(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
疎水性モノマーの含有量が、ポリエステル系トナー用結着樹脂中のアルコール成分とカルボン酸成分の合計量中、2モル%以上25モル%以下である、請求項1又は2記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
疎水性モノマーが、側鎖に炭素数6以上14以下のアルキル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は側鎖に炭素数6以上14以下のアルケニル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含む、請求項1〜3いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
カルボン酸成分が炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含む場合は該脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分中、炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含まない場合はカルボン酸成分中、テレフタル酸、イソフタル酸及びフランジカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸化合物の含有量が合計で90モル%以上である、請求項1〜4いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応の反応率が90%以上の時点で、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを除去する工程を有する、請求項1〜5いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル系トナー用結着樹脂であって、アルコール成分とカルボン酸成分の少なくともいずれかは、炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールと炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物から選ばれる1つ以上の疎水性モノマーを含有し、アルコール成分は、炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有し、得られるポリエステル系トナー用結着樹脂の数平均分子量が4000以上であり、軟化点が120℃以下である、ポリエステル系トナー用結着樹脂に関する。
【0014】
本発明のポリエステル系樹脂は、トナーの結着樹脂として、低温定着性と、高温高湿度下での保存性及び耐フィルミング性を両立することができるという優れた効果を奏する。このような本発明の効果が奏される理由は定かではないが、次のように考えられる。
【0015】
炭素数8以上16以下の脂肪族ジオール及び炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物は、炭素数の大きい脂肪族構造を有するため、疎水性が高く、得られるポリエステルを疎水化し、高湿度下の保存性を向上させることができると考えられる。
【0016】
さらに本発明では、疎水性が高く、かつ高分子量であっても炭素数の大きい脂肪族構造を有するモノマーの可塑効果により軟化点が低く制御されているため、軟化点が低くても、高温高湿度下での保存性及び耐フィルミング性が良好であり、低温定着性との両立が可能になったものと考えられる。
【0017】
このような本発明の結着樹脂は、例えば、アルコール成分として、リジッドな構造を有する第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを用い、アルコール成分を多く仕込むことにより得られる。これにより、重合初期にカルボン酸の酸基にアルコールが結合した低分子のエステルが生成し、その後、エステル交換反応が生じる。一般的にポリエステルは末端の重合の進行とともに、末端のカルボン酸とアルコールの数が減少するため、アルコールとカルボン酸のバランスが崩れると脱水反応による重合が進行しにくくなる。しかしながら、本発明では、末端アルコールの低分子エステルを生成させておくことで、末端基はアルコールの均一系となり、高分子量化している重合後期においても、アルコールとカルボン酸の末端基の比率に影響されることなく、エステル交換反応が生じるため、前記の疎水性モノマーも含め、高分子量化でき、耐フィルミング性が向上するものと考えられる。
【0018】
炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール等が挙げられる。
【0019】
炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールの炭素数は、トナーの高温高湿下での保存性を向上させる観点から、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、14以下が好ましく、12以下がより好ましく、11以下がさらに好ましい。
【0020】
また、炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有していることが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールであることが好ましい。
【0021】
炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物としては、スベリン酸(鎖状炭化水素基の炭素数:6)、アゼライン酸(鎖状炭化水素基の炭素数:7)、セバシン酸(鎖状炭化水素基の炭素数:8)、1,12−ドデカンジカルボン酸(鎖状炭化水素基の炭素数:10)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、トナーの高温高湿下での保存性を向上させる観点から、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましく、側鎖に炭素数6以上14以下、好ましくは7以上13以下のアルキル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物及び側鎖に炭素数、好ましくは7以上13以下のアルケニル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物がより好ましく、炭素数6以上14以下、好ましくは7以上13以下の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸化合物及び炭素数6以上14以下、好ましくは7以上13以下の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸化合物がさらに好ましい。なお、本発明において、カルボン酸化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、鎖状炭化水素基の炭素数には含めない。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、炭素数は、トナーの高温高湿下での保存性を向上させる観点から、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。また、トナーの耐フィルミング性を向上させる観点から、15以下が好ましく、14以下がより好ましい。
【0023】
炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールはアルコール成分として、炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物はカルボン酸成分として、それぞれ用いられるが、いずれか一方であってもよく、両者が用いられていてもよいが、トナーの高温高湿下での保存性を向上させる観点から、炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールと炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物から選ばれる1つ以上の疎水性モノマーは、炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物であることが好ましい。
【0024】
さらに、前記疎水性モノマーは、側鎖に炭素数6以上14以下、好ましくは7以上13以下のアルキル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は側鎖に炭素数6以上14以下、好ましくは7以上13以下のアルケニル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含むことが好ましく、炭素数6以上14以下、好ましくは7以上13以下の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸化合物及び/又は炭素数6以上14以下、好ましくは7以上13以下の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸化合物を含むことがより好ましい。
【0025】
炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、重縮合に供するアルコール成分中、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、4モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの耐フィルミング性を向上させる観点から、50モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
【0026】
炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、低温定着性及び高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性の観点から、重縮合に供するカルボン酸成分中、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性の観点から、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、15モル%以下がさらに好ましい。
【0027】
前記疎水性モノマーの含有量は、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、重縮合に供するアルコール成分とカルボン酸成分の合計量中、1モル%以上が好ましく、4モル%以上がより好ましい。また、トナーの耐フィルミング性を向上させる観点から、15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、6モル%以下がさらに好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。
【0028】
また、ポリエステル系トナー用結着樹脂中のアルコール成分とカルボン酸成分の合計量中の疎水性モノマーの含有量は、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、2モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、6モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの耐フィルミング性を向上させる観点から、25モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、7モル%以下がさらに好ましい。結着樹脂中の疎水性モノマーの含有量は、
1H-NMR(プロトン核磁気共鳴法)により測定することができる。
【0029】
アルコール成分は、炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有する。
【0030】
炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、炭素数は、3〜5であり、3〜4が好ましい。具体的な好適例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、なかでもトナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3−ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
【0031】
炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましく、アルコール成分が炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールを含む場合は該脂肪族アルコール以外のアルコール成分中、90モル%以上が好ましく、100モル%がより好ましい。
【0032】
なかでも、1,2-プロパンジオールの含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましく、アルコール成分が炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールを含む場合は該脂肪族アルコール以外のアルコール成分中、90モル%以上が好ましく、100モル%がより好ましい。
【0033】
炭素数8以上16以下の脂肪族ジオール及び第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の炭素数2〜7のα,ω−脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0034】
カルボン酸成分としては、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、フランジカルボン酸化合物、テレフタル酸化合物、及びイソフタル酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。
【0035】
フランジカルボン酸化合物としては、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、これらの酸の無水物、それらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0036】
前記芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、100モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。なお、カルボン酸成分が炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含む場合は該脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分中、炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含まない場合はカルボン酸成分中、90モル%以上が好ましく、100モル%がより好ましい。
【0037】
他のカルボン酸成分としては、炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物等が挙げられる。
【0038】
3価以上の多価カルボン酸化合物として、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0039】
本発明の結着樹脂は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、線形樹脂であることが好ましい。そのため、架橋剤として作用する3価以上の多価アルコールと3価以上の多価カルボン酸化合物の合計含有量は、アルコール成分とカルボン酸成分の合計量中、25モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0040】
重縮合に供するアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比率(アルコール成分/カルボン酸成分)は、高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性の観点から、1.6以上であり、2.0以上が好ましい。また、高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性の観点から、2.6以下であり、2.2以下が好ましい。
【0041】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0042】
本発明では、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応の反応率が90%以上、好ましくは95%以上の時点で、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを除去する工程を有することが好ましい。
【0043】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを除去する方法としては、減圧によって除去する方法や、窒素等の不活性ガスを流通させることによって除去する方法があり、保存性の観点から、減圧によって除去する方法が好ましい。
【0044】
減圧によって除去する方法における、圧力としては、2〜10kPaが好ましく、3〜8kPaがより好ましく、温度としては、200〜240℃が好ましく、210〜230℃がより好ましく、時間としては、3〜8時間が好ましい。
【0045】
本発明の結着樹脂の数平均分子量は、ポリスチレン換算で、トナーの高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性を向上させる観点から、4000以上であり、4500以上が好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、7000以下が好ましく、6500以下がより好ましく、6000以下がさらに好ましい。
【0046】
本発明の結着樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、120℃以下であり、115℃以下が好ましい。また、トナーの高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性を向上させる観点から、100℃以上が好ましい。
【0047】
本発明の結着樹脂のガラス転移温度は、トナーの高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性を向上させる観点から、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、70℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。
【0048】
本発明の結着樹脂の酸価は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましい。また、トナーの高温高湿下での保存性を向上させる観点から、10mgKOH/g以下が好ましく、6mgKOH/g以下がより好ましい。
【0049】
本発明の結着樹脂の水酸基価は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、10mgKOH/g以上が好ましい。また、トナーの高温高湿下での保存性を向上させる観点から、20mgKOH/g以下が好ましく、15mgKOH/g以下がより好ましい。
【0050】
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂とは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルを含む。変性されたポリエステルとしては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分と付加重合系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0051】
本発明の結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーは、低温定着性と、高温高湿度下での保存性及び耐フィルミング性を両立することができる。
【0052】
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結着樹脂以外の公知の樹脂が併用されていてもよいが、本発明のトナーは、トナーの高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性を向上させる観点から、軟化点が本発明の結着樹脂よりも高い樹脂を含有することが好ましい。
【0053】
軟化点が本発明の結着樹脂よりも高い樹脂の軟化点は、トナーの高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性を向上させる観点から、125℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい
【0054】
また、軟化点が本発明の結着樹脂よりも高い樹脂の軟化点は、トナーの高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性を向上させる観点から、本発明の結着樹脂よりも、10℃以上高いことが好ましく、20〜50℃高いことがより好ましく、30〜40℃高いことがさらに好ましい。
【0055】
これらの観点から、本発明のトナーは、本発明の結着樹脂に加えてさらに、軟化点が125℃以上であり、ポリエステル系トナー用結着樹脂より軟化点が10℃以上高い樹脂を含有することが好ましい。
【0056】
軟化点が本発明の結着樹脂よりも高い樹脂としては、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられるが、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、ポリエステルが好ましい。
【0057】
ポリエステルのアルコール成分は、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有していることが好ましい。
【0058】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、炭素数は、3〜7が好ましく、3〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。具体的な好適例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、なかでもトナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
【0059】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、実質的に100モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0060】
なかでも、1,2-プロパンジオールの含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、実質的に100モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0061】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の炭素数2〜7のα,ω−脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0062】
カルボン酸成分としては、トナーの低温定着性及び高温高湿下での保存性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。
【0063】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、これらの酸の無水物、それらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0064】
前記芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、実質的に100モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0065】
他のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物等が挙げられる。
【0066】
3価以上の多価カルボン酸化合物として、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0067】
3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、トナーの高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。
【0068】
本発明のトナーに含有される本発明の結着樹脂の含有量は、本発明のトナーに含有される全結着樹脂中、20〜80重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。
【0069】
また、軟化点が本発明の結着樹脂よりも高い樹脂の含有量は、本発明のトナーに含有される全結着樹脂中、80〜20重量%が好ましく、60〜40重量%がより好ましい。
【0070】
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、着色剤、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
【0071】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、40質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0072】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0074】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。
【0075】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0076】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0077】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製);サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製);銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
【0078】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0079】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0080】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましく、外添剤としては、無機微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛が挙げられ、シリカが好ましい。
【0081】
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0082】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0083】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
【0084】
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0085】
本発明のトナーの体積中位粒径(D
50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0086】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【0087】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のポリエステル系トナー用結着樹脂、その製造方法、該結着樹脂を含有した静電荷像現像用トナーを開示する。
【0088】
<1> アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合する、ポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法であって、
アルコール成分とカルボン酸成分の少なくともいずれかは、炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールと炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物から選ばれる1つ以上の疎水性モノマーを含有し、
アルコール成分は、炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有し、
重縮合に供するアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比率(アルコール成分/カルボン酸成分)が1.6以上2.6以下であり、
得られるポリエステル系トナー用結着樹脂の数平均分子量が4000以上であり、軟化点が120℃以下である、ポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0089】
<2> 得られるポリエステル系トナー用結着樹脂のガラス転移温度が55℃以上である、前記<1>記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0090】
<3> 得られるポリエステル系トナー用結着樹脂の酸価が10mgKOH/g以下である、前記<1>又は<2>記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0091】
<4> 得られるポリエステル系トナー用結着樹脂の水酸基価が20mgKOH/g以下である、前記<1>〜<3>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0092】
<5> 疎水性モノマーの含有量が、重縮合に供するアルコール成分とカルボン酸成分の合計量中、1モル%以上15モル%以下である、前記<1>〜<4>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0093】
<6> 疎水性モノマーの含有量が、ポリエステル系トナー用結着樹脂中のアルコール成分とカルボン酸成分の合計量中、2モル%以上25モル%以下である、前記<1>〜<5>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0094】
<7> 疎水性モノマーが、炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物である、前記<1>〜<6>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0095】
<8> 疎水性モノマーが、側鎖に炭素数6以上14以下のアルキル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は側鎖に炭素数6以上14以下のアルケニル基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含む、前記<1>〜<7>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0096】
<9> 疎水性モノマーが、炭素数6以上14以下の分岐アルキル基を有するアルキルコハク酸化合物及び/又は炭素数6以上14以下の分岐アルケニル基を有するアルケニルコハク酸化合物を含む、前記<1>〜<8>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0097】
<10> カルボン酸成分が炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含む場合は該脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分中、炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物を含まない場合はカルボン酸成分中、テレフタル酸、イソフタル酸及びフランジカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸化合物の含有量が合計で90モル%以上である、前記<1>〜<9>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0098】
<11> アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応の反応率が90%以上の時点で、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを除去する工程を有する、前記<1>〜<10>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0099】
<12> 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが、1,2-プロパンジオールである、前記<1>〜<11>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0100】
<13> 得られるポリエステル系トナー用結着樹脂が線形樹脂である、前記<1>〜<12>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂の製造方法。
【0101】
<14> アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル系トナー用結着樹脂であって、
アルコール成分とカルボン酸成分の少なくともいずれかは、炭素数8以上16以下の脂肪族ジオールと炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物から選ばれる1つ以上の疎水性モノマーを含有し、
アルコール成分は、炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有し、
得られるポリエステル系トナー用結着樹脂の数平均分子量が4000以上であり、軟化点が120℃以下である、ポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0102】
<15> 線形樹脂である、前記<14>記載のポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0103】
<16> ガラス転移温度が55℃以上である、前記<14>〜<15>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0104】
<17> 酸価が10mgKOH/gである、前記<14>〜<16>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0105】
<18> 水酸基価が20mgKOH/gである、前記<14>〜<17>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0106】
<19> 疎水性モノマーの含有量が、アルコール成分とカルボン酸成分の合計量中、2モル%以上15モル%以下である、前記<14>〜<18>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0107】
<20> 炭素数8以上16以下の鎖状炭化水素基を有する鎖状炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分のうち、テレフタル酸、イソフタル酸及びフランジカルボン酸から選ばれる1つ以上の含有量が合計で90モル%以上である、前記<14>〜<19>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0108】
<21> 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが、1,2-プロパンジオールである、前記<14>〜<20>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂。
【0109】
<22> 前記<14>〜<21>いずれか記載のポリエステル系トナー用結着樹脂を含有してなる静電荷像現像用トナー。
【0110】
<23> さらに、軟化点が125℃以上であり、ポリエステル系トナー用結着樹脂より軟化点が10℃以上高い樹脂を含有してなる、前記<22>記載の静電荷像現像用トナー。
【実施例】
【0111】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0112】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0113】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0114】
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。
【0115】
〔樹脂の数平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、試料をテトラヒドロフランに、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×10
2)、A-1000(1.01×10
3)、A-2500(2.63×10
3)、A-5000(5.97×10
3)、F-1(1.02×10
4)、F-2(1.81×10
4)、F-4(3.97×10
4)、F-10(9.64×10
4)、F-20(1.90×10
5)、F-40(4.27×10
5)、F-80(7.06×10
5)、F-128(1.09×10
6))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
【0116】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0117】
〔外添剤の平均粒子径〕
一次粒子の体積平均粒径を、平均粒子径として下記式より求める。
平均粒径(nm)=6/(ρ×比表面積(m
2/g))×1000
式中、ρは外添剤の真比重であり、例えば、シリカの真比重は2.2である。比表面積は、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。なお、上記式は、粒径Rの球と仮定して、
比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)
3×真比重
S(表面積)=4π(R/2)
2
から得られる式である。
【0118】
〔トナーの体積中位粒径(D
50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0119】
〔トナー用ポリエステル系結着樹脂の製造〕
実施例A1〜A10及び比較例A1
表1、2に示す原料モノマー(アルコール成分とカルボン酸成分)及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、5.3kPaにて原料モノマーのうちアルコール成分を留去しながら表1、2に記載の軟化点に達するまで反応を行い、ポリエステル(樹脂1〜11)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0120】
比較例A2及びA3
表2に示す原料モノマー(アルコール成分とカルボン酸成分)及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、13.3kPaにて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行い、ポリエステル(樹脂12、13)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0121】
比較例A4
表2に示す原料モノマーを用い、実施例A1と同様に製造を行ったが、アルコール成分を留去することが困難であり、得られた樹脂(樹脂14)は、分子量が低く、また、ガラス転移温度も低かった。その結果、固体の樹脂が得られなかった。
【0122】
製造例1
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー(アルコール成分とカルボン酸成分)及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、無水トリメリット酸を投入し、1時間常圧にて反応を行った後、13.3kPaにて表2に記載の軟化点に達するまで反応を行い、ポリエステル(樹脂15)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
〔静電荷像現像用トナーの製造〕
実施例B1〜B13及び比較例B1〜B3
表3に示す結着樹脂100質量部、着色剤「Regal 330R」(キャボット社製、カーボンブラック)5質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)1質量部、及び離型剤「三井ハイワックス NP055」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:125℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D
50)が8μmのトナー粒子を得た。
【0126】
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:HMDS、体積平均粒子径:30nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0127】
実施例B14及びB16
負帯電性荷電制御剤として、「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)の代わりに、「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部を使用し、離型剤として、「三井ハイワックス NP055」の代わりに、「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部を使用し、着色剤として、カーボンブラック「Regal 330R」の代わりに、実施例B14では、シアン顔料「Toner Cyan BG」(クラリアント社製、P.B.15:3)5質量部、実施例B16では、イエロー顔料「Paliotol Yellow D1155」(BASF社製、P.Y.185)6質量部を使用し、外添剤として「NAX-50」の代わりに、疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、体積平均粒径:16nm)1.0質量部を使用した以外は、実施例B1と同様にして、トナーを得た。
【0128】
実施例B15
負帯電性荷電制御剤として、「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)の代わりに、「LR-297」(日本カーリット社製)1質量部を使用し、離型剤として、「三井ハイワックス NP055」の代わりに、「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部を使用し、外添剤として「NAX-50」の代わりに、疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、体積平均粒径:16nm)1.0質量部を使用し、着色剤として、カーボンブラック「Regal 330R」の代わりに、マゼンタ顔料「スーパーマゼンタR」(大日本インキ化学工業社製、P.R.122)5質量部を使用した以外は、実施例B1と同様にして、トナーを得た。
【0129】
比較例B4
結着樹脂として、樹脂14 50質量部と樹脂15 50質量部を用いて、実施例B1と同様にしてトナーの製造を試みたが、結着樹脂が粉末とならず、トナーを製造することができなかった。
【0130】
試験例1〔トナーの低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、シャープ(株)製の紙[CopyBond SF-70NA(75g/m
2)]上に、未定着の状態で印刷物を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、各温度で前記未定着状態の印刷物の定着試験を行った。定着した画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど低温定着性が良好である。結果を表3に示す。
【0131】
試験例2〔トナーの高温高湿下での保存性〕
20mL容の容器(直径約3cm)にトナー4gを入れ、温度55℃、湿度60%の環境下で48時間放置した。12時間毎に60時間までトナー凝集の発生程度を目視にて観察した。凝集の発生が認められた時点の時間の値が大きいほど高温高湿下での保存性が良好である。結果を表3に示す。なお、表中「>60」は60時間後も凝集は認められないことを示す。
【0132】
試験例3〔耐フィルミング性〕
非磁性一成分現像装置「MICROLINE 3010cW」(沖データ社製、A4 14枚/分)を用い、印字面積比率4%の文字画像を4000枚(A4用紙)印字し、1000枚印字毎に、感光体へのフィルミング発生の有無を目視で確認した。フィルミングが発生した時点の枚数の値が大きいほど耐フィルミング性が良好である。結果を表3に示す。なお、表中「>4000」は4000枚印字でも、フィルミングは発生しないことを示す。
【0133】
【表3】
【0134】
以上の結果より、実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、低温定着性、高温高湿下での保存性及び耐フィルミング性のいずれにも優れていることがわかる。