(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0019】
図1には、本発明の第一実施形態の呼気採取セット100を示している。呼気採取セット100は、使用者から吐き出される呼気のうち、肺胞内で血液と物質交換した呼気である終終末呼気を検査用に採取するためのものである。使用者からは、死腔にあった呼気が吐き出された後で、終末呼気が吐き出される。なお、死腔とは、肺に至るまでの気道内であり、血液と物質交換しないスペースである。終末呼気に含まれる成分を検査することによって、身体の種々の異常等を調べることができる。
【0020】
呼気採取セット100は、呼気採取袋1と、これに差し込んで使用する吹込み管3及び排出管4とを備える。
【0021】
吹込み管3及び排出管4は、内径が、例えば2.5〜8.0mmのストロー等の細長い管であって、特定のプラスチック等の材質で形成される。本実施形態では、排出管4の内径は、吹込み管3の内径よりも小さい。排出管4の内径は、吹込み管3の内径の4/5以下であり、例えば、吹込み管3の内径が5.0mmの場合、排出管4の内径は4.0mmである。このように排出管4の内径が吹込み管3の内径よりも小さいものを用いることによって、吹込んだ呼気を排出管4を通じて排出しにくくでき、吹き込む力の弱い人でも、勢いをつけずに普通に息を吐くようにしても、効率良く呼気採取袋1に呼気を溜めることができる。なお、吹込み管3及び排出管4は、同じ内径のものであってもよい。その場合、内径は4.0mm以下であり、好ましくは3.5mm以下である。このような内径の吹込み管3及び排出管4を用いることによっても、吹込んだ呼気を排出管4を通じて排出しにくくでき、使用者は無理なく効率良く呼気を呼気採取袋1内に溜めることができる。
【0022】
上述の特定のプラスチックとは、終末呼気中の主要成分である水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、イソプレン、硫化水素(H
2S)、アンモニア(NH
3)、トルエン、メタンチオール(CH
3SH)と同じ物質を、管本体から放出しない材質のプラスチックや、これらの成分に反応する物質を放出しない材質のプラスチックであることが好ましい。吹込み管3及び排出管4の材質としては、後述する呼気採取袋1の材質と同じ材質のプラスチックが好適に用いられる。なお、吹込み管3及び排出管4は、ポリプロピレン等の一般的な材質で形成したものを用いてもよい。また、排出管4は呼気採取袋1内の呼気が排出される部分であるので、排出管4の材質は、吹込み管3とは別の材質であってもよく、特に限定されない。なお、吹込み管3及び排出管4は、コックを有するストロー等の細長い管であってもよい。
【0023】
呼気採取袋1は、
図1に示すように、可撓性のシート材2を密封して形成した袋状の本体部10と、この本体部10の一部で形成した吹込み口11と、本体部10の他の一部で形成した排出口12とを備える。吹込み口11は吹込み管3が差し込まれるように形成されており、排出口12は排出管4が差し込まれるように形成されている。呼気採取袋1は、容量が、例えば100ml〜500ml程度となるように形成されている。
【0024】
ここで、呼気採取袋1の容量を、100ml〜500ml程度となるように形成する理由としては下記の通りである。
【0025】
すなわち、通常、1回で排出できる呼気は少ない人で2000mlである。また、ある容積の容器内をある気体で完全に置換するためには、一般的に置換する容積の3倍以上の気体が必要である。1回の排出量を2000mlとすると、排除したい死腔の容量は約150mlであるので、終末呼気は1850mlである。そのため、この1850mlの終末呼気で完全に置換可能な容器の容量は、最大で650ml程度となる。
【0026】
本実施形態では、呼気採取袋1の容量を、この約650mlよりも容量の少ない100ml〜500ml程度とすることで、1回に排出する呼気(終末呼気)によって、呼気採取袋1内をこの終末呼気で完全に置換できるものとなっている。なお、呼気採取袋1の容量の100ml以上としたのは、呼気採取袋1内に収容した終末呼気を複数回抜き取り可能なように、作業性等を向上させるためである。
【0027】
呼気採取袋1を形成するシート材2は、吹込んだ呼気の圧で膨らむ程度の可撓性を有する。呼気採取袋1は、呼気を吹込むと本体部10が膨らみ、その後呼気の吹込みを中断しても、本体部10が膨らんだ状態のまま保形するものとなっている。つまり、シート材2は、伸縮性を略有さない材質で形成されている。
【0028】
また、シート材2は、ガス透過性が低く、シート材2を構成する成分が外部に流出しにくい材質で形成される。つまり、シート材2を密封して形成した袋状の本体部10は、内部の終末呼気中の主要成分がシート材2を介して本体部10の外側に流出しにくいものとなっている。そして、本体部10は、外の大気(特に、終末呼気中の主要成分と同じ物質やこの成分と反応する物質)がシート材2を介して本体部10内に流入しにくいものとなっている。そして、シート材2は、終末呼気中の主要成分と同じ物質やこの成分と反応する物質をシート材2自体から放出しない材質で形成されている。
【0029】
シート材2としては、例えば、ビニルアルコール系ポリマーや、ポリエチレン、特にリニアローデンシティポリエチレンが好適に用いられる。シート材2は、単層構造のものであってもよいし、多層構造のものであってもよい。シート材2は、例えば、テックバリア(登録商標)、ナイロン、リニアローデンシティポリエチレンをこの順に外側から重ねた3層構造のものを用いることもできる。
【0030】
図6(a)には、ビニルアルコール系ポリマー製のシート材2で形成した呼気採取袋1に、終末呼気中主要成分(水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、イソプレン、硫化水素(H
2S)、アンモニア(NH
3)、トルエン、メタンチオール(CH
3SH))を入れて封止した場合の、各成分の7日間の濃度変化を示している。また、
図6(b)には、リニアローデンシティポリエチレン製のシート材2で形成した呼気採取袋1に、上述の終末呼気中主要成分を入れて封止した場合の、各成分の7日間の濃度変化を示している。
図6(a)及び
図6(b)では、水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)、アンモニア(NH
3)は、ppm表記しており、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、イソプレン、硫化水素(H
2S)、トルエン、メタンチオール(CH
3SH)は、ppb表記している。
【0031】
ビニルアルコール系ポリマー製の呼気採取袋1では、
図6(a)に示すように、アンモニア(NH
3)を除いた各成分の7日経過後の濃度の減少が20パーセント以内であり、終末呼気中の主要成分の保管性に優れている。
【0032】
また、リニアローデンシティポリエチレン製の呼気採取袋1では、
図6(b)に示すように、アンモニア(NH
3)、硫化水素(H
2S)及びエタノールを除いた残りの各成分の7日経過後の濃度の減少が20パーセント以内であり、終末呼気中の主要成分の保管性に優れている。また、リニアローデンシティポリエチレン製の呼気採取袋1では、トルエンは、ガスを入れた途端に呼気採取袋1への吸着が起こり、最初から低濃度になり、その後は安定している。
【0033】
すなわち、ビニルアルコール系ポリマー製の呼気採取袋1とリニアローデンシティポリエチレン製の呼気採取袋1では、1日程度の濃度減衰は略無視できるレベルのガス保管性を有している。なお、終末呼気中の主要成分と同じ物質やこの成分と反応する物質を放出しない材質としては、他にも、フッ化ビニル樹脂(RVF)、ポリフッ化ビニリデン(P
)、ポリエステル、ポリエステル―アルミ蒸着、4フッ化エチレン―6フッ化プロピレン共重合体が挙げられる。しかし、これらの材質の呼気採取袋1では、採取した終末呼気中主要成分の7日経過後の濃度減衰が、20%より大きく、単調減少傾向である。なお、
図7(a)には、フッ化ビニル樹脂(RVF)製のシート材2で形成した呼気採取袋1に、上述の終末呼気中主要成分を入れて封止した場合の、各成分の7日間の濃度変化を示している。また、
図7(b)には、ポリエステル製のシート材2で形成した呼気採取袋1に、上述の終末呼気中主要成分を入れて封止した場合の、各成分の7日間の濃度変化を示している。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、フッ化ビニル樹脂(RVF)製やポリエステル製のシート材2で形成した呼気採取袋1では、採取した終末呼気中主要成分の7日経過後の濃度減衰が、20%より大きい。そのため、呼気採取袋1の材質としては、ビニルアルコール系ポリマーまたはリニアローデンシティポリエチレンを用いることが好適である。
【0034】
呼気採取袋1の形状についてさらに詳しく説明すると、呼気採取袋1は、
図1に示すように、外側に向けて直線的に突出した吹込み用突出部13と、外側に向けて直線的に突出した排出用突出部14とを備えている。吹込み用突出部13は、本体部10の一部で形成されており、排出用突出部14は、本体部10の他の一部で形成されている。そして、呼気採取袋1は、吹込み用突出部13の先端部に吹込み口11を有し、排出用突出部14の先端部に排出口12を有している。
【0035】
呼気採取袋1は、本体部10のうち、吹込み用突出部13及び排出用突出部14を除いた部分が、呼気が収納される呼気収納部15となっている。この呼気収納部15の容量が、100ml〜500ml程度となるように呼気採取袋1は形成されている。呼気収納部15、吹込み用突出部13及び排出用突出部14は、可撓性のシート材2によって形成されている。呼気収納部15と吹込み用突出部13とは連通しており、呼気収納部15と排出用突出部14とは連通している。吹込み用突出部13に吹込み口11を介して吹込み管3が抜き差しされ、排出用突出部14に排出口12を介して排出管4が抜き差しされる。
【0036】
本実施形態では、呼気採取袋1は、2枚の略同大同形のシート材2を重ね合わせて、重なり合う外縁同士を略全周に亘ってシールすることによって形成される。なお、図中のドット部分がシール箇所である。呼気採取袋1は、表裏が特に決められたものではないが、説明の便宜上、2枚のシート材2のうち、一方のシート材2を表側シート部20とし、他方のシート材2を裏側シート部21とする。なお、呼気採取袋1は、1枚のシート材2を折り重ねて略同大同形の表側シート部20と裏側シート部21を形成し、この表側シート部20と裏側シート部21とを重ね合わせて、重なり合う外縁同士を略全周に亘ってシールすることによって形成してもよい。
【0037】
表側シート部20は、平面視矩形状(本実施形態では一方に長い平面視長方形状)の本体シート部200と、この本体シート部200の外縁の一部から外側に向けて直線的に突出した吹込み用シート部22と、本体シート部200の外縁の他の一部から外側に向けて直線的に突出した排出用シート部24とで構成されている。吹込み用シート部22と排出用シート部24は、平面視矩形状(本実施形態では一方に長い平面視長方形状)に形成されている。
【0038】
平面視矩形状の本体シート部200は、四隅のうち1つの隅部から吹込み用シート部22が突出し、他の1つの隅部から排出用シート部24が突出している。本実施形態では、平面視矩形状の本体シート部200の対角線上に位置する2つの隅部に、吹込み用シート部22と排出用シート部24とを配している。吹込み用シート部22の突出方向と排出用シート部24の突出方向とは逆向きとなっている。吹込み用シート部22は、平面視矩形状の本体シート部200の1つの端辺(本実施形態では長辺)に沿って突出し、排出用シート部24は、前記端辺と平行の他の端辺に沿って突出している。なお、以下では、裏側シート部21と区別する場合、本体シート部200を表側本体シート部200とし、吹込み用シート部22を表側吹込み用シート部22とし、排出用シート部24を表側排出用シート部24として説明する。
【0039】
表側と同様に、裏側シート部21は、表側本体シート部200と同大同形の平面視矩形状(本実施形態では一方に長い平面視長方形状)の本体シート部210と、この本体シート部210の外縁の一部から外側に向けて直線的に突出した吹込み用シート部23と、本体シート部210の外縁の他の一部から外側に向けて直線的に突出した排出用シート部25とで構成されている。吹込み用シート部23は、表側吹込み用シート部22に対応するように平面視矩形状(本実施形態では一方に長い平面視長方形状)に形成されている。また、排出用シート部25は、表側排出用シート部24に対応するように平面視矩形状(本実施形態では一方に長い平面視長方形状)に形成されている。
【0040】
平面視矩形状の本体シート部210は、四隅のうち、表側吹込み用シート部22に対応する1つの隅部から吹込み用シート部23が突出し、表側排出用シート部24に対応する他の1つの隅部から排出用シート部25が突出している。本実施形態では、平面視矩形状の本体シート部210の対角線上に位置する2つの隅部に、表側吹込み用シート部22及び表側排出用シート部24に対応するように、吹込み用シート部23と排出用シート部25とを配している。なお、以下では、表側シート部20と区別する場合、本体シート部210を裏側本体シート部210とし、吹込み用シート部23を裏側吹込み用シート部23とし、排出用シート部25を裏側排出用シート部25として説明する。
【0041】
本体部10の呼気収納部15は、表側本体シート部200と裏側本体シート部210とを重ね合わせて、重なり合う外縁同士を、吹込み用シート部22、23と排出用シート部24、25に連続する箇所を除いて全周に亘ってシールすることで形成される。
【0042】
そして、吹込み用突出部13は、表側吹込み用シート部22と裏側吹込み用シート部23とを重ね合わせて、重なり合う両側端部同士をシールすることで形成される。このとき、表側吹込み用シート部22及び裏側吹込み用シート部23の両側端部間には、吹込み管3の径よりも僅かに広い未シール部分が形成され、この未シール部分が、吹込み管3を差し込んで呼気収納部15まで通すための差込用隙間S1となる。差込用隙間S1は、一直線状に形成されたものであり、呼気収納部15内に一端が連通し、他端が外部に開口可能な吹込み口11となっている。差込用隙間S1は、
図4に示すように、巾L1が例えば8.0mmであり、長さL2が例えば20.0mmである。
【0043】
ここで、裏側吹込み用シート部23は、吹込み口11の周縁の一部から外側に向けて突出した吹込み管ガイド部5を備えている。詳しくは、裏側吹込み用シート部23は、表側吹込み用シート部22よりも突出方向に長さL3だけ長く(本実施形態ではL3=5mm)形成されている。これにより、表側吹込み用シート部22の先端と、裏側吹込み用シート部23の先端よりも後方(呼気収納部15側)の箇所との間に吹込み口11が形成される。そして、裏側吹込み用シート部23のうち、先端から吹込み口11をなす箇所までの部分が、吹込み管3を吹込み口11に挿入するときにガイドとして機能する吹込み管ガイド部5となっている。
【0044】
吹込み側と同様に、排出用突出部14は、表側排出用シート部24と裏側排出用シート部25とを重ね合わせて、重なり合う両側端部同士をシールすることで形成される。このとき、表側排出用シート部24と裏側排出用シート部25の両側端部間には、排出管4の径よりも僅かに広い未シール部分が形成され、この未シール部分が、排出管4を差し込んで呼気収納部15まで通すことのできる差込用隙間S2となる。差込用隙間S2は、一直線状に形成されたものであり、呼気収納部15内に一端が連通し、他端が外部に開口可能な排出口12となっている。差込用隙間S2は、巾L4が例えば6.0mmであり、長さL5が例えば20.0mmである。
【0045】
裏側排出用シート部25は、排出口12の周縁の一部から外側に向けて突出した排出管ガイド部6を備えている。詳しくは、裏側排出用シート部25は、表側排出用シート部24よりも突出方向に長さL6だけ長く(本実施形態ではL6=5mm)形成されている。これにより、表側排出用シート部24の先端と、裏側排出用シート部25の先端よりも後方(呼気収納部15側)の箇所との間に排出口12が形成される。そして、裏側排出用シート部25のうち、先端から排出口12をなす箇所までの部分が、排出管4を排出口12に挿入するときにガイドとして機能する排出管ガイド部6となっている。
【0046】
本実施形態の呼気採取袋1では、表側シート部20の長手方向の全長L7が例えば190mmであり、表側シート部20の短手方向の全長L8が例えば120mmである。そして、裏側シート部21の長手方向の全長L9が例えば200mmであり、裏側シート部21の短手方向の全長L10が例えば120mmである。なお、本実施形態の呼気採取袋1は、上述した寸法のものであることが好ましいが、この寸法に限定されるものではない。
【0047】
以上のようにシールして形成した呼気採取袋1では、表側シート部20が、呼気収納部15、吹込み用突出部13、排出用突出部14、吹込み口11及び排出口12の表側を一体に有し、裏側シート部21が、呼気収納部15、吹込み用突出部13、排出用突出部14、吹込み口11及び排出口12の裏側を一体に有する。そして、この呼気採取袋1では、平面視略矩形状の本体部10の対角線上に位置する2つの隅部のうち、一方に吹込み用突出部13(つまりは、吹込み口11)が位置し、他方に排出用突出部14(つまりは、排出口12)が位置する。
【0048】
上述した本実施形態の呼気採取袋1では、呼気採取袋1の吹込み口11及び排出口12を、可撓性のシート材2で形成した袋状の本体部10の一部で形成している。そのため、本実施形態の呼気採取袋1では、吹込み口11及び排出口12を本体部10に取り付ける製造工程を省略できる。これにより、本実施形態の呼気採取袋1は、製造コストを抑えて簡単に製造することができる。
【0049】
また、本実施形態の呼気採取袋1では、本体部10の一部で、吹込み用突出部13及び排出用突出部14が形成されているため、呼気収納部15と吹込み用突出部13との間の部位や呼気収納部15と排出用突出部14との間の部位に、ピンホールや亀裂が生じるといった問題が発生しにくいものとなっている。
【0050】
また、呼気採取袋1は、略同大同形の表側シート部20と裏側シート部21とを重ね合わせ、この重ね合わせた外縁全周のうち、吹込み口11と排出口12とを除いた部分を一度にシールするだけで、簡単に製造することができる。そのため、呼気採取袋1は、安価であり、使い捨てしやすいものとなっている。
【0051】
また、本実施形態の呼気採取袋1は、呼気採取袋1を、吹込み管3及び排出管4を差し込んで使うものとしたことで、使用前の状態では、吹込み管3及び排出管4を備えない様態となって、嵩高となりにくくて収納しやすい。
【0052】
また、本実施形態の呼気採取袋1では、本体部10の一部を外側に向けて突出した吹込み用突出部13の先端部に吹込み口11を形成し、本体部10の他の一部を外側に向けて突出した排出用突出部14の先端部に排出口12を形成したことで、終末呼気が溜められる呼気収納部15から、吹込み口11及び排出口12を離して配置することができる。そのため、本実施形態の呼気採取袋1では、呼気収納部15に終末呼気を溜め、吹込み管3及び排出管4を抜いた状態で、吹込み口11及び排出口12を通じて、呼気収納部15から終末呼気が流出することや、呼気収納部15内に大気が流入することを抑制できる。
【0053】
また、本実施形態の呼気採取袋1では、吹込み用突出部13の先端部に吹込み管ガイド部5を設けたことで、吹込み口11に吹込み管3を差し込む際に、吹込み管3の先端を吹込み管ガイド部5に当てて、吹込み口11に差し込むことができる。これにより、本実施形態の呼気採取袋1では、吹込み管3の吹込み口11への差込が行い易いものとなっている。
【0054】
また、本実施形態の呼気採取袋1では、排出用突出部14の先端部に排出管ガイド部6を設けたことで、排出口12に排出管4を差し込む際に、排出管4の先端を排出管ガイド部6に当てて、排出口12に差し込むことができる。これにより、本実施形態の呼気採取袋1では、排出管4の排出口12への差込が行い易いものとなっている。
【0055】
また、本実施形態の呼気採取袋1では、平面視略矩形状の本体部10の対角線上に位置する2つの隅部のうち、一方に吹込み口11を配置し、他方に排出口12を配置している。そのため、本実施形態の呼気採取袋1では、吹込み口11から吹込んだ呼気は、呼気収納部15内を循環して排出口12へと流れ易く、呼気収納部15内に呼気の淀み箇所が出来にくい。これにより、本実施形態の呼気採取袋1は、初めに吹込んだ呼気(死腔にあった呼気)が淀み箇所に残りにくく、この初めに吹込んだ呼気が排出口12から排出しやすくて、終末呼気を呼気収納部15内に収納しやすいものとなっている。なお、仮に、呼気採取袋1の横並びの2つの隅部の中間部分に吹込み口11を形成した場合、吹込み口11から呼気を吹込む際に、この2つの隅部付近に呼気の淀み箇所が形成され、初めに吹込んだ呼気が排出口12から排出されにくいものとなってしまう。
【0056】
また、本実施形態の呼気採取袋1は、吹込み管3を差し込んで使う様態であるため、使用者の口に触れる吹込み管3は使い捨てし、呼気採取袋1は洗浄乾燥することによって再利用することもできる。ここで、呼気採取袋1の洗浄方法としては、例えば、50〜70℃に加温した乾燥機に呼気採取袋1を入れた状態で、吹込み口11または排出口12から高純度の窒素ガスを3時間導入する。これにより、呼気採取袋1に溜まっていた呼気中の水分を乾燥させ、呼気採取袋1の内壁に吸着したガスを窒素で置換することができ、再利用可能となる。なお、従来例の呼気採取容器のように容器本体に使用者の口を付ける筒状体を取り付けたものでは、再利用するためには、筒状体の滅菌処理が必要となり、非常にコスト高となる。
【0057】
終末呼気の採取に一般的に使用される市販のテドラーバッグ(材質は、フッ化ビニル樹脂(PVF))やポリエステル製のサンプリングバッグでは、採取した呼気成分がバッグ材質に吸着するため濃度減衰が大きいという問題があった。そのため、例えば病院で終末呼気を採取して、その終末呼気を分析装置のある場所まで輸送する間に、採取した呼気成分が濃度減衰してしまい、正確に呼気成分を測定できないことが多かった。しかし、本実施形態の呼気採取袋1は、材質をリニアローデンシティポリエチレンまたはビニルアルコール系ポリマーとすることによって、呼気成分測定の際に妨害要因となるガスが袋本体から発生しにくく、また、袋内に溜めた呼気が袋本体に吸着しにくいものとなっている。そのため、本実施形態の呼気採取袋1は、呼気採取袋1内の呼気成分の濃度が減衰しにくいものとなっている。これにより、本実施形態の呼気採取袋1は、市販のテドラーバッグやサンプリングバッグに比べて、呼気成分測定の際に呼気成分をより正確に測定することができる。また、本実施形態の呼気採取袋1は、終末呼気を採取してから7日程度経っても、呼気成分を正確に測定しやすいものとなっている。
【0058】
なお、上述した実施形態の呼気採取袋1は、呼気収納部15がマチ付きのものであってもよい。また、上述した実施形態の呼気採取袋1の平面視形状は、略矩形状であったが、円形や三角形や多角形やこれらに近い形状や、任意の曲線で構成された形状であってもよい。その場合、呼気採取袋1における吹込み口11及び排出口12の配置は、極力離して設けて、吹込み口11から排出口12へと吹込んだ呼気が流れ易くて、呼気収納部15内に呼気が淀む箇所が出来にくいようにすることが好ましい。
【0059】
続いて、本実施形態の呼気採取セット100の使用方法の一例について説明する。使用者は、
図2(a)に示すように、呼気採取袋1の吹込み口11から吹込み管3をその先端が呼気収納部15内に位置するまで差し込み、排出口12から排出管4をその先端が呼気収納部15内に位置するまで差し込む。なお、吹込み管3及び排出管4は、その先端が呼気収納部15の手前に位置するように差し込んでもよい。
【0060】
次いで、吹込み管3から呼気採取袋1内に呼気を息が切れるまで吹込む。このとき、呼気採取袋1は膨らみながら、最初に吹込んだ呼気(死腔にあった呼気)が排出管4から排出され、終末呼気が呼気収納部15内に残ることとなる。
【0061】
次いで、
図2(b)に示すように、呼気採取袋1から吹込み管3及び排出管4を引き抜く。このとき、吹込み用突出部13は手で挟むように押さえることで、重なり合った2つの吹込み用シート部22、23が呼気中の水分によって密着して、短時間の間であれば、差込用隙間S1を封止して、呼気採取袋1内の呼気が外に漏れ出さない状態で保管することができる。同様に、排出用突出部14は手で挟むように押さえることで、重なり合った2つの排出用シート部24、25が呼気中の水分によって密着して、短時間の間であれば、差込用隙間S2を封止して、呼気採取袋1内の呼気が外に漏れ出さない状態で保管することができる。つまり、本実施形態の呼気採取袋1は、呼気を最後まで吹込んだ後は、吹込み管3及び排出管4を引き抜くだけで簡易的に密封される状態とでき、非常に使い易いものとなっている。
【0062】
次いで、吹込み用突出部13において、2つの吹込み用シート部22、23を、例えば熱圧着させたり接着させたり密封用のクリップで挟むことで、差込用隙間S1を完全に封止する。熱圧着によって封止した場合、呼気採取袋1に圧力がかかっても内部の呼気が漏れ出し難く、輸送の際に非常に有効である。なお、吹込み用突出部13はシート材質で形成されているため、折り曲げることも可能であるので、水分で密着した吹込み用突出部13を例えば2段に折り曲げて、上からクリップで止めることによって、呼気採取袋1内の呼気が外に漏れ出すことをより確実に防止することができる。また、吹込み用突出部13を本体部10に折り重ねて、吹込み用突出部13を本体部10に接着テープ等で固定することによって、差込用隙間S1を完全に封止するようにしてもよい。吹込み用突出部13と同様の手段で、排出用突出部14においても、差込用隙間S2を完全に封止する。
【0063】
なお、本実施形態の呼気採取袋1では、上述のように吹込み管3から呼気採取袋1内に呼気を息が切れるまで吹込んだ際に、呼気採取袋1は、呼気収納部15が内側に収納した呼気(終末呼気)によって内側から加圧された状態となる。そのため、本実施形態の呼気採取袋1には、吹込み口11や排出口12を通じて外側から空気が入る心配がなく、吹込み用突出部13及び排出用突出部14に逆止弁が不要なものとなっている。
【0064】
また、本実施形態の呼気採取袋1は、呼気収納部15が内側に収納した呼気(終末呼気)によって内側から加圧され、吹込み管3及び排出管4が引き抜かれた直後に、
図5に示す様態となる。このとき、表側本体シート部200のシール部分201に隣接する箇所の未シール部分202と、裏側本体シート部210のシール部分211に隣接する箇所の未シール部分212とが互いに離れる方向に加圧される。これにより、呼気収納部15と吹込み用突出部13とが連通する箇所が封止される。また同様に、呼気収納部15と排出用突出部14とが連通する箇所が封止される。したがって、本実施形態の呼気採取袋1では、熱圧着させたり接着させたり密封用のクリップで挟んだりしなくても、呼気収納部15を内側から加圧する呼気(終末呼気)によって、吹込み用突出部13の差込用隙間S1と排出用突出部14の差込用隙間S2とを短時間であれば封止することができる。
【0065】
上述のようにして本実施形態の呼気採取セット100は、終末呼気を採取することができる。終末呼気を採取した呼気採取袋1は、検査装置のある場所(病院や検査所等)で、採取した終末呼気の成分を測定することができる。
【0066】
呼気採取袋1内の終末呼気は、例えば、注射器の針を差して吸引することで検査用に抜き取られる。ここで、注射器を用いて1つの呼気採取袋1から複数回終末呼気を抜き取る場合、注射器の針によって形成された針孔は、短時間であれば、セロハンテープ等を貼り付けることによって封止する。針孔は、長時間封止する場合には、熱圧着等によって潰す。
【0067】
注射器の他にも、吹込み用突出部13または排出用突出部14に、排出管4や吹込み管3と同じ径のテフロン(登録商標)チューブ等を差し込み、このテフロン(登録商標)チューブを介して終末呼気を呼気採取袋1から複数回抜き取るようにしてもよい。ここで、テフロン(登録商標)チューブは、終末呼気を抜き取る毎に、クリップで挟んで封止すればよい。また、コック付きのテフロン(登録商標)チューブを用いて、コックで封止するようにしてもよい。
【0068】
上述した本実施形態の呼気採取セット100の使用例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0069】
例えば、終末呼気中のアセトン濃度を分析することによって、糖尿病患者の状態管理や、ダイエットが必要な患者のダイエット管理や、運動負荷をかけた場合の脂肪燃焼モニターを行うことができる。また、飲酒後の終末呼気中のアルコール(エタノール)濃度とアセトアルデヒド濃度を分析することによって、アルコール代謝機能の評価を行うことができる。また、終末呼気中のイソプレンを分析することによって、脂質代謝モニターを行うことができる。また、終末呼気中の一酸化炭素(CO)を測定することによって、喫煙習慣の調査や、禁煙状況モニターを行うことができる。また、終末呼気中の水素(H
2)濃度を測定することによって、腸内細菌活動状況モニターを行うことができる。
【0070】
なお、呼気採取袋1は、
図1に示す形状のものに限定されない。
図8には、第二及び第三実施形態の呼気採取袋1を図示している。
【0071】
図8(a)に示す第二実施形態の呼気採取袋1では、平面視矩形状の呼気収納部15の対角線上に位置する2つの隅部より内側にずれた箇所から吹込み用突出部13と排出用突出部14がそれぞれ突出している。表側本体シート部200の短手方向の一端から差込用隙間S1までの距離L11は、例えば10mmである。また、表側本体シート部200の短手方向の他端から差込用隙間S2までの距離L12は、例えば10mmである。そして、差込用隙間S1の巾L1と差込用隙間S2の巾L4は、同じ巾となっており、例えば6mmである。第二実施形態の呼気採取袋1では、長さL2、長さL3、長さL5、長さL6、全長L7、全長L8全長L9及び全長L10は、第一実施形態の呼気採取袋1と同じである。なお、第二実施形態の呼気採取袋1は、上述した寸法のものであることが好ましいが、この寸法に限定されるものではない。
【0072】
また、
図8(b)に示す第三実施形態の呼気採取袋1では、平面視矩形状(一方に長い長方形状)の呼気収納部15の4つの端辺のうち1つの長辺の両端より内側にずれた箇所から、吹込み用突出部13と排出用突出部14がそれぞれ突出している。吹込み用突出部13と排出用突出部14は、この一つの長辺に一体に形成されている。吹込み用突出部13と排出用突出部14は、呼気収納部15の短辺の長手方向と平行に、同じ方向に向けて突出している。表側本体シート部200の長手方向の一端から差込用隙間S1までの距離L13は、例えば20mmである。また、表側本体シート部200の長手方向の他端から差込用隙間S2までの距離L14は、例えば20mmである。そして、差込用隙間S1の巾L1と差込用隙間S2の巾L4は、同じ巾となっており、例えば6mmである。差込用隙間S1の長さL2、及び差込用隙間S2の長さL5は、例えば30mmである。表側シート部20の長手方向の全長L7は、例えば160mmであり、表側シート部20の短手方向の全長L8は例えば135mmである。そして、裏側シート部21の長手方向の全長L9は例えば160mmであり、裏側シート部21の短手方向の全長L10は例えば140mmである。第三実施形態の呼気採取袋1では、長さL3及び長さL6は、第一実施形態の呼気採取袋1と同じである。なお、第三実施形態の呼気採取袋1は、上述した寸法のものであることが好ましいが、この寸法に限定されるものではない。
【0073】
なお、第二及び第三実施形態の呼気採取袋1においても、平面視矩形状の呼気収納部15の隅部に近い箇所に、吹込み用突出部13と排出用突出部14をそれぞれ設けているため、吹込み口11から吹込んだ呼気は、呼気収納部15内を循環して排出口12へと流れ易く、呼気収納部15内に呼気の淀み箇所が出来にくくなっている。これにより、第二及び第三実施形態の呼気採取袋1は、初めに吹込んだ呼気(死腔にあった呼気)が淀み箇所に残りにくく、この初めに吹込んだ呼気が排出口12から排出しやすくて、終末呼気を呼気収納部15内に収納しやすいものとなっている。
【0074】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。