(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所要数のボイラで構成される集合ボイラ設備の運転条件を設定するボイラ運転条件設定装置であって、所定期間を1サイクルとした蒸気使用量を入力する蒸気使用量入力部と、集合ボイラ設備の運転条件を設定する運転条件設定部と、
該運転条件設定部により設定された蒸気使用量に影響する条件、蒸気圧力に影響する条件、複数台のボイラを制御する際の条件、ボイラ燃焼制御に関する条件に基づき、及び
上記した設定条件の内、変更可能な設定条件である制御追従に関する燃焼モード、蒸気使用量の設定条件を選択し、選択した設定条件を変更し、運転状態をシミュレーションし、得られた運転状態に基づきその時々の各ボイラの燃焼率を定めるボイラ状態値を演算し、該ボイラ状態値に基づき設定した運転条件の評価を行う演算装置と、前記運転状態、前記ボイラ状態値を演算し、又評価を行う為のプログラムが格納された記憶部とを具備することを特徴とするボイラ運転条件設定装置。
【背景技術】
【0002】
本発明は簡易ボイラ、又は小型ボイラを複数台設置してボイラ設備を構成し、蒸気の使用量の変化に対してはボイラの台数制御を行う場合のボイラ運転条件設定装置に関するものである。
【0003】
近年では、大型のボイラを設置する代りに、簡易ボイラ或は小型ボイラを複数台設置してボイラ設備(以下、集合ボイラ設備と称す)を構成し、蒸気使用量に対応しボイラの稼働台数を制御することが行われている。又、各ボイラの稼働状態(燃焼状態)の制御は、蒸気の使用量に対応した比例制御ではなく、予め設定した燃焼率で燃焼を制御する段階制御(3位置制御、或は4位置制御)を行い簡便な燃焼制御を行っている。これによって、設備費の低減、燃焼制御の簡便化を図っている。
【0004】
又、従来の集合ボイラ設備に於いて、設備された使用環境で最適な運転条件を設定するには、蒸気使用量、使用時に於ける負荷変動を考慮して稼働ボイラ台数、個々のボイラの稼働状態等を含むボイラ運転条件を想定し、想定したボイラ運転条件により実際に集合ボイラ設備を運転し、想定したボイラ運転条件が最適であったかどうかを判断している。
【0005】
この為、最適なボイラ運転条件を取得する為には、ボイラ運転条件を想定すること、想定したボイラ運転条件で実際に集合ボイラ設備を運転し、想定したボイラ運転条件が最適であるかどうかを評価することが必要であり、想定したボイラ運転条件が最適でない場合は、ボイラ運転条件の想定と、想定したボイラ運転条件の評価を繰返し行う必要がある。更に、ボイラ運転条件の評価には、1週間程度を要する。この為、ボイラ運転条件の設定には、多くの労力と時間が必要であった。
【0006】
更に、夏季の運転環境と冬季の運転環境とでは、蒸気の使用量が大きく異なり、最適な運転状態を実現する為には、ボイラ運転条件の再設定が必要であり、又、蒸気を使用する設備の変更があった場合にも、ボイラ運転条件の再設定が必要となる。再設定した場合にも、1週間程度の評価期間が必要である。この為、ボイラ運転条件の再設定の度に、多くの労力と時間が必要となっていた。
【0007】
尚、特許文献1、特許文献2には、3位置制御、或は4位置制御でボイラの適切な燃焼制御を行うことが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、最適なボイラ運転条件を容易に設定可能としたボイラ運転条件設定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所要数のボイラで構成される集合ボイラ設備の運転条件を設定するボイラ運転条件設定装置であって、所定期間を1サイクルとした蒸気使用量を入力する蒸気使用量入力部と、集合ボイラ設備の運転条件を設定する運転条件設定部と、入力された蒸気使用量、運転条件に基づき、蒸気圧力、ボイラの稼働台数及びボイラの燃焼状態を含む運転状態を演算し、得られた運転状態に基づきボイラ状態値を演算し、該ボイラ状態値に基づき設定した運転条件の評価を行う演算装置と、前記運転状態、前記ボイラ状態値を演算し、又評価を行う為のプログラムが格納された記憶部とを具備するボイラ運転条件設定装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記ボイラの燃焼状態の制御は、燃焼状態を段階的に制御する段階制御であるボイラ運転条件設定装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記ボイラの燃焼状態の制御は、停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼の4位置制御であり、設定される運転条件の1つの運転モードは、低燃焼を優先する低燃焼モード、中燃焼を優先する中燃焼モード、高燃焼を優先する高燃焼モードのいずれかであるボイラ運転条件設定装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記ボイラの燃焼状態の制御は、停止、低燃焼、高燃焼の3位置制御であり、設定される運転条件の1つの運転モードは、低燃焼を優先する低燃焼モード、高燃焼を優先する高燃焼モードのいずれかであるボイラ運転条件設定装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記ボイラ状態値は、所定時間間隔で出力され、出力時のボイラの燃焼状態が時系列で記録されたものであるボイラ運転条件設定装置に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記演算装置は評価部を有し、該評価部は前記ボイラ状態値に基づき所定期間の燃料消費量、燃料消費率を含む評価を行うボイラ運転条件設定装置に係るものである。
【0016】
又本発明は、入力される前記蒸気使用量は、計画データ、或は使用実績のデータに基づき時系列に作成されるボイラ運転条件設定装置に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所要数のボイラで構成される集合ボイラ設備の運転条件を設定するボイラ運転条件設定装置であって、所定期間を1サイクルとした蒸気使用量を入力する蒸気使用量入力部と、集合ボイラ設備の運転条件を設定する運転条件設定部と、入力された蒸気使用量、運転条件に基づき、蒸気圧力、ボイラの稼働台数及びボイラの燃焼状態を含む運転状態を演算し、得られた運転状態に基づきボイラ状態値を演算し、該ボイラ状態値に基づき設定した運転条件の評価を行う演算装置と、前記運転状態、前記ボイラ状態値を演算し、又評価を行う為のプログラムが格納された記憶部とを具備するので、最適なボイラ運転条件が実際に集合ボイラ設備を運転して評価することなく、取得でき、最適なボイラ運転条件を容易に設定可能であるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
先ず、
図1に於いて、集合ボイラ設備1について概略を説明する。
【0021】
該集合ボイラ設備1は、所要数の簡易ボイラ、或は小型ボイラ、或は炉筒煙管ボイラで構成される。
図1中、2a,2b,…,2nは、それぞれ第1ボイラ,第2ボイラ,…,第nボイラを示し、それぞれ簡易ボイラ、或は小型ボイラ、或は炉筒煙管ボイラであり、4は前記第1ボイラ2a,第2ボイラ2b,…,第nボイラ2nの起動又は停止、稼働時の燃焼状態を制御する制御装置である。
【0022】
前記第1ボイラ2a,第2ボイラ2b,…,第nボイラ2nは、それぞれ蒸気導出管3a,3b,…,3nを介して蒸気ヘッダ5に接続されている。該蒸気ヘッダ5には、蒸気供給管6が接続され、該蒸気供給管6を介して必要な箇所に蒸気が供給される様になっている。前記蒸気導出管3a,3b,…,3nには開閉弁7a,7b,…,7n及び開閉弁8が設けられ、前記蒸気供給管6には開閉弁9が設けられている。
【0023】
又、前記蒸気ヘッダ5内の蒸気圧力は圧力検出器11によって検出され、検出された蒸気圧力は圧力信号12として前記制御装置4に入力される。尚、負荷状態を示す信号としては、蒸気の使用流量を入力してもよい。
【0024】
前記制御装置4には、実際に前記集合ボイラ設備1を起動、制御する為の、運転環境に最適なボイラ運転条件が設定されており、前記制御装置4は設定されたボイラ運転条件に基づき、又前記検出信号に基づき前記第1ボイラ2a,第2ボイラ2b,…,第nボイラ2nの運転を制御する様になっている。
【0025】
又、運転環境が変更された場合、或は変った場合には、ボイラ運転条件をボイラ運転条件設定装置(後述)により再設定することができる様になっている。
【0026】
前記第1ボイラ2a,第2ボイラ2b,…,第nボイラ2nで発生した蒸気は、前記蒸気ヘッダ5に集められ、該蒸気ヘッダ5から前記蒸気供給管6を介して蒸気の消費部に供給される様になっている。
【0027】
前記蒸気ヘッダ5内部の圧力は前記圧力検出器11によって検出され、前記制御装置4に送出される。前記制御装置4では、前記圧力検出器11からの圧力信号を基に、予め設定された目標圧力値、運転順位、制御台数に従って、演算を行い、各ボイラの起動/停止、各ボイラの燃焼状態の決定を行う。燃焼状態としては、4位置制御では、停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼であり、又3位置制御では、停止、低燃焼、高燃焼である。又、負荷状態を更に分割し、燃焼状態を5位置制御、6位置制御等で段階制御してもよい。
【0028】
図2、
図3を参照してボイラ運転条件設定装置15について説明する。
【0029】
該ボイラ運転条件設定装置15は、主に演算装置16、蒸気使用量入力部17、運転条件設定部18、記憶部19、データ出力部20、表示部21から構成される。尚、前記ボイラ運転条件設定装置15は、一般のPCにボイラ運転条件設定プログラムをインストールしたものであってもよい。
【0030】
前記ボイラ運転条件設定装置15は、前記運転条件設定部18から設定されるボイラ運転条件に基づき、ボイラ運転状態をシミュレーションし、得られた運転状態に基づき、設定された運転条件での評価データを出力する。評価データとしては、例えば、使用燃料費/日、使用燃料量/蒸気流量等のランニングコスト、或は蒸気使用量、或は蒸気圧力、ボイラ状態値の変動を示すグラフ等である。
【0031】
又、前記演算装置16は、主に圧力演算部25、ボイラ制御演算部26、ボイラ状態値演算部27、評価部31で構成される。後述する様に、前記演算装置16は、前記運転条件設定部18で設定された運転条件、前記蒸気使用量入力部17から入力される蒸気使用量等に基づき、集合ボイラ設備1の燃焼状態(ボイラ状態値)を演算(シミュレーション)する。ここで、ボイラ状態値(後述)とは、その時々のボイラの燃焼状態を示すデータであり、例えば、4位置制御している場合は、停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼を示す記号等である。
【0032】
前記蒸気使用量入力部17は、タッチパネル、キーボード、CDドライブ、メモリカードリーダ等であり、前記蒸気使用量入力部17から入力されるデータは、タッチパネル或はキーボードを操作することで入力され、或はCD、メモリカード等の記録媒体に記録されたデータを読込むことで入力される。前記蒸気使用量入力部17で入力されるデータとしては、蒸気使用量が入力される。
【0033】
前記蒸気使用量入力部17は、本実施例の集合ボイラ設備1が設備された場合の、設備された環境、使用される環境を考慮した蒸気の所定期間の使用量(例えば、24時間サイクルでの使用量の変化)を想定し、計画蒸気使用量(計画データ)として前記演算装置16に時系列(例えば10秒間隔で)に入力する。
【0034】
或は、既に設備されている場合は、実際の使用実績のデータ、例えば熱管理装置で取得された蒸気使用量のデータ(トレンドデータ、日報、月報)に基づき作成された蒸気使用量を実績データとして時系列(例えば10秒間隔で)に前記演算装置16に入力する。尚、1サイクルの期間としては、1週間とする等、運転環境に合わせて適宜設定される。
【0035】
又、考慮される使用環境としては、例えば夏季或は冬季等の季節があり、季節によって蒸気使用量が異なることが考慮され、入力される蒸気使用量のデータが作成される。
【0036】
前記運転条件設定部18からは、評価対称となる集合ボイラ設備1の機械的な特性として、例えばボイラの容積、ボイラの蒸発能力、配管系の容積、ボイラの燃焼装置の火力、燃料消費量等が入力される。更に、評価対称となる既設のボイラ設備を実際に運転する場合の運転条件、或は新規に設備する集合ボイラ設備1の運転を想定して得られる運転条件(運転計画で得られる運転条件)が入力される。更に又、前記集合ボイラ設備1が有する固有の条件等が入力される。尚、以下の説明では、運転条件には前記機械的な特性、運転条件等、前記運転条件設定部18から設定される条件を全て含むものとする。
【0037】
ここで、運転条件としては、以下のものが例示される。
【0038】
例えば、蒸気使用量に影響する設定条件として燃焼負荷に対応した蒸発量、自己蒸発/自己凝縮、蒸気ヘッダ圧力の設定があり、蒸気圧力に影響する設定条件として、蒸気発生量、蒸気部容量の設定、保有水部熱容量の設定があり、複数台のボイラを制御する際の設定条件として、運転モードの設定、制御追従に関する不感帯の設定、偏差の設定、タイムラグの設定が挙げられ、ボイラ燃焼制御に関する設定条件として、段階制御モードの設定、段階制御する場合の各段階での負荷の設定(負荷特性の設定)、追従遅れの設定、起動停止損失の設定等が挙げられる。
【0039】
本実施例に於ける集合ボイラ設備1の制御では、ボイラ単体については、燃焼を段階制御する。ボイラ単体の燃焼を段階制御する前記運転モードの一例としては、例えば
図4(A),
図4(B),
図4(C)に示される。
【0040】
尚、
図4に示される運転モードは、集合ボイラ設備1が4台の小型ボイラ(図中、1,2,3,4で示される)によって構成され、又燃焼は段階制御として4位置制御(停止、低燃焼、中燃焼、高燃焼)される場合を示している。又、各図とも中央が最大負荷を示し左端から中央に向って負荷が増大し、中央から右端に向って負荷が減少する場合の、各小型ボイラの燃焼状態を示し、Lは低燃焼、Mは中燃焼、Hは高燃焼を示している。
【0041】
図4(A)で示す運転モードは、必要な蒸気発生量を得るのに、低燃焼(例えば30%燃焼)を優先してボイラの台数制御を行う運転モードであり、低燃焼モードである。
【0042】
低燃焼モードでは、全ボイラの低燃焼負荷以上の蒸気負荷があれば、ボイラを燃焼停止しない為、ランニング効率がよく(パージ損失がない)、負荷変動も燃焼を増減させるだけでよく、パージ時間のロスがなく、圧力追従性がよい燃焼モードである。
【0043】
図4(B)で示す運転モードは、必要な蒸気発生量を得るのに、中燃焼(例えば65%燃焼)を優先してボイラの台数制御を行う運転モードであり、中燃焼モードである。
【0044】
各小型ボイラで燃焼効率が高い燃焼状態は中燃焼であり(特許文献2参照)、中燃焼を優先することで、集合ボイラ設備1の燃焼効率が向上し、ランニング効率がよくなる。
【0045】
図4(C)で示す運転モードは、必要な蒸気発生量を得るのに、高燃焼(100%燃焼)を優先してボイラの台数制御を行う運転モードであり、高燃焼モードである。
【0046】
高燃焼モードでは、高燃焼を優先することで、小型ボイラの稼働台数が少なくなる。稼働台数が少なくなることで、送風機の駆動動力が少なくて済む等、集合ボイラ設備1を運転する場合の電気使用量が少なくなる。尚、3位置制御の場合は、
図4(B)で示される中燃焼モードが省略され、
図4(A)で示される低燃焼モード、
図4(C)で示される高燃焼モードで運転される。
【0048】
前記蒸気使用量入力部17から入力された蒸気使用量と、前記運転条件設定部18で設定された蒸気部容量、保有水部熱容量等の諸設定条件に基づき、蒸気ヘッダ圧力を演算する。
【0049】
前記ボイラ制御演算部26は、前記運転条件設定部18で設定された運転条件、前記圧力演算部25で得られた圧力(蒸気使用量)等に基づきボイラの制御状態をシミュレーションする。
【0050】
例えば、前記運転条件設定部18から
図4で示される低燃焼モードが設定されると共に時系列の蒸気使用量、及び他の運転条件が入力されると、蒸気使用量の変化に対応して、使用ボイラの台数が制御され、更に低燃焼モードでの各ボイラの4位置燃焼制御がシミュレーションされる。
【0051】
前記ボイラ状態値演算部27は、前記ボイラ制御演算部26から出力されるボイラの制御状態から各ボイラの燃焼状態を示すボイラ状態値を出力する。燃焼状態を示すボイラ状態値としては、例えば、多位置燃焼制御を行っている場合では、例えば、4位置燃焼制御を行っている場合では、ボイラの状態はボイラが停止(S)、低燃焼(L)、中燃焼(M)、高燃焼(H)のいずれかであり、ボイラの状態を所定時間間隔(例えば、1秒間隔で或は10秒間隔)で、その時々のボイラの状態を時系列で出力する。
【0052】
前記評価部31では、設定した評価時間(例えば1日或は1週間等)を1サイクルとし、1サイクルに於けるボイラの状態、停止(S)、低燃焼(L)、中燃焼(M)、高燃焼(H)の各合計時間を演算し、更に起動停止回数を数える。
【0053】
低燃焼(L)、中燃焼(M)、高燃焼(H)での燃料使用量については、前記運転条件設定部18で設定されているので、低燃焼(L)、中燃焼(M)、高燃焼(H)の各合計時間に基づき、評価時間での燃料の消費量が演算できる。更に、起動停止回数から評価時間での起動停止損失が演算できる。
【0054】
又、低燃焼(L)、中燃焼(M)、高燃焼(H)での蒸気発生量も、前記運転条件設定部18で設定されているので、低燃焼(L)、中燃焼(M)、高燃焼(H)の各合計時間に基づき、評価時間での蒸気発生量が演算できる。
【0055】
前記評価部31は、前記評価時間での燃料の消費量に基づき、燃料消費率(燃料の消費量/時間)、燃料の消費量の経時的変化のグラフ、燃料消費率の経時的変化のグラフを演算し、更に蒸気発生率(蒸気発生量/時間)、蒸気発生率の経時的変化のグラフを演算する。
【0056】
更に、前記評価部31は、評価時間での燃料の消費量、電力量、給水量、薬品量に基づきランニングコストを演算する。又、前記評価部31は、上記演算結果を前記表示部21に出力し、該表示部21により燃料の消費量、蒸気発生量、或は得られたグラフ等を表示する。
【0057】
更に、演算結果は、前記データ出力部20に出力され、シミュレーションデータとして適宜な媒体(例えば、メモリカード等)に保存される。
【0058】
前記運転条件設定部18による設定条件を変える毎に、シミュレーションが実行される。
【0059】
上記した設定条件の内、例えば、制御追従に関する不感帯、偏差、タイムラグ、燃焼モード、蒸気使用量等は、変更可能な設定条件であり、例えば前記不感帯を所定偏差で順次変更し、他の設定条件を固定して、シミュレーションすることで、不感帯を変更した場合の燃料消費量の変化が見られ、更に燃焼モードを変化させ、他の設定条件を固定とし、シミュレーションすれば、1つの固定した設定条件での燃焼モードの最適条件が得られる。
【0060】
而して、変更可能な設定条件を順次選択し、選択した設定条件を変数として運転状態をシミュレーションすることで、変更可能な設定条件全てについて運転条件の設定変化に対する緻密な運転状態がシミュレーションでき、更に得られた個々の運転状態に対応するボイラ状態値が得られるので、運転条件の設定変化に対する緻密な評価が得られる。従って、対象となる集合ボイラ設備1を実際に運転させることなく、最適な運転条件を求めることができる。
【0061】
前記記憶部19には、設定された運転条件で個々のボイラの制御状態をシミュレーションするプログラム、前記蒸気使用量等に対応して運転するボイラを制御するプログラム、シミュレーションで得られたボイラ運転状態からボイラ状態値を演算するプログラム、ボイラ状態値に基づき燃料の消費量、蒸気の発生量、燃料消費率、蒸気発生率、電力量、給水量、薬品量、燃料の消費量の経時的変化のグラフ、燃料消費率の経時的変化のグラフを演算する評価プログラム、評価の結果を前記表示部21に表示する為のプログラム等の種々のプログラムが格納され、更に前記記憶部19には評価結果が格納される。
【0062】
尚、前記ボイラ状態値演算部27で演算された蒸気発生量を、前記圧力演算部25にフィードバックし、圧力演算を行う。又、前記蒸気使用量入力部17から入力された蒸気量と比較することができ、両蒸気量間での偏差がなくなる様に、設定値を修正すれば、シミュレーションの精度が向上する。
【0063】
上述したボイラ運転条件設定のシミュレーションの流れについて、
図5を参照して略述する。
【0064】
STEP:01 シミュレーションを実行する為の蒸気使用量のデータを収集する。データの収集については、使用状態を想定して作成した蒸気使用量の計画データ、或はボイラが運転された実際の使用実績のデータ等である。
【0065】
蒸気使用量のデータ、及びボイラ特性の情報、運転モード、運転条件が入力される。尚、ボイラ特性の情報としては、ボイラ内、前記蒸気ヘッダ5内での圧力変化による自己蒸発、自己凝縮、配管系の容積、集合ボイラ設備が持つ追従遅れ等の情報である。又、既存の集合ボイラ設備についての評価を行う場合は、既存の集合ボイラ設備のボイラ特性の情報、運転モード、運転条件等を同一とする。
【0066】
STEP:02 蒸気使用量のデータ、運転モード、運転条件及びボイラ特性の情報は、シミュレーションを実行する為のデータベースとして前記記憶部19に格納される。
【0067】
STEP:03〜STEP:05 前記データベースに基づき、複数のボイラについて制御状態、制御台数が演算され、更に制御状態、制御台数に基づきボイラ運転のシミュレーションが実行される。シミュレーションの実行に基づきボイラ状態値が演算され、更にボイラ状態値に基づき評価が実行される。
【0068】
STEP:06、STEP:07 評価により、使用燃料量、燃料消費率、発生される蒸気量、蒸気単価、ランニングコスト、或は運転状態の経時的変化を表すグラフ等が演算され、評価として出力される。又出力される評価は、前記表示部21に表示され、或は前記データ出力部20からデータ出力され、或は前記記憶部19に格納される。
【0069】
STEP:08 STEP:05の評価で、予定した全ての運転条件について、シミュレーションを実行したかどうかが判断され、全ての運転状態についてシミュレーションが完了していなければ、更に運転条件を変更してシミュレーションを実行し、予定した全ての運転条件についてシミュレーションが完了した場合はシミュレーションが完了する。
【0070】
各運転条件毎にシミュレーションが実行され、評価が演算される。得られた評価を比較する。例えば、燃料消費率を評価判断の基準とすると、全てのシミュレーションの中で最も燃料消費率の少ないものを選択し、当該シミュレーションを実行した場合の設定条件を選べば、最も燃料消費率を少なくする運転条件が得られる。
【0071】
最適な運転条件の判断は、各シミュレーション毎の評価に基づき、作業者が判断してもよく、或は評価の判断基準、判断項目をボイラ運転条件設定装置15に入力しておき、該ボイラ運転条件設定装置15によって判断させてもよい。
【0072】
尚、各運転条件毎のシミュレーションの評価の比較を作業者が行い、作業者の判断で、影響の少ない運転条件でのシミュレーションを省略することができる。
【0073】
本実施例によれば、実際に集合ボイラ設備1を稼働して評価する必要がなく、又単に運転条件を変更するだけで、簡単に変更した運転条件でのシミュレーション、評価を得ることができるので、容易に最適な運転条件を求めることができる。又、運転環境が変った場合にも容易に対応ができ、例えば、季節毎に運転条件を変更する等し、総合的に熱効率を向上させることもできる。