(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
壁部に形成された開口部の内周面から螺子部材の先端部が突出するように前記壁部に前記螺子部材を止めることにより、前記開口部に通されたケーブルを前記螺子部材により固定したケーブルの固定構造であって、
前記ケーブルは、各々が絶縁層で被覆された複数本の配線と、該複数本の配線の周りを覆う可撓性の外皮とを備え、
前記ケーブルの前記複数本の配線と前記外皮との間には、周方向に向かって湾曲した補強部材が挿入されており、
前記螺子部材は、前記外皮を介して前記補強部材を塑性変形させていることを特徴とするケーブルの固定構造。
前記編組シールド体において前記外皮の外周面に重なるように折り返された部分の外周側には導電性のテープが巻回されていることを特徴とする請求項3に記載のケーブルの固定構造。
前記ケーブルと前記開口部の内周面との間には、前記ケーブルの外側に嵌められた円筒状のスリーブが介在し、前記螺子部材は、前記スリーブとともに、前記外皮および前記補強部材を変形させていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のケーブルの固定構造。
前記スリーブには、周方向に延在する第1スリットと、該第1スリットに対して軸線方向でずれた位置で周方向に延在する第2スリットと、が並列するように形成されており、
前記螺子部材の先端部は、前記第1スリットと前記第2スリットとに挟まれた部分を塑性変形させていることを特徴とする請求項5に記載のケーブルの固定構造。
前記スリーブにおいて前記第1スリットと前記第2スリットとに挟まれた部分には、前記第1スリットの周方向の途中位置と前記第2スリットの周方向の途中位置とを繋ぐ第3スリットが形成されており、
前記螺子部材は、前記第3スリットに向けて止められていることを特徴とする請求項6に記載のケーブルの固定構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ケーブルは、各々が絶縁層で被覆された複数本の配線を可撓性の外皮で覆った構造になっているので、特許文献1に記載の構成では、弾性片部が外皮に食い込んで固定力を発生させても、かかる力が外皮の内側で吸収されてしまい、大きな固定力を発揮できない場合がある。また、ケーブルの外皮がゴム系材料等で形成されている場合等、外皮が変形しやすいので、固定力が低いことがある。このため、特許文献1に記載の構成では、ケーブルが開口部から抜けやすいという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ケーブルを強固に固定することのできるケーブルの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、壁部に形成された開口部の内周面から螺子部材の先端部が突出するように前記壁部に前記螺子部材を止めることにより、前記開口部に通されたケーブルを前記螺子部材により固定したケーブルの固定構造であって、前記ケーブルは、各々が絶縁層で被覆された複数本の配線と、該複数本の配線の周りを覆う可撓性の外皮とを備え、前記ケーブルの前記複数本の配線と前記外皮との間には、周方向に向かって湾曲した補強部材が挿入されており、前記螺子部材は、前記外皮を介して前記補強部材を塑性変形させていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、壁部に止められた螺子部材は、先端部が壁部の開口部の内周面から突出しているため、開口部に通されたケーブルでは、外皮が変形し、ケーブルが固定される。ここで、ケーブルの外皮の内側には補強部材が挿入されており、螺子部材は、補強部材を塑性変形させる程、深く止められている。また、ケーブルの外皮の内側には補強部材が挿入されているため、ケーブルを固定しようとする力が外皮の内側で吸収されることを緩和することができる。それ故、ケーブルに対する固定力が大きいので、ケーブルの外皮がゴム系材料等で形成されている場合であっても、ケーブルをより強固に固定することができる。
【0008】
本発明において、前記ケーブルは、前記複数本の配線と前記外皮との間に編組シールド体を備え、前記補強部材は、前記編組シールド体と前記外皮との間に挿入されていることが好ましい。かかる構成によれば、ケーブルの複数本の配線と外皮との間に補強部材を挿入するのが容易である。すなわち、複数本の配線と外皮との間に編組シールド体が介在する場合、編組シールド体を引っ張ると、編組シールド体が窄まる結果、編組シールド体と外皮との間に隙間が発生するので、ケーブルの複数本の配線と外皮との間に補強部材を容易に挿入することができる。
【0009】
本発明において、前記外皮の端部からは前記編組シールド体の端部が突出しており、前記編組シールド体において前記外皮の端部から突出している部分は、前記外皮の外周面に重なるように折り返されており、前記螺子部材は、前記編組シールド体において前記外皮の外周面に重なるように折り返された部分に向かって止められることにより、前記螺子部材と前記編組シールド体とが導通していることが好ましい。かかる構成によれば、螺子部材を介して筐体と編組シールド体とを導通させることができるので、耐ノイズ性能を向上することができる。
【0010】
この場合、前記編組シールド体において前記外皮の外周面に重なるように折り返された部分の外周側には導電性のテープが巻回されていることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記ケーブルと前記開口部の内周面との間には、前記ケーブルの外側に嵌められた円筒状のスリーブが介在し、前記螺子部材は、前記スリーブとともに、前記外皮および前記補強部材を変形させている構成を採用することができる。
【0012】
この場合、前記スリーブには、周方向に延在する第1スリットと、該第1スリットに対して軸線方向でずれた位置で周方向に延在する第2スリットと、が並列するように形成されており、前記螺子部材の先端部は、前記第1スリットと前記第2スリットとに挟まれた部分を塑性変形させていることが好ましい。かかる構成によれば、螺子部材を止めた際、スリーブの比較的変形しやすい部分を変形させる。従って、螺子部材は、スリーブを変形させることにより、外皮および補強部材を確実に変形させることができる。
【0013】
本形態では、前記スリーブにおいて前記第1スリットと前記第2スリットとに挟まれた部分には、前記第1スリットの周方向の途中位置と前記第2スリットの周方向の途中位置とを繋ぐ第3スリットが形成されており、前記螺子部材は、前記第3スリットに向けて止められていることが好ましい。かかる構成によれば、第3スリットの周方向の両側に位置する部分が螺子部材によって変形するので、スリーブが確実に変形する。このため、外皮および補強部材を確実に変形させることができる。
【0014】
本発明において、前記螺子部材の先端部は、先細り形状になっていることが好ましい。かかる構成によれば、螺子部材は、スリーブを確実に変形させることができる。
【0015】
本発明において、前記螺子部材は、周方向の複数個所に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、ケーブルに対する固定力を増大させることができる。
【0016】
本発明において、前記補強部材は円筒状である構成を採用することができる。
【0017】
本発明において、前記補強部材は、所定の角度範囲に延在した円弧の板状部材であることが好ましい。かかる構成によれば、補強部材を外皮の内側に挿入するのが容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明において、壁部に止められた螺子部材は、先端部が壁部の開口部の内周面から突出しているため、開口部に通されたケーブルでは、外皮が変形し、ケーブルが固定される。ここで、ケーブルの外皮の内側には補強部材が挿入されており、螺子部材は、補強部材を塑性変形させる程、深く止められている。また、ケーブルの外皮の内側には補強部材が挿入されているため、ケーブルを固定しようとする力が外皮の内側で吸収されることを緩和することができる。それ故、ケーブルに対する固定力が大きいので、ケーブルの外皮がゴム系材料等で形成されている場合であっても、ケーブルをより強固に固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明を適用したケーブルの固定構造を磁気センサ装置に適用した場合を例に説明する。
【0021】
(磁気センサ装置1の全体構成)
図1は、本発明を適用した磁気センサ装置1の全体構成を示す説明図であり、
図1(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置1を用いたエンコーダの説明図、磁気センサ装置1をセンサ面2側からみた斜視図、および磁気センサ装置1からシールド部材9を外した状態をセンサ面2側からみた斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本形態における磁気センサ装置1を磁気式リニアエンコーダに用いた場合には、固定部材(図示せず)に設けた磁気センサ装置1の底面(センサ面2)に対して、可動部材(図示せず)に固定された磁気スケール1aを対向させる。磁気スケール1aには、例えば、長手方向(移動方向)に沿ってN極とS極とが交互に配列されている。従って、可動部材が磁気スケール1aとともに磁気スケール1aの長手方向に移動した際の磁気センサ装置1からの出力信号を検出すれば、可動部材の位置や移動速度等を検出することができる。
【0023】
磁気センサ装置1は、略直方体形状のアルミニウムダイカスト品からなる筐体6と、この筐体6の開口を覆う矩形板状のカバー90と、筐体6から延びたケーブル7とを備えている。カバー90はビス91によって筐体6に固定されている。ケーブル7は、
図2〜
図5を参照して後述する構造によって、筐体6に固定されている。
【0024】
筐体6において、磁気スケール1aと対向する底面60にはセンサ面2側とは反対側に凹んだ基板配置部62が形成されており、かかる基板配置部62に、素子基板10が配置されている。
【0025】
素子基板10において磁気センサ装置1のセンサ面2側に向く主面11(一方面)には、磁気抵抗膜13によって磁気抵抗素子14が形成された感磁領域15と、複数の第1端子16が基板縁に沿って配列形成された接続領域17とが形成されている。感磁領域15には、磁気抵抗素子14として、インクリメンタル信号検出用の磁気抵抗素子14a、インクリメンタル信号検出用の磁気抵抗素子14b、および原点信号検出用の磁気抵抗素子14zが形成されており、かかる磁気抵抗素子14と第1端子16とは配線部分(図示せず)によって導通している。
【0026】
かかる構成の素子基板10の接続領域17にはフレキシブル配線基板30の端部34が接続されており、素子基板10およびフレキシブル配線基板30は素子基板モジュール3として、筐体6の内部に保持されている。ここで、端部34には、複数の第2端子31が形成されており、複数の第2端子31は各々、素子基板10の第1端子16に導通している。また、フレキシブル配線基板30の他方側の端部は、筐体6の内部に配置された剛性基板(図示せず)に接続されており、かかる剛性基板には、ケーブル7に接続されたコネクタ(図示せず)等が実装されている。
【0027】
筐体6の底面60において、基板配置部62の周りには、センサ面2側で開口する溝からなるシールド部材固定部66が形成されており、かかるシールド部材固定部66によって、素子基板10に対してセンサ面2側には、板状のシールド部材9が固定されている。より具体的には、シールド部材9は、基板配置部62および素子基板10をセンサ面2側で覆う矩形の端板部9aと、端板部9aの外縁からセンサ面2側とは反対側に屈曲してシールド部材固定部66に嵌った4枚の側板部(図示せず)とを備えており、側板部は、シールド部材固定部66の内部で接着剤等により固定されている。なお、筐体6の内部には、基板配置部62に樹脂材(図示せず)が充填されており、筐体6と素子基板10との間や、筐体6とシールド部材9との間は樹脂材で埋められている。本形態において、樹脂材は軟質性であり、かかる樹脂材としてはエポキシ系樹脂を用いることができる。
【0028】
(ケーブル7の固定構造)
図2は、本発明を適用した磁気センサ装置1における筐体6へのケーブル7の固定構造を示す説明図であり、
図2(a)、(b)、(c)は、筐体6へのケーブル7の固定部分の斜視図、筐体6からケーブル7等を外した状態の分解斜視図、および螺子部材の先端部の構成を示す斜視図である。なお、
図2では、筐体6の内部に配置された剛性基板やケーブル7の配線等の図示を省略してある。
【0029】
図2に示すように、筐体6に対してケーブル7を差し込むにあたっては、筐体6の側面を構成する4つの側壁63のうちの1つに貫通穴からなる円形の開口部64を形成する。また、側壁63の端面630には、開口部64まで到達するネジ穴631を形成しておき、開口部64にケーブル7を通した後、ネジ穴631に螺子部材5を止めてケーブル7を固定する。より具体的は、ネジ穴631に螺子部材5を止めると、開口部64の内周面640から螺子部材5の先端部50が突出するので、ケーブル7は、外周面が螺子部材5の先端部50に押圧される結果、開口部64で固定される。本形態では、ケーブル7には、以下に説明するスリーブ8が装着されるため、ケーブル7の外周面がスリーブ8を介して螺子部材5の先端部50に押圧される結果、ケーブル7は開口部64で固定される。
【0030】
かかる固定構造を採用するにあたって、本形態では、以下に説明する構成を採用することにより、ケーブル7を強固に固定するとともに、後述するケーブル7の編組シールド体73と筐体6とを螺子部材5を介して導通させる。
【0031】
まず、本形態では、螺子部材5の先端部50は先細り形状になっている。本形態では、螺子部材5の先端部50を円錐面とすることによって先細り形状となっている。
【0032】
次に、本形態では、ケーブル7の外側に円筒状のスリーブ8を嵌めておき、ケーブル7と開口部64の内周面640との間にスリーブ8が介在する状態で螺子部材5を止め、スリーブ8を変形させてケーブル7を固定する。
【0033】
(スリーブ8の構成)
図3は、本発明を適用した磁気センサ装置1において、ケーブル7の固定に用いたスリーブ8の構造を示す説明図であり、
図3(a)、(b)、(c)、(d)は、スリーブ8の平面図、スリーブ8の斜視図、スリーブ8を異なる方向からみたときの斜視図、および別の実施形態に係るスリーブ8の説明図である。
【0034】
図2および
図3に示すように、スリーブ8は、軸線方向に延在する円筒状の胴部80を有しており、かかる胴部80の一方側端部は大径部89になっている。かかる大径部89は、筐体6の側壁63の外面に当接することによって、スリーブ8の軸線方向の位置決めを行う際に利用される。
【0035】
胴部80には、周方向に延在する第1スリット81と、第1スリット81に対して軸線方向でずれた位置で周方向に延在する第2スリット82とが並列するように形成されており、螺子部材5の先端部50は、第1スリット81と第2スリット82とに挟まれた部分85を変形させることになる。本形態において、スリーブ8は金属製であり、螺子部材5の先端部50により押圧された際、スリーブ8は塑性変形することになる。
【0036】
本形態のスリーブ8において、第1スリット81と第2スリット82とに挟まれた部分には、第1スリット81の周方向の途中位置と第2スリット82の周方向の途中位置とを繋ぐ第3スリット83が形成されている。このため、第1スリット81と第2スリット82とに挟まれた部分85は、周方向の一方側に向けて突出する凸板部851と、周方向の他方側に向けて突出する凸板部852とに分割されている。また、螺子部材5は、第3スリット83に向けて止められる。このため、凸板部851、852の先端部が内側に変形し、ケーブル7を固定することになる。
【0037】
ここで、螺子部材5の先端部50は先細り形状になっている。このため、第3スリット83に向けて螺子部材5を止めた際、先端部50が第3スリット83に入り込むとき、凸板部851、852の先端部が螺子部材5の先端部50の側面に当接する。その結果、螺子部材5の位置に合わせて、スリーブ8が変位するので、螺子部材5に対するスリーブ8の位置が自動的に調整される。従って、螺子部材5の先端部50は、常に、スリーブ8の凸板部851、852の先端部を変形させることになる。
【0038】
大径部89の端面には、第3スリット83と同一の角度位置に凹部からなるマーク890が形成されている。このため、マーク890の位置を確認すれば、第3スリット83の角度位置を確認することができる。
【0039】
かかるスリーブ8としては、
図3(d)に示すように、第3スリット83が形成されておらず、第1スリット81と第2スリット82とに挟まれた部分85が周方向で繋がっているものを用いることもできる。また、
図3(a)、(b)、(c)に示すスリーブ8や、
図3(d)に示すスリーブ8の内周面、特に、第1スリット81と第2スリット82とに挟まれた部分85の内側に内周側に向かって突出する突起を形成しておき、かかる突起をケーブル7の外周面に食い込ませて、ケーブル7の抜け止め効果を高めてもよい。
【0040】
(ケーブル7の構成)
図4は、本発明を適用した磁気センサ装置1に用いたケーブル7の断面構成を模式的に示す説明図であり、ケーブル7の固定工程の各段階の断面構成を示してある。
図5は、本発明を適用した磁気センサ装置1に用いたケーブル7を側面からみたときの説明図であり、ケーブル7の固定工程の各段階の側面の構成を示してある。なお、
図4および
図5では、部材の構成を認識しやすいように、便宜的に配線70の数を7本とし、各層の厚さについては縮尺を変えて表してある。
【0041】
本形態では、ケーブル7を筐体6の側壁63の開口部64に通す前に、ケーブル7に以下の処理を施しておく。そこで、ケーブル7に対する処理を説明しながら、ケーブル7の筐体6への固定構造を説明する。
【0042】
まず、
図4(a)および
図5(a)に示すように、ケーブル7は、各々が絶縁層71で被覆された複数本の配線70と、複数本の配線70の周りを覆う可撓性樹脂やゴム系材料からなる外皮74とを備えている。また、複数本の配線70は、一括して紙製のシート72で周りが囲まれ、かかる紙製のシート72の周りは編組シールド体73で囲まれている。そして、編組シールド体73の周りは外皮74で覆われている。
【0043】
本形態では、
図4(b)および
図5(b)に示すように、ケーブル7を筐体6の側壁63の開口部64に通す前に、複数本の配線70と外皮74との間に補強部材41を挿入する。本形態では、複数本の配線70と外皮74との間に編組シールド体73が配置されているので、編組シールド体73と外皮74との間に補強部材41を挿入する。補強部材41は、周方向に湾曲した金属板であり、本形態では、補強部材41として円筒状の金属板(金属パイプ)を用いる。かかる補強部材41としては、塑性変形する部材が好ましいことから、真鍮製の金属パイプが用いられている。本形態では、複数本の配線70と外皮74との間に編組シールド体73が配置されているので、
図5(b)に矢印Aで示すように、編組シールド体73を引っ張ると、編組シールド体73が窄む結果、編組シールド体73と外皮74との間に隙間が発生するため、補強部材41を容易に挿入することができる。また、補強部材41を挿入した後、編組シールド体73の引っ張りを停止すれば、編組シールド体73は元の形状に復帰する。従って、補強部材41は、外皮74の内周面に沿うように配置される。本形態では、補強部材41として、真鍮等の銅系の金属材料からなるものを用いたが、アルミニウム製やステンレス製等を採用してもよい。但し、変形しやすいという観点からすれば、補強部材41として、銅系の金属材料からなるものが好ましい。
【0044】
次に、
図4(c)および
図5(c)に示すように、編組シールド体73において外皮74の端部から突出している部分730を外皮74の外周面に重なるように折り返す。
【0045】
次に、
図4(d)および
図5(d)に示すように、編組シールド体73において外皮74の外周面に重なるように折り返された部分730の外周側にアルミニウムテープ等の導電性のテープ46を巻回する。
【0046】
(ケーブル7の固定工程)
図4(a)〜(d)、および
図5(a)〜(d)を参照して説明した上記の処理を終えた後、
図4(e)に示すように、ケーブル7において、導電性のテープ46を巻回した部分にスリーブ8を被せる。次に、
図2(a)に示すように、ケーブル7においてスリーブ8を被せた部分が筐体6の側壁63に形成した開口部64の内側に位置するように、ケーブル7を開口部64に通す。その際、スリーブ8において第3スリット83が形成されている位置が、側壁63のネジ穴631に重なるように、ケーブル7やスリーブ8の位置を調整する。
【0047】
次に、
図2(a)に示すように、ネジ穴631に螺子部材5を止める。その結果、
図4(f)に示すように、螺子部材5の先端部50は、スリーブ8の凸板部851、852の先端部を内側に変形させ、かかるスリーブ8の変形によって、テープ46、編組シールド体73において外皮74の外周面に重なるように折り返された部分730、および外皮74を内側に変形させ、さらに、補強部材41を内側に変形させる。その結果、ケーブル7は、筐体6の開口部64に固定される。ここで、補強部材41は、螺子部材5の進入方向に対して直交する方向に長軸を向けた楕円状に変形しており、ケーブル7およびテープ46も、螺子部材5の進入方向に対して直交する方向に長軸を向けた楕円状に変形し、スリーブ8の内周面に密着した状態に固定されている。このため、ケーブル7は、スリーブ8に強固に固定されている。
【0048】
また、螺子部材5は、テープ46、および編組シールド体73において外皮74の外周面に重なるように折り返された部分730と接し、同電位となる。その結果、筐体6は、螺子部材5を介して編組シールド体73と同電位となる。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のケーブル7の固定構造では、筐体6の側壁63に止められた螺子部材5は、先端部50が側壁63の開口部64の内周面640から突出しているため、開口部64に通されたケーブル7では、外皮74が変形し、ケーブル7が固定される。ここで、ケーブル7の外皮74の内側には補強部材41が挿入されており、螺子部材5は、補強部材41を塑性変形させる程、深く止められている。また、ケーブル7の外皮74の内側には補強部材41が挿入されているため、ケーブル7を固定しようとする力が外皮74の内側で吸収されることを緩和することができる。それ故、ケーブル7に対する固定力が大きいので、ケーブル7の外皮74がゴム系材料等で形成されている場合であっても、ケーブル7を強固に固定することができる。
【0050】
また、ケーブル7は、複数本の配線70と外皮74との間に編組シールド体73を備えているため、複数本の配線70と外皮74との間に補強部材41を挿入するのが容易である。すなわち、複数本の配線70と外皮74との間に編組シールド体73が介在する場合、編組シールド体73を引っ張ると、編組シールド体73が窄まる結果、編組シールド体73と外皮74との間に隙間が発生するので、外皮74の内側に補強部材41を容易に挿入することができる。また、配線70と編組シールド体73の間に補強部材41を挿入した構成であるため、編組シールド体73とシート72との間や、シート72と配線70との間に補強部材41を挿入した構成と比較して、補強部材41のバリや、挿入時の引っ掛かりによる配線70への応力の印加等が発生しにくい。それ故、配線70での断線やショートが発生しにくいという利点がある。
【0051】
また、編組シールド体73において外皮74の端部から突出している部分730は、外皮74の外周面に重なるように折り返されており、螺子部材5は、編組シールド体73の折り返された部分730に向かって止められている。このため、螺子部材5と編組シールド体73とが導通し、その結果、筐体6と編組シールド体73とを導通させることができる。従って、ケーブル7の耐ノイズ性能を向上することができる。しかも、編組シールド体73の折り返された部分730の外周側には導電性のテープ46が巻回されているため、ケーブル7をスリーブ8の内側に通す際、編組シールド体73の折り返された部分730が邪魔にならない。
【0052】
また、ケーブル7と開口部64の内周面640との間には、ケーブル7の外側に嵌められた円筒状のスリーブ8が介在し、螺子部材5は、スリーブ8を変形させることにより、外皮74および補強部材41を変形させている。また、スリーブ8には、周方向に延在する第1スリット81および第2スリット82が形成されており、螺子部材5の先端部50は、第1スリット81と第2スリット82とに挟まれた部分85を塑性変形させている。しかも、スリーブ8には、第1スリット81の周方向の途中位置と第2スリット82の周方向の途中位置とを繋ぐ第3スリット83が形成されており、螺子部材5は、第3スリット83に向けて止められている。このため、スリーブ8は、螺子部材5が止められる部分が変形しやすくなっている。また、螺子部材5の先端部50は、先細り形状になっている。従って、螺子部材5は、スリーブ8を確実に変形させることができ、それ故、外皮74および補強部材41を確実に塑性変形させることができる。また、螺子部材5の先端部50が先細り形状になっているため、螺子部材5の先端部50の円錐部分が凸板部851、852の先端部に当接し、凸板部851、852の先端部を内側に向けて変形させている。このため、ケーブル7は、凸板部851、852の先端部によっても固定されている。よって、ケーブル7を強固に固定することができる。
【0053】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、螺子部材5の先端部50がケーブル7に接していない構造であったが、螺子部材5の先端部50がケーブル7に接する構造を採用してもよい。この場合、螺子部材5は、スリーブ8の凸板部851、852を変形させてケーブル7を変形させるとともに、螺子部材5の先端部50がケーブル7に当接してケーブル7を変形させることになる。かかる構成の場合でも、螺子部材5の先端部50が先細り形状になっていれば、螺子部材5の先端部50がケーブル7の外周面を強固に押圧するので、ケーブル7を強固に固定することができる。
【0054】
上記実施の形態では、周方向の1個所において、螺子部材5がケーブル7を固定していたが、周方向の複数個所で、螺子部材5がケーブル7を固定する構造を採用してもよい。かかる構成によれば、ケーブル7に対する固定力を増大させることができる。
【0055】
上記実施の形態では、補強部材41が円筒状であったが、補強部材41は、所定の角度範囲に延在した円弧の板状部材を用いてもよい。かかる構成によれば、補強部材41を外皮74の内側に挿入するのが容易である。
【0056】
また、上記実施の形態では、スリーブ8を用いたが、スリーブ8を用いずに、螺子部材5によって直接、ケーブル7を変形させてもよい。また、補強部材41は、配線70と編組シールド体73との間に挿入してもよい。
【0057】
(他の適用例)
上記実施の形態では、磁気式リニアエンコーダに用いた磁気センサ装置1に本発明を適用した例を説明したが、磁気式ロータリエンコーダにおいて、回転ドラム(可動部材)の外周面や端面に配置された磁気スケールに対向配置される磁気センサ装置に本発明を適用してもよい。
【0058】
また、本発明は、磁気センサ装置1に限らず、壁部の開口部でケーブル7を固定するような装置全体に適用することができる。