特許第6132406号(P6132406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6132406-多層シート 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132406
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】多層シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 18/00 20060101AFI20170515BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B32B18/00 Z
   B32B29/00
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-547422(P2014-547422)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-500158(P2015-500158A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】US2012069496
(87)【国際公開番号】WO2013090564
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/570,544
(32)【優先日】2011年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100179925
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 真紀
(72)【発明者】
【氏名】カウカ ダリウス ウラジミール
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−293012(JP,A)
【文献】 特開昭58−144196(JP,A)
【文献】 特表2015−518437(JP,A)
【文献】 特表2015−520685(JP,A)
【文献】 特表2015−520686(JP,A)
【文献】 特表2015−516903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B64C 1/40
D21H 1/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一および第二外面を有する剥離紙と、前記剥離紙の少なくとも一方の外面に隣接した無機耐火層とを含む多層シートであって、前記耐火層が15〜50gsmの乾燥単位面積当たり重量と、10重量%以下の残留含水率とを有し、前記剥離紙は、
(i)セルロース繊維と綿繊維のブレンドを含み、
(ii)親水性であり、
(iii)第一の方向において少なくとも5ポンド/インチ、また第二の方向において少なくとも2ポンド/インチの湿潤引張強さを有し、前記第二の方向が前記第一の方向に対して直角であり、
(iv)第一の方向において少なくとも10ポンド/インチ、また第二の方向において少なくとも5ポンド/インチの乾燥引張強さを有し、前記第二の方向が前記第一の方向に対して直角であり、
(v)前記少なくとも一方の外面で150シェフィールドユニット以下の表面平滑度を有し、
(vi)前記少なくとも一方の外面からの表面剥離値が0.25〜1.5ポンド/インチであり、
(vii)5〜12milの厚さを有し、
(viii)0.9〜1.1g/ccの密度を有し、かつ
(ix)1200ガーレー通気抵抗度(秒/100cc、20オンスシリンダー)以下の通気度を有する、多層シート。
【請求項2】
前記無機耐火層がバーミキュライトを含む、請求項1に記載の多層シート。
【請求項3】
前記剥離紙が、最高で5重量%までの寸法安定性増進添加物をさらに含む、請求項1に記載の多層シート。
【請求項4】
前記剥離紙が、150℃において少なくとも10分間、熱的に安定である、請求項1に記載の多層シート。
【請求項5】
前記耐火層が、20〜35gsmの乾燥単位面積当たり重量を有する、請求項1に記載の多層シート。
【請求項6】
前記耐火層が、3重量%以下の残留含水率を有する、請求項1に記載の多層シート。
【請求項7】
前記剥離紙が、第一の方向において60〜90ポンド/インチ、また第二の方向において20〜40ポンド/インチの乾燥引張強さを有し、前記第二の方向が前記第一の方向に対して直角である、請求項1に記載の多層シート。
【請求項8】
前記剥離紙が、少なくとも一方の外面で60〜80シェフィールドユニットの表面平滑度を有する、請求項1に記載の多層シート。
【請求項9】
前記剥離紙が9〜11milの厚さを有する、請求項1に記載の多層シート。
【請求項10】
前記剥離紙が、300〜700ガーレー通気抵抗度(秒/100cc、20オンスシリンダー)の通気度を有する、請求項1に記載の多層シート。
【請求項11】
前記耐火層が陽イオンをさらに含む、請求項2に記載の多層シート
【請求項12】
前記寸法安定性増進添加物がマイクロガラス、繊維ガラス、またはポリエチレンである、請求項3に記載の多層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体層および無機耐火層を含む多層シートに関する。この担体層は紙である。
【背景技術】
【0002】
Fayらの米国特許第6,322,022号明細書は輸送手段、特に航空機用の耐溶落ちシステムを開示している。
【0003】
TomkinsおよびVogel−Martinの米国特許第6,670,291号明細書は、火炎バリア用途の積層シート材料について記載している。
【0004】
Goughらの米国特許第5,667,886号明細書は、基材層、塗膜層、および可撓性接着剤層を有する複合シートについて記載している。その基材層は、好ましくはポリエステルフィルムである。塗膜層は、鉱物、好ましくはバーミキュライトを含有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安全に取り扱うことができ、続いて航空機構造体用の熱および音響ブランケットにおける火炎バリア構成要素として使用される多層複合材に加工することが可能な形態の薄い無機耐火層を提供する方法に対する必要性が引き続き存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第一および第二外面を有する剥離紙と、この剥離紙の少なくとも一方の面に隣接した無機耐火層とを含み、その耐火層が15〜50gsmの乾燥単位面積当たり重量と、10重量%以下の残留含水率とを有し、その剥離紙は、
(i)セルロースと綿繊維のブレンドを含み、
(ii)親水性であり、
(iii)第一の方向において少なくとも5ポンド/インチ、また第二の方向において少なくとも2ポンド/インチの湿潤引張強さを有し、この第二の方向が第一の方向に対して直角であり、
(iv)第一の方向において少なくとも10ポンド/インチ、また第二の方向において少なくとも5ポンド/インチの乾燥引張強さを有し、この第二の方向が第一の方向に対して直角であり、
(v)少なくとも一方の外面で150シェフィールドユニット以下の表面平滑度を有し、
(vi)少なくとも一方の外面からの表面剥離値が0.25〜1.5ポンド/インチであり、
(vii)5〜12milの厚さを有し、
(viii)0.9〜1.1g/ccの密度を有し、かつ
(ix)1200ガーレー通気抵抗度(秒/100cc、20オンスシリンダー)以下の通気度を有することを含む多層シートに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の多層シートを通る断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、担体または基材層11と、その担体層上に付着した無機耐火層12とを含む多層シート10を通る断面を示す。好ましい担体材料は剥離紙である。
【0009】
剥離紙
剥離紙は、図1中の13および14でそれぞれ示される第一および第二外面を有する。剥離紙は、木材パルプ(セルロース)と長綿繊維のブレンドを含み、幾つかの実施形態ではこのブレンドは、セルロースを40〜60重量%含む。幾つかの他の実施形態ではブレンドは、セルロースを45〜55重量%含む。
【0010】
この紙は、第一の方向において少なくとも5ポンド/インチ、また第二の方向において少なくとも2ポンド/インチの湿潤引張強さを有し、この第二の方向は第一の方向に対して直角である。好ましい実施形態ではこの第一の方向は、紙の平面内の長さ方向、すなわち紙のロールが作られた方向である。これはまた、縦方向としても知られる。第二の方向は、横方向として知られることもある。湿潤引張強さとは、本発明者等は、水を飽和させた後の紙の引張強さを意味する。湿潤引張強さが第一の方向で5ポンド/インチ未満である場合、紙にその重量が載り、紙に張力がかかることに起因して塗工工程の間に頻繁にシートが切断する高い危険性がある。
【0011】
この紙は、第一の方向において少なくとも10ポンド/インチ、また第二の方向において少なくとも5ポンド/インチの乾燥引張強さを有し、この第二の方向は第一の方向に対して直角である。乾燥引張強さとは、本発明者等は、周囲温度および湿度、一般には相対湿度48〜52%および22〜24℃でコンディショニングされた紙の引張強さを意味する。TAPPI T−402 sp−08は、紙、厚紙、およびパルプ製品に対する周囲条件を規定した規格の例である。
【0012】
第一の方向における少なくとも10ポンド/インチの乾燥引張強さは、塗布されたウェブの適切な取扱いを後続の工程段階を通して保証するために、具体的にはロールのたるみおよびテレスコーピング現象を防ぐように巻き取りの間の堅いロール形成を保証するために必要である。
【0013】
幾つかの実施形態では剥離紙は、第一の方向において60〜90ポンド/インチ、また第二の方向において20〜40ポンド/インチの乾燥引張強さを有する。
【0014】
この紙は、耐火層と接している外面で150シェフィールドユニット以下の表面平滑度を有する。平滑度は、紙の表面の凹凸に関係している。これは、粗さ、水平度、および圧縮性を検討する試験条件下での表面の平坦度である。この試験は、紙の平滑度または粗さの間接的な尺度である。シェフィールド試験法は、試験片(下側を平坦なガラスによって裏打ちされた)と、上から試料へ押しつけられる2本の加圧された同心環状ランドとの間の空気流の計測値である。そのような手順はTAPPI T−538 om−08に記載されている。幾つかの実施形態では剥離紙は、少なくとも一方の外面で60〜80シェフィールドユニットの表面平滑度を有する。
【0015】
この紙は、耐火層と接している外面で0.25〜1.5ポンド/インチの表面剥離値を有する。剥離値が0.25ポンド/インチ未満の場合、その無機耐火層が剥離紙から剥がれ落ちる可能性があり、それは耐火層の切断の危険性を有する。表面剥離値が1.5ポンド/インチを超える場合、後続の工程段階の間に耐火層を剥離紙から剥がすのが困難になることになる。
【0016】
この紙は親水性である。この特徴は乾燥工程を助ける。耐火性塗料分散液由来の水の大部分がその剥離紙によって吸収されるので、これは無機耐火層のより効率的な乾燥および形成を可能にするだけでなく、耐火層中のブリスターなどの乾燥不良を防ぐことを可能にする。
【0017】
この紙は、5〜12milの厚さおよび0.9〜1.1g/ccの密度を有する。0.9g/cc未満の紙密度は、望ましくない特徴、例えば粗い毛羽だった表面を有する弱いふわふわした紙を生じさせることになる。1.1g/ccを超える紙密度は、紙の通気度を変え、塗布された紙の乾燥工程を遅らせることになる。より高密度の紙はまた、より平坦でない表面を有する起伏のあるシートを生じさせる可能性がある。5mil未満の紙厚は、望ましくない特徴、例えば、特に水を飽和させた場合、より弱くかつより寸法安定性の劣るシートを生じさせることになる。12milを超える紙厚は、紙の通気度を変え、塗布された紙の乾燥工程を遅らせることになる。より厚い紙はまた、過度な重量および剛性のせいで工程全体に影響を及ぼす可能性がある。幾つかの実施形態では紙は9〜11milの厚さを有する。
【0018】
この紙は、1200ガーレー通気抵抗度(秒/100cc、20オンスシリンダー)以下の通気度を有する。1200ガーレー通気抵抗度を超える通気度は、塗布された紙の乾燥工程に悪影響を与えることになる。
【0019】
幾つかの実施形態では紙は、300〜700ガーレー通気抵抗度(秒/100cc、20オンスシリンダー)の通気度を有する。
【0020】
剥離紙はさらに、最高で5重量%までの寸法安定性増進添加物を含むことができる。好適な添加物には、マイクロガラス、繊維ガラス、無機繊維、および他の湿潤高強度繊維が挙げられる。湿潤高強度繊維は、湿潤時にその強度および/または寸法特性を顕著には変えない、したがって水に曝された場合に湿潤強度を含む基材の総合的強度および平坦度の損失を引き起こさないポリエチレンテレフタラート(PET)などの親水性繊維である。
【0021】
好ましくは剥離紙は、150℃の温度において少なくとも10分間、熱的に安定である。すなわちこの紙は150℃の温度に少なくとも10分間曝された場合に寸法を変えないことになる。
【0022】
無機耐火層
無機耐火層は、剥離紙の少なくとも一方の外面に隣接する。耐火層は、15〜50gsmの乾燥単位面積当たり重量と、10重量%以下の残留含水率とを有する。幾つかの実施形態では耐火層は、20〜35gsmの乾燥単位面積当たり重量と、3重量%以下の残留含水率とを有する。この層を図1に12として示す。
【0023】
耐火層は小板を含む。好ましくは層の少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、また最も好ましくは少なくとも95%が小板を含む。幾つかの実施形態では小板は、層の100%を構成する。耐火層は、製造の間の小板分散液の不完全な乾燥に起因する多少の残留分散剤を含ことがある。
【0024】
耐火層は、7.0〜76μm、より好ましくは7.0〜50μmの厚さを有する。好ましくはこの層は、UL 94難燃性分類(flame classification)のV−0を有する。隣接する小板が重なり合うこの耐火層の機能は、火炎および高温ガス不透過性バリアを提供することである。無機小板はクレー、例えばモンモリロナイト、バーミキュライト、雲母、タルク、およびこれらの組合せであることができる。好ましくはこの無機酸化物の小板は、約600℃、より好ましくは約800℃、最も好ましくは約1000℃において安定(すなわち、燃焼、溶融、または分解しない)である。バーミキュライトは好ましい小板物質である。バーミキュライトは、多層結晶として天然に見出される水和アルミノケイ酸マグネシウムの雲母状鉱物である。バーミキュライトは一般に、理論上の酸化物を基準にして(乾燥)重量で約38〜46%のSiO2、約16〜24%のMgO、約11〜16%のAl23、約8〜13%のFe23を含み、残りは一般にK、Ca、Ti、Mn、Cr、Na、およびBaの酸化物である。「膨張」バーミキュライトとは、化学的にまたは熱で処理して結晶の層を膨張させ、分離させ、高アスペクト比のバーミキュライト小板を生じさせたバーミキュライトを指す。好適なバーミキュライト材料は、W.R.Grace of Cambridge,MAから商用名MicroLite 963およびMicroLite HTS−XEで入手できる。
【0025】
個々の小板の厚さは、一般に約5Å〜約5,000Å、より好ましくは約10Å〜約4,200Åの範囲にある。小板の最大幅の平均値は、一般に約10,000Å〜約30,000Åの範囲にある。個々の小板のアスペクト比は、一般に100〜20,000の範囲にある。
【0026】
好ましい実施形態では耐火層は、10〜50℃の温度で陽イオン濃度0.25〜2Nの陽イオン濃厚水溶液と接触することに起因する陽イオンをさらに含む。陽イオン性溶液との接触は、耐火層を組み立てて複合積層板にする前に行われる。この陽イオン処理は、流体に曝された場合に耐火層に高い安定性を与える。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態では無機小板層は、その層に追加の機械的強度を与えるために、単層の小板上に敷かれるか、または2層の小板の間に置かれる軽量の目の粗い織物スクリムによって補強される。スクリムは、天然繊維、有機繊維、または無機繊維から作ることができ、ガラス、綿、ナイロン、またはポリエステルが典型的な例である。ガラス繊維スクリムが、特に好ましい。スクリムは、織り構造でも編み構造でもよく、40g/m2以下の一般的な単位面積当たり重量を有する。
【0028】
幾つかの実施形態では耐火層は、後続の加工の間の接着剤層との結合を高めるために穴を開けられる。穿孔の程度は実験によって決められる。火炎バリア特性を損なうことを防ぐために個々の穿孔は、最大寸法で2mmを超えるべきではない。好ましい実施形態では個々の穿孔は、少なくとも10mm離れた一定の間隔が置かれるべきである。穿孔の形状は重要ではない。好適な穿孔には、円形、正方形、三角形、楕円形、および山形が挙げられる。
【0029】
多層シートの使用法
この多層シートの耐火層は、剥離紙から取り外し、断熱および音響ブランケット用の火炎バリアにおける構成要素として使用することができる。そのようなブランケットの例は、米国特許出願公開第2011/0094826号明細書に記載されている。
【0030】
試験方法
剥離紙の湿潤引張強さは、TAPPI T456 om−10 Tensile Breaking Strength of Water−saturated Paper and Paperboard(“Wet Tensile Strength”)に従って測定された。
【0031】
剥離紙の乾燥引張強さは、TAPPI T494 om−06 Tensile Properties of Paper and Paperboard(Using Constant Rate of Elongation Apparatus)に従って測定された。
【0032】
剥離紙の表面平滑度は、TAPPI T538 om−08 Roughness of Paper and Paperboard(Sheffield Method)に従って測定された。
【0033】
剥離紙の表面剥離値は、ASTM D1876−08 Standard Test Method for Peel Resistance of Adhesives(T−Peel Test)に従って測定された。
【0034】
剥離紙の厚さは、TAPPI T411 om−10 Thickness(Caliper) of Paper,Paperboard,and Combined Boardにより測定された。
【0035】
剥離紙の密度は、剥離紙の厚さおよび坪量の測定値に基づく計算値である。
【0036】
剥離紙の通気度は、TAPPI T460 om−11 Air Resistance of Paper(Gurley Method,sec/100cc、20オンスシリンダー)に従って測定された。
【0037】
剥離紙の寸法安定性は、片側だけを湿潤に曝した場合に少なくとも2分間平坦に保つ(すなわち、水分に関係する皺または襞がない)能力に基づいて評価された。
【0038】
耐火層の乾燥単位面積当たり重量は、ISO 536(1995) Determination of Grammage、およびTAPPI T 410 Grammage of Paper and Paperboard(Weight per Unit Area)に従って測定された。
【0039】
耐火層の含水率は、ISO 287(1985) Determination of Moisture Content−Oven Drying Methodに従って測定された。
【実施例】
【0040】
下記の実施例では別段の指定がない限りすべての部数および割合は重量単位であり、またすべての度数は摂氏である。本発明に従って調製される実施例は数値で表示される。対照または比較例は文字で表示される。
【0041】
使用されるバーミキュライトは、供給されたままの7.5%の固形分を有するMicrolite(登録商標)963の水性分散液のハイソリッドバージョンであった。この分散液は、W.R.Grace and Co.,Cambridge,MAから得た。
【0042】
比較例A
固形分10.6重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ2milの金属化ポリエステルフィルム上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、フィルム上に耐火層を形成した。フィルムは片側で金属化された。塗料はフィルムの金属化された側に塗布された。フィルムは、商品名MylarでE.I.DuPont de Nemours and Co.,Wilmington,DEから得た。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布されたフィルムをオーブン中で110℃以下の温度で乾燥した。総乾燥時間は75分を超え、それは60℃で15分、71℃で15分、82℃で15分、93℃で15分、および99℃で15分超の段階的な乾燥を含んだ。耐火層は35gsmの乾燥塗膜重量を有した。紙および耐火層を別々のロールに巻き上げた。
【0043】
この二層複合体の試料の検査により、乾燥された耐火層がフィルムの金属化された側から自然に剥がれるのが観察された。剥離の特徴は良好であった。
【0044】
比較例B
これは、耐火層が19gsmの乾燥塗膜重量を有し、乾燥時間が45分間であったことを除いて例Aと同様であった。
【0045】
比較例C
固形分13重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ6μmの金属化ポリエーテルエーテルケトン(PEKK)フィルム上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、フィルム上に耐火層を形成した。フィルムは、Cytec Industries,Woodland Park,NJから得た等級DS−Eであった。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布されたフィルムをオーブン中で110℃以下の温度で乾燥した。乾燥時間は45分を超え、それは71℃で9分、82℃で6分、93℃で6分、および96℃で25分の段階的な乾燥を含んだ。耐火層は33gsmの乾燥塗膜重量を有した。フィルムと耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0046】
この塗工工程は、フィルムが皺になり襞がつく傾向のせいできわめて困難なことが分かった。さらに、湿潤を助長しかつ均質な塗膜を得るためにフィルムをコロナ処理などの工程により表面処理しなければならなかった。均質で連続的な耐火層塗膜は得られなかった。耐火層はまた、その高粘度溶液中にトラップされた過度な気泡に関係した条痕および光斑の影響を受けた。
【0047】
比較例D
固形分7.5重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ0.5milのポリイミドフィルム上にロール式ナイフ塗工システムを使用して塗布して、フィルム上に耐火層を形成した。フィルムは、商品名KaptonでE.I.DuPont de Nemours and Co.,Wilmington,DEから得た。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布されたフィルムをオーブン中で110℃以下の温度で乾燥した。乾燥時間は75分を超え、それは71℃で20分、82℃で20分、93℃で20分、および96℃で25分超の段階的な乾燥を含んだ。耐火層は33gsmの目標乾燥塗膜重量を有した。フィルムと耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0048】
この塗工工程は、フィルムが皺になり襞がつく傾向のせいできわめて困難なことが分かった。さらに、湿潤を助長しかつ均質な塗膜を得るためにフィルムをコロナ処理などの工程により表面処理しなければならなかった。均質で連続的な耐火層塗膜は得られなかった。この75分を超える乾燥時間は容認できなかった。
【0049】
比較例E
固形分10.8重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ2milのポリイミド(Kapton(登録商標))フィルム上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、フィルム上に耐火層を形成した。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布されたフィルムをオーブン中で110℃以下の温度で乾燥した。乾燥時間は75分を超え、それは71℃で9分、82℃で6分、93℃で6分、および96℃で60分の段階的な乾燥を含んだ。耐火層は33gsmの乾燥塗膜重量を有した。フィルムと耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0050】
いったん5%未満の含水率まで乾燥されると、きわめて均質で連続的な耐火層が生じた。円滑なロール巻取および後処理を可能にするのに十分な密着性を有する層がフィルムの表面に残った。耐火層は、その耐火層の露出面に接着された補強基材の助けにより支持体から簡単に剥がれた。非常に苦労すれば単体フィルムとして塗膜支持体から耐火層を剥がすことができた。しかしながら75分を超える乾燥時間は、実用的な値であるには長すぎた。
【0051】
比較例F
これは、フィルム層が金属化表面を有しないことを除いて例Aと同様であった。分かったことは比較例Eの場合と同じであった。
【0052】
比較例G
固形分10.8重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ5milの褐色のクラフト紙上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、紙上に耐火層を形成した。この紙はセルロースを約100重量%含み、Crocker Technical Papers,Fitchburg,MAから得た。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布された紙を空気浮上オーブン中で110℃以下の温度で15分間乾燥した。乾燥温度差を上部(バーミキュライト側)および下部(剥離紙側)に適用した。上側の乾燥プロフィールは、49℃で5分間、60℃で5分間、および71℃で5分間であった。下側の乾燥は、15分間99℃のままであった。耐火層は33gsmの乾燥塗膜重量を有した。紙と耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0053】
5milクラフト紙上の耐火層塗膜は堆積時には平坦であったが、紙は塗料溶液から水を吸収するにつれて皺になり襞がつき始めた。塗布用紙が全乾燥工程を通して折り畳まれると、それは連続的だが起伏のあるフィルム塗膜を生じさせた。また、生産性に重大な影響を与える塗工工程の間の頻繁な紙の切断があった。この紙は不適切だと考えられた。
【0054】
比較例H
固形分10.6重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ5milのメタ−アラミド紙上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、紙上に耐火層を形成した。この紙はDuPontからのT413等級Nomex(登録商標)であった。この紙は、1.23オンス/平方ヤードの坪量、4.9milの平均厚さ、0.34g/ccの密度、316秒/100cc、20オンスシリンダーのガーレー通気抵抗度、325シェフィールドユニットの平滑度、縦方向で10.7ポンド/インチおよび横方向で5.5ポンド/インチの乾燥引張強さを有した。湿潤引張強さは、縦方向で5.1ポンド/インチおよび横方向で2.95ポンド/インチであった。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布された紙を空気浮上オーブン中で110℃以下の温度で15分間乾燥した。乾燥温度差を上部(バーミキュライト側)および下部(剥離紙側)に適用した。上側の乾燥プロフィールは、49℃で5分間、60℃で5分間、および71℃で5分間であった。下側の乾燥は、15分間99℃のままであった。耐火層は37gsmの乾燥塗膜重量を有した。紙と耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0055】
耐火材料は首尾よく紙上に塗布されたが、耐火フィルム層の露出面に接着された補強基材の助けなしには紙から耐火層を取り外すことが不可能であり、またそれがたとえ可能でも困難を伴ってのみ達成可能であった。この紙は使用には不適切だと考えられた。
【0056】
比較例J
バーミキュライト分散液を、厚さ5.6milの強化ポリエチレンシート上にドクター・ブレードを使用して塗布した。このポリエチレンシートはDuPontからのTyvek(登録商標)1056D等級であった。耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布されたシートをオーブン中で90℃で乾燥した。乾燥時間は30分であった。耐火層の乾燥坪量は37gsmであった。
【0057】
乾燥された耐火層は、その耐火層の露出面に接着された補強基材の助けがあってさえ剥離シートから取り外すことができなかった。耐火層内の凝集結合破壊が観察された。このポリエチレンシートは使用には不適切であった。
【0058】
実施例1
固形分10.8重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ5milの親水性の灰色RagKraft紙上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、紙上に耐火層を形成した。紙は、50重量%のセルロース繊維と50重量%の綿繊維のブレンドを含み、Crocker Technical Papersから得た。紙は、4.0オンス/平方ヤードの坪量、5.1milの平均厚さ、1.05g/ccの密度、1087秒/100cc、20オンスシリンダーのガーレー通気抵抗度、81シェフィールドユニットの平滑度、縦方向で64.3ポンド/インチおよび横方向で25.4ポンド/インチの乾燥引張強さを有した。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布された紙を空気浮上オーブン中で110℃以下の温度で15分間乾燥した。乾燥温度差を上部(バーミキュライト側)および下部(剥離紙側)に適用した。上側の乾燥プロフィールは、49℃で5分間、60℃で5分間、および71℃で5分間であった。下側の乾燥は、15分間99℃のままであった。耐火層は33gsmの乾燥塗膜重量を有した。フィルムと耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0059】
この5mil灰色RagKraft紙上の耐火層塗膜は堆積時には平坦であったが、紙は塗料溶液から水を吸収するにつれて皺になり襞がつく傾向があった。ごくまれに紙が切断する程度で塗工工程全体の連続性は満足できるものとみなされた。この紙は、低位の満足のいくものと考えられた。乾燥時間は、比較例AおよびBの場合よりもかなり短かった。
【0060】
実施例2
固形分10.8重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ5milの親水性の灰色のRagKraft紙上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、紙上に耐火層を形成した。この紙は、47.5重量%のセルロース繊維、47.5重量%の綿繊維、および5重量%のポリエチレンテレフタラート(PET)湿潤高強度繊維のブレンドを含んだ。この紙は、Crocker Technical Papersから得た。紙は、4.0オンス/平方ヤードの坪量、5.1milの平均厚さ、1.05g/ccの密度、1087秒/100cc、20オンスシリンダーのガーレー通気抵抗度、81シェフィールドユニットの平滑度、縦方向で64.3ポンド/インチおよび横方向で25.4ポンド/インチの乾燥引張強さを有した。湿潤引張強さは、縦方向で14.8ポンド/インチおよび横方向で5.5ポンド/インチであった。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布された紙を空気浮上オーブン中で110℃以下の温度で15分間乾燥した。乾燥温度差を上部(バーミキュライト側)および下部(剥離紙側)に適用した。上側の乾燥プロフィールは、49℃で5分間、60℃で5分間、および71℃で5分間であった。下側の乾燥は、15分間99℃のままであった。耐火層は33gsmの乾燥塗膜重量を有した。フィルムと耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0061】
この5mil灰色RagKraft紙上の耐火層塗膜は堆積時に平坦であった。比較例Hと比べて、紙が塗料溶液から水を吸収するにつれて少数の皺および襞が存在した。耐火層は連続的だが多少起伏があった。紙の切断はなく塗工工程全体の連続性は優れているものとみなされた。この紙は満足できるものと考えられた。乾燥時間は、比較例AおよびBの場合よりもかなり短かった。
【0062】
実施例3
固形分10.8重量%まで濃縮したバーミキュライト分散液を、厚さ9.5milの親水性の灰色RagKraft紙上にスロットダイ塗工システムを使用して塗布して、紙上に耐火層を形成した。この紙は、50重量%のセルロース繊維と50重量%の綿繊維のブレンドを含み、Crocker Technical Papersから得た。紙は、6.4オンス/平方ヤードの坪量、9.6milの平均厚さ、0.9g/ccの密度、572秒/100cc、20オンスシリンダーのガーレー通気抵抗度、128シェフィールドユニットの平滑度、縦方向で93.0ポンド/インチおよび横方向で35.6ポンド/インチの乾燥引張強さを有した。湿潤引張強さは、縦方向で6.98ポンド/インチおよび横方向で2.5ポンド/インチであった。無機耐火層の含水率が5%未満になるまで、塗布された紙を空気浮上オーブン中で110℃以下の温度で15分間乾燥した。乾燥温度差を上部(バーミキュライト側)および下部(剥離紙側)に適用した。上側の乾燥プロフィールは、49℃で5分間、60℃で5分間、および71℃で5分間であった。下側の乾燥は、15分間99℃のままであった。耐火層は33gsmの乾燥塗膜重量を有した。フィルムと耐火層の二層複合体をロールに巻き上げた。
【0063】
いったん5%未満の含水率まで乾燥されると、きわめて均質で連続的な耐火層が生じた。円滑なロール巻取および後処理を可能にするのに十分な密着性を有する層がフィルムの表面に残った。耐火層は、その耐火層の露出面に接着された補強基材の助けにより支持体から簡単に剥がれた。非常に苦労すれば単体フィルムとして紙から耐火層を剥がすこともまた可能であった。この紙は、湿潤した場合でさえ満足できる全体的寸法安定性を示した。湿潤した紙の縁部はまだ多少丸まる傾向を示したが、連続的かつきわめて平坦で均質なフィルム塗膜が達成された。紙の切断はなく塗工工程全体の連続性は優れていた。この紙は満足できるものと考えられた。
【0064】
実施例4
実施例4は、塗布用紙が厚さ9.5milであることを除いて実施例2のとおりであった。この紙は、6.4オンス/平方ヤードの坪量、9.6milの平均厚さ、0.9g/ccの密度、572秒/100cc、20オンスシリンダーのガーレー通気抵抗度、128シェフィールドユニットの平滑度、縦方向で93.0ポンド/インチおよび横方向で35.6ポンド/インチの乾燥引張強さを有した。湿潤引張強さは、縦方向で6.98ポンド/インチおよび横方向で2.5ポンド/インチであった。
【0065】
いったん5%未満の含水率まで乾燥されると、きわめて均質で連続的な耐火層が生じた。円滑なロール巻取および後処理を可能にするのに十分な密着性を有するフィルムが塗布用紙の表面に留まった。9.5mil灰色RagKraft紙上の耐火層の塗膜は堆積時には平坦であった。この紙は、縁部が丸まる傾向がほとんどなく湿潤した場合でさえ満足できる全体的寸法安定性を示し、したがって連続的かつきわめて平坦で均質な耐火層をもたらした。紙の切断はなく全塗工工程の連続性は優れていた。この紙は満足できるものと考えられた。
【0066】
耐火層は、その耐火層の露出面に接着された補強基材の助けにより剥離紙支持体から簡単に剥がれた。非常に苦労すれば補強基材の助けなしに紙から耐火層の短い切片を剥がすこともまた可能であった。
【0067】
実施例5
これは、厚さ11milの紙を使用したことを除いて実施例3のとおりであった。この紙は、8.1オンス/平方ヤードの坪量、11.0milの平均厚さ、1.0g/ccの密度、714秒/100cc、20オンスシリンダーのガーレー通気抵抗度、103シェフィールドユニットの平滑度、縦方向で122.0ポンド/インチおよび横方向で40.0ポンド/インチの乾燥引張強さを有した。湿潤引張強さは、縦方向で6.4ポンド/インチおよび横方向で2.5ポンド/インチであった。分かったことは実施例3の場合と同じであった。
【0068】
実施例6
これは、塗布および乾燥後に、剥離紙上の33gsm耐火層を周囲条件において陽イオン濃厚水溶液で処理したことを除いて実施例5と同様であった。
【0069】
塗布された剥離紙を、水に分散した0.5N濃度の塩化ナトリウムの陽イオン濃厚溶液中に1分間浸漬し、次いで24℃で2分間空気乾燥し、続いて80℃に加熱した通常のオーブン内でさらに30分間乾燥した。
【0070】
約3%の含水率まで乾燥されたらその陽イオン処理された材料をオーブンから取り出した。耐火層および剥離紙の外面に堆積している余分な乾燥塩化ナトリウムを、乾燥した柔らかな布で丁寧に拭き取った。
【0071】
非陽イオン処理耐火層と比較すると、高湿度条件に長時間、例えば80℃および90%RHのエイジングチャンバ内に120時間曝した場合の、または水に少なくとも10分間浸漬した後の安定性の顕著な改良を示した。他に分かったことは実施例5のものと同様であった。
図1