特許第6132570号(P6132570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132570
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20170515BHJP
   C07C 213/06 20060101ALI20170515BHJP
   C07C 219/08 20060101ALI20170515BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C07C67/03
   C07C213/06
   C07C219/08
   C07C69/54 Z
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-19961(P2013-19961)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-152104(P2014-152104A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁章
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 豊幸
(72)【発明者】
【氏名】松野 真佳
(72)【発明者】
【氏名】伊東 啓祐
【審査官】 笠原 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−189650(JP,A)
【文献】 特開2007−254384(JP,A)
【文献】 特開2008−106019(JP,A)
【文献】 特開2011−219422(JP,A)
【文献】 特開平08−268938(JP,A)
【文献】 特開2009−249302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/03
C07C 69/54
C07C 213/06
C07C 219/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として(メタ)アクリル酸メチルを用い、当該(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させることにより、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、反応装置として蒸留塔を有する反応装置を用い、当該反応装置内で(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際に、溶媒としてメチルアルコールの沸点以下の温度で当該メチルアルコールと共沸し、(メタ)アクリル酸メチルの沸点以下の温度で当該(メタ)アクリル酸メチルと共沸する共沸溶媒を用い、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させた後、反応装置内の反応混合物をさらに70〜140℃の温度で加熱し、蒸留塔の上部から未反応の(メタ)アクリル酸メチルを含有する蒸気を取り出すことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項2】
共沸溶媒が、シクロヘキサンおよびn−ヘキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとのエステル交換反応の際に、蒸留塔の上部から蒸気を取り出し、取り出した蒸気を凝縮し、得られた凝縮液の一部を蒸留塔に還流させ、凝縮液の残りを反応装置外に除去することにより、蒸留塔の上部の温度をアルコールと共沸溶媒との共沸温度に調整する請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項4】
反応装置外に除去した凝縮液に水を添加し、上層と下層の2層に分離させ、分離した2層のうち上層を蒸留塔に還流させる請求項3に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項5】
反応装置外に除去した凝縮液に水を添加し、上層と下層の2層に分離させ、分離した2層のうち下層をさらに蒸留塔を有する蒸留装置内に入れて蒸留させ、(メタ)アクリル酸メチルと副生したメチルアルコールと共沸溶媒を含有する蒸気、およびエステル交換反応によって副生したメチルアルコールを主成分として含有する蒸気をそれぞれ蒸留塔の上部から取り出す請求項3または4に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項6】
(メタ)アクリル酸メチルと副生したメチルアルコールと共沸溶媒を含有する蒸気を(メタ)アクリル酸メチルと前記アルコールとのエステル交換反応の際に原料として用いる請求項5に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項7】
(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとのエステル交換反応後、反応混合物をさらに加熱することによって蒸留塔の上部から取り出された未反応の(メタ)アクリル酸メチルを含有する蒸気を凝縮させ、得られた凝縮液を(メタ)アクリル酸メチルと前記アルコールとのエステル交換反応の際に原料として用いる請求項1〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、原料として(メタ)アクリル酸メチルを用い、エステル交換法によって(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に、当該(メタ)アクリル酸メチルを効率よく用いることができる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。(メタ)アクリル酸エステルは、その種類にもよるが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、界面活性剤、接着剤、塗料などの原料として有用な化合物である。
【0002】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸メチル」は、「アクリル酸メチル」および/または「メタクリル酸メチル」を意味する。また、「(メタ)アクリル酸エステル」は、「アクリル酸エステル」および/または「メタクリル酸エステル」を意味する。
【背景技術】
【0003】
蒸留塔を有する反応装置を用いて(メタ)アクリル酸メチルとメタノールの混合物からメタノールを効率よく分離する方法として、メタノールと共沸混合物を形成する共沸溶媒を用い、蒸留塔の塔頂から留出した蒸気の凝縮液の一部を蒸留塔に還流させ、残りの凝縮液を2層に分離させて分離した上層を蒸留塔の中段に供給し、下層を蒸留塔外に取り出し、反応装置の底部から(メタ)アクリル酸メチルを回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、前記方法によれば、反応装置の底部に存在している(メタ)アクリル酸メチルを回収することができるが、当該(メタ)アクリル酸メチルを回収した後、反応装置の内部に残存している(メタ)アクリル酸メチルを回収することができない。
【0005】
また、原料の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコールとのエステル交換反応によって目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法として、副生するアルキルアルコールと共沸組成を形成する共沸溶媒の存在下でエステル交換反応を行なう際に、副生するアルキルアルコールを共沸溶媒とともに蒸留塔の上部の留出口から除去し、留出口から留出する蒸気の温度を副生するアルキルアルコールと共沸する共沸溶媒との共沸温度以上でかつ当該共沸温度よりも2℃高い温度以下とし、蒸留塔の塔底温度を共沸溶媒の沸点から10℃低い温度以上でかつ共沸溶媒の沸点以下とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
前記(メタ)アクリル酸エステルの製造方法によれば、副反応であるマイケル付加反応を抑制し、(メタ)アクリル酸エステルを生産性よく製造することができるとされている。しかし、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造した後、反応系内には原料の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが残存しており、当該残存している原料の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを効率よく回収することができる方法については検討されていない。
【0007】
したがって、原料として(メタ)アクリル酸メチルを用い、エステル交換法によって(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造した後、反応系内に残存している原料の(メタ)アクリル酸メチルを効率よく回収することができるエステル交換法による(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−268938号公報
【特許文献2】特開2004−189650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、原料として(メタ)アクリル酸メチルを用い、エステル交換法によって(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造した後、反応系内に残存している原料の(メタ)アクリル酸メチルを効率よく回収することができるエステル交換法による(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)原料として(メタ)アクリル酸メチルを用い、当該(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させることにより、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、反応装置として蒸留塔を有する反応装置を用い、当該反応装置内で(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際に、溶媒としてメチルアルコールの沸点以下の温度で当該メチルアルコールと共沸し、(メタ)アクリル酸メチルの沸点以下の温度で当該(メタ)アクリル酸メチルと共沸する共沸溶媒を用い、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させた後、反応装置内の反応混合物をさらに70〜140℃の温度で加熱し、蒸留塔の上部から未反応の(メタ)アクリル酸メチルを含有する蒸気を取り出すことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法、
(2)共沸溶媒が、シクロヘキサンおよびn−ヘキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種である前記(1)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法、
(3)(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとのエステル交換反応の際に、蒸留塔の上部から蒸気を取り出し、取り出した蒸気を凝縮し、得られた凝縮液の一部を蒸留塔に還流させ、凝縮液の残りを反応装置外に除去することにより、蒸留塔の上部の温度をアルコールと共沸溶媒との共沸温度に調整する前記(1)または(2)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法、
(4)反応装置外に除去した凝縮液に水を添加し、上層と下層の2層に分離させ、分離した2層のうち上層を蒸留塔に還流させる前記(3)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法、
(5)反応装置外に除去した凝縮液に水を添加し、上層と下層の2層に分離させ、分離した2層のうち下層をさらに蒸留塔を有する蒸留装置内に入れて蒸留させ、(メタ)アクリル酸メチルと副生したメチルアルコールと共沸溶媒を含有する蒸気、およびエステル交換反応によって副生したメチルアルコールを主成分として含有する蒸気をそれぞれ蒸留塔の上部から取り出す前記(3)または(4)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法、
(6)(メタ)アクリル酸メチルと副生したメチルアルコールと共沸溶媒を含有する蒸気を(メタ)アクリル酸メチルと前記アルコールとのエステル交換反応の際に原料として用いる前記(5)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法、および
(7)(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとのエステル交換反応後、反応混合物をさらに加熱することによって蒸留塔の上部から取り出された未反応の(メタ)アクリル酸メチルを含有する蒸気を凝縮させ、得られた凝縮液を(メタ)アクリル酸メチルと前記アルコールとのエステル交換反応の際に原料として用いる前記(1)〜(6)のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法によれば、原料として(メタ)アクリル酸メチルを用い、エステル交換法によって(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造した後、反応系内に残存している原料の(メタ)アクリル酸メチルを効率よく回収することができるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(メタ)アクリル酸メチルは、温度に敏感な化合物であり、容易に重合することから、当該(メタ)アクリル酸メチルの重合を抑制するために、反応装置内に残存している(メタ)アクリル酸メチルを回収する方法として、(メタ)アクリル酸メチルを低温下で減圧蒸留によって回収する方法が考えられる。
【0013】
しかしながら、(メタ)アクリル酸メチルを低温下で減圧蒸留によって回収する際、(メタ)アクリル酸メチルの沸点が低く、(メタ)アクリル酸メチルの蒸気圧が高いことから、(メタ)アクリル酸メチルの蒸気を凝縮器で捕捉することが困難であり、当該蒸気が大気中に飛散するため、(メタ)アクリル酸メチルを効率よく回収することができないのみならず、(メタ)アクリル酸メチルによる悪臭が発生するおそれがある。そこで、(メタ)アクリル酸メチルの蒸気が大気中に放散されないようにするために排気ガス処理装置を凝縮器に配設することが考えられる。しかし、排気ガス処理装置を用いた場合には、当該排気ガス処理装置で発生した廃液の処理、排気ガス処理装置の使用による設備費、維持費などの経費の増加などの副次的な問題が発生する。
【0014】
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、溶媒としてメチルアルコールの沸点以下の温度で当該メチルアルコールと共沸し、(メタ)アクリル酸メチルの沸点以下の温度で当該(メタ)アクリル酸メチルと共沸する共沸溶媒を用い、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させた後、生成した反応混合物を加熱し、反応装置内に存在している(メタ)アクリル酸メチルを前記共沸溶媒とともに共沸させた場合には、前記のような減圧操作を採らなくても、反応装置内に残存している(メタ)アクリル酸メチルを常圧下で効率よく当該反応装置から回収することができることが見出された。さらに回収された(メタ)アクリル酸メチルは、新たに(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際に原料の(メタ)アクリル酸メチルとして用いることができることも見出された。
【0015】
このように、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法によれば、あえて減圧操作を採る必要がなく常圧であっても、反応装置内に残存している(メタ)アクリル酸メチルを効率よく回収することができ、しかも回収された(メタ)アクリル酸メチルを再利用することができるので、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、工業的生産性に優れた方法である。
【0016】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、前記したように、原料として(メタ)アクリル酸メチルを用い、当該(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させることにより、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であり、反応装置として蒸留塔を有する反応装置を用い、当該反応装置内で(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際に、溶媒としてメチルアルコールの沸点以下の温度で当該メチルアルコールと共沸し、(メタ)アクリル酸メチルの沸点以下の温度で当該(メタ)アクリル酸メチルと共沸する共沸溶媒を用い、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させた後、得られた反応混合物をさらに加熱し、蒸留塔の上部から未反応の(メタ)アクリル酸メチルを含有する蒸気を取り出すことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際に、反応装置として、蒸留塔を有する反応装置を用いる。
【0018】
蒸留塔を有する反応装置としては、例えば、精留塔、流動床、固定床、反応蒸留塔などの蒸留塔を有する反応装置などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。蒸留塔の構造および型式にも特に限定がない。蒸留塔のなかでは、気液接触効率が高いものが好ましい。好適な蒸留塔としては、例えば、充填塔型蒸留塔、トレイ型蒸留塔などが挙げられる。蒸留塔の理論段数は、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとのエステル交換反応を効率よく安定して進行させる観点から、好ましくは7段以上、より好ましくは10段以上、さらに好ましくは15段以上であり、経済性を向上させる観点から、好ましくは100段以下、より好ましくは70段以下、さらに好ましくは50段以下である。
【0019】
(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールのエステル交換反応は、流通式および回分式のいずれの方式によって行なってもよい。
【0020】
本発明においては、まず、(メタ)アクリル酸メチルと、目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる。
【0021】
(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとをエステル交換反応させる際に用いるアルコールは、目的とする(メタ)アクリル酸エステルに応じて適宜選択される。より具体的には、前記アルコールには、目的とする(メタ)アクリル酸エステルが有するエステル基を形成するアルコールが用いられる。その一例として、例えば、目的とする(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸n−プロピルである場合には、当該プロピル基を形成するアルコールとしてn−プロピルアルコールが用いられる。
【0022】
目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとしては、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、イソヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアルコール、4−tert−ブチルシクロヘキシルアルコール、n−へプチルアルコール、n−オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、3,4−ジメチルヘキシルアルコール、3,4−ジメチルへプチルアルコール、ラウリルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、ステアリルアルコール、2−ヘプチルウンデカン−1−オールなどの式(I):
【0023】
【化1】
(式中、Rは炭素数2〜30の環構造を有していてもよいアルキル基を示す)
で表わされる脂肪族または脂環式アルコール;フェノール、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノールなどの芳香族アルコール;ジメチルアミノエチルアルコール、ジエチルアミノエチルアルコール、ジプロピルアミノエチルアルコール、ジブチルアミノエチルアルコール、ジペンチルアミノエチルアルコール、ジヘキシルアミノエチルアルコール、ジオクチルアミノエチルアルコール、メチルエチルアミノエチルアルコール、メチルプロピルアミノエチルアルコール、メチルブチルアミノエチルアルコール、メチルヘキシルアミノエチルアルコール、エチルプロピルアミノエチルアルコール、エチルブチルアミノエチルアルコール、エチルペンチルアミノエチルアルコール、エチルオクチルアミノエチルアルコール、プロピルブチルアミノエチルアルコール、ジメチルアミノプロピルアルコール、ジエチルアミノプロピルアルコール、ジプロピルアミノプロピルアルコール、ジブチルアミノプロピルアルコール、ブチルペンチルアミノプロピルアルコールなどの式(II):
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、R4は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノアルコール;2−メトキシエチルアルコール、エトキシエチルアルコール、ブトキシエチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−メチルアルコール、シクロヘキサンスピロ−2−1,3−ジオキソラン−4−メチルアルコール、3−エチル−3−オキセタニルメチルアルコール、3−エチル−3−オキセタニルメチルアルコールなどのアルコキシアルコール;アリルアルコール、メタリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどの一価アルコール;エチレングリコール、2,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジオールなどの二価アルコール;グリセリンなどの水酸基を3個以上有する多価アルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールの水酸基1当量あたりの(メタ)アクリル酸メチルの量は、(メタ)アクリル酸メチルと当該アルコールとのエステル交換反応の反応速度を高める観点から、好ましくは0.3当量以上、より好ましくは0.5当量以上、さらに好ましくは0.8当量以上であり、未反応の(メタ)アクリル酸メチルの量を低減させる観点から、好ましくは5当量以下、より好ましくは4当量以下、さらに好ましくは3当量以下である。
【0027】
(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際には、エステル交換触媒を用いることができる。
【0028】
エステル交換触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムなどの水酸化物;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ストロンチウムなどの炭酸水素化合物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムなどの炭酸塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウムなどの酢酸塩;水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素セシウムなどの水素化ホウ素化合物;ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのステアリン酸塩;フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素セシウムなどのフェニル化ホウ素化合物;安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウムなどの安息香酸塩;リン酸水素二リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二セシウムなどのリン酸水素化合物;フェニルリン酸二リチウム、フェニルリン酸二ナトリウム、フェニルリン酸二カリウム、フェニルリン酸二セシウムなどのフェニルリン酸化合物;ナトリウムアルコキシド、チタンアルコキシドなどの金属アルコキシド;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン;ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジラウリルスズオキシドなどのアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド;チタンアルコラ−ト、アルミニウムアルコラ−ト、マグネシウムアルコラ−トなどの金属アルコラ−トなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみ限定されるものではない。これらのエステル交換触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのエステル交換触媒のなかでは、エステル交換反応を促進させる観点から、テトラアルコキシチタンおよびアルキル基の炭素数が4〜12のジアルキルスズオキシドが好ましく、テトラアルコキシチタンおよびアルキル基の炭素数が4〜8のジアルキルスズオキシドがより好ましく、テトラメトキシチタン、ジブチルスズオキシドおよびジオクチルスズオキシドがさらに好ましい。
【0029】
エステル交換触媒の量は、当該エステル交換触媒の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該エステル交換触媒の種類に応じて適宜決定することが好ましい。通常、(メタ)アクリル酸メチル1モルあたりのエステル交換触媒の量は、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとのエステル交換反応を効率よく進行させる観点から、好ましくは0.00001モル以上、より好ましくは0.0001モル以上であり、経済性を向上させる観点から、好ましくは0.10モル以下、より好ましくは0.05モル以下である。
【0030】
また、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとをエステル交換反応させる際には、重合防止剤を用いることができる。重合防止剤としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシラジカル系化合物;パラメトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルカテコール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのフェノール系化合物;メトキノン、ハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、ベンゾキノンなどのキノン系化合物;塩化第一銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅などのジアルキルジチオカルバミン酸銅;フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミノ化合物;1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒドロキシアミン系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合禁止剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
(メタ)アクリル酸メチル100質量部あたりの重合防止剤の量は、原料の(メタ)アクリル酸メチルおよび生成するアクリル酸アルキルエステルの重合を抑制する観点から、好ましくは0.00001質量部以上、より好ましくは0.00005質量部以上、さらに好ましくは0.0001質量部以上であり、生成する(メタ)アクリル酸エステルの純度を高める観点から、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以下である。
【0032】
反応装置内で(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際には、溶媒としてメチルアルコールの沸点以下の温度で当該メチルアルコールと共沸し、(メタ)アクリル酸メチルの沸点以下の温度で当該(メタ)アクリル酸メチルと共沸する共沸溶媒を用いる。本発明においては、このように、溶媒としてメチルアルコールの沸点以下の温度で当該メチルアルコールと共沸し、(メタ)アクリル酸メチルの沸点以下の温度で当該(メタ)アクリル酸メチルと共沸する共沸溶媒が用いられているので、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させた後、反応装置内に存在している(メタ)アクリル酸メチルを効率よく反応装置内から回収することができる。
【0033】
なお、前記メチルアルコールは、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させたときに副生するアルコールである。
【0034】
メチルアルコールの沸点以下の温度で当該メチルアルコールと共沸し、(メタ)アクリル酸メチルの沸点以下の温度で当該(メタ)アクリル酸メチルと共沸する共沸溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの共沸溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。これらの共沸溶媒のなかでは、エステル交換反応の反応時間を短縮化させるとともに、(メタ)アクリル酸メチルを効率よく回収する観点から、シクロヘキサンが好ましい。
【0035】
共沸溶媒の量は、特に限定されないが、通常、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとの合計量100質量部あたり5〜200質量部程度であればよい。
【0036】
なお、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、他の溶媒を用いてもよい。他の溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2,3−ジメチルブタン、2,5−ジメチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタンなどのシクロヘキサン以外の炭素数が5〜8の脂肪族炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0037】
(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとを効率よくエステル交換反応させる観点から、共沸溶媒と副生するメチルアルコールとを共沸させることにより、反応装置に取り付けられている蒸留塔の上部、好ましくは塔頂から、副生したメチルアルコールの蒸気を除去することが好ましい。蒸留塔の塔頂温度は、共沸溶媒と副生したメチルアルコールとを反応装置から効率よく除去させる観点から、メチルアルコールと共沸溶媒との共沸温度から当該共沸温度よりも5℃高い温度、好ましくは2℃高い温度までの温度範囲となるように調節することが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させているとき、前記蒸留塔の上部から蒸気を取り出し、当該蒸気を凝縮させることにより、凝縮液としてメチルアルコールを回収することができる。この凝縮液の一部を蒸留塔に還流させ、当該凝縮液の残りを反応装置外に除去することにより、反応装置の加熱温度を制御しなくても蒸留塔の上部の温度をメチルアルコールと共沸溶媒との共沸温度に容易に調整することができる。
【0039】
反応装置外に除去した凝縮液に水を添加することにより、凝縮液を効率よく上層と下層の2層に分離させることができる。凝縮液に添加する凝縮液100容量部あたりの水の量は、特に限定されないが、通常、上層と下層とを効率よく分離させる観点から、好ましくは10容量部以上、より好ましくは20容量部以上であり、生成する下層の量を低減させる観点から、好ましくは300容量部以下、より好ましくは200容量部以下である。
【0040】
なお、凝縮液に水を添加するときの凝縮液の温度は、当該凝縮液を上層と下層との2層に効率よく分離させる観点から、好ましくは0〜50℃、より好ましくは0〜40℃、さらに好ましくは0〜30℃である。
【0041】
凝縮液を上層と下層の2層に分離させる際には、例えば、デカンター、分液漏斗などの分離装置を用いることができる。
【0042】
分離した2層のうち、上層には主として共沸溶媒が含まれる。この上層に含まれる共沸溶媒は、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際の溶媒として有効利用することができる。
【0043】
したがって、本発明においては、前記上層に含まれている共沸溶媒を有効利用する観点から、前記上層を蒸留塔に還流することが好ましい。前記上層を蒸留塔に供給する際、前記上層は、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとのエステル交換反応を効率よく進行させる観点から、蒸留塔の中段部分に供給することが好ましい。なお、前記蒸留塔の中段部分は、多段蒸留塔の中央近辺の段を意味する。例えば、蒸留塔として、理論段数が15段の蒸留塔であれば、6〜9段が蒸留塔の中段部分に該当する。
【0044】
また、凝縮液の一部を蒸留塔に還流させることにより、蒸留塔の分留能力を高めることができる。蒸留塔の塔頂に還流させる凝縮液の量は、特に限定されないが、蒸留塔の分留能力を高める観点および反応速度を高める観点から、凝縮液の全量の20〜95質量%程度であることが好ましく、50〜90質量%程度であることがより好ましい。
【0045】
蒸留塔の上部から取り出した蒸気の凝縮液の一部を蒸留塔の塔頂に還流させたとき、前記と同様にして凝縮液の残りに水を添加し、上層と下層の2層に分離させることが好ましい。分離した2層のうち上層には、主として共沸溶媒が含まれていることから、前記と同様にして当該上層を(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際の反応溶媒として有効利用することができる。その際、前記上層は、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとのエステル交換反応を効率よく進行させる観点から、前記と同様にして蒸留塔の中段部分に供給することが好ましい。
【0046】
一方、前記下層には、主としてメチルアルコールおよび水が含まれているが、これらの成分以外にも、共沸溶媒および(メタ)アクリル酸メチルがそれぞれ1〜10質量%程度の含有率で含まれている。
【0047】
前記下層を蒸留すれば、当該下層に含まれている共沸溶媒および(メタ)アクリル酸メチルは、メチルアルコールと共沸し、共沸物として当該下層から除去することができる。
【0048】
反応装置外に除去した凝縮液に水を添加し、上層と下層の2層に分離させ、分離した2層のうち下層をさらに蒸留塔を有する蒸留装置内に入れて蒸留させることが好ましい。この下層を蒸留させたとき、塔頂の温度を64℃以下に調整することにより、まず(メタ)アクリル酸メチルと副生したメチルアルコールと共沸溶媒を含有する蒸気を発生させ、その後、下層の温度を64〜66℃に調整することにより、エステル交換反応によって副生したメチルアルコールを主成分として含有する蒸気を発生させることができる。発生した蒸気は、いずれも蒸留塔の上部から取り出すことができる。
【0049】
前記下層は、蒸留塔を有する蒸留装置を用いて蒸留することができる。蒸留装置は、回分式および流通式のいずれであってもよい。また、前記下層を蒸留する際の圧力は、大気圧および減圧のいずれであってもよい。蒸留の際に用いられる蒸留塔の理論段数は、共沸溶媒、(メタ)アクリル酸メチルおよびメチルアルコールを効率よく共沸させる観点から、好ましくは5段以上、より好ましくは7段以上、さらに好ましくは10段以上であり、経済性を向上させる観点から、好ましくは100段以下、より好ましくは70段以下、さらに好ましくは50段以下である。また、前記下層を蒸留する際の蒸留温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であるが、(メタ)アクリル酸メチルの重合を防止する観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは105℃以下である。
【0050】
(メタ)アクリル酸メチルと副生したメチルアルコールと共沸溶媒を含有する蒸気には、共沸溶媒、(メタ)アクリル酸メチルおよびメチルアルコールが含まれていることから、当該蒸気を凝縮させ、得られた凝縮液を(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際の原料として用いることが、廃棄物量を低減させる観点から好ましい。また、前記蒸気を凝縮させ、得られた凝縮液を蒸留することにより、メチルアルコールおよび水と分離した後、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させる際の原料として用いることが、副生したメチルアルコールおよび水を含有させずに有効利用する観点から好ましい。分離されたメチルアルコールおよび水は、例えば、反応装置外に除去した凝縮液に添加する水として用いることができる。また、メチルアルコールと水とは、例えば、蒸留精製などにより、容易に分離することができる。残渣に含まれる水と分離されたメチルアルコールには、水分以外の不純物が含まれていないことから、当該メチルアルコールは、通常用いられているメチルアルコールと同様に、例えば、工業原料、溶媒などとして用いることができる。
【0051】
ところで、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールのエステル交換反応を行なう際の反応温度は、反応速度を高める観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、原料の(メタ)アクリル酸メチルおよび生成する(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止する観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0052】
(メタ)アクリル酸メチルとアルコールのエステル交換反応を行なう際の雰囲気は、原料の(メタ)アクリル酸メチルおよび生成する(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止する観点から、酸素を含有する雰囲気であることが好ましく、安全性を高める観点から、酸素濃度が5体積%〜大気濃度のガスであることがより好ましい。また、その雰囲気の圧力は、通常、大気圧であればよいが、加圧または減圧であってもよい。例えば、その雰囲気の圧力を減圧させた場合には、還流温度を低下させることができるので、副反応を抑制することができるという利点がある。
【0053】
(メタ)アクリル酸メチルとアルコールのエステル交換反応が進行するにしたがってメチルアルコールの副生速度が低下し、所定の反応率に到達した時点でエステル交換反応を終了することができる。なお、反応装置内の(メタ)アクリル酸メチルは、共沸溶媒との共沸によって消滅するようになる。このように反応装置内の(メタ)アクリル酸メチルが消滅した場合には、蒸留塔の塔頂温度は、最終的には共沸溶媒の沸点に到達するようになる。したがって、(メタ)アクリル酸メチルの消滅は、当該蒸留塔の塔頂温度によって確認することができる。例えば、蒸留塔の塔頂温度が共沸溶媒とメチルアルコールの共沸温度よりも5℃程度高くなった時点で、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールのエステル交換反応を終了することができる。なお、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールのエステル交換反応の終点は、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーなどによって確認することができる。
【0054】
(メタ)アクリル酸メチルとアルコールのエステル交換反応を行なう際の反応時間は、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールの量、反応温度などによって異なるので一概には決定することができないことから、通常、目的とする反応率に到達するまでの時間が選択される。
【0055】
以上のようにして(メタ)アクリル酸メチルとアルコールのエステル交換反応を行なうことにより、目的とする(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。
【0056】
次に、(メタ)アクリル酸メチルと目的とする(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールとをエステル交換反応させた後、得られた反応混合物をさらに加熱し、蒸留塔の上部から未反応の(メタ)アクリル酸メチルを含有する蒸気を取り出す。本発明においては、このようにエステル交換反応後に、反応装置内の反応混合物をさらに加熱し、蒸留塔の上部から未反応の(メタ)アクリル酸メチルを含有する蒸気を取り出す点にも1つの大きな特徴がある。本発明では、前記操作が採られているので、原料として用いられる(メタ)アクリル酸メチルを反応装置から効率よく回収することができる。
【0057】
(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとのエステル交換反応の終了後に、反応装置内の反応混合物を加熱する際の温度は、用いられている共沸溶媒の種類によって異なることから一概には決定することができないが、通常、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとのエステル交換反応の温度、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であるが、原料の(メタ)アクリル酸メチルおよび生成する(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止する観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。また、反応装置内の反応混合物を加熱する際の圧力は、大気圧とすることができるので、加圧または減圧のための装置を要しないが、必要により、当該圧力は大気圧よりも高い圧力であってもよく、あるいは低い圧力であってもよい。
【0058】
反応装置内の反応混合物を加熱することによって生成した蒸気は、反応装置の上部、好ましくは反応装置の塔頂部から反応装置の外部に取り出し、冷却することによって凝縮液として回収することができる。
【0059】
反応装置内の反応混合物を加熱することによって生成した蒸気を反応装置から取り出すとき、当該蒸気に共沸溶媒の蒸気が含まれているため、共沸溶媒が(メタ)アクリル酸メチルとともに反応装置から取り出され、反応装置内に存在している共沸溶媒の量が低減することから、(メタ)アクリル酸メチルと共沸溶媒とを効率よく共沸させるために、必要により、反応装置内に当該共沸溶媒を添加してもよい。当該共沸溶媒の添加量は、特に限定されず、通常、(メタ)アクリル酸メチルと前記共沸溶媒とを共沸させることができる量であればよい。
【0060】
なお、(メタ)アクリル酸メチルと共沸溶媒とを共沸させる操作の終点は、特に限定がないが、反応装置内に残存している(メタ)アクリル酸メチルの量が少なくなるにしたがって共沸物の共沸温度が共沸溶媒の沸点に近づくので、(メタ)アクリル酸メチルの回収効率を高める観点から、前記共沸溶媒の沸点に到達するまで行なうことが好ましい。
【0061】
以上のようにして回収された凝縮液には、主として、回収された(メタ)アクリル酸メチル、共沸溶媒およびエステル交換反応によって副生したメチルアルコールが含まれるが、副生したメチルアルコールの量が、回収された(メタ)アクリル酸メチルおよび共沸溶媒の量と対比して微量であることから、当該凝縮液は、新たにエステル交換反応させる際に、原料の(メタ)アクリル酸メチルとして有効利用することができる。
【0062】
目的化合物である(メタ)アクリル酸エステルは、反応装置内の反応混合物に存在しており、例えば、反応装置の下部から反応混合物を取り出すことによって回収することができる。反応混合物には、目的化合物である(メタ)アクリル酸エステルのほかに、エステル交換反応の際に使用した共沸溶媒、微量の未反応の(メタ)アクリ酸メチルおよび副生したメチルアルコールが含まれているので、必要により、これらの成分を除去することにより、目的化合物である(メタ)アクリル酸エステルを回収することができる。反応混合物からの未反応の(メタ)アクリ酸メチル、共沸溶媒および副生したメチルアルコールの除去は、例えば、蒸留、抽出などによって容易に行なうことができる。
【0063】
以上のようにして(メタ)アクリル酸メチルを効率よく回収することができる。
【0064】
前記(メタ)アクリル酸メチルは、悪臭物質であり、大気中に放出したとき強い臭気を発することから、大気中へ排出させないか、または大気中への排出量をできるだけ低減させることが必要となる。
【0065】
これに対して、本発明によれば、エステル交換反応終了後に反応混合物中に残存している(メタ)アクリル酸メチルを大気圧下で共沸溶媒との共沸により、反応混合物から穏やかにかつ容易に除去することができるので、大気中に(メタ)アクリル酸メチルが排出される量を極力少なくすることができる。
【0066】
したがって、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、環境に配慮した環境に優しい製造方法であるといえる。
【0067】
なお、前記反応装置には、必要により、反応装置に配設されている大気への排気口には、例えば、アルカリスクラバ−などを設置することにより、(メタ)アクリル酸メチルを吸収し、大気中に(メタ)アクリル酸メチルが放出されることを抑制してもよい。
【0068】
以上のようにして本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、界面活性剤、接着剤、塗料などの原料として有用な化合物である。
【0069】
また、目的とする(メタ)アクリル酸エステルの種類、用途などによっては、当該(メタ)アクリル酸エステルに原料の(メタ)アクリル酸メチルが混入しないことが望まれることがあるが、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、目的とする(メタ)アクリル酸エステルに原料の(メタ)アクリル酸メチルが混入することを防止する方法としても有用である。
【実施例】
【0070】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0071】
なお、以下の実施例において、目的化合物の(メタ)アクリル酸エステルの収率は、当該目的化合物の(メタ)アクリル酸エステルの理論生成量に対する実際の(メタ)アクリル酸エステルの生成量の比率から求めた。
【0072】
また、以下の実施例の反応混合物における原料アルコール、原料アルコールから生成する(メタ)アクリル酸エステル、共沸溶媒および(メタ)アクリル酸メチルの量は、いずれもガスクロマトグラフィー(以下、GCという)分析装置(アジレント社製、検出器FID、カラムキャピラリーDB−1:30m)を用い、GCによる面積百分率から求めた。
【0073】
実施例1
塔頂部に還流装置を備え、側管を有する20段オルダーショウ蒸留塔(理論段数:15段)と、空気導入管とを有する2L容の四つ口フラスコを反応装置として用いた。当該反応装置のフラスコ内に、アクリル酸メチル694g(8.06モル)、N,N−ジメチルアミノエタノール552g(6.20モル)、フェノチアジン1.76g、ジブチルスズオキサイド22.1gおよびシクロヘキサン100gを仕込んだ。空気導入管から空気を20mL/分の流量でフラスコ内に吹き込みながらエステル交換反応を行なった。より具体的には、反応装置に設置されている蒸留塔の塔頂から取り出された蒸気を凝縮し、得られた凝縮液の一部を塔頂に還流させ、残りの凝縮液を反応装置外に除去した。反応装置外に除去した凝縮液の量を調節することにより、蒸留塔の塔頂温度をメチルアルコールとシクロヘキサンとの共沸温度である54〜56℃に調整した。
【0074】
反応装置の蒸留塔の塔頂部から除去した凝縮液700gと水200gとを20℃の温度で混合し、得られた混合液をデカンターに導入した。この混合液は上層と下層の2層に分離した。凝縮液に含まれていたメチルアルコールは水で抽出されて下層に含まれ、凝縮液に含まれていたシクロヘキサンは抽出液の上層に含まれていた。
【0075】
前記下層の量は410gであり、当該下層には、メチルアルコール47.0質量%(193g)、シクロヘキサン0.5質量%(2g)、アクリル酸メチル3.6質量%(15g)および水48.9質量%(200g)が含まれていた。
【0076】
一方、前記上層を蒸留塔の中段である蒸留塔の下から10段目の位置に供給することにより有効利用した。
【0077】
アクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとのエステル交換反応における反応温度が85〜102℃となるようにフラスコ内に適宜シクロヘキサンを追加しながら反応させ、反応開始から4時間経過時にエステル交換反応が終了した。反応終了後、前記エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は160gであった。
【0078】
反応終了後、前記エステル交換反応によって得られた反応混合物をさらに加熱し、還流比を10〜15に設定し、蒸留塔の塔頂から蒸気を取り出し、当該蒸気を凝縮させることにより、凝縮液を回収した。このとき、フラスコ内の反応混合物の温度が85〜100℃に保たれるようにシクロヘキサンをフラスコ内に添加した。蒸留塔の塔頂から凝縮液の取り出しを行なうにしたがって蒸留塔の塔頂温度が徐々に上昇し、蒸留塔の塔頂温度がシクロヘキサンの沸点である80℃になるまで蒸留を続けた。
【0079】
その結果、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。また、塔頂から取り出し、回収した凝縮液の量は490gであり、この凝縮液にはメタノール5g、アクリル酸メチル145gおよびシクロヘキサン340gが含まれていた。この凝縮液には、過剰量で使用されたアクリル酸メチルのほとんどの部分が含まれていた。この回収された凝縮液は、アクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとのエステル交換反応の際に利用することができた。このことから、前記凝縮液をアクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとのエステル交換反応の際に利用することにより、アクリル酸メチルの損失を防ぐことができることが確認された。
【0080】
以上のようにしてアクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチルを調製した結果、アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチルの収量は852gであった(N,N−ジメチルアミノエタノールを基準としたときの収率:96質量%、アクリル酸メチルの仕込み量を基準としたときの収率:73.8質量%、反応終了後にシクロヘキサンとの共沸により回収したアクリル酸メチルを再使用したときの収率:93.3質量%)。
【0081】
以上の結果から、実施例1によれば、反応装置の蒸留塔の塔頂部から除去した凝縮液と水とを混合し、得られた混合液を分離し、得られた上層を蒸留塔に供給することにより有効利用することができ、エステル交換反応によって得られた反応混合物をさらに加熱し、蒸留塔の塔頂から回収された凝縮液を新たなエステル交換反応に有効利用することができるとともに、目的とするアクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチルを高収率で調製することができることがわかる。
【0082】
実施例2
塔頂部に還流装置を備え、側管を有する10段オルダーショウ蒸留塔(理論段数:7段)と、空気導入管とを有する1L容の四つ口フラスコを蒸留装置として用いた。当該反応装置のフラスコ内に、実施例1で得られた下層を仕込んだ。
【0083】
還流比を10〜15に設定して蒸留を行ない、塔頂温度が64℃以下のときの留分Aを回収した、その結果、回収された留分Aの量は40gであり、この留分Aの組成は、メチルアルコール62.1質量%(25g)、アクリル酸メチル32.5質量%(13g)、シクロヘキサン5.3質量%(2g)および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとのエステル交換反応の際に用いることができた。
【0084】
前記蒸留を継続し、還流比を5〜10に設定して蒸留を行ない、塔頂温度が64〜66℃のときの留分Bを回収した、その結果、回収された留分Bの量は167gであり、この留分Bの組成は、メチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0085】
前記留分Bは、メチルアルコールおよび微量の水以外の成分を含まないため、工業用原料、溶媒などとして有効利用使用することができることが確認された。また、留分Bにはアクリル酸メチルが検出されなかったことから、アクリル酸メチルの損失がないので、アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチルの収率に悪影響を及ぼさないことが確認された。
【0086】
また、フラスコ内の残液203gの組成は、メチルアルコール3質量%および水97質量%であり、それら以外に含まれている成分が検出されず、主として水で構成されていることから、当該残液を実施例1において凝縮液と水とを混合する際の水として用いることができた。
【0087】
以上の結果より、実施例2によれば、実施例1で回収された反応装置の蒸留塔の塔頂部から除去した凝縮液と水とを混合し、得られた混合液を分離することによって得られた下層を有効利用することができることがわかる。
【0088】
実施例3
実施例1で用いたのと同じ反応装置を用いた。当該反応装置のフラスコ内に、アクリル酸メチル517g(6.00モル)、n−オクチルアルコール651g(5.00モル)、フェノチアジン1.76g、テトラメチルチタン0.72gおよびn−ヘキサン117gを仕込んだ。空気導入管から空気を20mL/分の流量でフラスコ内に吹き込みながらエステル交換反応を行なった。より具体的には、反応装置に設置されている蒸留塔の塔頂から取り出された蒸気を凝縮し、得られた凝縮液の一部を塔頂に還流させ、残りの凝縮液を反応装置外に除去した。反応装置外に除去した凝縮液の量を調節することにより、蒸留塔の塔頂温度をメチルアルコールとn−ヘキサンとの共沸温度である48〜50℃に調整した。
【0089】
反応装置の蒸留塔の塔頂部から除去した凝縮液549gと水100gとを20℃の温度で混合し、得られた混合液をデカンターに導入した。この混合液は上層と下層の2層に分離した。凝縮液に含まれていたメチルアルコールは水で抽出されて下層に含まれ、凝縮液に含まれていたn−ヘキサンは抽出液の上層に含まれていた。
【0090】
前記下層の量は257gであり、当該下層には、メチルアルコール56.4質量%(145g)、n−ヘキサン1.6質量%(4g)、アクリル酸メチル3.1質量%(8g)および水38.9質量%(100g)が含まれていた。
【0091】
一方、前記上層を蒸留塔の中段である蒸留塔の下から10段目の位置に供給することにより有効利用した。
【0092】
アクリル酸メチルとn−オクチルアルコールとのエステル交換反応における反応温度は90〜110℃であり、反応開始から8時間経過時にエステル交換反応が終了した。反応終了後、前記エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は86gであった。
【0093】
反応終了後、前記エステル交換反応によって得られた反応混合物をさらに加熱し、還流比を10〜15に設定し、蒸留塔の塔頂から蒸気を取り出し、当該蒸気を凝縮させることにより、凝縮液を回収した。このとき、フラスコ内の反応混合物の温度が90〜110℃に保たれるようにn−ヘキサンをフラスコ内に添加した。蒸留塔の塔頂から凝縮液の取り出しを行なうにしたがって蒸留塔の塔頂温度が徐々に上昇し、蒸留塔の塔頂温度がn−ヘキサンの沸点である68℃になるまで蒸留を続けた。
【0094】
その結果、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率は0.2質量%以下であった。また、塔頂から取り出し、回収した凝縮液の量は392gであり、この凝縮液にはメタノール3.8質量%(15g)、アクリル酸メチル18.6質量%(73g)およびn−ヘキサン77.6質量%(304g)が含まれていた。この凝縮液には、過剰量で使用されたアクリル酸メチルのほとんどの部分が含まれていた。この回収された凝縮液は、アクリル酸メチルとn−オクチルアルコールとのエステル交換反応の際に利用することができた。このことから、前記凝縮液をアクリル酸メチルとn−オクチルアルコールとのエステル交換反応の際に利用することにより、アクリル酸メチルの損失を防ぐことができることが確認された。
【0095】
以上のようにしてアクリル酸n−オクチルを調製した結果、アクリル酸n−オクチルの収量は912gであった(n−オクチルアルコールを基準としたときの収率:99.0質量%、アクリル酸メチルの仕込み量を基準としたときの収率:82.5質量%、反応終了後にn−ヘキサンとの共沸により回収したアクリル酸メチルを再使用したときの収率:96.0質量%)。
【0096】
実施例4
塔頂部に還流装置を備え、側管を有する10段オルダーショウ蒸留塔(理論段数:7段)と、空気導入管とを有する2L容の四つ口フラスコを蒸留装置として用いた。当該反応装置のフラスコ内に、実施例3で得られた下層を仕込んだ。
【0097】
還流比を10〜15に設定して蒸留を行ない、塔頂温度が64℃以下のときの留分Aを回収した、その結果、回収された留分Aの量は32gであり、この留分Aの組成は、メチルアルコール62.5質量%(20g)、アクリル酸メチル25.0質量%(8g)、n−ヘキサン12.5質量%(4g)および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルとn−オクチルアルコールとのエステル交換反応の際に用いることができた。
【0098】
前記蒸留を継続し、還流比を5〜10に設定して蒸留を行ない、塔頂温度が64〜66℃のときの留分Bを回収した、その結果、回収された留分Bの量は122gであり、この留分Bの組成は、メチルアルコール99.9質量%(122g)および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0099】
前記留分Bは、メチルアルコールおよび微量の水以外の成分を含まないため、工業用原料、溶媒などとして有効利用使用することができることが確認された。また、留分Bにはアクリル酸メチルが検出されなかったことから、アクリル酸メチルの損失がないので、アクリル酸n−オクチルの収率に悪影響を及ぼさないことが確認された。
【0100】
また、フラスコ内の残液103gの組成は、メチルアルコール3質量%(3g)および水97質量%(100g)であり、それら以外に含まれている成分が検出されず、主として水で構成されていることから、当該残液を実施例3において凝縮液と水とを混合する際の水として用いることができた。
【0101】
実施例5
実施例1で用いたのと同じ反応装置を用いた。当該反応装置のフラスコ内に、アクリル酸メチル430g(5.0モル)、1,4−ブタンジオール675g(7.5モル)、フェノチアジン0.72g、ジオクチルスズオキサイド3.6gおよびシクロヘキサン100gを仕込んだ。空気導入管から空気を20mL/分の流量でフラスコ内に吹き込みながらエステル交換反応を行なった。より具体的には、反応装置に設置されている蒸留塔の塔頂から取り出された蒸気を凝縮し、得られた凝縮液の一部を塔頂に還流させ、残りの凝縮液を反応装置外に除去した。反応装置外に除去した凝縮液の量を調節することにより、蒸留塔の塔頂温度をメチルアルコールとシクロヘキサンとの共沸温度である54〜56℃に調整した。
【0102】
反応装置の蒸留塔の塔頂部から除去した凝縮液490gと水140gとを20℃の温度で混合し、得られた混合液をデカンターに導入した。この混合液は上層と下層の2層に分離した。凝縮液に含まれていたメチルアルコールは水で抽出されて下層に含まれ、凝縮液に含まれていたシクロヘキサンは抽出液の上層に含まれていた。
【0103】
前記下層の量は303gであり、当該下層には、メチルアルコール48.7質量%(148g)、シクロヘキサン1.6質量%(5g)、アクリル酸メチル3.3質量%(10g)および水46.4質量%(140g)が含まれていた。
【0104】
一方、前記上層を蒸留塔の中段である蒸留塔の下から10段目の位置に供給することにより有効利用した。
【0105】
アクリル酸メチルと1,4−ブタンジオールとのエステル交換反応における反応温度が85〜100℃となるようにフラスコ内にシクロヘキサンを適宜添加しながら反応させ、反応開始から8時間経過時にエステル交換反応が終了した。反応終了後、前記エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は20gであった。
【0106】
反応終了後、前記エステル交換反応によって得られた反応混合物をさらに加熱し、還流比を10〜15に設定し、蒸留塔の塔頂から蒸気を取り出し、当該蒸気を凝縮させることにより、凝縮液を回収した。このとき、フラスコ内の反応混合物の温度が85〜100℃に保たれるようにシクロヘキサンをフラスコ内に添加した。蒸留塔の塔頂から凝縮液の取り出しを行なうにしたがって蒸留塔の塔頂温度が徐々に上昇し、蒸留塔の塔頂温度がシクロヘキサンの沸点である80℃になるまで蒸留を続けた。
【0107】
その結果、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率は0.2質量%以下であった。また、塔頂から取り出し、回収した凝縮液の量は75gであり、この凝縮液にはメタノール5g、アクリル酸メチル10gおよびシクロヘキサン60gが含まれていた。この凝縮液には、過剰量で使用されたアクリル酸メチルのほとんどの部分が含まれていた。この回収された凝縮液は、アクリル酸メチルと1,4−ブタンジオールとのエステル交換反応の際に利用することができた。このことから、前記凝縮液をアクリル酸メチルと1,4−ブタンジオールとのエステル交換反応の際に利用することにより、アクリル酸メチルの損失を防ぐことができることが確認された。
【0108】
以上のようにしてアクリル酸4−ヒドロキシブチルを調製した結果、得られた反応混合物には、アクリル酸4−ヒドロキシブチル496g、1,4−ブタンジオールジアクリレ−ト131gおよび1,4−ブタンジオール305gが含まれていた。この反応混合物に含まれているアクリル酸4−ヒドロキシブチルは、当該反応混合物を抽出、蒸留または吸着塔を用いた吸着により、分離することができた。
【0109】
実施例6
塔頂部に還流装置を備え、側管を有する10段オルダーショウ蒸留塔(理論段数:7段)と、空気導入管とを有する1L容の四つ口フラスコを蒸留装置として用いた。当該反応装置のフラスコ内に、実施例5で得られた下層を仕込んだ。
【0110】
還流比を10〜15に設定して蒸留を行ない、塔頂温度が64℃以下のときの留分Aを回収した、その結果、回収された留分Aの量は42gであり、この留分Aの組成は、メチルアルコール64.3質量%(27g)、アクリル酸メチル23.8質量%(10g)、シクロヘキサン12.5質量%(5g)および水0.1質量%(0.04g)であった。この留分Aは、アクリル酸メチルと1,4−ブタンジオールとのエステル交換反応の際に用いることができた。
【0111】
前記蒸留を継続し、還流比を5〜10に設定して蒸留を行ない、塔頂温度が64〜65℃のときの留分Bを回収した、その結果、回収された留分Bの量は118gであり、この留分Bの組成は、メチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0112】
前記留分Bは、メチルアルコールおよび微量の水以外の成分を含まないため、工業用原料、溶媒などとして有効利用使用することができることが確認された。また、留分Bにはアクリル酸メチルが検出されなかったことから、アクリル酸メチルの損失がないので、アクリル酸4−ヒドロキシブチルの収率に悪影響を及ぼさないことが確認された。
【0113】
また、フラスコ内の残液142gの組成は、メチルアルコール3質量%および水97質量%であり、それら以外に含まれている成分が検出されず、主として水で構成されていることから、当該残液を実施例5において凝縮液と水とを混合する際の水として用いることができた。
【0114】
実施例7
実施例1で使用したのと同じ反応装置内に、メタクリル酸メチル780.9(7.80モル)、N,N−ジメチルアミノエタノール372.4g(6.00モル)およびフェノチアジン1.89gを仕込んだこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているメタクリル酸メチルの量は178gであった。
【0115】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応のメタクリル酸メチル175gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるメタクリル酸メチルの含有率を調べたところ、メタクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0116】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留し、留分A5gを回収した。この留分Aの組成は、メチルアルコール86.9質量%、シクロヘキサン13.0質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、メタクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとのエステル交換反応に利用することができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であった。
【0117】
実施例8
実施例1で使用したのと同じ反応装置内に、メタクリル酸メチル1041.2(10.4モル)、エチレングリコール248.3g(4.00モル)、フェノチアジン1.59および水酸化リチウム0.96gを仕込んだこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているメタクリル酸メチルの量は235gであった。
【0118】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応のメタクリル酸メチル233gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるメタクリル酸メチルの含有率を調べたところ、メタクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0119】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留し、留分A5gを回収した。この留分Aの組成は、メチルアルコール86.9質量%、シクロヘキサン13.0質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、メタクリル酸メチルとエチレングリコールとのエステル交換反応に用いることができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であった。
【0120】
実施例9
実施例1において、N,N−ジメチルアミノエタノールの代わりにテトラヒドロフルフリルアルコール633.2g(6.20モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は147gであった。
【0121】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応のアクリル酸メチル146gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率を調べたところ、アクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0122】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留したところ、留分Aの組成はメチルアルコール62.3質量%、アクリル酸メチル32.1質量%、シクロヘキサン5.5質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルとテトラヒドロフルフリルアルコールとのエステル交換反応に用いることができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0123】
実施例10
実施例1において、N,N−ジメチルアミノエタノールの代わりにジエチレングリコールモノエチルエ−テル805.0g(6.00モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は140gであった。
【0124】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応のアクリル酸メチル138gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率を調べたところ、アクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0125】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留したところ、留分Aの組成は、メチルアルコール62.3質量%、アクリル酸メチル32.3質量%、シクロヘキサン5.3質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルとジエチレングリコールモノエチルエ−テルとのエステル交換反応に用いることができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0126】
実施例11
実施例1において、アクリル酸メチル894.8(5.20モル)、1,6−ヘキサンジオール472.7g(4.00モル)およびジオクチルスズオキサイド3.7gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は189gであった。
【0127】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応応のアクリル酸メチル188gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率を調べたところ、アクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0128】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留したところ、留分Aの組成は、メチルアルコール62.1質量%、アクリル酸メチル32.4質量%、シクロヘキサン5.4質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルと1,6−ヘキサンジオールとのエステル交換反応に用いることができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0129】
実施例12
実施例1において、アクリル酸メチル1006.7g(11.7モル)、トリメチロールプロパン402.5g(3.00モル)およびジオクチルスズオキサイド8.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は216gであった。
【0130】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応応のアクリル酸メチル214gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率を調べたところ、アクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0131】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留したところ、留分Aの組成は、メチルアルコール62.1質量%、アクリル酸メチル32.3質量%、シクロヘキサン5.5質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルとトリメチロールプロパンとのエステル交換反応に用いることができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0132】
実施例13
実施例1において、アクリル酸メチル559.3(6.5モル)、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール1041.5g(5.00モル)およびジオクチルスズオキサイド4.7gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は117gであった。
【0133】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応応のアクリル酸メチル116gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率を調べたところ、アクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0134】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留したところ、留分Aの組成は、メチルアルコール62.5質量%、アクリル酸メチル32.1質量%、シクロヘキサン5.3質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルと2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールとのエステル交換反応に用いることができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0135】
実施例14
実施例1において、アクリル酸メチル615.2(7.15モル)、3−エチル−3−オキセタニルメチルアルコール892.1g(5.50モル)およびジオクチルスズオキサイド5.lgを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行なった。反応終了後、エステル交換反応によって得られた反応混合物に含まれているアクリル酸メチルの量は123gであった。
【0136】
フラスコ内にシクロヘキサンを添加し、未反応応のアクリル酸メチル122gを回収した後、フラスコ内の反応混合物におけるアクリル酸メチルの含有率を調べたところ、アクリル酸メチルの含有率は0.1質量%以下であった。
【0137】
次に、実施例2と同様にしてデカンターの下層を蒸留したところ、留分Aの組成は、メチルアルコール62.3質量%、アクリル酸メチル32.1質量%、シクロヘキサン5.5質量%および水0.1質量%であった。この留分Aは、アクリル酸メチルと3−エチル−3−オキセタニルメチルアルコールとのエステル交換反応に用いることができた。引き続いて実施例2と同様にして留分Bを回収し、その組成を調べたところ、この留分Bの組成はメチルアルコール99.9質量%および水0.1質量%であり、アクリル酸メチルが含まれていることが確認されなかった。
【0138】
比較例1
実施例1で用いたのと同じ反応装置を用いた。当該反応装置のフラスコ内に、アクリル酸メチル694g(8.06モル)、N,N−ジメチルアミノエタノール552g(6.20モル)、フェノチアジン1.76g、ジブチルスズオキサイド22.1gおよびイソヘキサン100gを仕込んだ。
【0139】
次に、フラスコ内に20mL/分の流量で空気を吹き込みながら76〜93℃の反応温度でエステル交換反応を行なった。より具体的には、反応装置に設置された蒸留塔の塔頂から取り出される蒸気を凝縮し、得られた凝縮液の一部を塔頂に還流させ、残りの凝縮液を反応装置外に除去した。反応装置外に除去する凝縮液の量を調節することにより、蒸留塔の塔頂温度をメチルアルコールとイソヘキサンとの共沸温度である45〜46℃に調整した。
【0140】
反応装置外に除去した凝縮液950gと水200gとを20℃の温度で混合し、得られた混合液をデカンターに導入し、2層に分離した。2層のうち下層には、凝縮液に含まれているメチルアルコールが含まれていた。一方、上層にはイソヘキサンが含まれており、当該上層を蒸留塔の中段に該当する下から10段目に供給した。
【0141】
アクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとを13時間反応させることにより、アクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとのエステル交換反応が終了した。
【0142】
前記ステル交換反応が終了した時点で反応装置内に残存しているアクリル酸メチルの量は160gであった。
【0143】
次に、フラスコ内の反応混合物の温度が80〜90℃となるようにイソヘキサンをフラスコ内に添加しながら、還流比を10〜15に設定し、塔頂から凝縮液を取り出した。凝縮液を塔頂から取り出すと塔頂温度はイソヘキサンの沸点である62℃に速やかに到達した。塔頂から取り出された凝縮液の量は300gであった。
【0144】
その結果、反応装置内のアクリル酸メチルの残存量は10.8質量%であった。また、塔頂から取り出された凝縮液300gには、メタノール5g、アクリル酸メチル5gおよびイソヘキサン290gが含まれていた。このことから、前記凝縮液には、原料として使用されたアクリル酸メチルがほとんど含まれておらず、アクリル酸メチルのほとんどが反応装置内に残存していることが確認された。
【0145】
以上の結果から、反応終了時に反応装置内に残存しているアクリル酸メチルの量は160gであった。また、反応終了後の操作では、アクリル酸メチルは、イソヘキサンと共沸せず、その5gが回収されただけであった。
【0146】
比較例2
塔頂部に還流装置を備え、側管を有する20段オルダーショウ蒸留塔(理論段数:15段)と、空気導入管とを有する2L容の四つ口フラスコを反応装置として用いた。当該反応装置のフラスコ内に、アクリル酸メチル694g(8.06モル)、N,N−ジメチルアミノエタノール552g(6.20モル)、フェノチアジン1.76g、ジブチルスズオキサイド22.1gおよびシクロヘキサン100gを仕込んだ。空気導入管から空気を20mL/分の流量でフラスコ内に吹き込みながらエステル交換反応を行なった。
【0147】
具体的には、反応装置に設置されている蒸留塔の塔頂から取り出された蒸気を凝縮し、得られた凝縮液の一部を塔頂に還流させ、残りの凝縮液を反応装置外に除去した。反応装置外に除去した凝縮液の量を調節することにより、蒸留塔の塔頂温度をメチルアルコールとシクロヘキサンとの共沸温度である54〜56℃に調整した。
【0148】
反応装置の蒸留塔の塔頂部から除去した凝縮液700gと水200gとを20℃の温度で混合し、得られた混合液をデカンターに導入した。この混合液は上層と下層の2層に分離した。凝縮液に含まれていたメチルアルコールは水で抽出されて下層に含まれ、凝縮液に含まれていたシクロヘキサンは抽出液の上層に含まれていた。下層の量は410gであり、当該下層には、メチルアルコール47.0質量%(193g)、シクロヘキサン0.5質量%(2g)、アクリル酸メチル3.6質量%(15g)および水48.9質量%(200g)が含まれていた。
【0149】
アクリル酸メチルとN,N−ジメチルアミノエタノールとのエステル交換反応における反応温度が85〜102℃となるようにフラスコ内に適宜シクロヘキサンを追加しながら反応させ、反応開始から4時間経過時にエステル交換反応が終了した。
【0150】
その結果、アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチルの収率は96.0質量%、アクリル酸メチル基準の収率は73.8質量%であった。また、凝縮液からメタノールを抽出した水層の組成は、メタノール48.0質量%、n−ヘキサン0.1質量%およびアクリル酸メチル3.6質量%であったが、反応装置内に残存しているアクリル酸メチルの残存量は160gであった。
【0151】
したがって、比較例2の方法では、アクリル酸メチルが大量に反応装置内に残存することがわかる。
【0152】
以上の結果から、本発明の各実施例によれば、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとをエステル交換反応させた後に残存している(メタ)アクリル酸エステルを効率よく回収することができ、しかも回収された(メタ)アクリル酸メチルは、(メタ)アクリル酸メチルとアルコールとをエステル交換反応させる際に再利用することができることがわかる。