(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132433
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】倒立型エアゾール用バルブ、該バルブを備える倒立型エアゾール用容器、並びに該エアゾール用容器に内容物が充填された倒立型エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
B05B 9/04 20060101AFI20170515BHJP
B65D 83/14 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
B05B9/04
B65D83/14 200
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-200604(P2013-200604)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-66474(P2015-66474A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】占部 駿
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭34−8438(JP,B1)
【文献】
実開昭58−103780(JP,U)
【文献】
実開昭53−156915(JP,U)
【文献】
実開平1−122859(JP,U)
【文献】
実開昭61−139767(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 3/18,7/00−9/08
B65D 83/00−83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立させた状態で内容物を吐出して使用する倒立型エアゾールに用いられる倒立型エアゾール用バルブであって、
内容物を流入させるための流入孔を有し、該流入孔の開口を底部に備えるハウジングと、
前記ハウジング上部から突出して設けられ且つ付勢手段により上方向に付勢されたステムと、
前記ハウジングと前記ステムとが取り付けられたマウンティング・カップと、
前記ハウジングの前記流入孔と連通して下方に延びるとともに、該ハウジングに対して該ハウジングの中心軸回りに回転可能に接続された第1管と、
前記第1管と連通するとともに、該第1管に対して鋭角をなすように該第1管の半径方向外側に上向きに延設され、延設方向端部に吸入口を有する第2管と、を備え、
前記ハウジングが、前記第1管の脱落を防止するための係止部を備えており、前記係止部と前記第1管の内壁とが当接するように前記ハウジングが前記第1管に圧入されることにより、前記第1管が前記ハウジングに対して回転可能に接続されている
ことを特徴とする倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項2】
前記第2管が、前記吸入口側に向かうに従い外径が大きくなるように形成された略円筒状の第2管本体と、該第2管本体の側面の外側に延設された鍔部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の倒立型エアゾール用バルブを、エアゾール用缶に取り付けることによって形成されてなる倒立型エアゾール用容器。
【請求項4】
請求項3記載の倒立型エアゾール用容器に前記内容物が充填された倒立型エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立状態で、且つ任意の方向に浅い角度で傾けて使用した場合でも、内容物を缶外へ吐出することができ残量を減らすことができる倒立型エアゾール用バルブ、該バルブを備える倒立型エアゾール用容器、並びに該エアゾール用容器に内容物が充填された倒立型エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
倒立型エアゾールとは、化粧品等に用いられ、倒立させた時に下側に位置するステムを押すことによって内容物を吐出する型のエアゾール製品等のことである。以下、倒立型エアゾールに用いる容器を、倒立型エアゾール用容器という。また、該容器で、缶上に取り付けて用いるバルブ構造体を、倒立型エアゾール用バルブという。
【0003】
図10は、従来の倒立型エアゾール用容器(200)の構造を示す断面図である。倒立型エアゾール用容器(200)は、エアゾール用缶(1)と、倒立型エアゾール用バルブ(C)とを備えている。倒立型エアゾール用バルブ(C)は、マウンティング・カップ(1a)と、ステム(2)と、ハウジング(3)とを備えている。ハウジング(3)は、ステム(2)と容器の内側とを連通するバルブ機能を有している。ハウジング(3)の容器内方の開口(3a)が、原液吸い込み口である。マウンティング・カップ(1a)は、ステム(2)とハウジング(3)とを保持しており、いわゆるクリンチ処理によって、エアゾール用缶(1)に気密に接続されている。
【0004】
倒立型エアゾール用容器(200)は、ステム(2)を真下に向けた状態で用いることを想定して設計されている。しかし、実際には、倒立型エアゾール用容器(200)は、
図10(a)、(b)に示すように、ステム(2)を斜め下に向けた状態で使用されることが多い。
図10(a)は、原液(A)が多くある状態を示す。
図10(b)は、原液(A)が残り少なくなった状態を示す。
【0005】
図10(b)に示すように、原液(A)が残り少なくなった場合、原液吸い込み口である開口(3a)は、原液(A)を吸い込むことができなくなる。この場合、ステム(2)は、残りの原液(A)を吐出することができず、代わりに、原液を吐出するために充填されている噴射剤(B)の気相部のみを噴射してしまう。
また、他のバルブ形状としてハウジングの側面に原液吸い込み口のスリットが形成された倒立型エアゾール用バルブも汎用されているが、当該形状の倒立型エアゾール用バルブを用いた場合でも、ステムを斜め下に向けた状態で使用されると原液を吐出するために充填されている噴射剤の気相部のみを噴射してしまうといった問題がある。
このような原液の残量に係る諸問題は、使用者からの商品クレームにも繋がる虞があり、倒立型エアゾールにおける残量低減への取り組みは急務である。
【0006】
従来より、正立または倒立の何れであっても吐出することができる形態として、例えば、流体送り用管状部の上端から下端の重錘までの中間部をわん曲可能とする試みがなされている(例えば、特許文献1)。
【0007】
当該試みによって、浅い使用角度(吐出口を斜め下方)で使用した場合であっても原液を吐出することができるようになるものの、正立状態から倒立状態に使用角度を変える時にチューブの先端が缶の内壁に当たってしまうことから、チューブが瞬時に曲がらずに噴射剤(気相)のみが吐出される虞があるといった問題や、振盪によりチューブが缶内で絡まるといった問題がある。チューブの先端が缶の内壁に当たってしまうことを抑制するために、チューブ長を短くする試みも考え得るが、ある一定の長さでないとチューブ自体が曲がらない。若しくは、錘をかなり重くしないと曲がらないといった問題もある。
【0008】
一方で、ハウジング自体の構造に特徴を持たせる試みもなされている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
しかしながら、当該特許文献のハウジングの構造は、吐出口が真下に向くような形態で使用されることを前提とした設計であることから、吐出口を斜め下方に向けて使用される場面においては、従来の問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平6−57867号公報
【特許文献2】特開平8−2568号公報
【特許文献3】特開平11−239742号公報
【特許文献4】特開2004−168320号公報
【特許文献5】特開2008−254751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであって、倒立状態で、且つ、任意の方向に浅い角度で傾けて使用した場合でも、容器内の原液を外部へ吐出することができ内容物の残量を少なくすることができる倒立型エアゾール用バルブ、該バルブを備える倒立型エアゾール用容器、並びに該エアゾール用容器に内容物が充填された倒立型エアゾール製品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、倒立させた状態で内容物を吐出して使用する倒立型エアゾールに用いられる倒立型エアゾール用バルブであって、内容物を流入させるための流入孔を有し、該流入孔の開口を底部に備えるハウジングと、前記ハウジング上部から突出して設けられ且つ付勢手段により上方向に付勢されたステムと、前記ハウジングと前記ステムとが取り付けられたマウンティング・カップと、前記ハウジングの前記流入孔と連通して下方に延びるとともに、該ハウジングに対して該ハウジングの中心軸回りに回転可能に接続された第1管と、前記第1管と連通するとともに、該第1管に対して鋭角をなすように該第1管の半径方向外側に上向きに延設され、延設方向端部に吸入口を有する第2管と、を備え
、
前記ハウジングが、前記第1管の脱落を防止するための係止部を備えており、前記係止部と前記第1管の内壁とが当接するように前記ハウジングが前記第1管に圧入されることにより、前記第1管が前記ハウジングに対して回転可能に接続されていることを特徴とする倒立型エアゾール用バルブである。
【0013】
好ましくは、前記第2管が、前記吸入口側に向かうに従い外径が大きくなるように形成された略円筒状の第2管本体と、該第2管本体の側面の外側に延設された鍔部とを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記倒立型エアゾール用バルブを、エアゾール用缶に取り付けることによって形成されてなる倒立型エアゾール用容器である。
【0015】
また、本発明は、前記倒立型エアゾール用容器に前記内容物が充填された倒立型エアゾール製品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハウジングに対して該ハウジングの中心軸回りに回転可能に接続された第1管と、前記第1管と連通するとともに該第1管に対して鋭角をなすように該第1管の半径方向外側に上向きに延設され、延設方向端部に吸入口を有する第2管と、を備えることにより、完全な倒立状態ではなく浅い角度で傾けて使用される場合にも、第2管の吸入口は、第2管に作用する重力によって、常に下方向(原液が存在する方向)を向くこととなる。さらに、使用者が缶を中心軸回りに回転させたとしても、第2管に作用する重力によって第1管が回転し、第2管の開口は常に下方向を向くこととなる。したがって、本発明の倒立型エアゾール用バルブは、完全な倒立状態ではなく任意の方向に浅い角度で傾けて使用した場合も、缶の中心軸回りの方向に依存することなくどの方向においても内容物を缶外部へ吐出することが可能であり、内容物の残量を減らすことができる。
更に、前記ハウジングが、前記第1管の脱落を防止するための係止部を備えており、前記係止部と前記第1管の内壁とが当接するように前記ハウジングが前記第1管に圧入されることにより、前記第1管が前記ハウジングに対して回転可能に接続されていることによって、第1管がハウジングに対し脱落することなく回転するので、確実に吸入口を下方向(原液が存在する方向)に向けることができる。
【0018】
前記第2管が、前記吸入口側に向かうに従い外径が大きくなるように形成された略円筒状の第2管本体と、該第2管本体の側面に延設された鍔部とを備えていることにより、第2管に作用する重力が大きくなり、これにより、確実に吸入口を下方向(原液が存在する方向)に向けることができる。
【0019】
また、本発明によれば、上記効果を奏する倒立型エアゾール用容器及び該エアゾール用容器に内容物が充填された倒立型エアゾール製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る倒立型エアゾール用バルブ及び倒立型エアゾール用容器の構造を説明するための断面図である。
【
図2】本発明に係る倒立型エアゾール用バルブを下方向から視た図である。
【
図3】本発明に係る倒立型エアゾール用バルブのハウジング部分の拡大側面図である。
【
図4】ハウジングと第1管の接続部の第1実施形態の部分拡大断面図である。
【
図5】ハウジングと第1管の接続部の第2実施形態の部分拡大断面図である。
【
図6】ハウジングと第1管の接続部の第3実施形態の部分拡大断面図である。
【
図7】ハウジングと第1管の接続部の第4実施形態の部分拡大断面図である。
【
図8】倒立型エアゾールの使用状態を説明するための断面図であり、缶を斜め下向きにした状態を示す図である。
【
図9】倒立型エアゾールの使用状態を説明するための図であり、倒立型エアゾール用バルブを下方向から視た図である。
【
図10】従来の倒立型エアゾールの使用状態を示す図であり、(a)原液が多くある状態、(b)原液が残り少なくなった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る倒立型エアゾール用バルブ、該バルブを備える倒立型エアゾール用容器、並びに該エアゾール用容器に内容物が充填された倒立型エアゾール製品について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、倒立型エアゾール用バルブを備える倒立型エアゾール用容器(100)の断面図であり、
図2は、本発明に係る倒立型エアゾール用バルブを下方向から視た図であり、
図3は、本発明に係る倒立型エアゾール用バルブのハウジング部分の拡大側面図である。
倒立型エアゾール用バルブ(10)は、マウンティング・カップ(1a)と、ステム(2)と、ハウジング(3)と、第1管(4)と、第2管(5)と、を備えている。ステム(2)は、ハウジング(3)の上部から突出して設けられている。そして、ステム(2)とハウジング(3)とが、エアゾール用缶(1)の頭頂部に備えられたマウンティング・カップ(1a)に取り付けられており、マウンティング・カップ(1a)は、エアゾール用缶(1)の上部開口部分との間に気密に接続されている。
【0023】
ハウジング(3)は、原液(A)と噴射剤(B)とからなる内容物を流入させるための流入孔(3e)を有し、流入孔(3e)の開口(3a)を底部に備えている。
ハウジング(3)は、付勢手段であるスプリング(3i)を有しており、スプリング(3i)はステム(2)を常に上方へと付勢している。ステム(2)は、図中、縦方向に延びている吐出口(縦孔)(2a)と、吐出口(2a)から横向きに延びているステムオリフィス(横孔)(2b)と、を備えている。ステムオリフィス(2b)は、ステム(2)が押下されていないときは、ハウジング(3)の弾性体であるパッキン(3c)によって密閉されている。ハウジング(3)は、パッキン(3c)の下側に、ステム(2)を押下したときにステムオリフィス(2b)と開口(3a)とを接続する接続路(3d)を備えている。
【0024】
ハウジング(3)は、ステム(2)の下方部分が収容される円筒状のハウジング本体(3b)と、ハウジング本体(3b)の下方に一体的に形成され、ハウジング本体(3b)より小さな径を有する円筒状の嵌入部(3f)を有している。嵌入部(3f)には、第1管(4)が流入孔(3e)と連通して下方に延びるように外嵌されて接続されている。
第1管(4)は、上部に開口(4a)を有する流入孔(4b)を有している。流入孔(4b)は貫通穴ではなく、第1管(4)の上部のみ開口している。
【0025】
図4は、ハウジングと第1管の接続部の第1実施形態の部分拡大断面図である。
嵌入部(3f)は、先端に円錐台形状(断面図で示す場合は、矢印形状)の係止部(3g)を有しており、一方、第1管(4)の内壁(4c)には突出部(4d)が設けられている。突出部(4d)の最も突出した部分の内径は嵌入部(3f)の外径よりも大きな値となるように、且つ係止部(3g)の外径よりも小さな値となるように形成されている。そして、嵌入部(3f)は、係止部(3g)が第1管(4)の内壁(4c)に当接するとともに突出部(4d)の下方に位置するように第1管(4)の流入孔(4b)に圧入されている。これにより、第1管(4)は、ハウジング(3)に対して脱落することなくハウジング(3)の中心軸回りに回転可能に接続されている。
【0026】
図5は、ハウジングと第1管の接続部の第2実施形態の部分拡大断面図である。
この第2実施形態は、突出部(4d)の最も突出した部分の内径が嵌入部(3f)の内径と略同じ値となるように形成されている点でのみ第1実施形態と異なる。これにより、嵌入部(3f)と内壁(4c)との隙間から内容物が漏れるのを防ぐことができる。また、第1実施形態と同様に、嵌入部(3f)は、係止部(3g)が第1管(4)の内壁(4c)に当接するとともに突出部(4d)の下方に位置するように第1管(4)の流入孔(4b)に圧入されている。これにより、第1管(4)は、ハウジング(3)に対して脱落することなくハウジング(3)の中心軸回りに回転可能に接続されている。
【0027】
図6は、ハウジングと第1管の接続部の第3実施形態の部分拡大断面図である。
図示の如く、突出部(4d)は、ハウジング(3)の軸方向に沿って所定ピッチで複数形成されていてもよい。これにより嵌入部(3f)と内壁(4c)との隙間から内容物が漏れるのをより防ぐことができる。また、第1実施形態と同様に、嵌入部(3f)は、係止部(3g)が第1管(4)の内壁(4c)に当接するとともに突出部(4d)の下方に位置するように第1管(4)の流入孔(4b)に圧入されている。これにより、第1管(4)は、ハウジング(3)に対して脱落することなくハウジング(3)の中心軸回りに回転可能に接続されている。
【0028】
図7は、ハウジングと第1管の接続部の第4実施形態の部分拡大断面図である。
嵌入部(3f)の先端には球状部(3h)が形成されており、球状部(3h)の側面には外側に突出する環状の係止部(3g)が形成されている。
一方、第1管(4)の上端部には、上部が開口した凹部(4e)を有する受入部(4d)が備えられている。凹部(4e)は、球を水平方向中央よりやや上部でカットした載頭球形状をしており、凹部(4e)の上端部の内径は、係止部(3g)の外径よりも小さな値となっている。球状部(3h)を凹部(4e)に圧入することで、第1管(4)は脱落することなくハウジング(3)の中心軸回りに回転可能に接続される。
【0029】
再び、
図1及び
図2を参照する。第1管(4)には、第1管(4)と連通するように第2管(5)が接続されている。第2管(5)は、第1管(4)に対して鋭角αをなすように第1管(4)の半径方向外側に上向きに延設されている。この鋭角αは、90°より鋭角であり、かつ、第2管(5)がマウンティング・カップ(1)に接触しない角度であれば特に限定されないが、内容物の残量を減らすことができる観点から、10〜80°であることが好ましく、20〜70°であることがより好ましい。
【0030】
第2管(5)は、略円筒状の第2管本体(5c)を備えており、第2管本体(5c)の延設方向端部に吸入口(5a)を有する流入穴(5b)を備えている。内容物は、第2管(5)の吸入口(5a)から吸入され、第2管(5)の流入孔(5b)、第1管(4)の流入孔(4b)を通ってハウジング(3)の流入孔(3e)に流入し、最終的には吐出口(2a)から吐出される。
【0031】
第2管本体(5c)は、吸入口(5a)側に向かうに従い径が大きくなるように形成されていることが好ましい。これにより、第2管(5)に作用する重力が吸入口(5a)側に向かうに従い大きくなるので、吸入口(5a)をより確実に常に下方向に向けることができる。
【0032】
図2及び
図3に示す如く、第2管(5)は、第2管本体(5c)の左右の側面から水平方向に延設された平板状の鍔部(5d)を備えていることが好ましい。鍔部(5d)を備えていることにより、第2管(5)に作用する重力が大きくなり、吸入口(5a)をより確実に常に下方向に向けることができる。鍔部(5d)の形状は、吸入口(5a)をより確実に常に下方向に向けることができる形状であれば特に限定されない。具体的な鍔部(5d)の形状としては、例えば、四角形状、台形状、菱形状、半楕円形状、半円形状、三角形状等を例示することができる。
【0033】
上記構成により、倒立型エアゾール用バルブ(10)が倒立状態で、且つ浅い角度でどの方向に傾けられたとしても、第2管(5)の吸入口(5a)は、常に下方向を向くこととなり、内容物を最後まで吸入口(5a)から吸入して吐出口(2a)から吐出することができる。
【0034】
第2管(5)の端部は、水平方向においてエアゾール用缶(1)に装着が可能な範囲内で、缶内周面(1b)の近傍にまで達していることが好ましい。また、前記端部は、上下方向においてマウンティング・カップ(1a)に近いほうが好ましい。但し、第2管(5)を容易にエアゾール用缶(1)の内部に挿入できるという観点から、マウンティング・カップ(1a)の外径を超えない値とされていることがより好ましい。
【0035】
第1管(4)と第2管(5)は、夫々別部品として両者を接続することにより形成してもよく、一体的に成形されていてもよい。
【0036】
図8は、倒立型エアゾール製品の使用状態を説明するための断面図であり、缶を斜め下向きにした状態を示す図である。
図9は、倒立型エアゾール用バルブを下方向から視た図である。
【0037】
上記した本発明の構成を採用することによって、第2管(5)は、ステム(2)を斜め下に向けた状態で使用する場合であっても効率よく原液(A)を吸い込むことができ、全ての原液(A)をステム(2)から噴射することができる。
【0038】
本発明では、第1管(4)は、ハウジング(3)の嵌入部(3f)に対して中心軸回りに回転可能に接続されており、且つ第2管(5)に作用する重力によって、第2管(5)の開口(5a)は、常に下方向を向くこととなる。さらに、エアゾール用缶(1)を中心軸回り(
図9の矢印方向)に回転させたときも、第2管(5)の重力の作用によって第1管(4)が回転し、第2管(5)の開口(5a)は、常に下方向を向くこととなる。したがって、本発明の倒立型エアゾール用バルブ(10)は、完全な倒立状態ではなく浅い角度で傾けて使用した場合も、内容物を缶外部へ吐出することが可能であり、且つ缶の中心軸回りの方向に依存することなくどの方向においても内容物を缶外部へ吐出することができる。
【0039】
本発明は、上記した倒立型エアゾール用バルブ(10)だけでなく、倒立型エアゾール用バルブ(10)を、エアゾール用缶(1)に取り付けることによって形成された倒立型エアゾール用容器(100)も含まれる。エアゾール用缶(1)の形状は特に限定されないが、内容物の残量を減らすことができる観点から、円筒状であることが好ましい。
【0040】
また、本発明に係る倒立型エアゾール用容器(100)の内部には、化粧料、医薬品、医薬部外品、香料、殺虫剤等の原液(A)と、原液(A)を吐出するための噴射剤(B)からなる内容物が充填された倒立型エアゾール製品も本発明に含まれる。噴射剤(B)としては、特に限定されないが、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)、ジメチルエーテル(DME:Dimethylether)、イソペンタン、フロロカーボン等が挙げられる。前記内容物が原液(A)と噴射剤(B)とから構成される場合、原液(A)中に噴射剤(B)の一部が溶け込み完全に相溶し均一になっていてもよいし、噴射剤(B)が原液(A)に溶け込まず両者が不均一な状態で存在していてもよい。
【0041】
本発明の倒立型エアゾール製品から吐出される内容物の形態としては、泡沫状、霧状、ミスト状、又は粘性液体状(ジェル状)の形態で吐出されれば特に限定されない。また、倒立型エアゾール製品としては、例えば、整髪剤、染毛剤、育毛剤等の毛髪化粧料;スキンケア剤、シェービング剤、デオドラント剤、フレグランス剤等の皮膚化粧料;鎮痛消炎剤、殺虫剤等の医薬品;殺菌・消毒剤等の医薬部外品等を例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、化粧用品、殺虫剤等の、原液を吐出させて用いる倒立型エアゾール製品として用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 エアゾール用缶
1a マウンティング・カップ
2 ステム
2a 吐出口
2b ステムオリフィス
3 ハウジング
3a 開口
3b ハウジング本体
3e 流入孔
3f 嵌入部
3g 係止部
3i 付勢手段
4 第1管
5 第2管
5a 吸入口
5c 第2管本体
5d 鍔部
10 倒立型エアゾール用バルブ
100 倒立型エアゾール用容器
A 原液
B 噴射剤