(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一次コイルが外周に巻回される第1中空筒部と、前記一次コイルを接続する一次端子と二次コイルを接続する二次端子とが設置されており前記第1中空筒部の下端に接続されるボビン基板と、を有するボビンと、
前記一次コイルの外周に装着可能で前記二次コイルが外周に巻回される第2中空筒部と、前記ボビン基板の上面に装着されるように前記第2中空筒部の下端に接続される下鍔部と、前記第2中空筒部の上端に接続される上鍔部と、を有するケースと、
を有するコイル部品であって、
前記二次コイルにおける少なくとも一つのリード部は、前記第2中空筒部から前記上鍔部へ引き上げられた後に前記二次端子まで接続されており、
前記リード部は、前記ボビン基板における、長手方向に一致するY軸正方向の端部から、前記Y軸正方向に突出した前記二次端子に接続していることを特徴とするコイル部品。
前記上鍔凸部は、前記上鍔部から前記下鍔部に対して略平行に突出する基部と、前記基部の先端に接続しており上方に突出する前記係止部によって構成されていることを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
前記第1中空筒部の貫通孔には、一対のフェライトコアの中脚が、前記第1中空筒部の上下からそれぞれ挿入され、前記一対のフェライトコアの側脚およびベース部は、前記ケースおよび前記ボビンの一部を外周から覆うように組み立てられる請求項1から請求項6までのいずれかに記載のコイル部品。
【背景技術】
【0002】
コイル部品は、様々の電気製品に、様々な用途で用いられている。たとえば、液晶ディスプレイのバックライトの駆動等においては、高電圧を得るために、インバータ用共振トランスが使用される。
【0003】
共振トランスは、適切なリーケージインダクタンスの発生などの電気的な特性に加えて、低背化などの外形的な要求を実現することが求められる。従来技術では、このような要求に応えるために、コアの軸方向が設置面に平行な横型であって、一次コイルと二次コイルがコアの軸方向に沿って分離して配列される分割構造のコイル部品が提案されている。また、分割構造のコイル部品は、比較的絶縁が容易であるという利点を有する。
【0004】
しかし、従来技術では、コイル部品を設置する設置面が存在する下方向や、その反対方向である上方向に向かって多くの漏れ磁束が発生するという問題を有している。例えば液晶テレビのバックライトに使用される共振トランスなどにおいては、コイル部品の上下方向に鉄を含む構造材等が配置される場合がある。そうすると、コイル部品からの漏れ磁束が、構造材等に渦電流を発生させ、渦電流の発生に伴う熱やノイズを発生させるという問題が生じている。また、上下方向への漏れ磁束を防止するために、コイル部品の上下方向にアルミ板を張り付けるなどの対策を行うことも可能であるが、このような対策は、コイルの放熱性を悪化させるなどの問題がある。
【0005】
このような問題点を解消するために、一次コイルが巻回されるボビン基板と、二次コイルが巻回されるケースとを組み合わせることにより、一次コイルの外周に二次コイルを配置させ、コイル部品の低背化を図ったコイル部品が本出願人により提案されている。
【0006】
このようなコイル部品では、ボビン基板の端部に形成してある二次端子に、ケースに巻回してある二次コイルのリード部を引き出して接続する必要があるが、コイル部品の小型化を進めた場合、端子近傍においてリード部同士の接触を避けることが困難になり、絶縁距離の確保がコイル部品の小型化を妨げるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、低背化及び小型化が可能であり、しかも絶縁距離を確実に確保しつつ、リード部と端子とを接続可能であるコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル部品は、
一次コイルが外周に巻回される第1中空筒部と、前記一次コイルを接続する一次端子と二次コイルを接続する二次端子とが設置されており前記第1中空筒部の下端に接続されるボビン基板と、を有するボビンと、
前記一次コイルの外周に装着可能で前記二次コイルが外周に巻回される第2中空筒部と、前記ボビン基板の上面に装着されるように前記第2中空筒部の下端に接続される下鍔部と、前記第2中空筒部の上端に接続される上鍔部と、を有するケースと、
を有するコイル部品であって、
前記二次コイルにおける少なくとも一つのリード部は、前記第2中空筒部から前記上鍔部へ引き上げられた後に前記二次端子まで接続されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコイル部品では、一次コイルの外周側に二次コイルを配置するので、一次コイルが巻回される第1中空筒部および二次コイルが巻回される第2中空筒部の軸方向長さを短くすることができる。これらの軸方向長さが、コイル部品の高さ方向になるために、コイル部品の低背化が可能である。さらに、外形状の一部を規定するケースが、二次コイルのボビンを兼ねるため、2重構造でありながら部品数を少なくすることができる。
【0011】
また、ボビン基板に対して一次端子と二次端子とを形成するために、ケースには端子を設ける必要がない。このため、ケースの形状を自由に設計することが可能になり、設計の自由度が増し、低背化が容易になると共に、ボビンに比較して、ケースとして比較的に安価な樹脂を選択することが可能になり、製造コストの低減も可能である。なお、端子が形成されるボビンは、端子へのハンダ処理などのために耐熱性が要求される。
【0012】
さらに、本発明では、二次コイルにおける少なくとも一つのリード部は、第2中空筒部からそのまま二次端子に引き下げられて接続されるのではなく、上鍔部へ引き上げられた後に二次端子まで接続されている。これにより、例えば下鍔部の表面のように、二次端子に近い位置において二次端子に接続されるリード部同士が接触することを回避することが可能である。特に、二次端子とリード部の端部とがはんだ付けのような加熱工程を経て接続される場合、二次端子近傍ではリード部の絶縁被覆が熱的な損傷を受ける可能性がある。そのため、二次端子近傍では、リード線同士が接触していないことが、絶縁性の確保の観点から好ましい。また、リード部をこのように配置することにより、絶縁性を確保しつつ狭い範囲で配線を行うことが可能となるため、本発明に係るコイル部品は、小型化に対して有利である。
【0013】
また、例えば、前記上鍔部には、前記リード部が通過する溝部が形成されていても良い。
【0014】
このような溝部が形成された上鍔部を用いることにより、上述したような絶縁特性に優れたリード部の配置を、容易に行うことができる。そのため、このような上鍔部を有するコイル部品は、優れた生産性を有する。なお本発明において、溝部とは、切り欠きあるいはその他の凹部を含む概念で用いる。
【0015】
また、例えば、前記上鍔部には、前記リード部が係合する凸部が形成されていても良い。
【0016】
リード部は、上鍔部へ引き上げられたのち、二次端子まで引き下ろされるが、上鍔部に形成された凸部にリード部を係合させることにより、リード部の配線工程を容易に行うことが可能であり、このような上鍔部を有するコイル部品は、優れた生産性を有する。
【0017】
また、例えば、前記上鍔部の前記凸部は、前記リード部を係止する係止部を有しても良い。
【0018】
凸部が係止部を有することにより、リード部と凸部との係合が予期せず解除されることを防止するとともに、リード部の配線工程をより容易に行うことが可能となる。
【0019】
また、前記凸部は、前記上鍔部から前記下鍔部に対して略平行に突出する基部と、前記基部の先端に接続しており上方に突出する前記係止部によって構成されても良い。
【0020】
このような凸部が形成されていることにより、リード部を上鍔部に引き上げてから二次端子に接続するまでの配線距離を短くすることが可能であり、二次コイルが長くなることを抑制できる。さらに、基部と係止部によってリード部に対して確実に係合できるため、このような凸部を有する上鍔部は、リード部と凸部との係合が予期せず解除されることを効果的に防止できる。
【0021】
前記上鍔部は、前記リード部が通過する溝部を挟んで略平行に配列される複数の前記凸部を有しても良い。
【0022】
複数の凸部を有する上鍔部は、第2中空筒部に巻回される2次コイルの数が増加するなどして、二次端子に接続するリード部が増加した場合でも、端子近傍においてリード部同士が接触することを回避することが可能である。
【0023】
また、例えば、本発明に係るコイルにおいて、前記第1中空筒部の貫通孔には、一対のフェライトコアの中脚が、前記第1中空筒部の上下からそれぞれ挿入され、前記一対のフェライトコアの側脚およびベース部は、前記ケースおよび前記ボビンの一部を外周から覆うように組み立てられていても良い。
【0024】
このようなフェライトコアが装着してあるコイル部品は、上下方向(ボビン基板に垂直方向)への漏れ磁束が小さく、周辺部材での渦電流の発生およびこれに伴う熱およびノイズの発生を抑制することができる。また、漏れ磁束を防止するためのアルミ板等を配置する必要がないため、好適な放熱特性を有する。さらにまた、一次コイルの外周に二次コイルが配置される構造であるために、コアの中脚および側脚を短くすることができ、コイル部品の強度および耐衝撃特性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
【0027】
全体斜視図である
図1及び分解斜視図である
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るコイル部品10は、コア12と、ボビン40と、ケース50と、一次コイル20と、二次コイル30とを有する。
【0028】
コイル部品10のコア12は、後述するコイルにより発生する磁束を通過させる磁路を形成し、別々に成形された2つの部品である第1コア12aと第2コア12bとを、組み立てて形成される。第1コア12aと第2コア12bとは、対称な形状を有しており、ケース50およびボビン40を上下方向(各図のZ軸方向)から挟むようにして互いに接合される。
【0029】
図1に示すように、コア12は、それぞれ縦断面(X軸およびZ軸を含む切断面)が略E字形状の第1コア12aおよび第2コア12bを有する。
図2に示すように、各コア12a,12bは、フェライトコアで構成され、X軸方向に延びる平板状のベース部13a,13bと、各ベース13a,13bのX軸方向の両端からZ軸方向に突出する側脚16a,16b,18a,18bと、各ベース13a,13bのX軸方向の中間位置からZ軸方向に突出する中脚14a,14bとを有する。
【0030】
なお、図面において、Z軸は、コイル部品10の高さ方向であり、コイル部品10におけるZ軸方向の高さが短くなるほど、コイル部品の低背化が可能となる。また、X軸とY軸は、相互に垂直であり、しかもZ軸に垂直であり、この実施形態では、X軸が、二次端子72の配列方向およびコア12の長手方向と一致し、Y軸が、コイル部品10の長手方向に一致している。また、
図1〜
図4において、各コイルのリード部については一部記載を省略し、発明の構成に関連する部分のみ実線又は点線で表示してある。
【0031】
図2に示すように、ボビン40は、略形平板状のボビン基板42を有する。本実施形態に係るボビン基板42は、実装面積を小さくするために、コア12に挟まれる中央部から、一次端子70が設置される一次側端部に向かってX軸方向の幅が徐々に狭くなっているが、ボビン基板42の形状はこれに限定されない。
【0032】
ボビン基板42の底面側は、コイル部品10の設置面となる。ボビン基板42のY軸方向の一方の端部には、複数(図示する例では2つ)の一次端子70がX軸方向に沿って所定間隔で設置してある。また、ボビン基板42のY軸方向の他方の端部には、複数(図示する例では9つ)の二次端子72がX軸方向に沿って所定間隔で設置してある。
【0033】
これらの端子70および72は、たとえば金属端子で構成され、合成樹脂などの絶縁材料で構成されるボビン基板42に対してインサート成形などにより一体成形される。後述するように、一次端子70には、一次コイル20の一次リード部23(
図4参照)が接続され、二次端子72には、二次コイル30の二次リード部33a,33bが接続される。
【0034】
図2及び
図1の断面図である
図3に示すように、ボビン基板42の略中央位置には、第1中空筒部44が配置されている。第1中空筒部44は、ボビン基板42からZ軸方向に突出しており、ボビン基板42は、第1中空筒部44の下端に接続される。第1中空筒部44の外周には、一次コイル20が巻回してある。第1中空筒部44は、一次コイル20のボビン本体として機能する。
【0035】
第1中空筒部44の上端にはボビン上鍔48aが接続されている。ボビン上鍔48aは、X軸−Y軸平面に沿って、第1中空筒部44から径方向に突き出た形状を有しており、一次コイル20を保持する機能を有する。また、ボビン上鍔48aとボビン基板42の間には、一次コイル20を保持し、絶縁距離を確保するためのボビン中間鍔48bが配置されている。ボビン中間鍔48bは、ボビン上鍔48aと同様に、第1中空筒部44から径方向に突き出た形状を有している。ボビン基板42、第1中空筒部44、ボビン上鍔48a及びボビン中間鍔48bは、射出成形などにより一体成形してあることが好ましい。
【0036】
ボビン基板42、第1中空筒部44、ボビン上鍔48a及びボビン中間鍔48bには、これらをZ軸方向に貫通する貫通孔44aが形成してある。貫通孔44aの開口形状は、後述するケース50に形成してある貫通孔52aの開口形状とも略一致し、しかも、
図2に示すように、コア12b(12aも同様/以下同じ)における中脚14b(14aも同様/以下同じ)が挿入可能な楕円形状になっている。
【0037】
図2に示すように、一次コイル20の内周縁である一次コイル内周縁21の形状は、第1中空筒部44の外周形状に一致し、楕円形状になる。一次コイル20の外周縁である一次コイル外周縁22の形状は、内周縁21よりも大きな長軸および短軸を有する楕円形状となる。
図3に示すように、一次コイル外周縁22は、後述するケース50の第2中空筒部54の内部に収まるようになっている。
【0038】
図2に示すように、ボビン基板42のX軸方向の両側面には、後述するケース50の係合孔59aに着脱自在に係合する係合突起49が形成されている。
【0039】
ケース50は、二次コイル30(
図3等参照)を保持するとともに、コイル部品10の外形状の一部を規定する。ケース50は、
図3に示すように、二次コイル30が巻回される第2中空筒部54を有する。第2中空筒部54は、二次コイル30のボビン本体として機能する。
【0040】
図2及び
図3に示すように、第2中空筒部54のZ軸方向の上端には、上鍔部52が接続されている。上鍔部52は、X−Y軸平面に沿って、第2中空筒部54から径方向内側及び外側に突き出た形状を有している。上鍔部52は、ボビン40のボビン上鍔48aに対向して備えられ、設置面と平行に延在する。
【0041】
図2に示すように、上鍔部52には、コア12aの中脚14aを挿通させるための貫通孔52aが形成してある。また、上鍔部52には、コア12aのベース部13aを設置するための設置溝部52cが形成してある。
【0042】
図3に示すように、ケース50の第2中空筒部54は、上鍔部52の下面から略垂直に、Z軸方向の下方に向かって突出している。第2中空筒部54は、
図2及び
図3に示すボビン上鍔48a及びボビン中間鍔48bを外周から覆うような形状を有し、これらに加えて、第1中空筒部44と、第1中空筒部44に巻回される一次コイル20と、第1中空筒部44を挿通する中脚14a(14b)とを、内部に収納する。言い換えると、中脚14a(14b)は、第1中空筒部44と、第1中空筒部44の外周に配置された第2中空筒部54とを、挿通している。
【0043】
図2および
図3に示すように、第2中空筒部54のZ軸方向の下端には、下鍔部58が接続されている。下鍔部58は、上鍔部52と同様に、X−Y軸平面に沿って、第2中空筒部54から径方向に突き出た形状を有している。下鍔部58は、ボビン40のボビン基板42の上側表面を覆うように装着される。
【0044】
下鍔部58のX軸方向の両側端部には、Z軸方向の下方に向かって張り出す側面部59が形成されている。側面部59には、ボビン40の係合突起49と係合する係合孔59aが形成してある。
【0045】
図3に示すように、上鍔部52と下鍔部58との間に位置する第2中空筒部54の外周面には、二次コイル30をZ軸方向に沿って分割配置するための1以上の中間鍔部56が、コイル部品10の用途等に応じて設けられる。これらの鍔部52,56,58は、X−Y軸平面に沿って平行である。これらの鍔部52,56,58と第2中空筒部54とからなるケース50は、射出成形などにより一体成形される。
図3に示すように、コイル部品10は、コア12a(12b)の中脚14a(14b)の周辺を、一次コイル20と二次コイル30が2重に周回する2重構造を有している。
【0046】
図2に示すように、二次コイル30の内周縁である二次コイル内周縁31の形状は、第2中空筒部54の外周形状に一致し、楕円又は円形状となる。本実施形態に係る二次コイル30は、2つの独立したコイルによって構成されるが、二次コイル30は1つのコイルで構成されていても良く、3つ以上のコイルで構成されても良い。
【0047】
図1に示すように、ケース50の上鍔部52には、二次コイル30のリード部33a,33bが係合する上鍔凸部53が形成されている。上鍔凸部53は、上鍔部52のY軸方向の一方の端部(Y軸正方向の端部)に形成されている。上鍔部52には、複数の上鍔凸部53が形成されており、複数の上鍔凸部53は、リード部33a,33bが通過する上鍔溝部52bを挟んで、略平行に配列されている。
【0048】
図1及び
図3に示すように、上鍔凸部53は、下鍔部58に対して略平行であってY軸方向に突出する基部53bと、基部53bの先端に接続しており上方(Z軸正方向)に突出する係止部53aによって構成されている。二次コイル30のリード部のうち、リード部33a,33bは、第2中空筒部54から上鍔部52の上方(Z軸正方向)表面の高さまで引き上げられた後に、二次端子72に接続される。
【0049】
図1に示すように、上鍔凸部53の間に形成された上鍔溝部52bは、上下方向に貫通している。第2中空筒部54から引き出されたリード部33a,33bは、下方から上方へ向かって上鍔溝部52bを通過して上鍔部52の上方表面まで引き回され、上鍔凸部53に係合した後、今度は上鍔溝部52bを上方から下方へ向かって通過して、二次端子72へと導かれる。上鍔凸部53のY軸方向先端に設けられた係止部53aは、リード部33a,33bと上鍔凸部53との係合が解除され、リード部33aが上鍔凸部53から抜け落ちることを防止する。
【0050】
また、ケース50の中間鍔部56及び下鍔部58が、二次端子72が設置されるボビン基板42の端部付近まで延長されており、延長された中間鍔部56及び下鍔部58には、二次コイル30のリード部33a,33bを、二次端子72に案内する中間溝部56b及び下鍔溝部58bが、X軸方向に沿って配列してある。さらに、ボビン40のボビン基板42にも、二次コイル30のリード部33a,33bを二次端子72に導く基板溝部47が形成されている。リード部33a,33bは、第2中空筒部54から引き出された後、上鍔凸部53に係合した後、中間溝部56b、下鍔溝部58b及び基板溝部47を経て、二次端子72に接続している。また、二次コイル30のリード部のうち、上鍔凸部53に係合しない他のリード部は、第2中空筒部54から引き出された後、中間溝部56b、下鍔溝部58b及び基板溝部47を経て、二次端子72に接続している。
【0051】
この実施形態では、中間溝部56b、下鍔溝部58bおよび基板溝部47が、互いに隣接する二次端子72と二次端子72の隙間の数及び位置に対応して形成してあるが、必ずしも対応させる必要はない。また、上鍔凸部53は、互いに隣接する中間溝部56b(下鍔部58及び基板溝部47も同様)と中間鍔部56の隙間の数及び位置に対応して形成してあるが、必ずしも対応させる必要はない。二次コイル30のリード部の全てを上鍔凸部53に係合させる必要はないため、実際にリード部33a,33bを係合させる上鍔凸部53のみが形成されていても良い。また、端子の配置等に関する設計変更等に柔軟に対応するために、
図1に示すように、二次コイル30のリード部が係合されない上鍔凸部53が形成されていても良い。
【0052】
本実施形態に係るコイル部品10は、
図2に示す各部材を組み立てると共に、ボビン40およびケース50に巻き線を巻回することによって作成される。以下に、コイル部品10の製造方法の一例を、
図2などを用いて説明する。コイル部品10の作成においては、まず、一次端子70および二次端子72を取り付けたボビン40を準備する。ボビン40の材質は特に限定されないが、ボビン40は、樹脂等の絶縁材料によって形成される。
【0053】
次に、ボビン40の第1中空筒部44に巻き線を巻回し、一次コイル20を形成する。一次コイル20の形成に使用される巻き線としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。また、一次コイル20を形成する際の巻き線の末端部である一次リード部23は、ボビン40の連通路46を通って一次端子70に絡げられて接続される(
図3等参照)。
【0054】
次に、一次コイル20が形成されたボビン40に対して、
図2に示すケース50を取り付ける。ケース50とボビン40とは、ケース50の係合孔59aを、ボビン40の係合突起49に係合させることによって組み立てられる。また、ケース50とボビン40とは、必要に応じて接着等により固定される。ケース50の材質も特に限定されず、樹脂等の絶縁材料によって形成される。
【0055】
次に、ケース50の第2中空筒部54に巻き線を巻回し、二次コイル30を形成する。二次コイル30の形成に使用される巻き線としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。二次コイル30を形成した際の巻き線の末端部であるリード部の一部(
図1のリード部33a,33b)は、上鍔部52の上方表面の高さまで引き上げて上鍔凸部53に係合させたのち、中間溝部56b、下鍔溝部58b及び基板溝部47を通過させ、最後に二次端子72に巻き付ける。また、リード部の一部の他の一部は、上鍔凸部53へ引き上げることなく、第2中空筒部54から、中間溝部56b、下鍔溝部58b及び基板溝部47等を下方へ通過させて、二次端子72に巻き付ける。上鍔溝部52b、上鍔凸部53、中間溝部56b、下鍔溝部58b及び基板溝部47により、二次コイル30の巻き付け作業が容易になり、その作業の自動化が容易になる。
【0056】
しかも、相互に隣り合うリード部が、中間溝部56b、下鍔溝部58b及び基板溝部47を通過することで、絶縁距離を好適に確保することが可能となり、隣接するリード部相互の絶縁性も良好に保たれる。さらに、一部のリード部33a,33bを、一度上鍔部52の上方表面の高さまで引き上げて上鍔凸部53に係合させることにより、二次端子72の近傍で、リード部同士が接触することを好適に回避することができる。したがって、例えば第2中空筒部54(
図3参照)に、複数の互いに分離したコイルを配置して二次コイル30を構成し、多くのリード部を第2中空筒部54から二次端子72まで配線するような場合にでも、リード部相互の絶縁性を良好に保つことができる。ただし、二次コイル30は、芯線が絶縁被覆されたリード線によって構成されるため、リード部の一部が他のリード部と接触又は交差する部分が発生することを妨げない。
【0057】
次に、一次コイル20、二次コイル30、ケース50およびボビン40が組み合わせられた中間組立品に対して、Z軸方向の上下方向からコア12の第1コア12aと第2コア12bとを取り付け、コア12を形成する。すなわち、第1コア12aおよび第2コア12bの中脚14a,14bの先端同士、側脚16a,16bの先端同士、側脚18a,18bの先端同士を接合する。なお、中脚14a,14bの先端同士の間には、ギャップを持たせても良い。
【0058】
コア12の材質としては、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。コア12の第1コア12aと第2コア12bは、接着材を用いて接着されるか、又は外周をテープで巻かれることによって、ケース50およびボビン40に固定される。なお、一連の組み立て工程の後に、コイル部品10に対してワニス含浸処理が施されても良い。以上のような工程により、本実施形態に係るコイル部品10を製造することができる。
【0059】
図3に示すように、コイル部品10は、中脚14a(14b)のZ軸方向(磁束が流れる方向)が設置面に対して垂直な縦型である。縦型であるコイル部品10は、
図1および
図3に示すように、一次および二次コイル20,30のZ軸上下方向にコア12のベース部13a,13bが配置され、これらのベース部13a,13bが上下方向への漏れ磁束を抑制する効果を奏する。したがって、コイル部品10は、コイルの上下方向がコアによってほとんど遮蔽されない横型に比べて、コイル部品10の上下方向への漏れ磁束を抑制することができる。
【0060】
また、
図3に示すように、コイル部品10は、二次コイル30が一次コイル20の外周を周回する2重構造である。2重構造とすることによって、コイル部品10は、コア12の軸方向の長さを短縮し、縦型でありながら薄型のコイルを実現することができる。
【0061】
上述したようなコアの配置により、コイル部品10は、アルミ製の遮蔽板等を設けなくても、周辺の構造材等における渦電流の発生を防止することができる。また、渦電流の発生を防止することにより、コイル部品10は、渦電流の発生に伴う熱やノイズの発生を低減することができる。また、コイル部品10は、漏れ磁束を遮蔽するための遮蔽板を設ける必要がないため、良好な放熱特性を有する。さらに、コイル部品10は、コア12の中脚14a,14bおよび側脚16a,16b,18a,18bの長さが短いため、外部からの衝撃等によるコア12の損傷を防止することができる。
【0062】
また、本実施形態では、ボビン基板42に対して一次端子70と二次端子72とを形成するために、ケース50には端子を設ける必要がない。このため、ケース50の形状を自由に設計することが可能になり、設計の自由度が増し、低背化が容易になると共に、ボビン40に比較して、ケース50として比較的に安価な樹脂を選択することが可能になり、製造コストの低減も可能である。なお、端子70および72が形成されるボビン40は、端子70および72へのハンダ処理などのために耐熱性が要求される。
【0063】
また、
図1に示すように、一部のリード部33a,33bが、上鍔部52へ引き上げられた後に二次端子72まで接続されることにより、例えば中間鍔部56や下鍔部58の表面のように、二次端子72に近い位置においてリード部同士が接触することを回避することが可能である。特に、二次端子72とリード部の端部とが、はんだ付けのような加熱工程を経て接続される場合、二次端子72近傍ではリード部の絶縁被覆が熱的な損傷を受ける可能性がある。そのため、二次端子72近傍では、リード線同士が接触していないことが、絶縁性の確保の観点から好ましい。また、リード部をこのように配置することにより、絶縁性を確保しつつ狭い範囲で配線を行うことが可能となるため、コイル部品10は、小型化に対して有利である。
【0064】
第2実施形態
図5は、本発明の第2実施形態に係るコイル部品に用いられるケース50aの斜視図である。第2実施形態に係るコイル部品は、ケース50aにおける上鍔凸部81の形状が異なることを除き、第1実施形態に係るコイル部品10と同様である。上鍔凸部81は、
図1に示す上鍔凸部53とは異なり係止部53aを有しないが、Y軸方向への突出長さを適切に確保することにより、上鍔凸部53に係合するリード部33a,33bが抜け落ちることを防止することができる。第2実施形態に係るコイル部品も、第1実施形態に係るコイル部品と同様の効果を奏する。
【0065】
第3実施形態
図6は、本発明の第3実施形態に係るコイル部品に用いられるケース50bの斜視図である。第3実施形態に係るコイル部品は、ケース50bにおける上鍔凸部82の形状が異なることを除き、第1実施形態に係るコイル部品10と同様である。上鍔凸部82は、上方に開口する上溝部82cと、上溝部82cより先端側に接続する係止部82aを有する。リート部32a,32bを上鍔凸部82に係合させる際、上溝部82cを通過させることにより、リード部33a,33bが抜け落ちることを防止することができるとともに、リード部33a,33bの位置を安定させることができる。第3実施形態に係るコイル部品も、第1実施形態に係るコイル部品と同様の効果を奏する。
【0066】
第4実施形態
図7は、本発明の第4実施形態に係るコイル部品に用いられるケース50cの斜視図である。第4実施形態に係るコイル部品は、ケース50cにおける上鍔凸部86及び上鍔溝部87a,87bの形状が異なることを除き、第1実施形態に係るコイル部品10と同様である。ケース50cの上鍔溝部87a,87bは、上鍔部84の外周縁部85に形成されている。すなわち、上鍔部84の外周部分には、コア12を通過させる部分を除き、平板部84aから上方に突出する外周縁部85が形成されており、上鍔溝部87a,87bは、外周縁部85の一部を切り欠いて形成されている。
【0067】
2つの上鍔溝部87a,87bの間には、二次コイルのリード部33cが係合する上鍔凸部86が形成されている。上鍔凸部86は、第1実施形態に係る上鍔凸部53とは異なり、上鍔部84から上方(Z軸方向)に突出している。第4実施形態で用いられるケース50cは、第1〜第3実施形態で用いられるケース50,50a,50bに比べて形状が単純であり、製造が容易である。また、第4実施形態に係るコイル部品も、第1〜第3実施形態に係るコイル部品と同様の効果を奏する。
【0068】
第5実施形態
図8は、本発明の第5実施形態に係るコイル部品10aの全体斜視図である。第5実施形態に係るコイル部品10aは、コア12より一次端子70側におけるケース50dの下鍔部88及びボビン基板92の形状が異なることを除き、第1実施形態に係るコイル部品10と同様である。
図8に示すように、コア12より一次端子70側におけるケース50d及びボビン基板92の形状等は特に限定されず、実装工程での扱い易さや実装面積等を考慮して、適宜変更可能である。第5実施形態に係るコイル部品10aも、第1〜第4実施形態に係るコイル部品と同様の効果を奏する。
【0069】
なお、上述の実施形態において、コア12の中脚14a(14b)の断面形状は楕円であるが、中脚14a(14b)の断面形状は特に限定されず、円、多角形等、その他の形状であっても良い。また、一次コイル20および二次コイル30の巻回形状についても、特に限定されず、円、多角形等、その他の形状であっても良い。
【0070】
また、コイル、リード線および端子に対する「一次」および「二次」の名称は便宜的なものであり、本発明では、ボビン40に装着されるコイルを一次コイルと称し、ケースに装着されるコイルを二次コイルと称し、必ずしも一次コイルが入力側である必要はなく、一次コイルが出力側であっても良く、二次コイルが入力側であっても良い。