【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例としてのシート材の蛇行防止装置1の概略的な構成を模式的に示す。
図1(a)は正面から見た構成、
図1(b)は
図1(a)切断面線B−Bから見た構成をそれぞれ示す。
【0017】
シート材の蛇行防止装置1は、巻取りローラー2と繰出しローラー3とを含む。シート材4は、巻取りローラー2と繰出しローラー3との間を移動する。シート材4が移動する方向は、繰出しローラー3から巻取りローラー2の方向と、巻取りローラー2から繰出しローラー3の方向との間で、転換可能であり、転換の繰返しによる複数回の往復移動も可能である。シート材の蛇行防止装置1は、特に、繰出しローラー3から巻取りローラー2の方向に移動するシート材4を巻取りローラー2で巻取る際に蛇行の発生を防止する。
【0018】
巻取りローラー2は、軸2a方向に摺動可能で、摺動が軸2a方向の中間で平衡するように、軸2a方向の両側からばね2bで付勢されるとともに、シート材4の移動方向の下流側となるので、シート材4を巻取るように回転駆動される。繰出しローラー3は、巻取りローラー2で巻取られるシート材4を繰出す。
【0019】
シート材の蛇行防止装置1のフレーム5は、設置場所の床上に固定され、テーブル6を水平に支える。後述するように、シート材の蛇行防止装置1をシート材の積層装置20に適用する場合、巻取りローラー2は、テーブル6の端部の下方に設けられる。テーブル6の端部には、フレーム5で支持されるスタンド5aで中間ローラー7が設けられる。後述するように、繰出しローラー3は、テーブル6上方の空間を移動しながら、シート材4の巻取りや繰出しを行う。
【0020】
巻取りローラー2は、その回転駆動源となるサーボモーター8および伝動機構9とともに、巻取りユニット10に組込まれる。ばね2bによる巻取りローラー2の軸2a方向の付勢は、巻取ユニット10のローラー支持体11に対して行われる。巻取りユニット10では、ローラー支持体11で巻取りローラー2の軸2aの両端が中心線2cまわりの回転が可能な状態で支持される。伝動機構9は、サーボモーター8の出力軸に取付けられるプーリー9a、プーリー9aに下端が懸る無端のベルト9b、およびベルト9bの上端が懸るプーリー9cを含む。プーリー9cは、巻取りローラー2の軸2aに取付けられる。
【0021】
ローラー支持体11は、フレーム5に対し、リニアガイド12で軸2a方向への摺動が可能なように支持される。リニアガイド12は、ローラー支持体11側に取付けられる可動子12aと、フレーム5側に取付けられる固定子12bとの組合せで、ローラー支持体11を軸2a方向への摺動が円滑に行われるように案内する。固定子12bは、取付板13を介して、フレーム5に取付けられる。
【0022】
前述の巻取ローラー2に対する軸2a方向の両側からのばね2bによる付勢は、ローラー支持体11に対して、軸2aと平行な方向に行われる。巻取りローラー2の軸2a方向の両側で、一対のばね2bは、一端をローラー支持体11に接続され、他端をフレーム5の図示しない部分に固定される。
【0023】
中間ローラー7は、巻取りローラー2と繰出しローラー3との間に設けられる。繰出しローラー3から巻取りローラー2の方向に移動するシート材4に関して、中間ローラー7は、巻取りローラー2の上流側となる。シート材4は、中間ローラー7の外周の少なくとも一部に沿って移動の方向を変え、繰出しローラー3と中間ローラー7との間でのほぼ水平な状態から、中間ローラー7で90度よりも小さい角度で曲がって、下方の巻取りローラー2に向う。中間ローラー7は、軸7a方向に摺動可能で、摺動が軸7a方向の中間で平衡するように、一端側がスタンド5aに固定されるばね7bの他端側で、軸7aと平行な方向に付勢される。中間ローラー7の中心線7cは、巻取りローラー2の中心線2cと平行である。
【0024】
図2は、巻取りユニット10の構成を模式的に示す。
図2(a)に示すように、ばね2bは、巻取りローラー2の中心線2c上ではなく、中心線2cから離れた位置で、中心線2cと平行となるように、ローラー支持体11を介して巻取りユニット10を付勢する。
図2(b)に示すように、巻取りローラー2とその回転駆動源であるサーボモーター8とを組込んだ巻取りユニット10を、ばね2bで軸2a方向に摺動させる。回転駆動力の伝動機構9が摺動の影響を受けないので、回転駆動力を巻取りローラー2に与えながら、蛇行防止のための摺動を迅速に行わせることができる。なお、
図2(c)に示すように、巻取りユニット10にはリニアガイド12が取付けられ、摺動の一層の円滑化が図られている。
【0025】
なお、伝動機構9は、複数の歯車を組合わせて実現することもできる。たとえば、巻取りローラー2に、軸2a方向に長い歯車を設ければ、この歯車に噛合する中間の歯車が軸2a方向に関して固定されていても、摺動する軸2aに、回転駆動力を伝動することが可能になる。このような構成では、回転駆動源となるサーボモーター8や中間の歯車をフレーム5に固定させ、摺動しないようにすることができる。
【0026】
図3は、フレーム5の部分的な構成を模式的に示す。固定子12bは、巻取りユニット10をリニアガイド12で摺動させる範囲に対応するように設けられる。
図3(c)に示すように、スタンド5aは、フレーム5の端部よりも外方まで張出している。このため、フレーム5の固定子12bに嵌合する移動子12aが取付けられる巻取りユニット10は、スタンド5aで張出した端部よりも内方に寄る。シート材の蛇行防止装置1を備える装置を、他の装置に接続するような場合、端部に存在しない巻取りユニット10は他の装置側に突出することがなく、接続の障害とはなりにくくなる。
【0027】
図4は、シート材の蛇行防止装置1でシート材4の蛇行を防止する動作原理を示す。巻取りローラー2は、軸2a方向に摺動可能なので、シート材4に蛇行が発生すると、蛇行でずれる方向に巻取りローラー2もずれて、巻取られるシート材4に巻きずれが生じないようにすることができる。たとえば、巻取りユニット10の巻取りローラー2にシート材4を巻取る際に、図の右方向への蛇行が発生する場合を想定する。巻取りローラー2も蛇行によるシート材4の張力変化に追従して右方にずれて蛇行を補正するので、巻取られたシート材4には、巻きずれが発生しない。巻取られたシート材4を繰出す際には、軸2a方向の両側からばね2bで付勢されて、軸2a方向の中間で平衡する状態の巻取りローラー2から繰出す。巻取りの際に蛇行が生じても、繰出しの際には蛇行の影響を受けないので、巻取りと繰出しとを繰返すような場合にも、蛇行の発生を防止することが可能となる。また、シート材の蛇行防止装置1では、巻取りローラー2にシート材4を1回だけ巻取るだけであったとしても、シート材4を巻取った巻取りローラー2は、他の装置に移動させて、シート材4を繰出すことが想定される。このような場合でも、本発明を適用すれば、蛇行の発生を有効に防止することができる
。
【0028】
図5は、
図1のシート材の蛇行防止装置1を適用する例として、
図2の巻取りユニット10を組込んだシート材の積層装置20の概略的な構成を示す。シート材の積層装置20は、布帛などのシート材をパーツに裁断する裁断機の搬出側に接続して用いられ、シート材4を搬送ベルトとして使用して、裁断機で裁断されたパーツ21aを搬送する。シート材4は、テーブル6の上方を、裁断機に接続される基端側から先端側に伸長して移動する。シート材4上では、パーツ21aを載置させる状態で搬送する。展開したシート材4を収容させながら基端側に戻す際に、シート材4の先端からパーツ21aをテーブル6の表面に移行させて、テーブル6の表面にパーツ21bとして積層させる。
【0029】
繰出しローラー3は、ゲート22に取付けられ、サーボモーター23で回転駆動される。ゲート22は、テーブル6の両側方に設けられるベルト24で、矢符22aとして示すように、テーブル6の基端側と先端側との間を移動可能な状態で、フレーム5によって支持される。繰出しローラー3は、シート材4の先端側の巻取りと巻戻しとの両方が可能なように、ゲート22に回転可能な状態で支持される。サーボモーター23は、巻取りローラー2を回転駆動するサーボモーター8、およびベルト24を駆動するサーボモーターとともに、コントローラー20aによって制御される。
【0030】
図6は、シート材の積層装置20について、裁断機の搬出テーブル30に接続して行う動作を模式的に示す。
図6(a)では、ゲート22をテーブル6の先端側に移動させながら、サーボモーター23で繰出しローラー3の軸をロックして固定し、シート材4を巻取りローラー2から引出す。巻取りローラー2を回転駆動するサーボモーター8では、引出す方向とは逆方向となる巻取り方向にトルクを印加して、引出すシート材4のテンションを確保する制御を行う。裁断機の裁断テーブルが無端コンベアとして搬送の機能を有していれば、シート材4を引張るゲート22の移動速度とコンベアの搬送速度とを同期させて、パーツ21cの移動を円滑に行うことができる。特に、シート材4上にパーツ21cが搬入される初期には、裁断機側での搬送が必要となる。シート材4上にパーツ21cがある程度搬入されると、裁断機側では搬出テーブルなどで搬送が行われなくなっても、シート材4に後続のパーツ21cを引入れることができる。
【0031】
図6(b)では、シート材4上にパーツ21cが搬入されて、搬送対象のパーツ21aとなる状態で、テーブル6上に積層すべきパーツ21bの位置を過ぎると、ゲート22を停止させる。繰出しローラー3の軸固定と、巻取りローラー2への巻取り方向へのトルク印加とに対する制御は継続する。搬出テーブル30上には、次のパーツ21cが送り込まれている。
【0032】
図6(c)では、テーブル6の基端側へゲート22を移動させる。この移動速度は、
図6(a)よりも高速にすることができる。繰出しローラー3は、ゲート22の移動に同期して、シート材4を巻取る。巻取りローラー2は固定されるけれども、巻取りローラー2への巻取り方向トルクの印加によるシート材4のテンション確保の制御は継続する。シート材21aは、先端からテーブル6上に降り始める。
【0033】
図6(d)では、パーツ21aの全体がテーブル6上のパーツ21b上に降りた位置で、ゲート22を停止する。既にテーブル6の表面上にパーツ21bが積層されていれば、その上にパーツ21aが重なる。繰出しローラー3によるシート材4の巻取りも停止する。巻取りローラー2への巻取り方向トルクの印加は継続する。
【0034】
図6(e)では、繰出しローラー3に巻取られているシート材4を繰出して、巻取りローラー2で巻取る。巻取りローラー2を含む巻取りユニット10は、前述のようなシート材蛇行防止装置1として機能するので、シート材4を高速で巻取っても、蛇行による巻きずれが発生しない。また、繰出しローラー3と巻取りローラー2との間の距離が近いので、巻戻す速度を高速化して、時間短縮を図ることができる。巻取りローラー2では巻取るための回転駆動を行う。なお、次のパーツ21cの先端と繰出しローラー3との距離をオフセットΔLとして、この分のシート材4は繰出しローラー3に残しておく。繰出しローラー3では、巻取り方向のトルクを印加して、シート材4のテンションを確保する制御を行う。
【0035】
図6(f)では、オフセット分のシート材4を繰出しローラー3から繰出しながら、ゲート22をテーブル6の先端側に移動させる。巻取りローラー2には、シート材4のテンションを確保するための巻取り方向トルクを印加しておく。繰出しローラー3からオフセット分のシート材4が繰出されると、
図6(a)の状態に戻り、次のパーツ21cを搬送して積層する動作が開始される。
【0036】
図1のシート材の蛇行防止装置1は、
図5および
図6に示すシート材の積層装置20で、搬送ベルトを巻取る際の蛇行防止ばかりではなく、各種素材のシート材を巻取る場合にも有効に適用することができる。