【文献】
森田聡他,酸化還元除染法による「ふげん」原子炉冷却系Bループの系統化学除染効果,サイクル機構技報 ,日本,核燃料サイクル開発機構,2000年 6月,No.7,p.1-9,URL,http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/gihou/pdf2/9893.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来の除染液の廃棄処理においては、前記有機酸を高温で加熱分解するための大掛かりな設備等を用意しなければならないため、設置スペース等に制約を生じてしまっていた。
【0006】
このようなことから、本発明は、原子力発電プラントの一次冷却材系統を除染した使用済みの除染液を省スペースで処理することができる除染液の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る除染液の処理方法は、原子力発電プラントの一次冷却材系統を流通して当該一次冷却材系統を除染した、有機酸を含有する除染液の処理方法であって、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統
の一次冷却材ポンプを作動させて当該一次冷却材系統に前記除染液を流通させながら
当該一次冷却材ポンプの作動に伴う熱により当該一次冷却材系統で
当該除染液を150℃以上に加熱
して、当該除染液中の前記有機酸を分解することを特徴とする。
【0009】
第
二番目の発明に係る除染液の処理方法は、第一番目
の発明において、過酸化水素水からなる分解助剤を前記除染液に加えて当該除染液を150℃以上に加熱することにより、前記有機酸を分解することを特徴とする。
【0010】
第
三番目の発明に係る除染液の処理方法は、第一番目
又は第
二番目の発明
において、前記除染液中の前記有機酸を分解した後、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統に当該除染液を流通させながら当該除染液中の二次生成物を分離除去することを特徴とする。
【0011】
第
四番目の発明に係る除染液の処理方法は、第
三番目の発明
において、前記除染液中の前記有機酸を分解する前及び当該除染液中の前記二次生成物を分離除去した後の少なくとも一方で前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統に当該除染液を流通させながら当該除染液中のイオン化物を分離除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る除染液の処理方法によれば、原子力発電プラントの一次冷却材系統を循環流通して除染した使用済みの除染液を当該原子力発電プラントの当該一次冷却材系統にそのまま流通させながら150℃以上に加熱して除染液中の有機酸を分解除去することができるので、除染液中の有機酸を高温で分解処理するための大掛かりな設備をわざわざ設置しなくても済ますことができる。このため、原子力発電プラントの一次冷却材系統を除染した使用済みの除染液を省スペースで処理することができるので、除染処理に要する設置スペース等の制約を非常に少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る除染液の処理方法の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
[第一番目の実施形態]
本発明に係る除染液の処理方法の第一番目の実施形態を
図1,2に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、原子炉容器111は、一次冷却材管110のホットレグ110aを介して蒸気発生器112に接続している。蒸気発生器112は、一次冷却材管110のコールドレグ110bを介して前記原子炉容器111に接続している。前記コールドレグ110bには、一次冷却材ポンプ113が設けられている。
【0017】
すなわち、前記原子炉容器111内で加熱された一次冷却材(水)1は、前記一次冷却材ポンプ113の作動によって、前記ホットレグ110aを介して前記蒸気発生器112に送給され、当該蒸気発生器112内を流通する二次冷却材(水)を加熱して蒸気を発生させた後、前記コールドレグ110bを介して前記原子炉容器111内に再び供給されるようになっている。
【0018】
なお、
図1中、符号114は、加圧器であり、前記一次冷却材1の流通する前記一次冷却材管110等の内部を一定圧力に保持することができるようになっている。符号115、は蓄圧タンクであり、緊急時に一次冷却材1を前記一次冷却材管110等の内部に送給することができるようになっている。
【0019】
また、
図1において、符号120は、運転停止後に炉心より発生する崩壊熱及び構造材の顕熱を冷却除去するための余熱除去系統であり、余熱除去ポンプ121や余熱除去冷却器122等を有している。
【0020】
符号130は、化学体積制御系統であり、前記一次冷却材管110等の内部を流通する前記一次冷却材1中の不純物の除去や、前記一次冷却管材管110等の内部を流通する前記一次冷却材1の量の調整や、前記一次冷却材ポンプ113への前記一次冷却材1の軸封水としての供給等を行うことができるようになっており、再生熱交換器131、非再生冷却器132、混床式脱塩塔133、陽イオン脱塩塔134、体積制御タンク135、充填ポンプ136、軸封水冷却器137、余剰抽出冷却器138、一次冷却材用フィルタ139a、軸封水用フィルタ139b等を有している。
【0021】
なお、符号140は、前記余熱除去系統120と前記化学体積制御系統130との間を連絡するバイパスラインである。
【0022】
このような本実施形態においては、前記一次冷却材管110、前記原子炉容器111、前記蒸気発生器112、前記一次冷却材ポンプ113、余熱除去系統120、前記化学体積制御系統130、前記バイパスライン140等によって、原子力発電プラントの一次冷却材系統をなしている。
【0023】
そして、前記化学体積制御系統130の前記体積制御タンク135の入口部近傍には、
図2に示すような除染処理系統150が仮設されるようになっており、当該除染処理系統150は、以下のような構造となっている。
【0024】
前記化学体積制御系統130は、
図2に示すように、バルブ150aを介してタンク151の上方に接続している。このタンク151の上方には、酸化剤2を供給する酸化剤供給装置152と、シュウ酸やクエン酸等の有機酸からなる除染剤3を供給する除染剤供給装置153とがバルブ150b,150cを介してそれぞれ接続されている。
【0025】
前記タンク151の下方は、ポンプ154の受入口に連結されている。このポンプ154の送出口は、前記化学体積制御系統130にバルブ150jを介して接続すると共に、スラッジ等の固体状の二次生成物を分離除去する二次生成物分離手段であるフィルタ155の入口部と、鉛製の遮蔽容器156a内に陽イオン交換樹脂156bを内装したイオン除去手段である陽イオン交換樹脂塔156の入口部と、鉛製の遮蔽容器157a内に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混床式イオン交換樹脂157bを内装したイオン除去手段である混床式イオン交換樹脂塔157の入口部とに、バルブ150d〜150fを介してそれぞれ接続している。
【0026】
前記フィルタ155の出口部と、前記陽イオン交換樹脂塔156の出口部と、前記混床式イオン交換樹脂塔157の出口部とは、バルブ150g〜150iを介して前記タンク151の上方にそれぞれ接続している。
【0027】
このような原子力発電プラントの上記一次冷却材系統の除染を行う場合には、まず、前記化学体積制御系統130の前記体積制御タンク135の入口部近傍に前記除染処理系統150を接続して仮設する。
【0028】
そして、前記余熱除去系統120の前記余熱除去ポンプ121及び前記化学体積制御系統130の前記充填ポンプ136を作動させると共に前記一次冷却材ポンプ113を間欠的に作動させることにより、当該原子力発電プラントの一次冷却材系統に一次冷却材1を循環流通させると共に上記一次冷却材ポンプ113等の設備の作動に伴って発生する熱で当該一次冷却材1を加温(90〜95℃)する。
【0029】
これと併せて、前記除染処理系統150の前記バルブ150a,150jを開放するとと共に(前記バルブ150b〜150iは閉鎖)前記ポンプ154を作動させることにより、前記一次冷却材系統を循環流通する前記一次冷却材1を、当該除染処理系統150の前記タンク151内を経由させるように当該除染処理系統150にも流通させる。
【0030】
続いて、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統を循環流通する前記一次冷却材1に前記酸化剤2を規定濃度となるように前記バルブ150bを調整して加えて酸化処理した後、当該一次冷却材1に前記除染剤3を規定濃度となるように前記バルブ150cを調整して加えることにより、当該一次冷却材1中の前記酸化剤2を分解除去すると共に、コバルト等の放射性核種を含む他の金属を当該一次冷却材1中に遊離させながら、前記バルブ150e,150hを開放することにより、前記一次冷却材1を前記陽イオン交換樹脂塔156内に流通させて当該一次冷却材1(除染液)中の各種の金属等の陽イオン種を吸着除去する。
【0031】
このようにして上記一次冷却材1(除染液)中の上記陽イオン種を除去しながら前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統の除染を終えたら、前記バルブ150e,150hを閉鎖した後、前記加圧器114等の作動調整を行うことにより当該原子力発電プラントの当該一次冷却材系統の内部圧力を上昇させると共に、前記一次冷却材ポンプ113を連続的に作動させることにより、当該原子力発電プラントの当該一次冷却材系統を循環流通する上記一次冷却材1(除染液)を、当該一次冷却材ポンプ113等の設備の作動に伴って発生する熱でさらに加熱(150℃以上(好ましくは150〜180℃))する。これにより、上記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)は、加熱分解されて当該一次冷却材1(除染液)中から除去される。
【0032】
前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統を循環流通する前記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を分解除去したら、前記一次冷却材ポンプ113を間欠的に作動させることにより、当該一次冷却材1(除染液)の温度を低下させると共に、前記加圧器114等の作動調整を行うことにより当該原子力発電プラントの当該一次冷却材系統の内部圧力を常圧まで低下させた後、前記除染処理系統150の前記バルブ150d,150gを開放することにより、上記一次冷却材1(除染液)を前記フィルタ155に流通させて当該一次冷却材1(除染液)中の酸化物や水酸化物等からなるスラッジ等の各種の固体状の二次生成物を分離除去する。
【0033】
このようにして前記一次冷却材1(除染液)中の前記二次生成物を分離除去したら、前記バルブ150d,150gを閉鎖すると共に前記バルブ150f,150iを開放することにより、前記一次冷却材1(除染液)を前記混床式イオン交換樹脂塔157内に流通させて、当該一次冷却材1(除染液)中の陰イオン種を陽イオン種と共に吸着除去する。
【0034】
そして、前記一次冷却材1(除染液)中の前記イオン種を吸着除去し終えたら、当該一次冷却材1(除染液)を前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統から排液処理すると共に、前記除染処理系統150の前記フィルタ155及び前記イオン交換樹脂塔156,157の後処理を行うことにより、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統の除染を終了する。
【0035】
つまり、本実施形態においては、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統を循環流通して除染した使用済みの前記一次冷却材1(除染液)を、当該原子力発電プラントの当該一次冷却材系統の有する機能を利用して150℃以上に加熱することにより、当該一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を分解除去するようにしたのである。
【0036】
このため、本実施形態に係る除染液の処理方法においては、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統を循環流通して除染した使用済みの前記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を高温で分解処理するための大掛かりな設備をわざわざ設置しなくても済ますことができる。
【0037】
したがって、本実施形態に係る除染液の処理方法によれば、原子力発電プラントの一次冷却材系統を除染した使用済みの除染液を省スペースで処理することができるので、除染処理に要する設置スペース等の制約を非常に少なくすることができる。
【0038】
また、前記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を高温で分解処理するための大掛かりな設備をわざわざ設置しなくても済ますことができることから、処理にかかる手間やコストを大幅に低減することができると共に、処理に伴って発生する各種設備等の二次廃棄物の量も大幅に削減することができる。
【0039】
[第二番目の実施形態]
本発明に係る除染液の処理方法の第二番目の実施形態を
図3に基づいて説明する。なお、前述した実施形態の場合と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0040】
図3に示すように、前記タンク151の上方には、過酸化水素水からなる分解助剤4を供給する分解助剤供給装置258がバルブ250kを介してさらに接続されている。
【0041】
つまり、本実施形態においては、前記分解助剤供給装置258をさらに設けた除染処理系統250を適用しているのである。
【0042】
このような除染処理系統250を前記化学体積制御系統130の前記体積制御タンク135の入口部近傍に接続して仮設した場合には、前述した実施形態の場合と同様に作動させることにより、原子力発電プラントの一次冷却材系統に一次冷却材1を循環流通させると共に当該一次冷却材1を加温(90〜95℃)する。
【0043】
そして、前述した実施形態の場合と同様に、前記除染処理系統250の前記バルブ150a,150jを開放すると共に(前記バルブ150b〜150iは閉鎖)前記ポンプ154を作動させることにより、前記一次冷却材系統を循環流通する前記一次冷却材1を、当該除染処理系統250の前記タンク151内を経由させるように当該除染処理系統250にも流通させる。
【0044】
続いて、前述した実施形態の場合と同様に、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統を循環流通する前記一次冷却材1に前記酸化剤2を規定濃度となるように前記バルブ150bを調整して加えて酸化処理した後、当該一次冷却材1に前記除染剤3を規定濃度となるように前記バルブ150cを調整して加えることにより、当該一次冷却材1中の前記酸化剤2を分解除去すると共に、コバルト等の放射性核種を含む他の金属を当該一次冷却材1中に遊離させながら、前記バルブ150e,150hを開放することにより、前記一次冷却材1を前記陽イオン交換樹脂塔156内に流通させて当該一次冷却材1(除染液)中の各種の金属等の陽イオン種を吸着除去する。
【0045】
このようにして上記一次冷却材1(除染液)中の上記陽イオン種を除去しながら前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統の除染を終えたら、前記バルブ150e,150hを閉鎖した後、当該一次冷却材1(除染液)に前記分解助剤4を規定濃度となるように前記バルブ250kを調整して加え、前記加圧器114等の作動調整を行うことにより当該原子力発電プラントの当該一次冷却材系統の内部圧力を上昇させると共に、前記一次冷却材ポンプ113を連続的に作動させることにより、当該原子力発電プラントの当該一次冷却材系統を循環流通する上記一次冷却材1(除染液)を、当該一次冷却材ポンプ113等の設備の作動に伴って発生する熱でさらに加熱(150℃以上(好ましくは150〜180℃))すると、上記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)は、上記加熱だけでなく前記分解助剤4によっても分解されて当該一次冷却材1(除染液)中からより確実に除去される。
【0046】
そして、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統を循環流通する前記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を分解除去したら、以下、前述した実施形態の場合と同様に作動させることにより、前記原子力発電プラントの前記一次冷却材系統の除染を終了する。
【0047】
つまり、前述した実施形態においては、前記一次冷却材1(除染液)を150℃以上に加熱するだけで、当該一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を分解除去するようにしたが、本実施形態においては、前記一次冷却材1(除染液)に前記分解助剤4をさらに加えて150℃以上に加熱することにより、当該一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を分解除去するようにしたのである。
【0048】
したがって、本実施形態に係る除染液の処理方法によれば、前述した実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を前述した実施形態の場合よりもさらに確実に分解処理することができる。
【0049】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、前記除染処理系統150,250に前記フィルタ155を二次生成物分離手段として適用した場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記フィルタ155に代えて遠心分離装置を二次生成物分離手段として適用することや、磁力を利用したフィルタ等をさらに併用して二次生成物分離手段として適用することも可能である。
【0050】
また、前述した実施形態においては、前記除染処理系統150,250に前記陽イオン交換樹脂塔156及び前記混床式イオン交換樹脂塔157をイオン除去手段として設け、前記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を加熱分解する前に当該一次冷却材1(除染液)を上記陽イオン交換樹脂塔156内に流通させて当該一次冷却材1(除染液)中の陽イオン種を吸着除去すると共に、前記一次冷却材1(除染液)中の前記二次生成物を分離除去した後に当該一次冷却材1(除染液)を上記混床式イオン交換樹脂塔157内に流通させて当該一次冷却材1(除染液)中の陽イオン種及び陰イオン種を分離除去するようにした場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、使用済みの前記一次冷却材1(除染液)中に陰イオン種が残存しないような場合には、前記混床式イオン交換樹脂塔157を省略して前記陽イオン交換樹脂塔156のみをイオン除去手段として設け、前記一次冷却材1(除染液)中の前記除染剤3(有機酸)を加熱分解する前及び前記一次冷却材1(除染液)中の前記二次生成物を分離除去した後の少なくとも一方で当該一次冷却材1(除染液)を上記陽イオン交換樹脂塔156内に流通させて当該一次冷却材1(除染液)中の陽イオン種を吸着除去するようにすることも可能である。
【0051】
また、前述した実施形態においては、前記除染処理系統150,250を前記化学体積制御系統130の前記体積制御タンク135の入口部近傍に仮設したが、前記除染処理系統150,250の仮設箇所は、前記一次冷却材系統に接続されるのであれば、いずれでもよく、原子力発電プラントの設置状況に応じて適宜選定される。