【実施例】
【0024】
本発明の自由支持式螺旋ポンプの構造について
図1乃至
図8を参照しながら具体的に説明する。
図1は本実施例の自由支持式螺旋ポンプの外観斜視図であり、
図2及び
図3はそれぞれ
図1におけるA−A線矢視断面図及びB−B線矢視断面図である。また、
図4及び
図5はそれぞれ
図1におけるC−C線矢視断面図及びD−D線矢視断面図である。さらに、
図6(a)は保持具によって棒状体が保持された状態を示す保持手段の平面図であり、
図6(b)は
図6(a)におけるE−E線矢視断面図である。一方、
図7(a)はギヤの平面図であり、
図7(b)は環状円板にギヤが接合された状態を示しており、
図6(b)に相当する図である。
なお、
図6(a)では棒状体について断面図を示し、
図6(b)及び
図7(b)では支持板7,8とベアリング15,16と回動軸15a,16aと軸固定具17を破線で示している。
【0025】
図1乃至
図5に示すように、自由支持式螺旋ポンプ1は、所定の間隔をあけて同心状に配置される複数の環状円板2と、その平面部と直交するように配置されて各環状円板2を互いに連結する複数の棒状体3と、水密性を有し螺旋状に巻回されて水路を形成する合成樹脂製のチューブ4と、棒状体3に取り付けられる固定具5を備えている。
【0026】
棒状体3はチューブ4を囲繞するように環状円板2の円周方向に対して略等間隔に配置されており、環状円板2とともに円筒状のフレーム6を形成している。また、チューブ4は、螺旋の中心軸がフレーム6の円筒軸と略平行をなすように、環状円板2の内側に設置されている。すなわち、フレーム6は固定具5によって、円筒軸を中心として回動可能に支持されている。そして、フレーム6は、螺旋形状を保ったままチューブ4を保持するという機能を有している。
【0027】
なお、フレーム6を形成する最下端の環状円板2の開口部は、チューブ4が自重によって下方へ移動しないように円板(図示せず)によって閉塞されている。ただし、ビニル製やゴム製のチューブ4を用いる場合には、弾性を有しており、螺旋の内径が大きくなる方向へ変形しようとする力が環状円板2の内周面に作用し、チューブ4の外周面と環状円板2の内周面との間で大きな摩擦力が発生する可能性が高い。そして、その摩擦力によってチューブ4の下方への移動が阻止される可能性がある。この場合には、フレーム6を形成する最下端の環状円板2の開口部を閉塞する必要はない。また、当該環状円板の開口部を閉塞する代わりに、少なくともチューブ4の一部をフレーム6に固定した構造とすることもできる。
【0028】
本実施例では、軽量化のため、棒状体3を両端に雌ネジ部が形成された中空構造としている。そして、棒状体3は、各雌ネジ部に螺合するように形成され、環状円板2の平面部に設けられた貫通孔に挿通される雄ネジ部材を介して、他の棒状体3と環状円板2を間に挟んだ状態で連結される構造となっている。なお、棒状体3を両端にそれぞれ雄ネジ部と雌ネジ部を有する中実構造とすることもできる。この場合、2本の棒状体3は、環状円板2の平面部に設けられた貫通孔に挿通させた一方の雄ネジ部に他方の雌ネジ部を螺合させることにより、環状円板2を間に挟んで互いに連結された状態となる。ただし、棒状体3を中実構造とする場合には、直径を細くするなどして、軽量化することが望ましい。
【0029】
固定具5は、フレーム6を挿通可能な円形の開口部7a,8aをそれぞれ有し、開口部7a,8aの中心が同一直線上に位置するように所定の間隔をあけて平行に配置される一対の支持板7,8と、支持板7,8を連結する連結板9a〜9c及び棒状体10と、支持板7,8の開口部7a,8aに対して同心状に配置される環状円板11,12及びギヤ13を備えており、連結板9aには接続部材14が取り付けられている。なお、棒状体10は、両端にそれぞれ雄ネジ部が形成されており、この雄ネジ部を支持板7,8に設けられたネジ孔18の雌ネジ部に螺合させることによって支持板7,8に連結される構造となっている。
支持板7,8は、開口部7a,8aが設けられ平面視して略円形をなす部分と、この部分から側方へ突出するように形成され連結板9a〜9cの端部がそれぞれ接合される取付部分7d,8dからなる。また、棒状体10は、支持板7,8と直交するように開口部7a,8aの周りに配置されており、その両端は支持板7,8の内面7b,8bにそれぞれ固定されている。
【0030】
また、支持板7,8の内面7b,8bには、その平面部と直交し、開口部7a,8aに対して同心状に、かつ、その円周方向に対して略等間隔に配置された回動軸15aを中心として回動する3つのベアリング15が取り付けられており、環状円板11,12の外周面に対して、それぞれ当接した状態で回動可能に支持板7,8に設置されている。すなわち、環状円板11,12は、これら3つのベアリング15によって回動自在に保持されている。
一方、支持板7,8の外面7c,8cには、開口部7a,8aに対して同心状に、かつ、その円周方向に対して略等間隔に配置され回動軸15aと直交する回動軸16aを中心として回動する3つのベアリング16が環状円板11,12の平面に当接した状態で回動可能に設置されている。なお、ベアリング16の回動軸16aを保持する軸固定具17は支持板7,8にネジ止めされている。
【0031】
環状円板11,12は、環状円板2の外径よりも大きな内径を有する開口部11a,12aが設けられており、その内周面には開口部11a,12aに挿通された棒状体3の外周を囲むように保持する保持具19が設置されている。すなわち、環状円板11,12と19は、フレーム6を保持する保持手段を構成し、支持板7,8とベアリング15,16は保持手段をフレーム6の円筒軸を中心として回動可能に支持する支持手段を構成している。
【0032】
また、棒状体3の外周面と保持具19の内周面は密着しており、両者の間に発生する摩擦力によって、保持具19及び環状円板11,12からなる保持手段に対して棒状体3はスライド不能に固定されている。そして、環状円板11,12はベアリング16によって支持板7,8の外面7c,8c側への移動が制限されている。すなわち、棒状体3は保持手段によって長手方向へ移動しないように保持され、保持手段は支持手段によって棒状体3の長手方向へ移動しないように支持されている。
なお、棒状体3の外周面と保持具19の内周面の間に発生する摩擦力の大きさは、棒状体3の外径に対する保持具19の内径を変更したり、棒状体3と保持具19の間に弾性材からなるスペーサを設置したりすることによって容易に調節することができる。また、上述の摩擦力を調節する代わりに、支持板7,8の内面7b,8b側への環状円板11,12の移動を制限する部材を棒状体3に取り付けても良い。あるいは、支持板7,8の内面7b,8b側にベアリング16が設けられた構造とすることもできる。
【0033】
環状円板12の片面には、開口部12aと内径が等しい開口部13aを有するギヤ13が同心状に配置され、ネジ孔20を利用してネジ止めされている。これにより、ギヤ13は環状円板12と一体的に回動可能となっている。
支持板8の取付部分8dには開口部8eが設けられており、この開口部8eを通して駆動軸21aを内面8b側に突出させた状態でモータ21が取付板22によって支持板8の取付部分8dにネジ孔22aを利用してネジ止めされている。なお、モータ21は、駆動軸21aが回動軸15aと平行をなし、かつ、駆動軸21aに取り付けられたスプロケット23がギヤ13と同一平面内で回動可能となっている。また、スプロケット23とギヤ13にはローラーチェーン24が巻回されている。
したがって、モータ21を駆動させると、その駆動力がスプロケット23とローラーチェーン24を介してギヤ13から環状円板12に、さらに棒状体3へと伝達されるため、フレーム6が円筒軸を中心として回動する。
【0034】
図8(a)及び
図8(b)は自由支持式螺旋ポンプ1の設置例を示した模式図である。
図8(a)に示すように、円筒軸が鉛直方向と所定の傾斜角をなすとともに下端6aが流水路内に設置されるように、地面25に固設された架台26に対し固定具5を介して自由支持式螺旋ポンプ1を固定すると、チューブ4の一方の開口端4aが水面27よりも下方に配置される。そこで、前述したようにモータ21(
図5参照)を駆動させると、フレーム6とともにチューブ4が中心軸の周りに回動する。そして、流水路中の水はチューブ4が回動するごとに上方へ向かって段階的に移動させられて、最終的に他方の開口端4bから吐出される。すなわち、螺旋状に巻回されて水路を形成するチューブ4は、螺旋の中心軸の周りに回動させられることによってアルキメデスポンプとしての機能を発揮する。
【0035】
既に述べたように、自由支持式螺旋ポンプ1では、フレーム6が環状円板2と棒状体3という軽量で簡単な形状の2種類の部品からなる。そして、チューブ4も合成樹脂製であり、軽いため、自由支持式螺旋ポンプ1を架台26に固定する際に、
図8(a)に示すように固定具5をフレーム6の中央付近に取り付けた場合でもフレーム6の姿勢が不安定な状態になり難い。すなわち、フレーム6の端部を支持しなくとも所望の角度で傾斜させたフレーム6とチューブ4を安定した状態で設置することができる。したがって、従来よりも長いフレーム6とチューブ4を使用することができる。
さらに、自由支持式螺旋ポンプ1では、チューブ4を回動させるための機構をフレーム6の上端や下端に設ける必要がない。そのため、例えば、チューブ4に長いものを使用しなければならない場所や、障害物があってチューブ4を回動させる機構を水中やチューブ4の上方に設置できない場所に対しても本発明の自由支持式螺旋ポンプ1であれば、設置が可能である。
【0036】
そして、自由支持式螺旋ポンプ1は、フレーム6の組み立てや分解が容易であり、特に、分解すれば、嵩張らないため、持ち運び易く、保管する際にも広いスペースを必要としない。すなわち、自由支持式螺旋ポンプ1は、組み立てや分解あるいは持ち運びが容易なため、設置や撤去をする際の作業性が良い。また、部品点数が少なく、個々の部品も簡単な形状をしているため、安価に製造することが可能である。
【0037】
さらに、棒状体3として、長さの異なる数種類のものを予め用意しておき、それらの中から用途に応じて適当な長さのものを選択し、適宜組み合わせることによれば、容易にフレーム6を所望の長さに調節することができる。
また、あるフレーム6の端部に位置する環状円板2の平面部に、別のフレーム6の端部に位置する環状円板2の平面部を当接させ、これら2枚の環状円板2を互いにネジやボルト等を用いて固定すると、2つのフレーム6が連結される。すなわち、フレーム6を簡単に継ぎ足して長くすることができる。
このように、本発明の自由支持式螺旋ポンプ1では、長さの異なる棒状体3を使用して所望の長さのフレーム6を組み立てたり、既に組み立てられている幾つかのフレーム6を現場で継ぎ足してフレーム6の全長を調節したりできるため、設置場所に対する制約が少ないうえ、設置の際の作業性も良い。
【0038】
なお、本実施例では、チューブ4を合成樹脂製としているが、少なくとも水密性を有するとともに、螺旋状に成形できる部材であれば良いため、例えば、金属製とすることもできる。また、フレーム6は金属製でも合成樹脂製でも良いが、チューブ4だけでなくフレーム6も合成樹脂製にすれば、支持手段に加わる負荷が軽減されるため、固定具5をフレーム6の端部以外の箇所に取り付けた場合でもフレーム6をより一層安定した状態で設置することができる。
さらに、フレーム6の中央付近に加え、フレーム6の少なくともいずれか一方の端部を支持する構造とすることもできる。本実施例では、固定具5が支持板7,8及び環状円板11,12を備えているが、上述の構造にすれば、支持板7と環状円板11を省略してもフレーム6を安定した状態で支持することが可能である。なお、フレーム6があまり長くない場合や支持板8と環状円板12と保持具19が十分厚い場合にも、支持板7と環状円板11を省略することができる。逆に、フレーム6が長い場合には、複数の固定具5によってフレーム6を支持する構造としても良い。この場合、支持板や環状円板の数は2枚よりも多くなるが、本発明における支持板や環状円板の数は本実施例に示した2枚に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0039】
2つの固定具5によってフレーム6を支持する場合には、例えば、
図8(b)に示すように、一方の固定具5が他方の固定具5に対し逆向きに設置されるとともに、2つの固定具5,5が接続部材28を介して一体化された構造とすることができる。ただし、各固定具5に設置されている2つのスプロケット23,23は各モータ21の駆動軸21aに取り付けられる代わりに、モータ21によって駆動される1本の回動軸(図示せず)の両端にそれぞれ取り付けられるものとする。
このような構造によれば、2つの固定具5にそれぞれ設置された2枚の環状円板12,12を1つのモータ21によって互いに同期した状態で回動させることができる。
【0040】
また、スプロケット23が取り付けられる回動軸を挿通させるための貫通孔を支持板7に設け、この回動軸によって各スプロケット23を接続した構造とすることもできる。この場合、2つの固定具5,5を互いに逆向きに設置する必要がない。そして、フレーム6に取り付けられる固定具5が3つ以上であっても上述の効果が同様に発揮される。
なお、フレーム6に複数の固定具5を取り付ける際に、各固定具5にモータ21がそれぞれ設置されていても良いが、その場合には、互いのモータ21を同期させることが必要である。
【0041】
さらに、本実施例では、保持具19が棒状体3に取り付けられる構造となっているが、保持具19の代わりに環状円板2を挟持する機構を環状円板11,12に設けることにより固定具5が環状円板2に取り付けられる構造としても良い。ただし、本実施例に示した構造であれば、保持具19を棒状体3の長手方向の任意の箇所に対して取り付けることができるため、フレーム6に対する固定具5の取り付け箇所についての制約が極めて少ないというメリットがある。そして、保持具19は棒状体3に取り付けた後でもスライドさせるようにして、棒状体3の長手方向に対する位置を変更することができる。すなわち、保持具19によって棒状体3を保持する構造であれば、固定具5のフレーム6に対する取り付け箇所をいつでも容易に調整できるため、設置する際の作業性が良い。
【0042】
このように、フレーム6の保持手段は本実施例に示した構造に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、環状円板11,12を支持板7,8に設置されたベアリング15,16によってフレーム6の円筒軸を中心として回動可能に支持するという支持手段や、保持手段を回動させる機構も本実施例に示した構造に限定されない。例えば、ベアリング16を支持板7,8の内面7b,8b側に設けた構造としても良い。また、ギヤ13やローラーチェーン24を設置せずに、ベアリング15,16の回動軸15a,16aに対してモータ21の駆動力を直接伝達させる構造とすることもできる。なお、本実施例に示した構造とした場合、保持手段を回動可能に支持する機構や保持手段を回動させてフレーム6を円筒軸を中心として回動させる機構を安価に実現することができる。