(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷においては、被印刷物の上に配置された、スクリーン印刷用紗を有する印刷版の上面に、印刷ペースト(例、インク、導電性ペースト)を供給し、スクリーン印刷用紗の上面をスキージで擦ること(すなわち、スキージング)により、印刷ペーストを、スクリーン印刷用紗を通過させることにより、被印刷物に印刷ペーストを印刷する。
【0003】
スクリーン印刷用紗として、従来、合成繊維フィラメントからなる紗が用いられている。
【0004】
しかし、合成繊維からなるスクリーン印刷用紗は、印刷時のスキージの擦過等によって帯電し、それによって、埃などの吸着、印刷時の印刷用ペーストの飛散、スクリーン印刷用紗からの印刷用ペーストの抜け性(スクリーン印刷用紗上の印刷用ペーストがスクリーン印刷用紗を通過する際の印刷用ペーストの通過しやすさ)の悪化、印刷用紗から被印刷物に転移した印刷用ペーストの不十分なレベリングなどの問題が発生し、高精度の印刷画像が得られない場合があるという問題、ならびに被印刷物に電子部品が実装されている場合にはこれらの電子部品が電気的に破損する場合があるという問題があった。
【0005】
このような問題に対し、合成繊維からなるシート状のスクリーンにスパッタリング加工を施して前記合成繊維上に金属の薄膜の形成させることにより帯電を抑制する技術が提案されている(例えば、特開平3−236962号公報、特開平6−1089号公報、特開平7−285276号公報)。
【0006】
この場合、帯電を防止するためには、スクリーン印刷用紗の印刷時にスキージングされる側の表面上に金属薄膜が形成されていることが必須であると考えられていた。例えば、特開平6−1089号公報では、帯電防止のためには、スクリーン印刷用紗の片面に金属薄膜を形成するよりも、両面に金属薄膜を形成することが好ましいことが、述べられている。
【0007】
しかし、このようなスクリーン印刷用紗においては、スキージング時の摩擦により、スキージングされる側の表面上の金属薄膜が擦過等により容易に剥離してしまうので、印刷板の耐久性が低く、また、剥離した金属薄膜が被印刷物に付着する結果、高精度の印刷画像が得られない場合がある、という問題があった。
【0008】
このような金属薄膜の剥離の問題を解決するため、特開平10−86317号公報では、ポリエステル組成物からなる芯成分よりもアルカリ加水分解性の高いポリエステル組成物を鞘成分とした芯鞘構造のモノフィラメントから構成されるメッシュ織物の、前記モノフィラメントの鞘部分が減量率0.1重量%以下であるように粗化されていると共に該粗化表面にスパッタリングによる金属成分含有薄膜が形成されていることを特徴とする印刷用機能性スクリーン紗が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.1.スクリーン印刷用紗
本発明のスクリーン印刷用紗は、合成繊維から構成され、かつスクリーン印刷においてスキージによって擦られる側の反対側の主面のみが金属薄膜で被覆された紗状織物からなる。
【0017】
1.1.1.紗状織物
本発明のスクリーン印刷用紗における紗状織物は、前記合成繊維を経糸及び緯糸として有し、当該経糸及び緯糸は、開口部を形成している。すなわち、当該紗状織物は、網状の形態を有する。当該紗状織物の織り組織は、平組織等の、目ずれが生じ難く、縦横均一な開口面を有する組織が好ましい。当該開口部の孔径は、好ましくは、20〜100μmである。当該紗状織物の開口率は、好ましくは、20〜70%である。当該紗状織物の線維密度は、好ましくは、50〜200本/cmである。
【0018】
前記合成繊維の線径は、好ましくは、10〜70μmである。当該線径が細すぎると、当該合成繊維が切断し易く、一方、太すぎると、精密な印刷が困難になる。
【0019】
これらの紗状織物に関する数値は、本発明のスクリーン印刷用紗が有する数値と実質的に同じである。
【0020】
本発明における合成繊維は、好ましくは、ポリエステル繊維である。
【0021】
当該ポリエステル繊維を構成するポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(例、ポリエチレン−2,6−ナフタレート)等が挙げられる。
【0022】
前記合成繊維は、好ましくは、モノフィラメントである。
【0023】
前記紗状織物の厚さは、好ましくは、30〜80μmである。後記するように、本発明のスクリーン印刷用紗における金属薄膜の厚さは、前記紗状織物の厚さに比べて非常に薄いので、本発明のスクリーン印刷用紗の厚さは、前記紗状織物の厚さと実質的に同じである。
【0024】
本発明のスクリーン印刷用紗をスクリーン印刷に用いる場合、印刷用ペーストが、前記紗状織物の開口部に保持される。この保持量は、前記開口部の孔径及び前記紗状織物の厚さによって異なり、好ましくは、5〜70cm
3/m
2である。
【0025】
本発明のスクリーン印刷用紗における、このような紗状織物として、従来、スクリーン印刷用紗として用いられている、合成繊維フィラメントからなる紗を用いることができる。
【0026】
1.1.2.金属薄膜
本発明のスクリーン印刷用紗における前記紗状織物は、スクリーン印刷においてスキージによって擦られる側の反対側の主面のみが金属薄膜で被覆されている。
【0027】
すなわち、本発明のスクリーン印刷用紗において、金属薄膜は、前記紗状織物の一方の主面上にのみ存在し、他方の主面上には存在しない。ただし、本発明の効果が失われない限りにおいて、他方の主面の一部に金属薄膜またはその断片等が存在していてもよく、また、前記紗状織物を構成する合成繊維の側面に金属薄膜またはその断片等が存在していてもよい。このようなスクリーン印刷用紗もまた本発明の範囲内である。
【0028】
本発明のスクリーン印刷用紗における金属薄膜は、好ましくは、スパッタリングによって形成された金属薄膜である。
【0029】
本発明のスクリーン印刷用紗における金属薄膜は、好ましくは、アモルファス薄膜である。
【0030】
金属薄膜は、前述のような紗状織物の開口部を塞がないように、開口部を有する必要がある。これは、後述の製造方法で説明するように、金属薄膜が紗状織物の主面上に適切に形成される場合、自ずと達成される。当該金属薄膜は、その全体が、電気的に繋がっていて、導電性を有すること、すなわち、分断されていないことが好ましい。
【0031】
本発明のスクリーン印刷用紗における金属薄膜を構成する金属の例として、チタン、銀、アルミニウム、スズ、亜鉛、ニッケル、銅、コバルト、クロム、アンチモン、ニオブ等の単体金属;ハステロイ(商標)、パーマロイ、ステンレス鋼、モネル、コバルト系合金等の合金が挙げられる。なかでも、チタン、ステンレス鋼が好ましい。すなわち、本発明のスクリーン印刷用紗における金属薄膜は、好ましくは、チタン薄膜、又はステンレス鋼薄膜である。当該ステンレス鋼薄膜を構成するステンレス鋼の例としては、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等が挙げられる。なかでも、オーステナイト系ステンレス鋼が好ましい(例、SUS310S)。
【0032】
当該金属薄膜の厚さは、導電性を有する限り特に限定されないが、金属付着量として、好ましくは80μg/cm
2以下、より好ましくは35μg/cm
2以下であり、また好ましくは3μg/cm
2以上、より好ましくは5μg/cm
2以上である。
【0033】
当該厚さが薄すぎると(すなわち、金属付着量が少なすぎると)、所期の効果が得られにくく、一方、厚すぎると(すなわち、金属付着量が多すぎると)、金属薄膜が開口部に重なって開口率が低下することによって細線印刷性が低下するし、及び製造コストが高くなる。また、当該厚さが薄すぎても、厚すぎても、紗状織物への金属薄膜の密着性(本明細書中、金属密着性と称する場合がある)が低下する。
【0034】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲において、金属の付着量は、蛍光X線法に従って測定されたものである。ここで、付着量の数値は、分析した単位面積あたりの付着金属質量として表す。
【0035】
1.1.3.製造方法
本発明のスクリーン印刷用紗は、例えば、
合成繊維から構成された紗状織物を用意する工程A、及び
当該紗状織物の、スクリーン印刷においてスキージによって擦られる側の反対側の主面を金属薄膜で被覆する工程B
を含む製造方法によって、製造することができる。
【0036】
1.1.3.1.工程A
工程Aでは、前記で詳細に説明した、合成繊維から構成された紗状織物を用意する。後記の工程Bに供するため、当該紗状織物は、好ましくは長尺である。
【0037】
このような紗状織物は、従来、スクリーン印刷用紗として用いられている合成繊維フィラメントからなる紗の製造方法と同様の方法で製造すればよい。
【0038】
ここで、好ましくは、紗状織物を帯電防止処理する。
【0039】
帯電防止処理の方法は、例えば、紗状織物の表面への帯電防止剤の噴霧が好ましい。
【0040】
帯電防止剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤等の帯電を防止又は抑制する効果を有する従来公知の界面活性剤を主成分として含有するものが挙げられる。
【0041】
帯電防止剤の量は、帯電を防止又は抑制できる程度であればよく、通常、紗状織物の重量に対して、1重量%未満である。
【0042】
帯電防止処理は、好ましくは紗状織物の一方の主面に対して、実施される。なお、帯電防止処理が紗状織物の一方の主面に対して実施した場合は、金属薄膜の紗状織物への密着性の観点から、当該金属薄膜の帯電防止処理面の反対側の面に対してスパッタリングを実施することが、好ましい。
【0043】
合成繊維は表面が疎水性である場合が多く、スパッタリング加工において静電気障害が発生しやすいが、帯電防止処理によって、帯電防止処理面の反対側の面に対してスパッタリングを実施した場合であっても静電気障害を防止又は抑制でき、その結果、本発明のスクリーン印刷用紗の生産性が向上する。
【0044】
1.1.3.2.工程B
紗状織物の一方の主面の金属薄膜での被覆は、好ましくは、スパッタリングによって実施される。スパッタリングは、金属薄膜が紗状織物の開口部を塞がないように実施される。工程Aにおいて紗状織物を帯電防止処理した場合、金属薄膜の紗状織物への密着性の観点から、帯電防止処理面の反対側にスパッタリングすることが好ましい。以下に、一例として、スパッタリングによるステンレス鋼のアモルファス薄膜形成について、
図1を参照しつつ、説明する。
【0045】
図1は、スパッタリング装置の一例を示す縦断面図であり、密閉可能なケーシング10が水平方向の仕切り板11によって下側のスパッタ室12と上側の織物室13とに分けられ、下側のスパッタ室12の中央にステンレス鋼からなる平板状のターゲット14が中空のターゲットソース15上に固定され、このターゲットソース15に通される冷水によって下面側から冷却されるようになっている。このターゲット14の上方左右にアノード16が水平に設置される。一方、上側の織物室13の下部に水冷シリンダー17が水平に、かつ回転自在に設置され、その下半部が仕切り板11に形成した開口部11aからスパッタ室12内に突出する。そして、織物室13の上部右側に紗状織物Fの送り出し軸18が、また上部左側に紗状織物Fの巻取り軸19がそれぞれ水平に、かつ回転自在に設置され、送り出し軸18に巻かれている紗状織物Fが引出され、右上部のガイドローラ20を経て前記水冷シリンダー17に巻回され、左上部のガイドローラ20を経て巻取り軸19に巻付けられる。なお、スパッタ室12には第2の真空ポンプ21が、また織物室13には第1の真空ポンプ22がそれぞれ接続される。
【0046】
好ましくは、スパッタリングによる金属薄膜での被覆の前に、紗状織物Fを、例えば、100〜130℃の乾燥条件下で、水分含有率が0.1重量%以下になるまで、乾燥する。
【0047】
長尺の紗状織物Fは、巻芯上にロール状に巻かれ、この巻芯が密閉可能なケーシング10内に設けられている送り出し軸18に装着され、この送り出し軸18上の巻芯から引出された紗状織物Fの先端が送り出し軸18と平行に設けられている巻取り軸19上の巻芯に固定される。そして、前記の送り出し軸18及び巻取り軸19を回転することにより、紗状織物Fが拡布状態で、かつ所定の速度で前送りされるが、この発明では、前記の紗状織物Fが送り出し軸18及び巻取り軸19の間で冷却され、紗状織物Fの表面温度が好ましくはステンレス鋼の融点(1620〜1720°K)の1/2以下、特に好ましくは1/3以下に維持される。この表面温度が前記融点(絶対温度)の1/2を超えた場合は、スパッタリングで形成されるステンレス鋼薄膜が結晶化し、アモルファス薄膜が得難くなる。
【0048】
前記の紗状織物Fの冷却は、紗状織物Fを大径の水冷シリンダー17に接触させて前送りすることによって行うことができる。また、別法として、小径の多数本の水冷ローラにガイドローラ状に圧接して前送りする方法等が例示される。なお、前記のターゲット14も、水冷その他の冷却手段によって冷却すること、または、放熱性を良好にすることが好ましく、これによってアモルファス薄膜の形成が容易になる。前記のまたは水冷シリンダー14に接して移動する紗状織物Fの片側に紗状織物Fの幅よりも長い棒状のアノード16、及び平板状のステンレス鋼であるターゲット14が、紗状織物Fとターゲット14の間にアノード16が位置するように近接させて、かつ平行に配置され、このアノード16及びターゲット14間に500〜1000Vの直流電圧が印加される。なお、ケーシング10内は、あらかじめ密閉状態で減圧され、次いでアルゴンガス等の不活性ガスを導入して1×10
−1〜1×10
−2Pa程度の不活性ガス雰囲気に形成される。
【0049】
2.2.スクリーン印刷方法
本発明のスクリーン印刷方法は、合成繊維から構成され、かつ一方の主面のみが金属薄膜で被覆された紗状織物からなるスクリーン印刷用紗を用意する工程C、及び
当該金属薄膜で被覆された側の反対側の主面をスキージによって擦る工程D
を有する。
【0050】
本発明のスクリーン印刷方法は、合成繊維から構成され、かつ一方の主面のみが金属薄膜で被覆された紗状織物からなるスクリーン印刷用紗を用い、かつ当該金属薄膜で被覆された側の反対側の主面をスキージによって擦る点以外は、従来のスクリーン印刷方法と同様に実施できる。
【0051】
2.2.1.工程C
工程Cでは、例えば、前記の製造方法等により本発明のスクリーン印刷用紗を用意する。
【0052】
用意された本発明のスクリーン印刷用紗を用いて、従来のスクリーン印刷用紗と同様に、印刷版を製造することができる。すなわち、本発明のスクリーン印刷用紗を、例えば、金属(例、アルミニウム)製の枠に、所定の張力をかけて保持し、その上にマスキング層を形成して、印刷版を得る。
【0053】
本発明のスクリーン印刷用紗を有する印刷版は、前記金属薄膜及び金属製の枠を介して接地することで、当該金属薄膜側において、帯電が抑制される。
【0054】
当該印刷版は、被印刷物の上に、前記金属薄膜側の主面が被印刷物に対向するように配置される。そして、その反対側の主面上に印刷ペーストが供給される。
【0055】
2.2.2.工程D
工程Dでは、前記スクリーン印刷用紗の、金属薄膜で被覆された側の反対側の主面上(すなわち、印刷ペーストが供給された主面上)を、スキージをスライドさせることによって、当該主面を擦る。これにより、印刷ペーストがスクリーン印刷用紗を通過して、被印刷物に印刷される。
【0056】
本発明の印刷方法で用いられる印刷用ペーストは特に限定されず、様々な粘度の印刷用ペーストを用いることができ、その例としては、インク、導電性ペースト等が挙げられる。
【0057】
また、本発明の印刷方法における被印刷物は特に限定されず、その例としては、紙、布、電子部品の基板等が挙げられる。
【0058】
本発明の印刷方法によれば、スキージングによる帯電および金属薄膜の剥離に起因する問題が抑制され、高精度の印刷画像が可能になる。
【実施例】
【0059】
実施例1
[スクリーン印刷用紗の製造]
図1に概要を示した装置を用いて、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる紗状織物F(縦糸本数140本/cm、線径30μm)にステンレス鋼をスパッタリングすることにより、実施例のスクリーン印刷用紗を製造した。すなわち、ターゲット14にオーステナイト系ステンレス鋼(SUS310S)を使用した。紗状織物Fを送出し軸18から引出し、前記の水冷シリンダー17に巻掛け、前記紗状織物Fの先端を巻取り軸19に巻付け、送出し軸18、巻取り軸19及び水冷シリンダー17を回転させて、紗状織物Fを時計方向に4.4m/分の速度で搬送した。なお、最初に第1の真空ポンプ22を駆動してケーシング10内の圧力を5Pa程度まで低下させ、次いで、第2の真空ポンプ21を駆動して圧力を5×10
−5Torr程度に下げ、その後、アルゴンガスを導入して圧力を1×10
−1〜1×10
−2Paに調整し、前記のアノード16及びターゲット14間に500V×60Aの直流電流を流して前記紗状織物Fの片面に前記ステンレス鋼の薄膜(金属付着量 12μg/cm
2)を形成し、実施例1のスクリーン印刷用紗を得た。
【0060】
実施例2
実施例1で用いた紗状織物Fに帯電防止処理を施した。帯電防止処理は、陰イオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを含有する噴霧液を紗状織物Fの片面に適量噴霧することにより行った。この帯電防止処理面に実施例1と同様にスパッタリング処理を行って、実施例2のスクリーン印刷用紗(金属付着量 12μg/cm
2)を得た。
【0061】
実施例3
帯電防止処理を行った面の反対側にスパッタリング処理を行ったこと、及び搬送速度の調整により金属付着量を4μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3のスクリーン印刷用紗を得た。
【0062】
実施例4
搬送速度の調整により金属付着量を6μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4のスクリーン印刷用紗を得た。
【0063】
実施例5
搬送速度の調整により金属付着量を12μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例3と同様にして(言い換えれば、紗状織物Fの帯電防止処理面の反対側の面にスパッタリング処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして)、実施例5のスクリーン印刷用紗を得た。
【0064】
実施例6
搬送速度の調整により金属付着量を25μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例6のスクリーン印刷用紗を得た。
【0065】
実施例7
搬送速度の調整により金属付着量を35μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例7のスクリーン印刷用紗を得た。
【0066】
実施例8
搬送速度の調整により金属付着量を50μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例8のスクリーン印刷用紗を得た。
【0067】
実施例9
搬送速度の調整により金属付着量を80μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例9のスクリーン印刷用紗を得た。
【0068】
実施例10
搬送速度の調整により金属付着量を90μg/cm
2に調整したこと以外は、実施例3と同様にして、比較例2のスクリーン印刷用紗を得た。
【0069】
比較例1
紗状織物Fを、比較例1のスクリーン印刷用紗として用いた。
【0070】
比較例2
金属薄膜の成膜面をスキージング面とすること以外は、実施例5と同様にして、比較例2のスクリーン印刷用紗(金属付着量 12μg/cm
2)を得た。
【0071】
比較例3
金属薄膜を両面に成膜すること以外は、実施例5と同様にして、比較例3のスクリーン印刷用紗(金属付着量 24μg/cm
2(片面あたり12μg/cm
2))を得た。
【0072】
試験例1
[印刷版の作成]
前記実施例及び比較例で製造した各スクリーン印刷用紗を、鋳造されたアルミニウム枠(320mm×320mm)に、テンション1.10mm(テンションゲージ:model STG−75B、プロテック社)、バイアス角度30度の条件で紗張した。当該紗上に、ポリビニルアルコールと可塑性を付与された酢酸ビニルとを主成分として含有する感光性乳剤を4μmの厚さに塗布し、露光により硬化させて、70μm幅のスリットが、70μmの間隔を空けて並んでいるパターンを形成させ、前記実施例及び比較例の各印刷版を得た。
[スクリーン印刷]
前記実施例及び比較例の各印刷板、及びポリエステル系1液蒸発乾燥型インキ(PALマット、セイコーアドバンス社)を用いて、前記パターンの形状を、ウレタンスキージ(硬度:70°、幅:170mm)を備えたスクリーン印刷機(LS-15GX、ニューロング精密工業社)により、下記の条件で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:ルミラー、東レ社)に、常法に従い、スクリーン印刷した。
【0073】
<印刷条件>
押し込み量: 0.7mm
クリアランス: 2.0mm
スキージ角度: 70°
印刷速度: 150mm/秒
スクレッパー速度: 150mm/秒
温度: 22〜23℃
湿度: 40〜50%
[細線状のインクの平坦性]
得られた印刷物のインク層の厚さ(形状)を、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK-8710)によって分析した。結果を
図2(比較例1)及び
図3(実施例1)に示す。
図2、
図3において縦軸はインク層の表面高さ、横軸は測定距離である。なお、
図2、
図3において縦軸はインク層の表面高さの絶対値を示していない。図中の下側の破線はベースラインであり、インク層の表面高さは下側の破線をベースラインとして算出することができる。
【0074】
これから明らかなように、比較例1の印刷版を用いて印刷した印刷物に比べて、実施例1の印刷版を用いて印刷した印刷物のほうが、インク層の山が平坦であった。このことから、インクの抜け性、及びレベリングが良好であったことが理解される。
【0075】
更に、各実施例及び比較例について、次の基準により、インクの平坦性を、優、良、可、及び不可の4段階で評価した。
【0076】
<細線状のインクの平坦性の評価基準>
インク層の山を台形とみなし、表面高さの最大値から最大値の90%までである部分の長さを上底長さとし、インク層の山の両側の山すそがベースラインと交わる点(インク層の山の始点と終点)の間の距離を下底長さとして、次の基準でインクの平坦性を評価した。
【0077】
優(◎):下底長さに対して上底長さが40%以上である。
良(○):下底長さに対して上底長さが35%以上40%未満である。
可(△):下底長さに対して上底長さが30%以上35%未満である。
不可(×):下底長さに対して上底長さが30%未満である。
【0078】
結果を表1(平坦性)に示す。
[細線印刷性]
各実施例及び比較例について、次の基準により、細線印刷性を、優、良、可、及び不可の4段階で評価した。
【0079】
<細線印刷性の評価基準>
印刷されたインク層から任意の細線状のインクを10本選び、その表面をルーペで観察し、次の基準で評価した。
優(◎):観察したすべての細線状のインクに断線もにじみもかすれも無い。
良(○):断線が無いが、1本又は2本の細線状のインクでにじみやかすれが見られる。
可(△):断線が無いが、3本又は4本の細線状のインクでにじみやかすれが見られる。不可(×):1本以上の細線状のインクで断線が見られるか、又は5本以上の細線状のインクでにじみやかすれが見られる。
【0080】
結果を表1(細線印刷性)に示す。
[金属密着性]
各実施例及び比較例について、次の基準により、金属密着性を、優、良、可、及び不可の4段階で評価した。
【0081】
<金属密着性の評価基準>
10回印刷を行った後に、酢酸プロピルを染み込ませた布で版の表面のインクをふき取り、自然乾燥させた。その後、各版の任意の10箇所を選び、その表面をルーペで観察し、次の基準で評価した。
優(◎):5%未満でメッシュ上の金属の剥離が見られる。
良(○):5%以上15%未満でメッシュ上の金属の剥離が見られる。
可(△):15%以上35%未満メッシュ上の金属の剥離が見られる。
不可(×):35%以上メッシュ上の金属の剥離が見られる。
【0082】
結果を表1(金属密着性)に示す。
[スクリーン印刷用紗の生産性]
スクリーン印刷用紗の生産性を、次の基準により、優、良、可、及び不可の4段階で評価した。
【0083】
<スクリーン印刷用紗の生産性の評価基準>
優(◎):紗状織物Fを高速で搬送できる。
良(○):紗状織物Fを比較的高速で搬送できる。
可(△):紗状織物Fを低速で搬送しなければならない。
【0084】
ただし、帯電防止処理を施さない実施例1では紗状織物Fを装置にセットする際、静電気の影響で作業に時間を要したので、生産性を可(△)であると評価した。
【0085】
また、両面に成膜を行う比較例3では、成膜前の真空排気作業を2回行う必要があり、甚だ生産性が悪いので、生産性を不可(×)であると評価した。
【0086】
また、スパッタリング加工を施さない比較例1は、生産性を優(◎)であると評価した。
【0087】
結果を表1(生産性)に示す。
[総合評価]
以上の評価に基づいて、次のように総合評価した。
【0088】
<総合評価の評価基準>
優(◎)を3点、良(○)を2点、可(△)を0点として各評価の合計点を算出した。
優(◎):10点以上
良(○):5〜9点
可(△):5点未満
ただし、各評価において一つでも不可(×)があれば総合評価は不可(×)であると評価した。
【0089】
結果を表1(総合)に示す。
【0090】
以上の評価結果より、本発明のスクリーン印刷用紗は、低コストで製造でき、かつ高精度の印刷が可能であり、及び耐久性が高いという優れた特性を示すことがわかる。
【0091】
【表1】