特許第6132498号(P6132498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6132498チタン・ケイ素・タングステンの酸化物、それを用いた脱硝触媒、当該酸化物の調製方法および脱硝方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132498
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】チタン・ケイ素・タングステンの酸化物、それを用いた脱硝触媒、当該酸化物の調製方法および脱硝方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/30 20060101AFI20170515BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20170515BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B01J23/30 AZAB
   B01J37/03 B
   B01D53/86 222
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-207704(P2012-207704)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61476(P2014-61476A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】堤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】萩 光晴
(72)【発明者】
【氏名】森田 敦
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−099684(JP,A)
【文献】 特開2006−116537(JP,A)
【文献】 特開2004−000943(JP,A)
【文献】 特開平03−068456(JP,A)
【文献】 特開平10−235191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 −38/74
B01D 53/86 ,53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.003〜40μmにおいて細孔径を測定したとき、1〜20μm(Aピーク)と0.006〜0.06μm(Bピーク)とにピークを有しかつAピークまたはBピークの少なくとも一方が当該細孔径を測定した範囲内で一番目の大きさ示すことを特徴とするチタン・ケイ素・タングステンの酸化物を用いたことを特徴とする窒素酸化物除去用触媒の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のチタン・ケイ素・タングステンの酸化物が、0.003〜40μmにおける細孔径の細孔容積(「全細孔容積」と称する)を1としたとき、請求項1に記載のAピークの細孔容積が0.3〜0.6(A/全細孔容積)でありかつ請求項1に記載のBピークの細孔容積が0.3〜0.6(B/全細孔容積)であることを特徴とする請求項1記載の窒素酸化物除去用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のチタン・ケイ素・タングステンの酸化物が、請求項1に記載のAピークとBピークの細孔容積比が0.9〜2.0(B/A)であることを特徴とする請求項1記載の窒素酸化物除去用触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のチタン・ケイ素・タングステンの酸化物が、チタンが40〜98質量%(TiO2換算)、ケイ素が1〜30質量%(SiO2換算)およびタングステンが1〜30質量%(WO3換算)であることを特徴とする請求項1記載の窒素酸化物除去用触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のチタン・ケイ素・タングステンの酸化物がアンモニア水とケイ素源とタングステン源の混合水溶液に硫酸チタニルの硫酸水溶液を中和し混合し、pH3〜10でpH調整して水酸化物として沈殿を生成させ、沈殿させた後、沈殿スラリーを濾過、水洗後、乾燥し、焼成する共沈法により得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の窒素酸化物除去用触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の方法で得られる窒素酸化物除去用触媒を用いて、窒素酸化物を含む排ガスをアンモニア存在下に処理することを特徴とする脱硝方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン・ケイ素・タングステンの酸化物、それを用いた脱硝触媒、当該酸化物の調製方法および脱硝方法に関する。特に、重油焚きボイラや石炭焚きボイラ、ガス焚きボイラ、ガスタービン、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、火力発電所、ごみ焼却炉および各種工業プロセスから排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物(NO)の除去に優れた脱硝触媒、その調製方法、および脱硝方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されている排ガス中の窒素酸化物除去方法としては、アンモニアまたは尿素などの還元剤を用いて排ガス中の窒素酸化物を触媒上で接触還元して窒素と水に分解する選択的触媒還元法(SCR法)が一般的である。近年、酸性雨に代表されるように窒素酸化物による環境汚染が世界的に深刻化するに伴い、高性能な触媒が求められている。
【0003】
脱硝触媒に関する従来技術としては、例えば、窒素酸化物の除去に有効な触媒として二酸化チタンおよび/またはチタン複合酸化物からなる排ガス処理触媒について開示されているが(特許文献1)、充分な処理性能を有するとはいえなかった。
【0004】
また、酸化チタンと酸化ケイ素の複合酸化物を触媒成分とする排ガス処理触媒が数多く提案されているが(特許文献2)、更なる活性の向上が望まれている。
【0005】
これらの触媒が有効に作用しない原因として、排出されるガスの対象である重油焚きボイラや石炭焚きボイラ、ガス焚きボイラ、ガスタービン、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、火力発電所、ごみ焼却炉および各種工業プロセスから排出される排ガスの差異より、触媒毒となるもの存在、水蒸気の存在および処理するガスと触媒との関係である空間速度、窒素酸化物(NO)の濃度などの関係から処理対象となる窒素酸化物(NO)が効率よく処理できないことにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記触媒の活性向上を目的としている。特にガス焚きボイラやガスタービンから生じる排ガスの処理に有効な触媒開発を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すめるために本発明者らは鋭意検討の結果、下記技術を見出し、発明を完成するに至ったものである。即ち、0.003〜40μmにおいて細孔径を測定したとき、1〜20μm(Aピーク)と0.006〜0.06μm(Bピーク)とにピークを有しかつAピークまたはBピークの少なくも一方が当該細孔径を測定した範囲内で一番目の大きさ示すことを特徴とするチタン・ケイ素・タングステンの酸化物(以下、「Ti−Si−W酸化物」とも記載する)であり、更に当該酸化物を用いた脱硝触媒、当該酸化物の製造方法および当該触媒を用いた脱硝方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるTi−Si−W酸化物は、特殊な位置に細孔径のピークを有する物質であり、これを排煙脱硝用触媒に用いることで効率よく排ガス中の窒素酸化物(NO)を処理することができ、特にガス焚きボイラやガスタービンから生じる排ガスの処理に有効に作用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明である実施例1に関するTi−Si−W酸化物を、細孔測定し微分表示したものである。横軸は細孔径、縦軸は強度を示す任意の値である。特定範囲の細孔径におけるピーク面積から細孔容積が算出できる。
図2図2は本発明である実施例2に関するTi−Si−W酸化物を、細孔測定し微分表示したものである。横軸・縦軸の説明は図1と同じ。
図3図3は比較例1に関するチタンおよびタングステンの混合酸化物(以下「Ti−W混合酸化物」とも記載する)を、細孔測定し微分表示したものである。横軸・縦軸の説明は図1と同じ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第一発明は、0.003〜40μmにおいて細孔径を測定したとき、1〜20μm(Aピーク)と0.006〜0.06μm(Bピーク)とにピークを有しかつAピークまたはBピークの少なくも一方が当該細孔径を測定した範囲内で一番目の大きさ示すことを特徴とするチタン・ケイ素・タングステンの酸化物(以下、「Ti−Si−W酸化物」とも記載する)を用いたことを特徴とする窒素酸化物除去用触媒の製造方法である。好ましくは、0.003〜40μmにおける細孔径の細孔容積(「全細孔容積」と称する)を1としたとき、当該Aピークの細孔容積が0.3〜0.6(A/全細孔容積)でありかつ当該Bピークの細孔容積が0.3〜0.6(B/全細孔容積)であること、当該Aピークと当該Bピークの細孔容積比が0.9〜2.0(B/A)であること、チタンが40〜98質量%(TiO換算)、ケイ素が1〜30質量%(SiO換算)およびタングステンが1〜30質量%(WO換算)であるTi−Si−W酸化物を用いた窒素酸化物除去用触媒の製造方法である。
【0013】
当該チタン・ケイ素・タングステンの化合物がアンモニア水とケイ素源とタングステン源の混合水溶液に硫酸チタニルの硫酸水溶液を中和し混合し、pH3〜10でpH調整して水酸化物として沈殿を生成させ、沈殿させた後、沈殿スラリーを濾過、水洗後、乾燥し、焼成する共沈法により得られるチタン・ケイ素・タングステンの酸化物を用いた窒素酸化物除去用触媒の製造方法である。
【0014】
第二の発明は、第一の発明の製造方法で得られた触媒を用いて、窒素酸化物を含む排ガスをアンモニア存在下に処理することを特徴とする脱硝方法である。

【0015】
(第一発明)
第一発明は、0.003〜40μmにおいて細孔径を測定したとき、1〜20μm(Aピーク)と0.006〜0.06μm(Bピーク)とにピークを有しかつAピークまたはBピークの少なくも一方が当該細孔径を測定した範囲内で一番目の大きさ示すことを特徴とするチタン・ケイ素・タングステンの酸化物である。
【0016】
Aピークは細孔径が1〜20μmにピークを有する細孔群である。Aピークの細孔容積は、0.003〜40μmにおける細孔径の細孔容積(「全細孔容積」と称する)を1としたとき、0.3〜0.6(A/全細孔容積)であり、好ましくは0.3〜0.5(A/全細孔容積)である。0.3未満であれば脱硝性能が低くなり好ましくないからであり、0.6を超える場合には脱硝性能はそれほど向上しないが、触媒の機械的強度が低下して耐摩耗強度が低くなるなど弊害が生じるおそれがあるからである。
【0017】
Bピークは細孔径が0.006〜0.06μmにピークを有する細孔群である。Bピークの細孔容積は全細孔容積を1としたとき、0.3〜0.6(B/全細孔容積)であり、好ましくは0.3〜0.5(B/全細孔容積)である。0.3未満であれば脱硝性能が低くなり好ましくないからであり、0.6を超える場合には脱硝性能はそれほど向上しないが、触媒の機械的強度が低下して耐摩耗強度が低くなるなど弊害が生じるおそれがあるからである。
【0018】
当該Aピークと当該Bピークの細孔容積比が0.9〜2.0(B/A)であることが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.7である。0.9未満であれば脱硝性能が低くなり好ましくはないからであり、2.0を超えるときは、脱硝性能はそれほど向上しないが、触媒の機械的強度が低下して耐摩耗強度が低くなるなど弊害が生じるおそれがあるからである。
【0019】
AピークまたはBピークが0.003〜40μmにおける細孔径の範囲で、少なくとも一方が一番目のピークの大きさを示すものであり、双方が同じピークの大きさであっても良いが、好ましくは一方が一番目、他方が二番目の大きさ示すものである。一番目の大きさとは、細孔径が0.003〜40μmにおいて、細孔径がピークを示す細孔径の範囲における細孔容積が最大のピークを示す細孔群をいう。二番目の大きさとは同様にして、細孔容積が二番目のピークを示す細孔群をいう。
【0020】
当該細孔径と細孔容積は、通常使用される水銀圧入式ポロシメーターなどにより測定できる。当該ピークは、細孔径測定の結果を細孔径を横軸、細孔容積を縦軸とし、かつ微分型に表示されたときに生じるピークである。
【0021】
Ti−Si−W酸化物は、チタンが40〜98質量%(TiO換算)、ケイ素が1〜30質量%(SiO換算)およびタングステンが1〜30質量%(WO換算)であることが好ましい。更に好ましくはチタンが60〜98質量%(TiO換算)、ケイ素が1〜20質量%(SiO換算)およびタングステンが1〜20質量%(WO換算)であり、最も好ましくはチタンが70〜98質量%(TiO換算)、ケイ素が1〜20質量%(SiO換算)およびタングステンが1〜10質量%(WO換算)である。チタンが40質量%未満であれば脱硝性能が低くなり好ましくなく、98質量%を超える場合は触媒の耐熱性が低くなり好ましくないからであり、ケイ素が1質量%未満であれば触媒の成形性が悪くなり好ましくなく、30質量%を超える場合には脱硝性能が低くなり好ましくないからであり、タングステンが1質量%未満であれば脱硝性能が低くなり好ましくなく、30質量%を超える場合には添加効果が充分に得られず脱硝性能が低下する場合があるからである。
【0022】
当該Ti−Si−W酸化物は特異的な細孔径のピークを持つ細孔分布を示すだけではなく、酸化反応、還元反応に効果を示し、特に窒素酸化物の除去に優れた効果を示すものである。
【0023】
また、当該Ti−Si−W酸化物は当該細孔径ピークを有するものであれば良く、各酸化物が複合化している必要はない。更に当該細孔ピークを保つものであれば他の化合物が含まれていても問題はなく、例えばバナジウム、モリブデン、鉄、マンガン、ニッケル、バリウム、ストロンチウム、銀、セシウム、マグネシウム等の酸化物を当該Ti−Si−W酸化物に対して0.1〜20質量%添加することができる。
【0024】
(Ti−Si−W酸化物の製法)
Ti−Si−W酸化物の調製方法が第三発明であり、方法としては、(1)アンモニア水とケイ素源とタングステン源の混合水溶液に硫酸チタニルの硫酸水溶液を中和し十分に混合し、pH3〜10好ましくはpH4〜8でpH調整して主に水酸化物として沈殿を生成させ、十分に沈殿させた後、沈殿スラリーを濾過、水洗後、乾燥し、焼成する共沈法、(2)一方の酸化物に他方の水溶液を含浸し乾燥し、焼成する含浸法、(3)各々の前駆体である水不溶物質を水と混合しスラリーとし混練し、乾燥し、焼成する混練法、(4)各々の酸化物前駆体を十分混合し焼成する固相反応法があるが、好ましくは共沈法である。
【0025】
また、当該酸化物を製造するとき、市販の原料をそのまま使用することもできるが、好ましくは所定の濃度の液に調整し用いることである。例えば、チタン源の場合には液1リットル(L)に対して20〜400g(TiO換算)、好ましくは50〜100g(TiO換算)である。ケイ素源の場合には液1リットルに対して0.5〜200g(SiO換算)、好ましくは1〜100g(SiO換算)である。タングステン源の場合には液1リットルに対して50〜500g(WO換算)、好ましくは100〜400g(WO換算)である。これらの量を超える場合には均一に混合する前に局所的に反応が進行し均一な水酸化物を生じ難くなり好ましくはなく、これらの量未満であれば液pHが所定の範囲になり難く好ましくはないからである。何れにしても目標となる酸化物を生じさせ難くなることがあるからである。
【0026】
(第二発明)
第二発明はTi−Si−W酸化物を含む窒素酸化物除去用触媒である。Ti−Si−W酸化物を含むものであれば何れのものであっても良く、通常触媒として用いられる形体で機能を発揮するものである。脱硝触媒としては、好ましくはTi−Si−W酸化物の他、活性成分として、バナジウム、タングステン、モリブデン、鉄、マンガン、ニッケル、バリウム、ストロンチウム、銀、セシウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれる1種以上の元素またはその化合物を添加することにより得ることができる。特にバナジウム、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる1種以上の元素またはその化合物を活性成分として含むものが好ましい。当該活性成分の含有量は、触媒を100質量%としたとき0.1〜20質量%(酸化物換算)、好ましくは0.2〜15質量%(酸化物換算)、更に好ましくは0.4〜10質量%(酸化物換算)である。0.1質量%(酸化物換算)未満であれば脱硝性能が低くなり好ましくはないからであり、20質量%(酸化物換算)を超えるときは添加効果が充分に得られず脱硝性能が低下する場合があるからである。
【0027】
上記触媒成分は、水、成形助剤等を加え粘土状とし、使用する用途に適応した形状、例えばハニカム状、ペレット状、粉体状に成形されることがある。ハニカム状であれば、一辺50〜200mmの角、目開きが一辺1〜10mmの角、リブ厚が0.1〜1.5mm、長さが200〜2000mmのものが好ましい。
【0028】
(脱硝方法)
第四発明は、窒素酸化物(NO)を含むガスを除去するものである。対象となるガスは窒素酸化物を含むものであれば何れのガスであってもよいが、好ましくはガス焚きボイラやガスタービンから生じる排ガスである。窒素酸化物(NO)の濃度は10〜2000ppm(NO換算)、好ましくは20〜500ppm(NO換算)、更に好ましくは40〜100ppm(NO換算)である。これらのガスには水、SO、ダストなどが含まれていても処理することができる。
【0029】
脱硝に際して、排ガス中にアンモニアまたは尿素を添加することができる。添加量は、窒素酸化物(NO換算)1モルに対して、アンモニア換算(尿素の場合は1/2モル)で0.2〜2.0モル、好ましくは0.5〜1.0モルである。
【0030】
処理温度は、150〜500℃、好ましくは200〜450℃、更に好ましくは250〜400℃である。
【0031】
空間速度は1000〜100000hr−1(STP)、好ましくは2000〜50000hr−1(STP)、更に好ましくは3000〜30000hr−1(STP)である。
【実施例】
【0032】
下記実施例において上述の成分を添加することもできるが、代表例として、以下の実施例、比較例により、発明を詳細に説明する。なお、本発明の効果を奏するものであれば以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
<化合物A(Ti−Si−W酸化物)の調製>
パラタングステン酸アンモニウム(WOとして90重量%含有)1.4kg、モノエタノールアミン0.6kgを水10Lに混合・溶解させ(WOとして120g/L含有)、均一溶液を調製した。このタングステン含有溶液とシリカゾル(SiOとして30重量%含有)3.4kg、10質量%アンモニア水240Lを混合した溶液(SiOとして4g/L含有)に、硫酸チタニルの硫酸溶液(TiOとして70g/L含有、硫酸濃度290g/L)260Lをよく撹拌しながら徐々に滴下し、沈殿を生成させた後、適量の25質量%アンモニア水を加えてpHを7に調整した。このスラリーをそのまま40時間放置して熟成した後、濾過、洗浄し、150℃で20時間乾燥した。これを空気雰囲気下500℃で5時間焼成し、さらにハンマーミルを用いて粉砕し、化合物A(Ti−Si−W酸化物)を得た。
【0034】
化合物Aの組成はTiO/SiO/WOの質量比(酸化物換算)で89/5/6質量%であった。
【0035】
(実施例2)
<化合物B(Ti−Si−W酸化物)の調製>
パラタングステン酸アンモニウム(WOとして90重量%含有)1.4kg、モノエタノールアミン0.6kgを水10Lに混合・溶解させ(WOとして120g/L含有)、均一溶液を調製した。このタングステン含有溶液とシリカゾル(SiOとして30重量%含有)3.4kg、10質量%アンモニア水240Lを混合した溶液(SiOとして4g/L含有)に、硫酸チタニルの硫酸溶液(TiOとして70g/L含有、硫酸濃度290g/L)260Lをよく撹拌しながら徐々に滴下し、沈殿を生成させた後、適量の25質量%アンモニア水を加えてpHを5に調整した。このスラリーをそのまま40時間放置して熟成した後、濾過、洗浄し、150℃で20時間乾燥した。これを空気雰囲気下500℃で5時間焼成し、さらにハンマーミルを用いて粉砕し、化合物B(Ti−Si−W酸化物)を得た。
【0036】
化合物Bの組成はTiO/SiO/WOの質量比(酸化物換算)で89/5/6質量%であった。
【0037】
(比較例1)
市販のチタンおよびタングステンの混合酸化物(以下「Ti−W混合酸化物」という)であるCristal Global社製のDT−52(商品名)を混合物aとした。
【0038】
混合物aの組成はTiO/WOの質量比(酸化物換算)で90/10質量%であった。
【0039】
(細孔径および細孔容積の測定)
実施例1、2で得られた化合物A、Bおよび比較例1で得られた混合物aを水銀圧入式ポロシメーターにより細孔径および細孔容積を測定した。
【0040】
Aピーク(1〜20μm)と全細孔容積(0.003〜40μm)の細孔容積比(A/全細孔容積)の値、Bピーク(0.006〜0.06μm)と全細孔容積(0.003〜40μm)の細孔容積比(B/全細孔容積)の値およびAピーク(1.0〜20μm)とBピーク(0.006〜0.06μm)の細孔容積比(B/A)の値を表1に示した。表1から分かるように化合物A、B(実施例1、2)は混合物a(比較例1)に較べて、A/全細孔容積の値、B/全細孔容積の値、B/Aの値が高いことが分かる。
【0041】
細孔径を横軸、細孔容積を縦軸とし、かつ微分型の表示にした細孔径分布の結果を化合物A(実施例1)は図1、化合物B(実施例2)は図2、混合物a(比較例1)は図3に示した。図1〜3から分かるように化合物A、B(実施例1、2)は混合物a(比較例1)に較べて、Aピーク、Bピークが一番目と二番目のピークであり、Bピーク(0.006〜0.06μm)のピーク面積が多いことが分かる。一方、混合物aは細孔系が0.2〜0.6μmに一番大きなピークを有するものであることも分かる。以下にこれらの化合物を用いて触媒を調製する。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施例3)
<触媒Aの調製>
実施例1で得られたTi−Si−W酸化物粉体(化合物A)20kgにメタバナジン酸アンモニウム(Vとして78重量%含有)1.5kg、シュウ酸2.1kg、モノエタノールアミン0.5kgを水3Lに混合・溶解させた均一溶液とパラタングステン酸アンモニウム(WOとして90重量%含有)0.9kg、モノエタノールアミン0.4kgを水2Lに混合・溶解させた均一溶液を成型助剤と適量の水とともに加え、ニーダーで混練した後、押出成型機で外形80mm角、長さ500mm、目開き2.9mm、肉厚0.4mmのハニカム状に成型した。これを80℃で乾燥した後、空気雰囲気下450℃で5時間焼成し、触媒Aを得た。
【0044】
触媒Aの組成は化合物A/V/WOの質量比(酸化物換算)で91/5/4質量%であった。
【0045】
(実施例4)
<触媒Bの調製>
実施例で得られたTi−Si−W酸化物粉体(化合物B)20kgにメタバナジン酸アンモニウム(Vとして78重量%含有)1.5kg、シュウ酸2.1kg、モノエタノールアミン0.5kgを水3Lに混合・溶解させた均一溶液とパラタングステン酸アンモニウム(WOとして90重量%含有)0.9kg、モノエタノールアミン0.4kgを水2Lに混合・溶解させた均一溶液を成型助剤と適量の水とともに加え、ニーダーで混練した後、押出成型機で外形80mm角、長さ500mm、目開き2.9mm、肉厚0.4mmのハニカム状に成型した。これを80℃で乾燥した後、空気雰囲気下450℃で5時間焼成し、触媒Bを得た。
【0046】
触媒Bの組成は化合物B/V/WOの質量比(酸化物換算)で91/5/4質量%であった。
【0047】
(比較例2)
<触媒aの調製>
比較例1で得られたTi−W混合酸化物粉体(混合物a)20kgにメタバナジン酸アンモニウム(Vとして78重量%含有)1.5kg、シュウ酸2.1kg、モノエタノールアミン0.5kgを水3Lに混合・溶解させた均一溶液とパラタングステン酸アンモニウム(WOとして90重量%含有)0.9kg、モノエタノールアミン0.4kgを水2Lに混合・溶解させた均一溶液を成型助剤と適量の水とともに加え、ニーダーで混練した後、押出成型機で外形80mm角、長さ500mm、目開き2.9mm、肉厚0.4mmのハニカム状に成型した。これを80℃で乾燥した後、空気雰囲気下450℃で5時間焼成し、触媒aを得た。
【0048】
触媒aの組成は混合物a/V/WOの質量比(酸化物換算)で91/5/4質量%であった。
【0049】
(触媒評価)
実施例3、4で得られた触媒A、Bおよび比較例2で得られた触媒aを溶融塩浴に浸漬されたステンレス製反応管に充填し、下記組成の合成ガスを下記条件下で触媒層に導入し、脱硝率の測定をおこなった。
【0050】
脱硝率は反応管入口および反応管出口のNO濃度をNO計(化学発光式、日本サーモ株式会社製MODEL5100)により測定し、下記式に従い求めた。得られた脱硝率を表2に示した。表2から分かるように触媒A、B(実施例3、4)は触媒a(比較例2)に較べて、脱硝率が高いことが分かる。
【0051】
<反応条件>
ガス温度 :350℃
空間速度(STP) :26000hr−1
<合成ガス組成>
NO :100ppm,dry
NH :100ppm,dry、
:15%,dry
O :10%,wet
:balance
【0052】
【数1】
【0053】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は排ガス処理分野、特に窒素酸化物を含む排ガスの処理に有効な技術である。
図1
図2
図3