特許第6132428号(P6132428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132428
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ブリッジ防止機能を備えた肥料散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   A01C15/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-59128(P2013-59128)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-183746(P2014-183746A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】天野克明
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭35−026730(JP,Y1)
【文献】 実開昭55−105538(JP,U)
【文献】 実開昭61−118210(JP,U)
【文献】 実開昭57−148461(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0284349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00 − 23/04
A01M 9/00
B65G 65/30 − 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物を収容するホッパーと、当該ホッパー内の下方に設けられ、回転軸に攪拌部材を取り付けたアジテーターとを有し、アジテーターの回転によって被収容物を攪拌させて下方の落下口から排出するようにした肥料散布装置において、
前記アジテーターの回転軸と平行に設けられた第二回転軸と、当該第二回転軸に間欠的に設けられた押圧部材とを有し、押圧部材の回転半径をアジテーターの攪拌部材の回転半径にオーバーラップさせ、アジテーターの攪拌部材に干渉しない位置まで押圧部材を正方向および逆方向に回動させて前記ホッパー内の被収容物を前記アジテーター側に向けて押圧部材で交互に押圧させるようにしたことを特徴とする肥料散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパー内に収容された肥料を圃場に散布する肥料散布装置に関するものであり、より詳しくは、ホッパー内における肥料のブリッジを防止できるようにした肥料散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的広い圃場などにおいては、圃場に肥料を散布する肥料散布装置が使用されている。このような肥料散布装置のうち、横幅方向に一定幅で肥料を落下散布させる肥料散布装置について図11に説明する。図11において、符号60は横長状のホッパーであり、内部に化成肥料や有機肥料などを収容できるようにしたものである。また、符号61は、そのホッパー60の下方に設けられたアジテーターであり、横長方向に設けられた回転軸62を回転させることによって攪拌部材63を回転させ、肥料を攪拌させて下方の落下口から肥料を落下させるようにしたものである。そして、このような肥料散布装置を用いて圃場に肥料を散布させる場合、ホッパー60内に肥料を収容するとともに、アジテーター61を回転させて落下口から適量の肥料を落下させる。
【0003】
ところで、このようにホッパー内に肥料を収容して散布する場合、例えば、その肥料が有機肥料などのように粘性を有していると、ホッパー内で肥料がブリッジを起こしてしまい、アジテーターの近傍が空洞の状態になって肥料を散布させることができなくなってしまう。このため、従来では、図8に示すように、アジテーター61の上部に攪拌装置64を同軸に設け、その攪拌装置64を回転させることにで、アジテーター61近傍でのブリッジを防止できるようにした方法や、図9に示すように、浅底に構成されたホッパー内にアジテーター65f、65bを前後方向に水平に設け、それぞれを内向きに回転させることでブリッジを防止できるようにした方法(特許文献1)、あるいは、図10に示すように、アジテーターの近傍にノックピン66を間欠的に設けて、このノックピン66でホッパー内の壁面を叩くことによってブリッジを防止できるようにする方法(特許文献2)などが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−237090号公報
【特許文献2】特開平9−98627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなブリッジを防止する方法では、次のような問題を有する。
【0006】
すなわち、図8に示すように、アジテーター61の上部の攪拌装置64を回転させてブリッジを防止する方法では、攪拌装置64の回転半径とアジテーター61の回転半径を干渉しないように設けなければならないが、このように攪拌装置64とアジテーター61を離間させると、図8の斜線領域で示すように、それぞれの隙間に肥料が滞留してしまう。また、攪拌装置64を一方向に回転させる場合、攪拌装置64によって上方に掻き上げる部分(図8の攪拌装置64の左側)では肥料が少なくなってしまい、アジテーター61に肥料を供給できなくなってしまう。
【0007】
また、図9に示すように、浅底に構成されたホッパー内にアジテーター65f、65bを並列させる方法では、肥料の収容容積が小さくなってしまう。このため、この収容容積を大きくしようとすると、ホッパーの高さを高くしなければならないが、このようにすると、結局はアジテーターの上方に存在する肥料がブリッジを起こしてしまうといった問題を生ずる。
【0008】
さらには、図10に示すようなノックピン66で壁面を叩く方法では、大きな衝撃を壁面に与えなければブリッジを崩すことができず、壁面の損傷や騒音などを生じさせてしまう。また、ノックピン66で壁面を叩く場合、ノックピン66で大きな衝撃を壁面に与えなければならないが、通常、ホッパー内には肥料が存在しているため、この肥料が抵抗になって大きな衝撃を与えることが困難になる。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、比較的大きな収容容積を有するホッパー内においてアジテーター近傍におけるブリッジを確実に防止できるようにした肥料散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、被収容物を収容するホッパーと、当該ホッパー内の下方に設けられ、回転軸に攪拌部材を取り付けたアジテーターとを有し、アジテーターの回転によって被収容物を攪拌させて下方の落下口から排出するようにした肥料散布装置において、前記アジテーターの回転軸と平行に設けられた第二回転軸と、当該第二回転軸に間欠的に設けられた押圧部材とを有し、押圧部材の回転半径をアジテーターの攪拌部材の回転半径にオーバーラップさせ、アジテーターの攪拌部材に干渉しない位置まで押圧部材を正方向および逆方向に回動させて前記ホッパー内の被収容物を前記アジテーター側に向けて押圧部材で交互に押圧させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アジテーターの近傍まで交互に押圧部材を上下動させることで、アジテーター近傍でのブリッジを防止することができ、アジテーター側に肥料を確実に供給することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態を示す外観斜視図
図2】同形態における側面概略図
図3】同形態における平面概略図
図4】同形態における押圧手段の動作を示す図
図5】第二の実施の形態における肥料散布装置の平面概略図
図6】同形態における押圧手段の動作を示す図
図7】第三の実施の形態における押圧手段を示す図
図8】従来例におけるブリッジを防止する機構図
図9】従来例におけるブリッジを防止する機構図
図10】従来例におけるブリッジを防止する機構図
図11】従来例における一般的な肥料散布装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態における肥料散布装置1について図面を参照しながら説明する。
【0014】
この実施の形態における肥料散布装置1は、トラクターなどの牽引車に取り付けられて使用されるものであって、図1に示すように、被散布物である肥料を収容するホッパー2と、図3に示すように、そのホッパー2内に収容された肥料を攪拌させるアジテーター3と、ホッパー2の底板23に設けられた肥料落下用の落下口23aを覆うシャッター25などを備えて構成されている。そして、特徴的には、横軸方向に設けられたアジテーター3の上部に、押圧部材42を上下動させるための押圧手段4を設けるようにして、ホッパー2内における肥料のブリッジを防止できるようにしたものである。以下、本実施の形態における肥料散布装置1の構成について詳細に説明する。
【0015】
この肥料散布装置1のホッパー2は、図1に示すように、左右幅広に構成されるものであって、上部前面板21fおよび上部後面板21bと、その下方に、漸次下方に向けて内側の隙間幅を小さくした前面傾斜板22fや後面傾斜板22bと、その前面傾斜板22fや後面傾斜板22bの下端側に設けられる底板23や左右両側の側板24などを設け、これらの壁面で囲まれた空間内に肥料を収容できるようにしている。
【0016】
また、アジテーター3は、ホッパー2に収容された肥料を攪拌させて、図3に示すように、底板23の落下口23aから肥料を落下させられるようにしたものであって、ホッパー2の略中央位置に設けられたミッション33を介して左右方向に回転軸31を回転させ、この回転軸31に間欠的に取り付けられた攪拌部材32を回転させられるようになっている。
【0017】
一方、ホッパー2の底板23に設けられる落下口23aは、一定間隔毎に複数設けられるものであって、矩形状の開口部26を有するシャッター25をスライドさせることによって開口幅を調整して肥料の落下量を調整できるようになっている。なお、このシャッター25は、油圧によって左右方向にスライドさせて開口幅を調整できるようになっている。
【0018】
このような構成において、本実施の形態では、アジテーター3の回転軸31の上方で肥料を上下方向に交互に押圧するための押圧手段4を設けている。
【0019】
この押圧手段4の第一の実施の形態について説明する。
【0020】
この第一の実施の形態における押圧手段4は、図2に示すように、アジテーター3の回転軸31の上部に平行に設けられる第二回転軸41と、その第二回転軸41の軸方向に沿って間欠的(図3参照)に設けられる押圧部材42と、その第二回転軸41を一定角度の範囲内で正逆方向に回転させる回転機構43(図1参照)とを備えて構成されており、その第二回転軸41を正逆方向に回転させることによって押圧部材42を交互に上下動させるようになっている。このうち、第二回転軸41は、ホッパー2の左右の側板24に軸支されており、その一端側をホッパー2の側板24から突出させて、そこにフランジ部41aを設けるようにしている。また、押圧部材42は、第二回転軸41の側面の前面側と後面側に左右対称となるように間欠的に設けられており、その第二回転軸41の側面から薄板状の部材を突出させるようにしている。なお、ここでは、押圧部材42として薄板状の部材を設けるようにしているが、線状の部材であってもよい。
【0021】
ここで、押圧部材42を第二回転軸41に沿って間欠的に設ける場合、アジテーター3の近傍におけるブリッジを防止するために、図2図4に示すように、第二回転軸41から前面傾斜板22fもしくは後面傾斜板22bへ下した垂線より下方側で回動する下方押圧部材42dと、ホッパー2の上方位置でのブリッジを防止するために、ホッパー2の上方から前記垂線の位置までの範囲内で回動する上方押圧部材42uとを設けるようにする。このとき、下方押圧部材42dの回転半径は、攪拌部材32の回転半径にオーバーラップするようにしておき、回転機構43を用いて下方押圧部材42dを攪拌部材32の回転半径の近傍まで回動させるようにする。
【0022】
そして、このような第二回転軸41を正逆方向に回転させる際には、その回転機構43として、アジテーター3の回転駆動力を用いたクランク機構を用いる。より具体的には、図1に示すように、このアジテーター3の回転軸31の一端側にフランジ部34を設け、そのフランジ部34と第二回転軸41のフランジ部41aとの間にリンク部材41bを取り付けて、アジテーター3の回転力を用いて第二回転軸41を一定角度の範囲内で正逆方向に回転させる。すると、図4(a)(b)に示すように、その第二回転軸41に取り付けられている押圧部材42が、交互に上下動するように回動し、上方押圧部材42uでホッパー2の上方におけるブリッジや前面傾斜板22fもしくは後面傾斜板22bに密着した肥料を掻き落とし、また、下方押圧部材42dでアジテーター3近傍でのブリッジを防止する。
【0023】
次に、第二の実施の形態における押圧手段4aについて、図5および図6を用いて説明する。なお、この実施の形態において、第一の実施の形態と同じ符号を付したものは、同じ構成を有するものとする。
【0024】
上記第一の実施の形態では、下方押圧部材42dを、アジテーター3の攪拌部材32の回転半径と干渉しない位置まで回動させるようにしているが、第二の実施の形態では、図5に示すように、この下方押圧部材42dを、間欠的に設けられた攪拌部材32の隙間に入り込ませるような幅に設定しておき、図6に示すように、その押圧部材42を攪拌部材32の隙間に入り込ませる位置まで回動させるようにしている。すなわち、アジテーター3の攪拌部材32と攪拌部材32の隙間をWとした場合、下方押圧部材42dをWよりも小さな幅に設定しておき、この下方押圧部材42dを攪拌部材32の隙間に入り込ませて、回転軸31の近傍の位置まで回動させるようにする。
【0025】
このようにすれば、よりアジテーター3近傍における肥料の滞留を防止することができるようになる。
【0026】
次に、第三の実施の形態における押圧手段4bについて、図7を用いて説明する。なお、本実施の形態においても、第一の実施の形態と同じ符号を付したものは、同じ構成を有するものとする。
【0027】
上記二つの実施の形態では、第二回転軸41を設けて押圧部材42を一定角度範囲内で回動させるようにしたが、この実施の形態では、図7に示すように、ホッパー2の内側壁面に沿う押圧部材42aを水平に設け、この押圧部材42aをホッパー2の内側壁面に沿って上下動させるようにしたものである。
【0028】
このように押圧部材42aを上下動させるための押圧手段4bとしては、例えば、アジテーター3の回転軸31にクランク46を設け、そのクランク46に前面傾斜板22fや後面傾斜板22bに沿った方向に伸びるリンク部材44を設ける。そして、そのリンク部材44をガイド45で摺動可能に支持するとともに、そのリンク部材44の上端に、回転軸31と平行な押圧部材42aを設けるようにする。このようにすれば、アジテーター3の回転軸31を回転させることによって、クランク46を介してガイド45で支持されたリンク部材44が内壁に沿って上下動し、これに伴ってリンク部材44の上端に設けられた押圧部材42aがそれぞれ前面傾斜板22fや後面傾斜板22bの壁面に沿って上下動する。このようにすれば、ホッパー2の壁面に付着した肥料を押圧部材42aで掻き落とすことができるため、ホッパー2内におけるブリッジを防止することができるとともに、この押圧部材42aをアジテーター3の近傍まで設けるようにすれば、アジテーター3近傍におけるブリッジも防止できるようになる。
【0029】
このように上記実施の形態によれば、肥料を収容するホッパー2と、当該ホッパー内2の下方に設けられ、回転軸31に攪拌部材32を取り付けたアジテーター3とを有し、アジテーター3の回転によって肥料を攪拌させて下方の落下口23aから排出するようにした肥料散布装置1において、前記アジテーター3の回転軸31と平行に設けられた第二回転軸41と、当該第二回転軸41に間欠的に設けられた押圧部材42とを有し、押圧部材42の回転半径をアジテーター3の攪拌部材64の回転半径にオーバーラップさせ、アジテーター3の攪拌部材64に干渉しない位置まで押圧部材42を正方向および逆方向に回動させて前記ホッパー2内の肥料を前記アジテーター3側に向けて押圧部材42で交互に押圧させるようにしたので、アジテーターの近傍まで交互に押圧部材を上下動させることで、アジテーター近傍でのブリッジを防止することができ、アジテーター側に肥料を確実に供給することができるようになる。
【0030】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0031】
例えば、上記実施の形態では、第二回転軸41を回転軸31の上方に一本だけ設けるようにしたが、複数本設けるようにして、それぞれを正逆方向に回転させるようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、押圧部材42を上下動させる際には、アジテーター3の回転駆動力を用いて上下動させるようにしたが、独自の駆動源を用いて上下動させるようにしてもよい。
【0033】
さらには、上記実施の形態では、被散布物として肥料を例に挙げて説明したが、肥料に限らず、種子や土壌、薬品などを散布させる場合についても適用することができる。
【0034】
また、上記実施の形態では、横軸のアジテーター3を有する肥料散布装置1について説明したが、縦軸のアジテーターを有する装置についても同様の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・肥料散布装置
2・・・ホッパー
21f・・・上部前面板
21b・・・上部後面板
22f・・・前面傾斜板
22b・・・後面傾斜板
23・・・底板
24・・・側板
23a・・・開口部
25・・・シャッター
3・・・アジテーター
31・・・回転軸
32・・・攪拌部材
33・・・ミッション
34・・・フランジ
4(4a、4b)・・・押圧手段
41・・・第二回転軸
41a・・・フランジ
41b・・・リンク部材
42・・・押圧部材
42d・・・下方押圧部材
42u・・・上方押圧部材
43・・・回転機構
44・・・リンク部材
45・・・ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11