特許第6132533号(P6132533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6132533-摺動部クリアランス調整機構 図000002
  • 特許6132533-摺動部クリアランス調整機構 図000003
  • 特許6132533-摺動部クリアランス調整機構 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132533
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】摺動部クリアランス調整機構
(51)【国際特許分類】
   E02D 11/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   E02D11/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-268231(P2012-268231)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-114565(P2014-114565A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−146600(JP,U)
【文献】 特開2002−285553(JP,A)
【文献】 実開昭57−100425(JP,U)
【文献】 実開昭60−080097(JP,U)
【文献】 実開昭58−125674(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既に地中に圧入された既設杭の上端側を掴んで支持する複数のクランプ装置を備えたサドルと、前記サドルに対して前後動可能なスライドベースと、前記スライドベース上で左右に旋回可能なリーダマストと、前記リーダマストの前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置と、を備える杭圧入装置における、前記スライドベースの摺動部と、前記摺動部を摺動可能に案内する案内部側に配設されたライナープレートとの間のクリアランスを調整する摺動部クリアランス調整機構であって、
前記案内部に移動可能に設けられ、前記ライナープレートが取り付けられている可動部材と、
前記ライナープレートを前記摺動部に近接させる方向に前記可動部材の配置を切り替える第一調整部と、
前記摺動部から離間する方向に前記可動部材の配置を切り替える第二調整部と、
を備え、
前記第一調整部及び前記第二調整部の組は、前記摺動部の摺動方向に沿って複数組設けられ、
前記チャック装置側に設けられた前記第一調整部及び前記第二調整部の組の配置ピッチは、前記チャック装置から離れて設けられた前記第一調整部及び前記第二調整部の組の配置ピッチよりも狭いことを特徴とする摺動部クリアランス調整機構。
【請求項2】
前記可動部材は、前記摺動部に対向するとともに互いに直交する2つの摺接面を有し、その摺接面にそれぞれ前記ライナープレートが取り付けられており、
前記第一調整部は、前記可動部材を介して前記案内部に螺合している第一ネジ部材を備え、前記第一ネジ部材を前記案内部にねじ込むことで、少なくとも一方のライナープレートを前記摺動部に近接させる方向に前記可動部材を移動させ、
前記第二調整部は、前記可動部材に出没可能に螺合している第二ネジ部材を備え、前記第二ネジ部材をねじ回して前記案内部に向けて突き出すことで、前記可動部材を前記摺動部から離間させる方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の摺動部クリアランス調整機構。
【請求項3】
前記可動部材は、前記摺動部に対向する摺接面を有し、その摺接面に前記ライナープレートが取り付けられており、
前記第一調整部は、前記案内部を貫通するように螺合し、その一端に前記可動部材が支持されているボルト部材を備え、前記ボルト部材をねじ回して前記一端側を前記案内部から突き出すことで、前記ライナープレートを前記摺動部に近接させる方向に前記可動部材を移動させ、
前記第二調整部は、前記ボルト部材の他端に螺着されたナット部材を備え、前記ナット部材を前記ボルト部材の一端に向けて締め込むことで相対的に前記他端側を前記案内部から突き出させて、前記可動部材を前記摺動部から離間させる方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の摺動部クリアランス調整機構。
【請求項4】
前記摺動部において互いに直交する2面のそれぞれに向けて、前記ライナープレートを対向させるようにそれぞれ配された二つの前記可動部材と、その可動部材に一端が支持された前記ボルト部材と、そのボルト部材の他端に螺着された前記ナット部材と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の摺動部クリアランス調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部クリアランス調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭を地盤に打ち込んで埋設する装置として、既設の杭から反力を取って杭を地中に圧入する杭圧入機が知られている。
杭圧入機は、装置本体と、装置本体の下部に設けられ、既設の杭を掴むクランプ装置と、装置本体の前端部に設けられ、既設の杭に隣接した位置に圧入する杭を挟んで保持するチャック装置とを備えている。また、杭圧入機の装置本体は、クランプ装置が配されたサドルと、サドルに対して前後動可能なスライドベースと、スライドベース上に配されてチャック装置が昇降可能に取り付けられているリーダマストとを備えている。
そして、杭圧入機は、クランプ装置で既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取った状態で杭を把持するチャック装置を降下させるようにして、杭を地中に圧入するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この杭圧入機におけるスライドベースは、サドルに対して摺動可能に設けられており、そのスライドベースは機械重量および施工推力が掛かった状態で動かすことになるので、スライドベースの摺動部には摩擦が生じる。その摩擦による焼付きを防止するために、摺動部が摺接する部分にライナープレートを取り付け、オーバーホール時に定期的に交換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−47848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の場合、杭圧入機を稼動する時間の経過毎にライナープレートが摩耗し、摺動部とライナープレートの間のクリアランスが徐々に大きくなり、オーバーホール実施直前ではかなりのクリアランスが生じて圧入施工動作にも影響が出てくる。また、クリアランスが大きくなった状態では接触面積が少なくなり且つ面圧上昇するため、更に摩耗が進み易くなり悪循環である。
杭圧入機で圧入施工を好適に行うためには、摺動部におけるクリアランスを所定範囲に保つようにライナープレートをこまめに交換することが好ましいが、ライナープレートの部品代及びライナープレートの交換作業に多大の費用がかかるため、定期的なオーバーホールでライナープレートを交換して、クリアランスの調整を行っているという現状がある。
【0006】
本発明の目的は、容易に摺動部のクリアランスを調整することができる摺動部クリアランス調整機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
既に地中に圧入された既設杭の上端側を掴んで支持する複数のクランプ装置を備えたサドルと、前記サドルに対して前後動可能なスライドベースと、前記スライドベース上で左右に旋回可能なリーダマストと、前記リーダマストの前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置と、を備える杭圧入装置における、前記スライドベースの摺動部と、前記摺動部を摺動可能に案内する案内部側に配設されたライナープレートとの間のクリアランスを調整する摺動部クリアランス調整機構であって、
前記案内部に移動可能に設けられ、前記ライナープレートが取り付けられている可動部材と、
前記ライナープレートを前記摺動部に近接させる方向に前記可動部材の配置を切り替える第一調整部と、
前記摺動部から離間する方向に前記可動部材の配置を切り替える第二調整部と、
を備え、
前記第一調整部及び前記第二調整部の組は、前記摺動部の摺動方向に沿って複数組設けられ、
前記チャック装置側に設けられた前記第一調整部及び前記第二調整部の組の配置ピッチは、前記チャック装置から離れて設けられた前記第一調整部及び前記第二調整部の組の配置ピッチよりも狭いことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の摺動部クリアランス調整機構において、
前記可動部材は、前記摺動部に対向するとともに互いに直交する2つの摺接面を有し、その摺接面にそれぞれ前記ライナープレートが取り付けられており、
前記第一調整部は、前記可動部材を介して前記案内部に螺合している第一ネジ部材を備え、前記第一ネジ部材を前記案内部にねじ込むことで、少なくとも一方のライナープレートを前記摺動部に近接させる方向に前記可動部材を移動させ、
前記第二調整部は、前記可動部材に出没可能に螺合している第二ネジ部材を備え、前記第二ネジ部材をねじ回して前記案内部に向けて突き出すことで、前記可動部材を前記摺動部から離間させる方向に移動させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の摺動部クリアランス調整機構において、
前記可動部材は、前記摺動部に対向する摺接面を有し、その摺接面に前記ライナープレートが取り付けられており、
前記第一調整部は、前記案内部を貫通するように螺合し、その一端に前記可動部材が支持されているボルト部材を備え、前記ボルト部材をねじ回して前記一端側を前記案内部から突き出すことで、前記ライナープレートを前記摺動部に近接させる方向に前記可動部材を移動させ、
前記第二調整部は、前記ボルト部材の他端に螺着されたナット部材を備え、前記ナット部材を前記ボルト部材の一端に向けて締め込むことで相対的に前記他端側を前記案内部から突き出させて、前記可動部材を前記摺動部から離間させる方向に移動させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の摺動部クリアランス調整機構において、
前記摺動部において互いに直交する2面のそれぞれに向けて、前記ライナープレートを対向させるようにそれぞれ配された二つの前記可動部材と、その可動部材に一端が支持された前記ボルト部材と、そのボルト部材の他端に螺着された前記ナット部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に摺動部のクリアランスを調整することができる摺動部クリアランス調整機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】杭圧入装置を示す側面図である。
図2】杭圧入装置のサドルに摺動可能に備えられたスライドベースの摺動部における摺動部クリアランス調整機構を拡大して示す側面図(a)と、図2(a)のI−I線における断面図(b)と、図2(a)のII−II線における断面図(c)である。
図3】他の実施形態における摺動部クリアランス調整機構を拡大して示す側面図(a)と、図3(a)のIII−III線における断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る摺動部クリアランス調整機構の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、杭圧入装置のサドルに摺動可能に備えられたスライドベースの摺動部における摺動部クリアランス調整機構を例に説明する。
【0014】
杭圧入装置10は、図1に示すように、所定の杭P(例えば、鋼矢板など)を地中に圧入するパイル圧入機であり、既に地中に圧入された既設杭Pの上端側を掴んで支持する複数のクランプ装置11…を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダマスト14と、リーダマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、リーダマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16等を備えている。
【0015】
クランプ装置11は、サドル12の下面に設けられている。このクランプ装置11は、例えば、先に圧入された既設の杭Pである鋼矢板の上端側を挟んだ状態で、図示しない油圧シリンダの駆動によりその鋼矢板の上端部を挟持して掴むことができる。つまり、クランプ装置11は、既設杭Pを掴むことで杭圧入装置10を既設杭Pの上端部に固定する固定手段として機能する。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設杭Pから反力を取って、杭圧入装置10が新たに杭Pを圧入することができるように、杭圧入装置10を既設杭Pの上端部に固定し設置するようになっている。
【0016】
スライドベース13は、前後方向に摺動可能にサドル12に備えられている。
このスライドベース13は、サドル12に対し前方に移動してリーダマスト14及びチャック装置15を水平に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設杭Pの先に、新たな杭を順次圧入することを可能にする。
なお、サドル12が摺動可能に支持しているスライドベース13の摺動部13aや、その摺動部13aにおける摺動部クリアランス調整機構については後述する。
【0017】
リーダマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回可能とされることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角に曲げたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
チャック装置15は、その背面側がリーダマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダマスト14とチャック装置15に接続されたメイン油圧シリンダ16により昇降駆動されるようになっている。
【0018】
そして、チャック装置15が把持した杭Pを地中に圧入する際、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、杭Pを把持してチャック装置15を下降させることと、杭Pを離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、チャック装置15が昇降する1ストローク分ずつ杭Pを圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭Pを地中に圧入することが可能になっている。
【0019】
上記した杭圧入装置10は、既設杭Pの先に新たな杭Pをチャック装置15で圧入する動作と、クランプ装置11による既設杭Pの上端部の把持と解除の動作と、サドル12に対するスライドベース13の前後動の動作と、を組み合わせることで、既設杭Pからなる杭列上を自走し移動することができる。
なお、杭圧入装置10が杭列上を自走する動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0020】
次に、杭圧入装置10のサドル12に摺動可能に備えられたスライドベース13の摺動部13aにおける摺動部クリアランス調整機構100について説明する。
【0021】
図2(a)(b)(c)に示すように、サドル12の上部には、上方に突き出した縁部12cを有する案内部12aが設けられており、その案内部12aに案内部の一部を成す可動部材20が取り付けられている。また、スライドベース13の左右両側には、側方に突き出した摺動部13aが設けられている。
このスライドベース13の摺動部13aが、案内部としての可動部材20とサドル12の案内部12aとの間に介装されて、スライドベース13がサドル12に摺動可能に支持されている。
【0022】
可動部材20は、案内部12aに移動可能に備えられており、案内部12aとともにスライドベース13を摺動可能に支持する案内部としても機能する。
例えば、可動部材20は、摺動部13aの上面と側面に対向するとともに互いに直交する2つの摺接面を有し、断面視略L字形状を呈する長尺なレール状の部材である。
この可動部材20の2つの摺接面にそれぞれライナープレート1が取り付けられている。
また、可動部材20には、第一調整部の第一ネジ部材2が配される貫通孔(ねじ穴)と、第二調整部の第二ネジ部材3が配される貫通孔(ねじ穴)が、それぞれ複数形成されている。
そして、この可動部材20は、第一調整部(第一ネジ部材2)および第二調整部(第二ネジ部材3)の作用によってその配置を切り替えるように、案内部12aに移動可能に備えられている。
【0023】
ライナープレート1は、例えば、金属製のプレート材料からなり、その厚さは任意であるが、2mm程度であることが好ましい。厚さ2mmの金属製プレート材料であれば、材料費を抑え製品原価のコストダウンを図ることができる。また、ライナープレート1の厚さが2mmであれば、可動部材20の摺動面を保護する機能を十分に有するので、そのライナープレート1を好適に使用することができる。
【0024】
第一ネジ部材2は、可動部材20を介して案内部12aに螺合するよう、可動部材20に形成された貫通孔を通じて案内部12aに螺合している。
この第一調整部としての第一ネジ部材2を案内部12aにねじ込むことで、少なくとも一方のライナープレート1を摺動部13aに近接させる方向に可動部材20を移動させるように、可動部材20の配置を切り替えることができる。
例えば、第一ネジ部材2を案内部12aにねじ込むことで、可動部材20を下方に移動させる配置の切り替えを行い、摺動部13aの上面に対向しているライナープレート1を摺動部13aに近接させることができる。
【0025】
第二ネジ部材3は、可動部材20に出没可能に螺合している、例えば六角穴付きの止めネジであり、可動部材20に形成された貫通孔に配設されている。
この第二調整部としての第二ネジ部材3をねじ回して案内部12aに向けて突き出すことで、可動部材20を摺動部12aから離間させる方向に移動させるように、可動部材20の配置を切り替えることができる。
例えば、第二ネジ部材3を可動部材20の下面から突き出すようにねじ回すことで、案内部12aに突き当たった第二ネジ部材3が相対的に可動部材20を上方に移動させる配置の切り替えを行い、摺動部13aの上面に対向しているライナープレート1を摺動部13aから離間させることができる。
【0026】
ここで、可動部材20、第一ネジ部材2、第二ネジ部材3を備えている摺動部クリアランス調整機構100による、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスの調整方法について説明する。
【0027】
例えば、ライナープレート1を交換する可動部材20のオーバーホールを行い、可動部材20の摺動面に新たなライナープレート1を貼付した後、第一ネジ部材2によって可動部材20を案内部12aに取り付ける。
その際、スライドベース13が好適に摺動できるように、摺動部13aの上面とライナープレート1の間のクリアランスを調整しつつ、第一ネジ部材2を案内部12aにねじ込み、可動部材20を案内部12aに取り付ける。
なお、スライドベース13が好適に摺動できる配置に可動部材20を位置決めして取り付けることができるように、予め可動部材20の下面から第二ネジ部材3を所定量突き出しておくようにしてもよい。こうすることによって、第一ネジ部材2を締め付け過ぎて、可動部材20(ライナープレート1)を摺動部13aに圧接してしまうことなく、可動部材20を好適な配置に取り付けることができる。
【0028】
次いで、杭圧入装置10を稼動させた時間の経過に伴いライナープレート1が摩耗し、摺動部13aの上面とライナープレート1の間のクリアランスが大きくなった場合、第一ネジ部材2を案内部12aにねじ込むことで、摺動部13aの上面にライナープレート1を近接させるように可動部材20を下方に移動させて、摺動部13aの上面とライナープレート1の間のクリアランスを調整する。
さらに、摺動部13aとライナープレート1を近接させ過ぎた場合など、クリアランスの微調整として、第二ネジ部材3を可動部材20の下面から突き出すようにねじ回して、第二ネジ部材3を案内部12aに突き当てて相対的に可動部材20を上方に移動させる配置の切り替えを行う。なお、可動部材20は第一ネジ部材2によって案内部12aに取り付けられているため、その支持力に抗するように第二ネジ部材3をねじ回ししても、可動部材20は僅かに上方にずれる程度である。つまり、第二ネジ部材3をねじ回しすることで可動部材20を僅かに上方に移動させて、その可動部材20の配置を微調整することができるので、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを微調整することができる。
【0029】
また、摺動部13aとライナープレート1を近接させ過ぎた場合、一旦、第一ネジ部材2を緩めた後、第二ネジ部材3をねじ回して、可動部材20の下面から第二ネジ部材3をクリアランス相当分突き出させ、再度第一ネジ部材2を締め込むようにして可動部材20を好適な配置に取り付けるように、クリアランスを調整することもできる。
【0030】
こうして第一ネジ部材2を案内部12aにねじ込み、ライナープレート1を摺動部13aに近接させる方向に可動部材20の配置を切り替えることと、第二ネジ部材3をねじ回しして、可動部材20の下面から第二ネジ部材3を突き出し、ライナープレート1を摺動部13aから離間させる方向に可動部材20の配置を切り替えることによって、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを容易に調整することができる。
【0031】
このように、可動部材20と、第一ネジ部材2と、第二ネジ部材3とを備えている摺動部クリアランス調整機構100は、第一ネジ部材2と第二ネジ部材3とによって可動部材20の配置を切り替えて、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを容易に調整することができるので、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを所定範囲に保つようにこまめに調整することで、杭圧入装置10は圧入施工を好適に行うことが可能になる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図3(a)(b)に示すように、ライナープレート1が取り付けられた可動部材21と、第一調整部としてのボルト部材4と、第二調整部としてのナット部材5とを備えた構成の摺動部クリアランス調整機構101であってもよい。
以下、摺動部クリアランス調整機構101について説明する。
【0033】
図3(a)(b)に示すように、サドル12の上部には、上方に突き出すとともに先端側を内側(スライドベース13側)に向けて折曲した形状の案内部12bが設けられている。また、スライドベース13の左右両側には、側方に突き出した摺動部13aが設けられている。
このスライドベース13の摺動部13aが、サドル12の案内部12bに滑合されて、スライドベース13がサドル12に摺動可能に支持されている。
【0034】
案内部12bは、摺動部13aの上面に対向した配置の上面部12dと、摺動部13aの側面に対向した配置の側面部12eを有している。
この上面部12dと側面部12eにはそれぞれ、ボルト部材4が配される貫通孔(ねじ穴)が複数形成されている。そして、案内部12bの上面部12dと側面部12eにそれぞれ、ボルト部材4、ナット部材5、ライナープレート1が取り付けられた可動部材21が組み付けられるようになっている。
つまり、摺動部クリアランス調整機構101は、摺動部13aにおいて互いに直交する2面(上面と側面)のそれぞれに向けて、ライナープレート1を対向させるように配された可動部材21を備え、各可動部材21にその可動部材21の配置を切り替えるためのボルト部材4とナット部材5とを備えた構成をとっている。
【0035】
可動部材21は、摺動部13aに対向する摺接面を有する板状の部材であり、その摺接面にライナープレート1が取り付けられている。
ライナープレート1は、例えば、金属製のプレート材料からなり、その厚さは任意であるが、2mm程度であることが好ましい。
【0036】
ボルト部材4は、案内部12bを貫通するように螺合している、止めねじタイプのボルトである。
ボルト部材4の一端は、スライドベース13(摺動部13a)が滑合される側である案内部12bの内面側に突き出るようになっており、そのボルト部材4の一端に可動部材21が支持されている。例えば、可動部材21に対しボルト部材4の一端は回転可能に軸着されており、ボルト部材4が可動部材21に軸支されている。
このボルト部材4をねじ回して、ボルト部材4の一端側を案内部12bから突き出すことで、可動部材21と一体のライナープレート1を摺動部13aに近接させる方向に移動させるように、可動部材21の配置を切り替えることができる。
例えば、ボルト部材4を案内部12bにねじ込み、ボルト部材4の一端を案内部12bの内面側から突き出すように可動部材21を移動させて、摺動部13aの上面に対向しているライナープレート1を摺動部13aに近接させること、摺動部13aの側面に対向しているライナープレート1を摺動部13aに近接させることができる。
【0037】
ナット部材5は、案内部12bの外面側に突き出たボルト部材4の他端に螺着している。つまり、ナット部材5と可動部材21は、案内部12bを挟んでボルト部材4のそれぞれの端部に配設されている。
このナット部材5をボルト部材4の一端に向けて締め込むことで相対的にボルト部材4の他端側を案内部12bから突き出させて、可動部材21を摺動部13aから離間させる方向に移動させるように、可動部材21の配置を切り替えることができる。
例えば、ナット部材5をボルト部材4の一端に向けて締め込み、相対的にボルト部材4の他端を案内部12bの外面側から突き出させるように、ボルト部材4および可動部材21を移動させて、摺動部13aの上面に対向しているライナープレート1を摺動部13aから離間させること、摺動部13aの側面に対向しているライナープレート1を摺動部13aから離間させることができる。
【0038】
ここで、可動部材21、ボルト部材4、ナット部材5を備えている摺動部クリアランス調整機構101による、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスの調整方法について説明する。
【0039】
例えば、ライナープレート1を交換する可動部材21のオーバーホールを行い、可動部材21の摺動面に新たなライナープレート1を貼付した後、案内部12bを貫通するように螺合したボルト部材4の一端にその可動部材21を軸着するか、その一端に可動部材21を回転可能に軸着したボルト部材4を案内部12bの貫通孔に螺合させるか、何れかの手順に従って、ライナープレート1と一体の可動部材21及びボルト部材4を案内部12bに取り付ける。
また、案内部12bの外面側に突き出たボルト部材4の他端にナット部材5を螺着する。
その際、スライドベース13が好適に摺動できるように、摺動部13aの上面とライナープレート1の間のクリアランスと、摺動部13aの側面とライナープレート1の間のクリアランスを調整しつつ、ボルト部材4をねじ回して可動部材21の配置を調整する。
なお、スライドベース13が好適に摺動できる配置に可動部材21を位置決めして取り付けることができるように、予めボルト部材4の他端の所定位置にナット部材5を螺着しておくようにしてもよい。こうすることによって、ボルト部材4をねじ回してナット部材5が案内部12bの外面に当接したタイミングがボルト部材4の締め込みを止めるタイミングであるように設定することができ、ボルト部材4を締め付け過ぎて、可動部材21(ライナープレート1)を摺動部13aに圧接してしまうことなく、可動部材21を好適な配置に取り付けることができる。
【0040】
次いで、杭圧入装置10を稼動させた時間の経過に伴いライナープレート1が摩耗し、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスが大きくなった場合、ボルト部材4をねじ回して、ボルト部材4の一端側に可動部材21とともに配設されているライナープレート1を摺動部13aに近接させるように移動させて、摺動部13aの上面および側面とライナープレート1の間のクリアランスを調整する。
さらに、摺動部13aとライナープレート1を近接させ過ぎた場合など、クリアランスの微調整として、ボルト部材4の他端に螺着しているナット部材5をボルト部材4の一端に向けて締め込むことで相対的にボルト部材4の他端側を案内部12bから突き出させるようにして、可動部材21を摺動部13aから離間させる方向に移動させる配置の切り替えを行う。このナット部材5をボルト部材4の一端に向けて締め込むことで、可動部材21の配置を微調整することができるので、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを微調整することができる。
【0041】
また、ライナープレート1が摩耗し、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスが大きくなった場合、クリアランスが広がった分に相当する隙間を案内部12b外面とナット部材5の間につくるようにナット部材5の螺着位置を調整した後、ナット部材5が案内部12bの外面に当接するまでボルト部材4をねじ回して、可動部材21及びライナープレート1の配置を切り替えることで、クリアランスを調整することもできる。
【0042】
こうしてボルト部材4を案内部12bにねじ込み、ライナープレート1を摺動部13aに近接させる方向に可動部材21の配置を切り替えることと、ナット部材5をボルト部材4の一端に向けて締め込むことで相対的にボルト部材4をナット部材5側に引き寄せるように移動させて、ライナープレート1を摺動部13aから離間させる方向に可動部材21の配置を切り替えることによって、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを容易に調整することができる
【0043】
このように、可動部材21と、ボルト部材4と、ナット部材5とを備えている摺動部クリアランス調整機構101は、ボルト部材4とナット部材5とによって可動部材21の配置を切り替えて、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを容易に調整することができるので、摺動部13aとライナープレート1の間のクリアランスを所定範囲に保つようにこまめに調整することで、杭圧入装置10は圧入施工を好適に行うことが可能になる。
特に、この摺動部クリアランス調整機構101であれば、摺動部13aの上面とライナープレート1の間のクリアランスと、摺動部13aの側面とライナープレート1の間のクリアランスを、それぞれ調整することができるので、スライドベース13がより一層良好に摺動するためのメンテナンスを可能にする。
【0044】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ライナープレート
2 第一ネジ部材(第一調整部)
3 第二ネジ部材(第二調整部)
4 ボルト部材(第一調整部)
5 ナット部材(第二調整部)
10 杭圧入装置
12 サドル
12a 案内部
12b 案内部
13 スライドベース
13a 摺動部
20 可動部材
21 可動部材
100 摺動部クリアランス調整機構
101 摺動部クリアランス調整機構
P 杭
図1
図2
図3