【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記マスタシステムのアクチュエータと前記スレーブシステムのアクチュエータとを、次の(イ)乃至(ハ)にしたがってそれぞれ制御することを特徴とする請求項2に記載した包装品のリーク検査装置。
(イ)前記マスタシステムのアクチュエータと前記スレーブシステムのアクチュエータが移動すべき目標値を指令値として出力する。
(ロ)前記マスタシステムの位置検出手段から出力された位置信号と、前記スレーブシステムの位置検出手段から出力された位置信号とに基づき、これら各システムにおけるアクチュエータの現在位置間の中央位置を求める。
(ハ)前記マスタシステムのアクチュエータと前記スレーブシステムのアクチュエータとを制御して、前記マスタシステムの位置検出手段から出力された位置信号と、前記スレーブシステムの位置検出手段から出力された位置信号とに基づき求めたこれら各システムにおけるアクチュエータの現在位置間の中央位置を、前記指令値として出力した目標値に近付ける。
前記制御装置は、前記反力推定手段により推定される反力があらかじめ設定したしきい値を越えるまでは、あらかじめ設定された速度となるように前記アクチュエータを制御し、
当該しきい値を越えてからは、位置制御、速度制御又は力制御のうちのいずれか一つの制御方式に切り替えて前記アクチュエータを制御する機能を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載した包装品のリーク検査装置。
前記リーク判断手段は、前記位置検出手段からの位置信号と、前記反力推定手段により推定される反力とに基づき求められる損失エネルギとの関係からリークの有無を判別することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載した包装品のリーク検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、包装品から押付部材が受ける反力を推定し、この推定反力に基づき包装品の生じた極めて僅かなリークを高精度に検出することのできるリーク検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、包装品からの反力を受ける押付部材と、
指令値に基づき駆動され、包装品に対し押付部材を移動させるアクチュエータと、
アクチュエータによる押付部材の移動位置を検出して位置信号を出力する位置検出手段と、
アクチュエータに入力される指令値と位置検出手段からの位置信号とに基づき、アクチュエータに加わる外乱を推定する外乱オブザーバと、
外乱オブザーバにより推定された外乱に基づきアクチュエータを制御する制御装置と、
アクチュエータに入力される指令値、位置検出手段からの位置信号、および押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータに加わる外力の推定値に基づき、押付部材を介して包装品からアクチュエータに作用する反力を推定する反力推定手段と、
反力推定手段により推定された反力を利用して、包装品のリークの有無を判別するリーク判断手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成の本発明によれば、アクチュエータに加わる外力から、押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータに加わる外力、すなわち包装品からの反力を含まない外力を差し引いて、包装品からの反力のみを推定することができる。そして、その推定反力を利用して包装品のリークの有無を判別するので、包装品の生じた極めて僅かなリークを高精度に検出することが可能となる。
【0009】
さらに本発明は、次のような構成とすることもできる。
すなわち、押付部材、アクチュエータ、位置検出手段及び外乱オブザーバを含むマスタシステムと、
マスタシステムと同じ構成であって、押付部材に対し包装品を対向配置させず当該押付部材が包装品に接触することのないスレーブシステムと、を備え、
反力推定手段は、マスタシステムのアクチュエータに入力される指令値および同システムの位置検出手段からの位置信号と、スレーブシステムのアクチュエータに入力される指令値および同システムの位置検出手段からの位置信号と、に基づき、押付部材を介して包装品からマスタシステムのアクチュエータに作用する反力を推定することを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、マスタシステムにより、包装品から反力を受けた状態でのアクチュエータに加わる外力を推定し、一方、スレーブシステムにより、押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータに加わる外力を推定することができ、これら推定した外力に基づいて、包装品から受ける反力を反力推定手段が高精度に推定することが可能となる。
【0011】
また制御装置は、マスタシステムのアクチュエータとスレーブシステムのアクチュエータとを、次の(イ)乃至(ハ)にしたがってそれぞれ制御することもできる。
(イ)マスタシステムのアクチュエータとスレーブシステムのアクチュエータが移動すべき目標値を指令値として出力する。
(ロ)マスタシステムの位置検出手段から出力された位置信号と、スレーブシステムの位置検出手段から出力された位置信号とに基づき、これら各システムにおけるアクチュエータの現在位置間の中央位置を求める。
(ハ)中央位置を、目標値に追従させる。
【0012】
さらに制御装置は、(ロ)で求めた中央位置に対し、各システムにおけるアクチュエータの位置を同期させる構成とすることが好ましい。
これらの構成により、アクチュエータの移動量を目標値に合わせて高精度に制御することが可能となる。
【0013】
また制御装置は、反力推定手段で求めた反力の推定値に基づき、(ハ)において中央位置を目標値に追従させる際の柔軟性を規定するコンプライアンス制御手段を含む構成とすることもできる。
【0014】
このようなコンプライアンス制御手段を含めることで、反力の大きさに応じて、目標値へ追従させる速度(加速度)を柔軟に調整してシステムや包装品に優しい制御動作を実現することが可能となる。
【0015】
また制御装置は、反力推定手段により推定される反力が、あらかじめ設定したしきい値を越えるまでは、あらかじめ設定された速度となるようにアクチュエータを制御し、当該しきい値を越えてからはリーク検査に適した制御方式に切り替えてアクチュエータを制御する機能を有していることが好ましい。
【0016】
このように、押付部材が包装品に接触して推定反力がしきい値を超えるまでは、あらかじめ設定された速度となるように制御することで、包装品の厚みの誤差を吸収して速やかにアクチュエータを駆動することができる。その後に押付部材が包装品に接触してからは、位置制御、速度制御、力制御などリーク検査に適した制御方式をもってアクチュエータを駆動することで、リーク検査中の制御の適正化と、その他のタイミングにおける制御の迅速化や簡素化とを図ることが可能となる。
【0017】
上述した構成の本発明において、リーク判断手段は、反力推定手段により推定される反力の時間の経過による変化に基づきリークの有無を判別する構成とすることができる。
【0018】
また、反力推定手段により推定される反力があらかじめ設定した一定値となるように、アクチュエータを制御し、
リーク判断手段は、位置検出手段からの位置信号の変化に基づきリークの有無を判別する構成とすることもできる。
【0019】
さらに、リーク判断手段は、位置検出手段からの位置信号と、反力推定手段により推定される反力とに基づき求められる損失エネルギとの関係からリークの有無を判別する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、包装品から押付部材が受ける反力を推定し、この推定反力に基づき包装品の生じた極めて僅かなリークを高精度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
図1乃至
図5は本発明の第1の実施形態に係る包装品のリーク検査装置を説明するための図であり、
図1はリーク検査装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る包装品のリーク検査装置は、検査対象となる包装品の表面を押付部材で押圧し、そのとき押付部材が受ける包装品からの反力に基づいて、リーク(漏れ)の有無を判別する構成となっており、
図1に示すように、制御装置10、アクチュエータ20、位置検出手段30、外乱オブザーバ40、反力推定手段50、リーク判断手段60の各構成要素を備えている。
【0023】
検査対象となる包装品は、例えば、包装袋にスナック菓子などの商品とともに窒素を充填して密封した形態の包装品である。このような密封状態の包装品を押付部材で押圧すれば、押圧力に対する反力を押付部材が包装品から受けることになる。そして、仮に包装品にリーク(漏れ)が存在すれば、押付部材の押圧に伴い内部の窒素が漏れだして反力が低下する。かかる反力の変化とそのときの位置を高精度に検出して包装品のリーク検査を行う。これが本実施形態の係るリーク検査装置の基本原理である。
【0024】
制御装置10は、アクチュエータ20を駆動制御するための装置であり、制御プログラムが組み込まれたコンピュータにより構成されている。この制御装置10からアクチュエータ20に駆動制御用の指令値が出力される。
【0025】
アクチュエータ20は、リーク検査に際して包装品に接触して反力を受ける押付部材を移動させるための駆動部を備えたサーボモータ等の装置である。このアクチュエータ20は、制御装置10からの指令値に基づいて駆動される。
本実施形態では、アクチュエータ20として駆動部が直線上を往復移動する直動サーボモータを用いている。駆動軸が回転する一般のサーボモータを用いることもできるが、その場合、駆動軸の回転を押付部材の直線移動に変換する駆動力伝達機構を介在させる必要があり、その結果、同伝達機構での摩擦力や部品要素間のがたつきなど外乱要素が増えてしまう。かかる外乱要素は後述する外乱オブザーバ40と反力推定手段50により取り除くことは可能であるが、やはり少ない方が好ましい。そこで、本実施形態では、駆動軸の回転を押付部材の直線移動に変換する必要のない直動サーボモータを用いている。
【0026】
位置検出手段30は、アクチュエータ20による押付部材の移動位置を検出して位置信号を出力する構成要素である。本実施形態では、位置検出手段30として、アクチュエータ20の駆動部の移動位置(すなわち、押付部材の移動位置)を検出するエンコーダを用いている。エンコーダは、アクチュエータ20の駆動部の移動に応じてパルス信号(位置信号)を出力するため、このパルス信号をカウントすることで移動位置を認識することができる。
【0027】
外乱オブザーバ40は、アクチュエータ20に入力される指令値と位置検出手段30からの位置信号とに基づき、アクチュエータ20に加わる外乱を推定する構成要素である。外乱オブザーバ40の基本原理と構成はすでに公知である(例えば、特許第4487073号公報、特開2002−366203号公報を参照)。
図2は外乱オブザーバの構成例を概略的に示したものである。
外乱オブザーバ40は、アクチュエータ20への指令値(電流値)を入力するとともに、位置検出手段30が検出した位置信号を微分して応答速度値に変換し、これらの各値からアクチュエータ20が受ける外力(外乱トルク)の推定値を出力する。外乱オブザーバ40は、コンピュータのソフトウェアなどで構成される。なお、後述する反力推定手段50とリーク判断手段60も、同様にコンピュータのソフトウェアなどで構成される。
【0028】
外乱オブザーバ40には、アクチュエータ20と等価的な逆モデル41が組み込まれている。このアクチュエータ20の逆モデル41は、アクチュエータ20に入力される指令値(電流値)をトルク(力)単位の第1信号に変換するとともに、上記の応答速度値をさらに微分した第2信号に変換し、これら各信号を比較してアクチュエータ20が受ける外乱の推定値に関する第3信号を出力する。
すなわち、アクチュエータ20に指令値が与えられたときの公称トルク値である第1信号と、外力による変位成分を含む位置信号に基づく第2信号との間には、外力による変位成分に対応した偏差が生じるため、この偏差に見合う第3信号が外乱の推定値信号としてアクチュエータ20の逆モデル41から出力される。
この外乱の推定値に関する第3信号は、ローパスフィルタ43によって低周波帯域の成分のみ取り出され、これが外乱の推定値として出力される。この外力の推定値を、図示しないトルク(力)電流変換器により電流値に変換すれば、外乱オブザーバ40を利用してアクチュエータ20をフィードバック制御することができる。
なお、外乱オブザーバ40は、
図2に示した構成のものに限定されないことは勿論である。
【0029】
反力推定手段50は、アクチュエータ20に入力される指令値と、位置検出手段30からの位置信号と、押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータ20に加わる外力の推定値とに基づき、押付部材を介して包装品からアクチュエータ20に作用する反力を推定する構成要素である。
すなわち、反力推定手段50は、アクチュエータ20に入力される指令値と、位置検出手段30からの位置信号とからアクチュエータ20に作用する外力を推定し、この外力の推定値から、押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータ20に加わる外力、すなわち包装品からの反力を含まない外力を差し引いて、包装品からの反力のみを推定する。
この反力推定手段50は、既述した外乱オブザーバ40と同様の構成としてあり(例えば、
図2の構成)、アクチュエータ20の逆モデルをもって、アクチュエータ20に作用する反力を推定する。
【0030】
本実施形態においては、「押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータ20に加わる外力の推定値」は、あらかじめ求めてコンピュータのメモリなどに保存されている。この「押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータ20に加わる外力の推定値」を求めるには、例えば、包装品を押付部材に対向配置しない状態で
図1に示すアクチュエータ20を駆動することで、外乱オブザーバ40からの出力をもって得ることができる。なお、後述する第2の実施形態では、スレーブシステムをもって、この「押付部材が包装品に接触しない状態でのアクチュエータ20に加わる外力の推定値」を得ている。また、ソフトウェアを用いた演算により求めることも可能である。
【0031】
リーク判断手段60は、反力推定手段50により推定された反力を利用して、包装品のリークの有無を判別する。反力推定手段50により推定された反力からは、アクチュエータ20が受けるその他の外乱要素が取り除かれているため、包装品の生じた極めて僅かなリークを高精度に検出することが可能となる。
【0032】
図3(a)(b)及び
図4はリーク判断手段によるリークの有無の判別方法を説明するための図である。
まず、
図3(a)を参照して、反力推定手段50により推定される反力の時間の経過による変化からリークの有無を判別する方法を説明する。
同図(a)のXaは横軸を時間t、縦軸をアクチュエータ20の移動位置(すなわち、押付部材の移動位置)Xとして、アクチュエータ20の動作を示している。また、Fa、Fbは横軸を時間t、縦軸を反力推定手段50により推定されたアクチュエータ20の受ける反力Fとして、同反力Fの変化を示している。
【0033】
アクチュエータ20は、まず下降動作を続け、あらかじめ設定した下降端X
0に到達したとき当該位置で一定時間停止する。その後、上昇動作に転じてもとの待機位置まで戻る。アクチュエータ20が下降動作を続ける途中で、押付部材が包装品に接触し、包装品から反力を受けることになる。この反力の値は下降量に応じて大きくなる。
【0034】
そして、包装品にリーク(漏れ)がない場合は、下降端でアクチュエータ20が停止している間は反力の値が大きく変化することはない。すなわち、
図3(a)のFaの傾きΔF
1/Δtは小さい。
一方、包装品にリーク(漏れ)がある場合は、下降端でアクチュエータ20が停止している間に、反力の値が徐々に減少していく。すなわち、
図3(a)のFbの傾きΔF
2/Δtは大きくなる。このような、下降端でアクチュエータ20が停止している間の、時間の経過に対する反力の変化量によって、包装品のリークの有無を判別することができる。
リーク判断手段60には、包装品にリークがある場合に超える反力の変化量に関するしきい値が設定してある。
【0035】
なお、上述した方法では、Fa、Fbの傾きをもって、下降端でアクチュエータ20が停止している間における時間経過に対する反力の変化を求めたが、Fa、Fbと横軸とで囲まれた領域の面積により、時間経過に対する反力の変化量を表すこともできる。
リーク判断手段60には、包装品にリークがある場合にそれよりも小さくなる面積のしきい値を設定する。
【0036】
次に、
図3(b)を参照して、位置検出手段30からの位置信号の変化に基づきリークの有無を判別する方法を説明する。
同図(b)のFdは横軸を時間t、縦軸を反力推定手段50により推定されたアクチュエータ20の受ける反力Fとして、アクチュエータ20の動作を示している。また、Xb、Xcは横軸を時間t、縦軸を位置検出手段30で検出されたアクチュエータ20の移動位置(すなわち、押付部材の移動位置)Xとして、同移動位置の変化を示している。
【0037】
制御装置10は、反力推定手段50により推定される反力があらかじめ設定した一定値F
3で一定時間(t
1〜t
2)保持されるように、アクチュエータ20を制御している。
【0038】
包装品にリーク(漏れ)がない場合は、一定時間(t
1〜t
2)の間、アクチュエータ20の移動位置(すなわち、押付部材の移動位置)は大きく変化することはない。すなわち、
図3(b)のXbの傾きΔX
1/Δtは小さい。
一方、包装品にリーク(漏れ)がある場合は、一定時間(t
1〜t
2)の間に、アクチュエータ20は徐々に下方へ移動していく。すなわち、
図3(b)のXcの傾きΔX
2/Δtは大きくなる。このような、反力推定手段50により推定される反力をあらかじめ設定した一定値F
3で保持した一定時間(t
1〜t
2)の間の、時間の経過に対するアクチュエータ20の位置変化量によって、包装品のリークの有無を判別することができる。
リーク判断手段60には、包装品にリークがある場合に超えるアクチュエータ20の位置変化量に関するしきい値が設定してある。
【0039】
なお、上述した方法では、Xb、Xcの傾きをもって、アクチュエータ20の位置変化量を求めたが、Xb、Xcと横軸とで囲まれた領域の面積により、時間経過に対するアクチュエータ20の位置変化量を表すこともできる。
リーク判断手段60には、包装品にリークがある場合にそれよりも小さくなる面積のしきい値を設定する。
【0040】
次に、
図4を参照して、位置検出手段30からの位置信号と、反力推定手段50により推定される反力とに基づき求められる損失エネルギとの関係からリークの有無を判別する方法を説明する。
図4のFc、Fdは横軸をアクチュエータ20の移動位置X、縦軸を反力推定手段50により推定されたアクチュエータ20の受ける反力Fとして、アクチュエータ20の位置変化に伴う反力の変化曲線を示している。
上述したとおり、アクチュエータ20は、まず下降動作を続け、あらかじめ設定した下降端X
0に到達したとき当該位置で一定時間停止する。その後、上昇動作に転じてもとの待機位置まで戻る。
【0041】
そして、アクチュエータ20の位置変化に伴う反力の変化曲線Fc、Fdで囲まれた領域の面積は、アクチュエータ20の押圧力を受けて包装品に蓄積されたエネルギの損失に相当する。
包装品にリークがない場合は、アクチュエータ20の押圧力を受けて包装品に蓄積されたエネルギは、アクチュエータ20が下降端で停止している間も大きく減少することはない。これに対して、包装品にリークがある場合は、アクチュエータ20の押圧力を受けて包装品に蓄積されたエネルギは、アクチュエータ20が下降端で停止している間に、内部ガスの外部への放出に伴い大きく減少する。
このため、アクチュエータ20の位置変化に伴う反力の変化曲線Fc、Fdで囲まれた領域の面積は、包装品にリークがない場合の変化曲線Fcで囲まれた領域の面積にくらべ、包装品にリークがある場合の変化曲線Fdで囲まれた領域の面積が大きくなる。
リーク判断手段60には、包装品にリークがある場合にそれよりも大きくなる面積のしきい値を設定する。
【0042】
図5は本実施形態に係るリーク検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。
リーク検査装置は、まず検査動作が開始されると、制御装置10からの指令値をもってアクチュエータ20が速度制御され(ステップS1)、あらかじめ設定された速度で押付部材を下降させる(ステップS2)。そして、押付部材の包装品への接触が検知されると(ステップS3)、制御装置10は、リーク検査に適した制御方式に切り替えてアクチュエータ20を制御する(ステップS4)。リーク検査に適した制御方式としては、位置制御、速度制御、力制御など各種の制御モードから任意に選択される。
【0043】
このように、押付部材が包装品に接触するまでは、あらかじめ設定された速度となるようにアクチュエータ20を駆動制御することで、包装品の厚みの誤差を吸収して速やかにアクチュエータを駆動することができる。その後に押付部材が包装品に接触してからは、位置制御、速度制御、力制御などリーク検査に適した制御方式をもってアクチュエータ20を駆動することで、リーク検査中の制御の適正化と、その他のタイミングにおける制御の迅速化や簡素化とを図ることが可能となる。
【0044】
なお、ステップS3における押付部材の包装品への接触検知は、反力推定手段50により推定される反力の変化により検出される。具体的には、反力推定手段50により推定される反力があらかじめ設定したしきい値を越えたとき、押付部材が包装品へ接触したと判定される。
【0045】
制御装置10は、さらに押付部材を下降させるようにアクチュエータ20の駆動を続け(ステップS5)、押付部材があらかじめ設定した下降端まで到達したとき、アクチュエータ20の駆動を停止して、押付部材を下降端に一定時間だけ配置しておく(ステップS6)。その後、アクチュエータ20を駆動して押付部材を上昇させ(ステップS7)、押付部材が上昇端(待機位置)まで移動したとき、アクチュエータ20の駆動を停止して、押付部材を上昇端に配置する(ステップS8)。
【0046】
反力推定手段50は、押付部材が包装袋に接触してから作動して、包装品からの反力の推定値を出力し続ける。この反力の推定値と位置検出手段30からの位置信号は、リーク判断手段60に入力され、上記一連の押付部材の移動が終了した後、リーク判断手段60によって包装品のリークの有無が判別される(ステップS9)。
これら一連の動作を1サイクルとして、検査位置へ搬送されたきた包装品ごとにリーク検査動作が検査終了まで繰り返される(ステップS10)。
【0047】
〔第2の実施形態〕
図6乃至
図9は本発明の第2の実施形態に係る包装品のリーク検査装置を説明するための図であり、
図6はリーク検査装置の外観を示す斜視図である。なお、先に示した第1の実施形態に係る包装品のリーク検査装置と同一部分又は相当する部分には同一符号を付し、その部分の詳細な説明は省略する。
【0048】
図6に示すように、本実施形態のリーク検査装置は、押付部材21、アクチュエータ20、位置検出手段30及び外乱オブザーバ40を含むマスタシステム100と、このマスタシステム100と同じ構成のスレーブシステム200とを備えている。
これらマスタシステム100と、スレーブシステム200は、後述するように制御装置10によって制御され、同じ動作を実行する。ここで、マスタシステム100の押付部材21は、ベルトコンベア1によって検査位置に搬送されてきた包装品2と対向するように配置され、下降動作をもって包装品2の表面に接触して押圧する。そして、この押圧力に対する反力を包装品から受ける。
一方、スレーブシステム200の押付部材21の下方には包装品2を配置せず、したがって同押付部材21は移動の過程で包装品2に接触することがなく、反力も受けない。
【0049】
ここで、押付部材21は、
図6に示すように包装品2への接触面積が小さい棒状体で形成してある。このように包装品2への接触面積を小さくすることで、リークの原因となる包装品2に開いた小孔を押付部材21の接触によって塞いでしまいリークを検出できなくなる可能性を低下させ、検出結果の信頼性を向上させることができる。先に示した第1実施形態における押付部材も同様に構成されている。
【0050】
図7はマスタシステム及びスレーブシステムの主な構成要素と、これらのシステムに付加された反力推定手段を示すブロック図である。
同図(a)に示すマスタシステム100にマスタ側反力推定手段51が付加されており、また同図(b)に示すスレーブシステム200には、スレーブ側反力推定手段52が付加されている。
【0051】
マスタシステム100の外乱オブザーバ40とマスタ側反力推定手段51には、マスタシステム100に設けられたアクチュエータ20への指令値Imと、当該アクチュエータ20の移動位置(すなわち、押付部材21の移動位置)を示す位置検出手段30からの位置信号Xmとが入力される。そして、マスタ側反力推定手段51は、それらの信号に基づき、マスタシステム100におけるアクチュエータ20に加わる外力の推定値Fm3を出力する。
【0052】
ここで、マスタシステム100のアクチュエータ20には、外力Fm1とともに包装品からの反力Fm2が作用する。したがって、マスタ側反力推定手段51から出力される外力の推定値Fm3には、包装品からの反力の推定値も含まれている。
【0053】
また、スレーブシステム200の外乱オブザーバ40とスレーブ側反力推定手段52には、スレーブシステム200に設けられたアクチュエータ20への指令値Isと、当該アクチュエータ20の移動位置(すなわち、押付部材21の移動位置)を示す位置検出手段30からの位置信号Xsとが入力される。そして、スレーブ側反力推定手段52は、それらの信号に基づき、スレーブシステム200におけるアクチュエータ20に加わる外力の推定値Fs3を出力する。
スレーブシステム200のアクチュエータ20には、外力Fs1が作用するものの、同システム200のアクチュエータ20には、包装品2からの反力は作用しない。したがって、スレーブ側反力推定手段52から出力される外力の推定値Fs3には、包装品2からの反力の推定値は含まれていない。
【0054】
図8は本実施形態に係るリーク検査装置の全体構成を示すブロック図である。
マスタシステム100のアクチュエータ20には、制御装置10から指令値(電流値)Imが出力され、同システム100の位置検出手段30からアクチュエータ20の移動位置(すなわち、押付部材21の移動位置)を示す位置信号Xmが出力される。同様に、スレーブシステム200のアクチュエータ20にも、制御装置10から指令値(電流値)Isが出力され、同システム200の位置検出手段30からアクチュエータ20の移動位置(すなわち、押付部材21の移動位置)を示す位置信号Xsが出力される。
【0055】
上述したようにマスタシステム100のアクチュエータ20には、外力Fm1とともに包装品2からの反力Fm2が作用して、マスタ側反力推定手段51からは包装品2からの反力を含む外力の推定値Fm3が出力される。また、スレーブシステム200のアクチュエータ20には、包装品2からの反力を含まない外力Fs1が作用して、スレーブ側反力推定手段52からは包装品2からの反力を含まない外力の推定値Fs3が出力される。
【0056】
反力推定手段50はこれらマスタ側反力推定手段51及びスレーブ側反力推定手段52を含んでおり、マスタ側反力推定手段51から出力された包装品2からの反力を含む外力の推定値Fm3と、スレーブ側反力推定手段52から出力された包装品2からの反力を含まない外力の推定値Fs3とに基づき、押付部材21を介して包装品2からマスタシステム100のアクチュエータ20に作用する反力の推定値F2を算出して出力する。
【0057】
そして、リーク判断手段60は、反力推定手段50により推定された反力に基づき、包装品2のリークの有無を判別する。このリーク有無の判別方法は、
図3や
図4に基づき既述したとおりである。
【0058】
さて、本実施形態に係るリーク検査装置は、
図8に示すように、制御装置10が、制御指令出力手段11、第1変換手段12、第2変換手段13、目標値追従制御手段14、同期制御器15、コンプライアンス制御手段16の各構成要素を含んでおり、マスタシステム100のアクチュエータ20とスレーブシステム200のアクチュエータ20とを、以下に示す手法でそれぞれ制御する構成となっている。
【0059】
次に、制御装置によるアクチュエータの制御手法を、
図8及び
図9を参照して説明する。
制御指令出力手段11は、マスタシステム100のアクチュエータ20とスレーブシステム200のアクチュエータ20が移動すべき目標値を指令値として出力する。
第1変換手段12は、マスタシステム100の位置検出手段30から出力された位置信号Xmと、スレーブシステム200の位置検出手段30から出力された位置信号Xsとに基づき、これら各システム100、200におけるアクチュエータ20の現在位置間の中央位置(Xm+Xs)/2を求める。
そして、目標値追従制御手段14は、第1変換手段12で求めた各システムにおけるアクチュエータ20の現在位置間の中央位置(Xm+Xs)/2を、制御指令出力手段11から出力された目標値に追従させる。
【0060】
また、第2変換手段13は、マスタシステム100の位置検出手段30から出力された位置信号Xmと、スレーブシステム200の位置検出手段30から出力された位置信号Xsとに基づき、これら各システムにおけるアクチュエータ20の現在位置の間隔(Xm−Xs)を求める。
そして、同期制御器15は、第1変換手段12が求めた中央位置(Xm+Xs)/2に対し、第2変換手段13が求めた各システム100、200におけるアクチュエータ20の現在位置の間隔(Xm−Xs)に基づき、各システム100、200におけるアクチュエータ20の位置を同期させる。
これらの構成により、アクチュエータ20の移動量を目標値に合わせて高精度に制御することが可能となる。
【0061】
コンプライアンス制御手段16は、反力推定手段50で求めた反力の推定値F2に基づき、目標値追従制御手段14による目標値への中央位置(Xm+Xs)/2への追従動作に関し柔軟性を規定する。このようなコンプライアンス制御手段16を含めることで、反力の大きさに応じて、目標値へ追従させる加速度を柔軟に調整してシステムや包装品2に優しい制御動作を実現することが可能となる。
【0062】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の応用実施や変形実施が可能である。