特許第6132391号(P6132391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6132391型枠固定具、型枠締結構造、型枠組み立て及び脱型方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132391
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】型枠固定具、型枠締結構造、型枠組み立て及び脱型方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/00 20060101AFI20170515BHJP
   E04G 17/06 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   E04G9/00 101
   E04G9/00 102
   E04G17/06 101C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-42573(P2013-42573)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-169589(P2014-169589A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】512178879
【氏名又は名称】株式会社蒼龍刃物製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100166774
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文博
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−136630(JP,A)
【文献】 特開平06−129093(JP,A)
【文献】 実開昭57−127749(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00
E04G 17/06
E04G 17/065
E04G 17/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠の堰板を貫通した状態で当該堰板に固定される筒状の固定用コーンと、
前記固定用コーンの内周に螺合し回転により堰板貫通方向に進退移動可能であり、一方向に回転させて堰板貫通方向に前進することで前記固定用コーンに対向するセパレータの端部に取り付けられるジョイントナットに螺合し、逆方向に回転させて後退することで前記ジョイントナットとの螺合が解除されるシャフトと、
前記シャフトに沿って移動自在に設けられ前記型枠との間で桟部材を挟むための止め部材と、
前記止め部材を前記型枠側へ締め付ける締め付け部材と、
を備えていることを特徴とする型枠固定具。
【請求項2】
前記固定用コーンは、円錐台形状の本体部、及びこの本体部の大径面から突出し前記堰板を貫通する軸部を有し、当該本体部の小径面から前記軸部の突出先端部まで貫通しかつ少なくとも一部に雌ねじを有する貫通孔が形成され、
前記シャフトの一端部に、前記雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている請求項1に記載の型枠固定具。
【請求項3】
複数並べて設けられる型枠と、
前記型枠のコンクリート打設側に設置されるセパレータと、
複数の前記型枠を跨いで前記打設側と反対の背面側に設置されこれら型枠を補強するための桟部材と、
前記セパレータと連結され前記型枠を当該セパレータに固定可能でかつ前記桟部材を前記型枠に締め付け可能とする固定具と、を備え、
前記固定具は、請求項1に記載の型枠固定具であることを特徴とする型枠締結構造。
【請求項4】
コンクリート打設側に設置したセパレータに型枠を固定する型枠組み立て方法であって、
前記型枠の堰板を貫通した状態で当該堰板に筒状の固定用コーンを固定するステップ、及びこの固定用コーンの内周にシャフトの端部を螺合させるステップを含む準備ステップと、
前記シャフトを一方向に回転させて堰板貫通方向に前進させ、前記セパレータの端部に取り付けられるジョイントナットに当該シャフトを螺合させるステップ、及び前記シャフトに沿って移動自在である止め部材と前記型枠の背面側との間に桟部材を挟んだ状態とし、当該止め部材を前記型枠側へ締め付けるステップを含む固定ステップと、
コンクリートの打設及びその養生後に、前記シャフトを逆方向に回転させ、前記シャフトの前記端部と前記固定用コーンとの螺合は維持したまま、当該シャフトを後退させ、前記ジョイントナットとの螺合を解除し、前記止め部材と前記型枠との間に前記桟部材を挟んだ状態で、前記固定用コーンが取り付けられている前記型枠をコンクリート構造物から取り外す脱型ステップと、
を備えていることを特徴とする型枠組み立て及び脱型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠を用いてコンクリート構造物を成形する際に用いられる型枠固定具、この型枠固定具を備えた型枠締結構造、型枠組み立て及び脱型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の壁や柱等の構造物の成形は、次のようにして行われている。骨格となる鉄筋を配置し、この鉄筋に棒部材からなるセパレータ90(図10参照)を固定し、鉄筋の周囲に型枠91を複数並べて設ける。この際、各セパレータ90の端部に固定用コーン92を取り付け、この固定用コーン92を介してセパレータ90に型枠91を固定する。さらに、型枠91の背面側には、補強用の鋼管からなる桟部材93を設置する。
このようにして組み立てた型枠91により囲われた領域へコンクリート94を流し込み、養生することで、コンクリート構造物を得ている。
【0003】
セパレータ90に型枠91を固定するための従来の固定具95は、前記固定用コーン92の他に、シャフト97、止め板98、及びナット99を有している(例えば、特許文献1参照)。
固定用コーン92には、セパレータ90の端部を螺合させるねじ孔92aが形成されており、水平に設置したセパレータ90の端部に、このねじ孔92aを螺合させて固定用コーン92をセパレータ90に取り付ける。そして、この固定用コーン92の大径面92bに型枠91を当接させ、型枠91に形成した孔91aに固定用コーン92のねじ軸96を挿通させ、型枠91から背面側に突出させたねじ軸96に、シャフト97の端部を螺合させる。
止め板98には、シャフト97を挿通させる孔が形成されており、この止め板98と型枠91との間で桟部材93を挟んだ状態とし、シャフト97にナット99を螺合させて桟部材93を締め付け固定している。
【0004】
そして、複数の型枠91により囲われた領域にコンクリート94を流し込み、養生した後、シャフト97に対するナット99の螺合を解くと共に、固定用コーン92のねじ軸96に対するシャフト97の螺合を解くことで、型枠91をコンクリート構造物から取り外すことが可能となる。この取り外しの際、固定用コーン92は、コンクリート構造物に残り、後に、この固定用コーン92をセパレータ90から取り外す作業が行われる。
【0005】
取り外した型枠91は、次にコンクリートを流し込む第二の施工領域で利用される。このために、取り外した型枠91を第二の施工領域へ移動させ、先の場合と同様の組み立てを行う。すなわち、図10を参考に説明すると、第二の施工領域に設置されているセパレータ90に対して、固定用コーン92を取り付ける。そして、この固定用コーン92の大径面92bに型枠91を当接させ、型枠91から突出しているねじ軸96にシャフト97を螺合させる。その他、止め板98、ナット99、及び桟部材93の設置も先の場合と同様に行われる。
以上のように、型枠91の組み立てと取り外しとが繰り返し行われ、コンクリート構造物が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−285820号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
型枠91を取り外す際、固定用コーン92のねじ軸96に対するシャフト97の螺合を解くことから、桟部材93が型枠91から外れてしまい、第二の施工領域で型枠91を組み立てる際、再び、桟部材93を、型枠91の背面側の所定位置に組み付ける作業が発生する。つまり、型枠91を移動させる毎に、桟部材93の組み直しが発生してしまう。この場合、多くの工数が発生し作業効率が悪い。
そこで、例えば、羽子板と呼ばれる別の金具(図示せず)を型枠91に固定し、この金具に桟部材93を固定することで、型枠91の移動の際に、桟部材93が型枠91から外れるのを防止することが行われている。
【0008】
しかし、この場合、羽子板と呼ばれる金具が別途必要となり、また、この金具に桟部材93を固定する作業が追加されるという問題点を有している。
そこで、本発明は、前記のような別の金具を型枠に固定しなくても、取り外した型枠を桟部材と共に、別の施工領域へ移動させることができ、しかも、セパレータへの型枠の取り付けが容易となる型枠固定具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の型枠固定具は、型枠の堰板を貫通した状態で当該堰板に固定される筒状の固定用コーンと、前記固定用コーンの内周に螺合し回転により堰板貫通方向に進退移動可能であり、一方向に回転させて堰板貫通方向に前進することで前記固定用コーンに対向するセパレータの端部に取り付けられるジョイントナットに螺合し、逆方向に回転させて後退することで前記ジョイントナットとの螺合が解除されるシャフトと、前記シャフトに沿って移動自在に設けられ前記型枠との間で桟部材を挟むための止め部材と、前記止め部材を前記型枠側へ締め付ける締め付け部材とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、型枠の堰板に固定された固定用コーンに対して、シャフトを一方向に回転させて前進させることにより、この固定用コーンに対向するセパレータの端部に取り付けられるジョイントナットにシャフトを螺合させ、セパレータに型枠を固定することが可能となる。そして、コンクリートを打設し養生後、シャフトを逆方向に回転させ、シャフトと固定用コーンとの螺合は維持したまま、シャフトを後退させることにより、シャフトとジョイントナットとの螺合を解除することができる。これにより、固定用コーンが固定された状態の型枠を、コンクリート構造物から取り外し、移動させることができる。しかも、型枠を移動させる際、この型枠と止め部材との間に桟部材を挟んだままの状態とすることが可能となる。
このため、桟部材と共に型枠をそのまま別の施工領域へ移動させ、この型枠に固定された固定用コーンを別のセパレータに対向させ、シャフトを一方向に回転させて前進させることにより、このセパレータに対して、型枠を容易に取り付けることが可能となる。
【0011】
また、前記固定用コーンは、円錐台形状の本体部、及びこの本体部の大径面から突出し前記堰板を貫通する軸部を有し、当該本体部の小径面から前記軸部の突出先端部まで貫通しかつ少なくとも一部に雌ねじを有する貫通孔が形成され、前記シャフトの一端部に、前記雌ねじに螺合する雄ねじが形成されているのが好ましい。
この場合、型枠の堰板に固定された固定用コーンに対して、シャフトを一方向に回転させることにより、このシャフトを前進させ、セパレータの端部に螺合させることのできる構成が得られ、また、シャフトを逆方向に回転させることにより、シャフトを後退させ、セパレータの端部との螺合を解除することのできる構成が得られる。
【0012】
また、本発明の型枠締結構造は、複数並べて設けられる型枠と、前記型枠のコンクリート打設側に設置されるセパレータと、複数の前記型枠を跨いで前記打設側と反対の背面側に設置されこれら型枠を補強するための桟部材と、前記セパレータと連結され前記型枠を当該セパレータに固定可能でかつ前記桟部材を前記型枠に締め付け可能とする固定具とを備え、前記固定具は、前記型枠固定具であることを特徴とする。
本発明によれば、前記型枠固定具と同様の作用効果を奏することができる。
【0013】
また、本発明は、コンクリート打設側に設置したセパレータに型枠を固定する型枠組み立て及び脱型方法であって、前記型枠の堰板を貫通した状態で当該堰板に筒状の固定用コーンを固定するステップ、及びこの固定用コーンの内周にシャフトの端部を螺合させるステップを含む準備ステップと、前記シャフトを一方向に回転させて堰板貫通方向に前進させ、前記セパレータの端部に取り付けられるジョイントナットに当該シャフトを螺合させるステップ、及び前記シャフトに沿って移動自在である止め部材と前記型枠の背面側との間に桟部材を挟んだ状態とし、当該止め部材を前記型枠側へ締め付けるステップを含む固定ステップと、コンクリートの打設及びその養生後に、前記シャフトを逆方向に回転させ、前記シャフトの前記端部と前記固定用コーンとの螺合は維持したまま、当該シャフトを後退させ、前記ジョイントナットとの螺合を解除し、前記止め部材と前記型枠との間に前記桟部材を挟んだ状態で、前記固定用コーンが取り付けられている前記型枠をコンクリート構造物から取り外す脱型ステップとを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、固定ステップでは、型枠の堰板に固定された固定用コーンに対して、シャフトを一方向に回転させて前進させ、コンクリート打設側に設置されているセパレータの端部に取り付けられるジョイントナットにシャフトを螺合させることで、セパレータに型枠を固定することが可能となる。そして、脱型ステップでは、コンクリートを打設し養生後、シャフトを逆方向に回転させ、シャフトの端部と固定用コーンとの螺合は維持したまま、シャフトを後退させ、シャフトとジョイントナットとの螺合を解除することで、固定用コーンが取り付けられている型枠をコンクリート構造物から取り外すことができる。
しかも、型枠を移動させる際、止め部材と型枠との間に桟部材を挟んだままの状態としているため、桟部材と共に型枠をそのまま別の施工領域へ移動させ、この型枠に固定された固定用コーンを別のセパレータに対向させ、シャフトを一方向に回転させて前進させることにより、このセパレータに対して、型枠を容易に取り付けることが可能となる。つまり、次の施工領域における前記固定ステップを容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、型枠を移動させる際、この型枠と止め部材との間に桟部材を挟んだままの状態とすることが可能となる。そして、桟部材と共に型枠をそのまま別の施工領域へ移動させ、この型枠に固定された固定用コーンを別のセパレータに対向させ、シャフトを一方向に回転させて前進させることにより、このセパレータに対して、型枠を容易に取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の型枠固定具を備えている型枠締結構造の実施の一形態を示す斜視図である。
図2】型枠固定具によりセパレータに固定された状態にある型枠を説明する断面図である。
図3】固定用コーンを説明する断面図である。
図4】固定用コーン、及びシャフトを説明する断面図である。
図5】止め部材、及びナットを説明する断面図である。
図6】型枠の組み立て及び脱型方法を説明する断面図である。
図7】型枠の組み立て及び脱型方法を説明する断面図である。
図8】他の例の型枠固定具によりセパレータに固定された状態にある型枠を説明する断面図である。
図9図9に示す型枠固定具による作用を説明する断面図である。
図10】従来の型枠固定具を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、型枠固定具1を備えている型枠締結構造の実施の一形態を示す斜視図である。図1は、コンクリート構造物37として壁を形成する場合の例を示している。鉛直平面に沿って複数の型枠3が並べて設けられており、これら型枠3により大型枠6が構成されている。型枠3それぞれは、堰板4と、この堰板4に固定された縦桟5とを有している。
【0018】
型枠3の背面側には、型枠3(堰板4)を補強するために、複数本の桟部材2が設置されており、これら桟部材2は複数の型枠3を跨いでいる。本実施形態の桟部材2は鋼管からなり、特に角形鋼管からなる。なお、大型枠6(型枠3)の背面側とは、コンクリート打設側(コンクリート構造物37側)と反対側である。桟部材2は、縦桟5と共に格子状となるように型枠3に固定される。
【0019】
コンクリート打設側には鉄筋9が設置され、この鉄筋9を囲むようにして複数の型枠3が設置される。さらに、コンクリート打設側には、棒部材からなるセパレータ7(図2参照)が設置され、例えば、セパレータ7は鉄筋に固定される。そして、このセパレータ7に型枠固定具1が取り付けられ、この型枠固定具1によって型枠3はセパレータ7に固定される。
【0020】
図2は、型枠固定具1によりセパレータ7に固定された状態にある型枠3を説明する断面図である。セパレータ7の端部にはジョイントナット8が取り付けられている。つまり、ジョイントナット8のねじ孔8aに、セパレータ7の端部に形成した雄ねじ7aが螺合している。雄ねじ7aは、ねじ孔8aの途中部まで螺合した状態であり、ねじ孔8aのうち、雄ねじ7aが螺合していない残り領域は、後述するシャフト20の端部(雄ねじ21)が螺合する領域とされている。
【0021】
型枠固定具1は、固定用コーン10、シャフト20、止め部材30、締め付け部材25を備えている。更に、この型枠固定具1は、固定用コーン10のためのナット27、及び締め付け部材25のための座金26を備えている。また、型枠3の堰板4には、固定用コーン10の一部を貫通させる孔4aが形成されている。
【0022】
図3において、固定用コーン10は、円錐台形状の本体部11と、この本体部11内に固定された筒状のねじ部材14とを有している。本体部11は樹脂製からなり、その外周面が円錐台形状である。ねじ部材14は金属製であり、長手方向のほぼ半分が本体部11内に位置し、残り部分が本体部11の大径面12から突出している。この突出している部分が、堰板4を貫通する軸部15となる。この軸部15の外周に雄ねじ19が形成されている。
【0023】
そして、軸部15が堰板4の孔4aを挿通し、本体部11の大径面12が堰板4のコンクリート打設側の面4bに当接した状態となり、軸部15の先端部側が堰板4から突出する。この軸部15の雄ねじ19にナット27を螺合させることで、固定用コーン10は、堰板4から抜け止めされる(堰板4に固定される)。
【0024】
ねじ部材14は筒状であることから、この固定用コーン10は、本体部11の小径面13から軸部15の突出先端部16まで貫通した貫通孔17が形成された構成を有し、また、この貫通孔17の一部に雌ねじ18が設けられている。なお、この雌ねじ18は、貫通孔17の全長であってもよい。以上より、固定用コーン10は、全体として筒状の部材として構成されており、その一部が堰板4を貫通した状態となり、堰板4に固定される。
【0025】
図4において、シャフト20は、直線状の部材(金属部材)であり、その一端部20aに第一の雄ねじ21が形成され、その他端部20bに第二の雄ねじ22が形成されている。この第一の雄ねじ21が、固定用コーン10の内周に形成されている雌ねじ18に螺合する。シャフト20は、雌ねじ18に螺合していることから、シャフト20を回転させることにより、堰板4の貫通方向に進退移動可能である。また、回転を止めるとシャフト20は、堰板4の貫通方向に移動不能となる。シャフト20の他端部20bには、工具を用いてシャフト20の回転操作を容易に行うための切り欠き部20cが設けられている。
なお、このシャフト20を挟んで上下両側に、鋼管からなる桟部材2,2が設置される(図2参照)。
【0026】
図5において、止め部材30は、例えば金属板をプレス加工により所定の形状とした板状の部材であり、中央にシャフト20を貫通させる孔31が形成されている。また、止め部材30は、一対の桟部材2,2のうちの一方の管壁と接触する第一の当接部32と、一対の桟部材2,2のうちの他方の管壁と接触する第二の当接部33とを有している。止め部材30は、孔31によりシャフト20に沿って移動自在に設けられ、止め部材30の当接部32,33は、型枠3の縦桟5との間で桟部材2,2を挟むことができる。
【0027】
締め付け部材25は、シャフト20の第二の雄ねじ22に螺合するナットからなる。締め付け部材(ナット)25と止め部材30との間には、環状の座金26が設けられており、締め付け部材(ナット)25を雄ねじ22に螺合させ、型枠3側へ更に進めることで、止め部材30を型枠3側へ締め付けることができる。これにより、桟部材2,2は、型枠3と止め部材30との間で挟まれた状態で締め付けられ、型枠3に保持される。
【0028】
前記実施形態による型枠固定具1を用いて行う型枠組み立て及び脱型方法について説明する。
前記のとおり、コンクリート打設側にセパレータ7(図2参照)が設置されており、このセパレータ7に、以下のようにして型枠3を固定する。なお、セパレータ7及びジョイントナット8は、高さ位置(レベル)が調整されて所定位置に水平状に設置されている。セパレータ7は複数設置されており、また、複数の型枠3それぞれが各セパレータ7に固定されるが、型枠3とセパレータ7との連結構造は各々同じであり、同じ組み立て方法により設置される。
【0029】
図4に示すように、固定用コーン10の軸部15を、堰板4の孔4aに挿通させ、軸部15の雄ねじ19にナット27を螺合させ、固定用コーン10を堰板4に固定する。また、固定用コーン10の雌ねじ18にシャフト20の雄ねじ21を螺合させる。この際、シャフト20の一端部20a側の端面が、固定用コーン10の小径面13と同一面を成すように、又は、図示しないが、シャフト20の一端部20a側の端面が、小径面13よりもわずかに型枠3側に位置するように、シャフト20を固定用コーン10に連結する。
【0030】
以上が準備ステップであり、この準備ステップには、固定用コーン10を、堰板4を貫通した状態で堰板4に固定するステップ、及びこの固定用コーン10の内周部(雌ねじ18)にシャフト20の端部(雄ねじ21)を螺合させるステップが含まれる。
【0031】
次に、固定用コーン10及びシャフト20が取り付けられた型枠3を、セパレータ7のジョイントナット8に接近させ、図6に示すように、セパレータ7のジョイントナット8の端面8bに対して、固定用コーン10の小径面13を対向させた状態とし、シャフト20を矢印R1方向に回転させ、雄ねじ21をセパレータ7側へ進ませてジョイントナット8に螺合させる。
【0032】
そして、図5に示すように、止め部材30の孔31にシャフト20を挿通させ、止め部材30と型枠3の縦桟5との間に桟部材2,2を位置させ、ナット25により、止め部材30を型枠3側へ締め付ける(図2参照)。これにより、桟部材2,2は、止め部材30と縦桟5との間に挟まれ固定される。
【0033】
以上が、固定ステップであり、この固定ステップには、図6に示すように、シャフト20を一方向に回転させて堰板4の貫通方向に前進させ、セパレータ7のジョイントナット8に、雄ねじ21を螺合させるステップ、及び、図5及び図2に示すように、シャフト20に沿って移動自在となる止め部材30と型枠3の背面側との間に桟部材2,2を挟んだ状態とし、ナット25により止め部材30を型枠3側へ締め付けるステップが含まれる。
【0034】
以上より、型枠固定具1がセパレータ7に連結され、この型枠固定具1によって、セパレータ7に型枠3が固定され、かつ、桟部材2を型枠3に締め付けた状態とすることができる。
【0035】
そして、複数の型枠3が各セパレータ7に固定され、これら型枠3により囲われた領域にコンクリートを流し込む(1回目のコンクリート打設)。そして、コンクリートの養生後、型枠3の取り外しを、次のようにして行う。
【0036】
ナット25を緩めると共に、シャフト20を逆方向(図7の矢印R2)に回転させ、セパレータ7のジョイントナット8からシャフト20を離脱させる(図7参照)。なお、シャフト20の回転方向(R2)は、図6の矢印R1と反対の方向である。シャフト20を逆方向に回転させることで、シャフト20の一端部20aは固定用コーン10に引き込まれるが、この一端部20a側の端面が、図7に示すように、固定用コーン10の小径面13と同一面を成すように、又は、図示しないが、一端部20aの端面が、小径面13よりもわずかに型枠3側となる位置まで、シャフト20を逆方向に回転させる。この状態を解除状態という。
【0037】
このようにナット25を緩めると共にシャフト20を逆方向に回転させる際、ナット25は、シャフト20の雄ねじ22に螺合したままの状態であり、桟部材2,2は、締め付け力は小さくなっている時間帯が存在するが、止め部材30と型枠3との間に挟まれた状態が維持される。なお、ジョイントナット8からシャフト20を離脱させると、ナット25を増し締めして桟部材2に対する締め付け力を大きくする。
【0038】
前記解除状態では、シャフト20の雄ねじ21は、固定用コーン10の雌ねじ18に螺合したままの状態である。この解除状態で、固定用コーン10付きの型枠3と、セパレータ7(ジョイントナット8)との縁が切れ、この型枠3をコンクリート構造物37から取り外す(離脱させる)ことができる。また、この際、型枠3と止め部材30との間に桟部材2,2は挟まれたままの状態であり、このままの状態で、型枠3を移動させることができる。
【0039】
以上が、脱型ステップであり、この脱型ステップでは、コンクリートの打設及びその養生後に、シャフト20を逆方向(R2)に回転させ、シャフト20の端部(雄ねじ21)と固定用コーン10との螺合は維持したまま、シャフト20を後退させ、セパレータ7との螺合を解除し、止め部材30と型枠3との間に桟部材2,2を挟んだ状態で、固定用コーン10が取り付けられている型枠3をコンクリート構造物37から取り外す。
【0040】
そして、この取り外した型枠固定具1付きの型枠3を、次の施工領域に移動させ、所定の位置に設置し、コンクリートの打設(2回目)を行う。
すなわち、型枠3に取り付けられたままの型枠固定具1の内の固定用コーン10と、別のセパレータ7のジョイントナット8の端面8bとを対向させた状態とし、ナット25を緩めつつ、シャフト20を正方向(図6のR1方向と同じ方向)に回転させ、別のセパレータ7のジョイントナット8に、シャフト20の雄ねじ21を螺合させる。これにより、コンクリートの打設(1回目)を終えて取り外した型枠3を、コンクリート打設(2回目)のために、別のセパレータ7に固定することができ、所定位置に迅速に設置することが可能となる。
【0041】
以上のように、本実施形態の型枠固定具1によれば、シャフト20を、一方向に回転させて堰板4の貫通方向に前進させることにより、固定用コーン10に対向するセパレータ7の端部(ジョイントナット8)に螺合させることができ、また、このシャフト20を、逆方向に回転させて後退させることにより、セパレータ7の端部(ジョイントナット8)との螺合を解除することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態の型枠固定具1を用いた型枠3の組み立て及び脱型方法によれば、前記固定ステップでは、型枠3の堰板4に固定された固定用コーン10に対して、シャフト20を一方向に回転させて前進させ、コンクリート打設側に設置されているセパレータ7のジョイントナット8に、このシャフト20の雄ねじ21を螺合させることで、セパレータ7に型枠3を固定することが可能となる。
【0043】
そして、前記脱型ステップでは、コンクリートを打設し養生後、シャフト20を逆方向に回転させ、シャフト20の雄ねじ21と固定用コーン10との螺合は維持したまま、シャフト20を後退させることにより、シャフト20とセパレータ7のジョイントナット8との螺合が解除される。これにより、固定用コーン10が取り付けられている型枠3をコンクリート構造物37から取り外すことができる(図7参照)。
【0044】
しかも、取り外した型枠3を移動させる際、止め部材30と型枠3との間に桟部材2,2を挟んだままの状態とすることができ、桟部材2,2と共に型枠3をそのまま、次回のコンクリート打設の対象となる施工領域へ移動させることができる。そして、型枠3を所定位置へ移動させた後、この型枠3に固定されたままの状態にある固定用コーン10を、この施工領域に設置されている別のセパレータ7のジョイントナット8に対向させ、シャフト20を、一方向に回転させて前進させると、そのセパレータ7のジョイントナット8に螺合させることができ、これにより、このセパレータ7に型枠3を容易に取り付けることが可能となる。つまり、次の(2回目の)施工領域における固定ステップを容易に行うことが可能となる。
【0045】
図8は、他の例の型枠固定具1により、セパレータ7に固定された状態にある型枠3を説明する断面図である。この型枠固定具1は、図2に示す型枠固定具1の構成を全て備えている他に、シャフト20の一端部20a側に被せる筒部材45を更に備えている。筒部材45は、水分による腐食が生じない部材からなり、例えば樹脂製やコンクリート製等の円筒管である。
【0046】
この筒部材45を含む型枠固定具1を用いる場合、前記固定ステップにおいて、シャフト20を一方向に回転させ、セパレータ7のジョイントナット8に雄ねじ21を螺合させる前に、この雄ねじ21が形成されているシャフト20の一端部20a側に、筒部材45を(隙間を有して)外嵌させる。そして、図8に示すように、型枠3がセパレータ7に固定された状態で、ジョイントナット8と固定用コーン10との間に、筒部材45が介在した状態となり、この状態で、コンクリートの打設が行われる。
【0047】
図8に示す型枠固定具1を用いた場合、図9に示すように、コンクリート構造物37の仕上がり面38から、ジョイントナット8までの深さK(コンクリートのかぶり寸法)を、図7に示す実施形態の場合よりも大きくすることができる。
このため、セパレータ7及びジョイントナット8が金属製(例えば、炭素鋼)であり、腐食の可能性があっても、ジョイントナット8等の錆び(錆び水)が仕上がり面38から出にくくすることが可能となる。
【0048】
また、本発明の型枠固定具1等は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、桟部材2は、角形鋼管ではなく丸形鋼管であってもよく、これに応じて、桟部材2の横断面輪郭形状に応じた形状を有する止め部材30が使用される。
【符号の説明】
【0049】
1:型枠固定具 2:桟部材 3:型枠
4:堰板 7:セパレータ 8:ジョイントナット
10:固定用コーン 11:本体部 12:大径面
13:小径面 15:軸部 16:突出先端部
17:貫通孔 18:雌ねじ 20:シャフト
20a:一端部 21:雄ねじ(第一の雄ねじ) 25:締め付け部材
30:止め部材 37:コンクリート構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10