(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132402
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】4導体用に変更可能な2導体用固定ヨーク及び送電線の増設方法
(51)【国際特許分類】
H02G 7/02 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
H02G7/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-202610(P2013-202610)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-70691(P2015-70691A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】391001538
【氏名又は名称】日本カタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】池田 明弘
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−064925(JP,A)
【文献】
実開昭49−022498(JP,U)
【文献】
特開昭64−055003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 7/02
H02G 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔に送電線を吊設する耐張用碍子装置において、碍子連に送電線を張設する際に用いられる、4導体用に変更可能な2導体用固定ヨークであって、
左右方向に延びる横方向ヨーク部と上下方向に延びる縦方向ヨーク部とを有し、
前記横方向ヨーク部と前記縦方向ヨーク部は、夫々の長さ方向の略中央部で互いに直角に交差しており、
前記横方向ヨーク部は、
前方左右端部に夫々設けられた碍子連を連結する取付孔と、
後方左右端部に夫々設けられた連結金具を連結する係止穴とを有し、
前記縦方向ヨーク部は、上下端部に夫々水平ヨークを連結する第一クレビス部と第二クレビス部を有し、
前記係止穴に連結金具を介して2導体からなる送電線を張設することにより2導体用として使用する一方、前記第一及び第二クレビス部に夫々水平ヨークを取り付け、該水平ヨークに連結金具を介して夫々2導体からなる送電線を張設することにより4導体用に変更可能である、
ことを特徴とする4導体用に変更可能な2導体用固定ヨーク。
【請求項2】
前記縦方向ヨーク部は、側面視略L字形状であり、
前記第一クレビス部は、前記第二クレビス部よりも前方に且つ前記横方向ヨーク部よりも上方に位置しており、
前記第二クレビス部は、前記横方向ヨーク部よりも下方に位置している、
ことを特徴とする、請求項1記載の4導体用に変更可能な2導体用固定ヨーク。
【請求項3】
鉄塔に耐張用碍子装置の固定ヨークを介して碍子連に張設された送電線を2導体から4導体に増設する方法であって、
前記固定ヨークは、
左右方向に延びる横方向ヨーク部と上下方向に延びる縦方向ヨーク部とを有し、
前記横方向ヨーク部と前記縦方向ヨーク部は、夫々の長さ方向の略中央部で互いに直角に交差しており、
前記横方向ヨーク部は、
前方左右端部に夫々設けられた碍子連を連結する取付孔と、
後方左右端部に夫々設けられた連結金具を連結する係止穴とを有し、
前記縦方向ヨーク部は、上下端部に夫々連結金具を連結する第一クレビス部と第二クレビス部を有し、
前記係止穴に連結金具を介して2導体からなる送電線が張設されている状態から、
前記係止穴に連結されている前記連結金具及び該連結金具に連結された2導体からなる送電線を取り外す工程と、
前記第一及び第二クレビス部に水平ヨークを取り付け、夫々の水平ヨークに対して連結金具を連結する工程と、
前記連結金具に4導体からなる送電線を連結する工程と、
を含むことを特徴とする送電線を2導体から4導体に増設する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2導体用固定ヨーク及び送電線の増設方法に関し、より詳しくは鉄塔に張設された送電線の導体数をヨークを交換することなく2導体から4導体に増設可能な2導体用固定ヨーク及び送電線の増設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔に送電線を吊設する耐張用碍子装置において、固定ヨークは、碍子連に送電線を張設する際に使用される。
従来、固定ヨークは、張設する送電線の導体数に応じて形状が異なるものを使用していた。例えば、2導体用の固定ヨークと4導体用の固定ヨークは、以下に述べるように異なる形状を有するものであった。
【0003】
特許文献1には、2導体用ヨークに関する技術が開示されている。詳しくはがいし装置にヨーク片が接続され、このヨーク片にクランプ本体がバーニヤ金具を介して接続されている2導体用のヨークが開示されている。
【0004】
特許文献2には、3点支持4導体用引留ヨークに関する技術が開示されている。詳しくは、2連ヨークを連結するための2つのクレビス部を上下に配置することにより、各クレビス部を介して連結される夫々の導体の干渉を防止することができる4導体用ヨークが開示されている。
【0005】
特許文献3には、4導体用固定ヨークに関する技術が開示されている。詳しくは、本体の側面形状は底辺が長い略L字形状であり、L字状本体の垂直部と水平部の各端部にクレビスが設けられており、碍子取付片は、本体の垂直部と水平部の交差部に、本体と直交する方向の両側に突出するように、本体と一体的に設けられている4導体用固定ヨークが開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、固定ヨークに4導体からなる送電線を張設する方法に関する技術が開示されている。詳しくは、鉄塔の碍子連に連接されるライン側2連ヨークと直角クレビスを用いて取り付けられた垂直2連ヨークとからなる固定ヨークを使用し、該垂直2連ヨークに2つの水平ヨークを取り付け、該水平ヨークにバーニヤ金具と送電線を引き上げるため緊線ワイヤと金車とを取り付け、金車を鉄塔側及び送電線側に配置し、送電線側の金車に取り付けられた緊線工具と緊線すべき送電線の先端部に取り付けられたカマレス金具とを連結し、カマレス金具とバーニヤ金具の先端部に接続された平行クレビスとを連結することにより4導体からなる送電線を張設する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3229095号公報
【特許文献2】実開昭47−10090号公報
【特許文献3】特許第4266470号公報
【特許文献4】特許第5118329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来技術には以下に示す問題点があった。
例えば、送電量の増加に伴い、送電線の導体数を2導体から4導体に増加させることに対応して緊線作業を行う際、
図12(a)〜(c)に示すように、2導体用固定ヨーク(20)は碍子連(14)に取り付けられ、2導体用固定ヨーク(20)に直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(21)からなる連結金具が取り付けられている状態(
図12(a)参照)から、2導体用固定ヨーク(20)と該固定ヨーク(20)に取り付けられている直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(21)からなる連結金具を碍子連(14)から取り外し(
図12(b)参照)、4導体用固定ヨーク(1)に直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(17)からなる連結金具を取り付け、4導体用固定ヨーク(1)を係止穴(4)から直角クレビスリンク(19)を介して碍子連に連結させる(
図12(c)参照)という一連の作業を行っていたため、固定ヨークも2導体用から4導体用に取り替える必要があった。
上記特許文献1−3に開示された固定ヨークでは、2導体又は4導体のいずれかの送電線を張設することはできるが、2導体から4導体に送電線を増設する際に同じ固定ヨークをそのまま使用することができない。
特許文献4には4導体からなる送電線を張設する方法は開示されているが、同じ固定ヨークを用いて、送電線を2導体から4導体に増設する方法は開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、同一の固定ヨークを用いながら張設する送電線の本数を2導体から4導体に増設することが可能な2導体用の固定ヨーク及び送電線の増設方法を提供するものである。
【0010】
請求項1に係る発明は、鉄塔に送電線を吊設する耐張用碍子装置において、碍子連に送電線を張設する際に用いられる、4導体用に変更可能な2導体用固定ヨークであって、左右方向に延びる横方向ヨーク部と上下方向に延びる縦方向ヨーク部とを有し、前記横方向ヨーク部と前記縦方向ヨーク部は、夫々の長さ方向の略中央部で互いに直角に交差しており、前記横方向ヨーク部は、前方左右端部に夫々設けられた碍子連を連結する取付孔と、後方左右端部に夫々設けられた連結金具を連結する係止穴とを有し、前記縦方向ヨーク部は、上下端部に夫々水平ヨークを連結する第一クレビス部と第二クレビス部を有し、前記係止穴に連結金具を介して2導体からなる送電線を張設することにより2導体用として使用する一方、前記第一及び第二クレビス部に夫々水平ヨークを取り付け、該水平ヨークに連結金具を介して夫々2導体からなる送電線を張設することにより4導体用に変更可能である、ことを特徴とする4導体用に変更可能な2導体用固定ヨークに関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記縦方向ヨーク部は、側面視略L字形状であり、前記第一クレビス部は、前記第二クレビス部よりも前方に且つ前記横方向ヨーク部よりも上方に位置しており、前記第二クレビス部は、前記横方向ヨーク部よりも下方に位置していることを特徴とする、請求項1記載の4導体用に変更可能な2導体用固定ヨークに関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、鉄塔に耐張用碍子装置の固定ヨークを介して碍子連に張設された送電線を2導体から4導体に増設する方法であって、前記固定ヨークは、左右方向に延びる横方向ヨーク部と上下方向に延びる縦方向ヨーク部とを有し、前記横方向ヨーク部と前記縦方向ヨーク部は、夫々の長さ方向の略中央部で互いに直角に交差しており、前記横方向ヨーク部は、前方左右端部に夫々設けられた碍子連を連結する取付孔と、
後方左右端部に夫々設けられた連結金具を連結する係止穴とを有し、前記縦方向ヨーク部は、上下端部に夫々連結金具を連結する第一クレビス部と第二クレビス部を有し、前記係止穴に連結金具を介して2導体からなる送電線が張設されている状態から、前記係止穴に連結されている前記連結金具及び該連結金具に連結された2導体からなる送電線を取り外す工程と、前記第一及び第二クレビス部に水平ヨークを取り付け、夫々の水平ヨークに対して連結金具を連結する工程と、前記連結金具に4導体からなる送電線を連結する工程とを含むことを特徴とする送電線を2導体から4導体に増設する方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、鉄塔に送電線を吊設する耐張用碍子装置において、碍子連に送電線を張設する際に用いられる、4導体用に変更可能な2導体用固定ヨークであって、左右方向に延びる横方向ヨーク部と上下方向に延びる縦方向ヨーク部とを有し、前記横方向ヨーク部と前記縦方向ヨーク部は、夫々の長さ方向の略中央部で互いに直角に交差しており、前記横方向ヨーク部は、左右の前端部に夫々碍子連を連結する取付孔と、左右の後端部に夫々電線クランプを連結する係止穴とを有し、前記縦方向ヨーク部は、上下端部に夫々電線クランプを連結する第一クレビス部と第二クレビス部を有し、前記係止穴に電線クランプを介して2導体からなる送電線を張設することにより2導体用として使用する一方、前記第一及び第二クレビス部に電線クランプを介して夫々2導体からなる送電線を張設することにより4導体用に変更可能である。従って、緊線の作業において固定ヨークを取り外すことなく、同一の固定ヨークを使用して張設される送電線を2導体から4導体に増設することができる。そのため、2導体用のヨークを4導体用のヨークに取り替える手間を省くことが可能となり、送電量の増加に伴い2導体から4導体へと増設する緊線作業の工程数が減少し、作業効率が向上すると共に、高所での作業が減るために安全性も向上する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記縦方向ヨーク部は、側面視形状が略L字状であり、前記第一クレビス部は、前記第二クレビス部よりも前方に且つ前記横方向ヨーク部よりも上方に位置しており、前記第二クレビス部は、前記横方向ヨーク部よりも下方に位置している。従って、第一クレビス部に取り付けられた電線クランプと第二クレビス部に取り付けられた連結金具とが干渉することによる損傷を防止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、鉄塔に耐張用碍子装置の固定ヨークを介して、碍子連に張設された送電線を2導体から4導体に増設する方法であって、係止穴に連結金具を介して2導体からなる送電線が張設されている状態から、前記係止穴に連結されている前記連結金具及び該連結金具に連結された2導体からなる送電線を取り外す工程と、前記第一及び第二クレビス部に水平ヨークを取り付け、夫々の水平ヨークに対して連結金具を連結する工程と、前記連結金具に4導体からなる送電線を連結する工程とを含んでいる。
従って、固定ヨークを取り替えることなく、送電線を2導体から4導体に増設することができ、4導体用として使用する際も2導体用に使用していたバーニヤ金具、連結金具等をそのまま利用することができる。そのため、送電量の増加に伴い2導体から4導体へと増設する緊線作業の工程数が減少し、作業効率が向上すると共に、高所での作業が減るために安全性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る2導体用固定ヨーク(4導体用固定ヨーク兼用型)の側面図である。
【
図2】本発明に係る2導体用固定ヨーク(4導体用固定ヨーク兼用型)の平面図である。
【
図3】本発明に係る2導体用固定ヨーク(4導体用固定ヨーク兼用型)の底面図である。
【
図4】本発明に係る2導体用固定ヨーク(4導体用固定ヨーク兼用型)の前面図である。
【
図5】本発明に係る2導体用固定ヨーク(4導体用固定ヨーク兼用型)の後面図である。
【
図6】本発明に係る固定ヨークを2導体用として使用する際の状態を示す図である。
【
図7】本発明に係る固定ヨークを4導体用として使用する際の状態を示す図である。
【
図8】本発明において、送電線を2導体から4導体に増設する方法における、(a)2導体用金具連結状態、(b)2導体用金具連結状態に4導体用金具を連結した状態、(c)2導体用金具を取外した状態、(d)4導体用金具連結状態を夫々示す図である。
【
図9】送電線を2導体から4導体に増設する際に用いられる水平ヨーク(上線側)の平面図である。
【
図10】送電線を2導体から4導体に増設する際に用いられる水平ヨーク(下線側)の平面図である。
【
図11】本発明に係る2導体用固定ヨークの4導体用としての使用状態を示す図である。
【
図12】従来の送電線を2導体から4導体に増設する方法における、(a)2導体用金具連結状態、(b)2導体用金具を取外した状態、(c)4導体用金具に取り替えた状態を夫々示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明に係る2導体用固定ヨーク(1)は、鉄塔に送電線を吊設する耐張用碍子装置において、碍子連に送電線を張設する際に用いられる固定ヨークであり、他の固定ヨークに交換することなく張設される送電線を2導体から4導体に増設することが可能である点に特徴付けられるものである。
固定ヨーク(1)は、
図1及び
図2に示すように、左右方向に延びる横方向ヨーク部(2)と、上下方向に延びる縦方向ヨーク部(3)とを備えている。横方向ヨーク部(2)の左右方向の長さと縦方向ヨーク部(3)の上下方向の長さは略等しく形成されている。横方向ヨーク部(2)と縦方向ヨーク部(3)とは、夫々の長さ方向の略中央部分で互いに直角に交差し、且つ一体的に構成されている(
図4、
図5参照)。
【0019】
横方向ヨーク部(2)は、前方が後方より幅広の平面視略台形状である(
図2参照)。横方向ヨーク部(2)には、
図2及び
図3に示す前方左右端部に夫々取付孔(4)が設けられており、後述する如く取付孔(4)を介して碍子連が連結される。横方向ヨーク部(2)の後方左右端部には係止穴(5)が設けられており、後述する如く係止穴(5)を介して電線クランプが連結される。取付孔(4)の直径は、係止穴(5)の直径に比して大きく形成されている。
図2及び
図3に示される取付孔(4)と係止穴(5)以外の孔は、碍子連に固定ヨーク(1)を取り付ける際、また固定ヨーク(1)に送電線を取り付ける際に、金車等の工具類あるいはアークホーンを取り付けるための孔である。
【0020】
縦方向ヨーク部(3)は、
図1に示すように、上下端部に夫々後方向に向けて開口した第一クレビス部(6)と第二クレビス部(7)とを有している。縦方向ヨーク部(3)は、後述する如く第一クレビス部(6)及び第二クレビス部(7)を介して電線クランプに連結される。縦方向ヨーク部(3)の形状は側面視略L字形状であり、
図1に示すように第一クレビス部(6)から横方向ヨーク部(2)と交差する部分までの上部は、横方向ヨーク部(2)に対して垂直方向に延びる形状であり、横方向ヨーク部(2)から第二クレビス部(7)までの下部は、斜め下方向に傾斜する形状となっている。
第一クレビス部(6)は、横方向ヨーク部(2)よりも上方に位置し、第二クレビス部(7)は横方向ヨーク部(2)よりも下方に位置している。第一クレビス部(6)は第二クレビス部(7)より前方に位置している。これにより、第一クレビス部(6)と第二クレビス部(7)に夫々連結される連結金具及び張設される送電線が前後にずれて配置されることとなる。そのため、第一クレビス部(6)に取り付けられた電線クランプと第二クレビス部(7)に取り付けられた連結金具及び張設される送電線とが干渉することによる損傷を防止することができる。
縦方向ヨーク部(3)の第一クレビス部(6)と横方向ヨーク部(2)の係止穴(5)は、
図2に示すように前後方向において略同じ位置に配置されている。
【0021】
固定ヨーク(1)を用いて2導体からなる送電線を張設する際は、
図6に示すように横方向ヨーク部(2)の取付孔(4)を介して碍子連(図示せず)を連結し、横方向ヨーク部(2)の2つの係止穴(5)に対して夫々直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(21)及び(22)、電線クランプ(図示せず)の順に連結金具を連結し、各連結金具の電線クランプに送電線を連結することにより2導体からなる送電線を張設する。
一方、4導体からなる送電線を張設する際は、
図7に示すように、上線側である第一クレビス部(6)に水平ヨーク(8)、下線側である第二クレビス部(7)に水平ヨーク(9)を夫々連結する。使用される水平ヨーク(8)、(9)は、
図9及び
図10に示すように、平面視が略三角形状であり、前方の取付孔(10)、(11)を介してボルト及びナットを用いて、第一クレビス部(6)と第二クレビス部(7)に夫々取り付ける。また、後部の左右両端部に2つの係止穴(12)、(13)が夫々設けられており、係止穴(12)、(13)に対して夫々直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(17)及び(23)、電線クランプ(18)の順に連結金具を連結し、各連結金具の電線クランプ(18)に送電線を連結することにより4導体からなる送電線を張設する(
図11参照)。
図9及び
図10に示される取付孔(10)、(11)と係止穴(12)、(13)以外の孔は、水平ヨーク(8)及び(9)に送電線を取り付ける際に、金車等の工具類を取り付けるための孔である。
尚、4導体からなる送電線を張設するにあたって、下線側の第二クレビス部(7)に直角クレビスリンクを介して水平ヨーク(9)を取り付けても構わない。この場合、第二クレビス部(7)に直接水平ヨーク(9)を取り付けた場合と比べて、連結される連結金具及び張設される送電線が後方にずれるため、第一クレビス部(6)に取り付けられた電線クランプと第二クレビス部(7)に取り付けられた連結金具及び張設される送電線とが干渉することによる損傷を防止することができる。
2導体用固定ヨーク(1)は、直角クレビスリンク(19)を介して碍子連(14)と連結される。
【0022】
以下、本発明に係る2導体用固定ヨークを用いて、送電線を2導体から4導体に増設する方法について説明する。
【0023】
図8は、送電線を2導体から4導体に増設する方法を工程順に示す図である。
まず、固定ヨーク(1)に2導体用金具(直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(21)及び(22)、電線クランプ(図示せず))を介して2導体からなる送電線(図示せず)が連結されている(
図8(a)参照)。このとき固定ヨーク(1)前方に碍子連(図示せず)が連結され、直角クレビスリンク(22)の後方に電線クランプ及び送電線(2導体)が連結された状態となる。
次に横方向ヨーク部(2)に連結されている2導体用金具を係止穴(5)から取り外す(
図8(b)参照)。このとき、耐張用碍子装置は鉄塔アームにぶら下がり、碍子連(14)には固定ヨーク(1)のみがぶら下がった状態となる。
耐張用碍子装置がぶら下がった状態で、第一クレビス部(6)に取付孔(10)を介して水平ヨーク(8)(
図9参照)を取り付け、該水平ヨーク(8)の2つの係止穴(12)に対して夫々、直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(17)及び(23)の順に4導体用金具を取り付ける。同様に第二クレビス部(7)に取付孔(11)を介して水平ヨーク(9)(
図10参照)を取り付け、該水平ヨーク(9)の2つの係止穴(13)に対して夫々、直角クレビスリンク(15)、バーニヤ金具(16)、直角クレビスリンク(17)、直角クレビスリンク(23)の順に4導体用金具を取り付ける(
図8(c)(d)参照)。
水平ヨーク(8)及び(9)の孔(24)及び(25)にセミ金車及びワイヤロープ(図示せず)を接続して、電線クランプ及び送電線を直角クレビスリンク(23)の近くまで引き込み、各直角クレビスリンク(23)に夫々取り付けることにより、4導体からなる送電線を張設する。
【0024】
上記した如く、
図8(a)〜(d)に示す工程を経て、固定ヨーク(1)に対して第一クレビス部(6)及び第二クレビス部(7)に水平ヨーク(8)、(9)を取り付け、この水平ヨーク(8)、(9)を介して夫々2導体からなる送電線を張設することにより、2導体用固定ヨーク(1)に4導体からなる送電線が張設される(
図11参照)。そのため、緊線の作業において固定ヨーク(1)を取り外すことなく、張設される送電線を2導体から4導体に容易に増設することができる。これにより、4導体用の別のヨークに取り替える手間を省くことができるため、高所作業である送電量の増加に伴う緊線作業の工程数が減少し作業効率が向上すると共に、高所での作業の安全性も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る4導体用に変更可能な2導体用固定ヨーク及び送電線の増設方法は、送電量の増加に伴って送電線を2導体から4導体に増設する緊線作業において好適に利用される。
【符号の説明】
【0026】
1 固定ヨーク
2 横方向ヨーク部
3 縦方向ヨーク部
4 取付孔
5 係止穴
6 第一クレビス部
7 第二クレビス部
8 水平ヨーク
9 水平ヨーク