特許第6132405号(P6132405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132405
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ガス流処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20170515BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20170515BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20170515BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20170515BHJP
   H05H 1/34 20060101ALI20170515BHJP
   B01D 53/46 20060101ALI20170515BHJP
   B01D 53/66 20060101ALI20170515BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20170515BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20170515BHJP
   B01D 53/58 20060101ALI20170515BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20170515BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C23C16/44 JZAB
   H01L21/205
   H01L21/31 F
   H05H1/26
   H05H1/34
   B01D53/46
   B01D53/66
   B01D53/72
   B01D53/56 400
   B01D53/58
   B01J19/08 E
   B08B1/00
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-525484(P2014-525484)
(86)(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公表番号】特表2014-529680(P2014-529680A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】GB2012051632
(87)【国際公開番号】WO2013024249
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】1114174.4
(32)【優先日】2011年8月17日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】クレメンツ クリストファー ジェイムズ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロニン セルゲイ アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ビッダー ジョン レスリー
(72)【発明者】
【氏名】マクグラス ダニエル
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0274592(US,A1)
【文献】 再公表特許第2008/093442(JP,A1)
【文献】 特開2011−038666(JP,A)
【文献】 特開2007−263554(JP,A)
【文献】 特開2003−299942(JP,A)
【文献】 特開昭60−128266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
B01D 53/46
B01D 53/56
B01D 53/58
B01D 53/66
B01D 53/72
B01J 19/08
B08B 1/00
H01L 21/205
H01L 21/31
H05H 1/26
H05H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCプラズマトーチプラズマ発生器を有し、該プラズマ発生器が、この下流側のリアクタチャンバ内のガス流を処理するプラズマを発生するガス流処理装置において、プラズマ発生器とリアクタチャンバとの間の領域が、固体堆積物が蓄積し易い少なくとも1つの表面を有し、スクレーパが、前記少なくとも1つの表面から引っ込められた第1位置から、蓄積した固体堆積物を除去すべく前記少なくとも1つの表面を掻き取る第2位置まで移動できるように嵌合されており、前記スクレーパは貫通ボアを備え、該貫通ボアは、スクレーパの第2位置において電極と整合して、プラズマフレアがボアを通り得るようにし、前記スクレーパは、第2位置において、ガス流がボアを通り得るようにする形状を有しており、前記スクレーパは、ガス流がボアを通るように指向させるため、ガス流の流れ方向に対して傾斜した表面を有していることを特徴とするガス流処理装置。
【請求項2】
前記スクレーパは、前記領域の複数の表面を掻き取って、蓄積した固体堆積物を除去するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のガス流処理装置。
【請求項3】
前記プラズマ発生器は、源ガスを付勢してプラズマを発生させる少なくとも1つの電極を有し、スクレーパは、電極の表面を掻き取って、表面上に蓄積した固体堆積物を除去するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のガス流処理装置。
【請求項4】
前記スクレーパの前記移動を付勢するアクチュエータを更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のガス流処理装置。
【請求項5】
前記電極の表面上の固体堆積物の蓄積に基づいて、アクチュエータを選択的に付勢させるように構成されたコントローラを更に有することを特徴とする請求項4記載のガス流処理装置。
【請求項6】
前記コントローラは、装置の使用中にアクチュエータを所定間隔で付勢するように構成されていることを特徴とする請求項5記載のガス流処理装置。
【請求項7】
前記リアクタチャンバの内面上に液体堰を確立するための手段を更に有し、該手段は、液体を前記内面上に指向させるためのフローディレクタを備え、該フローディレクタは、液体堰を電極から分離させる環状表面を備え、第1位置から第2位置へのスクレーパの移動により環状表面を掻き取るように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載のガス流処理装置。
【請求項8】
前記環状表面を通る開口は、スクレーパが第2位置にあるときに、スクレーパの貫通ボアとほぼ整合することを特徴とする請求項記載のガス流処理装置。
【請求項9】
前記スクレーパは、ニッケルを含む材料から作られていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載のガス流処理装置。
【請求項10】
前記プラズマ発生器は、プラズマフレアを形成すべく付勢される源ガスを装置内に導入する第2入口を備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載のガス流処理装置。
【請求項11】
ガス流の処理を改善すべく、装置内に試薬を導入する試薬入口を更に有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のガス流処理装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のガス流処理装置に使用するように構成されたことを特徴とするスクレーパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流処理装置に関する。本発明は、半導体またはフラットパネルディスプレイ産業で使用されるプロセスチャンバからの排出ガス流の処理に特別な用途を有する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造の第1段階は、蒸気前駆体の化学反応により半導体基板上に薄膜を形成することである。基板上に薄膜を蒸着させる1つの既知の技術は化学蒸着(chemical vapor deposition:CVD)であり、通常、プラズマ増強化学蒸着である。この技術では、プロセスガスは、基板を収容するプロセスチャンバに供給されかつ基板の表面上に薄膜を形成すべく反応する。薄膜を形成すべくプロセスチャンバに供給されるガスの例として、窒化ケイ素膜を形成するためのシランおよびアンモニア;SiON膜を形成するためのシラン、アンモニアおよび亜酸化窒素;酸化ケイ素膜を形成するためのTEOS、および酸素およびオゾンの一方;および酸化アルミニウム膜を形成するためのAl(CH)および水蒸気があるが、これらに限定されるものではない。
【0003】
プロセスチャンバから排出されるガスは、プラズマ除去装置(plasma abatement device)を用いて高効率かつ比較的低コストで処理できる。プラズマ除去法では、排出ガス流は、熱大気圧延プラズマ放電(これは、主として熱源となる)中に流入される。プラズマは、ガス流を反応性種に解離し、これにより、酸素または水素と結合して比較的安定した副生物を生成する。
【0004】
固体副生物(例えば、シラン酸化またはTEOS酸化時のシリカ)を生成するガスのプラズマ除去中、プラズマフレアの下流側に位置する反応チャンバ内に閉塞問題が生じる。チャンバは、直径約30mm〜50mm、長さ90mm〜150mmのパイプからなる。反応チャンバの目的は、限定体積内に高温ガスを収容して、除去反応を生じさせることにある。しかしながら、チャンバは、例えばシラン、TEOSまたは有機シランを除去するときに、その壁に付着した例えばシリカ粒子により閉塞されてしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャンバの壁への粒子の付着を防止する1つの方法は、チャンバの表面上に水堰を形成することにある。しかしながら、それにも係わらず、電極(アノード)と反応チャンバとの間にはプラズマリアクタの「乾燥」領域があり、電極自体は更なるクリーニングを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、源ガスを装置内に導入する第1入口と、プラズマを発生させるべく源ガスを付勢する少なくとも1つの電極と、発生されたプラズマ中にガス流を指向させる第2入口と、電極から引っ込められた第1位置から、電極の表面上に蓄積された固体堆積物を除去すべく電極の表面を掻き取る第2位置まで移動できるように嵌合されたスクレーパとを有するガス流処理装置を提供する。
【0007】
本発明を良く理解できるようにするため、単なる例示として示す本発明の幾つかの実施形態を、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ガス流を処理する本発明の装置のスクレーパが第1位置にあるところを概略的に示す図面である。
図2図1の装置のスクレーパが第2位置にあるところを概略的に示す図面である。
図3】変更されたスクレーパを示す断面図である。
図4図3のスクレーパを示す斜視図である。
図5】ガス流を処理する変更された装置のスクレーパが第1位置にあるところを示す概略図である。
図6】本発明の他の実施形態を示す概略図である。
図7】他のスクレーパを示す2つの斜視図である。
図8】処理装置のプラズマ発生器をより詳細に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および図2を参照すると、ガス流12を処理する装置10が示されている。装置10は、プラズマフレア16を発生するプラズマ発生器14を有している。図1および図2には、プラズマ発生器14が概略的に示されている。プラズマ発生器14は、図7に関連してより詳細に後述する。プラズマ発生器14は、源ガスを付勢して高電圧を印加することによりプラズマを発生させる電極22を有する。入口24は、ガス流12を装置10内に導き、かつ該ガス流12を、発生されたプラズマ中に指向させる。スクレーパ26は、電極22から引っ込められた第1位置(図1)から、電極22の表面28上に蓄積した固体堆積物を除去すべく電極22の表面28を掻き取る第2位置(図2)まで往復動できるように嵌合される。後述の本発明の他の実施形態では、スクレーパ26は、この代わりにまたはこれに加えて、プラズマ発生器14の他の乾燥表面またはプラズマ発生器14の下流側の処理装置10の表面を掻き取るように配置される。
【0010】
プラズマ発生器14は、プラズマフレアを形成すべく付勢される源ガスを装置10内に導入するための第2入口(図示せず)を有している。装置10には、ガス流12の処理を改善する試薬(reagent)を装置10内に導入するための試薬入口(図示せず)を設けるのが好ましい。
【0011】
装置10は、電極22の下流側にリアクタチャンバ30を有し、該リアクタチャンバ30内でガス流12が処理される。固体堆積物は、或るプロセスガス、例えばシランを除去するときのシリカ粒子、TEOSまたは有機シランを処理するときに発生され、かつ堆積物はリアクタチャンバの壁に付着するので、壁上には水堰が形成される。水32が、水入口34を通ってリアクタチャンバ30内に入り、チャンバ30の壁上には水層36が形成される。水層36は、粒子が付着することを防止し、もしも付着した場合には粒子を除去する。殆どのガスはリアクタチャンバ30内で処理されるが、幾分かの処理はリアクタチャンバの上流側で行われ、このため粒子が電極22の表面28上に堆積してしまう。
【0012】
装置10内で発生されるプラズマは、一般に、1000℃より高温である。図7を参照してより詳細に説明するように、電極はノズルまたは開口を有し、該ノズルまたは開口を通ってプラズマがリアクタチャンバ内に導かれる。ノズル領域内での堆積物は、プラズマの高温により除去されるであろう。しかしながら、電極の比較的温度の低い領域またはプラズマ発生器はノズルを包囲し、特に電極が別々に冷却される場合には、一般的には高温プラズマに直接露出されることはない。したがって、プラズマ発生器の温度の低い領域に堆積物が蓄積し、これにより装置の適正機能が損なわれる。温度の低い領域が水フラッシングを受けると必ず損傷が生じ、したがって、プラズマ発生器の温度が低く乾燥した領域にはスクレーパが配置され、該領域から堆積物を掻き取る。
【0013】
アクチュエータ38は、スクレーパ26を第1位置と第2位置との間で往復動させる。この例では、アクチュエータ38は、加圧流体により作動される。流体は液体とすることができ、この場合には油圧アクチュエータとなり、或いは液体がガスの場合には空気圧アクチュエータとなる。便宜上、以下油圧アクチュエータと呼ぶことにするが、例えば、アクチュエータにより発生すべき力の必要性に基づいて、空気圧アクチュエータと互換性をもつものと理解されたい。
【0014】
油圧アクチュエータ38は、スクレーパ26に連結されたピストン42を受入れる油圧シリンダ40を有している。しかしながら、他の装置、例えば電気モータを使用することもできる。例えばプログラム可能な論理コントローラ(programmable logic control:PCL)44は、電極22の表面28上の固体堆積物の蓄積に基づいて、アクチュエータ38を選択的に付勢するように構成されている。例えば、コントローラ44は、特定プロセスガスの処理中に堆積物が電極22上に蓄積したことを如何に迅速に確認したかに基づいて、所定間隔、例えば30秒毎または5分毎に掻き取りを行わせる。或いは、コントローラに接続されたプローブ(図示せず)を設けて、堆積物の蓄積を検出し、選択された量を超えた蓄積を検出したときに、コントローラがアクチュエータを付勢するように構成できる。
【0015】
変更例では、スクレーパ26は、例えばこれにボア(このボアを通ってフレアが通ることができる)を設けるか、ほぼC型のスクレーパを設けて、C型の形状により形成された空間をフレアが通り得るようにして、スクレーパ26が第2位置にあってもプラズマフレアが消止されないように構成できる。これらのスクレーパ形態により、スクレーパの材料がプラズマの高温に直接露出される時間が短縮される。第2位置にあるとき、スクレーパの材料がプラズマに直接露出されることはなく、第1位置と第2位置との間を移動中に露出されるに過ぎない。更に、スクレーパが第2位置に突然停止するようなことがあっても、プラズマは依然としてリアクタチャンバ内に導かれ、小さい損傷がスクレーパに生じるに過ぎない。
【0016】
これに代えて、好ましくはこれに加えて、スクレーパ26は、第2位置にあるときに、装置10内へのプロセスガスの流入を大きく損なうことがないように構成されている。この点に関し、スクレーパには、第2位置にあるときに、プロセスガスがスクレーパを通ってまたはスクレーパの周囲を通って導かれるようにする手段を設けるのが好ましい。
【0017】
図3および図4には、スクレーパが第2位置にあるときでも、プラズマおよびプロセスガスが連続的に流れることができるように構成されたスクレーパの一例を示すものである。図3および図4を説明する前に、図1および図2では、プロセスガス12が、スクレーパ26の往復動方向に対してほぼ平行な方向で装置10内に流入することに留意されたい。しかしながら、好ましくかつより一般的な構成では、図4に示すように、プロセスガスの入口は、プロセスガス12を往復動方向に対してほぼ垂直な方向で装置内に導入できるように構成される。
【0018】
ここで図3および図4をより詳細に説明すると、スクレーパ50は貫通ボア46を有し、該ボアはスクレーパ50の第2位置において電極22と整合し、プラズマフレア16がボア46を通り得るようにしている。図3には、スクレーパ50が第2位置にあり、貫通ボア46が破線で示されている。この状態では、スクレーパ50は、第2位置にあるときでも電極22の少なくとも一部を覆うに過ぎず、プラズマを連続的に発生させることができる。当業者ならば、他の形状のスクレーパ、例えば前述のC型スクレーパもプラズマを連続的に発生させることができることは明白であろう。
【0019】
スクレーパ50はまた、第2位置にあるときに、プロセスガス流12が矢印12で示すようにボア46を通ることができる形状を有している。スクレーパ50は、ガス流がボア46を通るように指向させるため、ガス流の流れ方向に対して傾斜した表面48(図3に破線で示す)を有している。したがって、スクレーパ50が第2位置にあるときでも、ガス流の流れが大きく制限されることはなく、このため、処理装置10の上流側の背圧が増大することはない。この構成は、スクレーパが不意に第2位置に停止してしまうような場合に特に有効である。また、スクレーパが第2位置にあるときでも、ガス流の連続的プラズマ処理を行うことができる。
【0020】
図4には、ピストン42の位置が破線で示されている。ピストン42はテーパ状の閉ボア58と係合し、好ましくは、ピストン42を所定位置に固定するクランピングスクリュウを受入れる他のボア60を有している。スクレーパ50は双頭矢印で示す方向に往復動するように配置されていることは理解されよう。この場合、ガス流12は、往復動方向に対してほぼ垂直な方向で装置10内に流入する。第1位置から第2位置への移動中、スクレーパ50の表面52は電極22の表面28に対してほぼ平行である。この移動の少なくとも一部の間で、表面52が表面28と接触するのが好ましい。移動の最終部分の間、反対側表面53は、堰64(図5)の上面と接触するのが好ましい。図4に示すように湾曲している先導縁54が、電極表面28から固体堆積物を掻き取る。先導縁は、プラズマ発生器14に強固に付着した堆積物中にスクレーパが一層容易に食い込むことができるように、鋭い点または線にテーパさせることができる。
【0021】
図5には、変更された処理装置が示されている。この装置では、リアクタチャンバ30の壁上に堰を確立しかつリアクタチャンバ30をプラズマ発生器14から分離して、水しぶきが電極22上にかかるのを防止する堰ガイド62が示されている。この堰ガイド62は、本特許出願と同じ優先日を有する本件出願人による別の特許出願の主題である。
【0022】
堰ガイド62の上面64は乾燥しており、水が流れることはない。また、上面64がプラズマフレア16と直接接触することはない。したがって、上面64は堆積物が蓄積し易く、このため、この装置のスクレーパ26は、第1位置と第2位置との間を往復動する間に上面64を掻き取るように配置されている。すなわち、スクレーパ26の第1先導縁すなわち上方の先導縁66は、電極2から堆積物を掻き取り、第2先導縁すなわち下方の先導縁68は、堰ガイド62の上面64から堆積物を掻き取る。
【0023】
図6には、本発明の他の実施形態が概略的に示されている。プラズマ発生器14とリアクタチャンバ30との間には領域70が配置されており、該領域70の少なくとも1つの表面は固体堆積物が蓄積し易い。スクレーパ72は、蓄積された固体堆積物を除去すべく、少なくとも1つの表面から引っ込められた第1位置から、表面を掻き取る第2位置まで往復動(双頭矢印で示す)できるように嵌合されている。図6に示す例では、固体堆積物が蓄積することがある4つの表面74、76、78、80が示されている。表面174はプラズマ発生器14の電極22の表面であると考えることができ、表面78は堰ガイド62の表面であると考えることができる。表面76、80は、処理装置10のハウジングの一部を形成すると考えることができる。一般に、これらの表面がプラズマフレア16に露出されることはなく、比較的温度が低い。また、液体による洗浄は損傷を引き起こすことがあり実用的ではない。図示のように、スクレーパ72は、複数の表面、好ましくは全ての表面を掻き取って、領域70から堆積物を除去するように構成される。例えば、スクレーパ72の表面82は表面74を掻き取る形状、表面84は表面76を掻き取る形状、以下、他の表面も同様な関係の形状を有する。図示のように、スクレーパ72は全体として直方体の形状を有するが、領域70の種々の表面を補完できる他の形状も好ましい。
【0024】
図7には他のスクレーパ90が示されている。図7には、スクレーパ90が2つの斜視図で示されており、スクレーパが処理装置に組込まれたときの往復動方向が双頭矢印で示されている。スクレーパ90は、上方セクション92と下方セクション94とからなる。上方セクション92は右向き爪形状を有し、下方セクション94は左向き爪形状を有している。両爪は協働して、スクレーパ90が第2位置にあるときの貫通ボア96を形成している。上方爪には開口98が形成され、該開口98は、例えば処理用ガス流を貫通ボア96内に導入できる。下方爪には開口100が形成され、該開口100は、他のガス、例えば装置のパージングのためのパージガスを貫通ボア96内に導入できる。上方爪は、ほぼ移動方向に延びている第1部分104と、移動方向に対して横方向に延びている第2部分104とを有し、該第2部分104には、例えば電極表面を掻き取る先導縁106が形成されている。下方爪は、ほぼ移動方向に延びている第1部分108と、移動方向に対して横方向に延びている第2部分110とを有し、該第2部分110には、例えば堰ガイド表面を掻き取る先導縁112が形成されている。
【0025】
プラズマ発生器14は、一例では、図8に示すDCプラズマトーチで形成できる。トーチは、カソード装置1およびアノード装置2を有している。カソード装置1は、実質的に円筒状の本体1aおよびボタン型カソード1bからなる。冷却型(例えば水冷型)カソード本体1aは、高い熱伝導率を有する導電率性金属で形成され、ボタン型カソード1bの熱電子材料以外の機能を有しており、例えば銅のカソード本体およびハフニウムのボタン型カソードを使用するのが一般的である。アノード装置2は、通常銅で形成される中空本体2aを有し、該中空本体2aは更に、アノードのど部2bと、該のど部2bに向かって収斂し、かつのど部2bに終端している截頭円錐状内面部2cとを有している。組立てられたとき、カソード装置1はその少なくとも一部が銅製アノード2内にかつ同心状に配置されている。アノード2とカソード1との間にはギャップを設けなくてはならない。これにより、アノード装置2の外面とカソード装置1の内面との間に導管3が形成され、該導管3を通って、プラズマを発生させる源ガスが搬送される。カソード1は円錐状部分2c内に終端し、該円錐状部分2c内にプラズマ発生領域4を形成する。図7に示したプラズマ発生器の電極の掻き取り面は、表面28である。
【0026】
本願で説明したスクレーパは、フッ素のようなハロゲンの存在下で有利な耐食性および優れた機械的強度を有している。また、スクレーパは、プラズマフレアとの短時間相互作用の間の局部的加熱(したがって、破壊)を最小にすべく、高い熱伝導率を有することが好ましい。ニッケル201合金の特性は、79.3W/mCの熱伝導率(これは、例えばステンレス鋼合金の熱伝導率の数倍高い)を有するスクレーパを作るのに適した材料である。ニッケル201はまた、装置内に存在することがある腐食性ガスに対する耐性および優れた機械的強度を有している。
【符号の説明】
【0027】
1 カソード装置
2 アノード装置
2c 截頭円錐状内面部
10 ガス流処理装置
14 プラズマ発生器
16 プラズマフレア
22 電極
26、50、72、90 スクレーパ
46、96 貫通ボア
62 堰ガイド
92 上方セクション
94 下方セクション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8