(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
架橋フッ素ゴム層が、動的粘弾性試験(測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、貯蔵弾性率E’が1500kPa以上20000kPa以下である請求項1記載のベルト材。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、フッ素ゴム(A)およびカーボンブラック(B)を含むフッ素ゴム組成物を架橋して得られる架橋フッ素ゴム層を有し、架橋フッ素ゴム層が、動的粘弾性試験(測定モード:引張、チャック間距離:20mm、測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、損失弾性率E”が、400kPa以上6000kPa以下であるベルト材に関する。
【0021】
本発明におけるフッ素ゴム(A)としては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)および式(1):
CF
2=CF−R
fa (1)
(式中、R
faは−CF
3または−OR
fb(R
fbは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)など)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0022】
別の観点からは、フッ素ゴム(A)としては、非パーフルオロフッ素ゴム又はパーフルオロフッ素ゴムが好ましい。
【0023】
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。これらの中でも、VdF系フッ素ゴム、TFE/Pr系フッ素ゴム、及び、TFE/Pr/VdF系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種が、耐熱老化性、耐油性が良好な点からより好適である。
【0024】
上記VdF系ゴムは、VdF繰り返し単位が、VdF繰り返し単位とその他の共単量体に由来する繰り返し単位との合計モル数の20モル%以上、90モル%以下が好ましく、40モル%以上、85モル%以下であることがより好ましい。更に好ましい下限は45モル%、特に好ましい下限は50モル%であり、更に好ましい上限は80モル%である。
【0025】
そして、上記VdF系ゴムにおける共単量体としてはVdFと共重合可能であれば特に限定されず、たとえば、TFE、HFP、PAVE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、及び、一般式(2)
CH
2=CFR
f (2)
(式中、R
fは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基)で表される含フッ素単量体などのフッ素含有単量体;エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体、架橋性基(キュアサイト)を与える単量体;並びに反応性乳化剤などが挙げられ、これらの単量体や化合物のなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
前記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、又は、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)がより好ましく、特にPMVEが好ましい。
【0027】
また、前記PAVEとして、式:CF
2=CFOCF
2OR
fc
(式中、R
fcは炭素数1〜6の直鎖または分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖または分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるパーフルオロビニルエーテルを用いてもよく、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
3、または、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
2OCF
3 を用いることが好ましい。
【0028】
上記式(2)で表される含フッ素単量体としては、R
fが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、R
fが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。R
fの炭素数は1〜6であることが好ましい。上記式(2)で表される含フッ素単量体(2)としては、CH
2=CFCF
3、CH
2=CFCF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
2CF
3などが挙げられ、なかでも、CH
2=CFCF
3で示される2,3,3,3−テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0029】
上記VdF系ゴムとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/プロピレン(Pr)共重合体、VdF/エチレン(Et)/HFP共重合体、及びVdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましく、また、VdF以外の他の共単量体として、TFE、HFP、および/またはPAVEを有するものであることがより好ましい。このなかでも、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及びVdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体、及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体がより好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体、及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が特に好ましい。
【0030】
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、(45〜85)/(55〜15)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは(60〜80)/(40〜20)(モル%)である。
【0031】
VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が(30〜80)/(4〜35)/(10〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0032】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が(65〜90)/(35〜10)(モル%)のものが好ましい。
【0033】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が(40〜80)/(3〜40)/(15〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0034】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が(65〜90)/(3〜25)/(3〜25)(モル%)のものが好ましい。
【0035】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が(40〜90)/(0〜25)/(0〜40)/(3〜35)(モル%)のものが好ましく、(40〜80)/(3〜25)/(3〜40)/(3〜25)(モル%)のものがより好ましい。
【0036】
VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)系共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜20/80であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%のものが好ましく、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が80/20〜20/80であることがより好ましい。またVdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜50/50であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%であるものも好ましい。VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体としては、TFE、HFP、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、PPVE、CTFE、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル、架橋性基を与える単量体、および反応性乳化剤などの上記VdFの共単量体として例示した単量体が好ましく、なかでもPMVE、CTFE、HFP、TFEであることが好ましい。
【0037】
TFE/プロピレン(Pr)系フッ素ゴムとは、TFE45〜70モル%、プロピレン(Pr)55〜30モル%からなる含フッ素共重合体をいう。これら2成分に加えて、特定の第3成分(たとえばPAVE)を0〜40モル%含んでいてもよい。
【0038】
エチレン(Et)/HFP系フッ素ゴム(共重合体)としては、Et/HFPの組成が、(35〜80)/(65〜20)(モル%)であることが好ましく、(40〜75)/(60〜25)(モル%)がより好ましい。
【0039】
Et/HFP/TFE系フッ素ゴム(共重合体)は、Et/HFP/TFEの組成が、(35〜75)/(25〜50)/(0〜15)(モル%)であることが好ましく、(45〜75)/(25〜45)/(0〜10)(モル%)がより好ましい。
【0040】
パーフルオロフッ素ゴムとしては、TFE/PAVEからなるものなどが挙げられる。TFE/PAVEの組成は、(50〜90)/(50〜10)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは、(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは、(55〜75)/(45〜25)(モル%)である。
【0041】
この場合のPAVEとしては、たとえばPMVE、PPVEなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、フッ素ゴムは数平均分子量5000〜500000のものが好ましく、10000〜500000のものが更に好ましく、特に20000〜500000のものが好ましい。
【0043】
また、加工性の観点から、フッ素ゴム(A)は100℃におけるムーニー粘度が20〜200、更には30〜180の範囲にあることが好ましい。ムーニー粘度は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定する。
【0044】
以上説明した非パーフルオロフッ素ゴムおよびパーフルオロフッ素ゴムは、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの常法により製造することができる。特にヨウ素(臭素)移動重合として知られるヨウ素(臭素)化合物を使用した重合法によれば、分子量分布が狭いフッ素ゴムを製造できる。
【0045】
また、たとえばフッ素ゴム組成物の粘度を低くしたい場合などでは、上記のフッ素ゴム(A)に他のフッ素ゴムをブレンドしてもよい。他のフッ素ゴムとしては、低分子量液状フッ素ゴム(数平均分子量1000以上)、数平均分子量が10000程度の低分子量フッ素ゴム、更には数平均分子量が100000〜200000程度のフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0046】
また、前記非パーフルオロフッ素ゴムやパーフルオロフッ素ゴムとして例示したものは主な単量体の構成であり、架橋性基を与える単量体を共重合したものも好適に用いることができる。架橋性基を与える単量体としては、製造法や架橋系に応じて適切な架橋性基を導入できるものであればよく、たとえばヨウ素原子、臭素原子、炭素−炭素二重結合、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エステル基などを含む公知の重合性化合物、連鎖移動剤などが挙げられる。
【0047】
好ましい架橋性基を与える単量体としては、
一般式(3):
CY
12=CY
2R
f2X
1 (3)
(式中、Y
1、Y
2はフッ素原子、水素原子または−CH
3;R
f2は1個以上のエーテル型酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基;X
1はヨウ素原子または臭素原子)
で示される化合物が挙げられる。
【0048】
具体的には、たとえば、一般式(4):
CY
12=CY
2R
f3CHR
1−X
1 (4)
(式中、Y
1、Y
2、X
1は前記同様であり、R
f3は1個以上のエーテル型酸素原子を有していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、すなわち水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素オキシアルキレン基、または水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素ポリオキシアルキレン基;R
1は水素原子またはメチル基)
で示されるヨウ素含有モノマー又は臭素含有モノマー、一般式(5)〜(22):
CY
42=CY
4(CF
2)
n−X
1 (5)
(式中、Y
4は、同一又は異なり、水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数)
CF
2=CFCF
2R
f4−X
1 (6)
(式中、
【化1】
であり、nは0〜5の整数)
CF
2=CFCF
2(OCF(CF
3)CF
2)
m
(OCH
2CF
2CF
2)
nOCH
2CF
2−X
1
(7)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
CF
2=CFCF
2(OCH
2CF
2CF
2)
m
(OCF(CF
3)CF
2)
nOCF(CF
3)−X
1
(8)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
mO(CF
2)
n−X
1 (9)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
m−X
1 (10)
(式中、mは1〜5の整数)
CF
2=CFOCF
2(CF(CF
3)OCF
2)
nCF(−X
1)CF
3
(11)
(式中、nは1〜4の整数)
CF
2=CFO(CF
2)
nOCF(CF
3)−X
1 (12)
(式中、nは2〜5の整数)
CF
2=CFO(CF
2)
n−(C
6H
4)−X
1 (13)
(式中、nは1〜6の整数)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
nOCF
2CF(CF
3)−X
1
(14)
(式中、nは1〜2の整数)
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−X
1
(15)
(式中、nは0〜5の整数)、
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
1 (16)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数)
CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)OCF(CF
3)−X
1 (17)
CH
2=CFCF
2OCH
2CF
2−X
1 (18)
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
mCF
2CF(CF
3)−X
1
(19)
(式中、mは0以上の整数)
CF
2=CFOCF(CF
3)CF
2O(CF
2)
n−X
1 (20)
(式中、nは1以上の整数)
CF
2=CFOCF
2OCF
2CF(CF
3)OCF
2−X
1 (21)
CH
2=CH−(CF
2)
nX
1 (22)
(式中、nは2〜8の整数)
(一般式(5)〜(22)中、X
1は前記と同様)
で表されるヨウ素含有モノマー、臭素含有モノマーなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0049】
一般式(4)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしては、一般式(23):
【化2】
(式中、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数)
で表されるヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルが好ましく挙げられ、より具体的には、
【化3】
などが挙げられるが、これらの中でも、ICH
2CF
2CF
2OCF=CF
2が好ましい。
【0050】
一般式(5)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、ICF
2CF
2CF=CH
2、I(CF
2CF
2)
2CF=CH
2が好ましく挙げられる。
【0051】
一般式(9)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、I(CF
2CF
2)
2OCF=CF
2が好ましく挙げられる。
【0052】
一般式(22)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、CH
2=CHCF
2CF
2I、I(CF
2CF
2)
2CH=CH
2が好ましく挙げられる。
【0053】
また、式:R
2R
3C=CR
4−Z−CR
5=CR
6R
7
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は同じかまたは異なり、いずれもH、または炭素数1〜5のアルキル基;Zは、直鎖もしくは分岐状の、酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1〜18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で示されるビスオレフィン化合物も架橋性基を与える単量体として好ましい。なお、本明細書において、「(パー)フルオロポリオキシアルキレン基」とは、「フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基」を意味する。
【0054】
Zは、好ましくは炭素数4〜12の(パー)フルオロアルキレン基であり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は好ましくは水素原子である。
【0055】
Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である場合、式:
−(Q)
p−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m−(CF
2O)
n−CF
2−(Q)
p−
(式中、Qは炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数2〜10のオキシアルキレン基であり、pは0または1であり、m及びnはm/n比が0.2〜5となり且つ該(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の分子量が500〜10000、好ましくは1000〜4000の範囲となるような整数である。)で表される(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であることが好ましい。この式において、Qは好ましくは、−CH
2OCH
2−及び−CH
2O(CH
2CH
2O)
sCH
2−(s=1〜3)の中から選ばれる。
【0056】
好ましいビスオレフィンは、
CH
2=CH−(CF
2)
4−CH=CH
2、
CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2、
式:CH
2=CH−Z
1−CH=CH
2
(式中、Z
1は−CH
2OCH
2−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m−(CF
2O)
n−CF
2−CH
2OCH
2−(m/nは0.5))
などが挙げられる。
【0057】
なかでも、CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2で示される3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロ−1,9−デカジエンが好ましい。
【0058】
本発明において、カーボンブラック(B)として、上記範囲の損失弾性率E”、更に好ましくは上記範囲の貯蔵弾性率E’を与えるカーボンブラックであれば特に制限されない。
【0059】
そうしたカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられ、具体的にはたとえば、SAF−HS(N
2SA:142m
2/g、DBP:130ml/100g)、SAF(N
2SA:142m
2/g、DBP:115ml/100g)、N234(N
2SA:126m
2/g、DBP:125ml/100g)、ISAF(N
2SA:119m
2/g、DBP:114ml/100g)、ISAF−LS(N
2SA:106m
2/g、DBP:75ml/100g)、ISAF−HS(N
2SA:99m
2/g、DBP:129ml/100g)、N339(N
2SA:93m
2/g、DBP:119ml/100g)、HAF−LS(N
2SA:84m
2/g、DBP:75ml/100g)、HAS−HS(N
2SA:82m
2/g、DBP:126ml/100g)、HAF(N
2SA:79m
2/g、DBP:101ml/100g)、N351(N
2SA:74m
2/g、DBP:127ml/100g)、LI−HAF(N
2SA:74m
2/g、DBP:101ml/100g)、MAF−HS(N
2SA:56m
2/g、DBP:158ml/100g)、MAF(N
2SA:49m
2/g、DBP:133ml/100g)、FEF−HS(N
2SA:42m
2/g、DBP:160ml/100g)、FEF(N
2SA:42m
2/g、DBP:115ml/100g)、SRF−HS(N
2SA:32m
2/g、DBP:140ml/100g)、SRF−HS(N
2SA:29m
2/g、DBP:152ml/100g)、GPF(N
2SA:27m
2/g、DBP:87ml/100g)、SRF(N
2SA:27m
2/g、DBP:68ml/100g)、SRF−LS(N
2SA:23m
2/g、DBP:51ml/100g)、FT(N
2SA:19m
2/g、DBP:42ml/100g)、MT(N
2SA:8m
2/g、DBP:43ml/100g)などが挙げられる。これらのカーボンブラックは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0060】
なかでも、カーボンブラックの好ましいものとしては、窒素吸着比表面積(N
2SA)が5〜180m
2/gであって、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40〜180ml/100gであるカーボンブラックが挙げられる。
【0061】
窒素吸着比表面積(N
2SA)が5m
2/gよりも小さくなると、ゴムに配合した場合の機械物性が低下する傾向にあり、この観点から、窒素吸着比表面積(N
2SA)は10m
2/g以上が好ましく、20m
2/g以上がより好ましく、30m
2/g以上が特に好ましく、40m
2/g以上が最も好ましい。上限は、一般的に入手しやすい観点から180m
2/gが好ましい。
【0062】
ジブチルフタレート(DBP)吸油量が40ml/100gよりも小さくなると、ゴムに配合した場合の機械物性が低下する傾向にあり、この観点から、50ml/100g以上、更には60ml/100g以上、特には70ml/100g以上が好ましい。上限は一般的に入手しやすい観点から、175ml/100g、更には170ml/100gが好ましい。
【0063】
カーボンブラック(B)の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して5〜50質量部が好ましい。カーボンブラック(B)が多くなりすぎると架橋物の機械物性が低下する傾向、硬くなりすぎる傾向にあり、また、少なくなりすぎると機械物性が低下する傾向にある。更に好ましい配合量は、物性バランスが良好な点から、フッ素ゴム(A)100質量部に対して6質量部以上が好ましく、特に10質量部以上がより好ましく、物性バランスが良好な点から49質量部以下が好ましく、特に45質量部以下がより好ましい。
【0064】
本発明における架橋フッ素ゴム層を得るには、フッ素ゴム組成物として、たとえばラバープロセスアナライザ(RPA)による未架橋ゴムでの動的粘弾性試験(測定温度:100℃、測定周波数:1Hz)における動的歪み1%時のせん断弾性率G’(1%)および動的歪み100%時のせん断弾性率G’(100%)の差δG’(G’(1%)−G’(100%))が、120kPa以上3,000kPa以下であるものを好適に用いることができる。
【0065】
差δG’は、ゴム組成物の補強性という性質を評価する指標として用い、ラバープロセスアナライザによる動的粘弾性試験で測定算出される。
【0066】
差δG’が120kPa以上3,000kPa以下の範囲にあるフッ素ゴム組成物は、常態物性および高温時の機械物性などの点で有利である。
【0067】
差δG’は、常態物性および高温時の機械物性などが良好な点から、好ましくは150kPa以上、更には160kPa以上であり、常態物性および高温時の機械物性などが良好な点から、2,800kPa以下、更には2,500kPa以下である。
【0068】
差δG’が120kPa以上3,000kPa以下のフッ素ゴム組成物は、たとえば混練機やロール練り機などを用いて調製できる。
【0069】
より具体的には、つぎの各方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0070】
(1)密閉式混練機にフッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)、要すれば後述する有機アミン化合物および/または受酸剤を所定量投入し、ローターの平均剪断速度を50〜1000(1/秒)、好ましくは100〜1000(1/秒)、更に好ましくは200〜1000(1/秒)に調整して、混練温度の最高温度Tmが80〜220℃(好ましくは120〜200℃)となる条件で混練する方法(つまり、混練時の混練物の最高温度Tm80℃〜220℃とし、その温度で排出する条件にて混練することが好ましい。以下同様)。なお、密閉式混練機としては、加圧ニーダーやバンバリーミキサー、一軸混練機、二軸混練機などが挙げられる。
【0071】
(2)ロール練り機にフッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)、要すれば後述する有機アミン化合物および/または受酸剤を所定量投入し、ローターの平均剪断速度を50(1/秒)以上、混練温度の最高温度Tmが80〜220℃(好ましくは120〜200℃)となる条件で混練する方法。
【0072】
上記(1)、(2)の方法で得られるフッ素ゴム組成物は架橋剤(および/または架橋助剤(D))や架橋促進剤などを含んでいない。また、上記(1)、(2)の方法の混練を複数回行ってもよい。複数回行う場合、2回目以降の混練条件は、混練温度の最高温度Tmを140℃以下とする以外は上記(1)、(2)の方法と同じ条件でよい。
【0073】
本発明で用いる架橋性のフッ素ゴム組成物の調製法の1つは、たとえば、上記(1)、(2)の方法で得られた、あるいは上記(1)、(2)の方法を複数回繰り返して得られたフッ素ゴム組成物に、更に架橋剤(C)(および/または架橋助剤(D))および架橋促進剤を配合し混練する方法である。
【0074】
架橋剤(C)(および/または架橋助剤(D))と架橋促進剤は同時に配合し混練してもよいし、まず架橋促進剤を配合混練し、ついで架橋剤(C)(および/または架橋助剤(D))を配合混練してもよい。架橋剤(C)(および/または架橋助剤(D))と架橋促進剤の混練条件は、混練温度の最高温度Tmが130℃以下であるほかは、上記(1)、(2)の方法と同じ条件でよい。
【0075】
架橋性のフッ素ゴム組成物の別の調製法は、たとえばロール練り機にフッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)、架橋剤(C)(および/または架橋助剤(D))および架橋促進剤を適切な順序で所定量投入し、ローターの平均剪断速度を50(1/秒)以上、混練温度の最高温度Tmが130℃以下の条件で混練する方法が挙げられる。
【0076】
また、ポリオール架橋系の場合は、予めフッ素ゴム(A)と架橋剤(C)と架橋促進剤を混合し、均一分散体にしたものを使用してもよい。たとえば、フッ素ゴム(A)とポリオール系架橋剤と架橋促進剤をまず混練し、ついでカーボンブラックと後述する有機アミン化合物を配合して混練し、混練温度の最高温度Tmを80〜220℃とする。そして、最後に受酸剤を配合して混練し、混練温度の最高温度Tm130℃以下とする方法が挙げられる。なお混練するにあたっては、平均剪断速度50(1/秒)以上で混練する方法を採用するのがより好ましい。
【0077】
上記差δG’の範囲は、架橋剤(C)および/または架橋助剤(D)、架橋促進剤を配合する前のフッ素ゴム組成物において満たされていることが好ましい。また、架橋剤(C)および/または架橋助剤(D)、架橋促進剤を配合したフッ素ゴム組成物でも、上記差δG’は上記の範囲に入っていることが好ましい。
【0078】
上述した特定の損失弾性率E”や貯蔵弾性率E’を備えたフッ素ゴム層を得る観点からは、平均剪断速度は50(1/秒)以上が好ましい。平均剪断速度を50(1/秒)以上にすることにより、所望の常態物性および高温時の機械物性を得ることができる。
【0079】
平均剪断速度(1/秒)は、つぎの式により算出される。
平均剪断速度(1/秒)=(π×D×R)/(60(秒)×c)
(式中、
D:ローター径またはロール径(cm)
R:回転速度(rpm)
c:チップクリアランス(cm。ローターとケーシングとの間隙の距離、またはロール同士の間隙の距離)
【0080】
架橋剤(C)および/または架橋助剤(D)、架橋促進剤は、架橋系、架橋するフッ素ゴム(A)の種類(たとえば共重合組成、架橋性基の有無や種類など)、得られるベルト材の具体的用途や使用形態、そのほか混練条件などに応じて、適宜選択することができる。
【0081】
本発明において、架橋助剤(D)は、後述するトリアジン架橋系において架橋反応を開始させる化合物、また、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系において架橋反応を促進する化合物をいう。
【0082】
架橋系としては、たとえば過酸化物架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系、トリアジン架橋系などが採用できる。
【0083】
(過酸化物架橋系)
過酸化物架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−炭素結合を有しているので、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
【0084】
架橋剤(C)としては過酸化物架橋系の架橋剤が好ましい。過酸化物架橋系の架橋剤としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−m−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの有機過酸化物を挙げることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
【0085】
また、過酸化物架橋系では、通常、架橋促進剤を含むことが好ましい。過酸化物系架橋剤、特に有機過酸化物系架橋剤の架橋促進剤としては、たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0086】
過酸化物架橋系に好適なフッ素ゴム(A)としては、TFE単位、VdF単位または式(1)の含フッ素単量体単位を少なくとも含むパーフルオロフッ素ゴムおよび非パーフルオロフッ素ゴムのいずれもが使用できるが、特にVdF系ゴム、および、TFE/Pr系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴムが好ましい。
【0087】
また、架橋性の観点から、過酸化物架橋系に好適なフッ素ゴム(A)としては、架橋点としてヨウ素原子および/または臭素原子を含むフッ素ゴムが好ましい。ヨウ素原子および/または臭素原子の含有量としては、0.001〜10質量%、更には0.01〜5質量%、特に0.1〜3質量%が、物性のバランスが良好な点から好ましい。
【0088】
過酸化物架橋剤の配合量としては、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜9質量部、特に好ましくは0.2〜8質量部である。過酸化物架橋剤が、0.01質量部未満であると、フッ素ゴム(A)の架橋が充分に進行しない傾向があり、10質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0089】
また、架橋促進剤の配合量は、通常、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.1〜9質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10質量部を超えると、架橋時間が速くなり過ぎることに加え、物性バランスが低下する傾向がある。
【0090】
(ポリオール架橋系)
ポリオール架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有しており、圧縮永久歪みが小さく、成形性に優れているという特徴がある点で好適である。
【0091】
ポリオール架橋剤としては、従来、フッ素ゴムの架橋剤として知られている化合物を用いることができ、たとえば、ポリヒドロキシ化合物、特に、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0092】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析する場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0093】
これらの中でも、得られる成形品などの圧縮永久歪みが小さく、成形性も優れているという点から、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、耐熱性が優れることからポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましく、ビスフェノールAFが更に好ましい。
【0094】
また、ポリオール架橋系では、通常、架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤を用いると、フッ素ゴム主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進することにより架橋反応を促進することができる。
【0095】
ポリオール架橋系の架橋促進剤としては、一般にオニウム化合物が用いられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、1官能性アミン化合物などが挙げられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0096】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0097】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどを挙げることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC)が好ましい。
【0098】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0099】
ポリオール架橋系に好適なフッ素ゴム(A)としては、TFE単位、VdF単位または式(1)の含フッ素単量体単位を少なくとも含むパーフルオロフッ素ゴムおよび非パーフルオロフッ素ゴムのいずれもが使用できるが、特にVdF系ゴム、及びTFE/Pr系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴムが好ましい。
【0100】
ポリオール架橋剤の配合量としては、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜7質量部である。ポリオール架橋剤が、0.01質量部未満であると、フッ素ゴム(A)の架橋が充分に進行しない傾向があり、10質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0101】
また、架橋促進剤の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、フッ素ゴム(A)の架橋が充分に進行しない傾向があり、8質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0102】
(ポリアミン架橋系)
ポリアミン架橋により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−窒素二重結合を有しているものであり、動的機械特性に優れているという特徴がある。しかし、ポリオール架橋系または過酸化物架橋系架橋剤を用いて架橋する場合に比べて、圧縮永久歪みが大きくなる傾向がある。
【0103】
ポリアミン系架橋剤としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどのポリアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0104】
ポリアミン架橋系に好適なフッ素ゴム(A)としては、TFE単位、VdF単位または式(1)の含フッ素単量体単位を少なくとも含むパーフルオロフッ素ゴムおよび非パーフルオロフッ素ゴムのいずれもが使用できるが、特にVdF系ゴム、TFE/Pr系ゴムが好ましい。
【0105】
ポリアミン系架橋剤の配合量としては、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜7質量部である。ポリアミン系架橋剤が、0.01質量部未満であると、フッ素ゴム(A)の架橋が充分に進行しない傾向があり、10質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0106】
(オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系)
オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系は、圧縮永久歪みが小さく、耐熱性に優れた架橋系である。
【0107】
オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系に用いる架橋剤としては、
式(24):
【化4】
(式中、R
1は同じかまたは異なり、−NH
2、−NHR
2、−OHまたは−SHであり、R
2はフッ素原子または1価の有機基である)で示される架橋性反応基を少なくとも2個含む化合物、式(25):
【化5】
で示される化合物、式(26):
【化6】
(式中、R
f1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)で示される化合物、および式(27):
【化7】
(式中、nは1〜10の整数)で示される化合物などが例示できる。
【0108】
具体的な架橋剤としては、式(24)で示される架橋性反応基を2個有する一般式(28):
【化8】
(式中、R
1は前記と同じ、R
5は、−SO
2−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基、単結合手、または
【化9】
で示される基である)で示される化合物や、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのほか、
式(29):
【化10】
(式中、R
6は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜10のアルキル基;フッ素原子を含有する炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基;ベンジル基;フッ素原子および/または−CF
3で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基である)で示される化合物が挙げられる。
【0109】
これらの具体例としては、限定的ではないが、たとえば2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどのビスアミノフェノール系架橋剤などが挙げられる。
【0110】
上記の架橋剤の中でも、耐熱性が優れており、架橋反応性が特に良好である点から、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(OH−AF)、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(Nph−AF)、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(TA−AF)が更に好ましい。
【0111】
また、これらのオキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系では、架橋速度が大きく改善される点から、架橋助剤(D)を併用してもよい。
【0112】
オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系に併用する架橋助剤(D)としては、たとえば(D1)40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物、または(D2)無機窒化物粒子が例示できる。
【0113】
(D1)40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物(アンモニア発生化合物)
アンモニア発生化合物(D1)は、架橋反応温度(40〜330℃)で発生したアンモニアが架橋を引き起こすことにより硬化を生じさせるとともに、架橋剤により硬化も促進する。また微量の水と反応して、アンモニアを発生させるものもある。
【0114】
アンモニア発生化合物(D1)としては、尿素又はその誘導体、若しくは、アンモニウム塩が好ましく挙げられ、尿素又はアンモニウム塩がより好ましい。アンモニウム塩としては有機アンモニウム塩でも無機アンモニウム塩でもよい。
【0115】
尿素の誘導体としては、尿素のほか、ビウレア、チオウレア、尿素塩酸塩、ビウレットなどの尿素誘導体も含まれる。
【0116】
有機アンモニウム塩としては、特開平9−111081号公報、国際公開第00/09603号パンフレット、国際公開第98/23675号パンフレットに記載された化合物、たとえばパーフルオロヘキサン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸アンモニウムなどのポリフルオロカルボン酸のアンモニウム塩;パーフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロオクタンスルホン酸アンモニウムなどのポリフルオロスルホン酸のアンモニウム塩;パーフルオロヘキサンリン酸アンモニウム、パーフルオロオクタンリン酸アンモニウムなどのポリフルオロアルキル基含有リン酸、ホスホン酸のアンモニウム塩;安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウムなどの非フッ素系のカルボン酸またはスルホン酸のアンモニウム塩が例示できる。なかでも、分散性の観点からはフッ素系のカルボン酸、スルホン酸またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、一方、安価な点からは、非フッ素系のカルボン酸、スルホン酸またはリン酸のアンモニウム塩が好ましい。
【0117】
無機アンモニウム塩としては、特開平9−111081号公報に記載された化合物、たとえば硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが例示でき、なかでも架橋特性を考慮すると、リン酸アンモニウムが好ましい。
【0118】
そのほか、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミジン、ホルムアミジン塩酸塩、ホルムアミジン酢酸塩、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、HCF
2CF
2CH(CH
3)OCONH
2、フタルアミドなども使用できる。
【0119】
これらのアンモニア発生化合物(D1)は、単独でも2種以上併用してもよい。
【0120】
(D2)無機窒化物粒子
無機窒化物粒子(D2)としては、特に限定されるものではないが、窒化ケイ素(Si
3N
4)、窒化リチウム、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化バナジウム、窒化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ナノサイズの微粒子が供給可能であることから、窒化ケイ素粒子であることが好ましい。また、これらの窒化物粒子は2種以上混合使用してもよい。
【0121】
無機窒化物粒子(D2)の粒径としては、特に限定されるものではないが、1000nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。下限値は特に限定されない。
【0122】
また、これらの無機窒化物粒子(D2)は、アンモニア発生化合物(D1)を併用してもよい。
【0123】
これらのオキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系は、つぎの特定の架橋性基を有するVdF系ゴム、および特定の架橋性基を有するTFE/Pr系ゴムが対象となる。
【0124】
(特定の架橋性基を有するVdF系ゴム)
特定のVdF系ゴムは、VdFと、TFE、HFPおよびフルオロ(ビニルエーテル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンと、シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体との共重合体であるVdF系ゴムである。上記フルオロオレフィンは、パーフルオロオレフィンが好ましい。
【0125】
ただし、VdFの共重合割合は20モル%を超えていることが、低温での脆弱性を改善するために重要である。
【0126】
フルオロ(ビニルエーテル)としては、一般式(30):
CF
2=CFO(CF
2CFY
2O)
p−(CF
2CF
2CF
2O)
q−R
f5 (30)
(式中Y
2は、フッ素原子または−CF
3を表し、R
f5は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは、0〜5の整数を表し、qは、0〜5の整数を表す。)
または、一般式(31):
CFX=CXOCF
2OR (31)
(式中、XはFまたはH;Rは炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環状のフルオロアルキル基、またはフルオロオキシアルキル基。ただし、H、Cl、Br、Iから選択される1〜2個の原子を含んでもよい)
で表されるものを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0127】
一般式(30)又は一般式(31)で示されるものの中でも、PAVEが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)がより好ましく、特にパーフルオロ(メチルビニルエーテル)が好ましい。
【0128】
これらはそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0129】
VdFと特定のフルオロオレフィンとの共重合割合は、VdFが20モル%を超えていればよいが、なかでもVdF45〜85モル%と、特定のフルオロオレフィン55〜15モル%とからなるVdF系ゴムが好ましく、更にはVdF50〜80モル%と特定のフルオロオレフィン50〜20モル%とからなるVdF系ゴムが好ましい。
【0130】
VdFと特定のフルオロオレフィンとの具体的な組合せとしては、具体的には、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及びVdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。
【0131】
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、45〜85/55〜15モル%であることが好ましく、より好ましくは、50〜80/50〜20モル%であり、更に好ましくは、60〜80/40〜20モル%である。
【0132】
VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が、40〜80/10〜35/10〜35モル%のものが好ましい。
【0133】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が、65〜90/35〜10モル%のものが好ましい。
【0134】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が、40〜80/3〜40/15〜35モル%のものが好ましい。
【0135】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が、65〜90/3〜25/3〜25モル%のものが好ましい。
【0136】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が、40〜90/0〜25/0〜40/3〜35のものが好ましく、40〜80/3〜25/3〜40/3〜25モル%のものがより好ましい。
【0137】
シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体は、良好な架橋特性および耐熱性の観点から、VdFと特定のフルオロオレフィンの合計量に対して、0.1〜5モル%であることが好ましく、0.3〜3モル%であることがより好ましい。
【0138】
シアノ基またはカルボキシル基、またはアルコキシカルボニル基を含有する単量体としては、たとえば、式(32)〜(35):
CY
12=CY
1(CF
2)
n−X
1 (32)
(式中、Y
1は水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数である)
CF
2=CFCF
2R
f6−X
1 (33)
(式中、R
f6は−(OCF
2)
n−、−(OCF(CF
3))
n−
であり、nは0〜5の整数である)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
mO(CF
2)
n−X
1 (34)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数である)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
m−X
1 (35)
(式中、mは1〜5の整数)
(式(32)〜(35)中、X
1は、シアノ基(−CN基)、カルボキシル基(−COOH基)、またはアルコキシカルボニル基(−COOR基、Rは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでいてもよいアルキル基))で表される単量体などが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0139】
これらの特定の架橋性基を有するVdF系ゴムは、常法により製造することができる。
【0140】
また、これらの架橋性基の導入方法としては、国際公開第00/05959号パンフレットに記載の方法も用いることができる。
【0141】
また、特定の架橋性基を有するVdF系ゴムは、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML
1+10(121℃))が5〜140、更には5〜120、特に5〜100であるものが好ましい。
【0142】
(特定の架橋性基を有するTFE/Pr系ゴム)
特定の架橋性基を有するTFE/Pr系ゴムは、TFE単位40〜70モル%とPr単位30〜60モル%とシアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を有する単量体単位を有する非パーフルオロゴムである。
【0143】
また、必要に応じてVdF単位0〜15モル%および/またはPAVE単位0〜15モル%を含んでいてもよい。
【0144】
TFE単位は40〜70モル%、好ましくは50〜65モル%であり、Prとこの範囲においてエラストマー性が得られる。
【0145】
Pr単位は30〜60モル%、好ましくは35〜50モル%であり、TFEとこの範囲においてエラストマー性が得られる。
【0146】
シアノ基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を有する単量体としては、特定の架橋性基を有するVdF系ゴムで説明した単量体が好ましいものも含めて、特定の架橋性基を有するTFE/Pr系ゴムにも使用できる。
【0147】
任意の単位であるVdF単位またはPAVE単位は15モル%まで、更には10モル%までであり、これを超えると前者は耐アミン性、後者は高コストの点で好ましくない。
【0148】
また特定の架橋性基を有するTFE/Pr系ゴムは、通常、ムーニー粘度(ML
1+10(121℃))が5〜100である。ムーニー粘度が5を下回ると架橋性が低下して架橋ゴムとしての十分な物理特性が出なくなり、100を超えると流動性が低下し、成型加工性が悪くなる傾向にある。好ましいムーニー粘度(ML
1+10(121℃))は、10〜80である。
【0149】
特定の架橋性基を有するTFE/Pr系ゴムは、通常の乳化重合法でも製造できるが、TFEとPrの重合速度は比較的遅いため、たとえば2段重合法(シード重合法)で製造するときは、効率よく製造できる。
【0150】
これらのオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系架橋剤の添加量は、上記特定のフッ素ゴム100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.1質量部未満であると、実用上充分な機械的強度、耐熱性、耐薬品性が得られない傾向があり、20質量部を超えると、架橋に長時間がかかるうえ、架橋物が硬くなり柔軟性がなくなる傾向がある。
【0151】
これらのオキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系で架橋助剤(D)を併用する場合、架橋助剤(D)の添加量は、通常、上記特定のフッ素ゴム100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、0.02〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。
【0152】
(トリアジン架橋系)
トリアジン架橋系は、圧縮永久歪みが小さく、耐熱性に優れた架橋系である。トリアジン架橋系では、架橋反応を開始する架橋助剤(D)のみを用いる。
【0153】
トリアジン架橋系に用いる架橋助剤(D)としては、たとえば上記オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系およびイミダゾール架橋系において架橋剤と併用可能な架橋助剤である(D1)40〜330℃でアンモニアを発生させる化合物、または(D2)無機窒化物粒子が例示できる。
【0154】
トリアジン架橋系は、上記オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系が対象とする特定の架橋性基を有するフッ素ゴムのうち、架橋性基の少なくとも1つがシアノ基であるフッ素ゴムが好ましい。
【0155】
アンモニア発生化合物(D1)の添加量は発生するアンモニアの量により適宜選択すればよいが、通常、上記シアノ基含有フッ素ゴム100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。アンモニア発生化合物が、少なすぎると架橋密度が低くなるため、実用上、充分な耐熱性、耐薬品性を発現しない傾向があり、多くなりすぎると、スコーチの懸念があり保存安定性が悪くなるという傾向がある。
【0156】
無機窒化物粒子(D2)の添加量は、通常、上記シアノ基含有フッ素ゴム100質量部に対して、0.1〜20質量部であり、0.2〜5質量部であることが好ましく、0.2〜1質量部であることがより好ましい。無機窒化物粒子(D2)が、0.1質量部未満であると架橋密度が低くなるため、実用上、充分な耐熱性、耐薬品性を発現しない傾向があり、20質量部を超えると、スコーチの懸念があり保存安定性が悪くなるという傾向がある。
【0157】
本発明においては、架橋系として過酸化物架橋系、ポリオール架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系、またはトリアジン架橋系が好ましく、それぞれの架橋系に適した架橋剤(C)または架橋助剤(D)を用いることが好ましい。なかでも、過酸化物架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系およびイミダゾール架橋系の架橋剤、またはトリアジン架橋系の架橋助剤を用いることがより好ましい。
【0158】
本発明のフッ素ゴム組成物には、必要に応じて通常のゴム配合物、たとえば充填材、加工助剤、可塑剤、着色剤、粘着付与剤、接着助剤、受酸剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤のほか、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの他の重合体などを本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0159】
充填材としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;合成ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填材、ポリテトラフルオロエチレン、マイカ、シリカ、セライト、クレーなどが例示できる。また、受酸剤として、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられ、これらの単独または2種以上を適宜配合してもよい。これらは、先述した混練方法で、どの工程で添加するかは任意であるが、密閉式混練機やロール練り機でフッ素ゴムとカーボンブラックを混練する際に添加するのが好ましい。
【0160】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル;カルナバワックス、セレシンワックスなどの石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのポリグリコール;ワセリン、パラフィンなどの脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、界面活性剤、スルホン化合物、フッ素系助剤、有機アミン化合物などが例示できる。
【0161】
なかでも有機アミン化合物や受酸剤は、フッ素ゴム(A)とカーボンブラック(B)を密閉式混練機やロール練り機で混練する際に共存させることにより、補強性が向上する点から好ましい配合剤である。混練温度は、混練温度の最高温度Tmが80℃〜220℃となるように行うことが好ましい。
【0162】
有機アミン化合物としては、R
1NH
2で示される1級アミン、R
1R
2NHで示される2級アミン、R
1R
2R
3Nで示される3級アミンが好ましく挙げられる。R
1、R
2、R
3は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜50のアルキル基が好ましく、アルキル基は官能基としてベンゼン環を含んでいてもよいし、二重結合、共役二重結合を含んでいてもよい。尚、アルキル基は直鎖型であってもよいし、分岐型でもあってもよい。
【0163】
1級アミンとしては、たとえばココナッツアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、17−フェニル−ヘプタデシルアミン、オクタデカ−7,11−ジエニルアミン、オクタデカ−7.9−ジエニルアミン、オクタデック−9−エニルアミン、7−メチル−オクタデック−7−エニルアミンなどが挙げられ、2級アミンとしては、たとえばジステアリルアミンなどが、3級アミンとしては、たとえばジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミンなどが挙げられる。なかでも炭素数が20個程度のアミン、特に1級アミンが入手の容易性や補強性が増大する点から好ましい。
【0164】
有機アミン化合物の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。有機アミン化合物が多くなりすぎると混練しにくくなる傾向にあり、また、少なくなりすぎると補強性が低下する傾向にある。更に好ましい配合量は、補強性の観点から、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、補強性の観点と混練しやすさの観点から4質量部以下である。
【0165】
受酸剤としては、先述したもののうち、たとえば、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、ハイドロタルサイトなどが、補強性の観点から好ましく、特に酸化亜鉛が好ましい。
【0166】
受酸剤の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。受酸剤が多くなりすぎると物性が低下する傾向にあり、また、少なくなりすぎると補強性が低下する傾向にある。更に好ましい配合量は、補強性の観点から、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、物性の観点と混練しやすさの観点から8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0167】
粘着付与剤としては、たとえばクマロン樹脂、クマロン・インデン樹脂、クマロン・インデン・スチレン樹脂、ナフテン系油、フェノール樹脂、ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン誘導体、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、水添テルペン樹脂、α−ピネン樹脂、アルキルフェノール・アセチレン系樹脂、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド系樹脂、スチレン樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド系樹脂、多官能メタクリレート、多官能アクリレート、金属酸化物(たとえば酸化マグネシウムなど)、金属水酸化物などが例示でき、配合量はフッ素ゴム(A)100質量部に対して1〜20質量部が好ましい。これら粘着付与剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0168】
本発明のベルト材は、本発明のフッ素ゴム組成物を架橋して得られる架橋フッ素ゴム層を有するものである。
【0169】
本発明のフッ素ゴム組成物の架橋方法は、適宜選択すればよいが、たとえばプレス架橋機、連続架橋機、架橋缶などを用いた架橋方法といった通常のベルト材の架橋方法が採用される。また、成形方法としては、成形ドラムや、圧縮プレス、注入成形機、射出成形機などのゴム用成形機を用いた成形方法といった通常のベルト材の成形方法が採用される。
【0170】
得られた架橋フッ素ゴム層は、動的粘弾性試験(測定モード:引張、チャック間距離:20mm、測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、損失弾性率E”が、400kPa以上6000kPa以下である。
【0171】
損失弾性率E”が上記範囲であるとき、常態物性および高温時の機械物性などに特に優れたものとなる。下限としては好ましくは420kPa、より好ましくは430kPaであり、更に好ましくは450kPa以上であり、上限としては好ましくは5900kPa、より好ましくは5800kPaである。
【0172】
また、架橋フッ素ゴム層は、架橋フッ素ゴム層ゴムが、動的粘弾性試験(測定モード:引張、チャック間距離:20mm、測定温度:160℃、引張歪み:1%、初期加重:157cN、周波数:10Hz)において、貯蔵弾性率E’が、1500kPa以上20000kPa以下であることが、高温時の機械物性の向上の点から更に好ましい。下限としては、好ましくは1600kPa、より好ましくは1800kPaであり、上限としては、好ましくは19000kPa、より好ましくは18000kPaである。
【0173】
また、架橋フッ素ゴム層は、高温環境下での使用などに適したものとなることから、160℃において、140〜700%の引張破断伸びを有していることが好ましい。160℃における引張破断伸びは、150〜700%がより好ましく、180%以上が更に好ましく、200%以上が特に好ましく、また650%以下が更に好ましく、600%以下が特に好ましい。
【0174】
また、架橋フッ素ゴム層は、160℃において、3〜20MPa、更には3.5MPa以上、特に4MPa以上、また17MPa以下、特に15MPa以下の引張破断強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。破断時引張強度及び引張破断伸びは、JIS−K6251に準じて、6号ダンベルを用いて測定する。
また、架橋フッ素ゴム層は、160℃において、3〜30kN/m、更には4kN/m以上、特に5kN/m以上、また29kN/m以下、特に28kN/m以下の引裂き強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0175】
また、架橋フッ素ゴム層は、200℃において、高温環境下での使用などに適したものとなることから、200℃において、110〜700%の引張破断伸びを有していることが好ましい。200℃における引張破断伸びは、120〜700%がより好ましく、150%以上が更に好ましく、200%以上が特に好ましく、また650%以下が更に好ましく、600%以下が特に好ましい。
【0176】
また、架橋フッ素ゴム層は、200℃において、2〜20MPa、更には2.2MPa以上、特に2.5MPa以上、また17MPa以下、特に15MPa以下の引張破断強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0177】
また、架橋フッ素ゴム層は、200℃において、3〜30kN/m、更には4kN/m以上、特に5kN/m以上、また29kN/m以下、特に28kN/m以下の引裂き強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0178】
また、架橋フッ素ゴム層は、高温環境下での使用などに適したものとなることから、230℃において、80〜700%の引張破断伸びを有していることが好ましい。230℃における引張破断伸びは、100〜700%がより好ましく、120%以上が更に好ましく、130%以上が特に好ましく、また650%以下が更に好ましく、600%以下が特に好ましい。
【0179】
また、架橋フッ素ゴム層は、230℃において、1〜20MPa、更には1.2MPa以上、特に1.5MPa以上、また17MPa以下、特に15MPa以下の引張破断強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0180】
また、架橋フッ素ゴム層は、230℃において、3〜30kN/m、更には4kN/m以上、特に5kN/m以上、また29kN/m以下、特に28kN/m以下の引裂き強度を有していることが、高温環境下での使用などに適したものとなることから好ましい。
【0181】
本発明のベルト材は、フッ素ゴムからなるものであるため、耐熱老化性や耐薬品性、耐油性に優れており、更に、上記構成を有することによって、耐熱老化性や耐油性だけではなく、高温時の機械物性にも優れる。
本発明のベルト材は、以下に示すベルトとして好適に用いることができる。
【0182】
動力伝達ベルト(平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、歯付きベルトなどを含む)、搬送用ベルト(コンベアベルト)などのベルト材に用いることができる。また、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体製造関連分野では、高温環境に曝されるCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置などのベルト材に用いることができる。
【0183】
平ベルトとしては、たとえば農業用機械、工作機械、工業用機械などのエンジン周りなど各種高温となる部位に使用される平ベルトが挙げられる。コンベアベルトとしては、たとえば石炭、砕石、土砂、鉱石、木材チップなどのバラ物や粒状物を高温環境下で搬送するためのコンベアベルトや、高炉などの製鉄所などで使用されるコンベアベルト、精密機器組立工場、食品工場などで、高温環境下に曝される用途におけるコンベアベルトが挙げられる。VベルトおよびVリブドベルトとしては、たとえば農業用機械、一般機器(OA機器、印刷機械、業務用乾燥機など)、自動車用などのVベルト、Vリブドベルトが挙げられる。歯付きベルトとしては、たとえば搬送ロボットの伝動ベルト、食品機械、工作機械の伝動ベルトなどの歯付きベルトが挙げられ、自動車用、OA機器、医療用、印刷機械などで使用される歯付きベルト挙げられる。特に、自動車用歯付きベルトとしては、タイミングベルトが挙げられる。
【0184】
なお、本発明のベルト材は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造である場合、本発明のベルトは、上記架橋フッ素ゴム層及び他の材料からなる層からなるものであってもよい。多層構造のベルトにおいて、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、帆布、金属箔層などが挙げられる。
【0185】
他のゴムとしては、耐薬品性や柔軟性が特に要求される場合は、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、EPDMおよびアクリルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるゴムが好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはその水素添加ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムからなることがより好ましい。
【0186】
また、熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂が好ましく、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0187】
また、多層構造のベルト材を作製する場合、必要に応じて表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、接着を可能とする処理方法であれば、その種類は特に制限されるものではなく、例えばプラズマ放電処理やコロナ放電処理等の放電処理、湿式法の金属ナトリウム/ナフタレン液処理などが挙げられる。また、表面処理としてプライマー処理も好適である。プライマー処理は常法に準じて行うことができる。プライマー処理を施す場合、表面処理を行っていないフッ素ゴムの表面を処理することもできるが、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理などを予め施したうえで、更にプライマー処理すると、より効果的である。
【実施例】
【0188】
つぎに本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0189】
本発明で採用した各種の物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0190】
(1)動的粘弾性試験1(損失弾性率E”および貯蔵弾性率E’)
(測定装置)
アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置 DVA-220
(測定条件)
試験片: 幅3mm×厚さ2mmサイズの長方体の架橋済みゴム
測定モード:引張
チャック間距離:20mm
測定温度:160℃
初期加重:157cN
周波数:10Hz
にて、歪み分散を測定し、引張歪み1%の損失弾性率E’’及び貯蔵弾性率E’を算出する。
【0191】
(2)動的粘弾性試験2(せん断弾性率G’)
(測定装置)
アルファテクノロジーズ社製ラバープロセスアナライザ(型式:RPA2000)
(測定条件)
100℃、1Hzにて歪み分散を測定し、せん断弾性率G’を求める。このとき、動的歪みを1%、100%として各々G’を求め、δG’(G’(1%)−G’(100%))を算出する。
【0192】
(3)破断時引張強度および引張破断伸び
オリエンテック社製のRTA−1T、(株)島津製作所製のAG−Iを用いて、JIS−K6251に準じて、6号ダンベルを用いて引張強度、引張破断伸びを測定する。測定温度は、25℃、160℃、200℃および230℃とする。
【0193】
(4)ムーニー粘度(ML
1+10(100℃))
ムーニー粘度は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定した。測定温度は100℃である。
【0194】
実施例および比較例では、つぎのフッ素ゴム、カーボンブラック、架橋剤および架橋促進剤を使用した。
【0195】
(フッ素ゴム)
A1:82Lのステンレススチール製のオートクレーブに純水44L、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4の50%水溶液を8.8g、F(CF
2)
3COONH
4の50%水溶液176gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換した。230rpmで攪拌しながら80℃に昇温した後、初期槽内モノマー組成をVdF/HFP=50/50モル%、1.52MPaとなるようにモノマーを圧入した。ついでAPS1.0gを220mlの純水に溶解した重合開始剤溶液を窒素ガスで圧入し、反応を開始した。重合の進行に伴い内圧が1.42MPaに降下した時点で追加モノマーであるVdF/HFP=78/22モル%の混合モノマーを内圧が1.52MPaとなるまで圧入した。このとき、ジヨウ素化合物I(CF
2)
4Iの73gを圧入した。昇圧、降圧を繰り返しつつ、3時間ごとにAPSの1.0g/純水220ml水溶液を窒素ガスで圧入して、重合反応を継続した。混合モノマーを14000g追加した時点で、未反応モノマーを放出し、オートクレーブを冷却して、固形分濃度23.1質量%のフッ素ゴムのディスパージョンを得た。このフッ素ゴムをNMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/HFP=78/22(モル%)であり、ムーニー粘度(ML
1+10(100℃))は55であった。このフッ素ゴムをフッ素ゴムA1とする。
【0196】
A2:初期槽内モノマーをVdF/TFE/HFP=19/11/70モル%に、追加モノマーをVdF/TFE/HFP=51/20/29モル%に、ジヨウ素化合物I(CF
2)
4Iを45gに変更したほかは、フッ素ゴムA1の製造方法と同様に重合して、固形分濃度22.8質量%のディスパージョンを得た。このフッ素ゴムの共重合組成はVdF/TFE/HFP=52/22/26(モル%)であり、ムーニー粘度(ML
1+10(100℃)は74であった。このフッ素ゴムをフッ素ゴムA2とする。
【0197】
A3:初期槽内モノマーをVdF/TFE/HFP=19/11/70モル%に、追加モノマーをVdF/TFE/HFP=51/20/29モル%に、ジヨウ素化合物I(CF
2)
4Iを37gに変更したほかは、フッ素ゴムA1の製造方法と同様に重合して、固形分濃度22.5質量%のディスパージョンを得た。このフッ素ゴムの共重合組成はVdF/TFE/HFP=50/20/30(モル%)であり、ムーニー粘度(ML
1+10(100℃))は88であった。このフッ素ゴムをフッ素ゴムA3とする。
【0198】
A4:初期槽内モノマーをVdF/TFE/HFP=19/11/70モル%に、追加モノマーをVdF/TFE/HFP=51/20/29モル%に、ジヨウ素化合物I(CF
2)
4Iを45gに変更し、また、混合モノマーを630g追加した時点でICH
2CF
2CF
2OCF=CF
2を74g追加したほかは、フッ素ゴムA1の製造方法と同様に重合して、固形分濃度23.2質量%のディスパージョンを得た。このフッ素ゴムの共重合組成はVdF/TFE/HFP=52/22/26(モル%)であり、ムーニー粘度(ML
1+10(100℃)は75であった。このフッ素ゴムをフッ素ゴムA4とする。
【0199】
(カーボンブラック)
B1:HAF(N
2SA=79m
2/g、DBP吸油量=101ml/100g)。東海カーボン(株)製の「シースト3」(商品名)
【0200】
B2:MT(N
2SA=8m
2/g、DBP吸油量=43ml/100g)。Cancarb社製の「Thermax N990」(商品名)
【0201】
B3:FEF(N
2SA=42m
2/g、DBP吸油量=115ml/100g)。東海カーボン(株)製の「シーストSO」(商品名)
【0202】
B4:ISAF(N
2SA=119m
2/g、DBP吸油量=114ml/100g)。東海カーボン(株)製の「シースト6」(商品名)
【0203】
(架橋剤)
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン。日油(株)製の「パーヘキサ25B」(商品名)
【0204】
(架橋促進剤)
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)。日本化成(株)製の「タイク」(商品名)
【0205】
(加工助剤)
ステアリルアミン(ファーミン86T)(花王(株)製)
【0206】
(受酸剤)
酸化亜鉛(一種)(堺化学工業(株)製)
【0207】
実施例1
混練機(トーシン(株)製のTD35 100MB、ローター直径:30cm、チップクリアランス:0.1cm)を用いて、フロントローター回転数:29rpm、バックローター回転数:24rpmの混練条件で、フッ素ゴムA1の100質量部にカーボンブラックB1を30質量部を混練し、フッ素ゴムプレコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は170℃であった。
【0208】
続いて、8インチオープンロール(関西ロール(株)製)により、フロントロール回転数21rpm、バックロール回転数19rpm、ロール間隙0.1cmの混練条件で、フッ素ゴムプレコンパウンドに架橋剤を1質量部、架橋促進剤(TAIC)を1.5質量部、酸化亜鉛1質量部を30分間かけて混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は71℃であった。
【0209】
次に、得られたフッ素ゴムフルコンパウンドに動的粘弾性試験2を実施し、δG’を求めた。結果を表1に示す。
【0210】
また、このフッ素ゴムフルコンパウンドを160℃で30分間プレスして架橋を行い、厚さ2mmのシート状試験片を作製した。得られた架橋後のシートを用いて、引張破断伸び、引張強度、を測定した。結果を表1に示す。
【0211】
更に、得られた架橋フッ素ゴムに動的粘弾性試験1を実施し、損失弾性率E”および貯蔵弾性率E’を求めた。結果を表1に示す。
【0212】
実施例2〜3
8インチオープンロール(関西ロール(株)製)により、フロントロール回転数21rpm、バックロール回転数19rpm、ロール間隙0.1cmの条件で、フッ素ゴムA1の100質量部に表1に示す量のカーボンブラックB1〜B2、架橋剤、架橋促進剤(TAIC)、酸化亜鉛を30分間かけて混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は70℃であった。
【0213】
得られたフッ素ゴムフルコンパウンドについて、動的粘弾性試験2を実施し、δG’を求めた。結果を表1に示す。
【0214】
次に、得られたフッ素ゴムフルコンパウンドを160℃で30分間プレスして架橋を行い、厚さ2mmのシート状試験片を作製した。得られた架橋後のシートを用いて、破断時引張強度および引張破断伸びを測定した。結果を表1に示す。
【0215】
更に、得られた架橋フッ素ゴムに動的粘弾性試験1を実施し、損失弾性率E”および貯蔵弾性率E’を求めた。結果を表1に示す。
【0216】
実施例4
混練機((株)モリヤマ製のMixLabo0.5L、ローター直径:6.6cm、チップクリアランス:0.05cm)を用いて、フロントローター回転数:60rpm、バックローター回転数:50rpmの混練条件で、フッ素ゴム(A1)100質量部にカーボンブラック(B3)20質量部、ステアリルアミン0.5質量部、酸化亜鉛1.0質量部を混練し、フッ素ゴムプレコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は175℃であった。
【0217】
得られたフッ素ゴムプレコンパウンド121.5質量部に、8インチオープンロール(関西ロール(株)製)を用いて、フロントロール回転数21rpm、バックロール回転数19rpm、ロール間隙0.1cmの混練条件で、架橋剤0.75質量部、架橋促進剤(TAIC)を0.5質量部、ステアリルアミン0.5質量部を30分間かけて混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は71℃であった。
【0218】
次に、得られたフッ素ゴムフルコンパウンドに動的粘弾性試験2を実施し、δG’を求めた。結果を表1に示す。
【0219】
また、このフッ素ゴムフルコンパウンドを170℃で30分間プレスして架橋を行い、厚さ2mmのシート状試験片を作製した。得られた架橋後のシートを用いて、引張破断伸び、引張強度、を測定した。結果を表1に示す。
【0220】
更に、得られた架橋フッ素ゴムに動的粘弾性試験1を実施し、損失弾性率E”および貯蔵弾性率E’を求めた。結果を表1に示す。
【0221】
実施例5
カーボンブラックを(B4)に変更した以外は実施例4と同じ条件でフッ素ゴムプレコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は168℃であった。また、架橋促進剤(TAIC)を4質量部に変更した以外は実施例4と同じ条件でフッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は73℃であった。結果を表1に示す。
【0222】
実施例6
混練機((株)モリヤマ製のMixLabo0.5L、ローター直径:6.6cm、チップクリアランス:0.05cm)においてフロントローター回転数:120rpm、バックローター回転数:107rpmに変更した以外は実施例5と同じ条件でフッ素ゴムプレコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は175℃であった。また、架橋促進剤(TAIC)を0.5質量部に変更した以外は実施例5と同じ条件でフッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は72℃であった。結果を表1に示す。
【0223】
実施例7
フッ素ゴムを(A4)、カーボンブラックを(B4)に変更した以外は実施例4と同じ条件でフッ素ゴムプレコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は170℃であった。また、実施例4と同じ条件でフッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は70℃であった。結果を表1に示す。
【0224】
比較例1〜2
表1に示すフッ素ゴムおよびカーボンブラックを用い、実施例3と同じ条件で混練し、フッ素ゴムフルコンパウンドを調製した。なお、排出された混練物の最高温度は73℃であった。
【0225】
得られたフッ素ゴムフルコンパウンドについて、動的粘弾性試験2を実施し、δG’を求めた。結果を表1に示す。
【0226】
次に、得られたフッ素ゴムフルコンパウンドを160℃で30分間プレスして架橋を行い、厚さ2mmのシート状試験片を作製した。得られた架橋後のシートを用いて、破断時引張強度および引張破断伸びを測定した。結果を表1に示す。
【0227】
更に、得られた架橋フッ素ゴムに動的粘弾性試験1を実施し、損失弾性率E”および貯蔵弾性率E’を求めた。結果を表1に示す。
【0228】
【表1】