(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
担体にPd化合物を担持させてなるPd化合物担持触媒であって、Pd化合物がヨウ素を含有する、β水素原子を有するカルボン酸、又は、β水素原子を有するカルボン酸誘導体の脱カルボニル反応によるオレフィン製造に用いられるPd化合物担持触媒。
担体にPd化合物を担持させてなるPd化合物担持触媒であって、Pd化合物がヨウ素を含有する、有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化合物の分子間または分子内炭素−炭素結合形成に用いられるPd化合物担持触媒。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[Pd化合物担持触媒]
本発明のPd化合物担持触媒は、Pd化合物がヨウ素を含有するPd化合物担持触媒であって、XPS装置により、下記条件にて測定することによって得られるPd化合物のPd 3d
5/2 結合エネルギーが336[eV]〜338[eV]である。
【0009】
本発明者らは、ヨウ素を含有する二価のPd化合物の存在が、触媒活性に大きく寄与することを見出した。好ましいヨウ素を含有するPd化合物としては、ヨウ素を含有する無機Pd化合物、有機Pd化合物が挙げられる。ヨウ素を含有する無機Pd化合物としては、PdI
2、PdI
2(CO)
2、X
2PdI
4(X=H,Na,K,Li)等が挙げられる。ヨウ素を含有する有機Pd化合物としては、R
2PdI
2(ここでRは炭素数1〜6の炭化水素基、ピリジン、PR’
3、NR’
3(ここでR’は炭素数1〜6の炭化水素基である)である)、 PdR”
n(ここでR”はR又はR’の水素原子の1つ又は2つ以上がヨウ素原子に置換された基である)等が挙げられる。PdR”
nで表されるPd化合物としては、例えばPd(p-PhI)
2等が挙げられる。安定性及び触媒としての活性の観点から無機Pd化合物が好ましく、PdI
2がより好ましい。
【0010】
本発明の触媒中の、ヨウ素を含有する二価のPd化合物の存在は、XPS装置により、下記条件にて測定することにより決定される。XPSのPd 3d
5/2 結合エネルギーのピーク位置により、ヨウ素を含有する二価のPd化合物の存在を識別できる。またX線結晶回折測定装置により、下記条件にて測定することで、ヨウ素を含有する二価のPd化合物の存在を識別することも可能である。但しその場合は、Pdの粒径や担体種によっては見えないこともある。
【0011】
〈XPS測定条件〉
PHI Quantera SXM (ULVAC−PHI,INC)
Pass energy;112eV、step size;0.2eV、積算40回
測定範囲 X;500μm、Y;500μm
PdI
2(和光純薬工業(株)製)
Pd 3d
5/2 結合エネルギー:337[eV]
PdI
2(和光純薬工業(株)製)、280℃焼成品
Pd 3d
5/2 結合エネルギー:336[eV]
Pd金属(和光純薬工業(株)製)
Pd 3d
5/2 結合エネルギー:335[eV]
【0012】
ヨウ素を含有するPd化合物担持触媒のXPS装置により測定される、Pd 3d
5/2 結合エネルギーは、結晶構造、粒子径、担体種などにより、若干値が変わることがある。その場合、上述のようにPd 3d
5/2 結合エネルギーが:336[eV]〜338[eV]が好ましい。
【0013】
〈X線結晶回折測定条件〉
リガク製RINT2500VPCにて測定
線源;CuのKα線、管電圧;40kV;管電流;120mA、走査速度;10deg/min、発散スリット;1.0deg、散乱スリット;1.0deg、受光スリット;0.3mm、走査角度;5〜70deg
PdI
2(和光純薬工業(株)製)
2θ=13、24〜28、31〜35[°]
PdI
2(和光純薬工業(株)製)、280℃焼成品
2θ=17、30、33〜34[°]
Pd金属(和光純薬工業(株)製)
2θ=40、45〜47、68[°]
【0014】
ヨウ素を含有するPd化合物担持触媒の担持量が10質量%以下の場合やPd化合物の結晶粒子径が50nm以下の場合は、上記ピークの一つ以上が見られないこともある。
【0015】
ヨウ素を含有するPd化合物担持触媒の、ヨウ素原子とパラジウム原子の組成比は、XPS装置により測定される、Pd 3d
5/2 結合エネルギーが336[eV]〜338[eV]の範囲にあればよく、触媒の活性点数の関係などから、XPS装置により測定される、ヨウ素原子とパラジウム原子のモル比が0.2〜10が好ましく、1〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。
[担体の詳細]
【0016】
本発明の触媒に用いる担体としては、ヨウ素を含有するPd化合物を担持する担体は、150℃以上の耐熱性を有し、有機溶媒及び反応原料に溶解せず、Pd化合物を高分散担持できる物質が好ましい。係る担体としては、オレフィン収率の観点から、酸化物又は活性炭が好ましい。酸化物としては、珪藻土、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニア、セリアあるいはそれらの複合酸化物が好ましく、シリカ、ジルコニア、チタニアがより好ましく、ジルコニア、チタニアが更に好ましく、ジルコニアが更により好ましい。活性炭としては、木質系、ヤシガラ系、泥炭系、石炭系等の原料を、水蒸気、二酸化炭素等のガスを用いる物理方法、又は、塩化亜鉛、リン酸等を用いる化学法等によって賦活化されたものが好適に用いられる。
【0017】
担体の形態には特に制限はなく、例えば微粉末、粗粒子、ペレットなど、任意の物理的形態をとり得る。担体の比表面積は30〜3000m
2/g程度であればよい。担体が細孔を有する場合、その細孔容積、平均細孔径や分布は任意であるが、平均細孔径は1〜100nm程度が好ましい。本発明のヨウ素を含有するPd化合物の担体上への担持量に特に制限はないが、反応活性の観点から、担体に対して好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、Pd化合物の高分散担持の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下であり、反応活性の観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上である。
【0018】
ヨウ素を含有するPd化合物担持触媒は、Pd化合物の担体への分散性や結晶の安定性などの観点から、ヨウ素を含有しないPd化合物が溶解され、担体が分散された溶媒中に、ヨウ素化合物を添加することで得られるPd化合物担持触媒、または、ヨウ素化合物が溶解され、担体が分散された溶媒中に、ヨウ素を含有しないPd化合物を添加することで得られるPd化合物担持触媒が好ましい。
【0019】
[触媒の製造方法]
本発明のPd化合物担持触媒の製造方法は、特に限定されないが、Pd化合物が水や有機溶媒に難溶性であることから、担体の存在下、ヨウ素を含有しない可溶性Pd化合物と可溶性ヨウ素化合物を混合し、沈殿法によりPd化合物担持触媒を製造する方法が好ましい。
【0020】
ヨウ素を含有しない可溶性Pd化合物としては、特に限定されないが、酢酸パラジウム、臭化パラジウム、塩化パラジウム、シアン化パラジウム、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロジアミノパラジウム、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム酸ナトリウム 、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム、ジブロモビス(アセトニトリル)パラジウム、ジブロモジアミノパラジウム、ジブロモ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム、ヘキサブロモパラジウム酸ナトリウム、ヘキサブロモパラジウム酸カリウム、テトラブロモパラジウム酸ナトリウム、テトラブロモパラジウム酸カリウム、アセチルアセトンパラジウム、テトラアミン硝酸パラジウム、テトラキスアセトニトリルパラジウムテトラフルオロボラン、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ジアミン硝酸パラジウムなどが挙げられる。
【0021】
上記の中でも容易に高収率で担持触媒を得る観点から、酢酸パラジウム、臭化パラジウム、塩化パラジウム、シアン化パラジウム、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウムが好ましく、酢酸パラジウム、臭化パラジウム、塩化パラジウム、シアン化パラジウムがより好ましく、酢酸パラジウムが更に好ましい。
【0022】
可溶性ヨウ素化合物としては、特に限定されるものではないが、第1族元素〜第14族元素から選ばれる元素のヨウ化物、又は下記一般式(1)で示される4級アンモニウム化合物が挙げられる。
[R
1−(Y)
n]
4N
+I
- (1)
(ここで、R
1は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、Yは−Z−(CH
2)
m−で示される基を示し、Zはエーテル基、イミノ基、アミド基又はエステル基、より具体的には−O−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−COO−又は−OCO−、mは1〜6の数を示し、nは0又は1を示し、複数個のR
1、Y及びnはそれぞれ同一でも異なっていても良い。また、[R
1−(Y)
n]同士の間で環状構造を形成していてもよい。)
【0023】
第1族元素〜第14族元素から選ばれる元素のヨウ化物としては、特に限定されるものではないが、触媒活性の観点から、第1族元素、第11族元素及び第12族元素から選ばれる元素のヨウ化物が好ましい。具体的にはKI、CuI、LiI、NaI、ZnI
2等を挙げることができ、KI、NaIが好ましく、KIがより好ましい。
【0024】
一般式(1)で示される4級アンモニウム化合物としては、容易に高収率で担持触媒を得る観点から、R
1が炭素数1〜7のアルキル基、又はベンジル基(好ましくは炭素数1〜7のアルキル基)であって、nが0である4級アンモニウム化合物が好ましく、Et
4N
+I
-、(n−Butyl)
4N
+I
-(ここでEtはエチル基、n−Butylはn−ブチル基を示す)等がより好ましく、特にEt
4N
+I
-が好ましい。
【0025】
触媒調製に用いる溶媒は、特に限定されず、上記した可溶性ヨウ素化合物及び可溶性Pd化合物を溶解させるものであればなんでも良いが、一般的には、水、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
【0026】
上記のような方法で調製された触媒は、触媒上に付着した溶媒を留去できれば特に問題ないが、触媒の安定性の観点から、30〜350℃で24時間乾燥することが好ましく、30℃〜250℃で24時間乾燥することがより好ましく、70〜200℃で24時間乾燥することがさらに好ましい。また、乾燥は不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0027】
本発明のPd化合物担持触媒は、固体触媒、すなわち反応系に不溶な状態で用いることが好ましい。触媒回収の容易さの観点から、N−複素環カルベン系配位子、2,2−ビピリジルやピリジン等のピリジン系配位子、含酸素系配位子、有機リン系配位子等の触媒を溶解させる配位子を含まないことが好ましい。
【0028】
[オレフィンの製造方法]
本発明のPd化合物担持触媒は、脂肪酸又はその誘導体からのオレフィンの製造方法に好適に用いられる。このオレフィン製造方法は、β水素原子を有するカルボン酸又はその誘導体を原料とし、本発明の触媒を用いて脱カルボニル化を行なう方法である。
【0029】
本発明に用いられるβ水素原子を有するカルボン酸またはその誘導体は、カルボニル基のβ位に少なくとも1つの水素原子を有するものであれば特に限定されず、飽和体でも不飽和体でも、一部環状になったものでも、ヘテロ原子を含むものでも、カルボニル基を複数有するものでもよいが、オレフィン収率の観点から、飽和1価カルボン酸またはその誘導体が好ましい。β水素原子を有するカルボン酸誘導体としては、β水素原子を有するカルボン酸無水物、β水素原子を有するカルボン酸ハロゲン化物、β水素原子を有するカルボン酸エステル、β水素原子を有するカルボン酸アミドが挙げられ、オレフィン収率の観点から、β水素原子を有するカルボン酸又はβ水素原子を有するカルボン酸無水物が好ましく、β水素原子を有するカルボン酸無水物がより好ましい。
【0030】
β水素原子を有するカルボン酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等が挙げられる。
【0031】
β水素原子を有するカルボン酸無水物の具体例としては、カプロン酸無水物、カプリル酸無水物、カプリン酸無水物、ラウリン酸無水物、ミリスチン酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリン酸無水物、ベヘン酸無水物、3−フェニルプロピオン酸無水物、アジピン酸無水物、アゼライン酸無水物、エイコサン酸無水物、9−デセン酸無水物、10−ウンデセン酸無水物、オレイン酸無水物、2,4−ヘキサジエン酸無水物、3−メチルブタン酸無水物、6−オクタデシン酸無水物、ヒドノカルピン酸無水物、ゴルリン酸無水物、リシノール酸無水物、コハク酸無水物等、あるいはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸と上記β水素原子を有するカルボン酸の具体例で挙げられたカルボン酸とが縮合した無水物、又は、上記β水素原子を有するカルボン酸の具体例で挙げられたカルボン酸において、異なるカルボン酸同士が縮合したカルボン酸無水物が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられるβ水素原子を有するカルボン酸無水物の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えばカルボン酸を塩化チオニルや塩化ホスホニル、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、塩化アセチル等で脱水する方法、カルボン酸ハロゲン化物とカルボン酸アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを反応させる方法、アルデヒドを酸化する方法等が挙げられ、カルボン酸ハロゲン化物とカルボン酸アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを反応させる方法、カルボン酸を無水酢酸で脱水する方法が好ましい。
【0033】
β水素原子を有するカルボン酸ハロゲン化物の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等の塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物が挙げられる。
【0034】
β水素原子を有するカルボン酸エステルの具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等のアルキルエステル、例えばメチルエステル、エチルエステル等が挙げられる。
【0035】
β水素原子を有するカルボン酸アミドの具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、3−フェニルプロピオン酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、2,4−ヘキサジエン酸、3−メチルブタン酸、6−オクタデシン酸、ヒドノカルピン酸、ゴルリン酸、リシノール酸等のアミド又は置換アミド、例えばモノメチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等が挙げられる。
【0036】
β水素原子を有するカルボン酸またはその誘導体としては、オレフィン収率の観点から、カルボン酸またはカルボン酸残基の炭素数(カルボン酸無水物の場合は少なくとも1つのカルボン酸残基の炭素数)が3以上のものが好ましく、8以上のものがより好ましく、12以上のものが更に好ましい。またオレフィン収率の観点から、22以下のものが好ましく、20以下のものがより好ましく、18以下のものが更に好ましい。なお、不飽和カルボン酸またはその誘導体を原料に用いた場合は、原料よりも二重結合の数が1つ多いオレフィンとなる。
【0037】
本発明のPd化合物担持触媒を用いた脂肪酸又はその誘導体からのオレフィンの製造方法において、Pd化合物担持触媒の使用量は、反応条件に応じて適宜定められるが、オレフィンを高収率で得る観点、及び、経済性の観点から、β水素原子を有するカルボン酸またはその誘導体1モルに対し、パラジウム化合物として0.00001モル以上が好ましく、0.0001モル以上がより好ましく、0.001モル以上がさらに好ましく、0.005モル以上が更に好ましい。またオレフィンを高収率で得る観点、及び、経済性の観点から、0.5モル以下が好ましく、0.1モル以下がより好ましく、0.05モル以下がさらに好ましく、0.03モル以下が更に好ましい。
【0038】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて脂肪酸又はその誘導体からオレフィンを製造する脱カルボニル反応の温度は、活性及び安定性を向上させる観点から、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。また活性及び安定性を向上させる観点から、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。本発明の触媒は好ましくは配位子を用いないため、高温での使用も可能である。
【0039】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて脂肪酸又はその誘導体からオレフィンを製造する場合、反応の圧力は、脂肪酸又はその誘導体が高選択的に、且つ速い反応速度で目的とするオレフィンに変換されれば特に制限されるものではなく、減圧下から加圧下の広い圧力範囲で行うことができるが、良好な反応速度を得る観点から、200kPa(絶対圧)以下であることが好ましく、160kPa(絶対圧)以下がより好ましく、110kPa(絶対圧)以下が更に好ましい。また良好な反応速度を得る観点から、10kPa(絶対圧)以上がより好ましく、20kPa(絶対圧)以上が更に好ましい。
【0040】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて脂肪酸又はその誘導体からオレフィンを製造する場合、脱カルボニル反応は、不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性ガスとしては、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。不活性ガスは反応容器中を流通させてもよく、また反応容器内をこれらのガスで置換した後、密閉して反応を行ってもよい。
【0041】
脂肪酸又はその誘導体から目的とするオレフィンへの変換は、反応後の溶液を
1H−NMRやガスクロマトグラフィーで分析することにより確認することができる。本発明のPd化合物担持触媒を用いたオレフィンの製造方法においては、溶媒、酸化防止剤、助触媒成分等の他の成分があってもよい。
【0042】
本発明の方法により得られるオレフィンとしては、末端に二重結合を持つ構造のみでなく、それらから異性化した内部に二重結合を持つ内部オレフィンであってもよい。反応で生成したオレフィンは通常の後処理により精製・単離して取り出すことができる。
【0043】
[炭素−炭素結合形成方法1]
本発明のPd化合物担持触媒は、1種類以上の有機化合物の分子間又は分子内炭素−炭素結合形成反応に好適に用いられる。例えば、有機ホウ素化合物からボロン酸を含む官能基が脱離した有機残基と、有機ハロゲン化合物からハロゲンを含む官能基が脱離した有機残基との間に、炭素−炭素結合を形成する反応が挙げられる。
【0044】
上記有機ホウ素化合物は、反応収率の観点から、下記一般式(2)
R
2−B(OH)
2 (2)
(式中、R
2は、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換若しくは無置換のフェニル基、ベンジル基、フリル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピリジル基、ピリミジル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、インダニル基、インデニル基、ジベンゾフラニル基またはメチレンジオキシフェニル基を表し、これらの基は1個又はそれ以上の置換基を有してもよい。)で表されるものが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換若しくは無置換のフェニル基又はベンジル基がより好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基がさらに好ましい。置換基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピロキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、n−ヘキシロキシ基等の炭素原子数1〜6のアルコキシ基;ベンジル基;9−フルオレニルメトキシカルボニル基;ブトキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基;ニトロ基;またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などが挙げられ、好ましくは、炭素原子数1〜3のアルキル基、メトキシ基、ベンジル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ニトロ基またはフッ素原子である。
【0045】
上記有機ハロゲン化合物は、下記一般式(3)
R
3−X (3)
(式中、R
3は、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換若しくは無置換のフェニル基、ベンジル基、フリル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピリジル基、ピリミジル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、インダニル基、インデニル基、ジベンゾフラニル基またはメチレンジオキシフェニル基を表し、これらの基は1個又はそれ以上の置換基を有してもよい。)で表されるものが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換若しくは無置換のフェニル基又はベンジル基がより好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基がさらに好ましい。置換基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピロキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、n−ヘキシロキシ基等の炭素原子数1〜6のアルコキシ基;ベンジル基;9−フルオレニルメトキシカルボニル基;ブトキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基;ニトロ基;またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などが挙げられ、好ましくは、炭素原子数1〜3のアルキル基、メトキシ基、ベンジル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ニトロ基またはフッ素原子である。Xは、ヨウ素原子、臭素原子、又は塩素原子が好ましく、ヨウ素原子がより好ましい。
【0046】
本発明のPd化合物担持触媒を用いた炭素−炭素結合形成方法1において、Pd化合物担持触媒の使用量は、反応収率の観点から、有機ハロゲン化合物1モルに対し、パラジウム化合物として0.000001モル以上が好ましく、0.00001モル以上がより好ましく、0.0001モル以上がさらに好ましく、0.001モル以上が特に好ましい。また反応収率の観点から、0.2モル以下が好ましく、0.05モル以下がより好ましく、0.01モル以下がさらに好ましく、0.003モル以下が特に好ましい。
【0047】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて炭素−炭素結合形成方法1を行う温度は、活性を向上させる観点から、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。また活性を向上させる観点から、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
【0048】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて上記のように炭素−炭素結合を形成する場合、反応の圧力は特に制限されるものではなく、減圧下から加圧下の広い圧力範囲で行うことができる。
【0049】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて上記のように炭素−炭素結合を形成する反応は、不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。不活性ガスは反応容器中を流通させてもよく、また反応容器内をこれらのガスで置換した後、密閉して反応を行ってもよい。反応はバッチ反応でも連続反応でも行うことができる。
【0050】
目的とする炭素−炭素結合の形成は、反応後の溶液を例えばガスクロマトグラフィーで分析することにより確認することができる。本発明のPd化合物担持触媒を用いた炭素−炭素結合形成においては、溶媒、酸化防止剤、助触媒成分等の他の成分があってもよい。
【0051】
反応生成物は常法により精製して取り出すことができる。例えば、吸着、水洗、蒸留等の通常の後処理により精製・単離して取り出すことができる。
【0052】
[炭素−炭素結合形成方法2]
本発明のPd化合物担持触媒は、オレフィン化合物から二重結合の末端Hが一つ脱離した有機残基と、有機ハロゲン化合物からハロゲンを含む官能基が脱離した有機残基との間に、炭素−炭素結合を形成する反応にも有用である。
【0053】
上記オレフィン化合物は、反応収率の観点から、下記一般式(4)
R
4−CH=CH
2 (4)
(式中、R
4は、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換若しくは無置換のフェニル基、ベンジル基、フリル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピリジル基、ピリミジル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、インダニル基、インデニル基、ジベンゾフラニル基またはメチレンジオキシフェニル基を表し、これらの基は1個又はそれ以上の置換基を有してもよい。)で表されるものが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換若しくは無置換のフェニル基又はベンジル基がより好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基がさらに好ましい。置換基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピロキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、n−ヘキシロキシ基等の炭素原子数1〜6のアルコキシ基;ベンジル基;9−フルオレニルメトキシカルボニル基;ブトキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基;ニトロ基;またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などが挙げられ、好ましくは、炭素原子数1〜3のアルキル基、メトキシ基、ベンジル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ニトロ基またはフッ素原子である。
【0054】
上記有機ハロゲン化合物は、反応性の観点から、前記一般式(3)が好ましい。
【0055】
本発明のPd化合物担持触媒を用いた炭素−炭素結合形成方法2において、Pd化合物担持触媒の使用量は、反応収率の観点から、有機ハロゲン化合物1モルに対し、パラジウム化合物として0.000001モル以上が好ましく、0.00001モル以上がより好ましく、0.0001モル以上がさらに好ましく、0.01モル以上が更により好ましい。また反応収率の観点から、0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下がより好ましく、0.05モル以下がさらに好ましく、0.02モル以下が更により好ましい。
【0056】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて炭素−炭素結合形成方法2を行う温度は、活性を向上させる観点から、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。また活性を向上させる観点から、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましい。
【0057】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて上記のように炭素−炭素結合を形成する場合、反応の圧力は特に制限されるものではなく、減圧下から加圧下の広い圧力範囲で行うことができる。
【0058】
本発明のPd化合物担持触媒を用いて上記のように炭素−炭素結合を形成する反応は、不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。不活性ガスは反応容器中を流通させてもよく、また反応容器内をこれらのガスで置換した後、密閉して反応を行ってもよい。反応はバッチ反応でも連続反応でも行うことができる。
【0059】
目的とする炭素−炭素結合の形成は、反応後の溶液を例えばガスクロマトグラフィーで分析することにより確認することができる。本発明のPd化合物担持触媒を用いた炭素−炭素結合形成においては、溶媒、酸化防止剤、助触媒成分等の他の成分があってもよい。
【0060】
反応生成物は常法により精製して取り出すことができる。例えば、吸着、水洗、蒸留等の通常の後処理により精製・単離して取り出すことができる。
【実施例】
【0061】
実施例1
(触媒の調製)
Pd(OAc)
2(和光純薬工業(株)製))0.34g(1.5mmol)をメタノール(キシダ化学(株)製)(85.0g)に溶かした後、担体としてSiO
2(富士シリシア化学(株)製CARiACT Q-50)(10.8g)を加え、0.5時間攪拌した。次に予め調製しておいた1質量%KI メタノール溶液(KIはSIGMA ALDRICH(株)製、メタノールはキシダ化学(株)製))を0.5時間かけて52.0g(KIとして3.15mmol)滴下した。4時間室温で攪拌した後、0.2μmテフロン製メンブランフィルターでろ過した。得られた固体をメタノール及びイオン交換水で十分洗浄した後、窒素雰囲気下、110℃、20kPaで1日乾燥した。得られたPd化合物担持触媒は、Pd化合物と担体の質量比がPdI
2/SiO
2=5/100であった。
【0062】
得られた触媒は、XPS測定(PHI Quantra SXM (ULVAC−PI.INC))より、Pd 3d
5/2 結合エネルギーが337[eV]であり、ヨウ素原子とパラジウム原子のモル比がI/Pd=2であった。
X線結晶回折(以下、XRDと略記する)(リガク製、RINT2500VPC)測定より、2θ=17、30、34[°]であった。
【0063】
(オレフィンの製造)
50mLナス型フラスコに攪拌子と、ステアリン酸無水物(東京化成工業(株)製)4.13g(7.5mmol)、上記で調製した5質量%PdI
2/SiO
2 1.44g(PdI
2として0.19mmol)を加え、窒素置換した後、30kPaを維持しながら、225℃で攪拌を行った。2時間後、加熱をやめ、内部標準としてアニソール33.3mgを加え、
1H−NMR(バリアン社製,MERCURY400)測定を行った。末端オレフィンのビニルプロトン、内部オレフィンのビニルプロトン、及び内部標準であるアニソールのメチル基の積分比を比較することにより求めた原料及び生成物の定量値に基づいて、原料転化率、オレフィン選択率及びオレフィン収率を算出した。ステアリン酸無水物の転化率は43モル%であり、仕込みステアリン酸無水物に対してオレフィンが収率25モル%で得られた。
【0064】
実施例2〜4、比較例1
触媒の種類を表1に示す触媒に変えた以外は実施例1と同様に触媒を調製し、オレフィンを製造して測定を行った(ZrO
2(第一稀元素化学工業(株)製RC−100)、TiO
2(堺化学工業(株)製SSP−M)、C(Norit(株)製CASP))。
【0065】
得られた触媒は、XPS測定(PHI Quantra SXM (ULVAC−PI.INC))より、Pd 3d
5/2結合エネルギー及びヨウ素原子とパラジウム原子のモル比がZrO
2 (337[eV]、I/Pd=2)、TiO
2(337[eV]、I/Pd=2)、C(
337[eV]、I/Pd=2)であった。
【0066】
実施例1〜4及び比較例1の結果を併せて表1に示す。なお比較例1のPdI
2はPdI
2(和光純薬工業(株)製)をそのまま触媒として使用した。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例5
(触媒の調製)
Pd(OAc)
2(和光純薬工業(株)製)0.34g(1.5mmol)をメタノール(キシダ化学(株)製)(85.0g)に溶かした後、担体としてC(Norit(株)製CASP)(10.8g)を加え、0.5時間攪拌した。次に予め調製しておいた1質量%KI メタノール溶液(KIはSIGMA ALDRICH(株)製、メタノールはキシダ化学(株)製))を0.5時間かけて52.0g(KIとして3.15mmol)滴下した。4時間室温で攪拌した後、0.2μmテフロン製メンブランフィルターでろ過した。得られた固体をメタノール及びイオン交換水で十分洗浄した後、窒素雰囲気下、110℃、20kPaで1日乾燥した。得られた触媒は質量比PdI
2/C=5/100のものである。
【0069】
(オレフィンの製造)
50mLナス型フラスコに攪拌子と、ステアリン酸(花王(株)製,LUNAC S98)4.27g(15.0mmol)、上記で調製した5質量%PdI
2/C 1.42g(PdI
2として0.185mmol)、内部標準用にスクアラン(SIGMA ALDRICH社製)0.63g(1.5mmol)を加え、窒素置換した後、30kPaを維持しながら、280℃で攪拌を行った。2時間後、加熱をやめ、反応終了溶液をガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0070】
<ガスクロマトグラフィー>
ガスクロマトグラフィーはAgilent社製「HP6890」及びFronteerLAB製「Ultra−Alloy−1(0.25mmφ*30m×0.15μm-thickness)」を用い、下記の条件で測定した。
昇温条件 ;60℃で2分保持後、1分間に10℃の速度で60℃から350℃まで昇温し、350℃で5分間保持した。
キャリアガス ;ヘリウム
流量 ;0.8mL/分
注入口温度 ;300℃
検出器(FID)温度;350℃
注入量 ;1μL
スプリット ;20:1
内部標準物質 ;スクアラン
【0071】
表2に示すように、ステアリン酸の転化率は94モル%であり、仕込みステアリン酸に対してオレフィンが収率78モル%で得られた。
【0072】
実施例6、比較例5a
触媒の種類を表2に示すように変えた以外は実施例5と同様に触媒を調製し、オレフィンを製造して分析を行った。TiO
2は堺化学工業(株)製 SSP−M であり、PdI
2は和光純薬工業(株)製をそのまま触媒として使用した。
【0073】
比較例5b
(オレフィンの製造)
Dean−Stark管を備えた100mL四ツ口フラスコに、ステアリン酸(花王(株)製,LUNAC S98)40g(140mmol)、5質量%Pd/C (SIGMA ALDRICH(株)社製)4.0g(Pdとして1.9mmol)を加え、窒素バブリングしながら、280℃で攪拌を行った。2時間後、加熱をやめ、反応終了溶液をガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0074】
<ガスクロマトグラフィー>
ガスクロマトグラフィーはAgilent社製「HP6890」及びFronteerLAB製「Ultra−Alloy−1(0.25mmφ*30m×0.15μm-thickness)」を用い、下記の条件で測定した。
昇温条件 ;60℃で2分保持後、1分間に10℃の速度で60℃から350℃まで昇温し、350℃で15分間保持した。
キャリアガス ;ヘリウム
流量 ;0.8mL/分
注入口温度 ;300℃
検出器(FID)温度;350℃
注入量 ;2μL
スプリット ;50:1
内部標準物質 ;スクアラン
ステアリン酸の転化率は20モル%であり、仕込みステアリン酸に対してオレフィンが収率5モル%で得られた。
【0075】
実施例5、実施例6、比較例5a及び5bの結果を併せて表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例7
(鈴木-宮浦カップリング反応:有機ホウ素化合物とハロゲン化
アリールの炭素−炭素結合形成反応)
50mLナス型フラスコに攪拌子と、ヨウ化ベンゼン(和光純薬工業(株)製)2.04g(10.0mmol)、フェニルホウ素酸(和光純薬工業(株)製)1.46g(12.0mmol)、体積比でメチル−2−ピロリドン(NMP)(和光純薬工業(株)製)/H
2O=5/2の溶液を25mL、炭酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)1.27g(12.0mmol)、実施例5と同様にして調製した5質量%PdI
2/C 72.0mg(PdI
2として0.01mmol)を加え、窒素置換した後、103kPa、120℃で攪拌を行った。4時間後、加熱をやめ、反応終了溶液をガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0078】
<ガスクロマトグラフィー>
ガスクロマトグラフィーはAgilent社製「HP6890」及びFronteerLAB製「Ultra−Alloy−1(0.25mmφ*30m×0.15μm-thickness)」を用い、下記の条件で測定した。
昇温条件 ;60℃で2分保持後、1分間に10℃の速度で60℃から350℃まで昇温し、350℃で5分間保持した。
キャリアガス ;ヘリウム
流量 ;0.8mL/分
注入口温度 ;300℃
検出器(FID)温度;350℃
注入量 ;1μL
スプリット ;20:1
内部標準物質 ;スクアラン
ヨウ化ベンゼンの転化率は100モル%であり、用いたヨウ化ベンゼンに対してビフェニルが収率99モル%で得られた。
【0079】
比較例7
触媒の種類を表3に示す触媒に変えた以外は実施例7と同様に行った。5質量%Pd/C (SIGMA ALDRICH(株)製)をそのまま触媒として使用した。実施例7、比較例7の結果を併せて表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例8
(ヘック反応:アルケンと有機ハロゲン化合物の炭素−炭素結合形成反応)
50mLナス型フラスコに攪拌子と、ヨウ化ベンゼン(和光純薬工業(株)製)2.04g(10.0mmol)、スチレン(キシダ化学(株)製)1.25g(12.0mmol)、体積比でメチル−2−ピロリドン(NMP)(和光純薬工業(株)製)/H
2O=5/2の溶液を25mL、トリブチルアミン(和光純薬工業(株)製)2.23g(12.0mmol)、実施例5と同様にして調製した5質量%PdI
2/C 0.72g(PdI
2として0.1mmol)を加え、窒素置換した後、103kPa、100℃で攪拌を行った。4時間後、加熱をやめ、反応終了溶液をガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0082】
<ガスクロマトグラフィー>
ガスクロマトグラフィーはAgilent社製「HP6890」及びFronteerLAB製「Ultra−Alloy−1(0.25mmφ*30m×0.15μm-thickness)」を用い、下記の条件で測定した。
昇温条件 ;60℃で2分保持後、1分間に10℃の速度で60℃から350℃まで昇温し、350℃で5分間保持した。
キャリアガス ;ヘリウム
流量 ;0.8mL/分
注入口温度 ;300℃
検出器(FID)温度;350℃
注入量 ;1μL
スプリット ;20:1
内部標準物質 ;スクアラン
【0083】
ヨウ化ベンゼンの転化率は16モル%であり、仕込みヨウ化ベンゼンに対してスチルベンが収率16モル%で得られた。
【0084】
実施例8の結果を表4に示す。
【0085】
【表4】