンシノールの脱メチル化によって調製した);および4,5−デオキシ(米国特許第4371533号)(マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元によって調製した)。
【0442】
マイタンシン化合物上の多くの位置は、連結のタイプに依存して、連結位置として有用であることが公知である。例えば、エステル連結を形成することによって、ヒドロキシル基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位置、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位置、およびヒドロキシル基を有しているC−20位置は全て適切である(米国特許第5208020号;米国再発行特許第39151号;米国特許第6913748号;米国特許第7368565号;米国特許出願公開第2006/0167245号;米国特許出願公開第2007/0037972号)。
【0443】
メイタンシノイド薬物部分としては、以下の構造:
【0444】
【化8】
を有する薬物部分が挙げられ、
式中、波線は、ADCのリンカーへの、メイタンシノイド薬物部分のイオウ原子の共有結合を示す。Rは、独立して、HもしくはC
1−C
6アルキルであってもよい。このイオウ原子へアミド基を結合するアルキレン鎖は、メタニル(methanyl)、エタニル(ethanyl)、またはプロピルであってもよい(すなわち、mは、1、2、もしくは3である)(米国特許第633410号、同第5208020号、米国特許第7276497号;Chariら、(1992)Cancer Res.52:127〜131;Liuら,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci 93:8618〜8623)。
【0445】
メイタンシノイド薬物部分の全ての立体異性体(すなわち、Dのキラル炭素におけるR配置とS配置との任意の組み合わせ)が、本発明の化合物について企図される。一実施形態において、上記メイタンシノイド薬物部分は、以下の立体配置を有する:
【0446】
【化9】
メイタンシノイド薬物部分の例示的な実施形態としては、以下の構造を有する、DM1;DM3およびDM4:
【0448】
【化11】
が挙げられ、式中、波線は、抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)の薬物のイオウ原子の共有結合を示している(国際公開第2005/037992号;米国特許出願公開第2005/0276812号A1)。
【0449】
メイタンシノイド抗体−薬物コンジュゲートの他の例は、以下の構造および略号を有する、(ここでAbは抗体であり、pは1〜約8である):
【0451】
【化13】
抗体のチオール基に対してBMPEOリンカーを通じてDM1が連結されている例示的な抗体−薬物コンジュゲートは以下の構造および略号を有しており:
【0452】
【化14】
式中、Abは抗体であり;nは0、1、または2であり;かつpは1、2、3または4である。
【0453】
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、これを作製する方法、およびそれらの治療用途は、例えば、Erickson,ら(2006)Cancer Res.66(8):4426〜4433;米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、米国特許出願公開第2005/0276812号A1、および欧州特許第0425235号B1(その開示が出典明記によって本明細書に明示的に援用される)に開示されている。
【0454】
抗体−メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体またはメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性も優位に低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5,208,020号(この開示内容は出典明記によって本明細書に明示的に援用される)を参照のこと。メイタンシノイドは、公知の技術で合成してもよいし、天然の供給源から単離してもよい。適切なメイタンシノイド、例えば、種々のマイタンシノールエステルなどのマイタンシノール分子の芳香族環または他の位置で修飾されたマイタンシノールおよびマイタンシノールアナログなどが、例えば、米国特許第5,208,020号に、ならびに他の特許および上述の特許以外の刊行物に開示されている。
【0455】
例えば、米国特許第5208020号または欧州特許第0425235号B1;Chariら、Cancer Research,52:127〜131(1992)、および米国特許出願公開第2005/016993号A1(これらの開示内容は出典明記によって本明細書に明示的に援用される)に開示されているものなどを含む、抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体−メイタンシノイドコンジュゲートは、米国特許出願公開第2005/0276812号A1,「Antibody−drug conjugates and Methods.」に開示されるように調製されてもよい。このリンカーは、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、またはエステラーゼ不安定性基を含む。さらなるリンカーを本願明細書中に記載し、例示する。
【0456】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、および二活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製することができる。特定の実施形態では、カップリング剤は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlssonら、Biochem.J.173:723〜737(1978))またはN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)であって、ジスルフィド結合が得られる。
【0457】
リンカーは、結合の種類に応じて種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を用いてヒドロキシル基と反応させることにより、エステル結合を形成することができる。この反応はヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位、およびヒドロキシル基を有するC−20位で生じ得る。一実施形態では、結合はメイタンシノールまたはメイタンシノールのアナログのC−3位で形成される。
【0458】
(2)アウリスタチン類およびドラスタチン類
いくつかの実施形態では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチンまたはドロスタチンペプチド性アナログもしくは誘導体、例えば、アウリスタチン(auristatin)(米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした抗体を含む。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解および核と細胞の分割を妨げ(Woykeら、(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580〜3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)および抗真菌性活性(Pettitら(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961〜2965)を有することが示されている。ドラスタチンまたはアウリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端により抗体に接着し得る(国際公開第02/088172号)。
【0459】
例示的なアウリスタチンの実施形態としては、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDFが挙げられる(2004年3月28日に公開されたSenterら、Proceedings of the American Association
for Cancer Research,Volume 45,Abstract Number 623に開示される、米国特許出願公開第2005/0238649号であって、その開示内容は出典明記によってその全体が明示的に援用される)。
【0460】
ペプチド性薬物部分は以下の式D
EおよびD
F:
【0461】
【化15】
から選択され得、この式中、D
EおよびD
Fの波線は、抗体または抗体−リンカー成分への共有結合部位を、独立して各々の位置で示す:
R
2は、HおよびC
1−C
8アルキルから選択され;
R
3は、H、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環式化合物、アリール、C
1−C
8アルキル−アリール、C
1−C
8アルキル−(C
3−C
8炭素環式化合物)、C
3−C
8複素環およびC
1−C
8アルキル−(C
3−C
8複素環)から選択され;
R
4は、H、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環式化合物、アリール、C
1−C
8アルキル−アリール、C
1−C
8アルキル−(C
3−C
8炭素環式化合物)、C
3−C
8複素環およびC
1−C
8アルキル−(C
3−C
8複素環)から選択され;
R
5は、Hおよびメチルから選択され;
またはR
4およびR
5は一緒になって環状炭素を形成し、かつ式−(CR
aR
b)
n−を有しており、式中R
aおよびR
bが独立してH、C
1−C
8アルキルおよびC
3−C
8炭素環から選択され、nが2、3、4、5および6から選択され;
R
6は、HおよびC
1−C
8アルキルから選択され;
R
7は、H、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環、アリール、C
1−C
8アルキル−アリール、C
1−C
8アルキル−(C
3−C
8炭素環)、C
3−C
8複素環およびC
1−C
8アルキル−(C
3−C
8複素環)から選択され;
各々のR
8は独立して、H、OH、C
1−C
8アルキル、C
3−C
8炭素環およびO−(C
1−C
8アルキル)から選択され;
R
9は、HおよびC
1−C
8アルキルから選択され;
R
10は、アリールまたはC
3−C
8複素環から選択され;
ZはO、S、NH、またはNR
12であり、R
12がC
1−C
8アルキルであり;
R
11は、H、C
1−C
20アルキル、アリール、C
3−C
8複素環、−(R
13O)
m−R
14、または−(R
13O)
m−CH(R
15)
2から選択され;
mは、1〜1000の範囲の整数であり;
R
13はC
2−C
8アルキルであり;
R
14は、HまたはC
1−C
8アルキルであり;
各々のR
15の出現は、独立してH、COOH、−(CH
2)
n−N(R
16)
2、−(CH2)
n−SO
3H、または−(CH
2)
n−SO
3−C
1−C
8アルキルであり;各々のR
16の出現は、独立してH、C
1−C
8アルキル、または−(CH
2)
n−COOHであり;
R
18は、−C(R
8)
2−C(R
8)
2−アリール、−C(R
8)
2−C(R
8)
2(C
3−C
8複素環)、および−C(R
8)
2−C(R
8)
2(C
3−C
8炭素環)から選択され;かつ、
nは0から6の範囲の整数である。
【0462】
一実施形態では、R
3、R
4およびR
7は、独立してイソプロピルまたはsec−ブチルであり、かつR
5は−Hまたはメチルである。ある例示的な実施形態では、R
3およびR
4は各々イソプロピルであり、R
5は−Hであり、かつR
7はsec−ブチルである。
【0463】
さらに別の実施形態では、R
2およびR
6は各々メチルであり、R
9は−Hである。
【0464】
さらに別の実施形態では、各々のR
8の出現は−OCH
3である。
【0465】
例示的な実施形態では、R
3およびR
4は各々がイソプロピルであり、R
2およびR
6は各々がメチルであり、R
5は−Hであり、R
7はsec−ブチルであり、各々のR
8の出現は−OCH
3であり、かつR
9は−Hである。
【0466】
一実施形態では、Zは−O−または−NH−である。
【0467】
一実施形態では、R
10はアリールである。
【0468】
ある例示的な実施形態では、R
10は−フェニルである。
【0469】
ある例示的な実施形態では、Zが−O−の場合、R
11は−H、メチルまたはt−ブチルである。
【0470】
一実施形態では、Zが−NHである場合に、R
11は−CH(R
15)
2であり、式中R
15は−(CH
2)
n−N(R
16)
2であり、かつR
16は−C
1−C
8アルキルまたは−(CH
2)
n−COOHである。
【0471】
別の実施形態では、Zが−NHである場合に、R
11は−CH(R
15)
2であり、式中、R
15は−(CH
2)
n−SO
3Hである。
【0472】
式D
Eの例示的なアウリスタチンの実施形態はMMAEであり、ここで、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す:
【0473】
【化16】
式D
Fの例示的なアウリスタチンの実施形態はMMAFであり、式中、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す(米国特許公開第2005/0238649号およびDoroninaら(2006)Bioconjugate Chem.17:114〜124を参照のこと):
【0474】
【化17】
他の例示的な実施形態としては、ペンタペプチドアウリスタチン薬物部分のC末端にフェニルアラニンカルボキシ修飾を有しているモノメチルバリン化合物(国際公開第2007/008848号)、およびペンタペプチドアウリスタチン薬物部分のC末端にフェニルアラニン側鎖修飾を有しているモノメチルバリン化合物(国際公開第2007/008603号)が挙げられる。
【0475】
他の薬物部分としては以下のMMAF誘導体が挙げられ、ここで、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す:
【0477】
【化19】
一局面では、限定するものではないが、上記のようなトリエチレングリコールエステル(TEG)を含む親水基はR
11で薬物部分に結合することができる。ある特定の理論に縛られるものではないが、親水基は薬物部分の内在化および非凝集を補助する。
【0478】
アウリスタチン/ドラスタチンまたはその誘導体を含んでいる式IのADCの例示的な実施形態は、米国特許出願公開第2005−0238649号およびDoroninaら、(2006)Bioconjugate Chem.17:114〜124に記載されており、これは出典明記によって本明細書に明確に援用される。MMAEまたはMMAFと種々のリンカー成分を含んでいる式IのADCの例示的な実施形態は、以下の構造および略記号を有する(ここで、「Ab」は抗体であり、pは1〜約8であり、「Val−Cit」または「vc」はバリン−シトルリンジペプチドであり;そして「S」はイオウ原子である。本明細書のイオウ連結ADCの構造的な特定の説明では、この抗体は、単にイオウ連結の特徴を示すために「Ab−S」として表わされており、特定のイオウ原子が複数のリンカー−薬物部分を保有することを示すものではない。以下の構造の左のカッコはまた、AbとSとの間に、イオウ原子の左側においてもよく、これは、本明細書全体にわたって記載されている本発明のADCの等しい説明である。
【0479】
【化20】
MMAFと種々のリンカー成分とを含んでいる式IのADCの例示的な実施形態としてはさらに、Ab−MC−PAB−MMAFおよびAb−PAB−MMAFが挙げられる。興味深いことに、タンパク質分解性の切断を受けないリンカーによって抗体に結合しているMMAFを含んでいるイムノコンジュゲートは、タンパク質分解で切断可能なリンカーによって抗体に結合しているMMAFを含んでいるイムノコンジュゲートに匹敵する活性を有することが示されている。Doroninaら、(2006)Bioconjugate Chem.17:114〜124を参照のこと。このような場合、薬剤放出は、細胞内の抗体分解に影響を受けると考えられる(同上)。
【0480】
代表的には、ペプチドベースの薬物部分は、2以上のアミノ酸および/またはペプチドフラグメント間でペプチド結合を形成することによって調製され得る。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知である液相合成方法に従って調製することができる(E.SchroderおよびK.Lubke,「The Peptides」第1巻,76〜136頁,1965,Academic Pressを参照のこと)。アウリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、米国特許公開第2005−0238649号A1;米国特許第5635483号;米国特許第5780588号;Pettitら、(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463〜5465;Pettitら、(1998)Anti−Cancer Drug Design 13:243〜277;Pettit,G.R.,ら、Synthesis,1996,719〜725;Pettitら、(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859〜863;およびDoronina (2003)Nat.Biotechnol.21(7):778〜784の方法に従って調製され得る。
【0481】
詳細には、式D
Fのアウリスタチン/ドラスタチン薬物部分、例えばMMAFおよびその誘導体は、米国特許出願公開第2005−0238649号A1およびDoroninaら、(2006)Bioconjugate Chem.17:114〜124に記載の方法を用いて調製され得る。式D
Eのアウリスタチン/ドラスタチン薬物部分、例えばMMAEおよびその誘導体は、Doroninaら、(2003)Nat.Biotech.21:778〜784に記載の方法を用いて調製され得る。薬物−リンカー部分であるMC−MMAF、MC−MMAE、MC−vc−PAB−MMAF、およびMC−vc−PAB−MMAEは、例えばDoroninaら、(2003)Nat.Biotech.21:778〜784、および米国特許公開第2005/0238649号A1に記載のような慣用的な方法によって都合よく合成され、次いで、目的の抗体にコンジュゲートされてもよい。
【0482】
(3)カリケアマイシン
他の実施形態では、イムノコンジュゲートは、1つ以上のカリケアマイシン分子とコンジュゲートされた抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、サブ−ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、同第5,877,296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造アナログとしては、限定するものではないが、γ
1I、α
2I、α
3I、N−アセチル−γ1
I、PSAGおよびθ
I1が挙げられる(Hinmanら、Cancer Research,53:3336〜3342(1993)、Lodeら、Cancer Research,58:2925〜2928(1998)および上述したAmerican Cyanamidの米国特許)。抗体がコンジュゲート可能な別の抗腫瘍薬物は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシンおよびQFAは双方共に、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。従って、抗体媒介性の内部移行によるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞傷害性の効果が大きく増強される。
【0483】
c.他の細胞毒性剤
抗体にコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤としては、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチンおよび5−フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号、同第5,770,710号に記載されているLL−E33288複合体として集合的に公知の薬剤のファミリー、ならびにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5,877,296号)が挙げられる。
【0484】
使用可能な酵素活性毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン(sarcin)、Aleurites fordiiのタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaのタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、momordica charantiaのインヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、sapaonaria
officinalisのインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコセセンス(tricothecenes)が挙げられる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
【0485】
本発明はさらに、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートを企図する。
【0486】
特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは高い放射性を有する原子を含んでもよい。放射性コンジュゲートした抗体を作製するためには、種々の放射性同位体が利用される。例としては、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212およびLuの放射性同位体が挙げられる。イムノコンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc
99mまたはI
123、または核磁気共鳴(NMR)画像(磁気共鳴画像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含んでもよい。
【0487】
放射−または他の標識が、公知の方法でイムノコンジュゲートに導入され得る。例えば、ペプチドは生合成されてもよいし、または、例えば、水素の代わりにフッ素−19を含む適切なアミノ酸前駆体を用いる化学的なアミノ酸合成により合成されてもよい。標識、例えばtc
99mまたはI
123、Re
186、Re
188およびIn
111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム−90は、リジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Frakerら(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49〜57)は、ヨウ素−123の導入に用いることができる。他の方法は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal,CRC Press 1989)に詳細に記載されている。
【0488】
特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開81/01145を参照のこと)を抗癌剤などの活性な薬物へ変換するプロドラッグ活性化酵素へコンジュゲートされた抗体を含んでもよい。このようなイムノコンジュゲートは、抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ療法(「ADEPT」)に有用である。抗体にコンジュゲートされ得る酵素としては、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5−フルオロシトシンを抗癌剤5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なプロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL);D−アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの変換に有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離の薬物に変換するのに有用な炭水化物切断酵素、例えば、β−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;β−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離の薬物に変換させるのに有用なβ−ラクタマーゼ;およびペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬物を遊離の薬剤に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼが挙げられる。酵素は当該分野で周知の組み換えDNA技術によって抗体に共有結合されてもよい。例えば、Neubergerら、,Nature 312:604〜608(1984)を参照のこと。
【0489】
d.薬物ローディング(Drug Loading)
薬物ローディングは、式Iの分子において、1抗体あたりの薬物部分の平均数であるpによって表される。薬物ローディングは1抗体あたり1〜20個の薬物部分(D)の範囲であってもよい。式IのADCは、1から20個の薬物部分の範囲でコンジュゲートされる抗体の集合を包含する。コンジュゲーション反応からのADCの調製において1抗体あたりの薬物部分の平均数は、質量分析、ELISAアッセイおよびHPLCなどの従来の方法によって特徴付けられ得る。pに関するADCの定量的分布も決定され得る。いくつかの場合には、pが他の薬物ローディングを有するADCの一定の値である場合の均質なADCの分離、精製および特徴づけは、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって達成され得る。従って、式Iの抗体−薬物コンジュゲートの薬学的処方物は、1、2、3、4個またはそれ以上の薬物部分に連結された抗体とこのようなコンジュゲートとの異種の混合物であってもよい。
【0490】
ある抗体−薬物コンジュゲートについては、pは抗体上の結合部位の数によって限定され得る。例えば、結合がシステインチオールである場合、上記の例示的な実施形態のように、抗体はただ1個もしくはいくつかのシステインチオール基を有してもよいし、またはリンカーが結合し得るただ1個もしくはいくつかの十分に反応性のチオール基を有してもよい。特定の実施形態では、薬物ローディングが高いほど、例えばp>5であれば、特定の抗体−薬物コンジュゲートの凝集、難溶性、毒性または細胞透過性の喪失が生じ得る。特定の実施形態では、本発明のADCの薬物ローディングは、1〜約8の範囲;約2〜約6;または、約3〜約5の範囲である。実際、特定のADCでは、1抗体あたりの薬物部分の最適の比は、8未満であってもよいし、約2〜約5であってもよいことが示されている。米国特許出願公開第2005−0238649号A1を参照のこと。
【0491】
特定の実施形態では、理論的な最大よりも少ない薬物部分がコンジュゲート反応の間に抗体にコンジュゲートされる。抗体は、例えば、下に考察されるように、薬物−リンカー中間生成物またはリンカー試薬とは反応しないリジン残基を含んでもよい。一般に、抗体は薬物部分に結合し得る多くの遊離した反応性のシステインチオール基を含まず;実際、抗体のほとんどのシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在する。ある実施形態では、抗体は、部分的もしくは完全に還元な還元条件下で、ジチオトレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤により還元されて、反応性のシステインチオール基が生成され得る。特定の実施形態では、抗体は変性条件下に曝されて、リジンまたはシステインなどの反応性の求核基が現れる。
【0492】
ADCのローディング(薬剤/抗体比率)は、例えば、(i)抗体に対する薬物−リンカー中間生成物またはリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)コンジュゲートの反応時間または温度を制限すること、および(iii)システインチオール修飾のための部分的還元条件または限定された還元条件によって、異なる方法で制御できる。
【0493】
2個以上の求核基が、薬物−リンカー中間生成物またはリンカー試薬と、続いて薬物部分試薬と反応するならば、その結果生じる生成物は、抗体に結合した1個以上の薬物部分の分布を有するADC化合物の混合物であると理解されるべきである。1抗体あたりの薬物の平均数は、抗体特異的であってかつ薬物特異的である二重ELISA抗体アッセイによって混合物から算出され得る。個々のADC分子は、質量分析によって混合物中で識別され、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィによって分離され得る(例えば、McDonaghら(2006)Prot.Engr.Design&Selection 19(7):299〜307;Hamblettら(2004)Clin.Cancer Res.10:7063〜7070;Hamblett,K.J.,ら「Effect of drug loading on the pharmacology,pharmacokinetics,and toxicity of an anti−CD30 antibody−drug conjugate,」Abstract No. 624,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March 27〜31,2004,Proceedings of the AACR,第45巻,March 2004;Alley,S.C.,ら、「Controlling the location of drug attachment in antibody−drug conjugates」Abstract No.627,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March 27〜31,2004,Proceedings of the AACR,Volume 45,March 2004を参照のこと)。特定の実施形態では、単一のローディング値を有する均質なADCは、電気泳動またはクロマトグラフィによってコンジュゲート混合物から単離してもよい。
【0494】
e.イムノコンジュゲート調製の特定の方法
式IのADCは、当業者に公知の有機化学の反応、条件および試薬を使用するいくつかの経路、例としては:(1)共有結合を介してAb−Lを形成するための抗体の求核基と二価のリンカー試薬との反応と、その後の薬物部分Dとの反応、および(2)共有結合を介してD−Lを形成するための、薬物部分の求核基と二価のリンカー試薬との反応、その後の抗体の求核基との反応などによって調製されてもよい。後者の経路を介した式IのADCを調製するための例示的な方法は、出典明記によって本明細書中に明確に援用される、米国特許出願公開第2005−0238649号A1に記載されている。
【0495】
抗体の求核基としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリジン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、および(iv)抗体がグリコシル化される糖水酸基またはアミノ基。アミン、チオールおよび水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子性基により共有結合を形成することが可能で、このリンカー部分およびリンカー試薬としては以下が挙げられる:(i)活性エステル類、例えばNHSエステル類、HOBtエステル類、ハロギ酸類および酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド類;(iii)アルデヒド類、ケトン類、カルボキシルおよびマレイミド基。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、抗体が完全もしくは部分的に還元されるように、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)による処置によって、リンカー試薬とのコンジュゲーション反応を行ってもよい。したがって、各々のシステイン架橋は、理論的には、2つの反応性のチオール求核基を形成する。リジン残基の修飾によって、例えば、チオールにアミンを転換させる2−イミノチオラン(トラウトの試薬)とリジンとを反応させることによって、抗体に付加的な求核基を導入することができる。反応性のチオール基は、1、2、3、4またはそれ以上のシステイン残基を導入することによって(例えば、1個以上の非天然のシステインアミノ酸残基を含んでいる改変体抗体を調製することによって)抗体に導入されてもよい。
【0496】
本発明の抗体−薬物コンジュゲートはまた、アルデヒドもしくはケトンカルボニル基などの抗体上の求電子性基と、リンカー試薬または薬物上の求核基との間の反応によって生成してもよい。リンカー試薬上の有用な求核基としては、限定するものではないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジドが挙げられる。一実施形態では、抗体を修飾して、リンカー試薬または薬物上の求核置換基と反応させることができる求電子性の部分を導入する。別の実施形態では、グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化試薬を用いて酸化して、リンカー試薬または薬物部分のアミン基と反応し得るアルデヒドまたはケトン基を形成してもよい。生じたイミンシッフ塩基群は安定結合を形成してもよいし、または例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって還元されてもよい。一実施形態では、ガラクトースオキシダーゼまたはナトリウムメタ過ヨウ素酸塩のいずれかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬物(Hermanson,Bioconjugate Techniques)上の適切な基と反応することができる抗体のカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基が生じ得る。別の実施形態では、N末端セリンまたはトレオニン残基を含んでいる抗体は、ナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応し得、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh,(1992)Bioconjugate Chem.3:138〜146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬物部分またはリンカー求核基と反応することができる。
【0497】
薬物部分上の求核基としては、限定するものではないが、以下:反応して、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合を形成することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステルおよびアリールヒドラジド基が挙げられ、このリンカー部分およびリンカー試薬としては以下:(i)活性エステル類、例えばNHSエステル類、HOBtエステル類、ハロギ酸類および酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えば、ハロアセトアミド類;(iii)アルデヒド類、ケトン類、カルボキシルおよびマレイミド基、が挙げられる。
【0498】
本発明の化合物は、限定するものではないが、以下の架橋試薬で調製したADCが明らかに考えられる:(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから;2003−2004 Applications Handbook and Catalogの467〜498頁を参照のこと)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、およびスルホ−SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)安息香酸塩)。
【0499】
抗体と細胞毒性剤とを含むイムノコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、および二活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製することもできる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素−14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレン−トリアミン五酢酸(MX−DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照のこと。
【0500】
別法として、抗体と細胞毒性剤とを含んでいる融合タンパク質は、例えば組換え技術またはペプチド合成により作製される。組み換えDNA分子は、互いに隣接しているか、またはコンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間している、コンジュゲートの抗体および細胞傷害性の部分をコードする領域を含んでもよい。
【0501】
さらに別の実施形態では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートしてもよく、ここで抗体−レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を用いて循環から未結合のコンジュゲートを除去し、細胞毒性剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートしている「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0502】
例示的なイムノコンジュゲート−チオ−抗体薬物コンジュゲート
a.システイン操作抗CD79b抗体の調製
本発明のシステイン操作抗CD79b抗体および親抗CD79b抗体のアミノ酸配列改変体をコードするDNAは、限定するものではないが、(天然に存在するアミノ酸配列改変体の場合には)天然の供給源からの単離、ポリペプチドをコードする予め調製したDNAの、部位特異的(またはオリゴヌクレオチド媒介性)突然変異誘発(Carter(1985)ら、Nucleic Acids Res.13:4431〜4443;Hoら、(1989)Gene(Amst.)77:51〜59;Kunkelら、(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488;Liuら、(1998)J.Biol.Chem.273:20252〜20260)、PCR突然変異誘発(Higuchi,(1990)in PCR Protocols, pp.177〜183, Academic Press;Itoら、(1991)Gene 102:67〜70;Bernhardら、(1994)Bioconjugate Chem.5:126〜132;およびValletteら、(1989)Nuc.Acids Res.17:723〜733)、およびカセット突然変異誘発(Wellsら、(1985)Gene 34:315〜323)を含む、種々の方法によって調製される。QuikChange(登録商標)多部位−指向性突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla,CA)などの、突然変異誘発プロトコール、キットおよび試薬が市販されている。また、PCRベースの突然変異誘発によってテンプレートとして二本鎖プラスミドDNAを用いるオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発によって、単一突然変異が生成される(Sambrook and Russel,(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版;Zollerら、(1983)Methods Enzymol.100:468〜500;Zoller,M.J.and Smith,M.(1982)Nucl.Acids Res.10:6487〜6500)。組み換え抗体の改変体はまた、制限酵素断片化操作によって、または合成オリゴヌクレオチドによるオーバーラップ伸展PCRによって構築してもよい。突然変異誘発プライマーは、システインコドン置換(単数または複数)をコードする。標準的な突然変異誘発技術を使用し、このような変異体システイン操作抗体をコードするDNAを生成することができる(Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing
and Wiley−Interscience,New York,N.Y.,1993)。
【0503】
ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、(1990)Nature 348:552〜553)を用いて、非免疫化ドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロで抗CD79bヒト抗体および抗体フラグメントを産出させることができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、繊維状バクテリオファージ、例えばM13またはfdのメジャーなまたはマイナーなコートタンパク質遺伝子のどちらかをインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面で機能的抗体フラグメントとして提示させる。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能的特性に基づく選別を行ってもそれらの性質を表す抗体をコードする遺伝子が選別される。従って、ファージはB細胞の性質のいくつかを模倣する(Johnsonら、(1993)Current Opinion in Structural
Biology 3:564〜571;Clacksonら、(1991)Nature,352:624〜628;Marksら、(1991)J.Mol.Biol.222:581〜597;Griffithら、(1993)EMBO J.12:725〜734;米国特許第5565332号;米国特許第5573905号;米国特許第5567610号;米国特許第5229275号)。
【0504】
抗CD79b抗体は、公知のオリゴペプチド合成法を用いて化学的に合成されてもよいし、組み換え技術を用いて調製して精製されてもよい。適切なアミノ酸配列、またはその一部を、固相法技術を用いた直接的なペプチド合成によって生成してもよい(Stewartら、
Solid−Phase Peptide Synthesis,(1969)W.H.Freeman Co.,San Francisco,CA;Merrifield,(1963)J.Am.Chem.Soc.,85:2149〜2154)。インビトロタンパク質合成は、手動の技術で行ってもまたは自動で行ってもよい。例えば、t−BOCまたはFmoc保護アミノ酸を使用して、そして製造業者の指示を用いたApplied Biosystemsのペプチド合成機(Peptide Synthesizer)(Foster City,CA)を用いて、自動固相合成法を行ってもよい。抗CD79b抗体またはCD79bポリペプチドの種々の部分を別々に化学的に合成して、化学的または酵素的な方法を用いて組み合わせ、所望の抗CD79b抗体またはCD79bポリペプチドを産生させてもよい。
【0505】
抗体フラグメントの産生のために種々の技術が開発されている。以前から、これらのフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解によって生じるか(Morimotoら、(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107〜117;およびBrennanら、(1985)Science,229:81)、または組換え宿主細胞によって直接生産された。Fab、FvおよびScFv抗CD79b抗体フラグメントは全て、E.coliにおいて発現され、E.coliから分泌されるため、大量のフラグメントを容易に生成することができる。抗体フラグメントは、本明細書において述べられる抗体ファージライブラリーから単離してもよい。あるいは、Fab’−SHフラグメントは、E.coliから直接回収して、化学的にカップリングしてF(ab’)
2フラグメントを形成させるか(Carterら、(1992)Bio/Technology 10:163〜167)、または組換え宿主細胞培養物から直接単離してもよい。抗CD79b抗体は(scFv)単鎖Fvフラグメントであってもよい(国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号;米国特許第5587458号)。抗CD79b抗体フラグメントはまた「直鎖状抗体」であってもよい(米国特許第5641870号)。このような直鎖の抗体フラグメントは、単一特異性でも二重特異性でもよい。
【0506】
以下の記載は主に、抗CD79b抗体をコードする核酸を含むベクターにて形質転換されるか、またはこのベクターをトランスフェクトされた細胞を培養することによる、抗CD79b抗体の産生に関する。抗CD79b抗体をコードするDNAは、抗CD79b抗体のmRNAを有し、検出可能なレベルに発現すると思われる組織から調製したcDNAライブラリーから得てもよい。従って、ヒト抗CD79b抗体もしくはCD79bポリペプチドDNAは、ヒト組織から調製したcDNAライブラリーから都合よく得ることができる。抗CD79b抗体コード遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから得てもよいし、または公知の合成手順(例えば自動核酸合成)によって得てもよい。
【0507】
本発明の設計、選別および調製方法により、求電子性の官能性と反応するシステイン操作抗CD79b抗体が可能である。これらの方法によりさらに、所定の設計した選択した部位に薬物分子を有する抗体−薬物コンジュゲート(ADC)化合物などの抗体コンジュゲート化合物が可能である。抗体表面上の反応性のシステイン残基により、マレイミドまたはハロアセチルなどのチオール反応基を通じた薬物部分の特異的なコンジュゲートが可能である。マレイミド基に対するCys残基のチオール官能基の求核反応性は、リジン残基のアミノ基またはN−末端アミノ基などのタンパク質内の任意の他のアミノ酸官能性に比べて、およそ1000倍である。ヨードアセチルおよびマレイミド試薬のチオール特異的官能基はアミン基と反応するが、より高いpH(>9.0)とより長い反応時間が必要である(Garman,1997,Non−Radioactive Labelling:A Practical Approach,Academic Press,London)。タンパク質内の遊離チオールの量は、標準的なエルマンのアッセイによって推定されてもよい。免疫グロブリンMはジスルフィド結合五量体の例であるのに対し、免疫グロブリンGは、サブユニットを一緒に結合している内部ジスルフィド架橋を有するタンパク質の例である。このようなタンパク質では、ジチオトレイトール(DTT)またはセレノール(selenol)(Singhら、(2002)Anal.Biochem.304:147〜156)などの試薬によるジスルフィド結合の還元は、反応性の遊離チオールを生成するために必要である。このアプローチにより、抗体立体構造および抗原結合特異性が失われ得る。
【0508】
PHESELECTOR(反応性チオールの選別のためのファージELISA)アッセイにより、ELISAファージ形式での抗体の反応性システイン基の検出が可能であり、これによってシステイン操作抗体の設計が助けられる(Junutula,J.R.ら、(2008)J Immunol. Methods 332:41〜52;国際公開第2006/034488号;米国特許出願公開第2007/0092940号)。システイン操作抗体をウェルの表面にコートし、続いてファージ粒子とインキュベートして、HRP標識した二次抗体を添加して、吸光度を検出する。ファージにディスプレイされる変異体タンパク質は、迅速で、強力な、ハイ−スループット方式でスクリーニングされ得る。システイン操作抗体のライブラリーを作製して同じアプローチを用いて結合選別に供して、抗体または他のタンパク質のランダムなタンパク質−ファージライブラリーから遊離Cys取り込みの適切な反応性の部位を同定することができる。この技術は、ファージに提示されるシステイン変異タンパク質と、親和性試薬またはレポーター基(チオール反応性でもある)とを反応させる工程を包含する。
【0509】
PHESELECTORアッセイにより、抗体の反応性のチオール基のスクリーニングが可能になる。この方法によるA121C改変体の同定は一例である。完全なFab分子は、反応性チオール基を有するThioFab改変体をより多く同定するために、効果的に検索され得る。パラメータである断片的な表面のアクセス可能性を使用して、ポリペプチド内のアミノ酸残基に対する溶媒のアクセスしやすさを同定して、定量化した。表面のアクセス可能性は、溶媒分子、例えば水が接触することができる表面積(Å
2)として表され得る。水が占める面積は、1.4Åの半径球と概算される。ソフトウェアは、アルゴリズムを使用して公知のX線結晶学由来の座標によりタンパク質の各アミノ酸の表面アクセス可能性を算出する、結晶学プログラムのCCP4 Suiteとして(「The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography」(1994)Acta.Cryst.D50:760〜763)、入手自由であるかライセンス可能である(Secretary to CCP4,Daresbury Laboratory,Warrington,WA4 4AD,United
Kingdom,Fax:(+44)1925 603825、または以下のインターネットによって:www.ccp4.ac.uk/dist/html/INDEX.html)。B.LeeおよびF.M.Richards(1971)J.Mol.Biol.55:379〜400のアルゴリズムに基づいて、表面アクセス可能性の算出を実行する2つの例示的なソフトウェアモジュールは、「AREAIMOL」および「SURFACE」である。AREAIMOLは、タンパク質のファンデルワールス表面を転がるので、プローブ球(溶媒分子を表す)の中心の座標としてタンパク質の溶媒にアクセスする表面を定義する。AREAIMOLは、各原子の周りの拡がった球上(原子とプローブの半径の合計に等しい原子中心からの距離)に表面ポイントを作製すること、および周囲の原子と関連する等価球内にあるものを除くことによって、溶媒にアクセス可能な表面積を算出する。AREAIMOLは、PDB座標ファイルに原子の溶媒にアクセス可能な領域を見つけ、残基により、鎖により、および全分子についてアクセス可能な領域をまとめる。個々の原子がアクセス可能な領域(または、領域の相違)は、偽PDB出力ファイルに書き込むことが可能である。AREAIMOLは各エレメントについて単一の半径を仮定し、限られた数の異なるエレメントを認識するのみである。
【0510】
AREAIMOLおよびSURFACEは、絶対的なアクセス可能性、すなわち正方形のオングストローム(Å)の数を報告する。断片的な表面アクセス可能性は、ポリペプチド内のアミノ酸に関する標準の状態を参照することで算出される。基準状態はトリペプチドGly−X−Glyであり、ここでXは目的のアミノ酸であり、基準状態は「伸展した」高次構造、すなわちβ鎖内の高次構造様でなければならない。伸展した高次構造は、Xのアクセス可能性を最大にする。算出したアクセス可能な領域をGly−X−Glyトリペプチド基準状態のアクセス可能な領域で割って、断片的なアクセス可能性である比率の解を示す。アクセス可能性の割合は、100を乗じた断片的アクセス可能性である。表面アクセス可能性を算出するための別の例示的なアルゴリズムは、ポリペプチドのX線座標に基づいて水球体に対するアミノ酸残基の断片的アクセス可能性を算出するプログラムxsae(Broger,C.,F.Hoffman−LaRoche,Basel)のSOLVモジュールに基づく。抗体のあらゆるアミノ酸の断片的な表面アクセス可能性は、利用できる結晶構造情報を用いて算出してもよい(Eigenbrotら、(1993)J Mol Biol.229:969〜995)。
【0511】
システイン操作抗体をコードするDNAを容易に単離し、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)配列決定する。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの供与源として役立つ。一旦、単離すれば、DNAを発現ベクターに入れてもよく、ついでそれを、E.coli細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他の哺乳動物の宿主細胞、例えばそれ以外では抗体タンパク質を産生しない骨髄腫細胞(米国特許第5807715号;米国公開特許第2005/0048572号;米国公開特許第2004/0229310)などの宿主細胞中にトランスフェクトして、組み換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成を得てもよい。
【0512】
設計および選別の後、操作された、非常に反応性のある対になっていないCys残基を有するシステイン操作抗体、例えばThioFabは、(i)細菌、例えば、E.coliの系(Skerraら、(1993)Curr.Opinion in Immunol.5:256〜262;Pluckthun(1992)Immunol.Revs.130:151〜188)または哺乳類の細胞培養システム(国際公開第01/00245号)、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)における発現;および(ii)一般的なタンパク質精製技術を用いた精製(Lowmanら、(1991)J.Biol.Chem.266(17):10982〜10988)によって産生されてもよい。
【0513】
操作されたCysチオール基は、求電子性リンカー試薬および薬物−リンカー中間生成物と反応して、システイン操作抗体薬物コンジュゲートおよび他の標識したシステイン操作抗体を形成する。親抗体に存在し、対になって鎖内および鎖間のジスルフィド結合を形成するシステイン操作抗体Cys残基は、反応性チオール基を全く持っておらず(還元剤で処理されない限り)、求電子性のリンカー試薬または薬物−リンカー中間生成物と反応しない。新規に操作されたCys残基は対形成しないままで、反応することが可能で、すなわち求電子性のリンカー試薬または薬物−マレイミドなどの薬物−リンカー中間生成物にコンジュゲートすることができる。例示的な薬物−リンカー中間生成物としては以下が挙げられる:MC−MMAE、MC−MMAF、MC−vc−PAB−MMAEおよびMC−vc−PAB−MMAF。重鎖および軽鎖の操作されたCys残基の構造位置は、連続するナンバリングシステムに従ってナンバリングする。この連続するナンバリングシステムは、N末端から始まるKabatナンバリングシステム(Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD)に関連しており、a、b、cで示される挿入がKabatナンバリングスキーム(下列)とは異なる。Kabatナンバリングシステムを用いれば、実際の直鎖のアミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはCDRが短くなっているアミノ酸か、またはFRもしくはCDRの短縮またはそこへの挿入に対応する、少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含んでもよい。システイン操作重鎖改変体部位は、連続するナンバリングおよびKabatナンバリングスキームによって同定される。
【0514】
一実施形態では、システイン操作抗CD79b抗体は、以下:
(a)システインによって親抗CD79b抗体の1つ以上のアミノ酸残基を置換する工程と;
(b)チオール反応性の試薬とシステイン操作抗体とを反応させることによって、システイン操作抗CD79b抗体のチオール反応性を決定する工程と、
を包含するプロセスによって調製される。
【0515】
システイン操作抗体は、親抗体よりチオール反応性の試薬との反応性が高くてもよい。
【0516】
遊離システインアミノ酸残基は、重鎖もしくは軽鎖、または定常ドメインもしくは可変ドメインに位置してもよい。また、抗体フラグメント、例えば、Fabを、抗体フラグメントのアミノ酸を置換する1つ以上のシステインアミノ酸によって操作して、システイン操作抗体フラグメントを形成してもよい。
【0517】
本発明の他の実施形態は、システイン操作抗CD79b抗体を調製する(作製する)方法を提供し、この方法は:
(a)1つ以上のシステインアミノ酸を親の抗CD79b抗体に導入して、システイン操作抗CD79b抗体を生成する工程と、
(b)チオール反応性の試薬によりシステイン操作抗体のチオール反応性を決定する工程と、
を包含し
ここでシステイン操作抗体は親抗体よりもチオール反応性の試薬と反応性が高い。
システイン操作抗体を調製する方法の工程(a)は:
(i)システイン操作抗体をコードする核酸配列を突然変異誘発する工程と、
(ii)システイン操作抗体を発現させる工程と、
(iii)システイン操作抗体を単離して、精製する工程と、
を包含し得る。
【0518】
システイン操作抗体を調製する方法の工程(b)は、ファージまたはファージミド粒子から選択されるウイルス粒子上にシステイン操作抗体を発現させる工程を包含してもよい。
【0519】
システイン操作抗体を調製する方法の工程(b)は:
(i)システイン操作抗体をチオール反応性の親和性試薬と反応させ、親和性標識した、システイン操作抗体を生成する工程;および
(ii)親和性標識したシステイン操作抗体の捕獲培地への結合を測定する工程とを包含してもよい。
【0520】
本発明の別の実施形態は、チオール反応のために、高い反応性を有し対形成をしないシステインアミノ酸を有する、システイン操作抗体をスクリーニングする方法であって、この方法は:
(a)親抗体に1つ以上のシステインアミノ酸を導入して、システイン操作抗体を作製する工程と;
(b)システイン操作抗体とチオール反応性の親和性試薬とを反応させ、親和性標識した、システイン操作抗体を作製する工程と;
(c)親和性標識したシステイン操作抗体の捕獲培地への結合を測定する工程と;
(d)チオール反応性の試薬によりシステイン操作抗体のチオール反応性を決定する工程と;
を包含する。
【0521】
システイン操作抗体をスクリーニングする方法の工程(a)は:
(i)システイン操作抗体をコードする核酸配列を突然変異誘発する工程と;
(ii)システイン操作抗体を発現させる工程と;
(iii)システイン操作抗体を単離して、精製する工程と;を包含する。
【0522】
システイン操作抗体をスクリーニングする方法の工程(b)は、ファージまたはファージミド粒子から選択されるウイルス粒子上にシステイン操作抗体を発現させる工程を包含してもよい。
【0523】
システイン操作抗体をスクリーニングする方法の工程(b)は:
(i)システイン操作抗体をチオール反応性の親和性試薬と反応させ、親和性標識した、システイン操作抗体を生成させる工程と;
(ii)親和性標識したシステイン操作抗体の捕獲培地への結合を測定する工程と、を包含してもよい。
【0524】
b.抗CD79b IgG改変体のシステイン操作
本明細書中に記載のシステイン操作方法によって、全長キメラ親モノクローナル抗CD79b抗体へ、重鎖118(EUナンバリング)(連続するナンバリングで言うと重鎖位置118に相当)部位に、または全長キメラ親モノクローナル抗CD79b抗体へ、軽鎖205(Kabatナンバリング)(連続するナンバリングで言うと軽鎖位置210に相当)部位にシステインを導入した。
【0525】
作製された重鎖118(EUナンバリング)にシステインを有するシステイン操作抗体は以下であった:(a)重鎖配列(配列番号85)および軽鎖配列(配列番号86)を有するチオ−hu2F2.D7−HC(A118C)、
図17。
【0526】
作製された軽鎖205(EUナンバリング)にシステインを有するシステイン操作抗体は以下であった:(a)重鎖配列(配列番号87)および軽鎖配列(配列番号88)を有するチオ−hu2F2.D7−LC(A205C)、
図18。
【0527】
これらのシステイン操作されたモノクローナル抗体は、1mMのシステインを含有する培地中で一時的なファーメンテーションによってCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞で発現された。
【0528】
一実施形態によれば、ヒト化2F2システイン操作抗CD79b抗体は、遊離のシステインアミノ酸を有する以下の重鎖配列のうちの1つ以上を含む(配列番号91〜99、表2)。
【0529】
【表2】
一実施形態によれば、キメラ2F2システイン操作された抗CD79b抗体は、遊離のシステインアミノ酸を有する以下の重鎖配列のうちの1つ以上を含む(配列番号100〜108、表3)。
【0530】
【表3】
一実施形態によれば、ヒト化2F2システイン操作された抗CD79b抗体は、遊離のシステインアミノ酸を有する以下の軽鎖配列のうちの1つ以上を含む(配列番号109〜115、表4)。
【0531】
【表4】
一実施形態によれば、キメラ2F2システイン操作された抗CD79b抗体は、遊離のシステインアミノ酸を有する以下の軽鎖配列のうちの1つ以上を含む(配列番号116〜122、表5)。
【0532】
【表5】
c.標識された、システイン操作された抗CD79b抗体
システイン操作抗CD79b抗体は部位特異的であり、かつチオール反応性の試薬と効率よくカップリングし得る。チオール反応性の試薬は、多機能性リンカー試薬、捕獲、すなわち親和性、標識試薬(例えばビオチン−リンカー試薬)、検出標識(例えば蛍光体試薬)、固相固定化試薬(例えばSEPHAROSE(商標)、ポリスチレンまたはガラス)、または薬物−リンカー中間生成物であってもよい。チオール反応性試薬の一例は、N−エチルマレイミド(NEM)である。ある例示的な実施形態では、ビオチン−リンカー試薬とのThioFabの反応によりビオチン化されたThioFabが生じ、これによって操作されたシステイン残基の存在および反応性が検出され、かつ測定され得る。多機能リンカー試薬とのThioFabの反応により、薬物部分試薬または他の標識とさらに反応し得る官能化されたリンカーを有するThioFabが生じる。薬物−リンカー中間生成物とのThioFabの反応により、ThioFab薬物コンジュゲートが得られる。
【0533】
本明細書中で記述される例示的な方法は一般に、抗体の同定および産生、さらに一般的には、本明細書中に記載の設計およびスクリーニング工程の適用を通じて、他のタンパク質に応用されてもよい。
【0534】
このようなアプローチは、反応基が、例えばマレイミド、ヨードアセトアミド、ピリジルジスルフィド、または他のチオール反応性のコンジュゲーションのパートナーである他のチオール反応性試薬のコンジュゲーションに応用されてもよい(Haugland,2003,Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Inc.;Brinkley,1992,Bioconjugate Chem.3:2;Garman,1997,Non−Radioactive Labelling:A Practical Approach,Academic Press,London;Means(1990)Bioconjugate Chem.1:2;Hermanson,G.in Bioconjugate Techniques(1996)Academic Press,San Diego,pp.40〜55,643〜671)。チオール反応性の試薬は、薬物部分、フルオロフォア、例えば、フルオレセインまたはローダミンのような蛍光色素、イメージングまたは放射性治療用金属のためのキレート剤、ペプチジルまたは非ペプチジル標識もしくは検出用タグ、またはポリエチレングリコールの種々のアイソフォームなどのクリアランス−改変剤、第三成分に結合するペプチド、または別の炭水化物または親油性剤であってもよい。
【0535】
d.システイン操作抗CD79b抗体の使用
システイン操作抗CD79b抗体およびそのコンジュゲートは、治療用および/または診断用の薬剤としての使用が明らかになり得る。本発明はさらに、B細胞関連疾患と関係する1つ以上の症状を予防するか、管理するか、治療するかまたは、寛解する方法を提供する。特に、本発明は、癌、例えば、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫などの細胞増殖性障害と関連する1つ以上の症状を予防するか、管理するか、治療するか、または寛解する方法を提供する。本発明はまたさらに、CD79b関連の障害またはこのような障害を発達させる素因を診断するための方法、ならびに好ましくはB細胞関連のCD79bポリペプチドを結合する抗体、および抗体の抗原結合フラグメントを特定するための方法を提供する。
【0536】
本発明の別の実施形態は、B細胞関連の障害に応答する状態の処置において有用な医薬の調製のためのシステイン操作抗CD79b抗体の使用に関する。
【0537】
e.システイン操作された抗体薬物コンジュゲート(チオ−抗体薬物コンジュゲート(TDC))
本発明の別の局面は、システイン操作抗CD79b抗体(Ab)と、アウリスタチン薬物部分(D)を含んでいる抗体−薬物コンジュゲート化合物であって、ここでシステイン操作抗体はリンカー成分(L)によって1つ以上の遊離したシステインアミノ酸を通じてDに結合され;この化合物は式Iを有するものであり:
【0538】
【化21】
この式中、pは1、2、3または4であり;システイン操作抗体は、親抗CD79b抗体の1つ以上のアミノ酸残基を、1つ以上の遊離したシステインアミノ酸に置換することを包含するプロセスによって調製される。
【0539】
本発明の別の局面は、式Iの抗体−薬物化合物の混合物を含んでいる組成物であり、ここで1抗体あたりの平均の薬物ローディングは約2〜約5、または約3〜約4である。
【0540】
図17〜18は、アウリスタチン薬物部分が、軽鎖(LC−ADC)、または重鎖(HC−ADC)内において、操作されたシステイン基に結合している、システイン操作抗CD79b抗体薬物コンジュゲート(ADC)の実施形態を示す。
【0541】
システイン操作抗CD79b抗体薬物コンジュゲートの考えられる利点としては、PKパラメータの改善である安全性の改善(より大きい治療係数)が挙げられ、コンジュゲートを安定化し、かつその活性な結合高次構造を保持し得る抗体鎖間ジスルフィド結合が保たれており、薬物コンジュゲートの部位が決定され、そして、システイン操作抗体の薬物−リンカー試薬へのコンジュゲートからシステイン操作抗体薬物コンジュゲートを調製することでより均一な産物が得られる。
【0542】
リンカー
「リンカー」、「リンカーユニット」または「連結」とは、共有結合を含んでいる化学部分、または抗体を薬物部分に共有結合させる原子の鎖を意味する。種々の実施形態では、リンカーはLと表される。「リンカー」(L)は、1つ以上の薬物部分(D)と抗体ユニット(Ab)を連結させて、式Iの抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を形成させるために用いられ得る、二官能性成分または多機能性成分である。抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は、薬物および抗体への結合について反応性機能を有するリンカーを用いて都合良く調製され得る。システイン操作抗体(Ab)のシステインチオールは、リンカー試薬、薬物部分または薬物−リンカー中間生成物の求電子性の官能基と結合することができる。
【0543】
一局面では、リンカーは、抗体に存在する求核性システインに反応することができる求電子性基を有する反応部位を有する。抗体のシステインチオールは、リンカー上の求電子性基と反応性であって、リンカーに共有結合を形成する。有用な求電子性の基としては、限定するものではないが、マレイミドおよびハロアセトアミド基が挙げられる。
【0544】
リンカーとしては、二価の基、例えば、アルキルジイル、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキルオキシ(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)およびアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))の繰り返しユニットである−(CR
2)
nO(CR
2)
n−などの成分;ならびに、スクシナート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネートおよびカプロアミドを含む二酸エステルおよびアミドが挙げられる。
【0545】
システイン操作抗体は、Klussmanら、(2004),Bioconjugate Chemistry 15(4):765〜773の766ページのコンジュゲーション法に従って、および実施例6のプロトコールに従って、マレイミドまたはα−ハロカルボニルなどの求電子性の官能基を有するリンカー試薬または薬物−リンカー中間生成物と反応する。
【0546】
リンカーは1つ以上のリンカー成分から構成されてもよい。例示的なリンカー成分としては、6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」または「vc」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」または「af」)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N−スクシンイミジル4(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(「SMCC」)、N−スクシンイミジル(4−ヨード−アセチル)アミノ安息香酸(「SIAB」)、1つ以上の反復性ユニットとしてのエチレンオキシ−CH
2CH
2O−(「EO」または「PEO」)が挙げられる。さらなるリンカー成分は当該分野において公知であり、そのいくつかを本明細書中に記載する。
【0547】
一実施形態では、ADCのリンカーLは以下の式を有する:
【0548】
【化22】
式中:
−A−は、抗体(Ab)のシステインチオールに共有結合にて付着したストレッチャーユニットであり;
aは0または1であり;
各々の−W−は、独立したアミノ酸ユニットであり;
wは独立して、0から12まで変動する整数であり;
−Y−は、薬物部分に共有結合にて付着したスペーサーユニットであり;かつ
yは0、1または2である。
【0549】
ストレッチャーユニット
ストレッチャユニット(−A−)は、存在する場合には、抗体ユニットをアミノ酸ユニット(−W−)に連結することができる。この点に関しては、抗体(Ab)は、ストレッチャーの官能基と結合することができる官能基を有する。天然もしくは化学的操作のいずれにかによって抗体に存在することができる有用な官能基としては限定するものではないが、スルフヒドリル(−SH)、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、炭水化物のアノマー水酸基およびカルボキシルが挙げられる。一局面では、抗体官能基はスルフヒドリルまたはアミノである。スルフヒドリル基は、抗体の分子内ジスルフィド結合の還元によって生成され得る。あるいは、2−イミノチオラン(トラウトの試薬)または別のスルフヒドリル生成試薬を用いて、抗体のリジン成分のアミノ基を反応させることによって、スルフヒドリル基を生成することができる。一実施形態では、抗体(Ab)は、ストレッチャーユニットの求電子性の官能基と結合することができる遊離したシステインチオール基を有する。式Iのコンジュゲートの例示的なストレッチャーユニットは、式IIおよび式IIIで示すものであり、ここでAb、−W−、−Y−、−D、wおよびyは上記に定義したとおりであり、R
17は、(CH
2)
r、C
3−C
8カルボシクリル、O−(CH
2)
r、アリーレン、(CH
2)
r−アリーレン、−アリーレン−(CH
2)
r−、(CH
2)
r−(C
3−C
8カルボシクリル)、(C
3−C
8カルボシクリル)−(CH
2)
r、C
3−C
8ヘテロシクリル、(CH
2)
r−(C
3−C
8ヘテロシクリル)、−(C
3−C
8ヘテロシクリル)−(CH
2)
r−、−(CH
2)
rC(O)NR
b(CH
2)
r−、−(CH
2CH
2O)
r−、−(CH
2CH
2O)
r−CH
2−、−(CH
2)
rC(O)NR
b(CH
2CH
2O)
r−、−(CH
2)
rC(O)NR
b(CH
2CH
2O)
r−CH
2−、−(CH
2CH
2O)
rC(O)NR
b(CH
2CH
2O)
r−、−(CH
2CH
2O)
rC(O)NR
b(CH
2CH
2O)
r−CH
2−、および−(CH
2CH
2O)
rC(O)NR
b(CH
2)
r−から選択される二価の基であり、R
bはH、C
1−C
6アルキル、フェニルまたはベンジルであり、そして、rは独立して、1から10の範囲の整数である。
【0550】
アリーレンとしては、芳香族環系から2つの水素原子を除去して得られる6〜20の炭素原子の二価の芳香族炭化水素基が挙げられる。代表的なアリーレン基としては、限定するものではないが、ベンゼン、置換されたベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどに由来する基が挙げられる。
【0551】
ヘテロシクリル基としては、1つ以上の環原子がヘテロ原子、例えば窒素、酸素およびイオウである環式の系が挙げられる。複素環基は、1〜20個の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3のヘテロ原子を含む。複素環は、3〜7員環を有する単環系(2〜6の炭素原子とN、O、PおよびSから選択される1〜3のヘテロ原子)または7〜10員環を有する二環系(4〜9の炭素原子とN、O、PおよびSから選択される1〜3のヘテロ原子)、例えばビシクロ[4,5]系、[5,5]系、[5,6]系、または[6,6]系であってもよい。複素環は、Paquette,Leo A.;「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」(W.A.Benjamin,New York,1968)、特に第1,3,4,6,7および9章」;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs」(John Wiley & Sons,New York,1950〜現在まで)、特に13,14,16,19および28巻;および、J.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載される。
【0552】
複素環の例としては、例示のためであって限定するものではないが、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、イオウ酸化型テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ビス−テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾチニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアンスレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、チノリニル、プテリジニル、4Ah−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナンスリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナンスロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシンドリル、ベンズオキサゾリニル、およびイサチノイルが挙げられる。
【0553】
カルボシクリル基(Carbocyclyl)としては、単環として3〜7個の炭素原子、または二環として7〜12個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の環が挙げられる。単環の炭素環は3〜6の環状原子、より一般的には5または6の環状原子を有する。二環式の炭素環は、例えばビシクロ[4,5]系、[5,5]系、[5,6]系または[6,6]系として配置された7〜12個の環原子、またはビシクロ[5,6]系または[6,6]系として配置された9個または10個の環原子を有する。単環の炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキス−1−エニル、1−シクロヘキス−2−エニル、1−シクロヘキス−3−エニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0554】
IIからVIなどの式IのADCの全ての例示的な実施形態から、明確に示していない場合であっても、操作されたシステイン残基の数に応じて、1から4の薬物部分が抗体に連結されている(p=1〜4)ことが理解される。
【0555】
【化23】
式IIの例示的なストレッチャーユニットは、マレイミド−カプロイル(MC)に由来し、ここでR
17は−(CH
2)
5−である:
【0556】
【化24】
式IIの例示的なストレッチャーユニットは、マレイミド−プロパノイル(MP)に由来し、ここでR
17が−(CH
2)
2−である:
【0557】
【化25】
式IIの別の例示的なストレッチャーユニットは、R
17が−(CH
2CH
2O)
r−CH
2−であり、rが2である:
【0558】
【化26】
式IIの別の例示的なストレッチャーユニットは、R
17が−(CH
2)
rC(O)NR
b(CH
2CH
2O)
r−CH
2−であり、R
bがHであり、各々のrが2である:
【0559】
【化27】
式IIIの例示的なストレッチャーユニットは、R
17が−(CH
2)
5−である:
【0560】
【化28】
別の実施形態では、ストレッチャーユニットは、抗体の操作されたシステインのイオウ原子とストレッチャーユニットのイオウ原子との間のジスルフィド結合を介して、システイン操作抗CD79b抗体に連結される。この実施形態の代表的なストレッチャーユニットは、式IVで表され、R
17、Ab−、−W−、−Y−、−D、wおよびyは前記に定義するとおりである。
【0561】
【化29】
さらに別の実施形態では、ストレッチャーの反応基は、抗体の遊離したシステインチオールと結合することができるチオール反応性の官能基を含む。チオール反応性の官能基の例としては、限定するものではないが、マレイミド、α−ハロアセチル、活性化エステル、例えば、スクシンイミドエステル、4−ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸クロリド、塩化スルホニル、イソシアネートおよびイソチオシアネートが挙げられる。この実施形態の代表的なストレッチャーユニットは、式VaおよびVbに表され、このとき、−R
17−、Ab−、−W−、−Y−、−D、wおよびyは上記に定義したとおりである;
【0562】
【化30】
別の実施形態では、リンカーは、分岐した多機能性リンカー部分を通じて2個以上の薬物部分を抗体へ共有結合的に付着させるために樹状型リンカーであってもよい(Sunら、(2002)Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213〜2215;Sunら、(2003)Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761〜1768;King(2002)Tetrahedron Letters 43:1987〜1990)。樹状のリンカーはADCの力価に関連がある抗体に対する薬物のモル比、すなわちローディングを増やすことができる。従って、システイン操作抗体が1つの反応性のシステインチオール基のみを有する場合、複数の薬物部分が樹状のリンカーを介して結合され得る。
【0563】
アミノ酸ユニット
リンカーはアミノ酸残基を含んでいてもよい。アミノ酸ユニット(−W
w−)は、存在する場合には、抗体(Ab)を本発明のシステイン操作抗体−薬物コンジュゲート(ADC)の薬物部分(D)に連結する。
【0564】
−W
w−は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチドまたはドデカペプチドのユニットである。アミノ酸ユニットを含むアミノ酸残基としては、天然に存在するもの、ならびにシトルリンなどのマイナーなアミノ酸および天然には存在しないアミノ酸アナログが挙げられる。各々の−W−ユニットは独立して、以下の角括弧で示される式を有しており、wは、0から12の範囲の整数である:
【0565】
【化31】
式中、R
19は、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、−CH
2OH、−CH(OH)CH
3、−CH
2CH
2SCH
3、−CH
2CONH
2、−CH
2COOH、−CH
2CH
2CONH
2、−CH
2CH
2COOH、−(CH
2)
3NHC(=NH)NH
2、−(CH
2)
3NH
2、−(CH
2)
3NHCOCH
3、−(CH
2)
3NHCHO、−(CH
2)
4NHC(=NH)NH
2、−(CH
2)
4NH
2、−(CH
2)
4NHCOCH
3、−(CH
2)
4NHCHO、−(CH
2)
3NHCONH
2、−(CH
2)
4NHCONH
2、−CH
2CH
2CH(OH)CH
2NH
2、2−ピリジルメチル−、3−ピリジルメチル−、4−ピリジルメチル−、フェニル、シクロヘキシル、
【0567】
R
19が水素以外である場合に、R
19が付着される炭素原子はキラルである。R
19が付着される各々の炭素原子は、独立して(S)もしくは(R)配位にあるか、またはラセミ混合物である。したがって、アミノ酸ユニットは、鏡像異性的に純粋であっても、ラセミ性であっても、またはジアステレオ異性であってもよい。
【0568】
例示的な−W
w−アミノ酸ユニットとしては、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドが挙げられる。例示的なジペプチドとしては、バリン−シトルリン(vcまたはval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(afまたはala−phe)が挙げられる。例示的なトリペプチドとしては、グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)およびグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)が挙げられる。アミノ酸リンカー成分を含むアミノ酸残基としては、天然に存在するもの、ならびにシトルリンなどの微量アミノ酸および天然に存在しないアミノ酸アナログが挙げられる。
【0569】
アミノ酸ユニットは、腫瘍関連プロテアーゼを含んでいる1つ以上の酵素によって酵素切断され、薬物部分(−D)を遊離し、この薬物部分は、一実施形態では、薬剤(D)を提供するために、放出時にインビボでプロトン化される。アミノ酸リンカー構成成分は、特定の酵素、えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、CおよびD、またはプラスミンプロテアーゼによって酵素的に切断されるように設計され、その選択性が最適化され得る。
【0570】
スペーサーユニット
スペーサユニット(−Y
y−)は、存在する場合(y=1または2)には、アミノ酸ユニットが存在する(w=1〜12)ときに、アミノ酸ユニット(−Ww−)を薬剤部分(D)に連結する。あるいは、アミノ酸ユニットがない場合には、スペーサーユニットはストレッチャーユニットを薬物部分に連結する。アミノ酸ユニットおよびストレッチャーユニットが両方ともない(w、y=0)場合には、スペーサーユニットも薬物部分を抗体ユニットに連結する。スペーサーユニットは、自己犠牲型および非自己犠牲型の2つの一般的なタイプである。非自己犠牲的なスペーサーユニットとは、抗体−薬物コンジュゲートまたは薬物部分−リンカーからアミノ酸ユニットが切断、特に酵素的に切断された後に、スペーサーユニットの一部もしくは全てが薬物部分に結合したままとなるものである。グリシン−グリシンスペーサーユニットまたはグリシンスペーサーユニットを含んでいるADCが腫瘍細胞関連プロテアーゼ、癌細胞関連プロテアーゼまたはリンパ球関連プロテアーゼによって酵素切断される場合、グリシン−グリシン−薬物部分またはグリシン−薬物部分がAb−A
a−Ww−から切断される。一実施形態では、独立した加水分解反応が標的細胞の中で起こり、グリシン−薬物部分の結合が切断され、薬剤が遊離される。
【0571】
別の実施形態では、−Y
y−は、フェニレン部分がQ
mで置換されているp−アミノベンジルカルバモイル(PAB)ユニットであり、このときQは−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロ、または−シアノであり;そして、mは0〜4の範囲の整数である。
【0572】
非自己犠牲型スペーサーユニット(−Y−)の例示的な実施形態は、−Gly−Gly−;−Gly−;−Ala−Phe−;−Val−Cit−である。
【0573】
一実施形態では、スペーサーユニットがない(y=0)、または薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和化合物である、薬物部分−リンカーまたはADCが提供される。
【0574】
あるいは、自己犠牲的なスペーサーユニットを含んでいるADCは−Dを放出し得る。一実施形態では、−Y−はPAB基であって、PAB基のアミノ窒素原子を介して−W
w−に連結されており、カルボナート、カルバメートまたはエーテル基を介して−Dに直接連結しており、ここでADCは以下のような例示的な構造を有する:
【0575】
【化33】
この式中、Qは、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロ、または−シアノであり;mは0〜4の範囲の整数であり、そして、pは1から4の範囲である。
【0576】
自己犠牲的なスペーサーの他の例としては、PAB基に電子的に類似している芳香族化合物、例えば、2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(Hayら、(1999)Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2237)、複素環式のPABアナログ(米国特許出願公開第2005/0256030号)、β−グルクロニド(国際公開第2007/011968号)、およびオルトもしくはパラ−アミノベンジルアセタールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アミド結合加水分解の際に環化を受けるスペーサー、例えば、置換および、非置換の4−アミノ酪酸アミド(Rodriguesら、(1995)Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]、および、ビシクロ[2.2.2]環系(Stormら、(1972)J.Amer.Chem.Soc.94:5815)、および2−アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberryら、(1990)J.Org.Chem.55:5867)などを用いてもよい。また、グリシンで置換されるアミン含有薬物の除去(Kingsburyら、(1984)J.Med.Chem.27:1447)も、ADCに有用な自己犠牲的スペーサーの例である。
【0577】
例示的なスペーサーユニット(−Y
y−)を式X〜XIIに示す:
【0578】
【化34】
樹状リンカー
別の実施形態では、リンカーLは、分岐状の、多機能リンカー成分により2つ以上の薬物部分が抗体に共有結合するために樹状型のリンカーであってもよい(Sunら、(2002)Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213〜2215;Sunら、(2003)Bioorganic &
Medicinal Chemistry 11:1761〜1768)。樹状のリンカーは、ADCの力価に関連がある、抗体に対する薬剤のモル比、すなわちローディングを増大することができる。従って、システイン操作抗体が反応性のシステインチオール基を1つだけ有する場合、複数の薬物部分が樹状のリンカーを通じて結合され得る。分岐状の、樹状リンカーの例示的な実施形態としては、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールおよび2,4,6−トリス(ヒドロキシメチル)−フェノールデンドリマーユニット(国際公開第2004/01993号;Szalaiら、(2003)J.Amer.Chem.Soc.125:15688〜15689;Shamisら、(2004)J.Amer.Chem.Soc.126:1726〜1731;Amirら、(2003)Angew.Chem.Int.Ed.42:4494〜4499)が挙げられる。
【0579】
一実施形態では、スペーサーユニットは、これを用いることで複数の薬剤を取り込み、放出することができる分岐状ビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)であり、以下の構造:
【0580】
【化35】
を有し、
これは、2−(4−アミノベンジリデン)プロパン1,3−ジオールデンドリマーユニット(国際公開第2004/043493号;de Grootら、(2003)Angew.Chem.Int.Ed.42:4490〜4494)を含み、ここでQは、−C
1−C
8アルキル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロ、または−シアノであり;mは0〜4の範囲の整数であり;nは0または1であり;そして、pは1から4の範囲である。
【0581】
式Iの抗体−薬物コンジュゲート化合物の例示的な実施形態としては:XIIIa(MC)、XIIIb(val−cit)、XIIIc(MC−val−cit)、およびXIIId(MC−val−cit−PAB):
【0583】
式Iaの抗体−薬物コンジュゲート化合物の他の例示的な実施形態としては、XIVa−e:
【0584】
【化37-1】
が挙げられ、
式中、Xは以下:
【0586】
【化37-3】
であり;
かつRは独立して、HまたはC
1−C
6アルキルであり;かつnは1〜12である。
【0587】
別の実施形態では、リンカーは、抗体に存在する求電子性の基に反応性である求核基を有する反応性の官能基を有する。抗体上の有用な求電子性の基としては、限定するものではないが、アルデヒドおよびケトンカルボニル基が挙げられる。リンカーの求核基のヘテロ原子は抗体上の求電子性の基と反応して、抗体ユニットに共有結合を形成し得る。リンカーの有用な求核基としては、限定するものではないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジドが挙げられる。抗体の求電子性の基は、リンカーへの付着に都合の良い部位を提供する。
【0588】
代表的には、ペプチド−タイプのリンカーは、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチドフラグメントの間でペプチド結合を形成することによって調製され得る。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野では周知である液相合成方法(E.Schroder and K.Lubke(1965)「The Peptides」,第1巻,76〜136頁,Academic Press)に従って調製され得る。リンカー中間生成物は、スペーサー、ストレッチャーおよびアミノ酸ユニットを含んでいる反応の任意の組合せまたは順序によってアセンブリされてもよい。スペーサー、ストレッチャーおよびアミノ酸ユニットは、天然で求電子性、求核性、または遊離の基である反応性官能基を使用し得る。反応性官能基としては、限定するものではないが、カルボキシル、ヒドロキシル、パラ−ニトロフェニルカルボネート、イソチオシアネート、およびO−メシル、O−トシル、−Cl、−Br、−Iなどの脱離基;またはマレイミドが挙げられる。
【0589】
例えば、ADCを調製するために使用される合成経路に応じて、スルホン酸(−SO
3−)またはアンモニウムなどの荷電性の置換基は、試薬の水溶性を増し、リンカー試薬と抗体または薬物部分とのカップリング反応を容易にする場合もあるし、またはAb−L(抗体−リンカー中間生成物)とDとのカップリング反応、またはD−L(薬物−リンカー中間生成物)とAbとのカップリング反応を容易にする場合もある。
【0590】
リンカー試薬
抗体とアウリスタチンとのコンジュゲートは、種々の二官能性リンカー試薬、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、および二活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製することができる。
【0591】
抗体薬物コンジュゲートはまた、以下のリンカー試薬を用いて調製してもよい:BMPEO、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、およびスルホ−SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾアート)、および、例としては、ビス−マレイミド試薬:DTME、BMB、BMDB、BMH、BMOE、1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール(BM(PEO)
2)、および1,11−ビス−マレイミドトリエチレングリコール(BM(PEO)
3)(これらは、Pierce Biotechnology,Inc.,ThermoScientific,Rockford,IL、および他の試薬の業者から市販されている)。ビスマレイミド試薬により、連続した様式または同時の様式で、チオール含有薬物部分、標識またはリンカー中間生成物にシステイン操作抗体のチオール基を結合させることができる。システイン操作抗体、薬物部分、標識またはリンカー中間生成物のチオール基と反応性である、マレイミド以外の他の官能基としては、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネートおよびイソチオシアネートが挙げられる。
【0592】
【化38】
有用なリンカー試薬はまた、Molecular Biosciences Inc.(Boulder,CO)などの他の商業的供給源から入手してもよいし、またはTokiら(2002)J.Org.Chem.67:1866〜1872;Walker,M.A.(1995)J.Org.Chem.60:5352〜5355;Frischら、(1996)Bioconjugate Chem.7:180〜186;米国特許第6214345号;国際公開第02/088172号;米国特許出願公開第2003130189号;米国特許出願公開第2003096743号;国際公開第03/026577号;国際公開第03/043583号;および国際公開第04/032828号に記載の手段に従って合成してもよい。
【0593】
式(IIIa)のストレッチャーは、以下のリンカー試薬をアミノ酸ユニットのN末端と反応させることによって、リンカーに導入することができる。
【0594】
【化39】
式中、nは1〜10の範囲の整数であり、Tは−Hまたは−SO
3Naであり;
【0595】
【化40】
式中、nは0〜3の範囲の整数である;
【0597】
【化42】
ストレッチャーユニットは、以下の二官能試薬とアミノ酸ユニットのN末端とを反応させることによってリンカーに導入することが可能で:
【0598】
【化43】
式中、XはBrまたはIである。
【0599】
式のストレッチャーユニットはまた、以下の二官能試薬とアミノ酸ユニットのN末端とを反応させることによってリンカーに導入することができる:
【0600】
【化44】
マレイミドストレッチャーとパラ−アミノベンジルカルバモイル(PAB)自己犠牲的スペーサーとを有する例示的なバリン−シトルリン(val−citまたはvc)ジペプチドリンカー試薬は、以下の構造を有する:
【0601】
【化45】
マレイミドストレッチャーユニットとPAB自己−犠牲的スペーサーユニットとを有する例示的なphe−lys(Mtr、モノ−4−メトキシトリチル)ジペプチドリンカー試薬は、Dubowchikら、(1997)Tetrahedron Letters,38:5257〜60に従って調製されてもよく、以下の構造を有する:
【0602】
【化46】
システイン操作抗CD79b抗体−薬物コンジュゲートの調製
式IのADCは、当業者に公知の有機化学的反応、条件および試薬を使用して、いくつかの経路によって、例えば、(1)システイン操作抗体のシステイン基とリンカー試薬との反応によって、共有結合を介した抗体−リンカー中間生成物Ab−Lを形成させ、それに続く活性な薬物部分Dとの反応;および(2)薬物部分の求核基とリンカー試薬との反応によって、共有結合を介して薬物−リンカー中間生成物D−Lを形成させ、それに続くシステイン操作抗体のシステイン基との反応、などによって調製されてもよい。コンジュゲート方法(1)および(2)は、種々のシステイン操作抗体、薬物部分およびリンカーを使用して行い、式Iの抗体−薬物コンジュゲートを調製してもよい。
【0603】
抗体システインチオール基は求核基であり、反応して、リンカー試薬および薬物−リンカー中間生成物の求電子基と共有結合することが可能で、このリンカー試薬および薬物−リンカー中間生成物としては:(i)活性エステル類、例えばNHSエステル類、HOBtエステル類、ハロギ酸類および酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド類、(iii)アルデヒド類、ケトン類、カルボキシルおよびマレイミド基;ならびに(iv)スルフィド交換による、ピリジルジスルフィドを含むジスルフィドが挙げられる。薬物部分の求核基としては限定するものではないが、以下が挙げられる:リンカー成分およびリンカー試薬の求電子基と共有結合するように反応することができる、アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸およびアリールヒドラジド基。
【0604】
システイン操作抗体は、DTT(クリーランド試薬、ジチオスレイトール)またはTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロライド;Getzら、(1999)Anal.Biochem.Vol 273:73〜80;Soltec Ventures,Beverly,MA)などの還元剤にて処理した後に、鎖間および鎖内のジスルフィド結合を再形成させるように再酸化させることによって、リンカー試薬とのコンジュゲーションに対して反応性にしてもよい(実施例5)。例えば、CHO細胞で発現される全長のシステイン操作モノクローナル抗体(ThioMab)を、新たに導入したシステイン残基と培養培地中に存在するシステインとの間で形成し得る、システイン付加物のジスルフィド結合を還元するために、およそ50倍の過剰なTCEPにて37℃で3時間かけて還元する。還元されたThioMabを希釈して、10mMの酢酸ナトリウム、pH5にてHiTrap Sカラムにロードして、0.3Mの塩化ナトリウムを含むPBSにて溶出する。希釈(200nM)硫酸銅水(CuSO
4)を用いて、室温に一晩置くことにより親Mabに存在するシステイン残基間にジスルフィド結合が再構築された。あるいは、デヒドロアスコルビン酸(DHAA)は、システイン付加物の還元分解反応の後にシステイン操作抗体の鎖内ジスルフィド基を再構築させるための有効な酸化体である。当該分野で公知の他の酸化体、すなわち酸化剤および酸化条件が用いられてもよい。外気酸化も有効である。この温和な部分的な再酸化工程により、高品位の鎖内ジスルフィドが効率よく形成され、新たに導入されたシステイン残基のチオール基が維持される。およそ10倍過剰な薬物−リンカー中間生成物、例えばMC−vc−PAB−MMAEを添加し、混合して、室温におよそ1時間置いて、コンジュゲーションに作用させて、抗CD79b抗体−薬物コンジュゲートを形成させた。コンジュゲーション混合物をゲル濾過し、HiTrap Sカラムにロードして溶出させ、過剰な薬物−リンカー中間生成物および他の不純物を除去した。
【0605】
図16は、コンジュゲーションのために細胞培養物から発現されるシステイン操作抗体を調製するための一般的な方法を示す。細胞培養培地にシステインを含む場合、新たに導入されたシステインアミノ酸と培地のシステインとの間にジスルフィド付加物が形成し得る。これらのシステイン付加物(
図16の例示的なThioMab(左)に丸で示す)は、コンジュゲーションに反応性であるシステイン操作抗体を生成するために還元されなければならない。システイン付加物は、おそらく種々の鎖間ジスルフィド結合とともに、TCEPなどの還元剤によって抗体の還元型を生じさせるために、還元により切断される。対形成したシステイン残基間の鎖間ジスルフィド結合は、硫酸銅、DHAAまたは周囲酸素への曝露による不完全酸化条件下で再形成される。新たに導入され、改変され、対形成しないシステイン残基は、リンカー試薬または薬物−リンカー中間生成物と反応して本発明の抗体コンジュゲートを形成するために利用できる状態のままである。哺乳類の細胞株において発現されるThioMabは、−S−S−結合形成によって外部からコンジュゲートされた改変CysへのCys付加物となる。したがって、精製されたThioMabを、実施例5に記載の還元および再酸化の手順にて処理して、反応性のThioMabsを作製する。これらのThioMabを用いて、細胞毒性薬、発蛍光団および他の標識を含んでいるマレイミドとコンジュゲートさせる。
【0606】
10.免疫リポソーム
本明細書中に開示された抗CD79b抗体はまた、免疫リポソームとして処方されてもよい。「リポソーム」は種々のタイプの脂質、リン脂質および/またはサーファクタントから構成される小胞であって、哺乳動物への薬物の送達に有用である。リポソームの成分は通常は、生物学的な膜の脂質配置と同様の二重層形式で配置される。抗体を含んでいるリポソームは、例えば、Epsteinら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA82;3688(1985);Hwangら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4030(1980);米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびに1997年10月23日公開の国際公開第97/38731号に記載されるような当該分野で公知の方法によって調製される。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。
【0607】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含んでいる脂質組成物を用いる逆相エバポレーション法によって作成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを得るために、規定の細孔のサイズのフィルターを通して押し出される。本発明の抗体のFabフラグメントは、ジスルフィド交換反応を介して、Martinら、
J.Biol.Chem.257:286〜288(1982)に記載されるように、リポソームに結合体化され得る。化学治療剤は、必要に応じて、リポソーム内に含まれる。Gabizonら、
J.National Cancer Inst.81(19)1484(1989)を参照のこと。
【0608】
B.
抗体を作製する特定の方法
1.
所望の特性を有する抗CD79b抗体のスクリーニング
CD79bポリペプチドに結合する抗体を作製するための技術は上記されている。さらに、必要に応じて、特定の生物学的特徴を有する抗体を選択することができる。
【0609】
本発明の抗CD79b抗体の増殖阻害効果を、例えば、内因性にまたはCD79b遺伝子によるトランスフェクション後のいずれかでCD79bポリペプチドを発現する細胞を用いる当該分野で周知の方法によって評価することができる。例えば、適切な腫瘍細胞株およびCD79bでトランスフェクトした細胞は、数日間(例えば、2〜7)日、種々の濃度の本発明の抗CD79bモノクローナル抗体で処理し、クリスタルバイオレットもしくはMTTで染色するか、または幾つかの他の比色アッセイによって分析してもよい。増殖を測定する別の方法は、本発明の抗CD79b抗体の存在または非存在下で処理した細胞による
3H−チミジン取り込みを比較することによる。処理の後、細胞を収集し、DNAへ取り込まれた放射能の量をシンチレーションカウンターで定量化する。適切なポジティブコントロールは、細胞株の成長を阻害することが公知である増殖阻害抗体でその選択した細胞株の処理を包含する。インビボでの腫瘍細胞の増殖阻害は、当該分野で公知である種々の方法で確かめることができる。腫瘍細胞は、CD79bポリペプチドを過剰発現するものであり得る。抗CD79b抗体は、ある実施形態では、約0.5から30μg/mlの抗体濃度で、未処理腫瘍細胞と比べて約25〜100%、より好ましくは約30〜100%、そしてさらにより好ましくは約50〜100%または70〜100%までCD79b発現腫瘍細胞の細胞増殖をインビトロまたはインビボで阻害する。増殖阻害は、細胞培養中で、約0.5〜30μg/mlまたは約0.5nM〜200nMの抗体濃度で測定することができ、その増殖阻害は、抗体への腫瘍細胞の曝露後1〜10日で確かめられる。体重1kgあたり約1μg/kgから約100mg/kgでの抗CD79b抗体の投与が、抗体の最初の投与から約5日から3ヶ月、好ましくは約5から30日以内に腫瘍の大きさの減少または腫瘍細胞増殖の減少を引き起こすならば、抗体はインビボで増殖阻害性である。
【0610】
細胞死を誘発する抗CD79b抗体を選択するために、例えばヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルーまたは7AADの取り込みにより示される膜の完全性の損失度合いをコントロールに対して評価してもよい。PI取り込みアッセイは、補体および免疫エフェクター細胞の非存在下で行われ得る。CD79bポリペプチド発現腫瘍細胞を、培地のみ、または適切な抗CD79b抗体(例えば約10μg/ml)を含有する培地でインキュベートする。細胞を3日間インキュベートする。各処理に続いて、細胞を洗浄し、細胞凝塊除去のために35mmのストレーナキャップ付き12×75試験管(試験管あたり1ml、処理グループあたり3試験管)にアリコートする。次いで、試験管へPI(10μg/ml)を入れる。サンプルは、FACSCAN(登録商標)フローサイトメータおよびFACSCONVERT(登録商標)セルクエスト(CellQuest)ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析してもよい。PI取り込みによって測定されるような、統計的に有意なレベルの細胞死を誘発する抗CD79b抗体を、細胞死誘発性抗CD79b抗体として選択してもよい。
【0611】
目的の抗体が結合したCD79bポリペプチド上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、
Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,編集HarlowおよびDavid Lane(1988)に記載されているような慣用的な交差ブロッキングアッセイを行ってもよい。このアッセイを用いて、試験抗体が公知の抗CD79b抗体と同じ部位またはエピトープと結合するか否かを確定することができる。あるいは、または追加的に、エピトープマッピングを、当該分野で公知の方法によって行ってもよい。例えば、接触残基を同定するために、例えばアラニンスキャンニングによって抗体配列を変異させることができる。この変異体抗体は、適切なフォールディングを確かめるために、最初にポリクローナル抗体との結合について試験される。異なる方法では、CD79bポリペプチドの異なる領域と一致するペプチドを、試験抗体群を用いるか、または試験抗体および特徴付けられるかもしく公知のエピトープを有する抗体を用いる競合アッセイで用いてもよい。
【0612】
2.
特定のライブラリスクリーニング法
本発明の抗CD79b抗体は、所望の活性(単数または複数)を有する抗体についてスクリーニングするためにコンビナトリアルライブラリーを用いて作製することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製して、所望の結合特徴を保有する抗体についてこのようなライブラリーをスクリーニングするためには、当該分野で種々の方法が公知である。このような方法は、一般にMethods in Molecular Biology 178:1〜37(O’Brienら、編集,Human Press,Totowa,NJ)のHoogenboomら、(2001)に、特定の実施形態では、Leeら、(2004)J.Mol.Biol.340:1073〜1093に記載されている。
【0613】
原則的に、合成の抗体クローンは、ファージのコートタンパク質と融合した抗体可変領域(Fv)の種々のフラグメントを提示するファージを含んでいるファージライブラリーをスクリーニングすることによって選択する。このようなファージライブラリーは、所望される抗原に対するアフィニティークロマトグラフィによって選別される。所望される抗原と結合することができるFvフラグメントを発現するクローンは抗原へ吸収され、それによって、ライブラリーの非結合クローンから分離される。次いで、この結合クローンを、抗原から溶出させ、抗原吸収/溶出の追加的サイクルによってさらに濃縮することができる。本発明の任意の抗CD79b抗体は、目的のファージクローンを選択するために適切な抗原スクリーニング手順を設計し、続いて、目的のファージクローンからのFv配列、およびKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,NIH Publication 91〜3242,Bethesda MD(1991),1〜3巻に記載の適切な定常領域(Fc)配列を用いる全長抗CD79b抗体クローンの構築によって得ることができる。
【0614】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合ドメインは、約110アミノ酸の2つの可変(V)領域である各々が軽(VL)および重(VH)鎖由来の領域で形成され、その双方には、3つの超可変ループ(HVR)または相補鎖決定領域(CDR)が存在する。可変ドメインは、Winterら、Ann.Rev.Immunol.,12:433〜455(1994)に記載のように、VHおよびVLが短くて可塑性のペプチドを通じて共有結合している一本鎖Fv(scFv)フラグメントとして、または各々が定常ドメインと融合して非共有的に相互作用しているFabフラグメントとしてファージ上に機能的に提示することができる。本明細書において用いる場合、scFvをコードするファージクローン、およびFabをコードするファージクローンは、総称して「Fvファージクローン」または「Fvクローン」と呼ばれる。
【0615】
VHおよびVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって分離してクローニングし、ファージライブラリーにおいてランダムに組み換えることが可能であり、次いでこれを、Winterら、Ann.Rev.Immunol.,12:433〜455(1994)に記載のように抗原−結合クローンについて探索することが可能である。免疫した供給源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構成する必要がなく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、天然のレパートリーをクローニングして、Griffithsら、EMBO J,12:725〜734(1993)に記載のようになんら免疫化することなく、広範な非自己およびまた自己抗原に対するヒト抗体の単一の供給源を得ることが可能である。最終的には、天然ライブラリーは、また、HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.227:381〜388(1992)に記載のように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングすること、およびランダム配列を有するPCRプライマーを用いて高度に可変のCDR3領域をコードし、インビトロでの再配列を完成させることによって、合成的に作製することができる。
【0616】
ある実施形態では、繊維状ファージは、マイナーなコートタンパク質pIIIへの融合によって、抗体フラグメントを提示するのに用いられる。この抗体フラグメントは、一本鎖Fvフラグメントとして提示することが可能であり、そのVHおよびVLドメインは、例えば、Marksら、J.Mol.Biol.222:581〜597(1991)に記載のように、または、Fabフラグメントとして、可塑性のポリペプチドスペーサーによって同じポリペプチド鎖上に連結されており、ここでは例えば、Hoogenboomら、Nucl.Acids.Res.,19:4133〜4137(1991)に記載のように一方の鎖はpIIIと融合し、他方の鎖は、いくつかの野生型コートタンパク質を置換することによってファージ表面上に提示されるようになるFabコートタンパク質構造のアセンブリがある細菌宿主細胞の周辺質へ分泌される。
【0617】
一般的に、抗体遺伝子フラグメントをコードする核酸は、ヒトまたは動物から収集した免疫細胞から得られる。抗CD79bクローンに有利になるように偏ったライブラリーが望ましい場合には、被験体をCD79bで免疫化して抗体応答を生じさせ、そして、脾臓細胞および/または他の末梢血リンパ球(PBL)である循環B細胞を、ライブラリー構築のために回収する。好ましい実施形態では、CD79b免疫化により、CD79bに対するヒト抗体を産生するB細胞が生じるように、抗CD79bクローンに有利に偏ったヒト抗体遺伝子フラグメントライブラリーを、機能的なヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを担持している(そして、機能的な内因性抗体産生系を欠いている)トランスジェニックマウスにおいて抗CD79b抗体応答を生じさせることによって得る。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの作製は以下に記載する。
【0618】
抗CD79b反応細胞集団のさらなる濃縮は、適切なスクリーニング手順を用いてCD79b特異的膜結合抗体を発現するB細胞を単離すること、例えば、CD79bアフィニティクロマトグラフィによる細胞分離、または蛍光色素標識CD79bへの細胞の吸着とその後の蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって得ることができる。
【0619】
あるいは、非免疫化ドナー由来の脾臓細胞および/またはB細胞または他のPBLの利用によって、可能性のある抗体レパートリーのより良い代表が得られ、またCD79bが抗原性ではない任意の動物(ヒトまたは非ヒト)種を用いた抗体ライブラリーの構築も可能となる。インビトロの抗体遺伝子構築物を取り込むライブラリーに関しては、幹細胞を被験体から収集して非再配列の抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供する。目的の免疫細胞は、種々の動物種、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ目、オオカミ、犬科、ネコ科、ブタ、ウシ、ウマ、および鳥類などから得ることができる。
【0620】
抗体可変遺伝子セグメント(VHおよびVLセグメントを含む)をコードする核酸を、目的の細胞から回収して増幅した。再配列したVHおよびVL遺伝子ライブラリーの場合には、その所望のDNAは、Orlandiら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:3833〜3837(1989)に記載されているように、リンパ球からゲノムDNAまたはmRNAを単離すること、続いて、再配列したVHおよびVL遺伝子の5’および3’末端と一致するプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって得ることが可能であり、これによって発現のための多様なV遺伝子レパートリーが作製される。このV遺伝子は、Orlandiら、(1989)およびWardら、Nature,341:544〜546(1989)に記載のように、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端のバックプライマーとJセグメントに基づいたフォワードプライマーにより、cDNAおよびゲノムDNAから増幅することが可能である。しかしながら、cDNAからの増幅のためには、バックプライマーは、また、Jonesら、Biotechnol.,9:88〜89(1991)に記載のようにリーダーエクソンに、フォワードプライマーは、Sastryら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)86:5728〜5732(1989)に記載のように定常領域内に基づくことが可能である。相補性を最大にするために、Orlandiら、(1989)またはSastryら、(1989)に記載のように、縮重をプライマーに組み込むことが可能である。特定の実施形態では、例えば、Marksら、J.Mol.Biol.,222:581〜597(1991)の方法に記載のように、またはOrumら、Nucleic Acids Res.,21:4491〜4498(1993)の方法に記載のように、免疫細胞の核酸サンプルに存在する全ての入手可能なVHおよびVL配列を増幅するために、各V遺伝子ファミリーを標的にしたPCRプライマーを用いて、そのライブラリーの多様性を最大にする。発現ベクターへの増幅DNAのクローニングに関しては、希な制限部位を、Orlandiら、(1989)に記載のように、またはClacksonら、Nature,352:624〜628(1991)に記載のようにタグ付加したプライマーによるさらなるPCR増幅によって、PCRプライマー内の1つの末端へタグとして導入することができる。
【0621】
合成的に再配列したV遺伝子のレパートリーは、V遺伝子セグメントからインビボで誘導することができる。ほとんどのヒトVH遺伝子セグメントはクローニングおよび配列決定(Tomlinsonら、J.Mol.Biol.227:776〜798(1992)に報告)されており、そしてマッピングされている(Matsudaら,Nature
Genet.,3:88〜94(1993)に報告);これらクローニングされたセグメント(H1およびH2ループの全ての主要な高次構造を含む)は、HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.227:381〜388(1992)に記載のように、多様な配列および長さのH3ループをコードするPCRプライマーを用いて多様なVH遺伝子レパートリーを作製するのに用いられ得る。VHレパートリーは、また、Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4457〜4461(1992)に記載されているように、単一の長さの長いH3ループに焦点を合わせた全ての配列多様性をともなって作製することができる。ヒトのVκおよびVλセグメントは、クローニングおよび配列決定がなされており(WilliamsおよびWinter,Eur.J.Immunol.,23:1456〜1461(1993)に報告されている)、合成軽鎖レパートリーを作製するのに利用することができる。VHおよびVLフォールドの範囲ならびにL3およびH3の長さに基づく合成的V遺伝子レパートリーは、かなりの構造的多様性を有する抗体をコードするであろう。DNAをコードするV遺伝子の増幅に続いて、生殖系のV遺伝子セグメントは、HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.227:381〜388(1992)の方法に従ってインビトロで再配列することができる。
【0622】
抗体フラグメントのレパートリーは、いくつかの方法でVHおよびVL遺伝子レパートリーを共に組み合わせることによって構築することができる。各々のレパートリーを異なるベクターで作製し、そのベクターを、例えば、Hogrefeら、Gene,128:119〜126(1993)に記載のようにインビトロで、またはコンビナトリアルインフェクション、例えばWaterhouseら、Nucl.Acids Res.,21:2265〜2266(1993)に記載のloxP系によってインビボで組み換え作製することが可能である。このインビボの組み換えアプローチでは、E.coli.の形質転換効率によって強いられるライブラリーの大きさの限界を克服するために、二本鎖種のFabフラグメントが利用される。ナイーブなVHおよびVLレパートリーは、1つはファージミドへ、そして他はファージベクターへと個別にクローニングされる。この2つのライブラリーは、その後、ファージミド含有細菌のファージ感染によって組み合わせられ、その結果、各細胞が異なる組み合わせを有し、そのライブラリーの大きさは、存在する細胞の数(約10
12クローン)によってのみ制限される。双方のベクターは、VHおよびVL遺伝子が単一のレプリコンへ組み換えられ、ファージビリオンへ一緒にパッケージされるように、インビボの組み換えシグナルを含む。これら巨大なライブラリーは、良好な親和性(約10
−8MのK
d−1)である多数の多様な抗体を提供する。
【0623】
別法として、このレパートリーは、例えばBarbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978〜7982(1991)に記載のように同じベクターへ連続してクローニングされてもよいし、または、Claksonら、Nature,352:624〜628(1991)に記載のようにPCRとその後クローニングすることによって一緒にアセンブリされてもよい。PCRアセンブリはまた、VHおよびVLのDNAと、可塑性のペプチドスペーサーをコードしているDNAとを連結させて、単鎖のFv(scFv)レパートリーを形成することに用いてもよい。さらに別の技術では、「細胞内でのPCRアセンブリ」は、Embletonら、Nucl.Acids Res.,20:3831〜3837(1992)に記載のように、PCRによってリンパ球内でVHおよびVL遺伝子を組み合わせて、その後、連結した遺伝子のレパートリーをクローニングするのに用いられる。
【0624】
ナイーブなライブラリー(天然または合成のいずれか)によって産生された抗体は、中度の親和性(約10
6〜10
7M
−1のK
d−1)である可能性があるが、Winterら(1994)(上掲)に記載のように二次的なライブラリーから構築して再選択することによって、親和性成熟をもインビトロで模倣することが可能である。例えば、Hawkinsら、J.Mol.Biol.226:889〜896(1992)の方法、またはGramら、Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:3576〜3580(1992)の方法においてエラープローンポリメラーゼ(Leungら、Technique,1:11〜15(1989)で報告されている)を用いることによって、突然変異をインビトロでランダムに導入することができる。さらには、1つ以上のCDRをランダムに変異させることによって、例えば、選択した個々のFvクローンにおいて、目的のCDRまでおよぶランダムな配列を担持しているプライマーによるPCRを用いて、およびより高い親和性クローンをスクリーニングすることによって親和性成熟をおこなうことが可能である。国際公開第9607754号(1996年3月14日に公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域へ突然変異生成を誘導して軽鎖遺伝子のライブラリーを作製する方法を記載している。別の有効なアプローチは、Marksら、Biotechnol.10:779〜783(1992)に記載のように、非免疫化ドナーから得られた天然に存在するVドメイン改変体のレパートリーによるファージディスプレイによって選択されたVHまたはVLドメインを組み換えること、および数回のチェーンシャッフリングにおいてより高い親和性についてスクリーニングすることである。この技術によって、約10
−9M以下という親和性の抗体および抗体フラグメントの産生が可能になる。
【0625】
ライブラリーのスクリーニングは、当該分野で公知の種々の技術によって達成できる。例えば、CD79bを用いて、吸収プレートのウェルをコーティングしてもよいし、吸収プレートへ固定させた宿主細胞上で発現させてもよいし、もしくはセルソーティングで用いてもよいし、またはストレプトアビジンでコーティングしたビーズによる捕獲のためにビオチンとコンジュゲートしてもよいし、またはファージディスプレイライブラリーをパニングするための任意の他の方法において用いてもよい。
【0626】
吸着剤との少なくともファージ粒子の一部分の結合に適切な条件下で、ファージライブラリーのサンプルを固定したCD79bと接触させる。通常は、pH、イオン強度、温度などを含む条件を選択して、生理学的条件を模倣する。固相と結合したファージを洗浄し、その後、例えばBarbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:7978〜7982(1991)に記載されているように酸で、または例えばMarksら、J.Mol.Biol.222:581〜597(1991)に記載にされているようにアルカリで、または例えばClacksonら、Nature,352:624〜628(1991)の抗原競合法に類似の手順においてCD79b抗原競合によって溶出する。ファージは、1回目の選択で20〜1000倍に濃縮することが可能である。さらには、この濃縮したファージを細菌培養液で増殖させ、さらなる回の選択に供することが可能である。
【0627】
選択の効率は多くの要因に依存し、それの要因としては、洗浄の間の解離の反応速度論、そして単一のファージ上の複数の抗体フラグメントが同時に抗原と関われるか否かということが挙げられる。速い解離定数(および弱い結合親和性)を有する抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイおよび固相の抗原の高いコーティング密度を用いることによって保持することが可能である。高密度は、多価相互作用を通じてファージを安定化するだけでなく、解離したファージの再結合に有利に作用する。遅い解離動力学(および良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bassら、Proteins,8:309〜314(1990)および国際公開第92/09690号に記載されているような長い洗浄と単価ファージディスプレイの利用、そしてMarksら、Biotechnol.,10:779〜783(1992)に記載されているような抗原の低度のコーティング密度によって促進することが可能である。
【0628】
CD79bに対する異なる親和性のファージ抗体の間で選択することは、親和性に僅かな違いさえあれば可能である。しかしながら、選択した抗体のランダム変異(例えば、いくつかの親和性成熟の技術で行われているような)は、多くの変異を生じやすく、そのほとんどが抗原と結合し、より高い親和性なのはわずかである。CD79bを限定すると、希な高い親和性のファージを競合して除くことが可能であろう。全てのより高い親和性の変異体を保持するために、ファージは、過度のビオチン化CD79bとインキュベートしてもよいが、CD79bに対する標的モル親和定数よりも低いモル濃度のビオチン化CD79bとインキュベートしてもよい。次いで、高親和性結合ファージをストレプトアビジンでコーティングした常磁性体ビーズによって捕獲することが可能である。そのような「平衡捕獲」によって、結合の親和性に従い、親和性の低い過度のファージから、わずかに2倍程度高い親和性の変異体クローンの単離を可能にする感度で抗体を選択することが可能になる。固相と結合したファージを洗浄するのに用いる条件を操作して、解離定数に基づいて識別することも可能である。
【0629】
抗CD79bクローンは、活性に基づいて選択可能である。特定の実施形態では、本発明は、CD79bを天然に発現する生きている細胞に結合する抗CD79b抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、CD79bリガンドとCD79bとの間の結合をブロックするが、CD79bリガンドと第二のタンパク質との間の結合をブロックしない抗CD79b抗体を提供する。このような抗CD79b抗体に対応するFvクローンは、(1)上記のようなファージライブラリーから抗CD79bクローンを単離し、必要に応じて、適切な細菌宿主で個体集団を成長させることによって、ファージクローンの単離した母集団を増幅する工程;(2)それぞれブロック活性および非ブロック活性のいずれが望まれるかについてCD79bおよび第二タンパク質を選択する工程;(3)固定されたCD79bに抗CD79bファージクローンを吸着する工程;(4)過剰量の第二タンパク質を用いて、第二タンパク質の結合決定基と重複するかまたは共有されるCD79b−結合決定基を認識する任意の望ましくないクローンを溶出する工程;ならびに(5)工程(4)の後に吸着されたまま残ったクローンを溶出する工程、によって選別できる。必要に応じて、所望のブロック/非ブロック特性を有するクローンを、本明細書に記載の選別手順を1つ以上回繰り返すことによって、さらに濃縮してもよい。
【0630】
ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体をコードするDNAまたは本発明のファージディスプレイFvクローンは、従来の手順を用いて(例えば、ハイブリドーマまたはファージDNAテンプレートから目的の領域をコードする重鎖および軽鎖を特異的に増幅するように設定したオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより)容易に単離されて、配列決定される。一旦、単離されれば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では免疫グロブリンタンパク質を産生しないE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞における所望のモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組み換え発現に関する総説文献としては、Skerraら、Curr.Opinion in Immunol.,5:256(1993)およびPluckthun,Immunol.Revs.130:151(1992)が挙げられる。
【0631】
本発明のFvクローンをコードするDNAは、重鎖および/または軽鎖定常領域をコードする公知のDNA配列(例えば、適切なDNA配列は上掲のKabatら、から得ることができる)と組み合わせて、全長もしくは一部の重鎖および/または軽鎖をコードするクローンを形成できる。この目的のために、任意のアイソタイプの定常領域、例えばIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域を用いることができること、ならびにこのような定常領域は任意のヒトまたは動物種から得ることができるということが理解されるであろう。ある動物(例えばヒト)種の可変ドメインDNAに由来し、次いで「ハイブリッド」である全長の重鎖および/または軽鎖のコード配列(単数または複数)を形成するために別の動物種の定常領域DNAに融合されたFvクローンは、本明細書で用いられる「キメラ」および「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。特定の実施形態では、ヒト可変DNAから得たFvクローンをヒト定常領域DNAに融合して、全長もしくは部分長のヒト重鎖および/または軽鎖のコード配列(単数または複数)を形成する。
【0632】
ハイブリドーマ由来の抗CD79b抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローン由来の相同的マウス配列の代わりに、ヒトの重鎖および軽鎖の定常ドメインのコード化配列を置換すること(例えばMorrisonら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,81:6851〜6855(1984)の方法)によって修飾することができる。ハイブリドーマまたはFvクローン由来の抗体もしくは抗体フラグメントをコードするDNAは、免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を共有結合させることによってさらに修飾することができる。そのような方法で、「キメラ」または「ハイブリッド」抗体は、本発明のFvクローンまたはハイブリドーマクローン由来の抗体の結合特異性を有するように調製される。
【0633】
C.
抗体依存性の酵素媒介性プロドラッグ療法(ADEPT)
本発明の抗体はまた、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照のこと)を活性な抗癌剤に変換するプロドラッグ活性化酵素に対してこの抗体をコンジュゲートさせることにより、ADEPTにおいて用いることもできる。例えば国際公開第88/07378号および米国特許第4,975,278号を参照のこと。
【0634】
ADEPTに対して有用なイムノコンジュゲートの酵素成分としては、プロドラッグをそのより活性な細胞毒性型に変換するような方法でプロドラッグに作用しうる任意の酵素を包含する。
【0635】
本発明の方法に有用である酵素としては、限定するものではないが、リン酸含有プロドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;イオウ含有プロドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なアリルスルファターゼ;非毒性5−フルオロシトシンを抗ガン薬、5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えば、ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用である、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン(themolysin)、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(カテプシンBおよびLなど);Dアミノ酸置換体を含むプロドラッグを変換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えば、グリコシル化プロドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なβ−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;β−ラクタムを用いて誘導化されたドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なβ−ラクタマーゼ;ならびに、ペニシリンアミダーゼ、例えば、そのアミン窒素でそれぞれフェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基を用いて誘導化された薬物を遊離の薬物に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼが挙げられる。あるいは、当該分野で「アブザイム」として公知の酵素学的活性を持つ抗体を、本発明のプロドラッグを遊離活性ドラッグに変換するために用いてもよい(例えばMassey,
Nature 328:457〜458(1987)を参照のこと)。抗体−アブザイムコンジュゲートは、腫瘍細胞集団へアブザイムの送達のために本明細書で記載されているように調製してもよい。
【0636】
本発明の酵素は、上記で考察されているヘテロ二官能架橋試薬の使用のような当該分野で周知の技術によって抗CD79b抗体に共有結合されてもよい。あるいは、本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部分に連結された本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質を、当該分野で周知の組換えDNA法を用いて構築してもよい(例えば、Neubergerら、
Nature,312:604〜608(1984)を参照のこと)。
【0637】
D.
抗CD79b抗体
本明細書に記載される抗CD79b抗体に加えて、抗CD79b抗体改変体も調製できると考えられる。抗CD79b抗体改変体は、コードするDNAに適切なヌクレオチド変化を導入することによって、および/または所望の抗体もしくはポリペプチドを合成することによって調製できる。当業者は、グリコシル化部位の数または位置を変化すること、あるいは膜固着特性を変更することなどのアミノ酸変化が抗CD79b抗体の翻訳後プロセシングを変化し得るということを理解するであろう。
【0638】
本明細書に記載の抗CD79b抗体のバリエーションは、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的変異および非保存的変異についての任意の技術およびガイドラインを例えば用いて作製することができる。バリエーションは、天然配列の抗体またはポリペプチドと比較してアミノ酸配列に変化を生じる、この抗体またはポリペプチドをコードする1つ以上のコドンの置換、欠失または挿入であってよい。必要に応じて、このバリエーションは少なくとも1つのアミノ酸を抗CD79b抗体の1つ以上のドメインの任意の他のアミノ酸で置換することによる。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換または欠失されるかを決定する指針は、抗CD79b抗体の配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化の数を最小にすることによって見出され得る。アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を類似した構造および/または化学特性を有する他のアミノ酸で置換すること、例えばロイシンのセリンでの置換、すなわち保存的アミノ酸置換の結果である場合がある。挿入および欠失は、場合によっては約1から5個のアミノ酸の範囲内であってもよい。許容されるバリエーションは、配列においてアミノ酸の挿入、欠失または置換を系統的に作成すること、得られた改変体を全長または成熟した天然の配列によって示される活性について試験することにより確認され得る。
【0639】
抗CD79b抗体フラグメントが本明細書において提供される。このようなフラグメントは、例えば、全長の天然の抗体またはタンパク質と比較した場合に、N−末端もしくはC−末端で短縮されてもよいし、または内部残基を欠いていてもよい。ある種のフラグメントは、抗CD79b抗体の所望の生物学的活性に必須ではないアミノ酸残基を欠いている。
【0640】
抗CD79b抗体フラグメントは、任意の多くの従来技術によって調製することができる。所望のペプチドフラグメントは化学合成してもよい。代替的なアプローチは、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基によって決定される部位のタンパク質を切断することが公知の酵素でタンパク質を処理することによって、または適切な制限酵素でDNAを消化して所望のフラグメントを単離することによって、抗体またはポリペプチドのフラグメントを作製する工程を包含する。さらに別の好適な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望の抗体またはポリペプチドのフラグメントをコードするDNAフラグメントを単離し増幅する工程を包含する。DNAフラグメントの所望の末端を規定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’および3’プライマーで使用される。好ましくは、抗CD79b抗体フラグメントは、本明細書に開示された天然の抗CD79b抗体と少なくとも1つの生物学的および/または免疫学的活性を共有する。
【0641】
特別の実施形態では、目的の保存的置換を、好ましい置換を先頭にして表6に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらすならば、表6に例示的置換と名前を付けるか、または以下にアミノ酸分類でさらに記載するように、より置換的な変化が導入されて、生成物がスクリーニングされる。
【0642】
【表6】
抗CD79b抗体の機能または免疫学的同一性の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシートもしくはらせん高次構造、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のおおきさ(バルク)を維持することに、それらの効果が実質的に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に存在する残基は共通の側鎖特性に基づいて以下のグループに分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0643】
非保存的置換は、これらの分類の1つのメンバーを別の分類に交換することを必要とするであろう。そのように置換された残基はまた、保存的置換部位、より好ましくは残された(非保存)部位に導入され得る。
【0644】
バリエーションは、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、およびPCR突然変異誘発などの当該分野で公知の方法を用いて作製できる。部位特異的な突然変異[Carterら,
Nucl.Acids Res.,
13:4331(1986);Zollerら,
Nucl.Acids Res.,
10:6487(1987)]、カセット突然変異誘発[Wellsら,
Gene,
34:315(1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wellsら,
Philos.Trans.R.Soc.London SerA,
317:415(1986)]または他の公知の技術をクローニングしたDNAに実施して、抗CD79b抗体改変体DNAを作製することができる。
【0645】
スキャンニングアミノ酸分析を使用して隣接配列に沿って1つ以上のアミノ酸を同定することができる。とりわけ好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸としては、アラニン、グリシン、セリン、およびシステインが挙げられる。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し改変体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で代表的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[CunninghamおよびWells,
Science,244:1081〜1085(1989)]。アラニンはまた、最も一般的なアミノ酸であるため代表的には好ましい。さらに、それは埋もれたおよび露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton,
The Proteins,(W.H.Freeman & Co.,N.Y.);Chothia,
J.Mol.Biol.,150:1(1976)]。アラニン置換が十分な量の改変体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いてもよい。
【0646】
抗CD79b抗体の適切な高次構造の維持に関与しない任意のシステイン残基はまた、一般にセリンで置換されて、その分子の酸化に対する安定性を改善し得、そして異常な架橋を妨害し得る。逆に、システイン結合(単数または複数)は、抗CD79b抗体に付加されて、その安定性(特に、その抗体がFvフラグメントのような抗体フラグメントである場合)を改善し得る。
【0647】
特に好ましい型の置換改変体は、親の抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換する工程に関与する。一般に、さらなる開発のために選択された得られた改変体(単数または複数)は、それらが生成される親の抗体に比較して改善された生物学的特性を有する。そのような置換改変体を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレイを用いる親和性成熟を包含する。要するに、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7個の部位)を変異させて全ての可能なアミノ置換を各部位に生成する。このように生成された抗体改変体は、糸状ファージ粒子から一価の様式で、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物に対する融合物として提示される。次いで、ファージディスプレイされた改変体は、本明細書において開示されるように、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。改変について候補となる超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発を行って、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定してもよい。あるいはまたはさらに、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析して抗体とCD79bポリペプチドとの間の接触点を同定することも有利であり得る。そのような接触残基および隣接する残基は、本明細書において説明される技術に従う置換のための候補である。一旦そのような改変体が生成されれば、改変体のパネルが、本明細書において記載されるスクリーニングに供され、そして1つ以上の関連するアッセイにおいて優越した特性を有する抗体を、さらなる開発のために選択することができる。
【0648】
抗CD79b抗体のアミノ酸配列改変体をコードする核酸分子は、当該分野で公知の種々の方法によって調製される。これらの方法としては、天然の供給源(天然に存在するアミノ酸配列改変体の場合)からの単離、または抗CD79b抗体の初期調製の改変体もしくは非改変体バージョンのオリゴヌクレオチド媒介性(または部位指向性)変異誘発、PCR変異誘発、およびカセット変異誘発による調製が挙げられるが、それらに限定されない。
【0649】
E.
抗CD79b抗体の修飾
抗CD79b抗体の共有結合的修飾は、本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の1つの型は、抗CD79b抗体の標的とするアミノ酸残基と、抗CD79b抗体の選択された側鎖またはN末端もしくはC末端残基と反応できる有機誘導体化剤とを反応させる工程を包含する。二官能性剤での誘導体化は、例えば抗CD79b抗体を、抗CD79b抗体の精製方法で用いるための水不溶性支持体マトリクスもしくは表面に架橋させるのにも、またはその逆にも有用である。通常用いられる架橋剤としては、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、例えば4−アジドサリチル酸とのエステル類、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステル類を含むホモ二官能性イミドエステル類、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどの二官能性マレイミド類、およびメチル−3−[(p−アジドフェニル)−ジチオ]プロピオイミダートなどの剤が挙げられる。
【0650】
他の修飾としては、グルタミニルおよびアスパラギニル残基の各々対応するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化[T.E.Creighton,
Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.79〜86(1983)]、N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0651】
本発明の範囲内に含まれる抗CD79b抗体の共有結合的修飾の別の型は、抗体またはポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、本明細書の目的については、天然配列抗CD79b抗体に見られる1つ以上の炭水化物部分の欠失(存在するグリコシル化部位の除去または化学的および/もしくは酵素的手段によるグリコシル化の欠失のいずれかによる)、および/または天然配列の抗CD79b抗体に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。さらに、この文節は、存在する種々の炭水化物部分の性質および特性の変化を含む、天然タンパク質のグリコシル化における定性的変化を包含する。
【0652】
抗体および他のポリペプチドのグリコシル化は、代表的には、N連結またはO連結のいずれかである。N連結とは、アスパラギン残基の側鎖に対する炭水化物部分の結合をいう。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖に炭水化物部分を酵素的に結合するための認識配列である。従って、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を作成する。O連結のグリコシル化とは、N−アセチルガラクトサミン(N−aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースの糖の1つを、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンに対して結合することを指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた用いられてもよい。
【0653】
抗CD79b抗体へのグリコシル化部位の付加は、好都合なことに、上記記載の1つ以上のトリペプチド配列を含むように、アミノ酸配列を変化させることにより達成される(N連結グリコシル化部位について)。この変化はまた、元の抗CD79b抗体の配列に、1つ以上のセリンまたはトレオニン残基を加えることによるか、または置換することによって、行なわれてもよい(O連結グリコシル化部位について)。抗CD79b抗体のアミノ酸配列は、必要に応じて、DNAレベルでの変化、特に、抗CD79b抗体をコードするDNAを予め選択された塩基において変異させ、それによって所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを生成させることを通じて変更されてもよい。
【0654】
抗CD79b抗体上に炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的または酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に発行された国際公開第87/05330号、ならびにAplinおよびWriston,
CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259〜306(1981)に記載されている。
【0655】
抗CD79b抗体上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的もしくは酵素的に、またはグルコシル化の標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によって達成できる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で公知であり、例えば、Hakimuddinら,
Arch.Biochem.Biophys.,
259:52(1987)により、およびEdgeら,
Anal.Biochem.,118:131(1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら,
Meth.Enzymol.
138:350(1987)に記載されているように、種々のエンドおよびエキソグリコシダーゼを用いることにより達成され得る。
【0656】
抗CD79b抗体の共有結合的修飾の別の型は、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンのうちの1つへの、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号または同第4,179,337号に記載された方法で抗体の結合を含む。この抗体はまた、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中か、またはマクロエマルジョン中に、例えば、コアセルベーション技術によるかまたは界面のポリマー化(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタキシレート)マイクロカプセル)によって調製されたマイクロカプセル中に捕捉されてもよい。このような技術は、
Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版、Oslo,A.編(1980)において開示される。
【0657】
本発明の抗CD79b抗体はまた、別の異種のポリペプチドまたはアミノ酸配列に対して融合された抗CD79b抗体を含んでいるキメラ分子を形成するように改変されてもよい。
【0658】
一実施形態では、このようなキメラ分子は、抗CD79b抗体と、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは一般的には、抗CD79b抗体のアミノまたはカルボキシル末端に位置する。このような抗CD79b抗体のエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合する別の型の親和性マトリクスを用いた親和性精製によって抗CD79b抗体を容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチドおよびそれら各々の抗体は、この分野で周知である。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Fieldら,
Mol.Cell.Biol.,
8:2159〜2165(1988)];c−mycタグおよびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evanら,
Molecular and Cellular Biology,
5:3610〜3616(1985)];および単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborskyら,
Protein Engineering,
3(6):547〜553(1990)]が挙げられる。他のタグポリペプチドとしては、フラッグペプチド[Hoppら,
BioTechnology,
6:1204−1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martinら,
Science,
255:192〜194(1992)];α−チューブリンエピトープペプチド[Skinnerら,
J.Biol.Chem.,
266:15163〜15166(1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz−Freyermuthら,
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,
87:6393〜6397(1990)]が挙げられる。
【0659】
代替的な実施形態では、キメラ分子は抗CD79b抗体と、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定領域との融合物を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体は、IgG分子のFc領域であり得る。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも1つの可変領域に換えて抗CD79b抗体の可溶化(膜貫通ドメイン欠失または不活性化)形態の置換を包含する。特に好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH
2およびCH
3、またはヒンジ、CH
1、CH
2およびCH
3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5,428,130号も参照のこと。
【0660】
F.抗CD79b抗体の調製
以下の記載は主に、抗CD79b抗体コード核酸を含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞を培養することによる抗CD79b抗体の産生に関する。当然ながら、当分野に周知の別の方法を使用して、抗CD79b抗体を調製してもよいと考えられる。例えば、固相技術を用いる直接ペプチド合成によって適切なアミノ酸配列またはその一部を産生してもよい(Stewartら、
Solid−Phase Peptide Synthesis,W.H.Freeman Co.,San Francisco,CA(1969);Merrifield,
J.Am.Chem.Soc.,85:2149〜2154(1963)を参照のこと)。インビトロのタンパク質合成は、手動の技術を用いるか、あるいは自動操作により行うことができる。自動化合成は、例えば、Applied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City,CA)を用い、製造元の使用説明に従って行うことができる。抗CD79b抗体の種々の部分を別々に化学合成し、化学的または酵素的方法を用いて組み合わせ、所望の抗CD79b抗体を産生してもよい。
【0661】
1.
抗CD79b抗体をコードするDNAの単離
抗CD79b抗体をコードするDNAは、抗CD79b抗体のmRNAを保有し、それを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーから得ることができる。従って、ヒト抗CD79b抗体のDNAはヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡単に得ることができる。抗CD79b抗体をコードする遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから得てもよいし、または合成手順(例えば、自動化核酸合成)によって得てもよい。
【0662】
ライブラリーは、目的の遺伝子またはそれによってコードされるタンパク質を特定するように設計されたプローブ(例えば、少なくとも約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)を用いてスクリーニングできる。Sambrookら、
Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載のような標準的手法を用い、選択されたプローブでcDNAまたはゲノムライブラリーのスクリーニングを行うことができる。抗CD79b抗体をコードする遺伝子を単離する別の方法は、PCR法を用いることである(Sambrookら、上掲;Dieffenbachら、
PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995))。
【0663】
cDNAライブラリーのスクリーニング技術は当該分野で周知である。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、偽陽性を最小化するのに十分な長さでかつ十分明確なものでなければならない。スクリーニングされるライブラリー中のDNAとのハイブリダイゼーションの際に検出可能であるように、オリゴヌクレオチドを標識するのが好ましい。標識化の方法は当該分野で周知であり、これには、
32P標識したATPなどの放射性方式、ビオチニル化または酵素標識の使用が挙げられる。中ストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、Sambrookら、(上掲)中に提供される。
【0664】
このようなライブラリスクリーニング法において同定された配列を、GenBankのような公的なデータベースまたは他の私的配列データベースにおいて寄託されて、入手可能な他の既知の配列と比較し、アラインメントすることができる。分子の規定の領域内または全長配列にわたる(アミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルのいずれかでの)配列同一性は、当該分野で公知および本明細書で記載されるような方法を用いて決定できる。
【0665】
タンパク質コード配列を有する核酸は、最初、本明細書中に開示される、推論されたアミノ酸配列を用いて選択されたcDNAまたはゲノムのライブラリーをスクリーニングし、必要であれば、Sambrookら、(上掲)に記載の慣用のプライマー伸張手順を用いて、cDNAに逆転写されなかった場合もあるmRNAの前駆体およびプロセッシング中間生成物を検出することによって、得ることができる。
【0666】
2.宿主細胞の選択および形質転換
抗CD79b抗体生産用の本明細書中に記載の発現ベクターまたはクローニングベクターで宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅用に適当なように修飾された従来の栄養培地中で培養する。当業者であれば、過度に実験することなしに、培地、温度、pHなどのような培養条件を選択することができる。一般に、細胞培養物の生産性を最大にするための原理、プロトコルおよび実施技術は、
Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach,M.Butler,編集(IRL Press,1991)および Sambrookら(上掲)中に見出すことができる。
【0667】
真核生物細胞のトランスフェクション法、および原核生物細胞の形質転換法とは、染色体外として、または染色体成分としてのいずれかでDNAが複製可能であるような宿主へのDNAの導入を意味しており、例えば、CaCl
2、CaPO
4、リポソーム媒介性のポリエリレン−グリコールDMSOおよびエレクトロポレーションが、当業者に公知である。用いる宿主細胞に応じ、このような細胞に適当な標準的技術を用いて形質転換を行う。Sambrookら、(上掲)に記載の塩化カルシウムを使用するカルシウム処理、またはエレクトロポレーションが一般に、原核生物に用いられる。Agrobacterium tumefaciensを用いる感染は、Shawら、
Gene、23:315(1983)および国際公開第89/05859号(1989年6月29日公開)により記載されるように、特定の植物細胞の形質転換のために用いられる。そのような細胞壁を有さない哺乳動物細胞については、Grahamおよびvan der Eb、
Virology、52:456〜457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法が使用され得る。哺乳動物宿主系のトランスフェクションの一般的な局面は、米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母への形質転換は、代表的には、Van Solingenら、
J.Bact.、
130:946(1977)およびHsiaoら、
Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、76:3829(1979)の方法に従って実施される。しかし、細胞へとDNAを導入するための他の方法、例えば、核のマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、インタクトな細胞と細菌のプロトプラストとの融合、またはポリカチオン(例えば、ポリブレン、ポリオルニチンなど)による方法もまた用いられてもよい。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keownら、
Methods in Enzymology、185:527〜537(1990)およびMansourら、
Nature,336:348〜352(1988)を参照のこと。
【0668】
本明細書のベクターにおいてDNAをクローニングまたは発現するための適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母、または高等な真核生物の細胞が挙げられる。
【0669】
a.原核生物宿主細胞
適当な原核生物としては、限定するものではないが、古細菌および真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えば、E.coliが挙げられる。E.coliのK12株MM294(ATCC 31,446);E.coli X1776(ATCC 31,537);E.coli株W3110(ATCC 27,325)およびK5 772(ATCC 53,635)などの種々のE.coli株が公的に利用可能である。他の適切な原核生物宿主細胞としては、Enterobacteriaceae、例えば、Escherichia(例えば、E.coli)、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella(例えば、Salmonella typhimurium)、Serratia(例えば、Serratia marcescans)およびShigella、ならびにBacilli、例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266,710に開示されているB.licheniformis 41P)、Pseudomonas、例えば、P.aeruginosa、Rhizobia、Vitreoscilla,ParacoccusおよびStreptomycesが挙げられる。これらの例は、限定的ではなく例示的である。W3110株は、組換えDNA産物の発酵に対する一般的な宿主株であるので、このW3110株は、1つの特に好ましい宿主または親宿主である。好ましくはこの宿主細胞は、最少量のタンパク分解性酵素を分泌する。例えば、W3110株(Bachmann,
Cellular and Molecular Biology,第2巻(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),1190〜1219頁;ATCC寄託番号27,325)を改変して、宿主に対して内因性のタンパク質をコードする遺伝子中の遺伝子変異をもたらしてもよく、このような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有するE.coli W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有するE.coli W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT kan
rを有するE.coli W3110株27C7(ATCC55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan
rを有するE.coliのW3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を有する37D6株であるE.coliのW3110株40B4;遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE)degP41 kan
Rを有するE.coliのW3110株33D3(米国特許第5,639,635号)、および1990年8月7日発行の米国特許第4,946,783号に開示される変異体周辺質プロテアーゼを有するE.coli株が挙げられる。他の株およびその誘導体、例えば、E.coli294(ATCC 31,446)、E.coliB、E.coli
λ 1776(ATCC 31,537)およびE.coliRV308(ATCC 31,608)も適切である。これらの例は限定的なものでなく例示的なものである。定義した遺伝子型を有する上述のいずれかの細菌の誘導体の構築方法は当業者に公知であり、例えば、Bassら、
Proteins,8:309〜314(1990)に記載されている。一般的に、細菌細胞中でのレプリコンの複製能を考慮して適切な細菌を選択することが必要である。pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410のような周知のプラスミドを用いてレプリコンを供給する場合、例えば、E.coli、セラシア属、またはサルモネラ種を宿主として適切に用いることができる。代表的には、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌しなければならず、望ましくはさらなるプロテアーゼインヒビターを細胞培養中に組み込んでもよい。あるいは、クローニングのインビトロ方法、例えば、PCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応が適切である。
【0670】
全長抗体、抗体フラグメント、および抗体融合タンパク質は、治療用の抗体が細胞毒性剤(例えば、毒素)にコンジュゲートし、そのイムノコンジュゲートそのものが腫瘍細胞の破壊において有効性を示す場合など、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要ない場合には、細菌で産生することができる。全長抗体は、血液循環でより長い半減期を有する。E.coliでの産生が、より迅速でより費用効率的である。細菌での抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、および米国特許第5,840,523号(Simmonsら)(翻訳開始領域(TIR)ならびに発現および分泌を最適化するシグナル配列を記載している)を参照のこと。これらの特許は、本明細書において出典明記によって援用されている。発現の後、抗体は、E.coli細胞ペーストから可溶性分画へ分離され、例えば、アイソタイプに依存してプロテインAまたはGカラムを通じて精製することができる。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現させた抗体を精製するためのプロセスと同様に行うことができる。
【0671】
b.真核生物宿主細胞
原核生物に加えて、糸状菌または酵母菌のような真核微生物は、抗CD79b抗体をコードするベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他には、Schizosaccharomyces pombe(Beach and Nurse,
Nature,290:140[1981];1985年5月2日公開の欧州特許第139,383号);Kluyveromyces属宿主(米国特許第4,943,529号;Fleerら、
Bio/Technology,9:968〜975(1991))(例えば、K.lactis(MW98−8C、CBS683、CBS4574;Louvencourtら、
J.Bacteriol.,154(2):737〜742[1983])、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K.waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906;Van den Bergら、
Bio/Technology,8:135(1990))、K.thermotoleransおよびK.marxianus);yarrowia属(欧州特許第402,226号);Pichia pastoris(欧州特許第183,070号;Sreekrishnaら、J.Basic
Microbiol.,28:265〜278[1988]);Candida属;Trichoderma reesia(欧州特許第244,234号);Neurospora crassa(Caseら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:5259〜5263[1979]);Schwanniomyces属(例えば、Schwanniomyces occidentalis(1990年10月31日公開の欧州特許第394,538号));および糸状菌、例えば、Neurospora属、Penicillium属、Tolypocladium属(1991年1月10日公開の国際公開第91/00357号)およびAspergillus属宿主(例えば、A.nidulans(Ballanceら、
Biochem.Biophys.Res.Commun.,112:284〜289[1983];Tilburnら、
Gene,26:205〜221[1983];Yeltonら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:1470〜1474[1984])およびA.niger(Kelly and Hynes,EMBO J.,4:475〜479[1985]))などが挙げられる。メチロトローフ(Methylotropic)酵母が、本発明において適しており、これらとしては、限定するものではないが、Hansenula属、Candida属、Kloeckera属、Pichia属、Saccharomyces属、Torulopsis属およびRhodotorula属からなる属から選択される、メタノールで生育できる酵母が挙げられる。このクラスの酵母の例となる特定の種のリストは、C.Anthony,
The Biochemistry of Methylotrophs,269(1982)に見出すことができる。
【0672】
グリコシル化された抗CD79b抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物由来である。無脊椎動物の細胞の例としては、昆虫細胞、例えば、Drosophila S2およびSpodoptera Sf9、ならびに植物細胞、例えば、ワタ、コーン、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコの細胞培養物が挙げられる。多くのバキュロウイルス株および改変体、ならびに対応する許容可能な昆虫宿主細胞が、Spodoptera frugiperda(イモ虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster、(ショウジョウバエ)およびBombyx mori等の宿主から同定されている。例えばAutographa californica NPVのL−1改変体およびBombyx mori NPVのBm−5株などのトランスフェクションのための多くのウイルス株が公的に入手可能であり、このようなウイルスは本発明におけるウイルスとして特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために用いられ得る。
【0673】
しかしながら、最大の目的は脊椎動物細胞であり、培養物(組織培養物)中での脊椎動物細胞の増殖は慣用的な手順である。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎細胞株(293または懸濁培養中の生育についてサブクローニングされた293細胞、Grahamら、
J.Gen.Virol.36:59(1977));仔ハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaubら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,
Biol.Reprod.23:243〜251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト頸部腫瘍細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep
G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL
51);TRI細胞(Matherら、
Annal.N.Y.Acad.Sci.383:44〜68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;ならびにヒト肝癌系(Hep G2)である。
【0674】
宿主細胞は、抗CD79b抗体産生のための上述した発現ベクターまたはクローニングベクターにより形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に修飾された慣用の栄養媒体中で培養される。
【0675】
3.
複製可能なベクターの選択および使用
本発明の抗体の組み換え産生のために、この抗体をコードする核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)を、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、単離して、複製可能なベクター内に挿入する。この抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離されて、配列決定される。多くのベクターが入手可能である。ベクターの選択は、用いられるべき宿主細胞に一部は依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般には哺乳動物)のいずれかに由来する。
【0676】
このベクターは例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子またはファージの形態であってもよい。この適切な核酸配列は、種々の手順によってベクターに挿入され得る。一般には、DNAは、当該分野で公知の技術を用いて適切なエンドヌクレアーゼ部位(単数または複数)に挿入される。ベクター成分としては一般には、限定するものではないが、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終止配列のうちの1つ以上を含む。これらの成分のうちの1つ以上を含んでいる適切なベクターの構築物は、当業者に公知である標準的なライゲーション技術を使用する。
【0677】
CD79bは、組換え的に直接に産生されてよいし、それだけではなく、シグナル配列であっても、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN−末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドであってもよい異種的ボリペプチドとの融合ポリペプチドとしても産生されてもよい。一般的に、シグナル配列は、ベクターの成分であってよいし、またあるいはベクターに挿入される抗CD79b抗体コードDNAの一部であってもよい。シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーからなる群から選択される原核細胞性シグナル配列であってもよい。酵母分泌のためには、シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(SaccharomycesおよびKluyveromyces α−因子リーダーを含む、後者は米国特許第5,010,182号に記載されている)、または酸ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行の欧州特許第362,179号)または1990年11月15日発行の国際公開第90/13646号に記載されるシグナルであってもよい。哺乳動物細胞の発現において、哺乳動物シグナル配列を用いて、タンパク質、例えば、同種または関連の種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列、およびウイルスの分泌リーダーの分泌を指示してもよい。
【0678】
a.原核生物宿主細胞
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組み換え技術を用いて得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列を抗体産生細胞例えばハイブリドーマ細胞から単離して配列決定してもよい。あるいはポリヌクレオチドは、ヌクレオチドシンセサイザーまたはPCR技術を用いて合成してもよい。一旦得られれば、ポリペプチドをコードする配列を、原核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製かつ発現できる組み換えベクターに挿入する。利用可能であってかつ当該分野で公知の多くのベクターを本発明の目的に用いることができる。適切なベクターの選択は主に、ベクターに挿入されるべき核酸のサイズおよびこのベクターで形質転換されるべき特定の宿主細胞に依存するであろう。各々のベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはその両方)およびそのベクターが存在する特定の宿主細胞との適合性次第で、種々の成分を含む。
【0679】
一般には、宿主細胞と適合する種に由来するレプリコンおよび制御配列を含んでいるプラスミドベクターをこれらの宿主と関連して用いる。発現ベクターおよびクローニングベクターは共に1つ以上の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列、および形質転換された細胞において表現型選択をもたらし得るマーキング配列を含む。このような配列は種々の細菌、酵母およびウイルスについて周知である。アンピシリン耐性をコードする遺伝子(Amp)、およびテトラサイクリン耐性をコードする遺伝子(Tet)を含んでおり、これによって形質転換細胞を特定する容易な手段をもたらすプラスミドpBR322に由来する複製起点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、そして種々のウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、内因性のタンパク質の発現のための微生物によって用いられ得るプロモーターを含んでもよいし、含むように改変されてもよい。特定の抗体の発現のために用いられるpBR322誘導体の例は、米国特許第5,648,237号に詳細に記載される。
【0680】
さらに、宿主微生物と適合性であるレプリコンおよび制御配列を含んでいるファージベクターを、これらの宿主と関連して形質転換ベクターとして用いてもよい。例えば、λGEM.TM.−11のようなバクテリオファージを、E.coliのLE392のような感受性の宿主細胞を形質転換するために用いることができる組換えベクターを作製する際に利用することができる。
【0681】
本発明の発現ベクターは各々のポリペプチド成分をコードしている2つ以上のプロモータ−シストロン対を含んでもよい。プロモーターはその発現を調節するシストロンの上流(5’)に位置している非翻訳調節配列である。原核生物のプロモーターは代表的には誘導性と構成的の二つのクラスのものにおさまる。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養分の有無または温度の変化に応答してその制御下でシストロンの転写レベルを増大させるように開始するプロモーターである。
【0682】
種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。選択したプロモーターを、制限酵素消化を介して供給源のDNAからプロモーターを除去すること、および本発明のベクター内に単離したプロモーターを挿入することによって、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。天然プロモーター配列と多くの異種プロモーターの双方を用いて、標的遺伝子の増幅および/または発現を指示させてもよい。ある実施形態では、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、異種プロモーターは一般的に、発現する標的遺伝子をより多く転写させ、効率をよくするので有用である。
【0683】
種々の原核生物宿主によって認識されるプロモーターが周知である。原核生物宿主との使用に適切なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系[Changら、
Nature,275:615(1978);および[Goeddelら、
Nature,281:544(1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddelら、
Nucleic AcidsRes.,8:4057(1980)、および欧州特許第36,776号]、および、tacプロモーターなどのハイブリッドプロモーター[deBoerら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21〜25(1983)]またはtrcプロモーターが挙げられる。細菌の系で用いるためのプロモーターはまた、抗CD79b抗体をコードしているDNAに作動可能に連結されているシャイン−ダルガーノ(S.D.)配列も含むであろう。しかし、細菌で機能的である他のプロモーター(例えば、他の公知の細菌またはファージのプロモーター)も適切である。それらのヌクレオチド配列は、公開されているので、当業者は任意の必要な制限酵素部位をもたらすためのリンカーまたはアダプターを用いて、標的の軽鎖および重鎖をコードするシストロンにこれらの配列を作動可能に連結させることができる(Siebenlistら、(1980)Cell 20:269)。
【0684】
本発明の一局面において、組換えベクター内の各シストロンは、発現ポリペプチドの膜を横断する移行を指示する分泌シグナル配列成分を含む。一般的に、シグナル配列は、ベクターの一成分であってもよいし、またはそのシグナル配列は、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明の目的のために選択されるシグナル配列とは、宿主細胞により認識されプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)配列であるべきである。異種ポリペプチドに固有のシグナル配列を認識せず、プロセシングしない原核宿主細胞のために、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippまたは耐熱性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpAおよびMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。本発明の一実施形態において、発現系の両シストロンに用いられるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはそれらの改変体である。
【0685】
別の局面において、本発明による免疫グロブリンの産生は宿主細胞の細胞質で起きることが可能であり、従って、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。この点において、免疫グロブリンの軽鎖と重鎖が、発現され、折り畳まれ、組み合されて、機能的な免疫グロブリンが細胞質内に形成される。ある種の宿主株(例えば、E.coliのtrxB株)は、ジスルフィド結合形成に有利な細胞質条件を提供することにより、発現タンパク質サブユニットの適切な折り畳みと構築を可能とする(ProbaおよびPluckthun Gene,159:203(1995))。
【0686】
本発明は、分泌され適切にアセンブリされた本発明の抗体の収率を最大化するために、発現されるポリペプチド成分の量的な比が調節され得る発現系を提供する。そのような調節は、少なくとも部分的には、ポリペプチド成分についての翻訳強度を同時に調節することにより達成される。
【0687】
翻訳強度を調節するための一つの技術は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に開示されている。それは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の改変体を利用する。所与のTIRに関して、一連のアミノ酸配列改変体または核酸配列改変体を、種々の翻訳強度で産生することにより、特定の鎖の望ましい発現量のためにこの因子を調節する便利な手段が提供できる。TIR改変体は、アミノ酸配列を変えることのできるコドン変化をもたらす従来の変異誘発技術により産生することができるが、ヌクレオチド配列においてはサイレントな変化が好ましい。TIRの変化として、例えば、シグナル配列の変化とともにシャイン・ダルガーノ配列の数またはスペーシングの変化を挙げることができる。変異体シグナル配列を産生するための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、この変化はサイレントである)コード配列の初めに「コドンバンク(codon bank)」を産生することである。これは、各コドンの第3ヌクレオチド位置を変えることにより達成することができる;さらに、ロイシン、セリンおよびアルギニンなどのいくつかのアミノ酸は、複数の第1位置および第2位置を有しており、これによってこのバンクを作製するのに複雑性を加えることができる。この変異誘発の方法は、Yansuraら(1992)METHODS:A Companion to Methods in Enzymol.4:151〜158に詳細に説明されている。
【0688】
好ましくは、1セットのベクターを、そこでの各シストロンに対して、ある範囲のTIR強度により生成する。この制限されたセットによって、種々のTIR強度の組合せにおいて各鎖の発現量ならびに所望の抗体産物の収率の比較が提供される。TIR強度は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に詳細に記載されているように、レポーター遺伝子の発現レベルを定量することにより決定することができる。翻訳強度の比較に基づき、所望の個々のTIRを選択して、本発明の発現ベクター構築物中に組み合わせる。
【0689】
b.真核生物宿主細胞
ベクター成分としては一般には、限定するものではないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーターおよび転写終結配列。
【0690】
(1)シグナル配列成分
真核宿主細胞に使用されるベクターはまた、目的の成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に、特異的切断部位を有しているシグナル配列または他のポリペプチドを含んでもよい。選択された異種シグナル配列は好ましくは、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)配列である。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスのgDシグナルを利用することができる。
【0691】
そのような前駆体領域のDNAを、抗体をコードするDNAとリーディングフレーム内で連結する。
【0692】
(2)複製起点
一般的に、複製起点成分は、哺乳類の発現ベクターには必要とされない。例えば、SV40起点は代表的には、初期プロモーターを含むという理由だけで用いられ得る。
【0693】
(3)選択遺伝子成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは代表的に、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含むだろう。代表的な選択遺伝子は、以下をコードする(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求欠損を補うタンパク質、または(c)複合培地からは利用できない重要な栄養素を供給するタンパク質(例えば、Bacilliに関してはD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)。
【0694】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。異種遺伝子により首尾よく形質転換された細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生するので、選択レジメンを生残する。そのような優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを用いる。
【0695】
哺乳類細胞の適切な選択マーカーの例は、DHFRまたはチミジンキナーゼ、メタロチオネインIおよびメタロチオネインII、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどの、抗CD79b抗体コード核酸を取り込むのに適格な細胞の同定を可能とするマーカーである。適切な宿主細胞は、野性型のDHFRを使用する場合、Urlaubら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980)によって記載されるように調製され増殖される、DHFR活性を欠くCHO細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)である。例えば、DHFR選択遺伝子により形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキセート(Mtx)を含む培養培地で全ての形質転換体を培養することによって、最初に同定される。あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質をコードするDNA配列、および他の選択マーカー(例えばアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH))をコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に内因性DHFRを含む野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質(例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418)などの選択マーカーに関する選択物質を含んでいる培地中での細胞成長により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照のこと。
【0696】
酵母で用いるのに適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcombら、
Nature,282:39(1979);Kingsmanら、
Gene,7:141(1979);Tschemperら、
Gene,10:157(1980)]。The trp1遺伝子は、トリプトファンで増殖する能力を欠いている酵母の変異体株の選択マーカー、例えば、ATCC No.44076またはPEP4−1[Jones,
Genetics,85:12(1977)]を提供する。
【0697】
(4)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは通常、mRNA合成を指示するために抗CD79b抗体コード核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞によって認識されるプロモーターが周知である。
【0698】
事実上全ての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するATが豊富な領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、CNCAAT領域(ここで、Nはいずれのヌクレオチドであってもよい)である。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加のためのシグナルであってよいAATAAA配列である。これらの配列の全てを、真核生物発現ベクターに適切に挿入する。
【0699】
酵母宿主において使用するための適切なプロモーター配列の例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター(Hitzemanら、
J.Bio.Chem.,255:2073(1980));または他の解糖酵素[Hessら、
J.Adv.Enzyme Reg.7:149(1968);Holland,
Biochemistry,17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビル酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼが挙げられる。
【0700】
増殖条件によって制御される転写のさらなる利点を有する誘導性のプロモーターである、他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用を担う酵素のプロモーター領域である。酵母発現における使用のために適するベクターおよびプロモーターは、さらに欧州特許第73,657号に記載される。
【0701】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗CD79b抗体転写は、例えば、ウイルスのゲノムから得られたプロモーターによって制御され、これらのウイルスの例は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開された英国特許第2,211,504号)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2型)、ウシパピローマウイルス、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび、シミアンウイルス40(SV40)であり、これらは異種の哺乳動物プロモーター(例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター)由来、および熱ショックプロモーター由来であり、ただしこのようなプロモーターは、宿主細胞系と適合性である。
【0702】
SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含んでいる、SV40制限フラグメントとして都合よく得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして都合よく得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして用いる哺乳動物宿主細胞においてDNAを発現するための系は、米国特許第4,419,446号において開示される。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に記載される。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下のマウス細胞におけるヒトβインターフェロンcDNAの発現に関してはReyesら、Nature,297:598〜601(1982)を参照のこと。あるいは、Rous肉腫ウイルスの長末端反復をプロモーターとして用いてもよい。
【0703】
(5)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による抗CD79b抗体をコードするDNAの転写は、ベクター中へエンハンサー配列を挿入することによって増強してもよい。エンハンサーは、DNAのシス作用性エレメントであり、通常約10〜300bpであり、その転写を増強するようにプロモーターに作用する。現在哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、αフェトプロテインおよびインシュリン)由来の多くのエンハンサー配列が公知である。しかし、代表的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが、使用される。例としては、複製起点(100〜270bp)の後期側面(late side)上のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側面上のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。Yaniv,Nature,297:17〜18(1982)(真核生物プロモーターの活性化のための促進エレメントに関する)を参照のこと。このエンハンサーは、抗CD79b抗体コード配列の5’位または3’位においてベクターにスプライシングされてもよいが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。
【0704】
(6)転写終止成分
真核生物宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物由来の有核細胞)において用いられる発現ベクターはまた、転写の終結のため、およびmRNAの安定化のために必要な配列を含む。このような配列は、一般に、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの非翻訳領域の5’から、そして場合によって3’から入手可能である。これらの領域は、抗CD79b抗体をコードするmRNAの非翻訳部分においてポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終止成分は、ウシ増殖ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号およびそこに開示される発現ベクターを参照のこと。
【0705】
組換え脊椎動物細胞培養物において抗CD79b抗体の合成への適用のために適切なさらに他の方法、ベクターおよび宿主細胞は、Gethingら、
Nature,293:620〜625(1981);Manteiら、
Nature,281:40〜46(1979);欧州特許第117,060号;および欧州特許第117,058号に記載される。
【0706】
4.
宿主細胞を培養する工程
本発明の抗CD79b抗体を産生するために用いられる宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。
【0707】
a.原核生物宿主細胞
本発明のポリペプチドを生産するために使用される原核生物細胞は、当該分野で公知であって、かつ選ばれた宿主細胞の培養に適切な培地において育成される。好適な培地の例としては、必須栄養添加物を加えたルリアブロス(LB)が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地はまた、発現ベクターを含んでいる原核細胞の増殖を選択的に可能とするために、発現ベクターの構築に基づいて選ばれる選択剤を含む。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のために、培地にアンピシリンが加えられる。
【0708】
炭素、窒素、および無機リン酸供給源の外に、任意の必須の補充物が、単独で、または、別の補充物との混合物として、または、窒素複合供給源などの培地として、導かれた適切な濃度で含まれてもよい。必要に応じて培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール、およびジチオスレイトールからなる群より選ばれる一つ以上の還元剤を含んでもよい。
【0709】
原核宿主細胞は、適切な温度で培養される。E.coli増殖のためには、例えば、好ましい温度は、約20℃から約39℃の範囲、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、さらに好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に、宿主生物に依存して、約5から約9の範囲内の任意のpHであってもよい。E.coliの場合、pHは、好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
【0710】
本発明の発現ベクターにおいて誘導性プロモーターが使用される場合、タンパク発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本発明の一局面では、ポリペプチドの転写調節のために、PhoAプロモーターが用いられる。従って、形質転換される宿主細胞は、誘導のために、リン酸塩制限培地において培養される。好ましくは、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmonsら、J.Immunol.Methods(2002),263:133〜147を参照のこと)。当該分野で公知のとおり、使用されるベクター構築体にしたがって、他にも、種々の誘導因子を用いてもよい。
【0711】
一実施形態では、本発明の発現されたポリペプチドは、宿主細胞の周辺質に分泌され、周辺質から回収される。タンパク回収は代表的には、微生物を、一般には、浸透圧ショック、超音波処理、または溶菌などの手段によって破壊する工程を包含する。一旦細胞が破壊されたならば、細胞破片または全体細胞は、遠心またはろ過によって除去してもよい。タンパクはさらに、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィによって精製してもよい。あるいは、タンパクを培養培地に移し、その中で単離することも可能である。細胞を、培養物から取り出し、培養上清をろ過し、濃縮して、生産されたタンパクをさらに精製してもよい。この発現されたポリペプチドを、通常公知の方法、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、およびウェスタンブロットアッセイを用いてさらに単離し、特定することも可能である。
【0712】
本発明の一局面では、抗体生産は、発酵プロセスによって大量に実行される。組み換えタンパクの生産のためには、種々の大規模フィード・バッチ・ファーメンテーション手順が利用可能である。大規模ファーメンテーションは、少なくとも1000リットル容量、好ましくは約1,000から100,000リットルという容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を拡散させるために攪拌インペラーを用いる。小規模ファーメンテーションとは、一般に、容積が約100リットル以下の発酵槽におけるファーメンテーションを指し、約1リットルから約100リットルの範囲にあってもよい。
【0713】
発酵プロセスでは、タンパク発現の誘導は、代表的には、細胞が、適切な条件下で所望の密度、例えば、OD
550が約180〜220となるまで育成された後、すなわち、細胞が初期の静止期に達した段階で、起動される。当該分野で公知でありかつ、上記されるとおり、使用されるベクター構築体に応じて、各種の誘起因子を用いてもよい。細胞は、誘導前に、より短い期間育成してもよい。細胞は、通常、約12〜50時間誘導されるが、それよりも長いか、または短い誘導時間を用いてもよい。
【0714】
本発明のポリペプチドの生産収率および品質を向上するために、様々の発酵条件を改変してもよい。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切なアセンブリおよび折り畳みを向上させるために、シャペロンタンパク、例えば、Dsbタンパク(DsbA、DsbB、DscC、DsbD、およびまたはDsbG)、またはFkpA(シャペロン活性を有する、ペプチジルプロリルシス、トランス−イソメラーゼ)を過剰発現する追加のベクターを用いて、宿主原核細胞を同時形質転換してもよい。このシャペロンタンパクは、細菌宿主細胞において生産される異種タンパクの適切な折り畳みおよび可溶性を促進することが示されている。Chen ら(1999)J Biol Chem 274:19601〜19605;Georgiouら、米国特許第6,083,715号;Georgiouら、米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100〜17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106〜17113;Arieら(2001)Mol.Microbiol.39:199〜210。
【0715】
発現される異種タンパク(特に、タンパク分解に感受性を持つもの)の分解を最小にするために、タンパク分解酵素を欠乏する、いくつかの宿主株を本発明のために用いることが可能である。例えば、公知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、およびそれらの組み合わせをコードする遺伝子において遺伝子突然変異(単数または複数)を実現するように、宿主細胞株を修飾してもよい。いくつかのE.coliのプロテアーゼ欠損株が入手可能であって、例えば、Jolyら(1998)上掲;Georgiouら、米国特許第5,264,365号;Georgiouら、米国特許第5,508,192号;Haraら、Microbial Drug Resistance,
2:63〜72(1996)に記載される。
【0716】
一実施形態では、タンパク分解酵素を欠き、かつ、1つ以上のシャペロンタンパクを過剰発現するプラスミドによって形質転換されるE.coli株が、本発明の発現系における宿主細胞として用いられる。
【0717】
b.真核生物宿主細胞
市販の培地(例えば、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地(Minimal Essential Medium)((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma))は、宿主細胞の培養に適する。さらに、Hamら、
Meth.Enz.、58:44(1979)、Barnesら、
Anal.Biochem.、102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号または;同第5,122,469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;あるいは米国再発行特許第30,985号に記載される任意の培地が、宿主細胞のための培養培地として用いられ得る。任意のこれらの培地は、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびホスフェート)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオシド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬物)、微量元素(通常、μMの範囲の最終濃度で存在する無機化合物として規定される)、そしてグルコースまたは等価なエネルギー供給源を補充されてもよい。任意の他の必要な補充物もまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれてもよい。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現について選択された宿主細胞に予め用いられる条件であり、当業者に明らかである。
【0718】
5.
遺伝子増幅/発現を検出する工程
サンプル中の遺伝子増幅および/または遺伝子発現は、例えば、本明細書中に提供される配列に基づいて、適切に標識化されたプローブを用いて、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロッティング[Thomas、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:5201〜5205(1980)]、ドットブロッティング(DNA分析)、またはインサイチュハイブリダイゼーションによって直接的に測定され得る。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖、またはDNA−タンパク質二重鎖を含む、特定の二重鎖を認識し得る抗体を使用してもよい。次いで、この抗体は、標識されてもよく、そしてどこでこの二重鎖が表面に結合しているかのアッセイが実施されてもよく、その結果、表面上での二重鎖の形成の際に、この二重鎖に結合している抗体の存在が検出され得る。
【0719】
あるいは、遺伝子発現は、免疫学的方法、例えば、遺伝子産物発現を直接的に定量するための細胞または組織切片の免疫組織化学染色および細胞培養物または体液のアッセイによって、測定され得る。免疫組織化学染色および/またはサンプル体液のアッセイのために有用な抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよく、任意の哺乳動物で調製され得る。都合よいことに、この抗体は、天然のCD79bポリペプチドに対して、または本明細書に提供されるDNA配列に基づく合成ペプチドに対して、またはCD79bのDNAに融合されており特定の抗体エピトープをコードしている外因性配列に対して調製されてもよい。
【0720】
6.
抗CD79b抗体の精製
抗CD79b抗体の型は培養培地から回収されても、または宿主細胞溶解物から回収されてもよい。膜結合する場合、抗CD79b抗体は、適切な界面活性剤溶液(例えば、Triton−X 100)を用いること、または酵素的切断によって、膜から放出されてもよい。抗CD79b抗体の発現に使用される細胞は、凍結融解サイクリング、超音波処理、機械的破砕、または細胞溶解剤のような種々の物理的手段または化学的手段により破壊してもよい。
【0721】
組み換え細胞タンパク質またはポリペプチドから抗CD79b抗体を精製することが望ましい場合がある。以下の手順が、適切な精製手順の例である:イオン交換カラムによる分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのような陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィ;等電点電気泳動;SDS−PAGE;硫安沈澱;例えばSephadex G−75を用いたゲル濾過;IgGのような混入物を除去するためのプロテインAセファロースカラム;および抗CD79b抗体のエピトープタグ付け形態に結合する金属キレートカラム。タンパク質精製の種々の方法を使用してもよく、このような方法は当該技術分野において公知であり、例えば、Deutscher,
Methods in Enzymology,182(1990);Scopes,
Protein Purification:
Principles and Practice,Springer−Verlag,New York(1982)に記載されている。選択された精製工程(単数または複数)は、例えば、使用する産生プロセスおよび産生される特定の抗CD79b抗体の性質に依存する。
【0722】
組み換え技術を用いる場合、この抗体は細胞内、細胞膜周辺腔で細胞内で生成されてもよいし、または培地に直接分泌されてもよい。このような抗体が細胞内で生成される場合、第一段階として、微粒子片、宿主細胞または溶解断片のいずれかが、例えば遠心分離または限外濾過により除去される。Carterら、
Bio/Technology,10:163〜167(1992)には、E.coli.の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離する手順が記載されている。要するに、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフッ化フェニルメチルスルフォニル(PMSF)の存在下で約30分間にわたって解凍する。細胞片は遠心分離により除去できる。抗体が培地に分泌される場合、このような発現系由来の上清は、一般に、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置などの市販のタンパク質濃縮フィルターを用いて最初に濃縮される。前述の工程のいずれかにPMSFのようなプロテアーゼ阻害剤を含んで、タンパク質分解を阻害してよく、抗生物質を含んで外来性の混入物の増殖を阻止してもよい。
【0723】
細胞から調製される抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティクロマトグラフィを用いて精製してもよく、アフィニティクロマトグラフィが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを用いて、ヒトγ1、γ2またはγ4H重鎖を基礎とする抗体を精製することができる(Lindmarkら、
J.Immunol.Meth.62:1〜13(1983))。プロテインGは、マウスのアイソタイプ全ておよびヒトγ3に推奨される(Gussら、
EMBO J.5:1567〜1575(1986))。アフィニティリガンドが結合するマトリクスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリクスも利用可能である。制御された多孔性ガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのような機械的に安定なマトリクスにより、アガロースにより達成し得るよりも、流速を早くかつ処理時間を短くすることが可能になる。抗体がC
H3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィ、ヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィによる陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィ、等電点電気泳動、SDS−PAGEおよび硫安沈澱のような他のタンパク質精製技術もまた、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0724】
任意の予備的な精製工程(単数または複数)のあとに、目的の抗体と混入物とを含んでいる混合物を、pH約2.5〜4.5の溶出緩衝液を用いる低pHの疎水性相互作用クロマトグラフィに供し、好ましくは低塩濃度(例えば約0〜0.25Mの塩)にて行う。
【0725】
G.
薬学的処方物
本発明の抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は、処置されるべき状態に対して適切な任意の経路によって投与され得る。ADCは代表的には、非経口的に、すなわち、連続注入(インフュージョン)、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内および硬膜外に投与される。
【0726】
これらのガンを処置するためには、一実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートは、静脈内注入を介して投与される。注入を介して投与される投薬量は、1用量あたり約1μg/m
2〜約10,000μg/m
2の範囲、一般には1、2、3または4用量の全部について1週あたり1用量である。あるいは、この投薬量の範囲は、約1μg/m
2〜約1000μg/m
2、約1μg/m
2〜約800μg/m
2、約1μg/m
2〜約600μg/m
2、約1μg/m
2〜約400μg/m
2、約10μg/m
2〜約500μg/m
2、約10μg/m
2〜約300μg/m
2、約10μg/m
2〜約200μg/m
2、および約1μg/m
2〜約200μg/m
2の範囲である。この用量は、疾患の症状を救済または緩和するため、1日1回、1週1回、1週に複数回ただし1日あたり1回未満、1カ月に複数回ただし1日あたり1回未満、1カ月あたり複数回ただし1週あたり1回未満、1カ月に1回または間欠的に投与されてもよい。投与は、腫瘍または処置されているリンパ腫、白血病の症状の寛解まで、任意の開示された間隔で続けられてもよい。投与は、このような症状の緩和または救済が達成された後まで続けられてもよく、ここでこのような緩和または救済は、このような継続投与によって延長される。
【0727】
本発明はまた、自己免疫疾患を軽減する方法を提供し、この方法は、自己免疫疾患に罹患している患者に対して、前述の実施形態のいずれか1つの治療上有効な量のヒト化2F2抗体−薬物コンジュゲートを投与する工程を包含する。好ましい実施形態では、この抗体は静脈内にまたは皮下に投与される。この抗体−薬物コンジュゲートは1用量あたり約1μg/m
2〜約100mg/m
2の範囲で静脈内投与され、特定の実施形態では、この投薬量は1μg/m
2〜約500μg/m
2である。この用量は、疾患の症状を救済または軽減するため、1日あたり1回投与されても、1週あたり1回投与されても、1週あたり複数回ただし1日あたり1回未満投与されても、1カ月あたり複数回ただし1日あたり1回未満投与されても、1カ月あたり複数回ただし1週あたり1回未満投与されても、1カ月に1回または間欠的に投与されてもよい。投与は、処置されている自己免疫疾患の症状の救済または軽減まで、任意の開示された間隔で続けられてもよい。投与は、このような症状からの救済または緩和が達成された後まで続けられてもよく、ここでこのような緩和または救済は、このような継続投与によって延長される。
【0728】
本発明はまた、B細胞障害を処置する方法を提供し、この方法は、B細胞障害、例えば、B細胞増殖性障害(限定するものではないがリンパ腫および白血病を含む)または自己免疫疾患に罹患している患者に対して、前述の実施形態のいずれか1つの治療上有効な量のヒト化2F2抗体(この抗体は、細胞毒性分子または検出可能な分子にコンジュゲートされていない)を投与する工程を包含する。この抗体は代表的には、約1μg/m
2〜約1000μg/m
2の範囲の投薬量で投与されるであろう。
【0729】
一局面では、本発明はさらに、本発明の少なくとも1つの抗CD79b抗体、および/またはその少なくとも1つのイムノコンジュゲートおよび/または本発明の少なくとも1つの抗CD79b抗体−薬物コンジュゲートを含んでいる薬学的処方物を提供する。いくつかの実施形態では、薬学的処方物は、(1)本発明の抗体、および/またはそのイムノコンジュゲート、および(2)薬学的に受容可能なキャリアを含む。いくつかの実施形態では、薬学的処方物は、(1)本発明の抗体、および/またはそのイムノコンジュゲート、および必要に応じて(2)少なくとも1つの追加の治療剤を含む。追加の治療剤としては限定するものではないが、下に記載されるものが挙げられる。ADCは代表的には、非経口的に、すなわち、インフュージョン、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外に投与される。
【0730】
本発明に従って用いられる抗CD79b抗体またはCD79bイムノコンジュゲートを含んでいる治療用処方物は、所望の純度を有する抗体またはイムノコンジュゲートと、任意の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定化剤(
Remington’s Pharmaceutical Science第16版 Osol,A編集(1980))とを、凍結乾燥処方物、または水溶液の形態で混合することによって保存用に調製される。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定化剤は、使用される用量および濃度においてレシピエントに対して無毒であり、これには緩衝液、例えば、酢酸塩、Tris、リン酸塩、クエン酸、および他の有機酸;抗酸化剤、例として、アスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメソニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例として、グルコース、マンノース、またはデキストランなど;キレート剤、例えば、EDTA;等張化剤、例えば、トレハロースおよび塩化ナトリウム;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;サーファクタント、例えば、ポリソルベート;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Zn−タンパク複合体);および/または非イオン性サーファクタント、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。インビトロの投与に用いられるべき薬学的処方物は一般には無菌である。これは無菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
【0731】
本明細書の処方物はまた、処置されている特定の適応症に必要な場合、2つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を持つ活性化合物を含んでもよい。例えば、抗CD79b抗体に加えて、追加の抗体、例えば、第二の抗CD79b抗体(CD79bポリペプチド上の異なるエピトープに結合する)または特別なガンの増殖に影響する増殖因子などのいくつかの他の標的に対する抗体を、1つの処方物中に含むことが所望される場合がある。あるいは、またはさらに、この組成物は、化学療法剤、細胞毒性剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤および/または心臓保護剤をさらに含んでもよい。このような分子は適切には、意図される目的に対して有効な量において組み合わされて存在する。
【0732】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製される微小カプセル中に、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−微小カプセル、およびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中に、または、マクロエマルジョン中に捕捉されてもよい。このような技術は、
Remington’
s Pharmaceutical Science 第16版,Osol,A編(1980)に開示される。
【0733】
持続放出調製物を調製してもよい。持続放出調製物の適切な例としては、基質が成形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形状である、抗体を含んでいる固体の疎水性ポリマーの半透性基質が挙げられる。持続放出基質の例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニールアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー、非分解性エチレンビニールアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注入可能なマイクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシル酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日以上にわたる分子の放出を可能とするが、ある種のヒドロゲルがタンパク質を放出する期間はそれより短い。カプセル封入された免疫グロブリンは、生体内に長期間留まると、37℃で湿気に暴露されるために分解または凝集する場合があり、これによって生物活性が消失したり、免疫原性が変化する可能性がある。関与する機序に応じて、安定化のために合理的戦略を工夫することができる。例えば、凝集機序が、チオ−ジスルフィド交換による、分子間S−S結合形成であることが見出されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性液から凍結乾燥すること、水分含量を調節すること、適切な添加物を用いること、および、特異的ポリマー基質組成物を開発することによって実現される場合がある。
【0734】
抗体は、標的の細胞/組織への送達のために任意の適切な形態で処方されてもよい。例えば、抗体は、免疫リポソームとして処方されてもよい。「リポソーム」とは、哺乳動物への薬物の送達に有用である種々のタイプの脂質、リン脂質および/またはサーファクタントから構成される小胞である。リポソームの成分は通常には、生物学的な膜の脂質配置と同様の二層方式で配列される。抗体を含んでいるリポソームは、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82;3688(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030(1980);米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびに1997年10月23日公開の国際公開第97/38731号に記載されるような当該分野で公知の方法によって調製される。循環時間が増強されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。
【0735】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含んでいる脂質組成物を有する逆相エバポレーション法によって作成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを得るために、規定の細孔のサイズのフィルターを通して押し出される。本発明の抗体のFabフラグメントは、ジスルフィド交換反応を介して、Martinら、J.Biol.Chem.257:286〜288(1982)に記載されるように、リポソームに結合体化され得る。化学治療剤は、必要に応じて、リポソーム内に含まれる。Gabizonら、J.National Cancer Inst.81(19)1484(1989)を参照のこと。
【0736】
インビトロの投与のために用いられるべき処方物は、無菌でなければならない。これは無菌ろ過膜を通じた濾過によって容易に達成される。
【0737】
H.
抗CD79b抗体での処置
ガンにおけるCD79b発現を測定するために、種々の検出アッセイが利用可能である。一実施形態では、CD79bポリペプチド過剰発現は、免疫組織科学(IHC)によって分析され得る。腫瘍生検に由来するパラフィン埋包した組織切片をIHCアッセイに供して以下のようなCD79bタンパク質染色強度基準に一致させてもよい:
スコア0:染色は全く観察されないかまたは膜染色が、10%未満の腫瘍細胞で観察される。
【0738】
スコア1+:かすかな/かろうじて認知できる膜染色が、10%を越える腫瘍細胞で検出される。その細胞は、それらの膜の一部のみが染色されている。
【0739】
スコア2+:弱から中程度の完全な膜染色が、10%を越える腫瘍細胞で観察される。
【0740】
スコア3+:中程度から強い完全な膜染色が、10%を越える腫瘍細胞で観察される。
【0741】
CD79bポリペプチド発現についてスコア0または1+を有するこれらの腫瘍は、CD79bを過剰発現しないとして特徴付けられ得、これに対して、スコア2+または3+を有する腫瘍は、CD79bを過剰発現するとして特徴付けられ得る。
【0742】
あるいは、またはさらに、INFORM(登録商標)(Ventana,Arizonaが販売)またはPATHVISION(登録商標)(Vysis,Illinois)のようなFISHアッセイを、腫瘍におけるCD79b過剰発現の程度(もしあれば)を決定するために、ホルマリン固定された、パラフィン埋包の腫瘍組織で実行してもよい。
【0743】
CD79bの過剰発現または増幅は、インビボ検出アッセイを用いて、例えば、検出される分子に結合する分子(抗体など)を投与することで評価されてもよく、そして検出可能な標識(例えば、放射性同位体または蛍光標識)で標識され、そして標識の位置決定のために、患者を外部からスキャンする。
【0744】
上記のとおり、本発明の抗CD79b抗体には、種々の非治療的用途がある。本発明の抗CD79b抗体は、CD79bポリペプチドを発現している癌の病期分類にとって有用である(例えば、放射性イメージングで)。この抗体はまた、細胞からCD79bポリペプチドの精製または免疫沈降のために、CD79bポリペプチドの検出および定量のために、インビトロで、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットにおいて、他の細胞の精製の工程として混合細胞の集団からCD79b発現細胞を死滅させて除去するために、有用である。
【0745】
現在のところ、ガンの病期分類次第で、ガンの処置は、以下の治療のうちの1つまたは組み合わせを包含する:ガン性組織の除去のための外科手術、放射線治療、および化学療法。抗CD79b抗体による治療は、特に、化学治療において毒性および副作用に対する耐性が十分でない老年の患者、および放射線治療の有用性に限界がある転移性疾患において所望され得る。本発明の腫瘍標的化抗CD79b抗体は、疾患の初期診断時および再発中におけるCD79b−発現癌の緩和に有用である。治療用途に関しては、抗CD79b抗体は、単独で、あるいは例えば、ホルモン、抗血管形成、もしくは放射標識された化合物との併用療法で、または外科手術、寒冷療法、および/もしくは放射線治療との併用療法で用いてもよい。抗CD79b抗体による処置は、従来的治療の前または後のいずれかに連続させて、他の形態の従来の治療と組み合わせて実施することができる。化学療法薬物、例えばTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル)、TAXOL(登録商標)(パリクタキセル)、エストラムスチンおよびミトキサントロンは、ガン、特に危険性の少ない患者のガン治療に用いられる。癌を処置または緩和するための本発明の方法において、上述した1つ以上の化学療法剤による処置と組合せて、癌患者に抗CD79b抗体を投与することができる。特に、パリクタキセルおよびその誘導体との併用療法が考えられる(例えば、欧州特許第0600517号を参照のこと)。抗CD79b抗体は治療上有効量の化学療法剤と共に投与されるであろう。別の実施形態において、抗CD79b抗体は化学療法剤、例えばパクリタキセルの活性および効力を高めるための化学治療と組合せて投与される。Physicians’Desk Reference(PDR)は、種々の癌の処置に用いられるこれらの薬剤の用量が開示されている。治療的に有効なこれらの上述の化学療法剤の投薬レジメンおよび投薬量は、治療されている特定のガン、疾患の程度、および当該分野の医師によく知られている他の要因に依存し、医師が決定することができる。
【0746】
特定の一実施形態では、細胞毒性剤とコンジュゲートした抗CD79b抗体を含有するコンジュゲートを患者に投与する。好ましくは、CD79bタンパク質に結合したイムノコンジュゲートは細胞によって内部移行され、結果として、それが結合した癌細胞の殺傷性におけるイムノコンジュゲートの治療的効果が向上する。好ましい実施形態では、細胞毒性剤は、ガン細胞内の核酸を標的するか、またはこれと干渉する。このような細胞毒性剤の例は、上述されており、メイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼおよびDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0747】
抗CD79b抗体またはその毒素コンジュゲートは、静脈内投与などの公知の方法、例えばボーラス、もしくは一定時間にわたる連続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、または吸入経路によって、ヒトの患者に投与される。抗体の静脈内または皮下投与が好ましい。
【0748】
他の治療レジメンを抗CD79b抗体の投与と組合せてもよい。組合せ投与としては、別々の処方物または単一の医薬製剤を用いる同時投与、および好ましくは両方(または全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を働かせる時間があるいずれかの順での連続投与が挙げられる。このような組合せ治療により、結果として相乗的治療効果が生じることが好ましい。
【0749】
特定の癌に関連した別の腫瘍抗原に対する抗体の投与と共に、抗CD79b抗体(単数または複数)の投与を組合せることも望ましい場合がある。
【0750】
別の実施形態では、本発明の治療的な処置方法は、抗CD79b抗体(単数または複数)と1つ以上の化学療法剤または成長阻害剤との組合せ投与を包含し、この化学療法剤としては、異なる化学療法剤の混合物、または腫瘍増殖を阻害する他の細胞毒性剤(単数または複数)もしくは他の治療剤(単数または複数)の同時投与を包含する。化学療法剤としては、リン酸エストラムスチン、プレドニムスチン、シスプラチン、5−フルオロウラシル、メルファラン、シクロホスファミド、ヒドロキシ尿素およびヒドロキシ尿素タキサン(hydroxyureataxanes)(例えばパクリタキセルおよびドキセタキセル)および/またはアントラサイクリン抗生物質が挙げられる。このような化学療法剤の調製および投与スケジュールは製造者の説明書に従って用いられてもよいし、または熟練した実務者により経験的に決定されてもよい。このような化学療法の調製および投与スケジュールは、Chemotherapy Service編 M.C.Perry, Williams & Wilkins, Baltimore,MD(1992)にも記載されている。抗体は、抗ホルモン化合物;例えばタモキシフェンなどの抗−エストロゲン化合物;オナプリストン(onapristone)(欧州特許第616812号を参照)などの抗プロゲステロン;またはフルタミドなどの抗アンドロゲンを、このような分子に対して公知の用量で組合せてもよい。治療されるガンがアンドロゲン非依存性ガンである場合、患者は予め抗アンドロゲン治療を受け、疾患がアンドロゲン非依存性になった後、抗CD79b抗体(および場合によっては本明細書に記載した他の薬剤)をこの患者に投与してもよい。
【0751】
時には、心臓保護剤(治療に関連する心筋の機能不全を防止または低減するため)または1つ以上のサイトカインを患者に同時投与することも有益なことである場合がある。上述した治療計画に加えて、患者は、抗体療法の前に、同時にまたは後に、外科的にガン細胞を取り除くか、および/または放射線治療(例えば、外部のビーム放射線または放射性標識した薬剤、例えば抗体での治療)を施されてもよい。上述した任意の同時投与される薬剤の適切な投薬量が現在用いられており、この薬剤と抗CD79b抗体の併用作用(相乗作用)に応じて、より少なくてもよい。
【0752】
本発明の抗体組成物は、良好な医学的実施と一致する方式で処方、投薬および投与されるであろう。この状況の考慮のための要因としては、処置されるべき特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床条件、障害の経過、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者に公知の他の要因が挙げられる。抗体は、該当の障害を予防または処置するために現在用いられている1つ以上の薬剤と、必須ではないが、必要に応じて処方される。このような他の薬剤の有効量は、処方物に存在する本発明の抗体の量、障害または処置のタイプ、および上記で考察される他の要因に依存する。これらは一般には、本明細書において前記で用いられるのと同じ投薬量で投与経路で、または従来使用される投薬量の約1〜99%で用いられる。
【0753】
疾患の予防または治療のためには、投与の投薬量および方式は、公知の基準に従い、医師により選択されるであろう。抗体の適切な投薬量は、上記のような処置される疾患の種類、疾患の重症度および経過、抗体を予防目的で投与するのか治療目的で投与するのか、過去の治療、患者の臨床歴および抗体への反応性、手当てをする医師の裁量に依存するであろう。抗体は一度にまたは一連の処置にわたって患者に適切に投与される。好ましくは、抗体は静脈注入または皮下注射により投与される。疾患の種類および重症度に応じて、例えば1つ以上の別個の投与または連続注入のいずれかであれ、体重1kgあたり約1μg〜約50mg(例えば約0.1〜15mg/kg/用量)の抗体が患者への最初の投与量の候補であってもよい。投薬レジメンは、約4mg/kgの初期ローディング量、続いて1週間に約2mg/kgの維持用量という抗CD79b抗体を投与する工程を含んでもよい。しかしながら、他の投薬計画も有用であろう。上述した因子に応じて、代表的な一日の投与量は約1μg/kg〜100mg/kg、またはそれ以上の範囲であろう。数日間またはそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、疾患の症状の望ましい抑制が生じるまで処置を維持する。この治療の進行状態は、従来の方法およびアッセイによって、ならびに医師または他の当業者に公知の基準に基づいて容易にモニターできる。
【0754】
患者への抗体タンパク質の投与の他に、本出願は遺伝子療法による抗体の投与を考慮する。抗体をコードする核酸の投与は「抗体を治療上有効な量で投与する」という表現で包含される。例えば、遺伝子療法を用いた細胞内抗体の生成に関する、1996年3月14日に公開された国際公開第96/07321号を参照のこと。
【0755】
核酸(場合によってはベクター内に含まれたもの)を患者の細胞に入れるために:インビボおよびエキソビボという2つの主要なアプローチがある。インビボ送達では、核酸は、通常抗体が必要とされている部位に直接注入される。エキソビボ処置では、患者の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、修飾された細胞を患者に、直接、または例えば患者に埋め込まれる多孔性膜にカプセル化して投与する(例えば、米国特許第4,892,538号および第5,283,187号を参照のこと)。核酸を生細胞に導入するために利用可能な種々の技術がある。この技術は、核酸が培養された細胞にインビトロで移入されるか、または目的の宿主にインビボで移入されるかによって異なる。哺乳動物細胞にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などの使用を包含する。遺伝子のエキソビボ送達に通常用いられるベクターはレトロウイルスベクターである。
【0756】
現在好まれているインビボ核酸移入技術としては、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、またはアデノ関連ウイルス)、および脂質ベースの系(例えば、遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、DOTMA、DOPE、およびDC−Cholである)でのトランスフェクションが挙げられる。現在公知である遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロトコールの概説については、Andersonら,
Science,256:808〜813(1992)を参照のこと。また、国際公開第93/25673号およびそこに引用された参考文献も参照のこと。
【0757】
本発明の抗CD79b抗体とは、本明細書における「抗体」の定義により包含される様々な形態であってよい。したがって、抗体としては、全長またはインタクトな抗体、抗体フラグメント、天然配列の抗体またはアミノ酸改変体、ヒト化抗体、キメラ抗体または融合抗体、イムノコンジュゲート、およびそれらの機能的フラグメントが挙げられる。融合抗体において、抗体配列は異種ポリペプチド配列に融合されている。抗体のFc領域を修飾して、所望のエフェクター機能を提供することができる。以下の段落に詳細に記載されるように、適切なFc領域と共に、細胞表面に結合した裸の抗体は、例えば抗体−依存性細胞傷害(ADCC)を介してまたは補体依存性細胞傷害において補体を補充することにより、または他のいくつかのメカニズムにより、細胞毒性を誘発し得る。あるいは、副作用または治療による合併症を最小にするように、エフェクター機能を除去または低減することが望ましい場合には、特定の他のFc領域を用いてもよい。
【0758】
一実施形態では、抗体は、本発明の抗体類と同じエピトープとの結合に関して競合するか、またはこれに実質的に結合する。本発明のこの抗CD79b抗体の生物学的特徴を有する抗体類も考慮され、これらの特徴としては詳細には、インビボ腫瘍標的および任意の細胞増殖阻害または細胞毒性の特徴が挙げられる。
【0759】
上述した抗体の産生方法を本明細書で詳細に記載する。
【0760】
本発明の抗CD79b抗体は、哺乳動物におけるCD79b発現ガンの治療またはそのガンの1つ以上の症状の緩和に有用である。このようなガンとしては限定するものではないが、造血系のガンまたは血液関連のガン、例えば、リンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ系悪性疾患だけでなく、脾臓の癌およびリンパ節の癌も挙げられる。このようなB細胞関連ガンのさらに特別な例としては、例えば、高悪性度、中悪性度および低悪性度のリンパ腫(例としては、例えば、粘膜内リンパ組織B細胞リンパ腫および非ホジキンリンパ腫などのB細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球リンパ腫、周辺帯リンパ腫、拡散性大細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、およびホジキンリンパ腫およびT細胞リンパ腫)、および白血病(二次性白血病、慢性リンパ性白血病、例えば、B細胞白血病(CD5+Bリンパ球)、骨髄性白血病、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病および骨髄異形成症候群を含む)、ならびにその他の血液学的および/またはB細胞もしくはT細胞関連の癌が挙げられる。このガンは、前出の任意のガンのうち転移性のガンを包含する。抗体は、哺乳動物においてCD79bポリペプチドを発現しているガン細胞の少なくとも一部に結合可能である。好ましい実施形態では、この抗体は、インビボまたはインビトロで細胞のCD79bポリペプチドに結合する際、CD79b発現腫瘍細胞を破壊もしくは死滅させるか、またはこのような腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効である。このような抗体としては、裸の抗CD79b抗体(いかなる薬剤にも結合していない)が挙げられる。細胞傷害性または細胞増殖阻害特性を有する裸の抗体はさらに、細胞毒性剤と併用すると、より強く腫瘍細胞を破壊することが可能である。例えば抗体と細胞毒性剤とをコンジュゲートさせ、本明細書に記載されるようなイムノコンジュゲートを形成させることによって、細胞傷害特性を抗CD79b抗体に付与することができる。この細胞毒性剤または増殖阻害剤は、好ましくは低分子である。カリケアマイシンまたはメイタンシノイドなどの毒素、およびそれらのアナログまたは誘導体が好ましい。
【0761】
本発明は、本発明の抗CD79b抗体とキャリアとを含有している組成物を提供する。ガンを処置する目的のために、組成物をこのような処置の必要な患者に投与してもよく、この組成物はイムノコンジュゲートとしてまたは裸の抗体として存在する1つ以上の抗CD79b抗体を含んでもよい。さらなる実施形態においては、この組成物は、他の療法剤、例えば化学療法剤を含んでいる細胞毒性剤または増殖阻害剤と組み合わせてこれらの抗体を含んでもよい。本発明はまた、本発明の抗CD79b抗体、およびキャリアを含んでいる処方物も提供する。一実施形態において、この処方物は薬学的に許容可能なキャリアを含んでいる治療用処方物である。
【0762】
本発明の別の局面は、抗CD79b抗体をコードしている単離された核酸分子である。HおよびL鎖の両方および特に超可変領域残基、天然配列の抗体をコードする鎖、ならびにこの抗体の改変体、修飾バージョンおよびヒト化バージョンをコードしている核酸、が包含される。
【0763】
本発明はまた、哺乳動物におけるCD79bポリペプチド発現ガンの処置またはこのガンの1つ以上の症状を緩和するのに有用な方法を提供し、この方法は、治療上有効な量の抗CD79b抗体を哺乳動物に投与する工程を包含する。抗体治療組成物は、医師の指示どおりに、短い期間(急性)または慢性的に、または間欠的に投与することができる。また、CD79bポリペプチド発現細胞の増殖を阻害し、この細胞を殺傷する方法も提供される。
【0764】
本発明はまた、少なくとも1つの抗CD79b抗体を含んでいるキットおよび製造品も提供する。抗CD79b抗体を備えているキットは、例えば、CD79b細胞殺傷アッセイ、細胞からのCD79bポリペプチドの精製または免疫沈降における用途が見出されている。例えば、CD79bの単離および精製のためには、キットはビーズ(例えばセファロースビース)に結合した抗CD79b抗体を含んでいもよい。インビトロ、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットにおけるCD79bの検出および定量化のための抗体を含むキットを提供することができる。検出に有用なこのような抗体は、蛍光または放射標識などの標識が備えられてもよい。
【0765】
I.
抗体−薬物コンジュゲート処理
本発明の抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を、腫瘍抗原の過剰発現によって例えば特徴付けられる、種々の疾患または障害を処置するために用いてもよいと考えられる。例示的な状態または過剰増殖性障害としては、良性または悪性の腫瘍;白血病およびリンパ系悪性疾患が挙げられる。他には、神経障害、グリアの障害、星状膠細胞障害、視床下部障害、腺性の障害、マクロファージの障害、上皮の障害、間質性障害、胞胚腔障害、炎症性障害、血管形成障害および免疫学的障害(自己免疫障害を含む)が挙げられる。
【0766】
動物モデルおよび細胞ベースのアッセイで特定されるADC化合物は、腫瘍を保有する高等な霊長類およびヒトでの臨床試験でさらに試験されてもよい。ヒトの臨床試験は、B細胞増殖性障害を経験している患者において本発明の抗CD79bモノクローナル抗体またはイムノコンジュゲートの有効性を試験するように設計されてもよく、この障害としては限定するものではないが、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。臨床試験は公知の治療レジメン、例えば、放射線および/または化学療法(公知の化学療法および/または細胞毒性剤を含む)と組み合わせてADCの有効性を評価するように設計してもよい。
【0767】
一般には、処置されるべき疾患または障害は、過剰増殖性の疾患、例えば、B細胞増殖障害および/またはB細胞ガンである。本明細書で処置されるべきガンの例としては限定するものではないが、B細胞増殖性障害が挙げられ、これは、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
【0768】
ガンは、CD79b発現細胞を含んでもよく、その結果本発明のADCは、ガン細胞に結合できる。ガンでのCD79b発現を確認するために、種々の診断/予測アッセイが利用可能である。一実施形態では、CD79b過剰発現は、IHCによって分析され得る。腫瘍生検由来のパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに供して、染色の程度および腫瘍細胞のどの程度の割合が検査されたかに関するCD79bタンパク質染色強度基準に一致させてもよい。
【0769】
疾病の予防または治療について、ADCの適切な投薬量は、上で定義したように、治療すべき疾病のタイプ、その疾病の重症度および経過、その分子を予防のために投与するのか、治療のために投与するのか、以前の治療法、その患者の臨床履歴および抗体への応答、ならびに担当医の自由裁量に依存するであろう。分子は、1回、または一連の治療にわたって、患者に適切に投与される。例えば、1回以上の別々の投与によろうと、連続注入によろうと、疾病のタイプおよび重症度に依存して、分子約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)が、患者への投与のための初期候補投薬量である。代表的な1日用量は、上で述べた要因に依存して、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲におよぶであろう。患者に投与されるADCの例示的投薬量は、患者の体重あたり約0.1〜約10mg/kgの範囲内である。
【0770】
状態に依存して数日以上にわたる反復投与に関しては、疾病症状の所望の抑制が生じるまで、その治療を継続する。例示的投薬レジメンは、抗ErbB2抗体の約4mg/kgの初期負荷用量、続いて、約2mg/kgの週間維持用量の投与を含む。他の投薬レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニターされる。
【0771】
J.
併用療法
本発明の抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は、薬学的な併用処方物中に組み合されてもよいし、または併用療法としての投薬レジメンで、抗癌特性を有する第二の化合物と併用してもよい。前記併用医薬処方物または投薬レジメンの第二化合物は好ましくは、その併用のADCに対して補完的な活性を有しており、そのためにそれらは互いに悪影響を及ぼさない。
【0772】
この第二の化合物は、化学療法薬、細胞障害剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン薬、および/または心臓保護薬であってもよい。このような分子は、所期の目的に有効な量で併用剤中に適切に存在する。本発明のADCを含有している医薬組成物はまた、治療上有効な量の化学療法剤、例えば、チューブリン形成インヒビター、トポイソメラーゼインヒビターまたはDNA結合剤も有する場合もある。
【0773】
一局面では、第一の化合物は、本発明の抗CD79bADCであり、第二の化合物は抗CD20抗体である(裸の抗体またはADCのいずれか)。一実施形態では、この第二の化合物は、抗CD20抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標))または2H7(Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)である。本発明の抗CD79bのADCとの組み合された免疫療法に有用な別の抗体としては、限定するものではないが、抗VEGF(例えば、Avastin(登録商標))が挙げられる。
【0774】
他の治療的レジメンは、放射線療法ならびに/または骨髄および末梢血液移植、および/または細胞障害性剤、化学療法剤または増殖阻害性剤を含むがこれらに限定されない本発明に従って同定される抗癌剤の投与と組み合わされてもよい。このような実施形態のうち1つでは、化学療法剤は、例えば、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン(Oncovin(商標))、プレドニゾロン、CHOP、CVPもしくはCOP、または免疫療法剤、例えば、抗CD20(例えばリツキサン(登録商標))もしくは抗VEGF(例えば、Avastin(登録商標))などの薬剤または薬剤の組合せである。
【0775】
併用療法は同時または連続的な投薬レジメンとして投与されてもよい。連続して投与される場合、組合せは2以上の投与で投与されてもよい。併用投与としては、別々の製剤または単一の製薬的製剤を用いての同時投与、およびいずれかの順序での連続投与が包含され、このとき、両方(または全て)の活性剤が同時にその生物学的活性をおよぼす一定時間があるのが好ましい。
【0776】
一実施形態では、ADCによる治療は、本明細書において同定される抗癌剤、および異なる化学療法剤の混合物の同時投与を含む1つ以上の化学療法剤または増殖阻害性剤の併用投与を包含する。化学療法剤としては、タキサン(例えばパクリタキセルおよびドセタキセル)および/またはアントラサイクリン抗生物質が挙げられる。このような化学療法剤のための調製や投薬計画は、製造業者の指示に従って用いられてもよいし、または熟練した専門家によって経験的に決定されてもよい。このような化学療法の調製や投薬計画はまた、「Chemotherapy Service」,(1992)編集M.C.Perry,Williams & Wilkins,Baltimore,Md.にも記載される。
【0777】
任意の上記の同時投与される薬剤の適切な投薬量は現在用いられている量であり、新規に同定される薬剤と他の化学療法剤もしくは処置の併用作用(相乗作用)に応じて低くしてもよい。
【0778】
併用療法によって「相乗効果」が生じて、「相乗的」、すなわち、一緒に用いた活性成分がこの化合物を別々に用いて生じる効果の合計よりも多い場合に得られる効果が証明され得る。活性成分が、(1)組み合わせた単位用量処方物に同時に製剤化され投与されるか、または同時に送達される場合、(2)別々の製剤として交互にまたは並行して送達される場合、または、(3)いくつかの他のレジメンによってなされる場合に、相乗効果が達成され得る。交互治療で送達される場合、例えば、別々の注射器での異なる注入によって、化合物が投与されるかまたは順次送達される場合に、相乗効果が達成され得る。一般には、交互療法の間、各々の活性成分の有効用量は順次、すなわち連続的に投与されるのに対して、併用療法では、2つ以上の活性成分の有効用量が一緒に投与される。
【0779】
K.
製品およびキット
本発明の別の実施形態は、CD79bを発現するガンの処置、予防および/または診断に有用な材料を備えている製品である。この製品は、容器と、容器に付随するラベルまたは添付文書とを備える。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器はガラスまたはプラスチックなどの種々の物質から形成されてもよい。容器とは、癌の状態の処置、予防および/または診断に有効な組成物を保持するもので、無菌のアクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈注射用の溶液の袋であっても、または皮下注射の針で穿孔可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗CD79b抗体である。ラベルまたは添付文書は、その組成物がガンの処置に用いられるものであることを示す。ラベルまたは添付文書はさらに、ガン患者への抗体組成物投与に関する指示を含むであろう。加えて、この製品は、薬学的に受容可能な緩衝液、例えば、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などを収容する第2の容器をさらに備えてもよい。製品は、さらに、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料、例えば、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどを備えてもよい。
【0780】
種々の目的のため、例えば、CD79b発現細胞死滅アッセイのため、細胞からのCD79bポリペプチドの精製または免疫沈降のために有用なキットも提供される。CD79bポリペプチドの単離および精製のために、キットはビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合した抗CD79b抗体を含んでもよい。インビトロ、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットにおけるCD79bポリペプチドの検出および定量化のため抗体を含むキットが提供されてもよい。製品の場合と同じように、キットは、容器と、容器に付随するラベルまたは添付文書とを備える。容器は本発明の少なくとも1つの抗CD79b抗体を含んでいる組成物を保持する。例えば希釈剤と緩衝液、コントロールの抗体などを収容する追加の容器が備えられてもよい。ラベルまたは添付文書には、組成物の説明、ならびに意図されるインビトロでの使用または診断のための使用に関する指示を記載する場合がある。
【0781】
L.
CD79bポリペプチドの用途
本発明は、CD79bポリペプチドを模倣する(アゴニスト)またはCD79bポリペプチドの効果を妨げる(アンタゴニスト)化合物を同定するための化合物のスクリーニング方法も包含する。アンタゴニスト候補薬のスクリーニングアッセイは、本明細書に同定した遺伝子にコードされるCD79bポリペプチドと結合または複合体形成する化合物、またはそうでなければコードされたポリペプチドと他の細胞性タンパク質との相互作用を干渉する(例えば、細胞からCD79bポリペプチドの発現を阻害することを包含する)化合物を同定するように設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーのハイスループットスクリーニングに適用可能なアッセイを包含しており、それによってこのアッセイは特に低分子候補薬の同定に適したものになる。
【0782】
このアッセイは、当該分野で十分特徴づけられた、タンパク質−タンパク質の結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、および細胞ベースのアッセイを含んでいる種々の方式で実施されてもよい。
【0783】
アンタゴニストについての全てのアッセイは、それらのアッセイが、候補薬と本明細書で同定された核酸によってコードされるCD79bポリペプチドとを、これら2つの成分を相互作用させるのに十分な条件下および時間で接触させることを必要とするという点が共通である。
【0784】
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、または反応混合物中で検出される。特別な実施形態では、本明細書に同定された遺伝子にコードされるCD79bポリペプチドまたは候補薬が、共有または非共有結合により固相、例えば、マイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をCD79bポリペプチドの溶液でコーティングすることおよび乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化される抗体、例えば、固定化されるべきCD79bポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を用いて、それを固体表面に固着させてもよい。アッセイは、固定化成分、例えば、固着成分を含んでいるコーティング表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出によって複合体形成が起こったことが示される。最初の非固定化成分が標識を担持しない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体を用いることによって検出できる。
【0785】
候補化合物が相互作用するが本明細書において同定された遺伝子によってコードされる特定のCD79bポリペプチドに結合しない場合、そのポリペプチドとの相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために周知の方法によってアッセイすることができる。このようなアッセイは、例えば、架橋、同時免疫沈降、および勾配またはクロマトグラフィカラムを通す同時精製などの伝統的なアプローチを包含する。さらに、タンパク質−タンパク質相互作用は、ChevrayおよびNathans,
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,5789〜5793(1991)に開示されているようにして、(Fieldsおよび共同研究者ら[FieldsおよびSong,
Nature(London)340,245〜246(1989);Chienら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,9578〜9582(1991))に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることによりモニターすることができる。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化剤は、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなる。前述の刊行物に記載された酵母菌発現系(一般に「2−ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を使用し、このうち一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL4活性化プロモーターの制御下でのGAL1−lacZリポーター遺伝子の発現は、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含んでいるコロニーは、β−ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2−ハイブリッド技術を用いた2つの特定なタンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商標))は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、ならびにこの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
【0786】
本明細書で同定されたCD79bポリペプチドをコードする遺伝子と細胞内または細胞外成分の相互作用を干渉する化合物は、以下のように試験できる:通常反応混合物は、遺伝子産物と細胞内または細胞外成分を、それら2つの生成物が相互作用および結合可能である条件下および時間で含むように調製される。候補化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物の不存在および存在下で実施される。さらに、プラシーボを第3の反応混合物に添加して陽性のコントロールを提供してもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内成分または細胞外成分との間の結合(複合体形成)は、上記のようにモニターされる。試験化合物を含有する反応混合物ではなくコントロールの反応(単数または複数)における複合体の形成によって、その試験化合物が試験化合物とその結合パートナーとの相互作用を干渉することが示される。
【0787】
アンタゴニストをアッセイするために、CD79bポリペプチドを、特別な活性についてスクリーニングされるべき化合物とともに細胞に添加してもよく、CD79bポリペプチドの存在下でこの化合物が目的の活性を阻害する能力によって、この化合物がCD79bポリペプチドのアンタゴニストであることが示される。あるいは、アンタゴニストは、CD79bポリペプチドおよび膜結合CD79bポリペプチドレセプターまたは組換えレセプターを持つ潜在的なアンタゴニストを、競合的阻害アッセイに適した条件下で組み合わせることにより検出してもよい。CD79bポリペプチドは、放射活性等で標識可能であり、その結果レセプターに結合したCD79bポリペプチド分子の数を用いて潜在的アンタゴニストの有効性を決定することができる。レセプターをコードする遺伝子は、当業者に公知の多くの方法、例えばリガンドパンニングおよびFACSソーティングにより同定できる。Coliganら、
Current Protocols in Immun.,1(2):第5章(1991)。好ましくは、発現クローニングを使用して、ポリアデニル化RNAをCD79bポリペプチドに反応性の細胞から調製し、このRNAから生成されたcDNAライブラリをプールに分配して、COS細胞またはCD79bポリペプチド反応性でない他の細胞の形質移入に用いる。スライドガラス上で成長させたトランスフェクトされた細胞を、標識したCD79bポリペプチドに曝露する。CD79bポリペプチドは、ヨウ素化または部位特異的タンパク質キナーゼの認識部位の包含を含む種々の手段で標識できる。固定およびインキュベーションの後、スライドをオートラジオグラフィ分析に供する。陽性のプールを同定し、相互作用的サブプール化および再スクリーニングプロセスを用いてサブプールを調製して再トランスフェクトし、最終的に推定レセプターをコードする単一のクローンを生成する。
【0788】
代替的なレセプター同定のアプローチとして、標識したCD79bポリペプチドを、レセプター分子を発現する細胞膜または抽出調製物と光親和性結合させることができる。架橋材料はPAGEに溶解させ、X線フィルムに曝露する。レセプターを含む標識複合体を励起し、ペプチドフラグメントに分離し、タンパク質マイクロ配列決定に供してもよい。マイクロ配列から得たアミノ酸配列を用いて、推定レセプターをコードする遺伝子を同定するcDNAライブラリーをスクリーニングする1セットの分解性オリゴヌクレオチドプローブを設計する。
【0789】
アンタゴニストの別のアッセイでは、レセプターを発現する哺乳動物細胞または膜調製物を、候補化合物の存在下で標識CD79bポリペプチドとともにインキュベートする。次いで、この化合物がこの相互作用を増強またはブロックする能力を測定してもよい。
【0790】
可能性のあるアンタゴニストのさらに特異的な例としては、CD79bポリペプチドとの免疫グロブリン、詳細には、限定するものではないが、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびに抗体フラグメント、このような抗体またはフラグメントの単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラまたはヒト化バージョン、ならびにヒト抗体および抗体フラグメントの融合物に結合するオリゴヌクレオチドが挙げられる。あるいは、可能性のあるアンタゴニストは、密接に関連するタンパク質、例えば、レセプターを認識するが作用を及ぼさずそれによってCD79bポリペプチドの作用を競合的に阻害するCD79bポリペプチドの変異型であってもよい。
【0791】
本明細書に特定されるCD79bポリペプチドに特異的に結合する抗体、ならびに本明細書において前記に開示されるスクリーニングアッセイによって特定される他の分子は、ガンを含んでいる種々の障害の処置のために薬学的組成物の形態で投与され得る。
【0792】
CD79bポリペプチドが細胞内であり、かつ抗体丸ごとがインヒビターとして用いられる場合、内部移行する抗体が好ましい。しかし、リポフェクションまたはリポソームも、抗体または抗体フラグメントを細胞内に送達するために用いられてよい。抗体フラグメントが用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害性フラグメントが、好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づき、ペプチド分子は、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するように設計され得る。このようなペプチドは、化学的に合成されてもよく、そして/または組換えDNA技術によって産生されてもよい。例えば、Marascoら,
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,7889〜7893[1993]を参照のこと。
【0793】
本明細書中の処方物はまた、処置されている特定の徴候に必要な2個以上の活性化合物(好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する化合物)を含んでもよい。あるいは、またはさらに、この組成物は、例えば、細胞毒性剤、サイトカイン、化学療法剤または増殖阻害剤などその機能を増強する因子を含んでもよい。このような分子は、意図される目的のために有効な量で、組み合わせて適切に存在する。
【0794】
M.
抗体誘導体
本発明の抗体は、当該分野で公知であり容易に入手できる追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾してもよい。好ましくは、抗体の誘導体化に適切な部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキソラン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)およびデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコールおよびこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはそれが水中での安定性であるために製造において好都合であり得る。ポリマーは任意の分子量のものであってよく、そして分枝鎖であってもまたは未分枝鎖であってよい。抗体に結合するポリマーの数は変動してよく、そして、1つより多いポリマーが結合する場合は、それらは同じ分子であってもまたは異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に用いるポリマーの数および/または種類は、限定するものではないが、向上させるべき抗体の特定の特性または機能を含む考慮に基づいて、抗体誘導体を所定の条件下の治療に用いるか否かなどという考慮に基づいて決定することができる。
【0795】
N.スクリーニングの方法
本発明のさらに別の実施形態は、CD79bポリペプチドを含んでいる疑いのあるサンプル中のCD79bポリペプチドの存在を決定する方法に関しており、この方法は、このサンプルをCD79bポリペプチドに結合するその抗体薬物コンジュゲートに曝す工程と、そのサンプル中でのCD79bポリペプチドに対するその抗体薬物コンジュゲートの結合を決定する工程とを包含し、ここでこのような結合の存在は、サンプル中のCD79bポリペプチドの存在の指標である。必要に応じてこのサンプルは、CD79bポリペプチドを発現すると疑われる細胞(ガン細胞であってもよい)を含み得る。この方法で使用されるその抗体薬物コンジュゲートは必要に応じて、検出可能に標識されて、固体支持体に結合されるなどしてもよい。
【0796】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物における腫瘍の存在を診断する方法に関し、この方法は、(a)この哺乳動物から得られた組織細胞を含んでいる試験サンプルと、CD79bポリペプチドに結合するその抗体薬物コンジュゲートとを接触させる工程、ならびに(b)この試験サンプル中でのその抗体薬物コンジュゲートとCD79bポリペプチドとの間の複合体の形成を検出する工程であって、複合体形成が哺乳動物中の腫瘍の存在の指標である工程を包含する。必要に応じてこの抗体薬物コンジュゲートは検出可能に標識されるか、固体支持体に結合されるなどであり、および/または組織細胞の試験サンプルは、癌性腫瘍を有していると疑われる個体から得られる。
【0797】
IV.
抗CD79b抗体およびイムノコンジュゲートを用いるさらなる方法
A.
診断方法および検出の方法
一局面では、本発明の抗CD79b抗体およびイムノコンジュゲートは、生物学的サンプル中のCD79bの存在を検出するために有用である。本明細書中で用いる「検出する」という用語は、定量的または定性的な検出を包含する。特定の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞または組織を含む。特定の実施形態では、このような組織としては、他の組織、例えばB細胞および/またはB細胞関連組織に対して高いレベルでCD79bを発現する正常および/または癌性組織が挙げられる。
【0798】
一局面では、本発明は、生物学的サンプル中のCD79bの存在を検出する方法を提供する。特定の実施形態では、この方法は、CD79bへの抗CD79b抗体の結合に許容される条件下で生物学的サンプルと抗CD79b抗体とを接触させる工程と、抗CD79b抗体とCD79bとの間に複合体が形成されるか否かを検出する工程とを包含する。
【0799】
一局面では、本発明は、CD79bの発現増加と関係している障害を診断する方法を提供する。ある実施形態では、前記方法は、試験細胞と抗CD79b抗体とを接触させる工程と;CD79bへの抗CD79b抗体の結合を検出することによって試験細胞によるCD79bの発現レベル(量的にまたは質的に)を測定する工程と;試験細胞によるCD79bの発現レベルと、コントロール細胞(例えば、試験細胞と同じ組織起源の正常細胞、またはこのような正常細胞に匹敵するレベルでCD79bを発現する細胞)によるCD79bの発現レベルとを比較する工程とを包含し、ここでコントロール細胞と比べて試験細胞によるCD79bの発現レベルが高ければCD79bの発現の増加に関連する障害の存在が示される。特定の実施形態では、試験細胞は、CD79bの発現の増大に関連する障害があると疑われる個体から得られる。特定の実施形態では、この障害は、癌または腫瘍などの細胞増殖性障害である。
【0800】
本発明の抗体を用いて診断され得る例示的な細胞増殖性障害としては、B細胞障害および/またはB細胞増殖性障害が挙げられ、これには限定するものではないが、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。
【0801】
特定の実施形態では、上記のような診断もしくは検出の方法は、抗CD79b抗体の結合を、細胞の表面上で発現されたCD79bに対して、または細胞の表面上にCD79bを発現している細胞から得た膜調製物中で検出する工程を包含する。特定の実施形態では、この方法は、CD79bへの抗CD79b抗体の結合に許容される条件下で抗CD79b抗体と細胞を接触させる工程と、抗CD79b抗体と細胞表面上のCD79bとの間に複合体が形成されるか否かを検出する工程とを包含する。細胞の表面上に発現されたCD79bへの抗CD79b抗体の結合を検出するための例示的なアッセイは、「FACS」アッセイである。
【0802】
特定の他の方法を、CD79bに対する抗CD79b抗体の結合を検出するために用いてもよい。このような方法としては、限定するものではないが、当分野で周知である抗原−結合アッセイ、例えばウェスタンブロット、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、および免疫組織化学(IHC)が挙げられる。
【0803】
特定の実施形態では、抗CD79b抗体は標識される。標識としては、限定するものではないが、直接検出される標識または分子(例えば、蛍光、発色、高電子密度、化学発光、および放射性標識)、ならびに、例えば酵素反応または分子相互作用によって間接的に検出される酵素もしくはリガンドなどの分子が挙げられる。例示的な標識としては、限定するものではないが、放射性同位体である
32P、
14C、
125I、
3Hおよび
131I、フルオロフォア、例えば希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、複素環のオキシダーゼ、例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、HRP、ラクトペルオキシダーゼまたはマイクロペルオキシダーゼなどの色素前駆体を酸化するために水素ペルオキシダーゼを使用する酵素とカップリングさせたもの、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離基などが挙げられる。
【0804】
特定の実施形態では、抗CD79b抗体は不溶性基質に固定される。固定化は、溶液中で遊離したままであるいずれかのCD79bから抗CD79b抗体を分離することを伴う。これは従来、水不溶性基質もしくは表面に対して吸着させる(Bennichら、米国特許第3,720,760号)または共有的にカップリングさせる(例えば、グルタルアルデヒド架橋結合を用いる)、などしてアッセイ手順の前に抗CD79b抗体を不溶化するか、あるいは抗CD79b抗体とCD79bとの間の複合体の形成の後に、例えば免疫沈降によって抗CD79b抗体を不溶化することによって、達成される。
【0805】
診断もしくは検出の任意の上記の実施形態は、抗CD79b抗体の代わりに、もしくは抗CD79b抗体に加えて、本発明のイムノコンジュゲートを用いて行ってもよい。
【0806】
B.
治療法
本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートは、例えば、インビトロ、エクスビボ、およびインビボの治療法で用いられてもよい。一局面では、本発明は、インビボまたはインビトロのいずれかでの細胞の成長もしくは増殖を阻害するための方法を提供し、この方法は、CD79bへのイムノコンジュゲートの結合が許容される条件下で抗CD79b抗体もしくはそのイムノコンジュゲートに対して細胞を曝す工程を包含する。「細胞の成長または増殖を阻害する」ことは、細胞の成長もしくは増殖を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%低減することを意味し、細胞死を誘導することを包含する。特定の実施形態では、この細胞は腫瘍細胞である。特定の実施形態では、この細胞は、B細胞である。特定の実施形態では、この細胞は、例えば本明細書中に例示したような異種移植片である。
【0807】
一局面では、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートを用いて、B細胞増殖性障害を処置するかまたは予防する。特定の実施形態では、細胞増殖性障害は、CD79bの発現および/または活性の増大と関係している。例えば、特定の実施形態では、B細胞増殖性障害は、B細胞の表面上のCD79bの発現増大と関連している。特定の実施形態では、B細胞増殖性障害は腫瘍またはガンである。本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートによって処置されるべきB細胞増殖性障害の例としては、限定するものではないが、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。
【0808】
一局面では、本発明は、抗CD79b抗体またはそのイムノコンジュゲートの有効量を個体に投与する工程を包含するB細胞増殖性障害を処置するための方法を提供する。特定の実施形態では、B細胞増殖性障害を治療するための方法は、抗CD79b抗体または抗CD79bイムノコンジュゲートと、必要に応じて以下に挙げるような少なくとも1つの付加的治療剤とを含有している薬学的処方物の有効量を個体に投与する工程を包含する。特定の実施形態では、細胞増殖性障害を処置するための方法は、1)抗CD79b抗体と細胞毒性剤とを含むイムノコンジュゲートと;必要に応じて2)以下に挙げるような少なくとも1つの付加的治療剤とを含有する薬学的処方物の有効量を個体に投与する工程を包含する。
【0809】
一局面では、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートの少なくともいくつかは、ヒト以外の種のCD79bを結合し得る。従って、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートを用いて、例えば、CD79bを含んでいる細胞培養物において、ヒトにおいて、または、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートが交差反応するCD79bを有する他の哺乳動物(例えばチンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザルおよびアカゲザル、ブタまたはマウス)において、CD79bを結合してもよい。一実施形態では、抗CD79b抗体もしくはイムノコンジュゲートは、抗体もしくはイムノコンジュゲートとCD79bとを接触させて抗体またはイムノコンジュゲート−抗原複合体を形成することによって、B細胞上でCD79bを標的するために用いてもよく、その結果イムノコンジュゲートのコンジュゲートされた細胞毒素が細胞の内部にアクセスする。一実施形態では、このCD79bはヒトCD79bである。
【0810】
一実施形態では、抗CD79b抗体もしくはイムノコンジュゲートはCD79b発現および/または活性の増大と関係する障害に罹患している個体においてCD79bを結合させるための方法で用いられてもよく、この方法は、個体のCD79bが結合されるように、抗体もしくはイムノコンジュゲートをこの個体に投与する工程を包含する。一実施形態では、この結合された抗体またはイムノコンジュゲートはCD79bを発現しているB細胞中に内部移行される。一実施形態では、CD79bはヒトのCD79bであり、個体はヒト個体である。あるいは、個体は、抗CD79b抗体が結合するCD79bを発現している哺乳動物であってもよい。またさらに、この個体は、CD79bが(例えば、CD79bの投与によって、またはCD79bをコードする導入遺伝子の発現によって)導入されている哺乳動物であってもよい。
【0811】
抗CD79b抗体もしくはイムノコンジュゲートは、治療目的のためにヒトに投与されてもよい。さらに、抗CD79b抗体もしくはイムノコンジュゲートは、獣医学の目的のためまたはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応するCD79bを発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ブタ、ラットまたはマウス)に投与されてもよい。後者に関して、このような動物モデルは、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートの治療有効性を評価するため(例えば、投与の投薬量および時間経過の試験)に有用であり得る。
【0812】
本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートは、治療において単独で、または他の組成物と組み合わせて用いられてもよい。例えば、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートは、少なくとも1つの付加的治療剤および/またはアジュバントと同時に投与されてもよい。特定の実施形態では、付加的治療剤は、細胞毒性剤、化学療法剤または増殖阻害性剤である。このような実施形態のうちの一つでは、化学療法剤は、薬剤またはこの薬剤の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン(Oncovin(商標))、プレドニゾロン、CHOP、CVPもしくはCOP、または免疫療法剤、例えば、抗CD20(例えば、Rituxan(登録商標))または抗VEGF(例えば、Avastin(登録商標))であり、この併用療法は、ガンおよび/またはB細胞障害、例えば、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、高悪性度NHL、再発性高悪性度NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、およびマントル細胞リンパ腫を含むB細胞増殖性障害の処置に有用である。
【0813】
上で注記されるこのような併用治療は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じかまたは別の製剤に包含される場合)、および別々の投与(この場合には、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートの投与は追加の治療剤および/またはアジュバントの前、同時および/またはその後に投与することができる)を包含する。本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートはまた、放射線療法と組み合わせて用いられてもよい。
【0814】
本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲート(および任意の追加の治療剤またはアジュバント)は、非経口的、皮下、腹膜内、肺内、および鼻腔内、そして、必要に応じて局所の治療のために、病巣内投与を含む任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、または皮下的な投与が挙げられる。加えて、抗体もしくはイムノコンジュゲートを、特に抗体もしくはイムノコンジュゲートの用量を減少して、パルス注入によって好適に投与する。投与が短期のものであるか長期のものであるかにある程度依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によって投与することができる。
【0815】
本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートは、適正医薬品管理基準に合わせた様式で処方、投薬、投与されるであろう。この文脈での考慮の要因としては、処置されている特定の障害、処置されてい特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与の方法、投与のスケジュール、および医師には公知の他の要因が挙げられる。この抗体またはイムノコンジュゲートは必須ではないが場合によっては、問題の障害を予防するかまたは処置するために一般に用いられる一つ以上の薬剤とともに処方される。そのような他の作用剤の有効量は、処方物中に存在する抗体もしくはイムノコンジュゲートの量、障害もしくは疾患の型または治療、および上記で考察された他の要因に依存する。これらは、一般的に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量および投与経路で、または本明細書に記載される投薬量の1〜99%で、あるいは経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の投与経路で、用いられる。
【0816】
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートの適切な用量は(単独で用いる場合、または化学療法剤などの1つ以上の他の付加的な治療剤と組み合わせて用いる場合)、治療される疾患のタイプ、抗体もしくはイムノコンジュゲートのタイプ、疾患の重症度および経過、この抗体もしくはイムノコンジュゲートを予防目的で投与するか治療目的で投与するか、以前の治療法、患者の病歴および抗体もしくはイムノコンジュゲートへの応答性、および担当医師の判断に依存するであろう。抗体もしくはイムノコンジュゲートは一時的または一連の治療にわたって適切に患者に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg(例えば0.1mg/kg〜20mg/kg)の抗体もしくはイムノコンジュゲートを、例えば一以上の分割投与または連続注入のいずれかによる患者への投与のための初期候補用量とすることができる。ある典型的な1日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であろう。数日間以上にわたる繰り返し投与については、状態に応じて、処置は通常、所望の疾患症状の抑制が得られるまで持続する。抗体もしくはイムノコンジュゲートの投薬量の例は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲であろう。従って、抗体またはイムノコンジュゲートの約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgまたは10mg/kgの1つ以上の用量を(またはそれらを組み合わせて)患者に投与してもよい。このような用量は、間欠的に、例えば週ごとまたは3週ごとに投与してもよい(例えば、その結果、患者に約2〜約20、例えば約6用量の抗体もしくはイムノコンジュゲートが投与される)。初期のより高ローディング用量に続いて、1つ以上のより低用量を投与してもよい。例示的な投薬レジメンは、約4mg/kgの初期ローディング用量の後、約2mg/kgの毎週の維持用量の抗体を投与する工程を含む。しかしながら、他の投薬レジメンが有用である場合もある。この治療の進行は、従来技術およびアッセイによって容易にモニターされる。
【0817】
C.
活性アッセイ
本発明の抗CD79b抗体およびイムノコンジュゲートは、当分野で公知の種々のアッセイによって、それらの物理的/化学的な性質および/または生物活性について特徴付けしてもよい。
【0818】
1.
活性アッセイ
一局面では、アッセイは、生物学的な活性を有する抗CD79b抗体もしくはそのイムノコンジュゲートを同定するために提供される。生物学的な活性としては、例えば、細胞の成長または増殖を阻害する能力(例えば「細胞殺傷」活性)、またはプログラムされた細胞死(アポトーシス)を含む細胞死を誘導する能力を挙げることができる。また、インビボおよび/またはインビトロでのこのような生物学的な活性を有する抗体もしくはイムノコンジュゲートも提供される。
【0819】
特定の実施形態では、抗CD79b抗体またはそのイムノコンジュゲートは、インビトロでの細胞の成長または増殖を阻害する能力について試験される。細胞の成長または増殖の阻害のためのアッセイは当分野で周知である。本明細中に記載の「細胞殺傷」アッセイにて例示した細胞増殖のための特定のアッセイは、細胞生存度を測定する。このようなアッセイの1つは、Promega(Madison, WI)から市販されているCellTiter−Glo(商標)Luminescent Cell Viability
Assayである。このアッセイは、代謝活性のある細胞の指標であるATPの存在の量に基づいて培養物中の生細胞数を決定する。Crouchら(1993)J.Immunol.Meth.160:81〜88、米国特許第6602677号を参照のこと。アッセイは、自動ハイスループットスクリーニング(HTS)に用いられるように96−または384−ウェルの形式で行ってもよい。Creeら(1995)AntiCancer Drugs 6:398〜404を参照のこと。アッセイ手順は、単一の試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を直接培養細胞に加えることを伴う。この結果細胞溶解が生じ、ルシフェラーゼ反応によって生産される発光シグナルが発生される。この発光シグナルは、培養物中に存在する生細胞の数に直接比例している、ATPの存在の量に比例する。データは、ルミノメーターまたはCCDカメラ画像デバイスによって記録することができる。発光の結果は相対的な光の単位(RLU)として表す。
【0820】
細胞増殖についての別のアッセイは比色アッセイである「MTT」アッセイであり、これは、ミトコンドリアレダクターゼによる3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイドのホルマザンへの酸化を測定する。CellTiter−Glo(商標)アッセイのように、このアッセイは、細胞培養物に存在する代謝活性のある細胞の数を示す。例えば、Mosmann(1983)J.Immunol.Meth.65:55〜63およびZhangら(2005)Cancer Res.65:3877〜3882を参照のこと。
【0821】
一局面では、抗CD79b抗体は、インビトロでの細胞死を誘導する能力について試験される。細胞死の誘導についてのアッセイは当分野で周知である。いくつかの実施形態では、このようなアッセイは、例えば、ヨウ化プロピジウム(PI)トリパンブルー(Mooreら、(1995)Cytotechnology,17:1〜11を参照)、または7AADの取り込みによって示される膜の完全性の喪失を測定する。例示的なPI取り込みアッセイでは、細胞は、10%の熱不活性化FBS(Hyclone)と2mMのL−グルタミンを補充した、ダルベッコの改変イーグル培地(D−MEM):ハムF−12(50:50)中で培養される。したがって、このアッセイは、補体と免疫エフェクター細胞の非存在下で行う。100×20mmのディッシュに1ディッシュあたり3×10
6の密度で細胞を播種し、一晩付着させる。その培地を取り除き、新鮮な培地のみ、または種々の濃度の抗体もしくはイムノコンジュゲートを含んでいる培地と交換する。細胞を3日間インキュベートする。処置後、単層をPBSにて洗浄し、トリプシン処理によって脱離させる。次いで、1200rpmで4℃で5分間遠心して、ペレットを3mlの冷却Ca
2+結合緩衝液(10mMのHepes、pH7.4、140mMのNaCl、2.5mMのCaCl
2)に再懸濁して、細胞凝集塊を取り除くために35mmのストレーナーを取り付けた12×75mm試験管(試験管あたり1ml、1処理群につき3試験管)にアリコートする。次いで、試験管にPI(10μg/ml)を加える。サンプルは、FACSCAN(商標)フローサイトメータおよびFACSCONVERT(商標)CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析される。PI取り込みによって定まる統計学的に有意なレベルの細胞死を誘導する抗体もしくはイムノコンジュゲートをこのように同定する。
【0822】
一局面では、抗CD79b抗体もしくはイムノコンジュゲートは、インビトロでアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導する能力について試験される。アポトーシスを誘導する抗体もしくはイムノコンジュゲートの例示的なアッセイはアネキシン結合アッセイである。例示的なアネキシン結合アッセイでは、細胞を培養し、前段落で考察したようにディッシュに播く。培地を取り除き、新鮮培地のみ、または0.001〜10μg/mlの抗体もしくはイムノコンジュゲートを含んでいる培地と交換する。3日間のインキュベート後、単層をPBSで洗浄し、トリプシン処理によって脱離させる。次いで、細胞を遠心して、Ca
2+結合緩衝液に再懸濁し、前段落で考察されたように試験管にアリコートする。次いで、試験管に標識したアネキシン(例えばアネキシンV−FITC)(1μg/ml)を加える。サンプルは、FACSCAN(商標)フローサイトメータおよびFACSCONVERT(商標)CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を用いて分析する。コントロールと比べて統計学的に有意なレベルのアネキシン結合を誘導する抗体もしくはイムノコンジュゲートをこのように同定する。アポトーシスを誘導する抗体もしくはイムノコンジュゲートの別の例示的なアッセイは、ゲノムDNAのヌクレオソーム間分解を検出するためのヒストンDNA ELISA比色アッセイである。このようなアッセイは、例えば細胞死検出ELISAキット(Roche,Palo Alto,CA)を用いて行うことができる。
【0823】
上記いずれかのインビトロアッセイに用いるための細胞としては、天然でCD79bを発現するか、またはCD79bを発現するように操作されている、細胞または細胞株が挙げられる。このような細胞としては、同じ組織由来の正常細胞と比べてCD79bを過剰発現する腫瘍細胞が挙げられる。また、このような細胞には、CD79bを発現する細胞株(腫瘍細胞株を含む)および、正常にはCD79bを発現しないがCD79bをコードする核酸をトランスフェクトされている細胞株が挙げられる。
【0824】
一局面では、抗CD79b抗体もしくはそのイムノコンジュゲートは、インビボでの細胞成長または増殖を阻害する能力について試験される。特定の実施形態では、抗CD79b抗体もしくはそのイムノコンジュゲートは、インビボで腫瘍成長を阻害する能力について試験される。異種移植片モデルなどのインビボのモデル系がこのような試験のために用いられ得る。例示的な異種移植片システムでは、適切に免疫を低下させた非ヒト動物、例えば、SCIDマウスにヒト腫瘍細胞が導入される。本発明の抗体もしくはイムノコンジュゲートは動物に投与される。抗体もしくはイムノコンジュゲートが腫瘍増殖を阻害するかまたは低減する能力が測定される。上記の異種移植片系の特定の実施形態では、ヒト腫瘍細胞はヒト患者由来の腫瘍細胞である。異種移植片モデルを作製するために有用なこのような細胞としては、ヒト白血病およびリンパ腫細胞株が挙げられ、この細胞としては限定するものではないが、BJAB−luc細胞(ルシフェラーゼレポーター遺伝子でトランスフェクトされたEBV陰性陰性のバーキットリンパ腫細胞株)、Ramos細胞(ATCC,Manassas,VA,CRL−1923)、SuDHL−4細胞(DSMZ,Braunschweig,Germany,AAC495)、DoHH2細胞(Kluin−Neilemans、H.C.ら、Leukemia 5:221〜224(1991)、およびKluin−Neilemans、H.C.ら、Leukemia 8:1385〜1391(1994))、Granta−519細胞(Jadayel,D.M.ら,Leukemia 11(1):64〜72(1997)を参照のこと)が挙げられる。特定の実施形態では、ヒト腫瘍細胞は、皮下注射によって、または哺乳動物の脂肪体などの適切な部位への移植によって、適切に免疫を低下させた非ヒト動物に導入される。
【0825】
2.
結合アッセイおよび他のアッセイ
一局面では、抗CD79b抗体はその抗原結合活性について試験される。例えば、特定の実施形態では、抗CD79b抗体は、細胞の表面に発現されるCD79bに結合する能力について試験される。FACSアッセイをこのような試験に用いてもよい。
【0826】
一局面では、競合アッセイを用いて、CD79bへの結合についてマウス2F2抗体および/またはヒト化2F2.D7抗体と競合するモノクローナル抗体を同定してもよい。特定の実施形態では、このような競争する抗体は、マウス2F2抗体および/またはヒト化2F2.D7抗体が結合する同じエピトープ(例えば線形または高次構造のエピトープ)に結合する。例示的な競合アッセイとしては、限定するものではないが、Harlow
and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual 第14章(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)に挙げられるものなどの慣用的なアッセイが挙げられる。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的な方法は、Methods in Molecular Biology 第66巻(Humana Press,Totowa,NJ)のMorris(1996)「Epitope Mapping Protocols,」に示される。2つの抗体のそれぞれが50%以上他の結合をブロックする場合、これらの抗体は同じエピトープに結合すると言える。
【0827】
例示的な競合アッセイでは、固定されたCD79bは、CD79bに結合する第一標識抗体(例えばマウス2F2抗体および/またはヒト化2F2.D7抗体)と、CD79bへの結合について第一抗体と競合する能力について試験されている第二非標識抗体とを含んでいる溶液中でインキュベートされる。二次抗体はハイブリドーマ上清に存在してもよい。コントロールとして、固定したCD79bを、第一標識抗体を含むが第二非標識抗体は含まない溶液中でインキュベートする。CD79bへの第一抗体の結合に許容される条件下でのインキュベートの後、過剰な結合していない抗体を取り除き、固定されたCD79bと会合している標識の量を測定する。固定されたCD79bと会合している標識の量がコントロールのサンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少しているならば、二次抗体がCD79bへの結合について第一抗体と競合していることが示される。特定の実施形態では、固定されたCD79bは、細胞の表面上に、またはその表面上にCD79bを発現する細胞から得た膜調製物中に存在する。
【0828】
一局面では、精製した抗CD79b抗体はさらに、限定するものではないが、N末端配列決定法、アミノ酸分析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィおよびパパイン消化を含む、一連のアッセイによって特徴付けることができる。
【0829】
一実施形態では、本発明は、全てではないが幾つかのエフェクター機能を保有する変更された抗体を考慮しており、この抗体は、抗体のインビボ半減期が重要であり、さらに特定のエフェクター機能(補体またはADCCなど)が不要または有害である多くの用途の好ましい候補となる。特定の実施形態では、抗体のFc活性を測定して、所望の特性だけが維持されていることを確認する。インビトロおよび/またはインビボ細胞障害アッセイを行って、CDCおよび/またはADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠いている(すなわちADCC活性を欠いていると思われる)が、FcRn結合能は維持していることを確認することができる。ADCCを仲介する第一細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現するが、その一方で単核細胞はFc(RI、Fc(RIIおよびFc(RIIIを発現する。造血系細胞でのFcR発現については、RavetchおよびKinet,Annu.Rev.Immunol 9:457〜92(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されている。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性は、例えばClynesら、PNAS(USA)95:652〜656(1998)に開示されているような動物モデルにおいてインビボで評価することができる。また、C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合できず、従ってCDC活性を欠損していることを確認してもよい。補体活性化を評価するために、例えばGazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載のように、CDCアッセイを行ってもよい。また、FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期測定を、当分野で公知の方法を用いて行ってもよい。
【0830】
以下の実施例は、例示の目的で示すだけであって、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0831】
本明細書に引用される全ての特許および文献の引用はその全体が出典明記によって本明細書に援用される。
【実施例】
【0832】
本実施例にて言及される市販の試薬は、他に示さない限り製造業者の指示に従って用いた。本実施例で用いられる抗体としては市販の抗体が挙げられる。以下の実施例および本明細書全体にわたって特定される細胞の供給源は、American Type Culture Collection,Manassas,VAであるATCCアクセッション番号による。
【0833】
(実施例1)
ヒト化抗CD79b抗体の作製
残基番号はKabat(Kabatら、Sequences of proteins
of immunological interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))に従う。1文字のアミノ酸略号を用いる。DNA縮合はIUBコードを用いて示す(N=A/C/G/T、D=A/G/T、V=A/C/G、B=C/G/T、H=A/C/T、K=G/T、M=A/C、R=A/G、S=G/C、W=A/T、Y=C/T)。
【0834】
キメラ2F2抗体(本明細書においては「ch2F2」と呼ばれる)を、2006年8月3日出願の米国特許出願番号第11/462,336に以前に記載されたとおり作製した。
【0835】
A.ヒト化抗CD79b抗体グラフト
ヒト化抗CD79b抗体を作製した。マウス2F2抗体(mu2F2)由来のVLおよびVHドメインをヒトコンセンサスVLκI(huKI)およびヒトサブグループIIIコンセンサスVH(huIII)ドメインとアラインメントさせた。HVRグラフトを作製するために、ヒトサブグループIIIコンセンサスVHドメインとは3つの位置:R71A,N73T、およびL78Aで異なるアクセプターVHフレームワーク(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992))を用いた。マウス2F2(mu2F2)抗体由来の超可変領域をアクセプターヒトコンセンサスフレームワークに操作して、2F2の直接HVR−グラフトを作製した(本明細書においては「2F2グラフト」または「2F2移植型「ヒト化」抗体」または「hu2F2グラフト」と呼ばれる)。VLドメインでは以下の領域をヒトコンセンサスアクセプターに移植した:位置24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)(
図7)。VHドメインでは、位置26〜35(H1)、49〜65(H2)および93〜102(H3)を移植した(
図8Aおよび図8B)。MacCallumら(MacCallumら、J.Mol.Biol.,262:732〜745(1996))は、抗体および抗原の複合体の結晶構造を分析して、重鎖の49、93および94の位置が接触領域の一部であり、そのためヒト化抗体の場合はHVR−H2およびHVR−H3の定義に包含されることを見出した。
【0836】
直接グラフト改変体(2F2−グラフト)は、各々の超可変領域に別のオリゴヌクレオチドを用いて、ファージ上に提示されたFabおよびIgGとしての両方で、Kunkel変異誘発によって作製された。正確なクローンはDNA配列決定によって評価した。
【0837】
B.ヒト化抗CD79b抗体グラフト改変体
2F2移植「ヒト化」抗体の超可変領域における変異的な多様性を有する抗CD79b抗体グラフト改変体をファージライブラリーを用いて作製した。抗CD79b抗体グラフト改変体は、HVRで複数の位置のバリエーションを含んだ(
図9)。
【0838】
C.ファージ選択
ファージ選別のために、huCD79b
ecd(2μg/ml)をMaxiSorpマイクロタイタープレート(Nunc)上でPBS中で4℃で一晩固定した。プレートはカゼインブロッカー(Pierce)を用いて少なくとも1時間ブロックした。ファージを培養液上清から回収し、0.5%BSAおよび0.05%Tween20を含有するPBS(PBSBT)に懸濁した。ファージライブラリーの追加および2時間のファージ選別後、マイクロタイターウェルを、0.05%Tween20を含有するPBS(PBST)にて徹底的に洗浄し、未結合のファージを取り除いて、結合したファージを、100mM HClにてウェルを30分間インキュベートすることによって溶出した。選別のストリンジェンシーは、PBSTでの洗浄回数を増やすことによって、または溶出の前の期間を延長するために可溶性のhuCD79b
ecdとインキュベートすることによって連続回の選別の間増大され得る。
【0839】
溶出されたファージは、1Mのトリス、pH8にて中和して、XL1−Blue細胞およびM13/KO7ヘルパーファージを用いて増幅させ、2YT、50μg/mlカルバネシリン中で37℃で一晩増殖させた。標的含有ウェルから溶出されるファージの力価を、非標的含有ウェルから回収したファージの力価と比較して、濃縮を評価した。
【0840】
D.Fab産生およびIgG産生
親和性測定のためにFabタンパク質を発現させるため、停止コドンを、ファージディスプレイベクターの重鎖とg3の間に導入した。クローンをE.coliの34B8細胞内に形質転換して、完全C.R.A.P.培地中で30℃で増殖させた(Prestaら、Cancer Res.57:4593〜4599(1997))。細胞を遠心分離によって回収して、PBS、100μM PMSF、100μM ベンズアミジン、2.4mMのEDTAに懸濁して、マイクロフルイダイザーを用いて破壊した。FabはプロテインGアフィニティクロマトグラフィにて精製した。
【0841】
スクリーニングの目的のために、IgG改変体を最初に293細胞中で作製した。VLおよびVHをコードするベクター(25μg)をFuGeneシステムを用いて293細胞中にトランスフェクトした。500μlのFuGeneを、FBSを含まない4.5mlのDMEM培地と混合して、室温で5分間インキュベートした。各々の鎖(25μg)をこの混合物に添加し、室温で20分間インキュベートし、次いでトランスフェクションのためにフラスコに5%CO
2中に37℃で一晩移した。翌日、そのトランスフェクション混合物を含む培地を取り出して、0.1ml/Lの微量元素および10mg/Lのインスリンを含む23mlのPS04培地で置き換えた。細胞をさらに5日間インキュベートして、その後その培地を1000rpmで5分間回収して、0.22μmの低タンパク質結合フィルターを用いて無菌濾過した。サンプルは、培地125mlごとに2.5mlの0.1%のPMSFを添加した後4℃で保管可能であった。
【0842】
E.親和性測定(Biacore分析)
2F2移植型「ヒト化」抗体改変体の親和性測定のために、ヒトCD79b(huCD79b
ecd)の細胞外ドメインをCHO細胞単独でまたはFc融合物(huCD79b
ecd−Fc)として表し、従来の手段で精製した。さらに、2F2についてのエピトープを含んでいる16アミノ酸のペプチド(ARSEDRYRNPKGSACK)(配列番号78)を従来の手段で合成した。
【0843】
2F2抗体のエピトープ(
図14では「試験ペプチド」として表示される)の特徴付けは、2006年8月3日に提出の米国特許出願番号第11/462,336号に以前に開示されている。2F2抗体のエピトープは、膜貫通ドメインに対して遠位の細胞外ペプチド領域に位置しており、ヒトCD79bの全長型および短縮型に存在し(Cragg,Blood,100(9):3068〜76(2002))、これは正常B細胞および悪性B細胞において記載されている(Hashimoto,S.ら、Mol.Immunol.,32(9):651〜9(1995);Alfaranoら、Blood,93(7):2327〜35(1999))。CD79bの短縮型は、細胞外Ig様ドメイン(CD79bのスプライシング改変型に存在しない細胞外ドメインは
図14ではボックスにしている)全体を欠いている。
【0844】
Fabおよびch2F2のIgG改変体の結合で、固定されたhuCD79b
ecdまたはCD79b−Fcまたは2F2のエピトープを含有している16アミノ酸のペプチドに対する2F2移植型「ヒト化」抗体(hu2F2グラフト)または2F2移植型「ヒト化」抗体改変体7(hu2F2.D7)を、表面プラズモン共鳴によって測定した。親和性測定は、BIAcore(商標)−2000を用いる表面プラズモン共鳴によって行った。抗原、huCD79b
ecdまたはhuCD79b−Fcを、CM5センサーチップ上で10mMの酢酸ナトリウムpH4.8中で固定した(約50〜200RU)。2F2についてのエピトープ(配列番号78のアミノ酸1〜11)を含んでいる16アミノ酸のペプチド(ARSEDRYRNPKGSACK)(配列番号78)に対する結合を測定する実験では、ビオチン化ペプチドを、ストレプトアビジンでコーティングしたセンサーチップ上で捕獲した(約20RU)。精製された2F2移植型「ヒト化」抗体改変体(FabまたはIgGとして)(PBST中で0.5〜1000nMという2倍階段希釈)を、30μL/分という流速で注射した。各々のサンプルは4分の会合および10分の解離で分析した。各々の注射後、そのチップを10mMのグリシン(pH1.7)を用いて再生した。
【0845】
結合応答は、2F2移植型「ヒト化」抗体改変体(FabまたはIgG)フローセルからコントロールのフローセルを差引きすることによって補正した。k
onおよびk
offの同時フィッテイングの1:1のLanguirモデルを反応速度論分析に用いた。
【0846】
F.結合分析(FACS分析)
SRライブラリーから生じる2F2移植型「ヒト化」抗体改変体7(hu2F2.D7)のBJAB細胞に対する結合をさらに確認するため、BJAB細胞に対する標識化hu2F2.D7(IgG改変体)抗体の結合を、FACS分析を用いて分析した。
【0847】
FACS分析については、モノクローナル抗体ch2F2および2F2.D7を、製造業者の指示に従って、Zenon(登録商標)Alexa Fluor(登録商標)488ヒトIgG標識キット(Invitrogen,Carlsbad,California)で標識した。BJAB細胞(100μlの容積に1×10
6個の細胞)を各1μgの標識抗体、hIgG1アイソタイプ、ch2F2または2F2.D7で染色した。
【0848】
G.親和性測定(スキャッチャード分析)
HVR−L3に変化を有する2F2移植型「ヒト化」抗体改変体7(hu2F2.D7)のIgG改変体の結合をさらに測定するために、未標識のch2F2との競合を用いるヒトCD79bおよびカニクイザルCD79bを発現するBJAB細胞に対するヨウ素化抗CD79b(ch2F2と同じエピトープと有する)の結合を分析して、スキャッチャード分析を行った。
【0849】
スキャッチャード分析には、ch2F2と同じエピトープを有する0.5nMのI
125標識した抗ヒトCD79b、または0.5nMのI
125標識した2F2−グラフト「ヒト化」抗体改変体7(hu2F2.D7)を、カニクイザルCD79bおよび内因性ヒトCD79bを安定に発現しているトランスフェクトされたBJAB株の存在下で、50〜0.02nM(12工程の1:2連続希釈)におよぶ、それぞれ未標識のch2F2またはhu2F2.D7に対して競合させた。4℃で4時間のインキュベーション後、細胞を洗浄して細胞ペレットのカウントをガンマカウンターで読み取った(1470 WIZARD Automatic Gamma Counter;Perkin Elmer,Walthem,MA)。全てのポイントを三連で行い、10分間カウントした。New Ligand(Genentech,South San Francisco,CA)プログラムを用いてKd算出のためには平均CPMを用いた。
【0850】
結果および考察
A.ヒト化抗CD79b抗体の作製の結果
ヒト化抗CD79bの作製のために用いられるヒトアクセプターフレームワークは、コンセンサスヒトκIVLドメインおよびヒトサブグループIIIコンセンサスVHドメインの改変体を含む。改変体VHドメインは、ヒトコンセンサスから3つ変化している:R71A、N73TおよびL78A。マウス2F2(mu2F2)のVLおよびVHドメインを、ヒトκIおよびサブグループIIIドメインとアラインメントした;各々のHVRを特定し、次いでヒトアクセプターフレームワークに移植して、ファージ上でFabとして提示され得るHVR−グラフトを作製した(
図7および
図8)。
【0851】
2F2−グラフトをFabとして提示するファージは、固定されたhuCD79b
ecdには結合しなかった(データ示さず)。さらに、Biacore分析で測定した場合、2F2−グラフトはFabとしてhuCD79b
ecdに結合せず、2F2−グラフトはFabとしてまたはIgとしてhuCD79b
ecd−Fcに結合しなかった(
図10、NB=結合なし(no binding))。
【0852】
1.CDRの修復
以下の配列変化を有する固定されたhuCD79b
ecdに結合できた2F2移植型「ヒト化」抗体改変体を特定した。
【0853】
L3中のHVRを標的する唯一の配列変化を、複数の位置変化を含んでいるライブラリー中で観察して、
図9に示す(
L3変異については:W89FおよびY96F(2F2.D7変異)(配列番号18)。
【0854】
選択クローンは、FACSによる分析にはFabとして、そしてBiacoreおよびスキャッチャードによるさらなる分析にはIgGとして再構成した。
【0855】
a.親和性測定(Biacore分析)
Biacore分析を示している
図10に示されるとおり、このCDR修復アプローチによって、2F2移植型「ヒト化」抗体の親和性を回復するHVR−L3(hu2F2.D7)における配列変化を特定した。表面プラズモン共鳴アッセイによって、L3における変化(hu2F2.D7)は、Biacore分析で測定した場合、固定されたhuCD79b
ecdまたは2F2についてのエピトープ(配列番号78のアミノ酸1〜11)を含んでいる16アミノ酸のペプチド(配列番号78)に結合する場合ch2F2と同様の親和性を有した(
図10)ことが示された。
【0856】
b.親和性測定(スキャッチャード分析)
スキャッチャード分析によって評価した場合、このCDR修復アプローチによって、2F2移植型「ヒト化」抗体の親和性を改善した配列変化が特定された。詳細には、この細胞結合アッセイによって、ch2F2および2F2移植型「ヒト化」抗体改変体7(hu2F2.D7)(IgGとして再構成された)の親和性が、カニクイザルCD79bおよび内因性ヒトCD79bを安定に発現しているBJAB細胞結合について、スキャッチャード分析によって測定した場合、それぞれ、1nM(ch2F2;Kd=0.99±0.23nM)および2nM(hu2F2.D7;Kd=2.0±0.53nM)というKd値を有することが示された。
【0857】
c.結合測定(FACS分析)
FACS分析によって評価した場合、このCDR修復アプローチで、BJAB細胞に対する2F2移植型「ヒト化」抗体(hu2F2グラフト)の結合を改善した配列変化が特定された(データ示さず)。詳細には、BJAB細胞に対するファージライブラリーから特定されたモノクローナルhu2F2.D7(IgG改変体)のFACS分析によって、BJAB細胞に対するhu2F2.D7改変体の結合が示された(データ示さず)。
【0858】
B.2F2抗体のヒト化の考察
6つのマウス2F2のHVRのグラフト(位置24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、26〜35(H1)、49〜65(H2)および93〜102(H3)として定義)から出発して、ヒトコンセンサスκIVLおよびサブグループIIIVH(A71、T73およびA78を含有している)まででCDR修復を用いて、結合親和性を改善するHVRの1〜6の変化を特定した。
図10で特定されたHVRの配列変化によって、ch2F2と類似の親和性を有する2F2ヒト化改変体がもたらされた。
【0859】
(実施例2)
抗CD79b抗体薬物コンジュゲート(ADC)の作製
2F2移植型「ヒト化」抗体改変体のIgG改変体の有効性を試験するために、2F2移植型「ヒト化」抗体改変体を、DM1などの薬物にコンジュゲートした。DM1にコンジュゲートされる改変体は、HVR−L3の変化を有する改変体を含んだ。
【0860】
抗CD79b抗体の抗体薬物コンジュゲート(ADC)の作製のために用いられる薬物としてはメイタンシノイドDM1が挙げられ、ドラスタチン10誘導体モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を含んでもよい。(米国特許出願公開第2005/0276812号;米国特許出願公開第2005/0238649号;Doroninaら、Bioconjug.Chem.,17:114〜123(2006))、DM1,MMAEおよびMMAFは、NHLの化学療法処置で用いられるビンカアルカロイドインヒビターよりも少なくとも100倍細胞毒性である有糸分裂インヒビターである(その全てが全体として出典明記によって本明細書に援用されている、Doroninaら、Bioconjug.Chem.,17:114〜123(2006);Doroninaら、Nat.Biotechnol.,21:778〜784(2003);Ericksonら、Cancer Res.,66:4426〜4433(2006))。ADCの作製に有用なリンカーは、DM1については、BMPEO、SPPまたはSMCC(本明細書においては「MCC」とも呼ばれる)、およびMMAEおよびMMAFについてはMCまたはMC−vc−PABである。DM1については、抗体は、DM1のチオ基に、およびリンカー試薬SMCCを用いてリジンのε−アミノ基を通じて連結された。あるいは、DM1については、この抗体は、SPPリンカーを用いてリジンのe−アミノ基を通じてDM1に連結されてもよい。SPP(N−スクシンイミジル4−(2’−ピリジルジチオ)ペンタノエート)は、リジンのεアミノ基と反応してタンパク質上の反応性の2−ピリジルジフルフィドリンカーを残す。SPPリンカー類では、遊離のスルフィドラル(例えば、DM1)との反応の際に、ピリジル基が置換され、還元可能なジスルフィド結合を介して結合されたDM1が残る。SPPリンカーを介して結合したDM1は、還元条件下で(すなわち、例えば、細胞内で)遊離されるが、SMCCリンカーを介して結合したDM1は、還元条件における切断に対して耐性である。さらに、SMCC−DM1のADCは、このADCが内部移行され、細胞の内側で有効な
抗有糸分裂剤であるリジン−N
ε−DM1の遊離を生じるリソソームに対して標的される場合、細胞毒性を誘発し、そして細胞から遊離された場合、リジン−N
ε−DM1は非毒性である(Ericksonら、Cancer Res.,66:4426〜4433(2006))。MMAEおよびMMAFに関しては、抗体は、マレイミドカプロイル−バリン−シトルリン(vc)−p−アミノベンジルオキシカルボニル(MC−vc−PAB)によってシステインを通じてMMAEまたはMMAFに連結されてもよい。MMAFについては、この抗体は代替的に、マレイミドカプロイル(MC)リンカーによってシステインを通じてMMAFに連結されてもよい。MC−vc−PABリンカーは、カテプシンBなどの細胞内プロテアーゼによって切断可能であり、切断されたとき、遊離の薬物を放出する(Doroninaら、Nat.Biotechnol.,21:778〜784(2003))が、MCリンカーは、細胞内プロテアーゼによる切断には耐性である。
【0861】
SMCC−DM1を用いる抗CD79bについての抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、米国特許出願公開第2005/0276812号に記載の手順と同様に作製された。抗CD79b精製抗体は、50mMのリン酸カリウムおよび2mMのEDTA(pH7.0)を含有している溶液中へ緩衝液交換された。SMCC(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)をジメチルアセトアミド(DMA)に溶解して、抗体溶液に添加し、10:1という最終のSMCC/Abモル比を得た。この反応を混合しながら室温で3時間進行させた。SMCC修飾抗体を引き続き、150mMのNaClおよび2mMのEDTA(pH6.0)を含む35mMのクエン酸ナトリウム中で平衡にしたGE Healthcare HiTrap脱塩カラム(G−25)上で精製した。DMAに溶解したDM1をSMCC抗体調製物に添加して、10:1というDM1対抗体のモル比を得た。この反応を攪拌しながら室温で4〜20時間進行させた。DM1修飾抗体溶液を20容積のPBSでダイアフィルトレートして、未反応のDM1を除き、無菌濾過して、4℃で保管した。代表的には、このプロセスを通じて40〜60%の収率の抗体を達成した。この調製物はゲル濾過およびレーザー光散乱によって評価した場合、通常単量体が95%を超えていた。DM1が252nmで吸収最大であるので、抗体に結合した薬物の量は252nmと280nmとの示差的な吸収測定によって測定可能であった。代表的には薬物対抗体比は3〜4であった。
【0862】
本明細書に記載される抗CD79b抗体についての抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、SPP−DM1リンカーを用いて、米国特許出願公開第2005/0276812号に記載される手順と同様に作製できる。抗CD79b精製抗体は、50mMのリン酸カリウムを含有する溶液に緩衝液交換して、2mMのEDTA(pH7.0)SPP(Immunogen)をDMAに溶解し、抗体溶液に加えて、約10:1という最終のSPP/Abモル比を得たが、この正確な比は抗体の所望の薬物ローディングに依存した。10:1の比によって通常、約3〜4という薬物対抗体比が生じる。SPPを室温で3〜4時間反応させる。SPP修飾抗体を引き続き、150mMのNaClおよび2mMのEDTA(pH6.0)を含む35mMのクエン酸ナトリウムまたはリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)中で平衡にしたGE Healthcare HiTrap脱塩カラム(G−25)上で精製した。DMAに溶解したDM1をSPP抗体調製物に添加して、10:1というDM1対抗体のモル比を得て、これによって抗体に対して利用可能なSPPリンカーが3〜4倍モル過剰になる。DM1との反応を攪拌しながら室温で4〜20時間進行させた。DM1修飾抗体溶液を20容積のPBSでダイアフィルトレートして、未反応のDM1を除き、無菌濾過して、4℃で保管した。代表的には、このプロセスによって40〜60%またはそれ以上の抗体収率が達成された。この抗体−薬物コンジュゲートは、ゲル濾過およびレーザー光散乱によって評価した場合、通常単量体が95%を超えている。結合した薬物の量はSMCC−DM1コンジュゲートの調製について記載したとおり、252nmと280nmとの示差的な吸収測定によって測定される(上記)。
【0863】
MC−MMAF、MC−MMAE,MC−val−cit(vc)−PAB−MMAEまたはMC−val−cit(vc)−PAB−MMAF薬物リンカー類を用いる本明細書に記載される抗CD79b抗体の抗体薬物コンジュゲート(ADC)はまた、米国特許出願公開第2005/0238649号に記載の手順と同様に作製してもよい。精製された抗CD79b抗体を500mMのホウ酸ナトリウムおよび500mMの塩化ナトリウム(pH8.0)に溶解し、さらに、過剰の100MMジチオスレイトール(DTT)で処理する。約30分間の37℃でのインキュベーション後、その緩衝液をSephadex
G25樹脂での溶出によって交換して、1mMのDTPAを含有するPBSで溶出する。チオール/Ab値は、溶液の280nmでの吸光度から還元された抗体濃度を測定すること、ならびにDTNB(Aldrich,Milwaukee,WI)との反応によるチオール濃度および412nmでの吸光度の測定によってチエックする。この還元された抗体をPBSに溶解して氷上で冷却した。薬物リンカー、例えば、MC−val−cit(vc)−PAB−MMAE(DMSO中)をアセトニトリルおよび水に溶解して、PBS中の冷却して還元した抗体に添加する。1時間のインキュベーション後、過剰のマレイミドを添加して反応物をクエンチして未反応の抗体のチオール基をキャッピングする。その反応混合物を超遠心分離によって濃縮して、抗体薬物コンジュゲートを精製し、PBS中のG25樹脂を通した溶出によって脱塩し、無菌条件下で0.2μmのフィルターを通して濾過し、貯蔵のため凍結する。
【0864】
抗体薬物コンジュゲート(本明細書に記載の抗CD79b抗体を用いる)をアッセイ培地中で2×10μg/mlに希釈した。コンジュゲートを架橋剤SMCCと連結した(代用のジスルフィドリンカーをSPPについてメイタンシノイドDM1毒素に対して用いてもよい)(米国特許出願公開第2005/0276812号および米国特許出願公開第2005/0238649号)。さらに、コンジュゲートをMC−バリン−シトルリン(vc)−PABまたはMCを用いてドラスチン10誘導体、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)毒素またはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)毒素(2005年5月31日出願、米国特許出願第11/141,344号、および2004年11月5日出願、米国特許出願第10/983,340号)に対して連結してもよい。陰性のコントロールとしてはHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)(抗HER2)ベースのコンジュゲート(SMCC−DM1またはSPP−DM1またはMC−vc−MMAEまたはMC−vc−MMAF)が挙げられた。陽性のコントロールとしては、コンジュゲートローディング用量に対して等しい遊離のL−DM1を挙げることができる。サンプルをボルテックスして、希釈の前に均一な混合を確実にした。
【0865】
薬物コンジュゲートの抗−CD79b抗体は、2F2キメラ抗体(実施例1Aに記載)および本明細書にさらに記載される抗体を含み(実施例1を参照のこと)これにはhu2F2.D7が含まれる。
【0866】
(実施例3)
インビボの腫瘍細胞殺傷アッセイ
A.異種移植片
HVR−L3(hu2F2.D7)に変化を有する2F2移植型「ヒト化」抗体改変体のIgG改変体の有効性を試験するため、hu2F2.D7改変体をDM1にコンジュゲートして、マウスでの腫瘍に対するこのコンジュゲートされた改変体の効果を分析した。
【0867】
詳細には、RAMOS細胞、BJAB細胞(t(2;8)(p112;q24)(IGK−MYC)転位、変異型p53遺伝子を含むバーキットリンパ腫細胞株であって、エプスタイン−バーウイルス(EBV)陰性である)(Drexler、H.G.,The Leukemia−Lymphoma Cell Line Facts Book,San Diego:Academic Press,2001))、Granta 519細胞(サイクリンD1(BCL1)の過剰発現を生じるt(11;14)(q13;q32)(BCL1−IGH)転位を含み、P16INK4BおよびP16INK4A欠失を含み、EBV陽性であるマントル細胞リンパ腫細胞株リンパ腫細胞株)(Drexler、H.G.,The Leukemia−Lymphoma Cell Line Facts Book,San Diego:Academic Press,2001))、U698M細胞(リンパ芽球性リンパ肉腫B細胞株;(Drexler、H.G.,The Leukemia−Lymphoma Cell Line Facts Book,San Diego:Academic Press,2001)およびDoHH2細胞(Ig重鎖によって駆動されるBcl−2の過剰発現を生じる濾胞性リンパ腫t(14;18)(q32;q21)の転位特徴を有し、P16INK4A欠失を有し、t(8;14)(q24;q32)(IGH−MYC)転位を含み、EBV陰性である濾胞性リンパ腫細胞株)(Drexler、H.G.,The Leukemia−Lymphoma Cell Line Facts Book,San Diego:Academic Press,2001))を含んでいる複数の異種移植片モデルで、抗体が腫瘍を退行させる能力を検査してもよい。
【0868】
2F2移植型「ヒト化」抗体改変体の有効性の分析のために、雌性CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢、Charles Rivers Laboratories;Hollister,CAから)を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹への注射によって2×10
7個のBJAB−ルシフェラーゼ細胞またはGranta−519細胞を皮下に接種して、異種移植片腫瘍を平均200mm
2まで増殖させた。0日目とは、下に特段示さない限り腫瘍が平均200mm
2になった日および処置の初回/または唯一の用量が投与された時点を指す。腫瘍容積は、2次元を基に計算し、ノギスを用いて測定し、以下の式に従ってmm
3で表される:V=0.5a×b
2(ここでaおよびbはそれぞれ腫瘍の長径と短径である)。各々の実験群から採集したデータを平均±SEとして表す。10匹のマウス群を、2F2移植型「ヒト化」抗体改変体またはコントロールの抗体−薬物コンジュゲートとともに、マウス1m
2あたり50〜210μgの抗体結合した薬物の単回静脈内(i.v.)用量(マウス1kgあたり約1〜4mg/kgに相当する)を用いて処置した。腫瘍は、この実験を通じて週に1回または2回のいずれか測定された。マウスの体重はこの実験を通じて週に1回または2回のいずれか測定された。マウスを腫瘍容積が3000mm
3に達する前に、または腫瘍が切迫した潰瘍形成の徴候を示した時に、安楽死させた。全ての動物のプロトコールは、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。
【0869】
使用した抗体と毒素の間のリンカーは、DM1についてはチオエーテル架橋剤SMCCであった。追加のリンカーとしては、DM1についてはジスルフィドリンカーSPPまたはチオエーテル架橋剤SMCC、またはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)もしくはモノメチルアウリスタンF(MMAF)についてはマレイミド成分およびパラ−アミノベンジルカルバモイル(PAB)自己犠牲成分を有するMCもしくはMC−バリン−シトルリン(vc)−PABまたは(バリン−シトルリン(vc))ジペプチドリンカー試薬)を挙げることができる。用いられる毒素はDM1であった。追加の毒素としてはMMAEまたはMMAFを挙げることができる。
【0870】
この実験のためのCD79b抗体としては、2006年8月3日出願の米国特許出願番号第11/462,336号に記載のキメラ2F2(ch2F2)抗体(実施例1Aを参照のこと)、および本明細書に記載の2F2移植型「ヒト化」抗体改変体(実施例1を参照のこと)が挙げられた。さらなる抗体としては、2006年7月11日にPTA−7712としてATCCに寄託されたハイブリドーマから作製された2F2抗体を挙げることができる。
【0871】
陰性コントロールとしてはHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)(抗HER2)に基づくコンジュゲート(SMCC−DM1)が挙げられた。
【0872】
B.結果
1.BALB−ルシフェラーゼ異種移植片
36日の時間経過で、DM1にコンジュゲートされた2F2移植型「ヒト化」抗体改変体7(hu2F2.D7改変体)(IgGとして再構成される)(およびキメラ抗CD79b抗体(ch2F2)(それぞれ、hu2F2.D7−SMCC−DM1およびch2F2−SMCC−DM1)は、陰性コントロールHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)−SMCC−DM1(抗HER2−SMCC−DM1)に比較してBJAB−ルシフェラーゼ腫瘍を有するSCIDマウスで腫瘍増殖の阻害を示した。ADCは、全てのADCおよびコントロールについて0日目に単回用量(表7に示すとおり)で投与した。詳細には、hu2F2.D7−SMCC−DM1抗体(IgGとして再構成された)およびch2F2−SMCC−DM1は腫瘍増殖を有意に阻害した(
図19)。さらに、表7では、試験した総数のうち、PR=部分的退行(ここでは投与後任意の時点で腫瘍容積は0日目に測定した腫瘍容積の50%未満に低下した)またはCR=完全寛解(ここで投与後任意の時点で腫瘍容積は0mm
3に低下した)を示しているマウスの数を示している。
【0873】
【表7】
2.Granta−519(ヒトマントル細胞リンパ腫)異種移植片
14日の時間経過において、2F2移植型「ヒト化」抗体改変体7(hu2F2.D7改変体)(IgGとして再構成した)(hu2F2.D7−SMCC−DM1)は、陰性コントロールであるHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)−SMCC−DM1(抗HER2−SMCC−DM1)に比べてGranta−519腫瘍を用いてSCIDマウスで腫瘍増殖の阻害を示した。ADCは、全てのADCおよびコントロールについて0日目に単回用量で(表8に示すとおり)投与された。詳細には、hu2F2.D7−SMCC−DM1抗体(IgGとして再構成した)は腫瘍増殖を有意に阻害した(
図20A)。
【0874】
さらに、hu2F2.D7−SMCC−DM1およびコントロールのHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)−SMCC−DM1(抗HER2−SMCC−DM1)での処置は、マウスの体重パーセントの低下を生じなかった(
図20B)。なおさらに、表8では、試験した10匹のマウスの全数のうち、PR=部分的退行(ここでは投与後任意の時点で腫瘍容積は0日目に測定した腫瘍容積の50%未満に低下した)またはCR=完全寛解(ここで投与後任意の時点で腫瘍容積は0mm
3に低下した)を示しているマウスの数を示している。
【0875】
【表8】
2F2移植型「ヒト化」抗体ADCが異種移植片において腫瘍の進行を有意に阻害する能力に照らして、CD79b分子は、哺乳動物の腫瘍の治療のための優れた標的である場合があり、この腫瘍としては、B細胞関連のガン、例えば、リンパ腫(すなわち、非ホジキンリンパ腫)、白血病(すなわち、慢性リンパ球性白血病)、および他の造血系細胞のガンが挙げられる。さらに2F2移植型「ヒト化」ADCは、B細胞関連ガン、例えば、リンパ腫(すなわち、非ホジキンリンパ腫)、白血病(すなわち、慢性リンパ球性白血病)、および他の造血細胞のガンを含むインビボの腫瘍増殖を軽減するのに有用である。
【0876】
(実施例4)
CD79b抗体の共局在化
2F2移植型「ヒト化」抗体および抗体改変体が細胞への内部移行の際にどこに送達されるかを確認するために、B細胞株に内部移行された抗CD79b抗体の共局在化研究をRamos細胞株で評価してもよい。LAMP−1は後期エンドソームおよびリソソームのマーカーであり(Kleijmeerら、Journal of Cell Biology,139(3):639〜649(1997);Hunzikerら、Bioessays,18:379〜389(1996);Mellmanら、Annu.Rev.Dev.Biology,12:575〜625(1996))、これには、後期エンドソーム/リソソーム様対応物であるMHCクラスIIの対応物(MIIC類)が挙げられる。HLA−DMはMIIC類のマーカーである。
【0877】
Ramos細胞を37℃で3時間、1μg/mlの2F2移植型「ヒト化」抗体および抗体改変体、FcRブロック(Miltenyi)および25μg/mlのAlexa647−トランスフェリン(Molecular Probes)とともに、完全無炭酸培地(Gibco)中で10μg/mlのロイペプチン(Roche)および5μMのペプスタチン(Roche)とともにインキュベートして、リソソームの分解を阻害する。次いで、細胞を2回洗浄して、3%のパラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)を用いて室温で20分間固定し、50mMのNH4Cl(Sigma)でクエンチして、0.4%のサポニン/2%のFBS/1%のBSAを用いて20分間透過化処理し、次いで1μg/mlのCy3抗マウス(Jackson Immunoresearch)とともに20分間インキュベートする。次いで、この反応を20分間、マウスIgG(Molecular Probes)でブロックして、続いてImage−iT FX Signal Enhancer(Molecular Probes)と30分インキュベートする。細胞を最後は、リソソームおよびMIIC(MHCクラスII経路の一部であるリソソーム様区画)の両方についてのマーカーであるZenon Alexa488標識したマウス抗LAMP1(BD Pharmingen)、とともに20分間インキュベートし、3%のPFAを用いて後固定する。細胞を20μlのサポニン緩衝液中に再懸濁して、ポリ−リジン(Sigma)コーティングしたスライドに固定させて、その後にDAPI含有VectaShield(Vector
Laboratories)を用いてカバーガラスに装填する。MIICまたはリソソームの免疫蛍光のために、細胞を固定して、透過化し、上記のように増強し、次いで製造業者(Molecular Probes)に従いZenon標識Alexa555−HLA−DM(BD Pharmingen)およびAlexa488−Lamp1を用いて過剰のマウスIgGの存在下で同時染色する。
【0878】
従って、2F2移植型「ヒト化」抗体または抗体改変体とMIICまたはB細胞株のリソソームとの共局在化によって、免疫蛍光によって評価されるとおりこの分子が哺乳動物においてB細胞関連のガン、例えば、リンパ腫(すなわち、非ホジキンリンパ腫)、白血病(すなわち、慢性リンパ球性白血病)、および他の造血細胞のガンを含む腫瘍の治療のための優れた薬剤として示され得る。
【0879】
(実施例5)
システイン操作された抗CD79b抗体の調製
システイン操作された抗CD79b抗体の調製は本明細書に開示されるとおり行った。
【0880】
ch2F2抗体をコードするDNA(軽鎖、配列番号4、
図4;および重鎖、配列番号5、
図5)は、この軽鎖および重鎖を改変するために本明細書で開示された方法によって突然変異誘発されてもよい。
【0881】
hu2F2.D7抗体をコードするDNA(重鎖(配列番号90)および軽鎖(配列番号89)、
図13)を、本明細書に開示される方法によって突然変異誘発して、重鎖を改変した。hu2F2.D7抗体をコードするDNA(重鎖、(配列番号90)
図13)も、本明細書に開示される方法によって突然変異誘発して重鎖のFc領域を修飾してもよい。
【0882】
システイン操作した抗CD79b抗体の調製では、
図18に示されるように、軽鎖中のKabatの位置205(連続位置210)のバリンをシステインで置換して軽鎖をコードするDNAを突然変異誘発した(hu2F2.D7チオMAbの軽鎖配列番号88)。重鎖をコードするDNAを、
図17に示されるように、突然変異誘発して重鎖のEU位置118(連続位置118:Kabat番号114)でアラニンをシステインで置換した(hu2F2.D7チオMAbの重鎖配列番号85)。抗CD79b抗体のFc領域を、表2〜3に示されるように突然変異誘発して、重鎖Fc領域のEU位置400(連続位置400;Kabat番号396)でセリンをシステインで置換してもよい。
【0883】
A.還元および再酸化によるコンジュゲーションのためのシステイン操作抗CD79b抗体の調製
全長のシステイン操作抗CD79bモノクローナル抗体(ThioMab)は、CHO細胞で発現され、プロテインAアフィニティークロマトグラフィで精製され続いてサイズ排除クロマトグラフィされた。この精製された抗体を500mMのホウ酸ナトリウムおよび500mMの塩化ナトリウム中で、pH約8.0で再構成して、約50〜100倍モル過剰の1mMのTECP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩;Getzら(1999)Anal.Biochem.第273巻:73〜80;Soltec Ventures,Beverly,MA)を用いて、37℃で約1〜2時間還元する。還元されたThioMabを希釈して、10mM酢酸ナトリウム(pH5)中でHiTrap Sカラムにロードして、0.3Mの塩化ナトリウムを含有しているPBSで希釈する。この溶出された還元されたThioMabを2mMのデヒドロアスコルビン酸(dhAA)を用いてpH7で3時間、または2mMの硫酸銅水溶液(CuSO
4)を用いて室温で一晩処理する。外気酸化も有効である場合がある。この緩衝液をSephadex G25樹脂上で溶出することによって交換し、1mMのDTPAを含むPBSで溶出する。チオール/Ab値を、溶液の280nmでの吸光度から還元された抗体濃度を決定すること、ならびにDTNB(Aldrich,Milwaukee,WI)との反応および412nmでの吸光度の決定によってチオール濃度を決定することによって、推定する。
【0884】
(実施例6)
システイン操作抗CD79b抗体および薬物リンカー中間生成物のコンジュゲーションによるシステイン操作抗CD79b抗体薬物コンジュゲートの調製
実施例5の還元および再酸化の手順後、システイン操作抗CD79b抗体をPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)緩衝液中で再構成して、氷上で冷却する。マレイミドなどのチオール反応性官能基を有する、アウリスタチン薬物リンカー中間生成物、例えば、MC−MMAE(マレイミドカプロイル−モノメチルアウリスタチン E)、MC−MMAF、MC−val−cit−PAB−MMAEまたはMC−val−cit−PAB−MMAFの1抗体あたりの操作システインに対して約1.5モル等量をDMSOに溶解して、アセトニトリルおよび水に希釈し、冷却し、還元し、再酸化した抗体にPBS中で添加する。約1時間後、過剰のマレイミドを添加して反応をクエンチして、未処理の抗体チオール基にキャップする。この反応混合物を超遠心分離によって濃縮して、システイン操作抗CD79b抗体薬物コンジュゲートを精製し、PBS中でG25樹脂を通す溶出によって脱塩し、無菌条件下で0.2μmのフィルターを通して濾過して、保管のために凍結する。
【0885】
hu2F2.D7−HC(A118C)チオMAb−BMPEO−DM1の調製は、以下のとおり行ってもよい。hu2F2.D7−HC(A118C)チオMAb上の遊離のシステインを、ビス−マレイミド試薬BM(PEO)3(Pierce Chemical)によって修飾して、抗体の表面上に未処理のマレイミド基を残す。これは、BM(PEO)3を50%のエタノール/水混合物中に10mMの濃度まで溶解すること、および10倍モル過剰のBM(PEO)3を約1.6mg/ml(10マイクロモル)の濃度のリン酸緩衝化生理食塩水中にhu2F2.D7−HC(A118C)チオMAbを含んでいる溶液に添加すること、およびこれを1時間反応させることによって達成される。過剰のBM(PEO)3を、150mMのNaCl緩衝液を含む30mMのクエン酸塩(pH6)中でゲル濾過(HiTrapカラム,Pharmacia)によって除去する。ジメチルアセトアミド(DMA)中に溶解した約10倍モル過剰のDM1をhu2F2.D7−HC(A118C)チオMAb−BMPEO中間体に添加する。ジメチルホルムアミド(DMF)も、薬物部分の試薬を溶解するために使用してもよい。この反応混合物をゲル濾過またはPBSへの透析の前に一晩反応させて、未反応の薬物を取り除く。PBS中のS200カラム上のゲル濾過を用いて高分子量凝集物を除いて、精製されたhu2F2.D7−HC(A118C)チオMAb−BMPEO−DM1を得る。
【0886】
同じプロトコールによって、チオコントロールのhu−抗HER2−HC(A118C)−BMPEO−DM1、チオコントロールのhu−抗HER2−HC(A118C)−MC−MMAF、チオコントロールのhu−抗HER2−HC(A118C)−MCvcPAB−MMAEおよびチオコントロールの抗CD22−HC(A118C)−MC−MMAFを作製してもよい。
【0887】
上記の手順によって、システイン操作抗CD79b抗体薬物コンジュゲート(TDC)を、例えば、以下に限定するものではないが調製して試験してもよい:
1.A118Cチオhu2F2.D7−HC(A118C)およびMC−MMAFのコンジュゲーションによるチオhu2F2.D7−HC(A118C)−MC−MMAF;
2.A118Cチオhu2F2.D7−HC(A118C)およびBMPEO−DM1のコンジュゲーションによるチオhu2F2.D7−HC(A118C)−BMPEO−DM1;
3.A118Cチオhu2F2.D7−HC(A118C)およびMC−val−cit−PAB−MMAEのコンジュゲーションによるチオhu2F2.D7−HC(A118C)−MCvcPAB−MMAE;
4.チオch2F2−HC(A118C)およびMC−MMAFのコンジュゲーションによるチオch2F2−HC(A118C)−MC−MMAF;ならびに
5.チオch2F2−LC(V205C)およびMC−MMAFのコンジュゲーションによるチオch2F2−LC(V205C)−MC−MMAF。
【0888】
(実施例7)
細胞表面抗原に対するシステイン操作チオMAb薬物コンジュゲートの結合親和性の特徴付け
BJABルシフェラーゼ細胞上で発現されるCD79bに対するチオhu2F2.D7薬物コンジュゲートおよびチオch2F2薬物コンジュゲートの結合親和性をFACS分析によって確認する。
【0889】
要するに、100μl中約1×10
6個の細胞を、限定するものではないが、以下の抗CD79bチオMab薬物コンジュゲートまたは裸の(コントロールとしてのコンジュゲートされていないAb)のうちの1つの種々の量(BJABルシフェラーゼ細胞の細胞百万個あたり1.0μg、01.μgまたは0.01μgのAb)と接触させる:(1)チオch2F2−LC(V205C)−MC−MMAFまたは(2)チオch2F2−HC(A118C)−MC−MMAF;(3)チオhu2F2.D7−HC(A118C)−MCvcPAB−MMAE、(4)チオhu2F2.D7−HC(A118C)−BMPEO−DM1、または(5)チオhu2F2.D7−HC(A118C)−MC−MMAF。PEコンジュゲートしたマウス抗ヒトIgを二次検出抗体として用いる(BDカタログ番号555787)。
【0890】
細胞表面に結合した抗CD79b抗体をPEコンジュゲートしたマウス抗ヒトIgを用いて検出する。
【0891】
(実施例8)
抗CD79bチオMab薬物コンジュゲートによるインビトロの細胞増殖減少についてのアッセイ
抗CD79bチオMAb−薬物コンジュゲート(限定するものではないがチオhu2F2.D7−HC(A118C)−MCMMAF、チオhu2F2.D7−HC(A118C)−MCvcPAB−MMAEおよびチオhu2F2.D7−HC(A118C)−BMPEO−DM1を含む)のインビトロの力価を、細胞増殖アッセイ(例えばBJAB−ルシフェラーゼ、Granta−519、WSU−DLCL2細胞中で)によって測定する。CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存アッセイは市販されており(Promega Corp.,Madison,WI)、Coleopteraのルシフェラーゼの組み換え発現に基づく均質アッセイ方法(米国特許第5583024号;米国特許第5674713号;米国特許第5700670号)である。この細胞増殖アッセイによって、代謝的に活性な細胞の指標である、存在するATPの定量に基づく培養中の生きた細胞の数が決定される(Crouchら、J.Immunol.Metho.,160:81〜88(1993);米国特許第6602677号)。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイを96ウェル形式で行って、自動化ハイスループットスクリーニング(HTS)に適合させる(Creeら、AntiCancer Drugs,6:398〜404(1995))。均質なアッセイ手順は、単一の試薬(The CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を、血清補充培地中で培養した細胞に直接添加する工程を包含する。
【0892】
均質な「添加−混合−測定」の形式によって、細胞溶解および存在するATPの量に対して比例するルシフェラーゼシグナルの発生が得られる。基質である甲虫のルシフェリン(Beetle Luciferin)を、ATPからAMPへの同時変換および光子の発生を伴う組み換えホタルルシフェラーゼによって酸化的に脱炭酸する。生きている細胞は相対ルシフェラーゼ量(RLU)に反映される。データを照度計またはCCDカメラ画像デバイスで記録してもよい。発光出力は経時的に測定されるRLUとして表わされる。RLUの%は、「非薬物コンジュゲート」のコントロールに比較して正規化したRLU割合である。あるいは、発光からの光子は、発光物質の存在下でシンチレーションカウンターでカウントできる。発光量は次にCPS(1秒あたりのカウント)として提示され得る。
【0893】
チオMAb−薬物コンジュゲートの有効性は、CellTiter Glo Luminescent Cell Viability Assay,Promega Corp.Technical bulletin TB288;Mendozaら、Cancer Res.,62:5485〜5488(2002))に適合した以下のプロトコールを使用する細胞増殖アッセイによって測定する:
1.約3000個のBJAB、Granta−519またはWSU−DLCL2細胞を含んでいる培地中の細胞培養物の40μlのアリコートを、384ウェルの不透明な壁のプレートの各々のウェルに入れる。
【0894】
2.TDC(チオMab薬物コンジュゲート)(10μl)を10000、3333、1111、370、123、41、13.7、4.6または1.5ng/mLという最終濃度まで四連の実験ウェルに添加して、ここで「非薬物コンジュゲート」コントロールウェルには、培地単独を入れて、3日間インキュベートする。
【0895】
3.プレートを約30分間室温と平衡にする。
【0896】
4.CellTiter−Glo試薬(50μl)を添加する。
【0897】
5.この内容物をオービタルシェーカーで2分間混合して細胞の溶解をもたらす。
【0898】
6.このプレートを室温で10分間インキュベートして発光シグナルを安定にする。
【0899】
7.発光を記録してグラフでRLU(相対発光量)%として報告する。薬物コンジュゲートなしの培地とインキュベートした細胞からのデータを0.51ng/mlでプロットする。
【0900】
培地:BJAB、Granta−519およびWSU−DLCL2細胞はRPMI1640/10%FBS/2mMグルタミン中で増殖。
【0901】
(実施例9)
抗CD79bチオMab薬物コンジュゲートによるインビボ腫瘍増殖の阻害についてのアッセイ
同様の研究では、実施例3に開示される同じ異種移植片研究プロトコールを用いること(上記を参照のこと)、投与される薬物コンジュゲートおよび用量を変化させること、異種移植片モデル、例えば、Granta−519異種移植片(ヒトマントル細胞リンパ腫)、DOHH2(濾胞性リンパ腫)異種移植片、WSU−DLCL2(びまん性大細胞型リンパ腫)異種移植片またはBJAB(バーキットリンパ腫)異種移植片におけるB細胞腫瘍容積を軽減するのにおけるチオMab薬物コンジュゲートの有効性を研究する。
【0902】
前述の記載された明細書は、当業者が本発明を行うのに十分であるとみなされる。本発明は、寄託された構築物によって範囲を限定されるものではない。なぜなら寄託された実体は、本発明の特定の局面の単一の例示とみなされ、機能的に等価である任意の構築物が本発明の範囲内であるからである。本明細書の物質の寄託は、本明細書に含まれる記載の説明が、最良の形態を含んでいる本発明の任意の局面の実施を可能にするのに不十分であると認めるものではなく、それが提示する特定の例示に対して特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきでもない。実際、本明細書に示されかつ記載されるものに加えて本発明の種々の変形が、前述の説明から当業者には明らかになるであろうし、添付の特許請求の範囲内におさまる。