(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132472
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】包装構造
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20170515BHJP
B65D 5/50 20060101ALI20170515BHJP
B65D 81/03 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
B65D77/04 F
B65D5/50 101Z
B65D77/04 B
B65D81/03
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-93449(P2012-93449)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-220834(P2013-220834A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500399862
【氏名又は名称】株式会社グリーンパッケージ
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 寿
(72)【発明者】
【氏名】西滝 祐光
【審査官】
秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−028074(JP,U)
【文献】
特開2001−341730(JP,A)
【文献】
特開2002−347750(JP,A)
【文献】
特開平05−261141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/50、77/04、81/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が矩形の段ボール製の包装箱に、易剥離可能な隔壁によって仕切られ成分配合の異なる2種類の輸液が個別に収納される2つの袋部を備えた液体収納袋が複数個収納される包装構造において、
液体収納袋は、隔壁部分で折り曲げられて2つの袋部が起立した2つ折りの状態で、ガス非透過性包装材を用いて形成され内部に脱酸素剤と酸素検知剤とが入れられた2次包装袋に密封状態で収納され、
この2次包装袋に密封状態で個々に収納された複数個の液体収納袋は2次包装袋よりも摩擦係数が低い大袋に収納された状態で包装箱に収納され、
2次包装袋は、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ナイロンの少なくともいずれかから構成された包装材であり、
大袋はポリエチレン又はポリ塩化ビニルを用いて形成され、
2次包装袋内において、液体収納袋の上方に空間が形成され、
脱酸素剤と酸素検知剤とは、液体収納袋の上方に位置して、上記空間に面していることを特徴とする包装構造。
【請求項2】
包装箱の底部には高発泡合成樹脂製の緩衝シートが載置されており、大袋に収納された液体収納袋は緩衝シートに載置された状態で包装箱に収納されることを特徴とする請求項1に記載の包装構造。
【請求項3】
包装箱は複両面段ボール板を用いて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装構造。
【請求項4】
輸液は血液濾過用補充液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液を充填してなる液体収納袋を収納包装する包装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、段ボール製の包装箱内に液収納袋体を収納する包装構造が記載されている。包装箱内に収納される液収納袋体の下部は、包装箱の底部に設けられた段ボール製の底部受け板の断面三角形の2本の山型部で受けられている。液収納袋体の下部のうち山型部で受けられていない部分は、底部受け板上に強く当接していない。このように特許文献1に記載の包装構造では、液収納袋体の下部のうち底部受け板に当接する部分を小さくして、包装箱に外部からの衝撃などが加わった場合に液収納袋体が受ける影響を小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−228799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の包装構造では、液収納袋体の下部を保護するために段ボール製の底部受け板を用いており、易剥離可能な隔壁によって仕切られた2つの袋部に2種類の輸液が個別に収納されている液体収納袋を、隔壁部分が折り曲げられて2つの袋部が起立した状態で包装箱内に収納する場合には、断面三角形の2本の山型部に当接する隔壁部分が傷付いて剥離し、2種類の輸液が不用意に混ざり合い、あるいは輸液が外部に漏れ出ることがある。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決するもので、隔壁によって仕切られた2つの袋部に2種類の輸液が個別に収納された液体収納袋を、隔壁部分が折り曲げられて2つの袋部が起立した状態で包装箱に収納する場合に、隔壁部分が傷付き、2種類の輸液が不用意に混ざり合い、あるいは輸液が外部に漏れ出ることを防止することができる包装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1の発明は、平面形状が矩形の段ボール製の包装箱に、易剥離可能な隔壁によって仕切られ成分配合の異なる2種類の輸液が個別に収納される2つの袋部を備えた液体収納袋が複数個収納される包装構造において、
液体収納袋は、隔壁部分で折り曲げられて2つの袋部が起立した2つ折りの状態で、ガス非透過性包装材を用いて形成され内部に脱酸素剤と酸素検知剤とが入れられた2次包装袋に密封状態で収納され、
この2次包装袋に密封状態で個々に収納された複数個の液体収納袋は2次包装袋よりも摩擦係数が低い大袋に収納された状態で包装箱に収納され
、
2次包装袋は、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ナイロンの少なくともいずれかから構成された包装材であり、
大袋はポリエチレン又はポリ塩化ビニルを用いて形成され、
2次包装袋内において、液体収納袋の上方に空間が形成され、
脱酸素剤と酸素検知剤とは、液体収納袋の上方に位置して、上記空間に面しているものである。
【0007】
請求項2の発明は、包装箱の底部には高発泡合成樹脂製の緩衝シートが載置されており、大袋に収納された液体収納袋は緩衝シートに載置された状態で包装箱に収納されるものである。
【0008】
請求項3の発明は、包装箱が複両面段ボール板を用いて形成されているものである。
請求項4の発明は、輸液が血液濾過用補充液である。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、液体収納袋が収納される2次包装袋はガス非透過性包装材を用いて形成され内部に脱酸素剤が入れられているので、2次包装袋は密封状態で内部は脱酸素状態とされ、液体収納袋の内部に空気中の酸素が浸入することを防止することができる。液体収納袋は2次包装袋に収納され、さらに2次包装袋よりも摩擦係数が低い大袋に収納された状態で包装箱に収納されるので、隔壁によって仕切られた2つの袋部に2種類の輸液が個別に収納された液体収納袋を、隔壁部分が折り曲げられて2つの袋部が起立した状態で収納する場合に、隔壁部分が包装箱と擦れあって傷付き、2種類の輸液が不用意に混合され、あるいは輸液が外部に漏れ出ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る包装構造の分解斜視図である。
【
図3】同2つ折りにされた液体収納袋の正面図である。
【
図4】同2次包装袋に収納された液体収納袋の正面断面図である。
【
図5】同上蓋を開いた状態での包装構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る一実施の形態について
図1〜
図6に基づいて説明する。図において、1は段ボール板からなる平面形状が矩形の包装箱で、短辺側および長辺側の2組の対向側壁2a,2a、2b,2bと、この2組の対向側壁2a,2a、2b,2bの下端に連設される底板形成用フラップ3a,3a、3b,3bと、2組の対向側壁2a,2a、2b,2bの上端に連設される上蓋形成用フラップ4a,4a、4b,4bとから構成されている。
【0012】
詳しくは、底板形成用フラップ3a,3a、3b,3bは短辺側の底板形成用フラップ3a,3aが先に折り曲げられ、続いて底板形成用フラップ3a,3aの下面に重なるように長辺側の底板形成用フラップ3b,3bが折り曲げられて、底板形成用フラップ3b,3bの先端を付き合わせ、この底板形成用フラップ3b,3bを付き合わせ状態で封緘テープにより封緘し底板が形成される。
【0013】
また、上蓋形成用フラップ4a,4a、4b,4bについても同様で、短辺側の上蓋形成用フラップ4a,4aが先に折り曲げられ、続いて上蓋形成用フラップ4a,4aの上面に重なるように長辺側の上蓋形成用フラップ4b,4bが折り曲げられて、上蓋形成用フラップ4b,4bの先端を突き合わせ、この上蓋形成用フラップ4b,4bを突き合わせ状態で封緘テープにより封緘し、上蓋が形成される。
【0014】
5はほぼ2等分する位置に隔壁6によって仕切られ、成分配合の異なる2種類の輸液である血液濾過用補充液(A液およびB液)が個別に収納される2つの袋部7a,7bを備えた合成樹脂製の液体収納袋で、平面視が矩形に形成されており、周縁部8は強固に熱溶着されているが、隔壁6は易剥離可能に溶着されている。
【0015】
A液とB液とは人工透析に用いられる血液濾過用補充液であって、A液には、塩化ナトリウム,塩化カリウム,炭酸水素ナトリウムが含有されており、B液には、塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化
カルシウム水和物,塩化マグネシウム,無水酢酸ナトリウム,ブドウ糖,pH調整剤が含有されている。
【0016】
輸液を使用するときには、少なくとも何れか一方の袋部7a,7bを手で押して圧縮させ、内圧により隔壁6を剥離させる。そして袋部7aと7bとが連通すると、A液とB液とが混ざり合う。A液が充填されている袋部7aの端部には抽出口9が設けられており、A液とB液とが混合された輸液は抽出口9から抽出され人工透析に使用される。前記液体収納袋5に収納されるA液とB液とからなる血液濾過用補充液の量は、たとえば2リットル程度である。
【0017】
液体収納袋5に用いられる易剥離性を有するフィルムとしては、たとえばプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)と、この共重合体(A)とα−オレフィン含有率が異なるプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)および/またはプロピレン単独重合体(C)の混合物からなる。
【0018】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)のα−オレフィン含有率は5〜20モル%であり、好ましくは7〜15モル%である。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)のα−オレフィン含有率は8モル%以下であり、好ましくは7モル%以下である。
【0019】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の具体例としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体などの2元共重合体が挙げられるが、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体などの3元共重合体であってもよい。プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)のα−オレフィンも、前記共重合体(A)と同様のものが使用可能である。
【0020】
10は、ガス非透過性包装材を用いて平面視が矩形に形成された2次包装袋である。この2次包装袋10には液体収納袋5が収納され、さらに脱酸素剤11と酸素検知剤12とが入れられた状態で周縁部がヒートシールにて密閉される。脱酸素剤11として、たとえば大江化学工業株式会社製タモツ(登録商標)が用いられる。酸素検知剤12としては、たとえば三菱ガス化学株式会社製の錠剤エージレスアイ(登録商標)が用いられる。
【0021】
2次包装袋10に用いられるガス非透過性包装材として、たとえばエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロンなどから構成された包装材、そしてこれらの素材にシリカやアルミナなどのガスバリア性物質の蒸着処理を行なった包装材、また、これらの素材を組み合わせた多層フィルムから作製された包装材などが用いられる。
【0022】
液体収納袋5は、隔壁6部分で折り曲げられて2つの袋部7a,7bが起立した2つ折りの状態で、かつ前記抽出口9が上方に向くように、2次包装袋10に密閉状態で収納される。2次包装袋10はガス非透過性包装材を用いて形成されており、この2次包装袋10の内部には脱酸素剤11が収納されているので、2次包装袋10を密閉しておくことにより、その内部は脱酸素状態とされる。これによって、A液とB液とが充填されている液体収納袋5の内部に酸素が浸入することを防止することができる。
【0023】
液体収納袋5は、隔壁6部分で折り曲げられて2つの袋部7a,7bが起立した状態で2次収納袋10に収納されて保護されている。2次包装袋10が破損して、外部から2次包装袋10の内部に空気中の酸素が浸入すると、酸素検知剤12がピンク色から紫色に変化することによって、2次包装袋10の内部に酸素が浸入したことを容易に知ることができる。
【0024】
2次包装袋10に収納された液体収納袋5は、複数個まとめて大袋13に収納され、この大袋13が包装箱1に収納される。大袋13は、たとえばポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)などの2次包装袋10より摩擦係数が低いフィルムを用いて形成される。このように液体収納袋5が複数個まとめて入れられた大袋13の上端は密閉しない状態としておく。
【0025】
包装箱1は図示の如く、複両面段ボール板を用いて形成されているのが強度上好ましく、両面段ボール板を用いて包装箱1を形成した場合に比して包装箱1の強度を向上させることができ、液体収納袋5を外からの衝撃に対して保護することができる。
【0026】
包装箱1の底板上には高発泡合成樹脂製の緩衝シート14が設置されており、大袋13に入れられた複数個の液体収納袋5は、折り曲げられた隔壁6部分が下端となるように載置された状態で包装箱1に収納される。緩衝シート14は、包装箱1の底板の大きさ、形状に合わせて矩形に形成されている。包装箱1の底板上に設置された緩衝シート14が、2次包装袋10に入れられた液体収納袋5を受けることにより、液体収納袋5の隔壁6を外部からの衝撃に対して保護することができ、隔壁6が剥離するのを防止することができる。
【0027】
液体収納袋5は、2次包装袋10に入れられた状態で、複数個がまとめて摩擦係数が低い大袋13に入れられているので、2次包装袋10が包装箱1の内面と擦れ合うことがなく、2次包装袋10が破れることを効果的に防止して、よりいっそう液体収納袋5を保護することができる。
【0028】
以上のように、平面形状が矩形の段ボール製の包装箱1に、易剥離可能な隔壁6によって仕切られ成分配合の異なる2種類の輸液が個別に収納される2つの袋部7a,7bを備えた液体収納袋5が複数個収納される包装構造において、液体収納袋5は、隔壁6部分で折り曲げられて2つの袋部7a,7bが起立した2つ折りの状態で、ガス非透過性包装材を用いて形成され内部に脱酸素剤が入れられた2次包装袋10に密封状態で収納され、この2次包装袋10に密封状態で個々に収納された複数個の液体収納袋5は2次包装袋10よりも摩擦係数が低い大袋13に収納された状態で包装箱1に収納されるので、2次包装袋10は密封状態で内部は脱酸素状態とされ、液体収納袋5の内部に空気中の酸素が浸入することを防止することができ、さらには、隔壁6によって仕切られた2つの袋部7a,7bに2種類の輸液が個別に収納された液体収納袋5を、隔壁6部分が折り曲げられて2つの袋部7a,7bが起立した状態で収納する場合に、隔壁6部分が傷付いて、2種類の輸液が不用意に混合され、あるいは輸液が外部に漏れ出ることを防止することができる。
【0029】
また、包装箱1の底部には緩衝シート14が載置されており、液体収納袋5は緩衝シート14に載置された状態で包装箱1に収納されるので、液体収納袋5が包装箱1の外部から受ける衝撃を緩和して、折り曲げられた隔壁6部分が剥離するのを効果的に防止することができる。特に包装箱1の底板を形成する底板形成用フラップ3bと3bとの段差に隔壁6部分が当たって傷付くことを緩衝シート14によって防止することができる。
【0030】
さらに、包装箱1は複両面段ボール板を用いて形成されることにより、両面段ボール板を用いて包装箱1を形成した場合に比して変形しにくく、包装箱1の強度を向上させることができ、液体収納袋5を効果的に保護することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 包装箱
2a,2b 対向側板
3a,3b 底板形成用フラップ
4a,4b 上板形成用フラップ
5 液体収納袋
6 隔壁
7a,7b 袋部
8 周縁部
9 抽出口
10 2次包装袋
11 脱酸素剤
12 酸素検知剤
13 大袋
14 緩衝シート