特許第6132417号(P6132417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132417
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】毛髪修復方法および毛髪修復装置
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20170515BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20170515BHJP
   A45D 19/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   A61K8/64
   A61Q5/00
   A45D19/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-54851(P2013-54851)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-181186(P2014-181186A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】393003192
【氏名又は名称】株式会社シーエムエス
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】堀 光男
【審査官】 石川 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−038238(JP,A)
【文献】 特開平10−229912(JP,A)
【文献】 特開平09−028448(JP,A)
【文献】 特開平09−253193(JP,A)
【文献】 特開2010−194127(JP,A)
【文献】 特表2005−530581(JP,A)
【文献】 特開2010−100559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/64
A45D 19/00
A61Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分が挿入される施術容器と、
前記施術容器に前記毛髪が挿入された状態で、前記施術容器の挿入口を封止して前記毛髪の挿入部分を密閉する封止蓋と、
前記封止蓋により封鎖された前記施術容器内の密閉室を真空状態に減圧し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間から老廃物を吸い出す真空ポンプと、
前記施術容器内に毛髪修復剤を供給し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間に前記毛髪修復剤を浸み込ませる修復剤供給器と、を備える毛髪修復装置であって、
前記封止蓋に開口するスリットと、
前記封止蓋の内側に前記スリットと並行して設けられる一対のローラと、
前記一対のローラを駆動可能なモータとを備えており、
前記スリットから挿入された被施術者の毛髪が、前記駆動モータにより駆動される前記一対のローラに挟まれて前記施術容器内に引き込まれるように構成される、毛髪修復装置。
【請求項2】
被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分が挿入される施術容器と、
前記施術容器に前記毛髪が挿入された状態で、前記施術容器の挿入口を封止して前記毛髪の挿入部分を密閉する封止蓋と、
前記封止蓋により封鎖された前記施術容器内の密閉室を真空状態に減圧し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間から老廃物を吸い出す真空ポンプと、
真空状態の前記密閉室に毛髪修復剤を供給する修復剤供給器と、
前記密閉室の真空状態を開放し、前記密閉室の内気圧を瞬間的に上昇させることにより、前記毛髪表面のキューティクルの隙間に前記毛髪修復剤を吸い込ませる真空開放バルブと、を備える毛髪修復装置であって、
前記封止蓋に開口するスリットと、
前記封止蓋の内側に前記スリットと並行して設けられる一対のローラと、
前記一対のローラを駆動可能なモータとを備えており、
前記スリットから挿入された被施術者の毛髪が、前記駆動モータにより駆動される前記一対のローラに挟まれて前記施術容器内に引き込まれるように構成される、毛髪修復装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の毛髪修復装置であって、
前記施術容器の外側に設けられるソケットと、
前記ソケットに着脱可能に装着されるカートリッジ式の前記修復剤供給器とを備え、
前記ソケットに前記修復剤供給器が装着されるとき、前記ソケット内の注入口に前記修復剤供給器のノズルが連結されることにより、前記ノズルから前記施術容器内に毛髪修復剤が供給されるように構成される、毛髪修復装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の毛髪修復装置であって、前記施術容器に高速振動子が組み込まれる、毛髪修復装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪修復方法および毛髪修復装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、ブラッシングによる摩擦やドライヤーの熱、紫外線などにより日々ダメージを受けている。最近では、パーマヘアの流行やヘアカラーの普及に伴って、パーマネントウェーブ剤、ブリーチ剤、染毛剤などの施術により毛髪が損傷を受ける機会がさらに多くなり、毛髪修復に対するニーズが増大している。
【0003】
従来、このような損傷を受けた毛髪を修復する方法としては、トリートメントやコンディショナー(リンス)を使用するのが一般的である。トリートメントは、髪の表面から浸透し、髪の状態を内側から整える作用があり、コンディショナーは、髪の表面に皮膜をつくり、すべりを良くする作用がある。トリートメントやコンディショナーを使用する場合、シャンプー後にこれらの薬液を毛髪に塗布し、指先で毛髪を揉みほぐすようにしたり、あるいは軽く叩くなどの処置を施して、薬液が毛髪に染み込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3160184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような毛髪修復方法では、次のような問題がある。すなわち、トリートメントやコンディショナーを使用する場合、毛髪表層のキューティクルの間に老廃物が詰まっていると、この老廃物が“バリヤー”となって薬液の侵入を遮断する。このため、薬液を多量に使用しても、毛髪の内部に供給される量が少なく、トリートメントやコンディショナーの作用が十分に生かされないものになっている。
【0006】
美容室などでは、施術時にキューティクルを開かせるための措置として、毛髪にトリートメントやコンディショナーの薬液をなじませ、蒸タオルで頭をくるんで加熱するといったことが行われているが、キューティクル間の狭い隙間に詰まった老廃物(整髪剤などの成長阻害物を含む。以下同じ)を十分に取り除くことは困難である。特に、薬液の表面張力が大きい場合には毛髪の内部に薬液が浸透しにくく、トリートメントやコンディショナーの作用が十分に得られないものであった。
【0007】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、トリートメントやコンディショナー等の薬液(毛髪修復剤)を、毛髪の表面から内部にまで効率よく浸透させることで、毛髪の艶や張りを良好に改善することを可能した毛髪修復方法およびその方法に用いる毛髪修復装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ところで、本発明者らは、既に、特許文献1に開示されるように、頭皮の毛根に真空含浸により育毛剤を供給する技術(育毛・発毛用真空含浸方法)を開発している。この技術開発を進めるにあたり、最近、頭皮の育毛・発毛効果に伴う波及効果として、被施術者の毛髪に艶や張りなどの状態に改善が見られることが判ってきた。
毛髪をミクロ的に観察した場合、図1に示すように、毛髪表面はキューティクル(小皮)H1で形成されており、このキューティクルH1の内側に、毛髪の芯をなす毛髄H2と、フィブリル束H3と、間充物質H4とが覆われている。ここで、フィブリルは繊維状のケラチンであり、フィブリル束H3はこれらが束になったものを指す。間充物質H4は、柔らかいケラチンタンパク質からなり、毛髄H2やフィブリル束H3の間隙を充填する役割を果たす。パーマネントウェーブ剤、ブリーチ剤、染毛剤などは間充物質H4に対して作用する、というのが現在の通説である。
発明者らの研究によれば、真空状態で毛髪を吸引した場合、重なり合うキューティクルH1間の隙間から老廃物が取り除かれる。キューティクルH1の隙間で“バリヤー”となっていた老廃物がなくなると、毛髪表面から内部へ向けて毛髪修復剤の有効成分が浸透し、毛髪の艶や張りが改善すると考えられる。
【0009】
[第1発明]
上記の知見に鑑み、前記課題を解決するための第1発明の毛髪修復方法は、下記の構成を採用することとした。
すなわち、被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分を施術容器に挿入する工程と、
前記施術容器に前記毛髪を挿入した状態で、前記施術容器の挿入口を封止して前記毛髪の挿入部分を密閉する工程と、
前記施術容器内の密閉室を真空状態に減圧し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間から老廃物を吸い出す工程と、
前記密閉室の真空状態を開放した後、前記施術容器内に毛髪修復剤を供給し、前記キューティクルの隙間から前記毛髪内部に前記毛髪修復剤を浸透させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
第1発明に係る毛髪修復方法によれば、毛髪周囲の空間を真空状態に保つことで、キューティクルの隙間から老廃物を吸い出す。その後、真空状態を開放してから毛髪に毛髪修復剤を供給することにより、キューティクル間の隙間から毛髪修復剤が毛細管現象により効率よく毛髪の奥まで浸透する。
これにより、毛髪への毛髪修復剤の含浸効果を従来よりも格段に高めることができ、ひいては毛髪の艶や張りなどの状態を良好に改善することができる。
【0011】
[第2発明]
また、前記課題を解決するための第2発明の毛髪修復方法は、下記の構成を採用することとした。
すなわち、被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分を施術容器に挿入する工程と、
前記施術容器に前記毛髪を挿入した状態で、前記施術容器の挿入口を封止して前記毛髪の挿入部分を密閉する工程と、
前記施術容器内の密閉室を真空状態に減圧し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間から老廃物を吸い出す工程と、
真空状態の前記密閉室に毛髪修復剤を供給する工程と、
前記密閉室の真空状態を開放し、前記密閉室の内気圧を瞬間的に上昇させることにより、前記キューティクルの隙間に前記毛髪修復剤を吸い込ませ、前記毛髪内部に同毛髪修復剤を浸透させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る毛髪修復方法は、毛髪周囲の空間を真空状態に保つことにより、第1発明と同様に、キューティクルの隙間から老廃物を吸い出す。続いて、老廃物を取り除いた後のキューティクル間の隙間に真空含浸の作用を利用して毛髪修復剤を吸い込ませる。
つまり、第2発明では、キューティクル間の隙間に真空含浸の作用を利用して毛髪修復剤を吸い込ませる点で、キューティクル間の隙間に毛細管現象を利用して毛髪修復剤を浸み込ませる第1発明とは異なるが、第1発明と同様かあるいはそれ以上に毛髪への毛髪修復剤の含浸効果を高めることができ、ひいては毛髪の艶や張りなどの状態を良好に改善することができる。
【0013】
上記の様子を模式図を使って説明すると、まず、図2に示すように、老廃物Dの詰まった毛髪を施術容器内に密閉する。なお、図2において、符号H1はキューティクル、符号H2は毛髄、符号H3はフィブリル束、符号H4は間充物質である。
次いで、図3に示すように、毛髪を真空下にさらすことで、キューティクルH1の隙間の空気を外部(図3中の矢印方向)に吸い出し、キューティクルH1が閉じた状態にする。このとき、その隙間にある老廃物が空気とともに外部に吸い出されるため、結果として、キューティクルH1の隙間の老廃物が取り除かれる。
このような状態で、毛髪周囲の空間に毛髪修復剤を供給した後、この真空状態を開放すると、図4に示すように、キューティクルH1の隙間に空気が流入し(図4中の矢印方向)、同時に、毛髪修復剤がこの流入空気とともにキューティクルH1の隙間の奥まで吸い込まれる。
これにより、毛髪への毛髪修復剤の含浸効果を第1発明よりもさらに高めることができ、ひいては毛髪の艶や張りなどの状態を良好に改善することができる。
【0014】
[第3発明]
前記課題を解決するための第3発明の毛髪修復装置は、第1発明の毛髪修復方法を実施するための装置であって、
被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分が挿入される施術容器と、
前記施術容器に前記毛髪が挿入された状態で、前記施術容器の挿入口を封止して前記毛髪の挿入部分を密閉する封止蓋と、
前記封止蓋により封鎖された前記施術容器内の密閉室を真空状態に減圧し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間から老廃物を吸い出す真空ポンプと、
前記施術容器内に毛髪修復剤を供給し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間に前記毛髪修復剤を浸み込ませる修復剤供給器と、を備える構成とした。
【0015】
第3発明に係る毛髪修復装置によれば、第1発明に係る毛髪修復方法の各工程に対応する技術的特徴を実現できるから、上記第1発明と同様の効果を得ることが可能となる。
【0016】
[第4発明]
前記課題を解決するための第4発明の毛髪修復装置は、第2発明の毛髪修復方法を実施するための装置であって、
被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分が挿入される施術容器と、
前記施術容器に前記毛髪が挿入された状態で、前記施術容器の挿入口を封止して前記毛髪の挿入部分を密閉する封止蓋と、
前記封止蓋により封鎖された前記施術容器内の密閉室を真空状態に減圧し、前記毛髪表面のキューティクルの隙間から老廃物を吸い出す真空ポンプと、
真空状態の前記密閉室に毛髪修復剤を供給する修復剤供給器と、
前記密閉室の真空状態を開放し、前記密閉室の内気圧を瞬間的に上昇させることにより、前記毛髪表面のキューティクルの隙間に前記毛髪修復剤を吸い込ませる真空開放バルブと、を備える構成とした。
【0017】
第4発明に係る毛髪修復装置によれば、第2発明に係る毛髪修復方法の各工程に対応する技術的特徴を実現できるから、上記第2発明と同様の効果を得ることが可能となる。
【0018】
[第5発明]
第5発明の毛髪修復用器具は、第1発明または第2発明に係る毛髪修復方法を実施するための器具であって、
被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分を挿入可能な施術容器と、
前記施術容器に前記毛髪が挿入された状態で、同施術容器の挿入口を封止して前記毛髪の挿入部分を密閉可能な封止蓋と、を備える構成とした。
【0019】
第5発明の毛髪修復用器具は、第1発明または第2発明における毛髪を収容するための必須の容器としての役割を果たす。つまり、同容器は、第1発明または第2発明に係る毛髪修復方法の実施に直接的に寄与するものとなる。
なお、第5発明の毛髪修復用器具には、毛髪修復剤の挿入口や真空状態の開放口が所定の箇所に設けられる。これらの挿入口や開放口は、それぞれ別個に設けてもよいし、兼用であっても構わない。
【0020】
[第6発明]
第6発明の毛髪修復装置は、第3発明または第4発明の毛髪修復装置であって、
前記封止蓋に開口するスリットと、
前記封止蓋の内側に前記スリットと並行して設けられる一対のローラと、
前記一対のローラを駆動可能なモータとを備えており、
前記スリットから挿入された被施術者の毛髪が、前記駆動モータにより駆動される前記一対のローラに挟まれて前記施術容器内に引き込まれる構成とした。
【0021】
第6発明の構成によれば、施術容器に挿入する毛髪の分量調整をローラの引込操作により実現することができる。そのため、施術に不慣れな者であっても手間取ることなく、施術容器への毛髪の挿入作業を簡単かつ適切に行うことができる。
【0022】
[第7発明]
第7発明の毛髪修復装置は、第3発明または第4発明の毛髪修復装置であって、
前記施術容器の外側に設けられるソケットと、
前記ソケットに着脱可能に装着されるカートリッジ式の前記修復剤供給器とを備え、
前記ソケットに前記修復剤供給器が装着されるとき、前記ソケット内の注入口に前記修復剤供給器のノズルが連結されることにより、前記ノズルから前記施術容器内に毛髪修復剤が供給される構成とした。
【0023】
第7発明の構成によれば、ソケットにカートリッジ式の修復剤供給器を装着することにより、施術容器内の密閉室に簡単な操作で適切な量の毛髪修復剤を供給することができる。
カートリッジ式の修復剤供給器に毛髪修復剤を充填しておくことで、毛髪修復剤の保管や管理の作業が容易になる。
【0024】
[第1〜7発明]
本発明において、「施術容器」は、被施術者の毛髪のうち根元より上側の任意部分(少なくとも一部)が挿入可能であればよく、形状(筒状、箱状、袋状)や材質(樹脂、金属、エラストマー)は限定されない。被施術者の毛髪の長さ(長髪・短髪)について特に制限されることはない。
【0025】
「封止蓋」は、施術容器の挿入口からのエアー漏れを防ぐため手段として、ネジ方式、クリップ方式、ワイヤー方式などの封止構造を備える。この封止蓋は、毛髪表面にダメージを与えないようにゴムやエラストマーなどの軟質材料で形成されることが望ましい。
【0026】
「毛髪修復剤」は、その有効成分に特に制限はなく、市販の各種修復剤を使用することができる。
例えば、タンパク質系としては、加水分解ケラチン、加水分解大豆、加水分解小麦、加水分解コラーゲン、加水分解シルク、PPT等、脂質系としては、CMC(細胞膜複合体類似物質)、セラミド、ジラウロリルグルタミン酸リシンNa(ペリセア)、ナノリペア、リビジュア等、天然オイル・エキス系としては、ナッツ油、ホホバ油、サラソウジュ種子油等、アミノ酸系としては、アルギニン、タウリン、グルタミン酸等、シリコーン系としては、ジメチコン、シクロメチコン、アモジメチコン等、ポリマー系としては、ポリクオタニウム、コポリマー等、その他補修剤としてはキトサン誘導体、ヘマチン等が挙げられる。
ミネラル水、イオン水、深層水などの水をそのまま修復剤として採用してもよい。
【0027】
「密閉室」に毛髪修復剤を供給する工程については、毛髪修復剤を密閉室に噴霧するか、点滴針などで液滴として供給することが望ましい。
【0028】
「真空ポンプ」は、施術容器内の密閉室を減圧する機能をもつ装置であればよく、動作原理は特に限定されさない。真空ブロアーや真空エジェクタと呼ばれる真空発生器も含まれる。
例えば、機械的真空ポンプとしては、油回転真空ポンプ (ロータリーポンプ)、液封真空ポンプ、ルーツ真空ポンプ(メカニカルブースタポンプ)、ターボ分子ポンプ(TMP)、ドライ真空ポンプ等、運動量移送式真空ポンプとしては、拡散ポンプ(水銀・油)、スチームエジェクタ真空ポンプ、拡散エジェクタポンプ等、溜込式真空ポンプとしては、クライオポンプ、スパッタイオンポンプ、ソープションポンプ、チタンゲッタポンプ等を採用することができる。これらの真空ポンプは、必要な真空度に応じて組み合わせて使用することが望ましい。
【0029】
「真空状態」は、キューティクルの隙間から老廃物が吸い出される程度に減圧された状態であればよく、具体的な数値は限定されない。
真空圧は、被施術者の個人差により異なるが、その一例として10torr以下の中真空または高真空の状態とすることが考えられる。この程度の圧力まで低下させると、毛髪の太さと毛髪の柔軟性の関係で、毛髪修復剤が毛髪の内部まで浸込みやすく、また、浸透時間の短縮効果が期待される。一般には、太毛の人の場合には高真空の圧力に設定し、細毛の人の場合は、中真空の圧力に設定するとよい。また、個々の髪質に最も適した圧力状態をチェックして個人用のカルテ等を作成するのもよい。
【0030】
本発明によってキューティクルの隙間から取り除かれる「老廃物」には、毛髪自体の老廃物の他、毛髪に付着あるいは残存している異物、不純物などの成長阻害物(整髪剤、シリコーン、酸化物、ムース、シャンプー、リンス、コンディショナー、フケ、皮脂、癜風菌、ゴミ、塵、埃等)を含む。
【0031】
本発明における「施術容器」には、高速振動子を組み込むようにしてもよい。組み込む方法としては、例えば施術容器の外側若しくは内側の壁面に高速振動子を固定する。
このような構成によれば、高速振動子の高速振動が施術容器から密閉室の毛髪に伝わることにより、毛髪修復剤の浸透率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明の毛髪修復方法および毛髪修復装置によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)毛髪修復剤を毛髪の奥深くまで浸透させることができ、毛髪の表面から内部にまで薬液成分を確実に供給することができる。
(b)毛髪修復剤の定期的な供給により、短期間で毛髪修復剤の作用を発揮させることができる。
(c)髪質等の個人差に影響されにくく、必要な毛髪修復剤の供給量を確実に毛髪に供給することができる。
(d)毛髪修復剤の種類、濃度等の制限が少なく、使用可能な毛髪修復剤の幅が広範囲なものになる。
(e)毛髪修復剤の高い浸透効果により毛髪の健康状態を良好に保つことができるため、このような毛髪にパーマや染めを施した場合、パーマの持ちが格段に良くなり、また染め上がりもきれいに仕上げることができる。
【0033】
なお、第1発明〜第7発明は、単独で適用してもよいし、これらの発明を必要に応じて組み合わせて適用することもできる。また、第1発明〜第7発明に本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】典型的な毛髪の立体断面を示す模式図である。
図2】常圧状態における毛髪の縦断面を示す模式図である。
図3】真空状態における毛髪の縦断面を示す模式図である。
図4】真空状態を開放したときの毛髪の縦断面を示す模式図である。
図5】第1実施形態による毛髪修復装置を示す概略構成図である。
図6】第1実施形態による毛髪修復装置の施術容器および封止蓋を示す部分斜視図である。
図7】(A)は同施術容器の密閉状態を示す断面図、(B)は同施術容器の開放状態を示す断面図である。
図8】(A)は同施術容器に毛髪を密閉する前の状態を示す断面図、(B)は同施術容器に毛髪を密閉した後の状態を示す断面図である。
図9】第1実施形態による毛髪修復方法を説明するための工程図である。
図10】第2実施形態による毛髪修復装置を示す概略構成図である。
図11】第2実施形態による毛髪修復方法を説明するための工程図である。
図12】第3実施形態による毛髪修復装置の基本構成を示す斜視図である。
図13】変形例による毛髪修復装置の施術容器を示す半断面図である。
図14】他の変形例による毛髪修復装置の施術容器を示す一部切欠断面図である。
図15】他の変形例による毛髪修復装置の施術容器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態による毛髪修復装置を図5に示す。第1実施形態は、被施術者の頭皮に真空吸引マッサージを行い、併せて、毛髪修復の施術を行う例である。図5において、ヘヤキャップCは、被施術者の頭皮と毛髪の一部を密閉している。真空吸引マッサージの施術には、既存の各種方法が採用される。もちろん被施術者の頭皮に発毛・育毛用真空含浸方法を施すことも可能である。
【0036】
図5に示すように、毛髪修復装置は、主要な構成として、施術容器1、封止蓋2、修復剤供給器3および真空ポンプP1・P2を備える。施術容器1に被施術者の毛髪の一部が挿入される。施術容器1の挿入口に封止蓋2を取り付けることにより、容器内が毛髪を密閉する密閉室Rとなる。
【0037】
施術容器1の減圧口には、減圧ホース4を介して真空ポンプP1・P2が接続される。真空ポンプP1・P2は、図5に示すように、低真空用と高真空用の2種のポンプが採用され、減圧ホース4の三方弁8により切換可能になっている。低真空用の真空ポンプP1には、機械式の回転ポンプ、ピストンポンプ等が用いられ、高真空用の真空ポンプP2には、拡散ポンプ、エジェクターポンプ、拡散エジェクターポンプ等が用いられる。
施術容器の密閉室Rは、真空ポンプP1・P2により減圧ホース4を介して排気され、真空状態に保持される。
【0038】
減圧ホース4には、フィルター6、真空保持バルブ7、圧力計9が取り付けられる。フィルター6は、多孔質セラミック、布材等からなるもので、施術容器1内から吸い出された老廃物などの異物を回収するものである。真空保持バルブ7は、真空ポンプP1・P2により吸引された密閉室Rの真空状態を保持するものである。圧力計9は、密閉室Rの真空度を測定するものである。
【0039】
施術容器1の注入口には、薬液供給ホース5を介して修復剤供給器3が接続される。修復剤供給器3には、トリートメント、コンディショナー等の毛髪修復剤の薬液が注入され、薬液バルブ10を操作することで、薬液供給ホース5を通して毛髪修復剤が施術容器1内に送られる。
なお、施術容器1の注入口には噴霧ノズル(図示略)が取付けられる。噴霧ノズルは、円錐台形の板状のもので、板面に貫通して細孔が多数形成されている。施術容器1の構成材料には、例えば、シリコーン、ゴムを用いることができる。
【0040】
図6に示すように、施術容器1は、円筒形状に形成されるもので、その筒端の一方が開口部(毛髪の挿入口)になっている。この開口部には封止蓋2が着脱可能に取り付けられる。
【0041】
封止蓋2は、物理的に分離した一対の割り蓋12A,12Bで構成される(図7参照)。
割り蓋12A,12Bは、平面方向(筒長さ方向)から見て半円筒形であり、これらの直径方向にクリップ片13,13を備えている。クリップ片13,13を互いに重ね合わせてビス14を締め付けることで、割り蓋12Aと12Bとが一体的に固定される。
施術容器1と割り蓋12A,12Bとの取り付け部分には、環状突起16Aと環状溝16Bとがそれぞれ2本ずつ形成される。施術容器1の開口部に割り蓋12A,12Bを取り付けると、環状突起16Aと環状溝16Bとが嵌まり合って密閉室の気密性を保つ。
【0042】
割り蓋12A,12Bの互いに向き合う先端部分には、係合突起15Aと係合溝15Bとが形成される(図8(B)参照)。割り蓋12Aと12Bとを一体的に固定するとき、これらの係合突起15Aと係合溝15Bが互いに嵌まり合うことにより、両者の気密性が保たれる(図8(A)参照)。
なお、割り蓋12A,12Bが噛み合う噛合せ部分の形状は、密閉性が保てるものであれば図8に例示した楔形状に限らず任意でよい。
【0043】
施術容器1に毛髪を密閉する手順としては、最初に被施術者の毛髪を施術容器1の内側に挿入し、その後で、施術容器1の開口部に割り蓋12A,12Bを取り付ける。このとき、環状突起16Aと環状溝16Bと嵌合させつつ、係合突起15Aと係合溝15Bを嵌合させることで、施術容器1と封止蓋2(割り蓋12A,12B)との間の密閉性を保つ。
封止蓋2は、毛髪表面にダメージを与えないようにゴムやエラストマー、ウレタンなどの弾性力のある軟質材料で形成されることが望ましい。さらに、封止蓋2の外周部には、気密性を高めるために金属バンド(図示略)を締め付けることも可能である。
【0044】
次に、第1実施形態による毛髪修復装置の使用方法を説明する。
まず、図9に示すように、被施術者の毛髪の一部(少なくとも毛根より先端側の部分)を施術容器1に挿入する工程を行う(ステップS11)。この工程では、封止蓋2を施術容器1から一旦取り外しておき、その開口部から被施術者の毛髪を挿入する(図8(A)参照)。
なお、施術容器1への毛髪の挿入に先立って、シャンプー(界面活性剤)により毛髪表面を洗浄しておくことが望ましい。特に、研磨剤入りのシャンプーを塗布してマッサージし、毛髪に付着している汚れを落としておくと、後述の毛髪修復剤による効果がさらに良好になる。洗浄後は、タオルなどで毛髪の水分を拭き取っておく。
【0045】
次に、施術容器1に被施術者の毛髪を挿入した状態で、施術容器1の挿入口を封止して毛髪の挿入部分を密閉する工程を行う(ステップS12)。
この工程では、被施術者の毛髪を挿入した施術容器1の開口部(挿入口)に封止蓋2を取り付ける。このとき、封止蓋2の割り蓋12A,12Bを嵌め合わせ(図8(B))、さらにビス14で固定することで施術容器1内の密閉室Rの気密性を高める。これにより、毛髪の挿入部分を密閉状態に保つ。なお、ビス14による締め付けが不十分な場合は、封止蓋2の上から補強用の金属バンドで締め付けるとよい。
【0046】
次いで、施術容器1内の密閉室を真空状態に減圧し、毛髪表面のキューティクルH1の隙間から老廃物を吸い出す工程を行う(ステップS13)。
この工程では、真空ポンプP1、P2を順次作動させて密閉室Rの空気を排気し、密閉室Rを真空状態にする。真空圧の設定値は、被施術者の個々の髪質等により異なるが、10torr以下に低下させることが望ましい。このように密閉室Rが真空状態に保持される間に、キューティクルH1の間隙に詰まった異物(皮脂肪、シャンプー等)も外部に吸い出されることになる。
【0047】
真空ポンプP1、P2の使用方法については、例えば、まず、真空ポンプP1で760torr〜60torr程度までの補助真空を行い、次いで、真空ポンプP2に切り換えて10torr以下の目標値まで圧力を低下させる。これにより、各真空ポンプP1・P2に過大な負荷を与えることなく、比較的容易に目標とする真空状態を実現することができる。
なお、真空圧の設定値が10torr程度と比較的高い場合については、真空ポンプP1のみを作動させることで、十分に真空状態を保持することが可能である。したがって、真空ポンプP2を使用せずに、真空圧の目標値に応じて真空ポンプP1のみを使用するようにしてもよい。
【0048】
次に、密閉室Rの真空状態を開放する工程を行う(ステップS14)。
この工程は、真空ポンプP1・P2を停止した上で、真空保持バルブ7をを開放することにより行う。
密閉室Rが常圧に戻ったら、薬液バルブ10を開いて密閉室R内に毛髪修復剤の薬液を投入する(ステップS15)。これにより、毛髪表面に薬液が付着することになる。なおこの工程は、必要に応じて施術容器1から封止蓋2を取り外し、手揉みなどで毛髪に薬液を馴染ませるようにしてもよい。
【0049】
このように上記ステップS11〜S15による毛髪修復方法を行うと、毛髪を真空状態に保つことで、キューティクルH1の隙間から老廃物が効率的に除去される(図3参照)。その後、真空状態を開放してから毛髪に毛髪修復剤を付着させることで、老廃物の“バリアー”がなくなったキューティクルの隙間に毛細管現象によって毛髪修復剤が効率よく浸み込む。この結果、毛髪の内部にまで毛髪修復剤の成分が浸透し、毛髪の艶や張りなどの状態を効果的に改善することができる。
また、前記ステップS11〜S15の工程は、比較的短時間で行うことができるため、装置一台当たりで施術可能な人数が比較的多いものとなる。したがって、施術時間が短くなることから、定期的に施術を行なっても施術者に対する負担を小さくでき、さらに被施術者にとっても待ち時間が短いことで、時間を有効に使えるというメリットが生じる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態による毛髪修復装置を図10に示した。第2実施形態では、施術容器1に真空開放パイプ21および真空開放バルブ22を設けたものである。施術容器1を密閉する際には真空開放バルブ22が閉状態に保たれ、施術容器1を開放する際には真空開放バルブ22が開状態に切り替えられる。
その他の構成については、第1実施形態(図5)と実質的に同様である。
【0051】
第2実施形態による毛髪修復方法の手順を図11に示す。
第2実施形態では、被施術者の毛髪を施術容器1に挿入し、これを密閉した後、真空状態とするところまでは(ステップS21〜S23)、第1実施形態の工程(図9:ステップS11〜S13)と同様である。
【0052】
ステップ23を行った後、真空状態の密閉室Rに毛髪修復剤を供給する工程を行う(ステップS24)。
この工程では、密閉室R内が所定の真空圧に達したことを圧力計9で確認して真空保持バルブ7を閉じた後、すぐに薬液バルブ10を開いて毛髪修復剤の薬液を密閉室Rに噴霧する。このとき、密閉室R内は真空状態であるため、薬液が瞬間的に密閉室Rで超微粒子となって拡散する。
薬液の供給量については、毛髪修復剤の種類、濃度、密閉室Rの容積等によって異なるが、有効成分が密閉室Rに十分に充満する程度の量とする。例えば、1回の施術あたり薬液の使用量は、5〜20ml程度に使用するように調整することが望ましい。なお、薬液の濃度については、表面張力の影響が少ないため、通常の毛髪修復剤の使用時よりも高い濃度で用いることができる。
【0053】
次いで、密閉室Rの真空状態を開放し、密閉室Rの内気圧を瞬間的に上昇させることで、毛髪表面のキューティクルH1の隙間から毛髪内部に毛髪修復剤を吸い込ませる工程を行う(ステップS25)。
この工程では、まず、真空開放バルブ22を開にして密閉室Rに外気を送り、密閉室Rの内気圧を瞬間的に上昇させる。すると、空気の流入にともなって密閉室Rに拡散した薬液の一部がキューティクルH1の間隙に吸い込まれ、毛髪の芯の付近まで浸透する。
その後、密閉室Rの内気圧が大気圧に戻るのに伴って、キューティクルH1の隙間も元の状態まで徐々に回復する。そして、キューティクルH1の隙間に入った毛髪修復剤が毛髪の内部に浸透することになる。この結果、従来よりも毛髪修復剤の含浸効果を格段に高めることができ、毛髪の艶や張りなどの状態を効果的に改善することができる。
なお、施術容器1から毛髪を取り外した後、湿熱スチーマーにて毛髪を乾燥させることが望ましい。水蒸気に0.1ppm以下のオゾンを含有させると、毛髪に刺激を与えることにより、毛髪修復剤の修復作用をさらに促進することができる。
【0054】
このように上記ステップS21〜S25による毛髪修復方法を行うと、キューティクルH1の間隙に毛髪修復剤が吸い込まれることになり、より確実に薬液を毛髪の内部に供給することができる。したがって、毛髪修復剤の有効成分の作用を十分に引き出すことができ、より短期間で毛髪修復効果を発揮させることができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の毛髪修復装置の第3実施形態を図12に示す。
上記各実施形態で説明したような封止蓋2を使用する場合、施術容器に格納する毛髪の分量を、施術者が人手により調節しなければならない。ここで、修復経験の豊かな施術者であれば、施術容器へ挿入する毛髪の分量調節も比較的短時間で終えるものと考えられる。しかし、経験の浅い不慣れな施術者が上記分量調節を行うケースでは、この作業に手間取ってしまうおそれがある。このような場合、被施術者が不快感を抱き、施術サービスに対する評価や印象まで悪くなりかねない。
このような事態に陥ることを回避するため、第3実施形態による毛髪修復装置は、図12に示すように、封止蓋2に毛髪の誘導機構が設けられており、本機構により施術容器に引き込む毛髪の分量の微調節が可能となっている。
【0056】
図12に示すように、第3実施形態の毛髪修復装置は、基本的な構成として、施術容器31、封止蓋32、および真空ポンプP3を備えている。施術容器31には、減圧ホース33を介して真空ポンプP3が接続される。施術容器31の所定箇所には、同容器内の真空状態を開放するための開放口34と、修復剤供給器(図示省略)を繋ぐための供給口35とが設けられる。減圧ホース33には真空保持バルブ(図示省略)が設けられる。
【0057】
封止蓋32は、角筒状の蓋体36に矩形をなす細長のスリット37が開口している。蓋体36の内側(密閉室側)にはスリット37の長手方向に沿って一対のローラ38,38が取り付けられている。
スリット37は、施術容器1への毛髪の挿入口・排出口として機能する。ローラ38,38の表面は、毛髪を傷めることを避けるためゴムやエラストマー、ウレタンなどの弾性力のある軟質材料で形成されることが望ましい。
蓋体36の内部には、ローラ38,38を回転させるための駆動モータ(図示省略)が設けられる。本実施形態では、ローラ38,38が互いに隣り合うように配置され、その回転方向が互いに逆向きをなすように配置される。
なお、ローラ38,38の駆動モータとして、電動式モータを採用する場合、高精度の位置制御が可能なステッピングモータを用いることがより望ましい。さらに、その駆動機構には、各ローラの回転速度を調節するための速度制御機能や、各ローラの回転方向を正逆に切替える反転機能、さらには、施術(毛髪修復)を施す分量の毛髪を引き込んだときに各ローラを停止させる停止機能を設けることもできる。
【0058】
第3実施形態の毛髪修復装置を使用する場合、第1実施形態の毛髪修復方法(図9参照)、または第2実施形態の毛髪修復方法(図11参照)のいずれにも対応可能である。
このとき、ステップS11またはステップS21の毛髪を挿入する工程において、施術者は、封止蓋32による毛髪の誘導機構を動作させる。駆動モータ(図示略)が、例えば、電動式モータであれば、動作スイッチをオンにする。そして、スリット37を被施術者の毛髪の毛先に近づけ、ローラ38,38による毛髪の引き込みを開始する。なお、引込速度は、電動式モータが備える速度制御機能により、施術者によって調整可能である。
施術者は、引き込んだ毛髪の分量が、毛髪修復を施す分量に達したときに、各ローラを停止させる。なお、毛髪の引込量が、施術を施す量よりも多すぎるときは、ローラを反転駆動させ、適量となるよう微調整を行なう。
【0059】
以上説明したように、第3実施形態に係る毛髪修復装置および毛髪修復方法によれば、施術容器に密閉する毛髪の分量調整を誘導機構の引込操作により実行できる。そのため、毛髪修復に不慣れな施術者であっても手間取ることなく、毛髪の挿入作業を行なえる。
なお、第3実施形態において、引き込む毛髪の分量を数値入力により設定し、設定値に到達したときに各ローラを自動停止するように誘導機構を構成すれば、毛髪の挿入作業から施術者が解放され、本発明の毛髪修復方法をより簡便化することが可能となる。
【0060】
[変形例]
以上、第1〜3実施形態の毛髪修復方法および毛髪修復装置を説明したが、本発明の実施形態は、これらの構成に限定されることなく、種々の変形や変更を伴ってもよい。
施術容器については、第1〜3実施形態の構成に代えて、下記の構成を採用することができる。
【0061】
例えば、図13に示すように、施術容器41に弾性材料からなる一体型の封止蓋42を着脱可能に取り付けてもよい。
図13の変形例では、施術容器41の挿入口付近の外側壁面に2本の環状突起45A,45Aが周方向に沿って形成される。封止蓋42の内側には、環状突起45A,45Aに嵌合可能な環状溝45B,45Bが周方向に沿って設けられる。施術容器41の側面には、減圧ホースおよび薬液供給ホースを取り付けるためのパイプ43,44が設けられる。
施術容器41の挿入口を封止蓋42で封鎖すると、環状突起45A,45Aと環状溝45B,45Bとが互いに噛み合って容器内の密閉性が保たれる。施術容器41から封止蓋42を取り外す場合には、封止蓋42を引っ張りながら変形させることにより、環状突起45A,45Aから環状溝45B,45Bが外れる。
【0062】
図14の変形例は、施術容器にカートリッジ式の修復剤供給器(アンプル56)を装着するものである。
施術容器51の挿入口側には、第1実施形態と同様な構成の封止蓋52が取り付けられる。施術容器51の挿入口と反対側にはソケット53が設けられており、このソケット53の底部中心付近に注入口54が設けられる。施術容器1の側面には、減圧ホースを取り付けるためのパイプ55が設けられる。
アンプル56は、樹脂や金属等からなる円筒形の容器であり、その内部には所定量の毛髪修復剤が充填される。アンプル56の図14で上端側にはノズル57が設けられる。
【0063】
ソケット53にアンプル56が装着されていない場合は、注入口54が閉じた状態に保たれる。
ソケット53にアンプル56が装着されると、そのノズル57がソケット53内の注入口54に連結され、同時にアンプル56内の毛髪修復剤が注入口54から施術容器51内に噴出する。これにより、施術容器51の密閉室Rに毛髪修復剤を供給することが可能になる。ソケット53からアンプル56を取り出せば、注入口54が封鎖され、密閉室Rからの毛髪修復剤の漏れが防止される。
【0064】
このような構成によれば、ソケット53にアンプル56を装着する作業に伴って、密閉室R内に簡単かつ確実に適切な量の毛髪修復剤を供給することができる。アンプル56に一定量の毛髪修復剤を充填しておけば、供給量にバラツキが生じることを防止することもできる。
さらには、アンプル56内に毛髪修復剤を充填しておくことで、毛髪修復剤の保管や管理の作業が容易になるといった効果を得ることもできる。
【0065】
施術容器の形状については、第1〜3実施形態の形状に限定されず、施術者の毛髪を挿入・密閉可能であれば、任意の形状を選択できる。
例えば図15(A)に示すように、ほぼ正方形の断面形状を有する角筒型の施術容器としたり、図15(B)に示すように、三角形の断面形状を有する角筒型の施術容器としてもよい。さらには、図15(C)に示すように、球体形状の施術容器を採用することもできる。なお、図15(A)〜(C)において、符号61は施術容器、符号62は封止蓋、符号63,64は真空ポンプ、修復剤供給器などを任意に繋ぐためのパイプである。
【0066】
第1〜3実施形態において、吊下げ型の修復剤供給器と針付チューブ(図示略)により薬液の供給を行うよう構成してもよい。この場合、針付チューブは、シリコーン等で形成し、その両端に点滴針を取付けておく。
このような構成下では、修復剤供給器および針付チューブの取付や取替が容易になるため、施術作業の効率化を図ることができる。また、施術容器内の気密性を保ちつつ、薬液の供給量の調節を極めて容易に行うことができる。
【0067】
さらに、第1〜3実施形態において、施術容器に高速振動子を組み込むようにしてもよい。組み込む方法としては、例えば施術容器の外側若しくは内側の壁面に高速振動子を固定する。
このような構成では、高速振動子の高速振動が施術容器から密閉室の毛髪に伝わることにより、毛髪修復剤の浸透率を向上させることができる。つまり毛髪の振動が毛髪修復剤の毛髪内部への浸透を促す役割を果たす。
上記高速振動子は、毛髪修復剤の浸透率を高める範囲であればよく、特に限定されない。例えば3000〜7000rpm/分の小型モータを使用することができる。超音波振動子も含まれる。
さらに、毛髪修復剤の供給方法については、施術容器内に直接噴霧する他、スポンジ、不織布、綿布などに毛髪修復剤をあらかじめ染み込ませたものを施術容器内に入れてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 施術容器
2 封止蓋
3 修復剤供給器
4 減圧ホース
5 薬液供給ホース
6 フィルタ
7 真空保持バルブ
8 三方弁
9 圧力計
10 薬液バルブ
12A,12B 割り蓋
13 クリップ片
14 ビス
22 真空開放バルブ
D 老廃物
R 密閉室
H1 キューティクル
H2 毛髄
H3 フィブリル束
H4 間充物質
P1、P2、P3 真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15